クリエイティブに年齢は関係ない! 50代以降が本番だった8人の遅咲き芸術家たち


「今から始めてももう遅い…」

術をやりたくても、この年齢からでは無理、と思ったことがありますか?

一般に、有名なアーティストは早熟だと考えられています。モーツァルトやピカソのように、若いころから芸術を学び、驚くような速度で大成していった人たちは少なくありません。

しかし、成功した芸術家のすべてが、10代までに英才教育を受けたような人ばかりなのではありません。

むしろ、50代以降に初めてアーティストとして認められた人や、中には70代以降に初めて絵を描き始めた人だっているのです。

この記事では、芸術家の中でも特に画家に注目して、遅咲き・大器晩成のキャリアをもつ8人の作家を紹介したいと思います。

【じっくり絵心教室】レモン

伊藤若冲―50歳で大作を完成した江戸時代の画家

江戸時代中期に日本画家として活躍した伊藤若冲は、30歳ごろから絵を学び始めたといわれています。

しかし本格的に絵を描けるようになったのは、当時としては初老の40歳のときでした。店を弟に譲り、隠居生活を始めたのをきっかけに、伝統文化にこだわらず、新しい手法を進んで取り入れるユニークな画風を確立しました。

50歳ごろに完成させた30幅からなる「動植綵絵」は日本の花鳥画の歴史に残る大作として、伊藤若冲の名を世に知らしめました。その後、さまざまな不幸がありつつも、84歳の長寿を全うするまで、悠々と絵を描き続けたそうです。

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伊藤若冲

ポール・セザンヌ―初個展が56歳

ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)は、ポスト印象派の画家として有名ですが、10代のころは、父親の希望に沿って法学を学んでいました。

20歳ごろに画家になりたいという夢を持ち始め、絵の勉強を始めたのは、22歳でパリに留学してからでした。

その後、印象派の画家たちと交流しながら絵を描き続けましたが、ほとんど評価されず、ようやく個展を開けたのは56歳のときでした。

セザンヌは晩年の60代に評価を上げていき、彼の描いた独特な絵は、やがてピカソに影響を与え、キュビズムの台頭へとつながります。

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セザンヌ

アンリ・ルソー―50代からピカソの目に留まる

日曜画家として有名なアンリ・ルソー(Henri Julien Félix Rousseau)は、税関職員として働く傍ら40歳ごろに絵を描き始め、税関を退職した50代なってから、「戦争」「眠るジプシー女」などの主要な作品を世に送り出しました。

素朴派でありながら、キュビズムやシュルレアリスムとも似た独特な画風は次第に注目を集め、晩年は、パブロ・ピカソやポール・ゴーギャンといった一流の画家たちからも高く評価されました。

60代なかば、死の少し前のエピソードとして、ピカソらがルソーをたたえるために芸術家仲間と夜会「アンリ・ルソーの夕べ」を開いたことはよく知られています。

アンリ・ルソー-主要作品の解説と画像 はてなブックマーク - アンリ・ルソー-主要作品の解説と画像・壁紙-

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Rousseau

ジョージア・オキーフ―84歳で26歳の親友を見つける

ジョージア・オキーフ(Georgia O’Keeffe)は、風景、花、動物の骨をテーマに絵を描いた女性画家です。

作品が注目され始めたのは50代以降で、80歳を過ぎてから開かれたホイットニー美術館の展覧会で高く評価され、アメリカで最も重要な画家と言われるまでになりました。

84歳で26歳の陶芸家ファン・ハミルトンと出会い、2人で世界を旅し、98歳で亡くなるまで親友として一緒に語り合り、作品を創り続けました。

ジョージア・オキーフ – Wikipedia

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Georgia O'Keeffe

ルイーズ・ブルジョワ―72歳の個展でブレイク

六本木ヒルズにもある巨大な蜘蛛の彫像「ママン」で知られるルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)は、パリで生まれてアメリカに渡り、前衛彫刻家として活躍した女性です。

20代を過ぎてから美術に転向し、その後一貫して、少女時代に機能不全家庭で育ったことによる心の傷を癒やすための作品を創り続けました。

徐々に評価されるようになりましたが、72歳のとき、ニューヨーク近代美術館で開かれた個展により一躍有名になり、2010年に99歳で亡くなるまで、個性的な作品を創り続けました。

ルイーズ・ブルジョワ – 高松宮殿下記念世界文化賞 はてなブックマーク - ルイーズ・ブルジョワ - 高松宮殿下記念世界文化賞

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Louise Bourgeois

ビル・トレイラー―85歳から記憶を描く

アフリカ系アメリカ人の奴隷の子として生まれたビル・トレイラー(Bill Traylor)は、アウトサイダー・アーティストとして知られています。

奴隷解放運動によって自由になったもののホームレスとして暮らし、85歳ごろに、自分の記憶を形にするために絵を描き始め、その後3-4年間で1500もの作品を創りました。

80代後半に彼の絵はニューヨークにデビューし、博物館によって展示が組織されました。今では主流な芸術の枠にはまらないアウトサイダー・アートの古典的巨匠と評価されるまでになっています。

ビル・トレイラー展 アメリカン・フォークアート・ミュージアム|アメリカぷるぷるアート観光 Altruart in America はてなブックマーク - ビル・トレイラー展 アメリカン・フォークアート・ミュージアム|アメリカぷるぷるアート観光 Altruart in America

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Bill Traylor

アルフレッド・ウォリス―妻の死をきっかけに70歳から

イギリスで漁師として生活していたアルフレッド・ウォリス(Alfred Wallis)は、妻が亡くなったあと、その寂しさを癒やすために、70歳ごろから独学で絵を描き始めました。

その三年後、偶然ウォリスの家の前を通りかかった画家ベン・ニコルソンとクリストファー・ウッドが、ウォリスの絵に感激し、一躍有名になりました。

記憶や想像をもとに素朴なタッチで絵を描くウォリスは、イギリス最高の素朴派の一人とみなされ、他の画家たちがその画法を真似るまでになりました。

アルフレッド・ウォリス展│横須賀美術館 はてなブックマーク - 横須賀美術館

▼アルフレッド・ウォリスの絵 (クリックでGoogle画像検索)

Alfred Wallis

モーゼスおばあちゃん―78歳で絵を始めた

アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(Anna Mary Robertson Moses)は、素朴な風景画によって、グランマ・モーゼス(モーゼスおばあちゃん)として親しまれたアメリカの国民的画家です。

78歳で本格的に絵画を始め、80歳で個展を開き、101歳で亡くなるまで、アメリカの昔ながらの牧歌的な風景画を1500点以上も描きつづけました。

「モーゼスおばあちゃん」の活躍は国中の人々に勇気を与え、ドキュメンタリーや記念切手が制作され、大統領から表彰されるまでになりました。

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▼グランマ・モーゼスの絵 (クリックでGoogle画像検索)

  Grandma Moses 

いくつになってもクリエイティブな人生を

遅咲き・大器晩成の芸術家8人の物語はいかがでしたか?

きっと、自分もまだまだこれからだ、と思えたのではないでしょうか。

「クリエイティブ」の処方箋―行き詰まったときこそ効く発想のアイデア86という本にはこうあります。

起業家でも、シェフでも、教師でも、物書きでも、芸術家であっても言えることだが、最高の作品を生み出すのは、年輪と共にものの見方が広がり、洞察力が深まってからであることが多い。

創造性に関する限り、成熟は有利に働く。人生経験が豊かであるほど、引き出しも増えるのだ。

歳と共に、自分が何者で、限界はどこになるのか見えてくるのだ。創造性というのは、何か伝えたいことを獲得するということなのだから。(p101)

年齢を重ねるとともに、知識や経験が積み重なり、表現できることはどんどん増えていきます。

若いころから技巧を学んできた人たちは、確かに技術としては優れているかもしれませんが、芸術の本質は技術ではなく、何を伝えたいか、という内容です。

年をとってから成功した画家たちは、「素朴派」(ナイーブ・アート)とみなされることが少なくありません。これは、画家として正規に教育を受けていないものの、素朴な魅力と表現力に満ちあふれている人たちを指す言葉です。

そうした素朴で飾らない心のこもった絵を形作るのは、波瀾万丈の人生経験と、自分の内にある何かを伝えたいという燃えるような情熱なのです。

わたし自身、前に書いたとおり、身の回りのおばあちゃんたちから絵を描く上でたくさんの励みを得てきました。

最近のニュースでは、まさに今回の記事のように、74歳から大学で絵画を学び、現在82歳で作品展を開いておられる伊奈正彦さんという方のことが伝えられていました。

愛知)画家の夢、82歳真っすぐに:朝日新聞デジタル はてなブックマーク - 愛知)画家の夢、82歳真っすぐに:朝日新聞デジタル

誕生会に招待された聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さん(104)から、「70歳そこそこで人生を達観したかのように思ってはいけない。さらにこれから20年間の計画をつくりなさい」と言われて一念発起した。

京都造形芸術大の通信教育部洋画コースに入学。基礎から学び直し、6年かけて大学を卒業した。大学院にも進み、今年3月に修了した。

クリエイティブに年齢は関係なく、歳をとっても創作意欲は衰えるとは限らない、ということは、大正5年生まれ、6歳から絵を描き始め、100歳を越えてなお現役の洋画家 入江一子さんのエピソードが生ける証拠となっています。

100歳画家 充実の100点 : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

創作意欲は年齢を重ねても衰えず、90歳を超えてからもニューヨークで個展を開催するなど、100歳となった今でも毎日絵を描き続けている。記念展は集大成としての位置づけで、20歳代から昨年制作した作品まで約100点がそろっている。

創作意欲は年齢を重ねても衰えず、90歳を超えてからもニューヨークで個展を開催するなど、100歳となった今でも毎日絵を描き続けている。

入江一子さんはアジア諸国30ヶ国以上をまわって絵を描いてきたそうですが、それにチャレンジしたのが50代から80代の時期というのも驚きです。

また、ピカソやモネといった有名な画家たちの研究によると、晩年になっても絵のスキルが進歩しつづけていたことがわかっているようです。

巨匠の筆遣いに神経疾患の兆候、早期診断の一助に 研究 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

比較対象として、これらの疾患がなかったとされるマルク・シャガール(Marc Chagall)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、クロード・モネ(Claude Monet)の作品も加え、絵画の真贋(しんがん)鑑定でのパターン分析に使用されるフラクタル解析を用いて作品の相対的複雑性を計測した。

…シャガール、モネ、ピカソでは、老年期に入ってからも複雑性が高まっていた。

こうしたエピソードを読むと、芸術をはじめるのは何歳になっても遅くはなく、必要なのは絵を描きたいという子どものような情熱だけなのだ、と感じます。

最後に、この言葉で締めくくりましょう。あの早熟な天才画家として知られるピカソでさえ、晩年にこう語ったとされています。

“It takes a very long time to become young.”

若くなるには時間がかかるものだ

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