夜のとばりの鏡像世界―光が眩しすぎるから創られた もうひとつの物語(4)


わたしの生まれながらの光過敏と、それによって創られた人格や世界観をめぐる記事の第四回。

前回の第三回は、ちょっと難しい内容で、オリヴァー・サックスの本などを参考に、光過敏性とは何なのか、ということを考察しました。結論としては、おそらく光過敏をはじめとする過敏性とは、共感覚と表裏一体の関係にあるもので、創造性と関係しているのではないか、ということでした。

夜のとばりの鏡像世界―光が眩しすぎるから創られた もうひとつの物語(3)

今回は、第二回で調光できる照明器具を買った体験談につづく内容で、難しい理論はいったん脇に置き、感覚過敏への具体的な対処のストーリーを書いていきます。

まずは、音過敏に対処するためにカスタムイヤープラグを買った話、次に、ついにアーレンレンズが届いた話、そして、そのレンズを持ってメガネ屋に加工してもらいに行って、そこで教えてもらったモアイレンズという偏光サングラスの話も少し。

そしてその後で、またちょっと難しい理論的な話として、最近読んでいる脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線という本から得た興味深い考察をまとめておきたいと思います。

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イヤープラグを作りに行った話

まず最初は、イヤープラグを作りに行った話。

最初に店に問い合わせたら、「カスタムイヤープラグをオーダーするにはインプレッション採取が必要です」なんて言われて( ゚д゚)ポカーンとしたんですが、要するに、「特製耳栓を注文するには、耳型を取ることが必要です」(※日本語訳)という意味でした。

なんでいきなり耳栓の話なのか、ということを説明すると、わたしは以前のアーレンの記事の第二回で書いたように、聴覚過敏もあるからです。今回の一連の記事の最初の、当事者・専門家の集まりで得た情報の中にも、視覚過敏と音過敏を両方持っている人が多い、というものがありました。

わたしがまさにそれで、かねてから音過敏にも常々悩まされていて、特定の音域の音をカットするフィルターを仕込んだ、ユニバーサルイヤープラグというのを使っていました。

音過敏といっても、頭に突き刺さるようにガンガン響くという感じではなく、通常よりボリュームが大きい、という感じです。しかし、たとえば、映画館、アミューズメントパークなどに行くと、臨場感を出すためか普通の場所より音が大きめなのですが、わたしにとっては耳を塞いでちょうどいいくらいの音量になってしまいます。

普通の耳栓だと、会話まで聞こえなくなったり窒息感があったりするので実用に耐えなかったのですが、特定の音域だけカットできる特殊な構造の耳栓が手頃な値段で売っていると教えてもらって、試してみたところ、愛用するようになりました。

聞くところによると、ライブなどで激しい音量にさらされるミュージシャンや、工事現場の作業員などが耳を保護するために使っているそうです。そのあたりの音過敏の話と、これまで使っていたイヤープラグの感想について、詳しくは、以下の記事を見てもらえたらと。

実このユニバーサルイヤプラグには、レクリエーショナル、プロフェッショナル、カスタムの3種類のモデルがあり、これまでは一番安くて、日常に使いやすいレクリエーショナル(4000円ほど)を使っていました。その上のプロフェッショナル(12000円ほど)はミュージシャンや作業員のようなもっとうるさい場所で働く人に適したものですが、今回買うことにしたのはカスタムモデル(25000円ほど)。

他の2つとは違って、耳型をとって耳にジャストフィットする形に仕上げるオーダーメイドのモデルで、状況に合わせて異なる音域をカットするフィルターを換装できるスグレモノです。

この上位モデルへの買い替えを決意したのには、アーレンシンドロームをめぐる一連の出来事から、自分がHSPという体質だと知ったこと、そしてそのHSPによる過敏性が、疲れやすかったりADHD気質だったりすることの原因だとわかったためでした。

単に音過敏なわけではなくて、それがわたしの抱える問題の根っこに関わっているとわかったので、何万円もかかったアーレンメガネと同じように、耳栓のほうにも投資すれば、より生活の質、つまりQOL(クオリティー・オブ・ライフ)が向上すると思ったわけです。

さて、そうやってカスタムイヤープラグを作ることに決めたわけですが、今回は耳型をとるということで、これまでのように通販でちょちょいと買うこともできず、取り扱っている店舗に出向くことに。幸い、なんとか行ける距離に店があって、問い合わせてみると、耳型も近くの補聴器屋さんで取ってくれるとのことだったので、行ってみることにしました。

夕方以降しか空いていなかったので、薄暗がりになってから、電車を乗り継いで出発。

まぶしさ過敏があるので、夜に行動するほうが楽であるかのように思えますが、意外とそうではなく。電車や施設の中は、夜はものすごく明るいですし、夜道の場合も、背景が暗いのに電灯やネオンが明るいため、コントラストが強くて眩しいのです。かといって昼間だと明るすぎるので、昼も夜もそれぞれの辛さがあるという難しさ。だからこそ、2番目の記事に書いたように、光過敏の人にとって、今の光害社会は住みにくいのでしょうね。

そんなネオンや街頭が光り輝く夜の片隅に、目指す補聴器屋さんがありました。

耳型を取ってほしい旨を告げると、慣れた手つきで、早速始めてくれました。机の上には、見慣れない怪しい機器がいろいろ。

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まずは耳の中をペンライトで観察して、傷などがないか調べます。次に、鼓膜を保護するために、綿球という、細い糸のついた小さなワタの玉を耳に入れます。ゴソゴソと音がなりますが、痛いことはありません。

そして、何やら怪しい機器で、耳に緑色のシリコンを入れていきます。歯医者で型をとるのと同じものだとか。これも痛くはないですが、圧迫感があって、耳が文字通り詰まる感じです。その状態だと、完全に片方の耳が聞こえなくなります。

その状態のまま3分ほど待つと、シリコンが体温で自然に固まるので、先ほどの綿球の先についている糸を引っ張ると、固まった耳型(インプレッション)がキュッポンと抜けて、耳型の完成です。これを左右それぞれやっておしまい。

途中ちょっと、左耳に綿球を入れるときに少し痛みがありましたが、特に傷があったりしたわけではなく、耳型も問題なく採れました。

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完成して固まった耳型はというと、こんな感じ。

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先っぽについている白いのが綿球です。綿球があるおかげで、シリコンがそれ以上流れ込まずに済んで、適切な深さの耳型を採れるということです。それにしてもなんだか怖いというか気持ち悪いですね…。

代金は数千円ほど。

この耳型では、耳の穴の部分だけでなく、外耳全体、つまり耳介と呼ばれる耳の外側のくぼみ部分まで、ある程度形を取っています。これは補聴器を作る場合には、耳介にはめ込む形にするために必要なのだそうです。

わたしが作るカスタムイヤープラグの場合は、耳の穴にはめ込むだけなので必要なさそうですが、普段は補聴器を専門に作っているところなので、イヤープラグについてはよくわからないとのことでした。カスタム耳栓なんて作る人、めったにいないんでしょうね…(^_^;)

こうして完成した耳型(インプレッション)を持って、その足で近くのイヤホン屋さんへと向かいます。こちらもまた繁華街の中に明るい場所にあったので、なかなか明るさ過敏持ちには辛く感じました。早くアーレンメガネができないものか…。

店に着いて、例のユニバーサルイヤプラグを注文すると、注文用の用紙を出してくれたのですが、少し書き進めていくうちに、あれっ…?という違和感が。

使用するイヤホン、という項目があり、よく見ると、同じメーカーによるカスタムイヤホンの注文用紙でした。それを指摘すると、慌てて本来の製品の情報を調べてくれたのですが、その店員さんではわからず、もっと詳しそうな店員さんが助け舟を出して、ようやく本来の注文用紙が。

こちらもこちらで、普段イヤホンを専門に扱っているので、イヤープラグなんてものはあまり詳しくないようです。詳しいほうの店員さんは使っている人が知り合いにいるようでしたが。やっぱり珍しいんでしょうね。

注文するときに、換装用のフィルターを4種類から選べるのですが、二段階目の、ちょっと騒がしいところ用のものにしてみました。ここで選ばなかったフィルターも、後から別売りで購入できるので、とりあえず、という感じですね。

そしてイヤープラグの色も全16色から選べます。派手な色にしたほうが失くしにくくなるのはわかっていたのですが、普段、人とじかにやりとりすることが多いので、あまり目立ちすぎるのはちょっと…と思い、はじめは黒にしようかと。

しかし、考えてみれば、アーレンメガネをかけることになれば、ただでさえ威圧感を人に与えやすいでしょうから、さらに目立たないクリア(透明)にしました。落としたり無くしたりしないか、ということが心配ですが、何かしらの対策を考えるとしましょう。

こうして、「インプレッションを採取してカスタムイヤープラグをオーダーする」という、無駄にハードルが高そうな特製耳栓を無事に注文できたのでした。

これから耳型はアメリカに送付するとのことで、完成して届くのは3週間から1ヶ月後くらいになるそうです。アーレンレンズといい、アメリカばかりですね。オーダーメイドのカスタムアイテムで一人ひとり異なる感覚過敏をカバーする、というのは、個人主義社会と言われるアメリカが得意とする分野なのかなーとなんとなく思いました。

アーレンレンズが届いた話

そうこうしているうちに日にちが経って、筑波大学がアーレンレンズを発注したと言っていた日から、三週間が経過しました。レンズが届くには、最短で3週間、長くて1ヶ月半と聞いていたので、あまり期待せずにいたのですが…

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なんと24日ほどで届きました! 思ったより早くて嬉しい限り。国際便なんて滅多な受け取らないので、ちょっとわくわくしました。配達員さんが、本当に合ってますが、と確認してきて、見てみたら住所が間違っていました。よく届いたものだ…(^_^;)

開けてみると、厳重に梱包されていて、レンズが二枚。そして「Welcome to the World of Irlen」と書かれたしおりが。英語で簡単な説明と手入れの方法などが記載されています。

正直なところ、アーレンの世界にようこそ!  なんて言われても…(^_^;)

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レンズはこんな感じで、素材はかなり安そうな感じ。色はほぼ真っ黒のサングラス状態ですね。試しに目につけて鏡を見てみると、うっすらと自分の目は透けて見えるので、完全に目を隠すサングラスのようなものではないことがわかりました。

気になったのは、レンズの色。こんな色だっけ?という違和感が最初はありました。ダークブルーだと思っていたのですが、ほとんど茶色のような気が。ちゃんと色を抽出してくれたんだろうか、と首を傾げる。

そして、その場で使ってみたところ、なんとなく、思っていたのより明るい気がしました。アーレンのフィッティングをした後、照明を買い替えてかなり暗い部屋で使っているので、さらに明るさ調整になってしまったんだろうか?

しかし、次の日の朝に、明るい屋外で試してみたところ、光がまぶしくなく、やっぱりフィッティング通りのバッチリの性能だったのだと気づきました。

また、家の洗面台のところの橙色の白熱電球の前でかけてみたところ、電球色が赤色に見えました。橙色が赤色になるということは、しっかりわたしが苦手な黄色い波長はカットしているということです。

ちょっと疑ってしまいましたが、アーレンレンズとしての出来栄えは問題ないようでホッとしました。

しかしやはり課題もあり、暗い夜道での、ネオンや電灯、車のヘッドライトのまぶしさをカットするのは、やはりこのレンズでは難しいのではないかと思いました。夜道で使ってみたわけではありませんが、さすがに暗すぎて危険ではないかと。思いのほか目が暗順応する可能性もあるので、使ってみないことにはなんとも言えませんが。

アーレンメガネを作りに行った話

こうしてメガネのレンズが届いたので、早速、推奨されていたメガネ屋さんに加工をお願いすることに。すぐに請け負ってくれるとのことだったので、届いた翌日に、遠路はるばる行ってきました。

今回の旅のお供は、脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線という本。これがまた物凄い本で、今年読んだ色々な本の中でもトップ3に入る良書かもしれません。かねてから、ネット上での評判がよく、読んでみようとは思っていたのですが、今、この時期に手にとって本当によかったと思います。

というのも、半年前、HSPについて理解を深める前のわたしだと、興味深く読めても、内容を自分と結びつけられなかっただろうと思うのです。まだ前半を読んだだけですが、ここまでのところで得たアーレンやHSPに関わる考察については、この記事の最後の見出しのところにまとめておきます。

さて、そんな面白い本を片手に、でも昼間のまぶしさにちょっと悩まされながら、これまた電車に揺られること一時間。お目当ての駅にそろそろ着くかと思いきや、乗り換え地点で時間がなく、焦って乗車して、車内の路線図を見てみると、案の定別路線に乗ってしまっていた。

気づいたときには駅を出ていて時すでに遅し、次の駅で折り返せたとはいえ、時間をロスしてしまうという初めての場所ゆえの失敗もありましたが、なんとかたどり着きました。

メガネ屋さんに、アーレンレンズの加工をお願いすると、幾つか使用できるフレームを見せてくれました。店員さんが言うには、アーレンのレンズは日本の規格とは違っているので、自由にフレームを選んではめるのは難しいらしい。

提案されたのは、かなり大きな目を覆うフレームのついたタイプが数種類でしたが、そのうち、自分の顔の凹凸に一番フィットして、できる限り外から光が入ってくるのを防げるフレームを選びました。

どうやら、アーレンレンズは、けっこうチャチというか、今時のメガネなら当たり前の映り込み防止加工、つまりノングレア加工がされていないようなのです。そのせいで光が内側に入り込むと、映り込みが生じて見にくくなってしまうという欠陥が。光過敏用の特注レンズなのに、正直言って ひどい話ですが、この映り込み防止のためにも、目をしっかり覆うフレームが必要みたいです。

そうしたフレームだと、目の側面も覆ってしまうため、視界が狭くなって困る方もいるそうですが、実はわたしがすでに紫外線カットのために付けているのが、そんなフレームなので問題なく。このメガネをかけ始めた当初は、やっぱり横が見えにくいことが気になったのですが、何年もかけているうちにすっかり慣れて、自転車で走ったりしていても危なくないようになりました。

またフレームの耳にかける部分、いわゆる、メガネのつる(テンプル)の部分は、普通のプラスチック製だと、耳が締め付けられて痛かったりとフィットしにくいことがわかっていました。それで、JINS PCと同じ、自由に曲がる形状記憶の針金のようなものにゴムをかぶせてある種類を選びました。これまでの疲労軽減用のメガネ選びの経験が生きています(笑)

そのほか、アーレンレンズは、やはり普通のメガネのレンズのようには扱えないので、アーレンメガネを近所のメガネ屋さんなどに持っていくと不適切な扱いを受けてダメになったりもするらしい。メガネ用の洗浄液などは使えず、汚れたときは水洗いしてメガネ拭きで手入れするようにとのことでした。

まぶしさ軽減には乱反射光をカットする手も?

それとは別に、少し気になった情報が。

アーレンメガネを数種類使い分けているような人がいるか尋ねてみたところ、もちろん場面によって数色使い分けるのは当然だし、それ以外にも、アーレンメガネとは違うものを使って明るさ対策している人もいるのだとか。

そこで紹介されたのが、偏光レンズという種類のサングラスで、TALEXのモアイレンズというのを試着させてもらえました。アーレンレンズと比較してみると、モアイレンズだと、光のギラツキが抑えられて、例えば光が反射してテカっている窓や金属製品、紙などがはっきり見えるんですよね。アーレンレンズはこれができない。

偏光レンズという名前からわかるとおり、このサングラスは、光の方向を揃えて、散乱光をカットする効果があるようです。まぶしさというのはこの散乱光が大きく関係しているので、試着してみると確かにほとんどまぶしくありません。

残念ながら、モアイレンズは数色しかない上、アーレンみたいな特定の色の波長をカットしたりはできないので、特定の色の波長によるまぶしさ、つまりわたしの場合だと、感受性が強い黄色やオレンジ色のまぶしさはカットできません。試着したときは、確かにまぶしさが抑えられたものの、完全ではありませんでした。アーレンの代わりになる、というわけにはいかないようです。

しかし、モアイレンズは、わたしの真っ黒なアーレンとは違って、ほんのりと色が入っているだけで、ちょっとグレーがかっているくらいで、ほぼ普通のメガネと変わらない見た目です。ですから、人前にかけていっても、あまり違和感を抱かせないのではないか、という利点があります。

また、色が薄いということは、夜間の使用も可能だということです。実際に夜に使用してみたわけではありませんが、商品紹介パンフレットを見ると、対向車のヘッドライトのまぶしさ軽減にも使えるとされていて、わたしが求めている用途に沿うのではないかと思えました。つまり、昼間の外出用はアーレン、夜の屋外用や、人との対面コミュニケーションが必要なときはモアイレンズという使い分けをしてみたら、どうなのだろう、ということです。

もう一つ気になったのは、モアイレンズの紹介パンフレットに、大阪市立大学の井上正康先生による効果の実証研究が載っていたこと。マウス実験ではありますが、乱反射光をカットするレンズで、ストレスホルモンであるコルチゾールが低下することがわかったそうです。あと人間を対象にした実験では主観のアンケートではあるものの、運転時の疲労が軽減したとか。

医学研究科・井上教授が監修の運転疲労に対する抗疲労レンズの効果の実証実験 — 大阪市立大学

大阪市立大といえば、疲労研究の最先端として有名なところ。じつは、わたしがこれまで紫外線カットの目を覆うフレームのメガネを使っていたのは、井上正康先生による、目から入る紫外線が疲労の原因になる、という研究を危ない!「慢性疲労」 (生活人新書)という本で読んだことがあったからでした。そういえば、冬場は曇り空で散乱光が生じて、より疲れるという知識もここから知ったんでしたっけ。

この本の発刊は2004年、そしてTALEXと井上正康先生の共同研究は2010年とのことで、知らなかったのもやむなし…と言えるのかもしれませんが、この手の情報を追っていた身としてはちょっと悔しい。わたしが情報収集をし始めたのは2012年頃なので、ちょうど見逃している時期なんですよね。

それにTALEXは疲労バスターズの会員企業だったんですか。一応この関連の商品は色々とあさっていて、VENEXのリカバリーウェアなど気になってはいたのですが、抗疲労研究の書籍は色々と読んでいたのに、なんで見たことがなかったのだろう…。

そして、今になってやっと気づきましたが、そういや、自閉症の本で偏光レンズの話が出ていたのでした。何度かこの一連の記事でも名前を出しているドナ・ウィリアムズです。

ドナの結婚―自閉症だったわたしへによると、色付きレンズと偏光フィルターを組み合わせたメガネを使ったところ、ドナ・ウィリアムズは、人の顔がまとまって見えるようになり、部屋の奥行きも把握できるようになったのでした。 (p211-212)

この記述を今までわたしは、単に色付きレンズのところだけ注目して、一種のアーレンレンズだと解釈していたのですが、まったくの知識不足でした。偏光レンズとやらが何なのかわかっていなかったもので。

現にこの記述を分析しているギフテッド 天才の育て方 (ヒューマンケアブックス)も、色つきレンズのほうに注目していて、偏光フィルターのほうには特に解説がなかったのです。

ドナの示す視覚認知の問題が、色つきのめがねと偏光フィルターの組み合わせで是正できることに注目してほしい。これは、明暗領域を限定し、その分、拾いを密にしていることによると考えられる。(p79)

前述のC君の例でもすでに述べたことではあるが、白の紙に黒のインクという一般的な印刷は、コントラストが強すぎて非常に読みにくく、例えば薄い青やピンクの色がついていると一挙に読みやすくなる。

これは薄い色のついたメガネを着用するのと同じである。ドナのように色のついためがねの着用は、さらに個々に合う色の選択が、いっそうの見やすさを確保する。

英国においてそのような配慮が実際に行われている場合があることは、紹介した。翻って我が国ではこのような配慮が行われた例は聞かない。(p83)

ここでは、最初は色つきメガネと偏光フィルターの組み合わせだと述べられているものの、支援策としては、おそらくアーレンレンズに言及したと思われる記述しかありません。

しかし、アーレンレンズに偏光機能がないことを自分の目で確かめた以上、ドナのエピソードは単なる色つきのアーレンレンズについての記述ではなく、偏光サングラスにも関わる記述だと解釈しなければなりません。あとで、過去の記述を修正しておかなければ…。

とすると、これまでアーレンの一種だと思っていた自閉症の人のまぶしさというのは、特定の光の波長ではなく、乱反射光の問題が多々含まれているのでしょう。乱反射光による過剰な明るさのせいで写真の白飛びのような現象が生じて、視界の一部が飛んでいるのかもしれません。高コントラストの写真で、色が飛んで物体の境目がわかりにくくなり、形状が把握しにくくなるのと同じです。

もしそれが原因でまぶしさが生じているのだとしたら、アーレンレンズで特定の波長をカットしたところで根本的な解決になりません。わたしがメガネ屋で確認したとおり、アーレンレンズには、どれだけ色が暗くても、乱反射光による照り返しをカットする機能はないのですから。

もしかすると、本当は、ドナ・ウィリアムズのように、偏光レンズ+色付きフィルターという二重の構成のメガネをかけて、乱反射光と特定の光の波長の両方をカットするのが適している人もいるのではないでしょうか。TALEXの偏光レンズのラインナップを見ると、20色近くあって、すべて見え方が違うと書かれているので、すでにそれにある程度対応しているのかもしれません。

もちろんほかにも、偏光レンズのサングラスを売っているメーカーは色々あって、わたしにはどれが良いのかまではわかりません。少なくとも、色つきレンズと偏光フィルターを組み合わせているTALEXのメガネはドナ・ウィリアムズの記述に最も近いレンズです。

とりあえず、もう少し試してみないことにはなんとも言えないので、完成したアーレンメガネが届いたら、もう一度メガネ屋さんに行って、今度は夜に試着して、街路灯やヘッドライト対策として役立つのかどうか、といった点を調べてみたいと思います。

最近の考察―神経可塑性の研究から

こうした経験をすると、なんとも知識不足というか、自分の視野の狭さを痛感させられますが、専門家ではないし、全部の情報を知っているわけではないので、仕方ありません。わたしにできるのは、こうして、徐々に知識を増し加えて、過去の記事を修正してアップデートしていくことだけです。

そして知識を増し加えるには、本を読むことが不可欠、ということで、さっき出てきた脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線を読んで気になったことを幾つか。

はっきり言ってちょっと難しい話題なので、興味のある人だけ読んでもらえれば、ということで折りたたんでおきます。

過敏さと創造性に関わる脳の領域は競合している
薬物療法によって、かえって過敏性が悪化する?
運動するのに気乗りがしないのは意志力の問題ではない
患者に解離が生じていると医師は問題の本質を見逃す
目は脳の可塑性をコントロールしている
HSPの過敏性は介在ニューロンの興奮によるもの?
もう一つの過敏性としての感覚処理障害(SPD)
脳の可塑性が強い人は「非定型な」患者に見える

以上が、この本を半分くらい読んだ中で思ったことです。もっとちゃんと読んだら、改めて考えをまとめたいですね。このシリーズ記事に書くか、別の場所で書くかはわかりませんが。何より、ちょっとでも気になるところがあった方は、この本を自分で読んでみるようお勧めします。

それにしても、最近、文章を書きすぎて文章を書く時間がないというひどい状態に陥っています。おそらく一日平均で1万字近く書いていると思うのですが、あと10倍くらいは書きたいことがあるのです。まあ、HSPとハイパーグラフィアは側頭葉機能の亢進という同じような基盤があるはずなので、仕方ないのでしょうが。

問題なのは、そのおかげで絵を描くモードに入れないこと。どうも、文章を書くのと絵を描くのとでは、報酬系に対するハードルが異なるようで、わたしにとっては、文章のほうが楽なのです。でも絵をもっと描きたいという気持ちはいつもあるのでジレンマです。

アーレンメガネなどが揃ったら、この状況に少しは変化がみられるのでしょうか。それはわかりませんが、次回の記事ではいよいよ完成したアーレンメガネをお披露目して、その感想を書くことになりそうです。

▼続きを書きました

夜のとばりの鏡像世界―光が眩しすぎるから創られた もうひとつの物語(終)
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