急げ急いで追いかけろ
白うさぎが走ってく流れるトランプ飛びわたり
ハートが飛び跳ね こだまするすべらないよう気をつけて
全速力で駆け抜けろあれよあれよと変わる色
不思議な景色の万華鏡気づいたときにはぼくたちは
不思議の国のただなかさ本が開いて飛び出して
お城の奥へと続いてるさあ冒険だ 飛び込もう
不思議の国の物語
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をテーマにした、とある企画に参加することになったので、うちの子たちが不思議の国に迷い込んだイラストを描きました。
■意外と身近な「不思議の国」
「不思議の国のアリス」というと、ファンタジーの金字塔として、もはや説明するまでもないほど有名です。とても発想豊かで、めまぐるしい展開が特徴ですが、一説によると、これはルイス・キャロルの実体験にヒントを得て生まれたのではないかと言われています。
ルイス・キャロルはアスペルガー症候群や偏頭痛を持っていたと考えられていて、一般の人たちとは違う世界を体験していた可能性があるといいます。
たとえば、アスペルガー症候群の人は、時間感覚のつながりが弱く、学校生活などで、場面が急に切り替わるように感じられるそうですが、アリスの物語も、次々に場面が変化します。
またアリスが経験したような、身の回りのものが大きくなったり、自分が小さくなったりする幻覚は、その名も「不思議の国のアリス症候群」と名付けられていますが、片頭痛によって生じやすいそうです。つまり、ルイス・キャロル自身、アリスと同じような不思議な体験を日常的に味わっていたのかもしれません。こうした感覚は子どものころに多いと言われています。
大人と子どもの見ている世界は違うとしばしば言われますが、想像力豊かな子どもは、妖精や小人が本当に見えたり、それらと会話できたり、手で触れたりできるといいます。大人のように感覚がまだ成熟していないので、想像の世界が現実のように感じられる場合があるのです。
こうした現実感のある空想の存在はイマジナリーコンパニオンと呼ばれていて、子どもの約半数が経験するそうです。古くは座敷わらしと呼ばれる妖怪の伝承も、このイマジナリーコンパニオン現象のことだと考えられています。
「となりのトトロ」に出てくる、子どものときにしか見えないトトロやまっくろくろすけ、また「いけちゃんとぼく」などの作品も、この現象を描いたものでしょう。
そう考えると、案外、「不思議の国」は、わたしたちの身近に存在しているのかもしれない、と思えてきます。
ルイス・キャロルは、子どものころ、チェシャ猫や白ウサギがいる「不思議の国」に住んでいたのかもしれません。あるいは大人になっても、片頭痛などをきっかけに、ときどき「不思議の国」に迷い込んでいたのかもしれません。
もちろん、「不思議の国のアリス」は、実体験だけでなく、それを元にして見事なファンタジーを構成するルイス・キャロルの類まれな文章力や発想力なくしては完成しませんでした。
「不思議の国のアリス」が時代を超えて人々の心に訴えかける不朽のファンタジーとなり得たのは、ルイス・キャロルが現実と空想を絶妙に融合させ、もしかすると「不思議の国」はすぐそこに広がっているかもしれない、と読者に思わせることに成功したからではないかと思います。
■「不思議の国のアリス」をテーマにしたイラスト
今回の絵は、「不思議の国のアリス」がテーマで、サイズも決まっていたので、いつもと違った用紙サイズで描くことになりました。ほぼ正方形のイラストでしたが、今までの経験を活用して、手前から奥に流れる構図に工夫してみました。描く面積が広くて、なかなか歯ごたえがありました。
アリスのさまざまなモチーフ、トランプ、お城、本、ウサギ、ウミガメ、バラなどを散りばめて、うちの子たちにはアリスや帽子屋、チェシャ猫のコスチュームを着せました。なんとなくアリスらしい雰囲気は出せたのではないでしょうか。
トランプでできた橋をわたってお城に向かう、というのが中核となるアイデアで、それを思いついたことで絵を形にするめどが立ち、企画に応募することを決めました。
過去にどうぶつの森など、いくつかのテーマのイラスト募集に応募してきましたが、Painterに移ってからは初めてでしょうか。普段はオリジナルで好きなように描きたいので、なかなかイラスト募集の企画に応募したりはしませんが、今回はアリスの世界観が、うちの子たちの世界観とマッチすると思ったので参加しました。
完成した絵を見ると、まったく違和感がなく、世界観に馴染んでいる気がします。このようなファンタジーらしい作品を描く機会に恵まれて、本当によかったです。いい記念になりました。
企画の成果については、また改めて記事にしたいと思います。