世界一高い塔 The Tallest Tower in The World

世界一高い塔

それはある月明かりの夜のこと。

次の街を目指して海沿いの道を旅していた男の子と女の子は、暗がりの中に、何か途方もなく巨大な影を見つけます。打ち寄せる波の音がこだまする夜の海岸線。影の近くまで歩いていくと、そこには天を貫く、とてもとても巨大な塔がそびえていました。

「ソラ、これはいったい何かしら…?」不思議そうに尋ねる女の子。

いつもは笑顔で何でも教えてくれる男の子。今回も知らないことを優しく教えてくれると思っていました。でもどういうわけか、今は無言で呆然と、塔を見上げて立ち尽くしています。

「ソラ…?」 戸惑って名前を呼ぶ声にハッと我に返った男の子。「あ…、ああ、これは世界一高い塔なのさ。だれもこの頂上までは登った人はいないんだ…」。いつものように男の子は笑顔を見せようとします。でもどこかいつもと違う動揺を女の子は感じ取ります。

どこで生まれたかも、家族がだれなのかも覚えていない男の子。そのいつも勇敢で心優しい彼が、ほんの一瞬だけ見せた不安と悲しみの入り混じった表情でした。

男の子は、世界一高い塔に背を向けて、次の街へ続く道へと戻っていきます。女の子も小走りで男の子についていきます。女の子はそのとき、ほんの一瞬、振り返って闇にそびえる塔を見上げ、いつかきっとここに再び来ることになる、そんな予感に心が揺さぶられたのでした。

世界一高い塔

今回の「空花物語」は世界一高い塔を描きました。ずいぶん前から描きたいと思いつつ、なかなか時間がかかってしまい、ようやく形にできました。

もともとは昼間のシチュエーションの絵だったのですが、この場面でのソラとハナの物語は決まっていたので、夜のほうが内容に合うかなーと思って、闇夜にそびえる塔にしてみました。

なかなか思わせぶりな物語を書きましたが…空花物語の裏設定に一応、深く関わってくる場所です。ソラが動揺したのは、何かハナに秘密の隠し事をしているわけではなくて、本人も理由がわかっていない無意識の動揺ですね。

でも前にも書きましたが、空花物語は、当初考えていた物語を描いてしまうと完結してしまうので、今のところ、あえて物語は封印して、ファンタジー世界の冒険譚にしています。

それに、物語を正面きって語るより、こうして断片的に思わせぶりに描いたほうが面白いかなーとも思ったり。今のところ、この伏線を回収する予定はないので、期待はしないでくださいね(笑)

明暗のコントラストと重厚感

絵のポイントとしては、闇夜の塔ということで、明暗をしっかり出して描けるかどうかが大切でした。

キアロスクーロ(明暗)が強い絵は普段あまり描かないので不安だったのですが、油彩ツールで描いたことでしっかりと暗さやコントラストを出せたと思います。水彩ツールだとこの重厚感は出せないので、油彩に切り替えた「空花物語」ならではの一枚ですね。

色のトーンは、赤紫から青紫で統一しました。空花物語のイメージカラーとも合ったファンタジーらしい絵になったのではないでしょうか。いつもの「ゆめまな物語」系とはぜんぜん違う雰囲気を感じ取ってもらえたら嬉しいです。

構図や塔の造形は、特に参考にしたものはなくて、自分のイメージ通りにのびのびと描きました。こうしたファンタジーな不思議な建物を描くのは大好きですね。

前回の世界樹天空城など、ファンタジーな絵はこれまでも描きたいなぁと思っていたんですが、「空花物語」の世界観としてまとめることで、ようやく自由に描けるようになりました。そういう意味でも、やっぱり「空花物語」のストーリーを完結させるわけにはいかないな、と思ってしまいます(笑)

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