前回のメイキングの記事(【メイキング】Painter2015でリアル水彩イラスト「みんなで絵を描こう!」)から、約半年が経ちました。
Painterを使い始めてから約一年。Painterの膨大な機能の一部しか使っていないのは相変わらずですが、自分なりの描画スタイルというのは、かなり固まってきたと思います。まだまだ拙い作品であることは確かですが、進歩の過程として、今回も現時点での手法を解説したメイキングを残しておきたいと思います。
今回のメイキングの題材は、明暗のコントラストを意識して描いた絵である「闇路の明かり」です。厚塗りのようにも見えますが、前回と同じく、リアル水彩を用いて描いています。
―2015/9/28「闇路の明かり」のメイキング―
使用するバリアント
今回使用したPainterのブラシのバリアントは以下のとおりです。
【ティント】
標準丸筆…下書き用。(「不透明度」80%、「最小不透明度」100%、「最小サイズ」を0にする)
【リアル水彩】
フラクタルウォッシュ(水彩)…面塗り用。(「ウェイト」を100%にして、「正確なぼかし」と「ぼかしの処理待ち」のチェック外す)
紙目水彩…線描き用。(「最小不透明度」を100%、「濃度」を100%にする。「正確なぼかし」と「ぼかしの処理待ち」のチェック外す)
フラクタルドライ消しゴム…水彩用の消しゴム。
【チョーク&クレヨン】
角チョーク…サインやハイライトを描くときなど。
【フィルタ】
エアブラシフィルタ…明暗を強調するために。
【特殊効果】
フェアリーダスト…光のハイライト用
1.ラフスケッチ
まず、ティントの標準丸筆を使って、ラフスケッチします。
新規レイヤーを追加して、気の向くままに描きます。キャンバスに直接描き込まないよう注意してください。
標準丸筆は、「不透明度」80%、「最小不透明度」100%、「最小サイズ」を0にするという極端なカスタマイズをしていて、色の濃淡がまったくなく、筆圧によってサイズが柔軟に変わるようにしてあります。ティントブラシとしての用途からは外れていますが、ラフスケッチに使いやすい筆ペンとして活用しています。
ラフスケッチはかなり適当に描いて…
その都度新規レイヤーを追加して、下のレイヤーの不透明度を下げて透過しつつ何枚か描き、徐々にイメージを固めていきます。
用紙の向きや、キャラクターの配置、角度など構図をかなり練ります。さまざまタイプのラフスケッチを描いて最も見栄えのする構図を考えるので、10枚近く新規レイヤーを作ることもあります。
用紙を真横に使って安定感を出すべきか、それとも斜めにして奥行きを出すべきか、どの部分をアクセントにして目立たせるべきか、キャラクターにはどんなポーズと表情が適しているか、などなど、絵の構図や表現したいテーマを、ここでじっくり考えておきます。
だいたいイメージが固まったら、次のステップへ。
2.輪郭線を描く
次に、リアル水彩の紙目水彩を使って、輪郭線を描きます。
ラフスケッチのレイヤーの不透明度を下げて、その上に新規水彩レイヤーを追加。茶色系の濃い色で、輪郭線を描きます。かなり濃い色を使っても、紙目水彩だと薄めに出ます。
紙目水彩は、「最小不透明度」を100%、「濃度」を100%にする。「正確なぼかし」と「ぼかしの処理待ち」のチェック外すというカスタマイズをしていて、極端な色の濃淡が出たり、ぼかしに時間がかかったりしないようにして、輪郭線を描くのに最適化しています。
輪郭線は、イラストのイメージを左右する大事な部分なので時間をかけます。とはいえ、ここで描いた輪郭線全部を最後まで残すわけではありません。
3.おおまかに下塗りする
次に、リアル水彩のフラクタルウォッシュ(水彩)を使って、色を大まかに塗ります。
輪郭線の水彩レイヤーの上に、新規水彩レイヤーを追加。輪郭線のレイヤーにそのまま描き込んでしまわないよう注意!
フラクタルウォッシュ(水彩)は、「ウェイト」を100%にして、「正確なぼかし」と「ぼかしの処理待ち」のチェック外すというカスタマイズをしていて、色がしっかり乗って、ぼかしに時間がかかったりしないように、面塗りに最適化しています。
ここでおおまかに塗る際には、一枚の水彩レイヤーで塗ってしまうのではなく、前景・中景・人物・背景などでレイヤーをわけて塗っておくと、あとで調整したいときに便利です。たとえば、人物が目立たない場合、人物レイヤーだけ鮮やかにして、背景レイヤーの彩度を下げるといった工夫ができます。
ここはおおまかで構いません。ただし、色の統一感などは意識して塗ります。なんとなく塗れたら次のステップへ。
4.輪郭線を描き直す
このステップは最近追加した部分です。これまで、輪郭線の水彩レイヤーは、最後までそのまま使っていたのですが、人物を目立たせて、背景をなじませる絵を描くために、輪郭線を描き直す、というステップを追加しました。
人物も背景も、同じ色の輪郭線で描かれていると、マンガのような平面的な絵になってしまうためです。
新しい水彩レイヤーを追加し、紙目水彩で、背景の色に馴染む色で輪郭線を描き直していきます。
新しく輪郭線を描いた部分に重なっている、もともとの輪郭線を消すと、以下のようになります。
ステップ3のときの絵に比べると、背景の輪郭線が主張しなくなり人物の輪郭線が目立つようになったと思います。人物の輪郭線の部分は消さずに、最初に描いた茶色の輪郭線を使います。
5.立体的に色を重ねる
ここからは、フラクタルウォッシュ(水彩)と紙目水彩を両方使って、さらに立体的に色を重ねていきます。
リアル水彩で描いているものの、塗り方としては厚塗り(インパスト)のような塗り方になってきます。立体感や遠近感を意識して、陰になっている部分などは、かなり濃い色で塗り重ねていきます。
塗り重ねるときも、新規レイヤーを作って塗れば、あとあと色々と修正する選択肢ができるので、PCのスペックが許すなら、できるだけ新規水彩レイヤーを重ねるようにします。
明るいところは薄いまま残しておいて、暗いところや濃いところは、かなりはっきりと塗りこむメリハリが大切です。
6.ハイライトを入れる
水彩レイヤーは、白を描き込むことができません。それで、白いハイライトを入れるには、新規レイヤーを追加して、水彩以外のバリアントを使う必要があります。
目の瞳や、炎の輝きなど、角チョーク、標準丸筆などを使ってハイライトを描き込みます。ハイライトは控えめに入れるほうが、より引き立ちます。
この絵ではあまり使っていませんが、明るい絵の場合、フェアリーダストはかなり万能なのでおすすめです。空をきらきらさせたり、光があたる明るい部分を光らせたり、水の反射に使ったりもできます。
7.フィルターとテクスチャをかける
続いて、絵全体のカラーバランスを整えるため、新規レイヤーを作り、茶色あたりの色で塗りつぶして、「オーバーレイ」にして重ねます。すると、絵全体に茶色にフィルターがかかったような色合いになってまとまります。
このオーバーレイのレイヤーを選択した状態で、上のメニューバーから「効果」→「色調処理」→「色の調整」を選んで、色相や彩度、明るさなどをいじれば、絵の印象をいろいろ変えることができます。自分の一番表現したい色合いになるまで、じっくりと試行錯誤してみます。
続いて、「効果」→「表面処理」→「表面テクスチャの適用」を選び、このオーバーレイのレイヤーに、好みのテクスチャを付加します。すると、絵全体にテクスチャが加わり、水彩紙風になったりするなど、質感を表現できます。
単独では使いにくいテクスチャも、別のテクスチャと組み合わせて二重にかけたりするときれいになることもあるので、色々と試してみて、一番しっくりくるのを見つけるといいでしょう。
絵の種類によっては、ここまでのステップで完成します。
8.明暗を強調する
今回の絵の場合は、明暗をテーマにしたものなので、もっと明暗のコントラストを強調したいと思います。
単に「効果」→「色調処理」→「明度/コントラストオプション」で調整することもできますが、暗いところをもっと暗くしてぼかすことで、明暗の効果を高めることもできます。
この絵の場合は、新規レイヤーを追加して、暗いところをエアブラシフィルタの暗い色で塗っていきました。
エアブラシフィルタは、薄く色を重ねられるので、暗い色で塗れば暗がりを表現できますし、白で塗れば、遠くの景色が空気遠近法で薄くなっているような表現をすることもできます。コントラストを強くするのではなく、色を重ねて彩度を落としたいとき、つまり背景などの重要でない部分を目立たなくする用途に向いています。
最後に、先ほどのハイライトレイヤーに、角チョークでサインを描き入れて完成です。
完成後の記事はこちら。
今回新しくなった部分としては
■ラフスケッチ用のティントの筆ペン
■背景の輪郭を馴染む色で描き直す
■テクスチャを複数重ねる
■エアブラシフィルタで彩度を下げる
あたりでしょうか。そんなに大きな進歩はないですが…(笑)
前回のメイキングのときから、大まかな部分は変わっていませんが、背景の描き方など、少し上達した部分があると思います。いろいろなタイプの絵を描いてきたことで、表現力が増したように思います。
まだまだ室内の絵など、苦手な分野はたくさんあるのですが、少しずつ工夫を重ねて、Painterをよりよく使いこなせるようになっていきたいです。
次回のメイキングがあるかどうかはわかりませんが、スキルの進歩をときどきこうして言葉にまとめていきたいなーとは思っています。