竜の背 The Spine of A Dragon


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「ハナ、竜を知ってるかい?」
ある日、男の子は女の子にそう尋ねました。

女の子の心に、過ぎ去った日々の記憶がよみがえります。
「わたし、読んだことあるわ、はるか高い崖の上に、雷を降らせる巨大な竜が住んでいるって」
それは女の子がまだ、お城の部屋に一人ぼっちだったころに、絵本で読んだ物語でした。

ずっとずっと一人っきりの毎日。たくさんの本に囲まれて過ごしていたあの頃。
絵本の中にはどきどきする冒険がいっぱい。
でも、外の世界には、本当にそんな冒険があるんだろうか…。
そんなことを思いながら、来る日も来る日も、塔の窓から、女の子は遠くの空を眺めていたのでした。

「そうだよ、ハナ」
男の子は自信に満ちあふれた笑顔で話し始めます。
「はるか高い崖の上、雷をまとった巨大な竜の背骨を登った先に、隠された宝が眠っているんだ」

そのとき女の子はハッと気づきました。

(そうだ、そうやって空を眺めていたとき、ソラが現れて、わたしを外の世界に連れ出してくれたんだ…。
今まで絵本でしか知らなかった世界、冒険に満ちた本物の世界へと)

「さあ、ハナ、どうだい? ぼくと一緒に、竜の背骨に挑んでみるかい?」

女の子は目を閉じて、男の子の言葉を噛み締めます。

(わたしは今、あのとき憧れていた場所にいるんだ。
ソラと一緒に…!)

そして元気よく答えました。

「もちろん、ソラ!
ぜひわたしを連れて行って! 雷の竜の冒険へ!」

空花物語の次なる冒険、巨大な古代竜の背骨を登って、隠された秘宝を探す旅の絵を描きました。

古代竜の背骨

久しぶりの空花物語の絵になりました。前回が7/13ですから、2ヶ月半ぶりですね。

忙しく余裕がない日が続いていましたが、今日はたまたま予定がなくなったので、久々に絵を描く時間が取れて、温めていた下書きを完成させることができました。

今回の「竜の背」は、もう一ヶ月くらい前からイメージは思い浮かんでいたものです。構図もほぼ下描きが終わっていましたが、まとまった時間がなかなかとれないでいました。

久しぶりの空花物語ということで、水彩ではなく厚塗り形式の絵をどうやって描くのか、すっかり描き方を忘れてしまっていました。竜の背骨のゴツゴツして重厚な雰囲気をどう出したものか、ひたすらレイヤーを重ねて何度も塗り重ねていくうちに、ようやくコツを思い出して完成にこぎ着けた感じです。

この前、朝露のラプソディを描いたときも、ブランクで絵の描き方を忘れてしまっていたと書きましたが、最近は絵を描く間隔が空くことが多いので、いざ描き始めるハードルが上がってしまっている気がします…。今月もやっとこれで2枚。時間を取り分けるのが難しいですね。

明るい虹色の絵が多かった去年に比べると、最近は暗い色合いのドラマチックな絵が多くなっています。空花物語カテゴリでファンタジーな絵を描くようになったせいもあるのでしょうが、ちょっとわたし自身が疲れていることもあるのかも…(笑)

もともとけっこう暗めの重い色合いの絵も好きなので、そのときの気分によってはついダークな絵を描くこともしばしば。でも前回の命の森の樹の下で  (ver.2016)のように、明るい絵も織り交ぜていくつもりなので、いつものメルヘンな絵が好きな方も懲りずにまた新作を見に来てくだされば嬉しいです(笑)

枠組みが違うと別のアイデアになる

この絵の竜の背骨、というアイデアは、いつものごとく寝ているときに降って湧いてきたイメージだったと思います。険しい山を登っているイメージが浮かんで、その山はなんだろう、とじっくり見てみると、ゴツゴツした骨のよう。そうか、山ではなくて、ものすごく巨大なカミナリ竜の骨の上を登っているのか、みたいな流れでした。

「骨」を描くというのは、これまでありそうでなかった題材でした。わたしの絵はこれまで明るいメルヘンが多かったので、死を思わせる「骨」という題材はあえて避けていたように思います。

でも、「骨」を描いてみたいという気持ちはずっと昔からあって、特に鯨骨生物群集(死んだクジラの周りに集まる生き物の生態系)をテーマにクジラの骨を使った深海の絵を描いてみたいなーと思っていました。でも、やっぱりそれをいつものゆめまな物語のほうで描くと、なんだか悲しげな絵になってしまうのでお蔵入りだったのです。

しかし最近になって、シリアスなファンタジーな絵は、空花物語のカテゴリで描くように分類したので、空花物語の世界観なら、「骨」を描いても違和感なく馴染むかな、と思って、古代竜の骨のアイデアを使うことにしました。

ゆめまな物語のほうなら、恐竜を描くと、きょうりゅうたちの楽園みたいな絵になりますが、空花物語で恐竜をテーマにすると、こんな絵になるということですね。

きょうりゅうたちの楽園 The Paradise of Dinosaurs
優しいきょうりゅうたちが住むところ

以前に、絵のアイデアを思いつきやすくするには、固定したオリジナルキャラクターという絵の枠組みを作るといい、ということを書きました。世界観と登場人物さえ決まっていれば、身の回りのいろんなものをその世界観と掛け算すれば、いくらでもアイデアが出てきます。

1年間絵をあきらめずに描き続けた感想(ⅰ)アイデア編
ほぼ毎日あきらめずに絵を描き続けて思ったことその1

そして、さらに絵の幅を広げるには、別のキャラクターを育てて、絵の枠組みを複数持てばいいのだと、今さらながら気づきました。

同じ題材をモチーフにしても、世界観という枠組みが違うだけで、ゆめまな物語と空花物語とでは、こんなにも雰囲気が変わるというのは、わたしとしても新鮮な発見でした。元々のそれぞれの世界観に明確な特徴があるから、同じものを掛け合わせても、味付けがまったく違ってくるんですね。

ところで、以前にも、今回の絵と似たような場面の絵は描いたことがあります。もう二年以上前ですが、絶対この手離さない…!が似ているのではないかと。

絶対この手離さない…!  I’ll Never Let Go of Your Hand!

さすがに二年以上経って、ソフトも変わっているので、パット見はだいぶ違いますが、雷雨が降り注いでいる崖の上であることや、男の子が女の子の手を取って助けているあたりは同じようなアイデアですね。でも今回は、よりファンタジーな空花物語の世界観なので、もっと重厚な絵にできたと思います。

これまではダークでシリアスな絵を描きたいと思ったとき、ふたりの時間カテゴリや、ゆめまな物語カテゴリに無理やり合わせていましたが、やっぱり突然いつもと違う絵柄になってしまうので、唐突な印象がぬぐえず、どうも合ってない、と思っていました。

その点、空花物語カテゴリは、そうした絵柄のアイデアを一手に引き受けることができる世界観なので、その意味でも、空花物語という新しい枠組みを育てることができて本当によかったなーと思います。冒険好きで、どんなに険しい旅でも楽しんでくれるソラとハナには、本当にお世話になっています(笑)

そんなわけで、これからも、ふたりの時間、ゆめまな物語、空花物語の3つのカテゴリでは、それぞれ雰囲気が全然異なる絵を描いていくと思いますが、どのカテゴリも大切に継続していって、幅広い絵柄を描いていけたらなーと思っています。

忙しくで余裕のない中でしたが、やっぱり絵を描けるとものすごく嬉しいですね! 今年も残り三ヶ月となりましたが、気分をリフレッシュする意味でも、頑張って絵を描く時間を作っていきたいと思います。