わたしが絵を描いてきて経験した5つの壁―あきらめず挫折を乗り越えた秘訣


わたしは絵を描き始めて(累計すると)10年近くになります。その間にいろいろな壁や挫折を経験してきました。ときには絵を描くのが嫌になったり、自分の絵にコンプレックスを持ったり、自分には絵の才能がない、と落ち込んだりしました。そうした悩みは、一度ならず繰り返し生じました。

しかし、今、それらの時期を振り返ってみて思うのは、わたしが直面した悩みや問題は、たぶん、わたしの独特の経験ではなく、きっと多くの絵描きさん、作家さん、イラストレーターが経験している、共通の通過点だったのではないか、ということです。悩んでいる最中は、「こんな風に感じるのはきっとわたしだけだ」と思うかもしれませんが、実は多くの人が多かれ少なかれ経験している同じ道なのかもしれません。

それで、絵描きとしてまだまだ経験も浅いわたしですが、初心者から始めて、これまでどのような悩みを抱き、どのような挫折を味わい、どのような経過で乗り越えてきたか、ということをまとめておくのは、将来の自分や、これから絵を描く人にとって意味があるのではないか、と思いました。

この記事では、わたしが経験した5つの壁を時系列順に取り上げ、それぞれどのような悩みがあったか、どのようにして乗り越えたか、ということを紹介したいと思います。

 

1.絵は苦手というコンプレックス

■どのような悩みがあったか

わたしは子どものころは、好きなように楽しく絵を描いていたそうです。アニメやマンガの絵、電車の絵など、いろいろなものを描いていたノートが残っています。好きなキャラクターができると、まず自分でも描いてみたい、と思う子どもだったようです。たとえばゼルダの伝説のリンクが好きで、説明書や攻略本の絵を模写していました。

ところが、小学校に上がると、絵を描くことが減ってきました。図工の授業は好きでしたし、それなりにのびのびと絵を描いていたと思いますが、絵を描くことが趣味といえるほどには描いていなかったと思います。それでも、「絵描き」という職業に憧れがあって、オリジナルの変身アイデアで画家の姿をしたカービィを描いたりしていました。

中学校になると、もっと絵から遠ざかります。絵は美術の時間に描くか、ひっそりと日記に描くか、といったところで、同級生のだれも、わたしが絵が好きだなんて思っていなかったと思います。もちろんわたし自身もそうは思っていませんでした。気づいたときには「自分は絵が下手だ」「絵は難しくて描けない」と思うようになっていました。そして本当に棒人間以外描けなくなっていました。

前の記事で取り上げたようにもともと90%の子どもが絵が好きなのに、大人になると70%の人は絵が嫌いだと言うようになります。わたしもご多分に漏れず同じレールの上に乗っていたようです。

■どのように乗り越えたか

わたしは「自分は絵が下手だ」と思っていたとはいえ、「絵が嫌いだ」とは思っていなかったようです。心のどこかに、子どものころと同じ「絵描き」へのあこがれがあって、今は下手だけれど、もしできることなら、絵を描けるようになりたい、という思いがあったのでしょう。

それで「新絵心教室」というソフトを買って、ときどき楽しむようになりました。絵を本格的に倣ったことのないわたしにとって、絵心教室のレッスンはとても新鮮で楽しめました。途中で中だるみもありましたが、2年くらいで、すべてのレッスンを終えました。

絵心教室によって「絵は苦手」というコンプレックスが消えたわけではありませんが、絵を描くことのハードルが下がったように思いました。正確な模写の仕方、影の付け方、遠近感の出し方、美術の歴史の知識。絵心教室で学んだことは、芸大生などに比べるとほんのわずかでしょうが、たとえほんのわずかであっても、実地訓練によって培われた知識と経験は、少し自信を与えてくれました。

絵が苦手というコンプレックスを克服する方法は人それぞれだと思います。中にはお絵かき初心者のSNSで作品を発表したり、地域の絵画教室に通ったりする人もいるでしょう。市の生涯学習の講座などもあるかもしれません。いずれも、絵を描くことのハードルを少し下げてくれます。

わたしにとって「新絵心教室」がよかったのは、一人で学べるという点でした。一人でやることは根気がいるので合わない人もいそうですが、わたしの場合はそれがかえって、モチベーションになりました。というのは、だれかの作品と比べる機会がなかったので、自分のつたない作品でも、うまく描けたな―と感じて、自信を持つことができたのです。

ずっと後になって、ネットで他の人の作例を見て、あまりにハイレベルなので唖然としました。わたしにとっては、最初、「井の中の蛙」状態だったのが、かえって良かったのだと思います。

乗り越える秘訣:絵を描くハードルを下げるため、絵画教室などの小さな一歩から始める

▼当時描いていた絵心教室の絵

新絵心教室の全レッスン卒業
3DS新絵心教室、入門・応用コースのメイン・サブ全レッスンを卒業しました。

2.描きたいのにアイデアが湧かない

■どのような悩みがあったか

「新絵心教室」を卒業して、絵を描くハードルが下がっていたところで、「絵心教室スケッチ」というソフトに出会いました。こちらはレッスンがなく、自由に絵を描いて、お絵かきコミュニティのSNSに投稿できるというものです。以前の「自分は絵が苦手」というコンプレックスを持っていた自分なら躊躇していたでしょうが、「新絵心教室」によってハードルが下がり、絵を描く楽しさを再認識していたので、なんとなく描いてみようという気になりました。

そこで、自由に絵を描き始めたのですが、この「自由に」という部分が曲者でした。これまで「新絵心教室」では、お手本や写真を見て模写する、というレッスンがほとんどでした。見本がないのに絵を描く、ということはわたしにはできませんでした。それで、自由に描くようになってからは、最初のころは「どうぶつの森」のキャラクターを模写して投稿していました。ネット上で模写したい画像を探して、それとにらめっこしながら描くのです。

しかし、「新絵心教室」のときは、もともと模写する写真が決められていたのに対し、自分で描くようになると、お手本となる写真や画像も自分で探さなければいけません。さらに、そもそも何を描くか、という絵の題材も、自分で決めなければなりません

そうすると、絵を描きたいという気持ちはすごく強いのに、何を描けばいいのか思いつかない、という矛盾した状態になりました。あまりに描くものが思いつかないので、自分のアイデアの貧困さに心底がっかりしました。

インターネットで調べると、「絵を仕事にするような人は、どんどんアイデアが湧いてきて描くものに困らない。描くものが思いつかないようなら、絵に向いていない」という意見を見かけました。わたしは、自分は絵に向いていないのだ、と感じました。

■どのように乗り越えたか

今だから言えることですが、絵を描くのが好きなのに、アイデアが湧かない、という現象は、その人が絵に向いていないということを示しているわけではありません。単に、絵を描くためのアイデアの練り方に慣れていないだけなのです。

確かに、アイデアがポンポン湧き出るかどうかには個人差があります。アイデアが湧き出るかどうかは、脳の構造にある程度依存しています。日経 サイエンス 2013年 06月号 天才脳の秘密によると、ひらめきや発想が豊かな人は、脳の潜在抑制というフィルター機能がもともとゆるく、いろいろな化学反応が起こりやすいそうです。その分、自己コントロールが苦手だったりします。

はっきり言って、もともと絵を描くことが好きな人の場合は、このような脳の構造をしている可能性が高いと思われます。絵が好きになった時点で、おそらく素質はあるのです。ただ、それをうまく使う方法を知らないだけです。

もともと発想に恵まれた頭の構造をしている人でも、何の努力もせずに自動的にアイデアが次々と出てくるかといえば、必ずしもそうではありません。スポーツの才能を持つ人が、何の練習も無しに開花するわけではないのと同様です。アイデア出しは一種の技術であり、訓練してコツを身につけたり、繰り返し鍛えたりすることで、伸ばすことができます。

たとえば世の中にはいろいろな発想法がありますが、自分の思考パターンに合う発想法を練習すれば、アイデアの量は飛躍的に増加するはずです。わたしの場合、役に立ったのは、次のような方法です

●枠組み
アイデアは、何もないところから生まれるのではなく、枠組みを決めることによって生まれやすくなります。世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方にはこうあります。

ビャルケによれば、客から「好きなようにやってください」と言われるのがいちばん困るという。物事には従うべき制限がなくてはならない。創造プロセスには、自由にやらせてもらうことと厳しく制限されること、その両方が必要なのだ。 (p244)

アイデアは何かしらのテーマや制限を設けることで生まれやすくなります。わたしの場合は、オリジナルのキャラクターを創りました。登場人物を固定して、絵を描くときに「ゆめまな物語」というテーマに沿って描くようにしたのです。そうすると、たとえばオーロラの絵を描きたい、海の絵を描きたい、雪の絵を描きたいと思った時に、それらを「ゆめまな物語」とかけ合わせるとどんな絵になるだろう、と考えられるようになり、発想が出やすくなりました。

アイデアとは、2つのものの組み合わせだとよく言われます。◯◯と△△をかけあわせた結果、新しいアイデアが生まれます。そして「枠組みを決める」というのは、その組み合わせの片方を決めるということでもあります。◯◯を決めてしまえば、(わたしの場合だと「ゆめまな物語」を◯◯に当てはめてしまえば)、あとは△△を探すだけなので、アイデア出しが楽になるのです。

●コラージュ
アイデアは必ずいちから作らなければならないわけではありません。むしろ、どんなアイデアも、すでにあるものから生まれてくるので、著作権の侵害にならない範囲で、他の人のアイデアを借用し、連想をふくらませることが役立ちます。

世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方にはこうありました。

「私はほかの作品を、インスピレーションの直接の源として利用する。ほかの作品を作り変えることもあれば、ほかの作品にお粗末な偽装を施して自分の作品に挿入することもある」(p128)

わたしの場合、最初のころは、好きな風景写真に、オリジナルのキャラクターを描き入れる、というコラージュの作風で絵を描いていました。絵のすべてを思いつかなくてもいいのです。ある部分は模写で、一部はオリジナル、という手段だってあります。コラージュを繰り返しているうちに、連想や発想の幅も広がり、よりオリジナルに近づいていきます。

●マインドマップ
わたしは「マインドマップ」というノート術が大好きです。これはイギリスの教育家トニー・ブザンが、歴史上のさまざまな有名人のノートを参考に作り上げたノート術です。マインドマップは、ちょうど木の枝のように、中心から放射状に描いていくのが特徴で、思考が次々につながったり枝分かれしたりする人に向いています。わたしはマインドマップに出会って以来、それ以外の方法でノートを取ることをやめてしまいました。それくらいスコーンとハマったのです。

マインドマップは言葉でかくこともできれば、絵を使ってかくこともできます。わたしは言葉のほうが合っているのですが、人によっては絵で連想したほうがいい人もいるでしょう。言葉や絵を次々に連想していくことで、思いがけないアイデアが生まれます。

このように、いろいろな方法でアイデアを出すようになった結果、わたしはアイデア出しにはあまり困らなくなりました。

乗り越える秘訣:アイデア出しの技術について学び、積極的に実践して慣れる

▼アイデアの出し方

ここで説明したものや、そのほかのアイデアの出し方については、以下のような記事を参考にしていただけたらと思います。

クリエイティブなデンマーク人が実践しているアイデアを見つける5つの方法
絵のアイデアが思いつかないときに役に立つ「しみづくり技法(ブロッティング)」
絵を描く喜びが感じられる「7対3のセミホームメイドの法則」
絵の初心者やオリジナルが描けない人に役立つ話

▼当時描いていたコラージュの絵 (この時期の絵の一覧はこちら)

▼このエントリを書くためにアイデア出ししたマインドマップ

基本ルールから逸脱して、ちょっと変則的ですが、細かい規則にはこだわらず、自分に合うように使っています。

2015年08月17日15時27分08秒

3.どうしても人と比べてしまう

■どのような悩みがあったか

絵のアイデアがいろいろ湧くようになり、絵を描きたいけど描けない、という問題は解消されました。そうして安定的に絵を描くようになると、こんどは今まで見えなかった他の人の絵に注意を向ける余裕が生まれました。

改めて周りを見回してみると、絵の得意な人は信じられないほど多いことに気づきます。非常に複雑で込み入った絵の描ける人、生まれ持った感性が違うと思うしかない魅力的な色使いができる人、写真のような精密で立体的な絵を描く人、質の高い絵をばんばん投稿する多作な人。世の中がいかに広いかを感じます。最近絵の世界に踏み入れたばかりの田舎者にとっては圧倒されるような光景です。

いろいろな人の絵を見ているうちに、どうしても感じてしまうのがねたみです。自分の絵と他人の絵を比べて落ち込んでしまうのです。「わたしは、一生かかったって、この人のような素敵な絵は描けないに違いない…」そう思って気落ちしてしまいます。

しかし、最も破壊的なねたみは、雲の上のレベルの人を見て、ため息をつくことではありません。むしろ人間は、自分と同じくらいのレベルだと思える人に対して、ねたみやライバル心を抱きやすいと言われています。一番危険なのは、自分よりわずかにレベルが下だと(あくまで自分の心の中で)感じられる人の絵が、自分の絵より評価されているのを見たときに感じる感情です。

「自分の絵のほうが手間もかかっているし、魅力もある、なのになんでこの人の絵のほうが評価されているんだ?」。そう感じる瞬間こそが、最も醜く、最も自分の心をすさませるのです。

正直に言うと、わたしもそのように思ってしまったことが一度ならずありました。自分のことを、なんてあさましいのだろう、と思いました。

■どのように乗り越えたか

他の人と比べる、というのは、自分の絵の持ち味や個性が確立されていない時期に起こる現象です。自分の強みがはっきりしていないからこそ、他の人と比べることで優越感にひたろうとしてしまうのです。

もし自分の持ち味をしっかり認識できるようになれば、自分の絵を他の人の絵と比べる必要を感じなくなります。自分の絵にも、他の人の絵にも良いところがある、と思えるようになります。どちらも方向性が違う魅力がある、ということを理解できるようになるのです。

それで、他の人の絵をねたんだり、自分の絵と比べて落ち込んでしまったりするようなら、自分の個性を伸ばしたり、自分の持ち味は何なのかよく研究したりすることが大切です。

学校で学んだ、偏差値教育を忘れましょう。偏差値教育のもとでは、あらゆる人は一直線上に並べられます。成績は、ただひとつの物差しで測られます。成績が良いか、悪いか、どちらかしかありません。

しかし人間の価値はそんな単純なものではありません。一人ひとりはもっと複雑で、さまざまな強みや弱みを持っていて、それが個性や魅力につながっています。あなたはきっと、自分の友だちを一直線上に並べて比較したりはしないでしょう。それぞれの人にまったく異なる魅力があると思っているはずです。

物理学者アルベルト・アインシュタインはこう述べたそうです

この世の誰もが天才である。しかし、魚には木登りの才能がないと評価していたら、魚はダメだと思い込むような一生を送ることになる。

自分と他の人を同じ物差しで比べるのは、魚は木登りができないからダメだ、と言っているようなものなのです。

絵も同じです。絵を比較して優劣を決めたり、どちらが上手いか競ったりすることは無意味です。それぞれの絵に、他とは比べられない個性や持ち味、強みといった魅力があるからです。自分の絵にもそのような唯一性があることに気づけば、他人と比べる必要はなくなります。

わたしの場合は、自分は、自分にしか描けないオリジナルの世界を表現しているのだ、ということをよく考えるようにしました。自分の描く世界に愛着を深め、その独自性をもっと伸ばすことにしました。個性を伸ばすことによって、自信が生まれ、他の人をうらやましく思うことはなくなりました。

乗り越える秘訣:自分の絵の個性・持ち味・強みを知り、それを伸ばす

▼他の人と比べないことに役立つアドバイス

自分の絵と他の人の絵を比較しないようにするために役立つ考え方についてはこちらをご覧ください。

絵を描くことを楽しみたいなら「上手い」という褒め言葉を捨てよう
絵を「上手い」と褒めると、絵が嫌いになる人が現れるという話

▼当時描いていた個性重視の絵 (この時期の絵の一覧はこちら)

4.周りの人の評価が気になる

■どのような悩みがあったか

自分の絵の個性を伸ばすようにして、他の人と比べることはなくなりましたが、それでも周りからの評価が気になりました。他の人と比べているときは、自分の絵より他の人の絵が評価されていることに敏感でしたが、それとは違った形で周りの評価が気になるようになりました。

たとえば、わたしは自分の持ち味を伸ばすために、より個性的な絵を描くようになりました。タッチも色使いも変えました。すると、以前に比べて、周りからの評価が芳しくないことに気づくようになりました。良かれと思って個性を伸ばしたのに、周りの人は、以前の絵のほうを高く評価していたのです。

特に、初期の模写の絵のほうが好まれることがよくありました。わたしはある時点から著作権に気を遣うようになって、模写の絵は描かなくなりました。このサイトにも、その当時の絵は載せないようにしました。しかしまだ当時の絵を掲載していた頃は、最新作そっちぬけで、古い模写の絵が褒められることがよくありました。そちらのほうが好き、とはっきり言う人もいました。なんだか「下手になった」と言われているみたいでがっかりしました。

また、お絵かきSNSに投稿しているころは、絵によって評価の点数やいいねの数が違うことが気になっていました。自信作なのに点数が低かったり、個性を重視した絵ほど人気がないことがよくありました。せっかく頑張って描いた絵なのに、適当に描いた絵のほうが評価されたりすると、なんだかやる気が失せました。

■どのように乗り越えたか

他の人の評価が気になるあまり、自由にのびのびと絵を描くことが難しくなったので、多くの人から絵を評価される環境を捨てることにしました。正確に言うと、絵を多くの人に見せることはやめませんが、絵の点数や評価が目に見える環境を捨てるようにしたのです。

たとえば、絵のSNSであるpixivをしばらく続けていましたが、そこに絵を載せるのはやめて退会しました。すべて点数で評価され、絵そのものの魅力ではなく、どれだけ評価の点数がつくか、どれだけブックマークされるか、ということのほうが大事になっていたからです。

実際、pixivでは、点数が低くてもすばらしい絵はたくさん見かけました。でも、点数が目につくばかりに、その絵の本当の魅力が薄れてしまっていると思いました。pixivでの評価からくる苦悩をつづっている人も多く見られ、これは、絵を通じてコミュニケーションする健全な環境ではありえない、と思うようになりました。

そのほか、フォロワーが1000人を超えていたSNSもやめました。不特定多数の人から見られるSNSに絵を流すと、やはり「いいね」「お気に入り」などの反応の数が、その絵の点数のようになってしまって、ラベル付けされてしまうと思ったからです。

その代わり、このサイトを立ち上げました。自分の絵を自由に見てもらえる自分専用のポートフォリオです。ここでは、わたしの絵がだれかと比べられたり、点数付けされたりすることはありません。本当に見たい人だけが楽しむことができます。

同時に、このサイトでは、この記事を含め、わたしの絵に対する向き合い方について書いた雑記も公開しています。絵の解説や雑記を読んでもらうことで、もしわたしの絵に興味のある人がいれば、文章を通して、もっと詳しく知ってもらうこともできます。このような深い関係の構築は、pixivなどのSNSでは不可能なことです。

ウェブサイトという形である以上、確かに訪問者数や、どの絵がどれくらい閲覧されたかというデータは調べることもできます。でも、他人のデータと比較することはできませんし、閲覧した人の感想も知ることができませんから、見る人の評価が気になるということはありません。

このように、他の人の評価が目に見える環境を捨てると、わたしは、自分の好きなように絵が描けるようになりました。「他の人に評価されたい」という動機からではなく、「絵が好きだ」「絵が描きたい」という純粋な動機から、絵を描けるようになったのです。

これは、たとえ多くの人に評価される商業ベースの絵を描く仕事についている人の場合でも同じだと思います。ベストセラー作家のエリザベス・M・ギルバートの創作の動機について取り上げたこちらの記事には、その秘訣がこう書かれています。

クリエイティブに携わる人間として勝利する方法は、称賛されることではなく仕事を愛せるようになること

乗り越える秘訣: 他の人に評価してもらいたいという動機ではなく、自分の意欲に促されて絵を描けるよう、環境を整える

▼過去の有名クリエイターの手本

ピカソやゴッホといった過去の有名な画家も、他の人からの評価ではなく、自分の純粋な意欲を動機として絵を描いていたとみなせる証拠があります。

ピカソもゴッホも上手く描こうと悩むより駄作を何百枚も描くことを選んだ
スランプを脱出するには駄作をたくさん描くことが近道になる

5.自分の理想との間にギャップがある

■どのような悩みがあったか

ここまでの経緯で、「絵が描きたい」という純粋な気持ちから、のびのびと絵を描けるようになりました。しかし、それで悩みがなくなったわけではありませんでした。最後の敵は、自分自身の心の中に潜んでいたのです。

わたしは、ずっと描きたいように絵を描いてきました。途中でいろいろ悩み、挫折しかけることがあったとはいえ、個性を伸ばし、自分らしい絵を目指してきました。ところが、ある時点から、自分の目指す絵と、自分の描ける絵との間に、大きなギャップがあることに気づき始めました。

たとえば、わたしは、アナログの透明水彩の絵が大好きです。透明水彩の味わいや質感を見ていると、とても幸せな気持ちになります。しかし、わたしが「絵心教室スケッチ」で描くデジタルの絵には、そんな質感はありませんでした。手書き風ではあるのですが、にじみやぼかしの美しさがありません。一時期色鉛筆ツールを使って水彩風に描こうとしていましたが、求めるものと、描けるものとのギャップに苦しみました。

また、わたしは深みのある色使いの絵が好きです。鮮やかで、夢を感じさせる色使いです。ところが「絵心教室スケッチ」で描く絵では、その色合いを表現できませんでした。パステルツールを使えばある程度は表現できますが、色鉛筆ツールの水彩風の表現との両立ができませんでした。色鉛筆ツールを水彩風にするためサッピツでぼかすと、色の鮮やかさも失われてしまうのです。

前項で、新しく描き始めた個性的な絵が、あまり周りの人に評価されず、古い絵ばかり評価された、という点について書きました。どうやらその理由の一つは、この質感のなさや、色使いの微妙さにあるようでした。絵を描けば描くほど、自分の理想と、描ける絵とのギャップが広がっていくようで、やるせない気持ちになっていました。

■どのように乗り越えたか

質感のある絵を描きたいのであれば、まず有力な選択肢となるのは、アナログで描くということです。しかしアナログ水彩は、色の配合が難しく、失敗のやり直しが効かないなど、非常に高度な画材です。慣れるには数年以上かかるでしょうし、かえって思うように描けないストレスが増すのではないかと思いました。

それで、アナログ風の表現ができるデジタルのツールを探しました。有名なSAIやIllustStudioは、あまりそうした表現には向いておらず、アニメ塗りやCGのような絵のほうが得意だとわかりました。アナログ風に描けるPC版絵心教室ともいえるArtrageも試しましたが、水彩の表現は今ひとつでした。Photoshopは、水彩風に変換することはできますが、最初から水彩風に描くことはできません。

最後に残った選択肢は、ペイントソフトの元祖にして最高峰…そのわりには使いにくくてあまり人気のない王者Painterです。わたしはPainterの体験版とペンタブを使って、いろいろ絵を描いてみました。PainterX3のときは慣れることができず一ヶ月の体験期間が終わってしまいましたが、Painter2015の体験版が出たときに再挑戦しました。そして確かな手応えを得、高価な買い物をすることに決めました。

今、わたしは、Painterで描ける絵にとても満足しています。アナログの透明水彩とはまた違いますが、質感や味わいは、まさにわたしが求めるものでした。やっと描きたい絵が描けるようになりました。

アナログを練習するのではなく、デジタルのPainterを選んだことは、わたしにとって正解でした。アンドゥやレイヤー、フィルター、特殊効果にはお世話になりっぱなしです。そういった便利な機能は、わたしの苦手なところを補ってくれています。

約1年Painterを使ううちに、さらに表現力は増してきました。自由度が高く、高度なツールなので、自分の成長に合わせて、より良い絵が描けるようになっていると感じています。

「絵心教室」のような機能の制限されたソフトは、確かに入門にはすばらしいツールです。多彩な機能に迷ったりせず、地道にスキルを磨けます。しかし自分の描きたいものがツールの限界を超えてしまったら、物惜しみせず、新しいツールに乗り換えることも必要なのです。

伸びしろのないツールを使っていると、ツールの限界に縛られて成長が妨げられることがあります。それに対し、高機能なツールは、すぐには使いこなせないかもしれませんが、いずれ自分が成長していくときに、最大限に能力を発揮できる伸びしろがあります。

要は、将来の自分のために投資することを惜しまない、ということです。ここではPainterを例として上げましたが、高価なアナログ画材とか、液晶タブレットとか、プロの絵画教室とか、いろいろと高価な選択肢はあります。

最初からそれらのものにお金を使ってしまうと、お金を無駄にする可能性もあるので、とても勧められません。しかし、すでに絵描きとして何年も経験を積んでいるなら、将来の可能性を伸ばすために、思い切って投資するのも必要なのです。そうすれば、自分の理想とする絵に近づくことができるでしょう。

乗り越える秘訣:限界を感じたら、思い切って、将来の自分のために投資する

▼わたしがPainterを使うようになった経緯

Painter使いに転向した経緯についてはこちらの記事に書いています。

わたしがPainter使いになった理由
Painter購入に踏み切った経緯など

▼今描いているPainterの絵 (この時期の絵の一覧はこちら)

最大の秘訣「絵が大好き」

ここまで、わたしが絵を描いてきて直面した5つの悩みを取り上げてきました。

挫折を乗り越える5つの秘訣
1.絵は苦手というコンプレックス

乗り越える秘訣:絵を描くハードルを下げるため、絵画教室などの小さな一歩から始める

2.描きたいのにアイデアが湧かない

乗り越える秘訣:アイデア出しの技術について学び、積極的に実践して慣れる

3.どうしても人と比べてしまう

乗り越える秘訣:自分の絵の個性・持ち味・強みを知り、それを伸ばす

4.周りの人の評価が気になる

乗り越える秘訣: 他の人に評価してもらいたいという動機ではなく、自分の意欲に促されて絵を描けるよう、環境を整える

5.自分の理想との間にギャップがある

乗り越える秘訣:限界を感じたら、思い切って、将来の自分のために投資する

どの悩みも、わたしにとって、大きな壁のようなもので、当座は「もう乗り越えられない」「絵を描くのはおしまいだ」と感じました。

何度も挫折しそうになりました。自分は絵が下手だ、自分には絵の才能がない、自分の絵には魅力がない、努力して描いたって無駄だ、そんな気持ちになったことは数知れません。

でも、そのたびに、目の前に高くそびえる壁は、行き止まりではない、ということを経験してきました。壁を迂回できることもあれば、よじ登ることができたこともありました。新たな道具を得て、壁を打ち崩すことさえできました。

どうして挫折しそうになっても、あきらめず、絵を描き続けることができたのでしょうか。

一言でいえば「絵が大好き」という心の中の炎が決して消えなかったからです。

「絵が大好き」なので、たとえ壁に直面したからといって、「絵を描くのをやめる」という選択肢はありませんでした。なんとかして活路を見出そうとして、いろいろ試したり、あがいたり、方法を変えたりしてみたのです。ちょうど結婚生活が上手くいかなくなっても、配偶者が大好きだという気持ちは失っていない人が、離婚という選択肢には見向きもせずに、いろいろと関係修復のための努力をするのと同様です。

これからも、絵を描き続ける中で、いろいろな悩みや挫折があるかもしれません。どんな問題が降りかかってくるかはわかりません。しかし、これまでのことを考えれば、きっとなんとかなる、と思えます。「絵が大好き」であり続ける限り、わたしはあきらめず、挫折を乗り越えて、絵を描き続けることでしょう。

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