2017年最初に描いたイラスト、「むかし夢見た日」のメイキングをつくってみました。
使用しているソフトはいつものPainter2015、画材もいつもどおりのリアル水彩です。というか、最初にことわっておきますが、これまでのメイキングに比べて新しく導入した要素は何もありません。 使っているブラシの説明の詳しい説明などはカテゴリPainterのこれまでのメイキング記事を見てもらえたらと思います。
去年も最初に描いたイラスト「麗らかな午後」でメイキング記事を作ったことだし、今年も一年最初の絵でメイキング記事を作って、景気づけにしようかな、とそれくらいの軽い気持ちでつくったメイキングです。
一応、これまでに身につけた色んなスキルを活用しつつ遠近感や空気感を出して描いているので、10ステップにわけて、どんな順序で描いたのかを簡単に解説してみました。
1.ラフスケッチ
まずはラフスケッチ。
使用するブラシ:標準丸筆(ティント)
手前で絵を描いている2人と、奥で水遊びしている子どもたちの2つの情景を、一枚の絵に盛り込むことにしたので、位置のバランスの調整が難関でした。
ラフスケッチの目的は、自然な構図を見つけ出すことなので、丁寧さなど微塵も気にせずに、勢いと感覚にまかせて、適当に描いていきます。
人物のポーズも、人体の構造に忠実に、とかは考えず、動きの印象をとらえるようにして、躍動感を重視して即興で描いています。
ラフスケッチは一枚だけではなく、何枚も描いていくうちに、自然な配置や、違和感のないポーズを見つけ出します。このラフスケッチはだいたい5枚目くらいだったかと。
2.下描き
ラフスケッチのレイヤーを半透明にして、新しいレイヤーを重ねて、本番用の下描きを描きます。
使用するブラシ:紙目水彩(リアル水彩)
人物の線は、これがそのまま完成イラストの線になるので丁寧に描きました。輪郭線の色は赤茶色を使っています。
ラフスケッチの状態では適当だった人体の大きさの比率や、手足の形、表情なども、この過程で、違和感がないように直していきます。
背景のほうは、途中で輪郭線を消して描き込んでいくので、あくまでアタリをとる目安程度にと思って、おおまかに描いています。
3,試し塗り
塗り始める前に、いったん水彩レイヤーを追加して、試し塗り。
使用するブラシ:フラクタルウォッシュ(リアル水彩)
試し塗りのレイヤーは、完成イラストには影響してこないので、おおまかにざっと塗ってみます。
試し塗りをする目的は、全体の配色を決めること。今回の絵は、そのまま塗り始めると、滝や森が地味に配色になったり、色のバランスが破綻して、ちぐはぐな雰囲気になったりする危険があったので、どんなグラデーションで塗ればいいか、見栄えのする色の組み合わせを色々と試しました。
最初は森や滝の色をそのまま塗ってみましたが、どうもパッとしなかったので、虹色のグラデーションを入れることに。しかし虹色に塗れるような部分があまり見当たらず、考えた末に、手前の二人が絵を描いている地面を花畑にして、赤色や橙色に塗り、そのまま奥の水面の緑へとグラデーションしていき、遠景の滝の水色へとつなげて、右下から左上にかけて、虹色っぽく色が変わっていくようにしようと決めました。
あくまで試し塗りは色のイメージを固めるためのものなので、答えが見つかったら、次のステップに進みます。
4.下塗り
新しい水彩レイヤーを追加し、試し塗りの配色イメージにそって、今度は丁寧に下塗りしていきます。
使用するブラシ:フラクタルウォッシュ(リアル水彩)
試し塗りのときはおおざっぱに塗りましたが、今回は、完成イラストのベースになる塗りなので、はみ出さないよう丁寧に塗っていきます。右下から左上にかけて、なんとなーく虹色のグラデーションになっていると思います。
しかし、まだ下塗りなので、不必要に塗り込んで濃くしたりせず、あくまで、それぞれの場所にベースとなる色を薄く置いていく感じです。
暗いところはあとで塗り込みますし、明るいところはあとでハイライトを入れるので、この時点では、だいたいの色を乗せるだけですね。
5.背景を描き込む
次に、下塗りレイヤーの上に新しい水彩レイヤーを追加して、背景を描き込んでいきます。
使用するブラシ:紙目水彩(リアル水彩)
下描きの時点で、背景は線なしで描き込んでいくので、輪郭線は適当に描いていましたが、このステップで本格的に背景を描き込んでいきます。
下塗りのときはフラクタルウォッシュでおおまかに面を塗りましたが、このステップでは、線描きに適した紙目水彩を使って、ディテールを細かく描き込んでいきます。木の葉っぱや滝の水流など、線や点を使って描き込んでいくことで、立体感や躍動感を出していきます。
線を描き込んで立体感を出すというのは、絵を描き始めた初期のころはまったくできなくて、どう描いたらリアルになるんだろう…?と途方に暮れていたんですが、ひたすら何枚も描いているうちに、自然にできるようになりました。コツとかなくて申し訳ないんですが、完全に慣れですね(笑)
6,人物を塗る
続いて、新規水彩レイヤーを追加して、人物を塗っていきます。
使用するブラシ:フラクタルウォッシュ(リアル水彩)、紙目水彩(リアル水彩)
手前の人物は、はっきりと濃い色で描き込むことで、近くにいる様子を表現しました。服の下側など暗い影の部分は、かなり黒に近い茶色などを使って、暗さを表現しています。手前にいる人物の影が絵で一番暗いところなので、ここは惜しまずに濃い色を使ったほうが、明暗のメリハリの利いた絵になります。
かつては、前景の人物と背景の人物とで、レイヤーを分けていて、あとでそれぞれの色を調節することで、近くにいる人は濃く、遠くにいる人は薄くして、遠近感を出すようにしていました。上の絵でも、本来は、奥のぞうと子どもたちはもっと薄く塗らないと、遠近感がおかしくなってしまうことがわかると思います。
しかし、最近は、このあとのステップ8でエアブラシフィルタを使って、遠くにいる人や景色の彩度を簡単に落とせるので、わざわざレイヤーを分けることもないか、と思って、ひとつのレイヤーで塗ることにしています。
7.ハイライトを入れる
続いて、新規レイヤーを追加してハイライトを入れていきます。水彩レイヤーでは白は塗れないので、ハイライトに使うのは通常レイヤーです。
使用するブラシ:標準丸筆(ティント)、フェアリーダスト(特殊効果)、引きずり拡散(ブレンド)
水のしぶき、人物の瞳などの白い部分は、このステップでハイライトを入れていきます。標準丸筆で塗っただけだと、ハードエッジが目立ってしまうので、引きずり拡散で適度にぼかして、違和感がないようなじませます。
8.空気感と遠近感を出す
次に新規レイヤーを追加して、遠近感を出します。
使用するブラシ:エアブラシフィルタ(フィルタ)
この絵は、遠くのほうは滝の水しぶきや靄が立ち込めているので、エアブラシフィルタで白を薄く塗っていくことで、遠景全体に白っぽい霧をかけて、水場の空気感を出します。遠景にいる人物にも白を重ねることで彩度を落として、遠近感のメリハリをつけます。
また、左右の森の部分など、暗い部分には、深い群青色あたりをエアブラシフィルタで薄く塗ることで、暗くすると同時に細かいディテールをぼかして、こちらも遠近感が感じられるようにします。
このステップではついでに薄い虹も描きました。
9.色の調整とテクスチャ追加
最後に、新規レイヤーを追加して、少し色みのあるグレーで塗りつぶし、オーバーレイにして一番上に重ねます。このレイヤーの色味を「色の調整」を使って変えて、一番 統一感のある色に調整します。また「テクスチャの追加」で、アナログ画用紙のようなざらつきも加えました。
最後にサインを入れて完成です。
見ての通り、特に新しいことをしているわけではなくて、今まで書いてきたメイキングとやっていることはまったく同じです。かえって、何も新しい要素がなくて申し訳ないです…。
ときどき、PhotoshopやIllustratorで絵を描いている人のメイキングを見る機会があるんですが、あまりに異次元の描き方でびっくりしますね。パーツごとにレイヤーをわけて、範囲選択ではみ出さないように塗っていたり、図形の作画みたいにして輪郭を描いていたり。アナログの描き方とは完全に別物すぎて、真似できる気がしません。
わたしの描き方は見てのとおり、デジタルの便利機能は色々と使っているとはいえ、基本的にはアナログの描き方とそんなに変わりません。ディテールの描き込みなどは、完全にアナログそのもの。いちおうレイヤーを分割していますが、レイヤーなしのキャンバス一枚で描き込んでも、わりと問題なく描けると思います。
というのも、もともと使っていた絵心教室がレイヤー機能のないアナログ一発書きのお絵かきツールでしたし、Painterも元祖アナログ系ペイントツールといえるソフトなので、あまりレイヤーやデジタル作画機能に頼らずに描くようになってしまったみたいです。
そんなわけで、メイキングを見てもらってもあまり役立つ技術なんかはないのですが、自分のモチベーション維持のためにも、こんな感じで描いてますよー、というのをときどき記録に残しておきたいなと思っています。