ぼくが君を守るから I Promise I’ll Keep You Safe.


ここはまやかしの森。一日中、日が差し込まない、うっそうとした森林地帯です。森のなかは、うごめく木々がざわついて、ひそひそと何かをしゃべっています。そこかしこから、悲しげな獣の声や、地の底から響くような唸り声が聞こえます。

山に囲まれた「時の王国」から飛び出した二人は、外の世界を目指して、幾日も歩いてきました。しかし、まだ見ぬ大地を目指すには、暗闇に覆われたこの森を抜けなければなりません。

女の子は感じます。ああ、もしわたしが一人だったなら、こんな森を歩いて抜けるなんて考えられたかしら。森の不気味な暗さも、おどろおどろしい怪物の鳴き声も、頭の上から見下ろす鋭いくちばしも、どれも絵本で読んだ魔女の森とは比べ物にならないくらい気味が悪い…。でも、わたしは決して恐ろしいとは思っていない…。それはやっぱり…。

そのとき、二人は、前方から、何かがにらみつけているのに気づきました。深くたれこめた霧の向こう…、きらりと輝く三対の目が、こちらを凝視しています。二人は立ち止まりました。

女の子は心配そうにつぶやきます。

「ソラ、何か恐ろしいものがわたしたちを狙っているわ…」

男の子は女の子の前に手を伸ばして立ちはだかり、はっきりとこう言いました。

「大丈夫だよ、ハナ。ぼくが君を守るから」

どれほどの時間が経ったでしょうか。立ち止まった二人は、息を殺して前をじっと見つめつづけました。冷や汗が流れ、手足が小刻みに震えます。でも女の子は、信じていました。男の子がそばにいて、守ってくれることを。

やがて、霧の向こうに見えていた目はひとつ、またひとつと姿を消していきました。永遠とも思えた長い時間が過ぎたのち、二人はほっと溜め息をつきました。

「ね、大丈夫だったでしょ?」 男の子は明るい声で、優しくほほえみました。

女の子はそっとうなずきました。彼と一緒なら、どんな恐ろしいことが起こってもきっと怖くない、そう思えた瞬間でした。

一ヶ月ぶりに空花物語を描いてみました。第三話、ということになるでしょうか。ちょっとストーリーが飛んでしまいましたが、このシリーズはそれくらい適当なのですみません。

本当は、お城から出て馬車に乗っているところも描くつもりだったのですが、やっぱり描きたいものを描こうということで、「まやかしの森」の絵を描きました。少し不気味な森を描いてみたいと思ったのですが、ゆめまな物語にはそぐわない雰囲気だったので、ファンタジー寄りの空花物語の一枚として描くことにしました。

じつは不気味な森を描いたのはこれが初めてではなく、以前にも君がいるから怖くないで描きました。タイトルからもわかるとおり、同じテーマ性の絵ですね。一人で歩けばどうしようもなく怖い場所も、信じる人が共にいてくれたら、不安なんてない。そんな気持ちを込めました。発想のレパートリーがそれほど豊かでないので、何年も絵を描いていると、同じアイデアを別の角度からリメイクしてみよう、と思うときもあるのです。

カメレオンはこれまでも何回か描きましたが、サルとかガとかを描いたのはさすがに初めてだと思います。いろいろ描いてみると楽しいですね。

例によって、空花物語は続きがあるかさえわからないシリーズですが、また気が向いたら描いてみたいです。