有名な画家18人の絵を描く習慣から学べるクリエイティブな毎日の秘訣


を描くクリエイターたちは、だれでもクリエイティブな毎日を送りたいと思っています。できれば浮き沈みもなく、安定的に良い作品を創り続けたいと思っているかもしれません。

そうした問題を抱えていたのは、昔の画家たちも同じでした。ピカソやゴッホをはじめ、美術史に名を残す名だたる画家たちは、どんな創作の習慣を持っていたのでしょうか。

古城のほとり1.4

この記事では、天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々という本を参考に、ヨーロッパやアメリカの有名な画家たちの創作の習慣をまとめてみました。

それぞれの画家たちの毎日に、どんな共通点や違いがあるのかを調べてみると、クリエイティブな生活についての手がかりが得られるかもしれません。

有名な画家18人の創作習慣(50音順)

天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々という本は、クリエイティブな作家、芸術家、音楽家。思想家、学者など計161人の、毎日の習慣がまとめられた本です。

一人につき、半ページから4ページほどの情報が、特に意見をさしはさまずに載せられています。日本からも一人、村上春樹がエントリーしています。

今回は、その中に含まれる画家たち(一部、造形作家やマンガ家を含む)18人の記述を、ごく簡潔にまとめてみました。自分自身の創作の習慣と比べながら読んでみてください。

サムネイルは、Google画像検索へのリンクへのリンクになっていて、クリックすれば、その人がどんな作品を描いたのかがわかります。

アル・ハーシュフェルド

アメリカの風刺画家アル・ハーシュフェルドは、ブロードウェイやハリウッド俳優の似顔絵を描きました。

劇場の暗やみの中ですばやく下描きを作り、翌日アトリエで完成させました。90代になっても、日中ひたすら自宅にこもって仕事をして、夜に劇場通いと人づきあいをしていました。

妻によると眠っている間も仕事をしていて、夢で見たアイデアを忘れないように、夜明けとともに急いで画板の前に立ちました。(p190)

Al Hirschfeld

アンディー・ウォーホル

アメリカのポップアート画家また映像作家のウォーホルは、24時間の生活を詳細に友人のハケットにタイプで記録させていました。

めったに人と打ち解けない性格で、お気に入りの習慣を厳密に守っていました。

毎日届く大量の郵便物はタイムカプセルと名づけられたダンボール箱に入れて、日付ごとに保管されていました。

いつも友人たちの会話を録音していましたが、手当たり次第に録音することに飽きて、演劇や映画のセリフに使えそうな会話だけ録音するようになりました。(p282)

andy warhol

アンリ・ド・トゥルーズ・ロートレック

フランスの画家アンリ・ロートレックは、いつも夜中に絵を描きました。

キャバレーに入り浸り、途切れることなく酒を飲み、深夜まで絵を描く生活の繰り返しで、36歳までしか生きられませんでした。(p62)

Henri de Toulouse-Lautrec

アンリ・マティス

フランスの画家アンリ・マティスは、決して退屈しない人でした。「基本的に、僕はなんでも楽しむんだ。退屈することがない」と述べています。

朝9時から、昼寝と昼食をはさんで、日が暮れるまで一日中絵を描き続けました。日曜さえ休みませんでした。

彼の自宅には、珍しい鳥でいっぱいの鳥小屋や、熱帯植物を育てた温室など、不思議なものがいろいろありました。(p77)

Henri Matisse

ウィレム・デ・クーニング

オランダの画家デ・グーニングは、生涯を通して朝起きが苦手で、10時か11時に起きて、日が暮れるまで絵を描き、夕食をはさんで、さらに夜遅くまで絵を描きました。

絵がうまく描けないと眠れなくなり、一晩中マンハッタンを徘徊しました。夜は暖房が切れましたが、帽子とオーバーを着て、口笛を吹きながら絵を描いていました。(p308)

Willem de Kooning

N・C・ワイエス

アメリカの画家またイラストレーターのワイエス(アンドリュー・ワイエスの父)は、毎日午前5時に起き、薪を割って食事をしてからアトリエへ行きました。

ワイエスは仕事が早く、ひとつの絵を二、三時間で仕上げることもありました。太陽光を重視して、日が暮れてからは仕事をしませんでした。

仕事がはかどらないときは、メガネの横に厚紙を貼って、視野をせばめ、集中できるようにしました。彼は絵を描いているかぎり幸せで、来客も歓迎しました。(p265)

N.C. Wyeth

ゲルハルト・リヒター

ドイツの画家リヒターは、毎朝6時15分に起きて家族の朝食を作り、7時20分に娘を学校に送り、8時から13時までアトリエで過ごし…という規則正しい生活を送っています。

毎日絵が描けるわけではありませんが、アトリエに行くことは日々の習慣にしていて、「アイデアが湧くのを漠然と待っているのは危険だ。アイデアは努力して見つけなくちゃ」と述べました。(p339)

Gerhard Richter,

ジャクソン・ポロック

アメリカの抽象画家ジャクソン・ポロックは、小さな漁村に引っ越した後、不健康な飲み過ぎをやめて絵に集中し、ドリップペインティングの技法を開発しました。

昼過ぎの13時ごろに起きてきてアトリエに向かい、夕方には浜辺を散歩して、妻や友人と夕食を食べ、夜は12時間も寝ていました。(p304)

Jackson Pollock

ジョアン・ミロ(ホアン・ミロ)

スペインの画家ジョアン・ミロは、決まった日課を忠実に守りました。

6時に起きて、7時から絵を描き、12時から激しい運動をし、昼食をとるなどして、15時から20時までまた絵を描きました。コーヒーやたばこの分量まで厳密に決めていました。

このような日課を守ったのは、若いころのうつ病がぶり返すのを恐れていたためで、日課を乱す人づきあいやイベントを毛嫌いしました。(p78)

joan miro

ジョージア・オキーフ

アメリカの女性画家オキーフは、砂漠で孤独に暮らし、夜明けとともに起きていました。毎朝犬と一緒に、ベッドに座って太陽が上るのを見ました。

絵を描くことが何よりの楽しみで、そのほかの家事などは、絵を描くために必要だからやっていました。絵を描くときは、昼食をとる以外は一日中描き続けました。

夕食は早めにとり、夕方のドライブの時間をたっぷり取りました。(p266)

Georgia O'Keeffe

ジョゼフ・コーネル

アメリカの立体コラージュ作家、ジョゼフ・コーネルは、母親と障害のある弟と暮らしていて、夜、二人が眠っている間に作業しました。

やがて地下室を作り、昼も孤独な創作をするようになり、他の人とはまめな手紙のやり取りなどで交流していました。(p164)

Joseph Cornell

チャールズ・シュルツ

アメリカのマンガ家シュルツは、50年近く「ピーナッツ」の連載漫画をアシスタントなしで描きました。ピーナッツといえばスヌーピーです。

彼は一日に7時間、週に5日、規則正しく働きました。夜明けとともに起きて身支度し、子どもたちを起こして学校へ送り、その後アトリエに入ってアイデアを考えました。

規則正しい生活とマンガの創作は、生涯抱えていた不安症に対処する助けになりました。(p324)

Charles Monroe Schulz

チャック・クロース

アメリカの画家チャック・クロースは、一度に三時間以上働かないことにしています。理想は朝三時間、昼三時間働くことだといいます。それをオーバーすると翌日に支障が出ます。

絵を描くときは、テレビやラジオをつけっぱなしにして、ある程度気が散るほうが、不安にならず、客観的になれると述べています。

「インスピレーションが湧いたら描くというのはアマチュアの考えで、僕らプロはただ時間になったら仕事に取りかかるだけ」という信念を持っています。(p102)

Chuck Close

パブロ・ピカソ

スペインの画家パブロ・ピカソは、自由奔放な生活スタイルでした。

アトリエにはさまざまなガラクタを置いて、珍しいペットを多数飼っていました。

生涯を通じて宵っ張りの朝寝坊で、アトリエに入るのは午後2時で、日が暮れるまで描きました。キャンバスの前に3-4時間立って描き続けても、飽きることも疲れることもありませんでした。

飲み物はミネラルウォーターか牛乳だけ、食事はフィッシュ・ベジタリアンでした。気晴らしは好きでしたが、遊び呆けることは嫌いました。(p146)

Pablo Picasso

バルテュス

フランスの画家バルテュスは、12歳のときに初めて画集を出版し、80代まで毎日絵を描き続けました。

晩年はアルプスの豪邸に引きこもり、妻と使用人と猫に囲まれて貴族的な暮らしを送りました。

朝、太陽の光が絵を描くのにふさわしいか確認し、昼前にアトリエに向かうと、絵を描く前にお祈りをし、数時間瞑想しました。それだけで終わる日もありました。

タバコをくゆらしながら絵を描き、夕方になると邸宅に戻り、夫人とティータイムを楽しみ、夕食後は夫婦で大画面テレビを見ました。(p273)

Balthus

フィンセント・ファン・ゴッホ

オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホは、一日中休みなく仕事をしました。

本人によると、朝7時から夜6時まで、ぶっとおして絵を描いていて、その間動いたのは一歩か二歩歩いて食べ物を手にとった時だけでした。

半狂乱になって食べることも忘れて絵を描き、「毎日は、仕事、仕事で過ぎていく。夜はへとへとになってカフェへ行き、そのあとはさっさと寝る! 人生はそんなものだ」と語りました。(p264)

Vincent van Gogh

フランシス・ベーコン

アイルランドの画家、フランシス・ベーコンは、つねに夜明けとともに起き、5-6時間絵を描いて、正午くらいに終え、そのあと午後から夜まで自由に飲み騒ぎにふけりました。

しかしアトリエは恐ろしい散らかりようで汚れや染み、壊れた絵筆などをほったらかしにしていました。刺激的なものにはすぐに手を出す性格でした。

不眠症に悩まされていて、睡眠薬やお酒に頼りましたが、体はいたって健康で、「二日酔いのときに仕事をするのは好きだ。そういうときは頭にエネルギーが満ちて冴えわたる」と述べています。(p23)

Francis Bacon

ルイーズ・ブルジョワ

フランス系アメリカ人の女性彫刻家ルイーズ・ブルジョワは、不眠症に悩まされました。

眠れない時間を有効活用するため、ベッドの中で絵日記を取り出して絵を描くことを習慣にしていました。日記の絵や文字で、その日の調子がわかりました。(p213)

Louise Bourgeois

18人のクリエイティブな画家から学べること

いかがでしたか。これら18人の作家たちの習慣の中に、自分に似ているものはあったでしょうか。

18人ともそれぞれ個性的で、クリエイティブな人といっても多種多様だということがわかります。

しかし、幾つかの分類できるポイントがあったので、学べることをまとめてみましょう。

1.朝型か夜型か

まず、しばしば創作には朝が良いとか夜が良いとか言われますが、クリエイティブな作家たちは、朝型の人もいれば夜型の人もいました

朝型の中には、フランシス・ベーコンやチャールズ・シュルツ、N・C・ワイエスなどがいて、中には子どもたちの世話をするために早起きする人もいました。

夜型の中にはパブロ・ピカソやジャクソン・ポロック、ウィレム・デ・グーニングがおり、たいてい宵っ張りの朝寝坊でした。不眠症を抱えていた人もいます。

どちらかといえば朝型のほうが良いようには思いますが、夜型の作家たちは、生涯を通じて夜型だったとのことなので、結局のところ体質に合ったスタイルを選ぶのが一番なのかもしれません。

2.習慣か気まぐれか

習慣的に描くか、気まぐれに描くか、という点においては、ほとんど全員が、ある程度の習慣を持っています。

アンディ・ウォーホルやジョアン・ミロのように、きっちりした時間ごとの予定を守っている人もいれば、ジョージア・オキーフやバルテュスのように、比較的柔軟な予定を組んでいる人もいます。しかし、意識して絵を描く定期性を保っているのは皆同じです。

ジョアン・ミロやチャールズ・シュルツのように、うつ病や不安症などの精神疾患に対処するために、はっきりした日程を守っている人もいました。不安を感じやすいタイプの人は、しっかりと予定を組んでいたほうが安心するのでしょう。

3.どうやってアイデアを得るか

アイデアを得るためにそれぞれが実践していることはさまざまでした。アル・ハーシュフェルドは夢から着想を得ましたし、アンディー・ウォーホルは(あまり勧められない話ですが)友人との会話を録音していました。バルテュスは祈りと瞑想で描くものを考えました。

ゲルハルト・リヒターやチャック・クロースは、アイデアが湧くのを待つことなく、習慣的に仕事に取りかかったり、定期的にアトリエに入ったりすることで、自分からアイデアを見つける努力をしていました。

パブロ・ピカソや、アンリ・マティスは幅広い興味を持つことで、アイデアが自然に湧いてきたようです。

4.一日にどれくらい絵を描くか

仕事として絵を描いているわけなので、一日に絵を描く時間はある程度長い人が大半です。

しかし、午前午後3時間ずつのチャック・クロースや、2-3時間で絵を仕上げて日が暮れたらやめるN・C・ワイエスなどは、比較的短時間で集中して描き上げるタイプでした。

それとは対照的に、一日中半狂乱で絵を描いているフィンセント・ファン・ゴッホ、休みの日もなくひたすら描き続けていたアンリ・マティスなどひたすら描き続けても疲れない人もいました。

習慣や環境もその人ならではの「作品」

まとめると、

■朝型か夜型かは自分の体質や環境による
■絵を描くことは習慣にすべきだが、細かい予定を組むかどうかは性格による
■アイデアは自分から見つける努力をする
■絵を描く時間の長さは数時間から一日中まで人それぞれ

ということになりそうです。

有名な画家たちといっても、わたしたちとまったく異なる日常を送っているわけではなく、皆が皆、天才ならではの奇妙な習慣を持っているとか、異常に激しい訓練をしているとかいうわけでもありません。

これが正しいという成功法則はないので、さまざまな有名クリエイターの名言や仕事術に翻弄されるのではなく、自分に合った創作環境や習慣を作り上げていくことが大切だといえます。

このような考え方は、創造性の研究の専門家である、心理学者ミハイ・チクセントミハイの意見とも一致しています。彼は、大勢の創造的な人たちにインタビューした成果をまとめた本クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学の中でこう書いています。

ほとんどの創造的な人たちは、睡眠や食事、仕事のための最適なリズムを早い時期に見出し、他のことが魅力的に見えても、そのリズムを守っている。彼らは心地よい服を着て、心地よいと感じる人々とのみ交流を持ち、重要だと思うことだけを行う。

もちろん、そうした特異性は彼らとつきあう人々にとっては好ましいものではないし、創造的な人々が一般的に奇妙でつきあいづらいとみなされていたとしても、それは驚くには値しないであろう。

しかし、行動パターンを自分に合ったものにすることは、注意を注ぐことを要求する事物の予想から精神を解放し、重要なものへの強い集中を可能にしてくれる。(p164)

私たちの行動を構造化するための最善の方法など存在しない。

ここで重要なことは、私たちの行動を偶然や外部のルーティーンに自動的に決定させないことである。(p163)

つまるところ、一人ひとり必要なリズムは異なっているので、「偶然や外部のルーティーンに自動的に決定」させず、自分自身で「睡眠や食事、仕事のための最適なリズムを早い時期に見出し、他のことが魅力的に見えても、そのリズムを守」ることが大事だ、ということです。

ある意味で、芸術家にとって、創作のための習慣や環境も、その人の「作品」の一部だといえます。クリエイターは創作するとき、他の人の作品を参考にはしますが、そのまま真似をしたり模写したりはしません。オリジナリティや個性は大切です。

同様に、クリエイティブな習慣も、その人の個性が現れた「作品」の一部なのです。他の人の習慣を参考にするとはいえ、あくまでクリエイター自身が、自分の個性を発揮して、自分ならではの創作環境、創作スタイルを作り上げていく必要があるといえるでしょう。

この本天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々では、今回取り上げた画家たちについて、さらに詳しく書かれています。総勢161人ものクリエイティブな人たちの習慣は、淡々とした記述ながら、とても興味深いです。

わたしの場合は、本来は物書きなので、どちらかというと、画家より作家の習慣をまとめたほうがよかったのかもしれませんが(笑)、さまざまなクリエイティブな活動に携わっている人にとって発見のある楽しい一冊だと思います。

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