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2020/07/01水
謎のツル植物の葉はツルニンジンとツルリンドウ
今日は朝からオンラインミーティングのための資料を準備していて忙しかったです。でも途中で1時間ほど暇を作って、森歩き。
湿地帯のほうの森の遊歩道に、今年はじめて自治体の草刈りが入ったので、様子を見に行きました。うっそうとした密林ではなくなってちょっとがっかりしましたが、あれ以上繁茂したら入れなくなるから仕方ない。
欲を言えば、在来種と外来種を区別して草刈りするとか、笹やぶを切り開いてくれるとか、生態系に配慮した手入れがされるといいんですが、低予算の小さな自治体に望むべくもない。
久しぶりに地面付近の草がよく見えるようになったからか、謎の葉っぱがたくさん目につきました。でも葉っぱの見分けが苦手なので、花のない時期に名前を推理するのはなかなか難しい。
まず、4枚の葉っぱが十字対生ぎみに出ているこのツル植物。ツル植物なんてそんなに種類が多いわけではないので、きっと知っているはず…。
葉っぱだけではGoogle Lensでもわかりませんでしたが、「葉っぱが4枚、ツル植物」と調べると、すぐに正体が判明しました。ツルニンジンです。
葉っぱは3枚から4枚の偽輪生(輪状に見えるけれど、実は付け根が少しずれている)らしいので、十字対生ではなかったですね。だけど、4枚がほぼ十字に出るツル植物と覚えればわかりやすそう。
ツルニンジン(爺ソブ)に対して、小型のヒメツルニンジン(婆ソブ)というのがありますが、そこまで詳しい区別はまだできません。ネットで調べたら、種を見ない限り確実な区別が難しく、変種も多いらしい。
ツルニンジンは、去年の9月に花を見ましたし、冬にスノーシューで森の中を歩いている時に実を見ました。夏も終わりごろに咲くので、今の時期には葉っぱだけしかありませんね。今年も花を見るのが楽しみ。
もうひとつ、こちらも謎のツル植物。しかし葉っぱが三行脈で非常に特徴的なので調べたらわかるはず。というわけで、すぐ判明しました。去年見た記憶のあるツルリンドウです。
去年ツルリンドウを見たのはもう一つの別の森の遊歩道で、今年は同じ場所に見つからなかったので、花が見れないかもしれないと思っていました。去年は実をつけてから見つけたので、ぜひ花のうちに見たい植物の一つでした。
こちらも花をつける時期はツルニンジンとほぼ同じで夏の終わりごろから秋にかけて。花や実がない時期に見分けられるようになると、葉っぱを覚える機会になるのでいいですね。
ギョウジャニンニクの花が見つからない
こういったニューフェイスの植物が目立ってくる中、今日湿地帯の森に出かけたのは、ギョウジャニンニクの花をなんとか見つけたいからでした。もう花期としては終わりごろなので、咲いていればすぐわかるはず。
春先に、この森の中の4箇所でギョウジャニンニクの群生を見ました。そのうち、遊歩道沿いは1箇所のみで、花はありませんでした。他の3箇所は笹やぶの奥で、先日その一つを意を決して見に行きましたが、花はおろか、葉も見分けられませんでした。
今日は、絶対花を見ようと決意していたので、それら3箇所の一番奥、かなり藪こぎしないといけない地点まで行ってみました。ダニまみれになるのも覚悟の上です。
ところが…
大きく成長したギョウジャニンニクの葉は確かにたくさん見かけたのですが、花は一つも見つけられませんでした。ギョウジャニンニクはある程度の年齢になってやっと花を咲かせるので、若い個体ばかりの群落なのでしょうか…。
渓流が流れるやぶの中をしばらく探索してみましたが、いくら森に慣れてきたといえ、もともと汚れるのが嫌いなわたしにとってはストレスが強すぎます。
手袋をはめているのに、メッシュ部分からブユに刺されて、痛みが走りました。すぐに手袋を外して、毒を吸い出したおかげなのか腫れませんでしたが、油断大敵です。スズメバチでなくてよかった。
(追記 : 後日、手袋の背にヨモギの葉を揉んで挟んでおくと虫に刺されないことがわかり、常用しています。ヨモギはどこにでも生えているので現地調達です。)
ここでギョウジャニンニクの花が見れないとなると、ほかに知っている候補地は滝のある近辺の川沿いか、友人所有の山くらいしか思い当たりません。
去年の写真フォルダをあさっていたら、滝の近くを遡上しているときに川岸にギョウジャニンニクの花を幾つも見つけていました。あの場所なら間違いないでしょうが、去年はガイドさんに案内してもらった場所。思いっきりヒグマの行動圏内なので、たった1人でいくのははばかられます。
残念ながら、今年はギョウジャニンニクの花は見れずじまいになりそう。この機会に去年の写真フォルダを整理してみるのもいいかもしれません。今なら名前がわかるようになっている植物がたくさんありそうでした。
ほかに見つけたもの。色と形でクルマバツクバネソウの花かと思って近寄ったら、葉がしおれたクルマバソウだった件。
今の時期にも、たまにクルマバツクバネソウが咲いているのを見かけます。ツクバネソウの実を見たいのですが、8月以降でしょうか。
謎のキノコ。ネットに頼って調べた限りでは、たぶんイヌセンボンタケか?こういう時に少しでも調べて覚えられるよう、キノコ図鑑を買うべきか否か…。
前から気になっていた湿地帯のギザギザの葉っぱは、やはりウマノミツバだったようです。
つぼみのころは花茎が伸びていないので、ネット上の写真と同じものか困惑していましたが、花茎が伸びてしまうとそれっぽいですね。とても地味ですが、これで咲いているみたいです。咲き終わると引っ付き虫になるらしい。
2020/07/02木
マユミとフサスグリが実をつけ始めていた
雨が少しやんだ昼ごろ、近畿の友だちとビデオ通話で話しながら、家の裏のイタドリ林に潜入してみました。家でじっとしながらしゃべるのって苦手なので。
春にここでそこそこ大きなナニワズを見たので、きっと夏には葉を落として赤い実をつけているんだろうな、と思うのですが、巨大なイタドリの林になっていて場所がわかりません。
意を決してフル装備で探索してみましたが、見つかりませんでした…。来年はイタドリ林になる前に、もっと具体的な位置を記憶しておくべき。
その代わり見つけたのは、マユミらしき低木の実。花は前に確認したのでマユミかコマユミですが、この実の形状からするとマユミでしょうか? 色がついてきたら確実に区別できますが。
もう一つはフサスグリ(カランツ)っぽ い実。どうしてこんなところにフサスグリが…?
こんなイタドリ林の中に誰かが植えたとも思えないので、どこかの庭から飛ばされてきたものかもしれません。秋に実をいただくのもいいかもしれませんが、これくらいだと少量すぎるか。
【気になったニュース】
安保理が世界停戦決議 新型コロナ対策で90日間 米中対立、採択に3カ月 – 毎日新聞
どこでも報道されているけれど、とりあえずタイトルに内容が全部詰まっている毎日新聞のを。今さらな気もしますが、ようやく動いたことに変わりはありません。どの程度世界が答え応じるのでしょうか。ただの形骸化した決議か、それとも今後の展開への布石か。見守るしかないですね。
2020/07/03金
またヒグマ見た…のに写真なくて溜め息。エゾクロテンは撮れた
またヒグマを見てしまいました。今回はかなり大きめの成獣。今回は一緒に車に乗っていた同乗者と二人で目撃。相変わらずドライブレコーダーは壊れたままなので証拠写真は無し。
松山湿原の林道を走っていたとき、仁宇布の冷水への分岐路のほんの少し手前のカーブで、巨大な焦げ茶色のヒグマが道路にいました。前回家の近所で見たヒグマと同様、こちらの姿を確認すると一目散に逃げていきました。
カーブの向こう側の分岐路へ逃げていったのでゆっくり車で進みましたが、分岐路をどちらに逃げたのか、あるいは道路脇の森に入っていったのかはわかりませんでした。ここらへんってネマガリダケを採る場所なのに、あんな巨大なクマが出るのか…。
本当に一瞬で逃げたので、ドライブレコーダー以外での写真はまったく期待できない状況でしたが…、肝心のドライブレコーダーは全く役に立たず。こんな悔しい経験を一週間で二度も繰り返すとはもう意味不明すぎて気力もありません。
ここ道北の地元の人でさえ、ヒグマを見たことがある人は少ない。なのに、引っ越してきて2年目のわたしが2度も見るなんて、それも一週間で2回とか常軌を逸している。しかも車の中だから安全。しかし2回とも写真も動画も撮れず。いったい運がいいのか悪いのか。
今回は同乗者がいたので、自分一人だけが見たわけではない、というのがせめてもの慰めでした。同乗者はヒグマを見るのが初めてだったので、心底びっくりしていて、怖い半分、可愛い半分で衝撃的だったようです。
そのあと、松山湿原のふもとで、去年ガイドしてくださった方にお会いしました。その人に話したら、あの場所付近ではたびたび大きなクマが目撃されていて、縄張りらしいとのこと。
今日はそれ以外にも、なんと、キツネ4匹(しかもそのうち2匹はそれぞれ鳥とヘビを捕食していた)、道路を横切ったタヌキ2匹、エゾクロテン1匹を目撃しました。いったい今日は何の日?動物たちの集会でもあるの?
長雨が続いた後の久々の晴天だったからか、満月だからか、それとも他の何かの理由か偶然か。
このうち、しばらくこちらを凝視して立ち止まっていたエゾクロテンだけは写真と動画に撮れました。エゾクロテンも初めて目撃したので、写真に残せてよかった。そんなことを言うと、いよいよクマが口惜しいのですが…。
それにしても、一つ思ったのは、こんなことでがっかりしている自分ってどうなのだろうってこと。わたしは写真を撮りたくて自然観察しているのか? わたしにとって大事なのは記録なのか? それとも経験なのか?
写真や動画に残していたかった、と思うのは、現代のインターネットおよびSNS時代に毒されている傾向じゃないだろうか。つまり、人と共有して体験を自慢したい、という自己満足の表れなのではないか。
もし記録より経験を重視するのであれば、自分が経験して、それが脳裏に刻まれていれば、それでいいのでは? 確かに記憶は改ざんされ、虚偽記憶へと変わってしまう。だから証拠写真があったほうがいいのかもしれない。
だけど、経験したという事実は変わらない。他の人と経験を共有できるか否かに関わらず、その経験そのものはわたしの中に残り続ける。胆振地震の次の日の夜、ブラックアウトの中で見た星空が、写真にはまったく残っていないけれど、大切な思い出として心に残っているように。
人と共有して認められたい、自慢したい、というような現代特有の欲望のせいで一喜一憂するのは情けないことに思える。
いつも写真を撮っているのはおもに、後から名前を調べて鳥や植物の名前を記憶するためである。それはよい。一度名前を覚えた植物は写真に撮らずに目で楽しむこともままある。
だとしたら、今回見たのは明らかにヒグマだったのだから、その事実だけでいいんじゃないだろうか。
一方、見た時は種類を判別できなかったイタチのほうは、ちゃんと写真に撮れていたおかげで、帰ってきてから調べてエゾクロテンだとわかった。写真の役割は、これでいいように思う。自慢するためではなく、ただ自分が「知る」ために。
名前がわかればそれでいいのか? 植物マニアになりたいわけではない
上の話に関連してだけれど、わたしは植物マニアとか写真家になりたくて自然観察しているわけではない。
たとえば、ネイチャーガイドの中には、道ばたの植物を指差して、全部名前を言える人がいるかもしれない。でもそうなりたいわけじゃない。植物園のガイドがしたいわけではない。
名前を知るだけでは何の意味もない、という話は、昔にレイチェル・カーソンやロビン・ウォール・キマラーの本から引用して詳しく書いた。だからここで繰り返すつもりはない。
名前を覚えて区別できるようになることは大事だし、写真を撮って細部を観察することも大事。でもそれが目標になってしまったらダメなのだ。物知り博士や写真コレクターになることが目的ではない。
自然界の中を歩くことで顔見知りになること、その植物や動物が、人間の暮らしとどのように関わってきたかを知ること、アイヌがそうだったように、どうやって日常生活の中で利用できるかを知って実践すること。そうやって初めて、知識は経験になる。
松山湿原のてっぺんで高山植物を観察しているときの、あのなんとも言えないつまらなさ、居心地の悪さはきっとここにあるのだ。
まず高山植物は、これまで人間の生活とほとんど関わりを持ってこなかった。だから、基本的にいって、ただ花を愛でて観察するだけになってしまう。それが普段の生活にどう役立つか、という観点が存在しない。
次に、松山湿原のような自然保護地域は、人が自然に手を加えることは許されない。エゾゴゼンタチバナの実やツルコケモモの実を味わってみたいと思っても、採ることはできないのだ。ただ目で見て鑑賞する美術品のようなものである。
これらは北海道のアイヌの間では食用にされた話を聞かないから、昔からあまり身近になかったのだと思う。しかし、樺太アイヌは利用していたらしいから、樺太だともっと低地の身の回りにあったんだろうか。北欧のムーミンの世界観ではもっとコケモモが身近なのと同じように。
わたしは植物園に行きたいわけじゃない。美術館をめぐりたいわけでもない。観光地に興味はない。アイヌやネイティブアメリカンのころのように、自然界と共生して日々を暮らしたいのだ。
北海道が悪いわけではないけれど、どうもこういう生活をするにはあまり向いていないと思わざるをえない。クルマバソウやエゾマツのシロップも、海外のレシピ頼みで作ったわけだし、なぜか日本は自然との共生が実践しにくい。現代に生き残っているアイヌがサケ漁を禁止されている話を思い出す。
北欧とかスイスの片田舎に住めば違うんだろうか…。でも言語もできず、海外に伝手もないわたしには到底夢物語にすぎない。
今住んでいるところは、幸いにも、日本国内の中ではそんな暮らしができるほうだ。ガチガチに環境保護された森林公園があるわけではなく、自由に近所で山菜摘みのできる森がある。
近所に住む人が、森に入ってコクワやヤマブドウの実を見つけてジャムにした話を知っている。かろうじて、そんな生活ができる余地が残っているのが、今住んでいる場所である。
理想どおりとまでは行かないが、今はこれで満足するしかない。だけど、悲しい。
身の回りの人のほとんどが、流通している加工食品ばかりに頼り切り、山や森をなんとも思っていないことが。自然と共生できる環境がありながら、商業主義の文明に浸りきって、昔から伝わる自然を利用するための知恵に何の敬意も関心も払っていないことが。
まさに植物と叡智の守り人 の中で書かれていたこの言葉のとおりなのである。
母は科学者という仕事が大好きだったが、生まれてくるのが遅すぎた、ともしょっちゅう言っていた。
本当は19世紀の農家の主婦というのが天職だったに違いないと言うのだ。
トマトを瓶詰めにしたり、桃を煮たり、パン生地のガス抜きをしたりしながら母は歌を歌い、そういうことを私にも是が非でも覚えさせようとした。(p101)
絶対にこういう生活が楽しいし、ほかに何もいらないとわたしは思う。
念願のベニバナイチヤクソウとギョウジャニンニクの花を見つけた!
今日はふもとの森の中で見かけたイチヤクソウやギョウジャニンニクの花のほうがよほど印象に残ったし、嬉しかった。それらがアイヌ時代から利用されていたというストーリーをよく知っているからだと思う。
ふもとで見つけたベニバナイチヤクソウ。うちの近所の森で一回だけつぼみを見ましたが、場所がわからなくなってしまったので、改めて見れて、すごく嬉しかった!
この植物ひとつで万病に効くのでイチヤクソウと呼ばれるようになったという説があるらしい。乾燥させたものが、漢方では鹿蹄草と呼ばれ、さまざまな薬効が確認されているそうです。
お茶代わりに飲むと、月経が順調になるなどの効果があるという。家の近くで群生地を見つけたら、和ハーブティーとして味わってみたいのですが、今のところ発見できていません。
そして、今年もなんとか見れたギョウジャニンニクの花。すでに実になりかかっていますが、2本一緒に生えていました。
畑で栽培している人にとってはそんなに珍しくもないのかもしませんが、野生のはそこそこ山奥でないと見つかりません。せっかくだから種も接写してみた。
去年、ガイドさんの案内でウェダーを着て渓流を遡上していたときには、ヒグマがいつ出ても不思議ではない山奥だったせいか、岸辺にギョウジャニンニクが普通に花を咲かせていました。今になって、そのときの写真を発掘してみる。
こちらの写真には、どれもつぼみですが、3本も写っていますね。
こういうところまた歩きたいなぁ。よく整備された観光地よりも、原始河川のような、人の手がまったく入っていないところに行きたい。多くの人が遊びに行くところではなく、自分独りだけの秘密のスポットを探検したい。
それこそ徒歩でヒグマとはちあわせる危険があるので、おいそれと行けないのが残念。
目立たないけど美しいハナヒリノキの花
黄緑色だったので、サラシナショウマとかみたいな穂状に咲く花のつぼみかと思ったこの植物。
けれど、一応手がかりになるかもしれないからと思って接写してみたら咲いてた! しかもこの鈴みたいな形はドウダンツツジとかコヨウラクツツジの仲間。
下から覗き込むと、明らかに咲いていることがわかります。蜜が出るのか、アリたちがたくさん集まっていました。黄緑色でしかもうつむいて咲くなんて、まるで隠花植物みたいな奥ゆかしい花で気に入りました。
後で調べたら、ツツジの仲間のハナヒリノキという低木だと判明。
なんとも不思議な名前ですが、全草に毒を含んでいて、昔は粉末がうじ取りに使われていて、それを誤って吸い込むとくしゃみ(鼻ひり)が止まらなくなってしまったことに由来するらしい。
植物にユニークで区別しやすい名前をつけるのはとてもいいと思うし、見た目ではなく性質に基づいていればなおのことしっくりくるものですが…、くしゃみの木とはまたすごいネーミングですね。
モミジカラマツの花火みたいな花
滝の近くで見つけたモミジバカラマツ。去年ダイモンジソウを見つけたあたりに群生していて、渓流の岩肌にもたくさん咲いていました。ダイモンジソウはまだ時期ではなく葉っぱだけでした。
カラマツソウの親戚で、葉っぱがモミジみたいな形をしている、ということだけしか知りませんでしたが、本家カラマツソウより花(雄しべ)がいかつい気もします。wikiによると「花糸は先ほど太くなる」とのことだからそのせいか。
夏の夜に一斉に上がる花火のよう。6月のカラマツソウが咲き終わったころから、時期をずらして7月に第二弾のモミジカラマツが咲くのも花火大会っぽくていいですね。
この植物、ずっと「モミジ「バ」カラマツ」という名で覚えていたんですが、今調べたら、正式名称はモミジカラマツなんですね。葉がモミジみたいだから「バ」が入っているほうがモミジバスズカケノキとかトネリコバノカエデみたいでわかりやすいのですが…。
しかも、「モミジカラマツ「ソウ」」ではないというね。キンバイソウとキンバイ、シモツケソウとシモツケは違うとか、色々ややこしいというのに。植物の名前って適当だなぁと改めて思います。
ヤマドリゼンマイとイワガネゼンマイ
湿原につくと、オレンジ色の胞子葉がとても目立つシダがたくさんありました。
胞子葉といえば、クサソテツとかイヌガンソクだけど、胞子葉の形が違う。高層湿原に群生するような種類っていったいなんだろう。
後で調べたらヤマドリゼンマイという名前だと判明。山地の湿原に生えるシダらしいので説明どおりですね。
ヤマドリとは、山で採れるゼンマイ…の意味ではなく、北海道にはいない日本固有種のキジの仲間ヤマドリのこと。ヤマドリが棲むような山地に生えているゼンマイだからとか、胞子葉がヤマドリの色に似ているからとか言われる。
「ゼンマイ」と名がつき、若芽はゼンマイと同じように干して食べることができるらしいですが、成長した葉っぱはゼンマイとかなり違います。
ゼンマイというよりオシダっぽい葉っぱなので、胞子葉がなければ見分けるのが難しそう。ゼンマイと似て、茎についている赤いものが鱗片ではなく、こすると落ちるのただの毛であることが判別ポイントの一つか。
同じシダでも、葉っぱに胞子嚢(ソーラス)をつけるオーソドックスなものもあれば、まったく独立した胞子葉を別に出すものもあり、ソーラスや胞子嚢の形は種類ごとに違う、というのがわかってからは面白いです。
一方こちらは、あちこちで見かけた一見普通の植物のような葉っぱ。だけど、シダ図鑑をパラパラ眺めていたときに、これに似たシダがあった記憶があったので、たぶんシダ植物じゃないかと写真を撮りました。
帰って調べてみたらやはり! イワガネゼンマイというシダでした。ゼンマイと名がついているものの、無印ゼンマイや上のヤマドリゼンマイとは関係がないようです。
無印ゼンマイとは葉っぱの形がちょっと似ている気もしますが、無印ゼンマイと違って、羽片に葉柄があるせいで、なおさら普通の植物の葉っぱみたいに見える。もっと大きくなれば、葉っぱがぴろーんと伸びて波打つので、少しシダっぽさが出ます。
このイワガネゼンマイが面白いのは葉っぱが開く前の姿。先月に撮ってずっと謎だった下の写真。今思えばイワガネゼンマイの芽が開いていく瞬間だったようです。
ちょっとピンぼけですがくさび形の鋭いツヤツヤした葉が、舞い踊るように茎をくねらせながら開いていくさまは、名前を知らなくても目を引きました。
イワガネゼンマイは、とてもよく似ているイワガネソウとか、ウラゲイワガネとかもありますが、同じ種の中のささいな変化なので、そこまで区別する気は今のところありません。
それにしても、シダに関心を持つ前は、全部同じように見えていましたが、少しずつ見分けられるようになって、親しみがわいてきました。太古の時代を連想させるどことなくロマンチックなシダ。もっと詳しくなりたいものです。
そのほか見つけた花など
オガラバナの穂があちこちで満開。前回も咲いていると思っていたけれど、さらに目立つようになりました。
オオカメノキの実。
サンカヨウの実。
コヨウラクツツジの実?
ヤマハンノキの実。葉っぱに毛がなかったから多分ヤマハンノキ。
何かわからないもの。葉っぱの付き方をちゃんと確認してなかったのが悔やまれるけれど、2回3出複葉ぽい? サラシナショウマのつぼみ? いったい何だろう?
シワシワした葉っぱが特徴的なのだが…。わたしが知らないので言えば、ヨウシュヤマゴボウはハナワラビは?と調べてみたけれど、葉っぱが全然違うか。
(7/20追記 : 再度観察した感じでは、サラシナショウマの可能性が高そう)
オオバタケシマランの花。こんなに赤かったっけ?
赤い縞模様の入る種類がある? それかトチノキみたいに色が変わる?
アカミノエンレイソウ。
カタツムリがちょこんと挟まっていました。
そして、女神の滝の様子。暑い日だったけれど、滝周辺はとても涼しくて、時間さえ許すなら、ずっととどまりたいほど爽やかな空間でした。
高層湿原の花
ツマトリソウの花。前回は花びらが欠けていたけれど、今回は花びらはそろっているけれど雄しべが欠けている…。
ホロムイイチゴの花。アブラナ科かと思いました。ホロムイの由来は、岩見沢市近郊の幌向で発見されたことから。「ホロムイ」そのものの意味は大きな入り江らしい。しかしそんな和名よりもクラウドベリーとして有名。IKEAでジャムにもなっている。
エゾイソツツジの花。イソツツジという名前なのに磯ではなく高山に生える。どういうことかというと、もともとエゾツツジの名だったのがイソツツジに転化し、さらに先頭にエゾがついてしまったらしい…。実質エゾエゾツツジ。混乱しすぎだろ…。
コバノトンボソウというランの仲間。花は地味でクモキリソウみたいな雰囲気がありますね。…ではなく、よく似たホソバノキソチドリみたいです。
コバノトンボソウとホソバノキソチドリは非常によく似ていて見分けにくいラン。
主な違いは、しっぽのような距(きょ)が下向きに垂れ下がっているのがホソバノキソチドリ、上向きに跳ね上がっているのがコバノトンボソウ。確かに跳ね上がっているほうがトンボに似ているか。
ほかにも、最下部の葉の形が違うとか、ホソバノキソチドリのほうが早く咲くなど細かい違いはあるようです。どちらもラン科のツレサギソウ属に入っていますが、この仲間は見分けにくいのだらけなので、そこまで細かく見分ける必要があるのかは考えもの。
ショウジョウバカマの実。花の時期より美しいかもしれない。
ハイマツの雌花。
ツルコケモモ(クランベリー)の花。地面を這っているかなり小さい花なので、咲いていないと思ってスルーしかけた。
花びらが反り返るように開くんですね。最初見たとき上下逆に咲いているかと思ってしまった。
立派なモウセンゴケ。このままではただの食虫植物にすぎないのですが…、
接写レンズで拡大したら、超芸術的でした! 遊園地のライトアップされる観覧車みたいだ。
あちこちで満開に弾けていたワタスゲ。
高層湿原の沼を泳いでいた大きなヤゴ。
風の吹いていない絶好の天気で、高層湿原の沼に映り込む青空が芸術作品のような趣でした。
2020/07/04土
情けないけれど、2度もヒグマ見たのに2回とも記録できていないショックが大きすぎて気持ちが落ち込みぎみです(苦笑)。1回目は仕方ないと思えたけど、2回も同じことがわずか一週間であってとどめを刺された。
いや、昨日書いたように記録よりも経験のほうが大事だと頭ではわかっているし、ヒグマに会って命の危険がある場合に写真とか言っている場合じゃない、というのは理解しているんですが…。
ドライブレコーダーがちゃんと使えていたら写っていた、というのが悔しすぎる。
わずか1週間で2回もヒグマに遭遇したけれど、これはそうそうあることじゃないんですよ。道北で知り合った人の9割が、ここに数十年住んでいるのに、一回もクマを見たことがないって言うくらい珍しい。
宝くじに当たったのに、引き換えできなかったような気分。宝くじなんて買ったことないけれど。頭ではバカげた後悔だとわかっているけれど、気持ちがまだ癒えない。
2020/07/05日
ツルマンネングサやバイカウツギが咲いていた
昨日落ち込んでいたところに、今季いちばんの暑さのボディーブローをくらって体調が悪いです。ボクシングやったことないから、ボディーブローなんてわからないけれど。
家の中の気温が28℃もあります。おかしい、大阪や東京にいるころは、これしきの気温なんて28℃「も」ではなかったのだけど。すっかり北海道人になってしまったのか。
暑さでへばって何のやる気も起きません。仕方ないから、ずっと昔に買って積んであったゲームでも遊ぶことにします。自然観察を始めてからゲームしなくなったので、幾つかほったらかしになっているソフトが残っています。
風邪をひいたり、体調を崩したりしたときに、これらのゲームを消費することにしているので、夏バテの間はファンタジー世界に帰郷してきます…。
とりあえず、庭と近くの公園を散歩して咲いていた花。
まずツルマンネングサ。実は葉っぱが食用可でなかなか美味しいとか。スベリヒユみたいですね。
公園のバイカウツギ。日本の南のほうに自生していますが、北海道のは植栽です。前につぼみの時に写真を撮りましたが、今回ははっきり咲いていました。
梅のような花だから「バイカ」らしいですが、アジサイの仲間。そして、同じアジサイ科のウツギに似ているから、「ウツギ」(空木)とついていますが、無印ウツギのように中が空洞ではないので看板に偽りあり。
バイカウツギにしても、ノリウツギにしても、中心が空洞じゃないのにウツギの名がついてしまって、植物の名づけの適当さ加減に頭を抱えたくなります。
2020/07/06月
家のそばの小さなマンダラこそが楽しい
今日も暑いですが、だいぶ気力が回復しました。
2日間もほったらかしだから、自然観察日記を書こう、と思って、上のイチヤクソウとギョウジャニンニクの話を書きながら、去年の写真をあさっていると元気になってきた。
去年川床を遡上した原始河川の風景の様子や、そこで見た名も知らない植物の写真。今ではその時写っていたのがヤマブキショウマ、ギョウジャニンニク、クサノオウ、オニシモツケだと分かる。やっぱり地元の森や川が一番好きだなぁと再確認しました。
その後、居ても立っても居られなくなって、いつも歩いている近くの森へ。
森の中で和製ハーブであるウツボグサが一面に咲き乱れているのでハーブティーにしようと摘みました。ミツバもまだまだ無限に群生している時期なので夕食におかずに採ってきた。
ウツボグサの中にはまれに白花のも見つかりました。シロバナウツボクサと呼ばれているらしいけれど、群生地の中に混ざっていたということは、別品種でもなく、エゾエンゴサクの白花と同じようなものかな?
これから乾燥させてハーブティーに。どんなお味でしょうか。
(追記 : ウツボグサのハーブティーは、ほとんど味がなく、少々苦味があり、そんなに美味しいとは思えませんでした。しかしウツボグサPrunella vulgarisは、英名では俗称heal-allと呼ばれ、ネイティブ・アメリカンにも治療薬として重宝されていたそうです。国内でも夏枯草として漢方で使われてきましたし、味より薬効メインなのでしょう)
そのあと、例のコクワ(サルナシ)の木のところに行くと、ちょうど花がたくさん咲いていて、満開に近く、とても豪華でした。
近づいてのぞき込んでみると…
残念ながら、というと申し訳ないけれど、雄花ばかりの木でした。こんなにたくさん花は咲いているけれど、実はひとつもならなさそうです。でも花が素敵だからいいや。
そして、また謎のツル植物を発見。葉っぱは対生。どうせツル植物なんてそんなに候補がないのだから、絶対知っているものに決まっている。でも、こんなにつぼみがたくさん集合している花って何かあったっけ?
調べてみたらイケマでした。そうだ。こんなに有名なのを忘れているなんて(笑)。だけど、夏にイケマのつぼみや葉を見つけるのが始めてなので、見分けられないのもやむなしか。
秋にできる実はサヤエンドウ?みたいに長細いのに、こんな集合花みたいなつぼみが、いったいどう変化していくのだろう…。不思議ですね。
こうして近くの森を歩いていると、気持ちがリラックスして、とても楽になりました。わたしが好きな森歩きってこれだったなぁと、思い出しました。
松山湿原には悪いけれど、あっちは長距離を車でドライブしなければならないし、丁重に環境保護されてお高くまとまっているので、リラックスして楽しむには向いてないみたい。登山もけっこう疲れるし。
うちの近所の森は、松山湿原ほど多様性のある植物はないけれど、アイヌ時代から身近な植物のほとんどを見れるから、歩いていて楽しいかもしれない。
去年の時点では明らかに松山湿原のほうがいいと思っていたけれど、今年、コロナウイルス問題以降、地元の森を歩き倒して、考えが変わりました。特別な場所にたまに足を運ぶより、ごく普通の森に頻繁に足を運ぶほうが楽しい。
同じ場所でも、日ごとに風景が変化し、次から次に草花が現れては消えていくので、訪れるたびに発見があります。そして訪れる間隔が狭いほど、気づくことが増えます。発見が多ければ多いほど、愛着が強くなります。
必要なのは、広い森でも自然いっぱいの登山道でもなく、数日に1回足を運べるマンダラである、と「ミクロの森」に書いてあったとおりでした。わたしにとってのマンダラはすぐ近所の森であり、そこに足しげく通っているほうが、心ゆくまで楽しめるようです。
2020/07/07火
1914年以降の世界と、COVID-19以降の世界
今日は色々と資料を見る用事があって、どこにも行けず。7月8月の忙しいシーズンが始まりました。
しかも気温が暑くてしんどい。室内気温が28℃で、むわっとしています。この程度でクーラーを入れるつもりはありませんが、湿度も高いので、体が慣れるまで辛いかもしれない。
さらに自転車がパンクしてしまい、現在通販でタイヤチューブを取り寄せているところなので、夜の涼しい時間にサイクリングに行けないのも困ったところ。明後日には届くと思うのですが…。
ところで、ふとしたきっかけで、「100年前の世界一周」という面白そうな本を見つけました。レビューを書いている記事があったので下にリンクを。
100年前の世界一周を紹介する本がすごい | TABIPPO.NET
この本は2009年に刊行されたもので、100年前とは1905年を指します。その年に世界一周旅行したドイツ人青年ワルデマールが撮った写真と旅行記からなる本です。
1905年というのは、1914年に始まった世界大戦により、全てが変わってしまう前の「古き良き」時代です。もちろん1914年以前にも様々な問題や苦しみはありましたが、1914年以後に人類を襲ったものとは規模が違っていました。
ワルデマール含め、当時の人々は、1914年の世界大戦を境に、世界がどうしようもなく変化してしまったと思ったようです。文明の変化は産業革命以降、少しずつ進展していましたが、1914年の戦争が決定的な転機になりました。
わたしたちが今直面しているCOVID-19も、おそらくそれと同等の歴史的転換点として記憶されるのではないか、と常々思います。インターネットの登場以来、世界は徐々に変化してきましたか、2020年が決定的な転機になるでしょう。
わたしは当初、COVID-19の影響は一時的なもので、世界中が国連の旗のもと、ロックダウンを敢行して封じ込めるのではないか、と思っていました。
しかし、社会は予想外の大混乱と分断に陥り、ロックダウンより経済再開を優先し、公衆衛生の強化より責任のなすりつけ合いを始めました。夏になれば感染力が弱まるとの期待も打ち砕かれました。
ニューヨーク・タイムズの下の記事(邦訳)は、現在人類が置かれている状況をよく描いています。
アメリカ人落胆「都市封鎖は無意味だったのか」 | The New York Times | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
今や明らかなのは、人類はCOVID-19を抑え込むことは不可能だ、ということです。世界中の人々は、今後もう、感染症が当たり前に存在する暮らしへ舵を取るよう迫られています。
わたしの周りには、そのうちCOVID-19が終息して、以前のような生活に戻れる、と楽観視している人がいますが、わたしはそうならないと思います。
アメリカは経済活動を再開したとたんに阿鼻叫喚に陥りました。日本はそこまで壊滅的ではありませんが、東京の感染者は毎日100人を超えています。
これからの時代は、常にいつどこで感染するかもしれない、と警戒しながら生きることになります。一種のゆるい戦時下のような状態がきっと何年も続くでしょう。
確かにこのウイルスはいつかは終息します。何年かしたらワクチンが開発されますし、そうでなくともいつかは集団免疫が達成されます。でも、重要なのは、このウイルスは、自然界に潜む多種多様なウイルスのたった一つにすぎない、ということです。
今後、温暖化が進むと、今までなかった病気が拡散されると言われています。そのたびにワクチン開発まで時間がかかります。
ジェーン・グドールが言っていたように、このウイルス拡散の原因のひとつは環境破壊です。永久凍土が溶けて、未知の病原体が飛散すると警告する科学者もいます。
ほんの数十年前は、地球温暖化など、一部の科学者が主張している終末論のようなものでした。
ところが今では、異常な数の災害が毎年、世界のあちこちで起こるようになり、現実と化しました。日本でも夏が来るたびに破滅的な豪雨災害や台風被害が当たり前に起こるようになりました。
世界的に災害が増えると同時に、流行病も、食糧不足も、そしておそらくその結果として犯罪や暴動も増えるでしょう。
1914年を契機に、何千年も続いていた牧歌的な暮らしが失われて、二度と戻らなかったように、2020年を契機にそれ以前の暮らしは過去のものになるのではないでしょうか。
しかし、それは、人々が常に恐れ怯えながら暮らす時代が来るという意味ではありません。トラウマ科学から明らかなように、人は急性の一過性の危機には恐れを示しますが、慢性の危機に対しては麻痺するからです。
人々にとって、身近に災害や病原体がある日常は、ごく普通の当たり前の状態になります。
電柱が立ち並び、アスファルトとコンクリートで埋め尽くされ、満員電車で通勤するような生活を、わたしたちのほとんどが生まれた時から当たり前のこととして受け容れているのと同じです。
異常な状況でも、長期間、あるいは生まれた時からそこにいると麻痺します。感染症や災害が増加しても、人々はすぐその新しい日常に慣れて受け容れるでしょう。そして、危機感を感じなくなるでしょう。
すでに多くの国で、COVID-19に警戒しなくなった人が大勢います。マスクの着用も、ソーシャルディスタンスも、行動自粛もやめてしまいました。慢性的な危機に対して麻痺してしまったからです。
世界中で異常な熱波が起きようと、災害が増加しようと気にしない人ばかりです。異常が日常になれば、人々は日常生活を再開します。それがCOVID-19後の世界だと思っています。
2020/07/08水
ドロヤナギの綿毛は散ってしまった
また雨ばかりの天気が戻ってきました。昨日は夕立、今日は一日中断続的な雨です。友人が住んでいる九州ではもっと豪雨が続いていることを思えばはるかにましですが、雨が多く感じます。
気温もずっと蒸し暑く、過ごしにくい季節です。1日中窓を開けっ放しで過ごしていますが、湿度の高さは如何ともし難い。
そういえば、2週間くらい前から、ドロヤナギが花を咲かせて、白い綿毛を盛大に飛ばしていました。
西洋では、ドロヤナギの親戚であるポプラが、コットンウッドと呼ばれて珍重されています。ドロヤナギも中綿に使えるようで、なんと「ウールや中空ポリエステルよりも優れた断熱材」らしいですが、木に登っての採取が効率的でないので商業化されていないようです。
もし商業化を目的にせず、効率関係なしに、自分や家族のために利用するのであれば、自然界には様々な用途に使える素材がいっぱいあるのだなと思います。金儲けしようとするから多様性がなくなっているだけで、利用できるもの、食べれる山菜は膨大にあるのです。
そのドロヤナギの花や実をぜひ見たいと思って、大雨の中、河川敷まで行ってみましたが、もう散った後でした…。行動を起こすのが遅すぎた。ドロノキなんてどこにでもあると思っていましたが、川の近くに行かないので見る機会を逸してしまった。
川の近辺は、ヒグマに遭遇しやすく、草やぶが深いので、今年は全然行っていませんでした。だから水辺の植物はかなり観察漏れがあると思います。山菜のキンミズヒキとかアオミズとか見たことさえない。来年の課題です。
今日観察したものといえば、まずピンクの葉っぱのマタタビ。
マタタビというと白い葉っぱですが、先日山のほうでピンクのマタタビを初めて見ました。調べてみると、ピンクに色づくのはミヤママタタビのようです。ミヤママタタビは葉や実の形も少し違いますが、何より大きな違いは猫が酔わないということです。
ほかに見つけたのは、オトギリソウの仲間と思われる花。林道の端っこに生えていました。
もう枯れかけていたし、大雨の中だったので、はっきり種類は判別できませんでした。
セイヨウオトギリソウだとしたら、外来種ですが、有名なサプリのセント・ジョーンズ・ワートの材料なので、ハーブティーにするのもいいのかも。
2020/07/09木
自転車が直って森歩きで気力回復
やっと自転車のタイヤチューブが届いたのでパンク修理(というかチューブ交換)して走れるようになりました。森歩きもいいけれど、ストレス解消にはサイクリングが欠かせない。
試しに近所を入っていたら、農場の付近の道ばたで、去年見つけたムラサキウマゴヤシの株が花を咲かせているのを見つけました。別名アルファルファ。スーパーで売られている美味しいスプラウトの元。
異常巻きアンモナイトみたいな面白い形の実をつけます。種ができたら、自家栽培してスプラウトを食べれるかなーと思っていたんですが、去年は時期を逸してしまいました。タイミングが難しい。
昼からは暑さでへばっていて、何もやる気が起こらなかったのですが、こんな時こそ森に行くべきだと自分を叱咤して出かけました。すると今日も面白いものがたくさんでみるみる気力が回復してきました。
湿地帯のほうの森に行ってみたら、入り口でまずシマリスを見かけました。林道の右側のふちにちょこんと立っていて、あっ、と気づいたら、大慌てで森の中に消えていきました。一瞬だから写真は撮れなかったけれど、背中のしましまがはっきり至近距離で見れました。
森の中では、オオウバユリのつぼみがこんなに大きくなっていた! 昨年はオオウバユリが咲くシーズンに自然観察できなかったので、この状態を見たのは初。これから咲く大輪の花への期待が否が応でも高まります。
森のあちこちに生えているヒトリシズカの実がかなり大きくなっていました。みうすっかり実を落としている葉もちらほらあったので、葉っぱが枯れないうちにたくさん収穫してきました。ハーブティーにすると美味しいので。
アイヌの資料によると、ヒトリシズカは6月後半から7月前半くらいまでの期間に採るらしい。もうかなり葉っぱが傷み始めていたので限界ぎりぎりですね。好きなハーブだから今のうちにもっと採っておくか悩みどころだけど欲張るのは良くないか。
笹やぶのそばで、こんな形に葉が展開しているヒトリシズカもあって面白かった。葉がぐるりとつく輪生に見えて、実は偽輪生だそうですが、光の当たる方角が限られていると葉の付き方も変えてくるんですね。
これは前にも撮ったような気がするけど、コンロンソウの実。アブラナ科らしい棒状の実が可愛かったもので。
エゾレイジンソウの青唐辛子みたいな実は黒くなって弾けていました。ずっと観察しているのでなければ、いったい何の植物だろうと首をかしげてしまいそう。
接写してみるとこんな感じ。果実は3つに裂けて弾けるんですね。中には黒い種が一粒残っています。
ユキザサも実をつけていましたが、赤く熟するまでもなく、実が落ちてしまっています。熟すのを待ちきれない鳥がついばんだのだろうか。
まだ全然赤みを帯びる気配がない。マイヅルソウが赤くなり、ツバメオモトが青くなるのと同じくらいの時期まで熟さないのかな。
ウマノミツバの上に見事な渦巻き模様のカタツムリがいました。
ジュウモンジシダを見分けた
今日初めて見つけて嬉しかったのがこのシダ。葉っぱが手のひらサイズくらいの小型のシダで、もしかしたらヒメシダとかの仲間かなと思ったので、立ち止まって調べてみました。
しかし、写真を撮ろうと葉っぱを伸ばしてみると、すぐに正体がわかってしまった。葉っぱの根もとに、横向きに小さな葉が左右対称についています。つまり全体としては十字の形になっている。これはジュウモンジシダでは?
ジュウモンジシダは、芽出しの時点で山菜のクサソテツと似ている部分があるので、名前は知っていましたが、葉っぱが展開した後の姿を判別できたのは初めてでした。
珍しいシダではないから今までもあちこちにあったのでしょうが気づかなかった。まさかジュウモンジシダがこんな小型のシダだとは思っていなかったので不意打ちでした。やっぱり図鑑で見るだけだとサイズ感を見誤ってしまうものです。
ジュウモンジシダは、分類上はオシダ科イノデ属にあたり、このイノデ属のシダは、小羽片の付け根に耳状と表現される膨らみがあるのが特徴。確かにジュウモンジシダの葉っぱもそんな形をしています。
裏側のソーラスは黒いつぶつぶのはずですが、確認しても見当たりませんでした。まだこれからつく予定なのか、観察不足で気づかなかっただけなのか。いずれにしてもシダ観察がちょっと前進して嬉しい。
(7/16追記 : この近くで見つけた、もっと株の大きなジュウモンジシダ。わかるようになってみると、たくさんあることに気づくものですね。
後で調べたら、ジュウモンジシダは葉の部分が40cmくらいまで成長するようで、比較的小型であるとはいえ、前回写真に撮った手のひらサイズ(20cmくらい)のは小さすぎたようです。
こちらのジュウモンジシダは、株が大きめだからか、しっかり葉裏にソーラスも確認することができました。
ジュウモンジシダのソーラスは、茶色いつぶつぶで、オシダやメシダの仲間とはかなり違いますね)。
エゾノリュウキンカの根っことエンレイソウの実を味見した
湿地帯のほうの森に行ってみたら、茂みの奥にあるエゾノリュウキンカの群生地が妙にかさが減っているのに気づきました。
不思議に思って、背丈ほどもある草をかき分けて入っていくと、まるで草刈りされた後のように茎が折れて倒れている!
誰かが山菜採りに入ったのかな?と思いましたが、よくよく見ると、茎が枯れて折れてしまっていただけでした。去年は今の時期のエゾノリュウキンカなんて全く見る機会がなかったけど、そうか、夏になると枯れるのか。もし種まいた後ですからね。
そこで思い出したのが、アイヌ民族が、実が弾けた後のエゾノリュウキンカ(ヤチブキ)を掘り起こして、その根っこを保存食にしていたという話。(アイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から秋へ】を参照)
これは試してみるチャンスかも! ということで、一度帰宅して、スコップを持参して、もう一度森の中を歩く。重いスコップを持ってどろんこの湿地帯を歩くのはなかなか大変でした。疲れる。
後で見たら、掘り返す時期は8月中旬とされていたので、別に急がなくともよかったようですが、こういうのは思い立った時に挑戦してみないと。
やっとエゾノリュウキンカの群生地に到着。別にこんな場所までこなくても群生地は道ばたにも沢山あるんだけど、道路脇より森の中のを食べてみたかった。
畑仕事の容量で根っこを掘り起こそうとすると、山の腐葉土は感触が全然違う。分厚く堆積した葉っぱの層のため、なかなかスコップが入らない。また縦横無尽に血管のような根が這い回っていてスコップが引っかかる。
まるで人体解剖のごとく。そういえば、「植物と叡智の守り人」にそんなエピソードがあったなぁ。土を掘るというのは、地球の皮膚の内部を見るということなのだと。畑の土だとそんなこと思いもしないけど、森の地面だと意味がはっきりわかる。
スコップを突き入れるというのは肌にメスを入れるのと同じで、地球の血管をブチブチ切ってしまうこと。だから、傷つけるのは最小限にとどめて、比較的小さめの根っこをひとつだけ掘り起こしました。味見にはこれくらいで十分。
アイヌ生活文化再現マニュアルの写真で見たエゾノリュウキンカの根っこそのもの。というか、このマニュアル以外で、エゾノリュウキンカの根の写真を見たことがない。山菜として食べる人なんてもう誰もいないんでしょう。
土を落として、バケツで洗ってから、根を分解します。マニュアルによると、食べるのは白くて太い根っこだけ。茶色い根は取り除く。白い根についている細い糸状の根も苦いから取り除く。
すると、こんなに少なくなってしまった。
これを熱湯で3分茹でれば、食べれるようになります。乾燥させて保存食にもできるけれど、今回はとりあえず味見ということで、すぐにいただきました。
気になるお味は…
まずびっくりしたのは食感。根っこなので、てっきりごぼうみたいに固いのかと思ったら、でんぷん質でとても柔らかい。まったく噛まずに食べれるほど、ゆり根とかふかし芋に近くて、舌触りは良食材。
しかし問題は香りと味。なんというか…美味しいともまずいともいえない珍味の領域です。好きな人は酒のつまみにしそうだし、嫌いな人は一度で嫌になるかも。
もともとエゾノリュウキンカを山菜として食べると、言葉では表現しがたい独特の香りと味があって、ここでも好みが分かれます。根っこはそれが強烈に濃縮されている感じ。
大量の食べるのはちょっと無理。だけど、時々ちょっとつまむには悪くないかも。だからこそアイヌにとっては、冬の保存食のメインは、たとえ手間がかかってもオオウバユリのほうが選ばれ、ただ掘り起こして煮るだけのエゾノリュウキンカのほうはあくまでサブだったのかもしれない。
わたしとしては、一年に1回くらいは掘り起こして食べてみようかなーという程度。食糧危機が来たらもっと頻繁に食べることになるかもしれないが。でも、こうして一回は体験しておいてよかった。あんなに柔らかくて癖の強い味というのは意外すぎました。
もう一つ食べてみたかったのはエンレイソウの実。サポニンなどの有毒成分を少し含みますが、少量なら食べても問題なく、昔からヤマソバ(山に生えているソバの実)などと呼ばれ、おやつ代わりに食されていたそう。
触ってみて柔らかくなっているのが熟した実ですが、先に鳥や野生動物が食べていたり、アリがたかっていたりと、なかなか食べごろのものは見つかりません。やっと2つほど見つけましたが1つは途中で落としてしまいました。
持って帰ってきた1つを、水で洗って味見してみる。
まずベリーみたいな種がたくさん。味は普通に甘くて美味しいです。確かに積極的に食べるようなものではないけれど、子ども野山で遊んでいて、小腹がすいた時のおやつにはちょうどいいのかも。クワの実とかイタドリとかと似たような立ち位置か。
実が小さすぎて、果肉がほとんどなかったので、味見できたとはいえ少し物足りなさが残ります。またこれから森を歩いていれば、熟してる実を見つけるかもしれないから、時々食べてみようかなと思います。
【気になったニュース】
たぶんCFS研究の界隈に戻ることはもうないだろうと思うけど一応。
筋痛性脳脊髄炎の自律神経受容体抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常を発見-NCNPほか – QLifePro 医療ニュース
抗β1および2アドレナリン受容体の自己抗体が脳内異常を引き起こしている可能性があるとのこと。
わたしによく効いたクロニジンはα2アドレナリン受容体のほうだったのだけど、β遮断薬のプロプラノロールが効く人もいるので興味深いところ。自己抗体のせいで、交感神経をうまく制御できなくなっているせいで体が休まらないのだろうか。しかし薬だけでうまく回復できたわけでもないので、問題の根本ではなさげな気もする。
調べてみたら、α受容体およびβ受容体の自己抗体が体位性頻脈(POTS)に関連しているとの研究も。わたしも体位性頻脈持ちで、いまだにその傾向が強いし、CFS患者の大多数にPOTSがあるとかいう研究もあった気がする。
体位性頻脈症候群における抗アドレナリン受容体自己抗体 | POTS and Dysautonomia Japan
まあ詳しいことはわからないけれど、今までやってきた対処法がいい線いっていたということが後から裏付けられたといえるかも。
あと、ニュースではさも原因の大半がウイルスであるかのように書かれていますが、アドレナリン受容体の自己抗体なんて様々な原因で生じうるでしょう。なんか近年のCFS研究は恣意的なバイアスがかかっているように思えてならない。医学研究も一枚岩ではないのでしょう。
昔はずっとCFS研究のニュースを追っていたし、知り合いのCFS患者にもメールで送っていたのだけど、今後は病気関連の不毛な話はしたくないので、個人的にチェックするだけにしておきたい。
2020/07/11土
オオウバユリとエゾニュウが咲き始めた
今日も農家のお手伝い。そこそこ力のいるニンニク掘りを頑張りました。上半身の筋肉が全然ないから、こういう作業でちょっとは体力がつくといいのだけど。
畑で咲いたジャガイモの紫花。
そろそろ収穫が始まったトマト。順番に色づいていくグラデーションが美しい。
畑にいたニホンアマガエル。これまでエゾアカガエルしか見ていなかったので新鮮。北海道のカエルはこの二種類だけです。最近外来種でアズマヒキガエルが札幌に入ってきたとか聞きますが道北にはいないでしょう。
畑に通う道中で、オオウバユリの花が咲いているのを発見!
なにげに咲いている状態を見たのはこれが初めてです。去年からずっと見たかったので感慨深いものがある。
昨日森の中で見たのはまだつぼみでしたが、やはり農地のそばの開けた場所は、森よりも1週間か2週間は季節の変化が早いですね。木を切ってしまったせいで、直射日光が当たって、温度上昇してしまうのでしょう。
この巨大の花は、7年以上かけて蓄えたエネルギーの総決算。何十年も貯め込むバイケイソウに比べたら短いけれど、それでも一生分の養分をただ一度の開花に全投入して盛大な花を咲かせる様子は美しく儚げです。
わたしは昔から緑っぽい花が好きですが、このオオウバユリもバイケイソウも、緑みのある白なのでとてもお気に入り。色とりどりの花もいいけれど、緑系の花には透き通るような美しさを感じます。
近くでは巨大なエゾニュウの花が苞を脱ぎ捨て、ひとつひとつの小さな花のつぼみを準備していました。もうそろそろ咲く季節ですね。
この写真の花は巨大なエゾニュウから枝分かれした花の1つにすぎません。下の写真が全体像ですが、周りに生えているオニシモツケなどが人の身長くらい(1.5m)なので、その2倍以上あるエゾニュウは3mを優に超えています。
茎の太さも相当なもので、手でつかんでみると、指がまわりません。ちょうど人間の二の腕くらいの太さはあります。タラノキのような「木」よりもはるかに太く、これが去年の秋には枯れて、今年の春から夏だけで成長したものだとは驚きです。
帰りに山あいの道を走っていたら、カーブを曲がったところに突然巨大な雌鹿がいて、自動車の前を数十メートル走って林へと消えていきました。この前の大きなヒグマ以上にびっくりした…。
こんなこともあろうかと、わたしは安全運転でスピードは出さないようにしているから何事もなくてよかった。今の時期は道路脇のイタドリなどの植物がぐいぐいせり出してきて雪壁の時期並に見通しが悪いから、慎重な運転が大事ですね。
2020/07/11土
「当麻町野生植物図鑑」がなかなか良さげ
図書館に「当麻町野生植物図鑑」というソフトカバーの本があったので試しに借りてみました。自然観察においては、全国対象の詳しい図鑑より、その地域限定のローカルな図鑑のほうが役立つことがしばしばなので。
なんと私より年上の35年前の図鑑で、写真の画質も粗いのですが、掲載されている植物328種がわたしの好みに的中。
さすが地域密着の図鑑。わたしが住んでいる地域から当麻町はそこそこ遠いとはいえ、同じ道北だから自生植物はほぼ同じ。
しかも、簡潔な数行の解説文が、わたしの知りたい情報を押さえてくれている。見分けるポイント、名前の由来、食用薬用について。
失礼ながら、北海道の植物図鑑の決定版として有名な梅沢さんの本は解説文が機械的すぎてさっぱり頭に入らない。細かい分類、同定をしようとすれば、そうした情報は必要ですが、素人が地元の自然観察するには、当麻町の本のほうがよほど実践的です。
種類も適度にしぼられているとはいえ、シダ植物や樹木、道ばたの外来種のイネ科まで幅広く収録。この本に載っているのを覚えたら、身近な植物はほぼ分かるから、もしわからないのに出会った時だけ、より詳しい図鑑を調べればいい。
さすがにこの一年、フィールドワークを頑張っただけあって、掲載種の半分程度は見分けられそうでしたが、知らない知識もたくさんあって勉強になります。
たとえば、先月くらいに、林道脇で何度もキンポウゲっぽい茎の長い花を見つけて、ウマノアシガタか?と思ったものの形がどうも違う。この図鑑を読んでいて、キツネノボタンだったとわかりました。
葉っぱは3枚セット(三出複葉)で、それぞれヨモギのような切れ込みが入る。花はよくあるキンポウゲだけど、花びらが細めで互いに重なり合わない。
また、それぞれ開花時期が書かれているのが地味に役立つ。近所のオオバボダイジュのつぼみが、一般に6-7月開花とあるのに、なかなか咲かないなぁと思っていたら、道北では7-8月開花とされていました。やはり少し遅いんですね。
気がかりなのは、この本の時点ですでに、開発により、自生地が失われた、親しまれていた大樹が伐られたという話がよく出てくること。それから30年経った今はどうなのだろう? (人工過疎化で回復している可能性もあるけれど)
それでも、この本の中で希少になってきたと書かれているホザキシモツケやヤマハマナス、クモキリソウなどが近所で観察できるので、我ながらいい場所に住んでいるなと再認識できます。30年前の図鑑が現役バリバリで役立つのだから。これが大阪東京ならこうはいかないでしょう。
道ばたに咲いていたクガイソウ、ヤナギラン、ギボウシ
去年の今ごろ、町の郊外でクガイソウの群生を見たな、と思い出して、普段行かないような農免農道をぐるりと回り道してみることに。そうしたらまず見つけたのはヤナギラン。
遠くから見ただけでは、エゾミソハギか?と思いましたが、よく見たらヤナギランですね。同じような形の花と葉、同じような色でどうにもこんがらがってしまいます。
似ているとはいっても、ヤナギランのほうが花の付き方が円錐形で膨らみがあったり、葉の付き方が違ったり(ヤナギランは互性、エゾミソハギは対生と輪生)、近くで見ると花の形も違うから、慣れると見分けがつくか。
ヤナギランと言っても、ヤナギの仲間でもランの仲間でもなく、まさかのアカバナ科です。道ばたに咲いている目立たないピンクの花のアカバナと同じ仲間だとは到底思えない豪華さです。
多分これまでも時々道路脇に生えているのを見ていたのに、同じような円錐形の花のルピナスとほぼ同時期なせいで、花期終わり近くのピンクのルピナスかな?と横目でちらっと見るだけでスルーしていたような気がする。
そのまま農免農道を進んでいって、出口付近にさしかかったところ、ついにクガイソウの群生を見つけました。去年見かけた場所よりはるかに少ないけれど、確かにクガイソウ。巨大な紫の花穂が涼しげです。
インターネットで画像検索してみると、クガイソウの花穂は長短あるようですが、この付近の花は格別に花穂が長いように見えて豪奢ですね。
輪生している葉っぱが、五重の塔みたいに重なって、全部で9層くらいあるからクガイソウと名付けられたとのこと。
同じ時期に白い穂状の花をつけるオカトラノオ(ベロニカ)の紫色バージョンである、ルリトラノオという花によく似ているそうです。しかしよく見ると葉の付き方や花一つ一つの形が違います。クガイソウのほうが花が漏斗状でユリっぽいのかな。
オカトラノオ(ベロニカ)はサクラソウ科、クガイソウはオオバコ科なので全く違う植物。面白いことに、クガイソウの学名はVeronicastrumで「ベロニカに似ている」という意味らしい。学名レベルでややこしさが記述されている植物。
オカトラノオが虎のしっぽみたいな花の形に注目した名づけであるのに対し、クガイソウが葉の形に注目した名づけなのは、花だけ見るとややこしいことを承知して、区別して覚えやすいように、ということなのかもしれない…。
ヤナギランの名付けが適当すぎるのに対して、クガイソウの名付けは、壮麗な塔を思わせて風情があるので好きです。
やはり優れた比喩表現は、同じ分野(ある植物を別の植物に例える)ではなく、まったく別の分野から引っ張ってこなければならない、という例でしょうか。
ほかに、あちこちの公園や花壇で、ギボウシが咲き始めているのも見つけました。今のところ高層湿原のタチギボウシ以外に自生種は見たことがなく、全部園芸種ばかりですね。
ギボウシという名前は、橋や神社の手すりの上についているスライムみたいな形の飾りの「擬宝珠」から来ているらしい。まだつぼみが分岐する前の、花序が伸び始めたころの姿がそれに似ているとのこと。
調べてみたら写真入りで比較してくださっている記事がありました。確かに似ているけれど、擬宝珠がなぜスライム形なのかは諸説見ても謎。
フラワーガーデンで見たベリーや高山植物など
そのほか、植物園的な場所に寄って見たもの。
ハスカップの実。何粒かいただきましたが、酸っぱさ控えめで美味しかった。
ジューンベリーの実。ジャムにすると美味しそうな味。
は6月ごろに収穫されるからジューンベリー。じめて聞いた名前のベリーでしたが、ブルーベリーやクランベリーのツツジ科ではなく、サクランボとかストロベリーなどが含まれるバラ科。日本にも自生しているサイフリボクという木の西洋バージョンらしい。
ワイルドストロベリー。日本名はエゾヘビイチゴだけどヘビイチゴの仲間ではない。エゾとついているけれど、北海道の南西部のみで道北にはない。
少しいただきましたが、はっきり言って普通のイチゴよりはるかに好き。砂糖菓子みたいなシャリシャリ感がよき。
地味なブドウの花。これでも実ではなく花。
まさかこんな所で見るとは思わなかったヒマラヤの青いケシ「メコノプシス」。しかも中国雲南省のベトニキフォリアのほうではなく、比較的栽培されやすいグランディスでもなく、ヒマラヤの高山に咲くホリドゥラのほう。
サボテンみたいなトゲトゲがあって、ブータンの国花でもある。めったに見れない珍しい花をまさかこんな場所で見るとは…。いつかヒマラヤの自生帯に行ってみたくなるけれど富士山より高い地域に咲くらしい。
高山植物のエゾツツジ。エゾムラサキツツジはどこでも植えられていますが、よりシンプルな名前のエゾツツジはレアです。背丈もびっくりするほど小さくて踏んでしまいそう。
リシリヒナゲシ。この色合いがとても好き。よくある派手なビビッドカラーの黄色ではなく、少し緑みを帯びた控えめな透き通るような黄色。
中央の雌しべ部分の拡大。ケシの仲間はこの玉サボテンみたいな雌しべが特徴。実は日本のケシ属のうち、古くから自生していたのは在来種といえるのはリシリヒナゲシのみらしい。
ミモザの実。あからさまに豆で、ミモザもマメ科だったんだ…と実感します。その上で葉っぱを見てみたら、ものすごく細かいせいでマツの葉みたいだけどマメ科特有の羽状複葉でした。
そういえば、ここの管理人さんに教えてもらって、うちの庭に生えているフランスギクのような花がシャスターデージーという品種だと判明しました。てっきりどこかから飛んできた雑草だと思っていたら、前に住んでいた方が植えた園芸種だったんですね。
葉っぱの形からジョチュウギクやマーガレットではないことはわかっていましたが、フランスギクにしては大きいな、と思っていました。園芸種は全然詳しくないので教えてもらってよかった。フランスギクだと思って引っこ抜くところでした。
2020/07/12日
バイケイソウが大往生なさった
今日はよく晴れている上、とても涼しく自然観察日和でした。最高気温は20℃くらい。夏がずっとこれくらい涼しかったらいいいのにな。
いつもの森に一週間ぶりに出かける。まずは下層にあるバイケイソウにあいさつ。と思ったら…
大往生されていました。
そうか…ついに何十年もの花生に終止符を打ったのか…。いったいいつ頃から行きていたのかは知らないけれど、もしも90年というのが事実であれば、世界大戦前に芽生えた個体だったのだろう…。
はじめて見るバイケイソウの実。
上向きのほおずきみたいな形で、稜は3つ。柔らかい皮をちぎると、中から種が数個出てきました。これから次世代のバイケイソウが生まれては人間並みに長い花生をつむいでいくのだろう。
バイケイソウなんて、先日の当麻町植物図鑑にも「どこにでもある草」と書かれているのに、何十年も生きて、最期に数え切れないほどの花を咲かせて死ぬというドラマチックな生き様のせいで、見るたびに考えさせられる植物になってしまった…。
きっと知らないだけで、人間より長生きしている樹木や草木や生き物なんて、身の回りにたくさんいるんだろうけどね。
こんなところにエゾスズランとミヤマニガウリ?
森の入口付近で、妙な草を見つける。イネ科みたいな細長い葉っぱだけど、先につぼみみたいなのがついている。こういうのってよく見たら小さな葉っぱだったりすることが多いのだが、じっくり見てもつぼみに見える。
んんんー?と思ってとりあえず写真に撮ったものの、本当に花だったのか半信半疑。もはや地元の花はたいていは図鑑で名前を知っていると思うのだけど、こんな葉っぱで花を咲かせる何かは思いつきません。
でも、森の奥へ進んでいくうちに、何度も同じつぼみを見かける。間違いない、これはこれから咲く何かの花だ。見間違えじゃない。ということで、後で調べるために、つぼみを接写しておきました。
でもつぼみくらいじゃ同定難しいよなぁ…と思っていたら、さすが我らのGoogle Lems先生、見事に正体を明かしてくれました。
なんとエゾスズラン!
これまで知らなかったのですが、北海道にはギョウジャニンニクと区別しないと死ぬ無印スズランだけでなく、エゾスズランという別種が自生していたのでした。
しかも、ややこしいことに、スズランはスズラン亜科、エゾスズランはラン科。名前が似ているけれど、じつは全然違う植物だった…。
確かにスズランとか園芸種のドイツスズランは、春ごろに友達の家の庭で咲いてるのを見たので、真夏にスズランが咲くなんておかしいと思った。Webで調べてみたら、葉っぱや花の形もかなり違う。
でもわたしとしては、小綺麗にまとまった花のスズランよりも、どこか野性味を感じさせるエゾスズランのほうが好きだな。花が咲いたらぜひともゆっくり鑑賞したいところ。
もう一つ不思議に思って調べてみたのは、こんな形の葉っぱのツル植物。
全然思い当たらなかったけれど、これほど特徴的な形なら、Google Lensですぐわかるだろう、と思って写真に撮ってきた。
調べてみたら、カラスウリとかスズメウリと出る。どちらも夜の間だけ咲く妖艶な花で知られるウリ科。えっ、花は見たいけれど、さすがに日没後にこんな森に入るなんて無理!と思ったら北海道には自生していないらしい。なぜかホッとする。
それなら、別のウリ科だろう、と思って調べ続けたところ、たぶんミヤマニガウリだろうとわかりました。
花は地味で、実も地味。特にこれといって特徴のないウリ科ですが、深山の植物とのこと。ここの森ってそんな深山のイメージはないのだけど、まあ日本全国からしたら、わたしが住んでいる所自体が深山幽谷みたいなものか。
巻きひげが途中でZ巻きからS巻きに変わって、ショックアブソーバーのように機能しているという面白い特徴があるそうなので、こんど見てみよう、
イケマとオオウバユリの花が咲き始めた
この前見つけたイケマの花が咲き始めていました。
上の写真はつぼみばかりだけれど、葉っぱが写っている写真も載せたかったので。下の写真はイケマの葉っぱは写っていないけれど、咲き欠けているもの。
接写して拡大してみる。
花の色や形から、ガガイモでなくてイケマであることがはっきりしましたね。ガガイモの花は紫か白ですが、もっと毛深くごわごわしています。
一方、森の中にたくさん花茎を伸ばしていたオオウバユリたち。一昨日畑のそばで咲いているのを見て、森の中のほうが時期が遅いと思っていたけれど、そうでもないようで、普通に咲き始めていました。個体差があるだけみたい。
かなり大きなつぼみ。バイケイソウほどではないものの、7年以上かけて貯めた栄養の集大成。ゼンテイカのつぼみが美味しかったせいで、こんな形のつぼみを見ると食べたくなってしまうのだけど、これは多分食用ではない。
咲いている花もたくさんあって、すぐ近くで観察することができました。この写真くらいの距離まで顔を近づけると、とてもいい香りがする。
ほぼ手のひらサイズの花。前にも書いたけど、うっすら緑がかっているペールトーンな色が美しい。
ヨブスマソウ、ウド、キツリフネ?のつぼみ
背の高い見上げるようなヨブスマソウにつぼみがついていました。
たまたま茎がしなって倒れかけている株があったので、手の届く高さでつぼみを観察できた。
高さが3mくらいなので、通常なら見上げるだけですが、これなら手で触れることができます。
接写してみたつぼみ。
つぼみからはわかりませんが、ヨブスマソウの花が咲くと、なるほどキク科の仲間だなぁと思います。ものすごく地味ですが、ヨモギとかボロギクとかに似た筒状花の集まりで、見覚えのある見た目をしているので。
やはりつぼみが成長していてそろそろ咲きそうになってきたのはウド。
セリ科の花ともよく似ている花火みたいな白い花が咲きます。でもウドの美しさの真骨頂は、色とりどりの実がなってからですね。
去年は全然区別できなかった、ウドと同じウコギ科のハリギリやタラノキの花も今年ばじっくり鑑賞したいな。同じ仲間だからそろそろつぼみがついているんだろうか。次回見てみよう。
ヒヨドリバナやヨツバヒヨドリのつぼみ。
森の花ではつぼみですが、外界ではちらほらと咲き始めていました。去年自然観察を始めた時期に観察した花なので、見るたびに懐かしいような、うんざりするような複雑な気持ち。
あちこちで見かけるキツリフネっぽい葉っぱ。この前までミクロだったつぼみらしきものが少し大きくなってきた。
たぶんこれがキツリフネのつぼみ? まだ小さすぎる気もするし、咲いてみるまでよくわからない。
マタタビっぽい葉の木にたくさんついていた白玉団子みたいなつぼみ。
マタタビの花ってもうすでにたくさん咲いていたはずなのだけど、なぜ今ごろ…? 雄花と両性花で時期がずれるとか?
ヤマグワの木の葉っぱ。
こんなに大きくなるとは思ってもみず、思わず写真を撮りました。でもそういえばヤマグワってイチジクの仲間だし、これくらい大きくなるもんなんですね。
ヤマグワは幼木のころは変異の激しい葉の形で簡単にわかるけれど、成木になると見分けにくい。今は実があるからクワの木ってわかるけれど、実がなければ見分ける自信がない…。シナノキ、ボダイジュ、ウダイカンバなどと区別できない。
ヤマグワは葉っぱの基部がハート型のように凹まず少し突き出るのが多い気がする。またシナノキ、ボダイジュのほうが葉の形に丸みがあるか。樹皮や樹形も、ヤマグワはゴツゴツして曲がりくねりやすいのかな。
別の森でも見かけたツルリンドウの葉っぱ。
そちらの場所はどこだったかわからなくなってしまいましたが、今回見つけたのは、わかりやすい道沿いにあったので、今年は無事に花が見れそうです。
春に見たフデリンドウとまさかの再会
春に一度限り見たフデリンドウとまさかの再開。あのときはもう一度行っても見失ってしまって全然見つかりませんでしたが、遊歩道が草刈りされたおかげか、再発見しました。場所的にたぶん同じ個体じゃないだろうか。
こんなに小さいのだから、見失ってしまうのも当然。よく草刈りを生き延びたし、踏み潰されなかったな…。たぶんここを歩いたのって草刈りの人とわたしくらいしかいないと思うけど。
花はもちろん散って、てっぺん部分はフタのようなものが開いて弾けていました。無事に実をつけて、種を飛ばしたんですね。
少しずつ熟しつつある様々な実
森の中にある実も少しずつ熟してきました。かなり赤く色づいてきたマイヅルソウ。赤い宝石になった実もいいけれど、この中間状態に入り混じった色合いが特に惚れ惚れとする。
隣に生えているツバメオモト。赤と青に対照的な実が見れるのが楽しみ。
ユキザサの実。先日別の森で見たものと同じく、相変わらず色づく前に食べられまくっていて、赤くなった実が見れなさそう。そんなに美味しいんだろうか。
そこそこ実が残っているのもあるにはあったけれど…
チョウセンゴミシの実。
まるでマスカットみたいに大きさのばらつきが出てきました。現物のサイズはマスカットよりはるかに小さいですが。
ルイヨウショウマの実。かなりメタリックな色合いに色づいてきた。
熟しすぎたエンレイソウの実。
食べれるかと触ってみたらブヨブヨでアリがたかっていました。エンレイソウの実は、種子散布してもらうように、アリの大好物のエライオソームがついている。
ヤマブキショウマの花が枯れた後。これから実になるんでしょう。
実は見たことがないけれど、Webの写真で確認する限り、稲の穂みたいな見た目らしい。確か花が類似しているトリアシショウマとは、実の形が全然違うんだよね。
夏の森の虫たち
今日森歩きして見かけた虫たち。基本的に飛んでいるのは撮れないので、葉っぱの上にとまっていて動かない虫など。
まずは蛾の仲間のキベリネズミホソバ? 初めて聞く名前。類似種に頭部の色が違うキマエクロホソバがいるとか。蛾の仲間らしいですが、とまっている時に羽を折り畳んでいるので、あまりそうは見えません。幼虫は地衣類を食べる、というくらいしか情報がなくて、まだまだわからないことばかりなんだなって。
次のは、かなりふくよかな黄緑色の幼虫。ヤママユガの幼虫でしょうか? このあたりの明かりにヤママユガ成虫がたかるという話は聞いたことがあるので、幼虫もいるでしょう。成虫は巨大だから見たらぎょえってなりそう。
エゾゼミ?でも特有の模様がないし、体色からするとエゾチッチゼミ? チッチというのは鳴き声で、北海道のカラマツ林周辺にのみ生息するらしい。確かにこの時歩いていたのはカラマツ林だったのでエゾチッチゼミかも。
ヨコバイの仲間。模様からするとオオヨコバイでしょうか。その名の通り、横向きに這うことができるらしい。
ツルアジサイの葉っぱの裏に大量のセミの抜け殻があってびっくりした…。はじめは1つ目に入っただけでしたが、よく見ると2つ…
どころか、周囲のツルアジサイの葉裏にあっちにもこっちにも、写真外にもたくさん。さしずめ集団羽化場とでもいうのか。
虫は苦手ですが、森の中で見るぶんにはやはり美しく感じます。なんだかんだ言いつつ、時々こうして写真に撮って調べているので、5年か10年くらい経てば、そこそこ見分けられるように…?なるでしょうか。
2020/07/13月
ニンニク掘りのお手伝い
友達の農家さんのお手伝いで、一日中ニンニク掘りをしていました。
かなりの力仕事で、去年よりも分量が多かったですが、比較的楽でした。気候が涼しかったおかげもあるでしょうが、きっと体力がついて元気になったのも影響してそうです。
一緒に屋外で作業した人が、釣りの話をしてくれました。これからもしコロナのせいで食糧不足が来たとしても、農業、釣り、そしてわたしは山菜の知識で乗り越えていけるね、と意気投合しました。
さらに別の友達は食肉の解体技術も持っているので、いざとなればシカを狩猟することもできるとも。さらに自分の土地として山を持っている友達が2人も。みんなたくましいのでサバイバルは問題なさそうです。
2020/07/14火
オオイタドリに巻き付くイケマの群落、クガイソウ、クサフジ
あちこちで牧草ロールを見かける季節になりました。北海道の夏の風物詩です。
去年の冬、大量にイケマの実を見つけて遊んだ畑の間の道に行ってみると、イケマの花がたくさん咲いていました。
畑の近くだから、もしかするとイケマではなく近縁種のガガイモだったのではないか、とも思っていましたが、どこからどう見てもイケマですね。
ガガイモの花は普通紫色で、ときおりシロバナガガイモもありますが、もっと毛がごわごわしています。また葉っぱも薄くて柔らかく、イケマの葉でした。
イケマが山合いの自然豊かな場所に生えるのに対し、ガガイモは繁殖力旺盛な雑草で畑地に多い、と書いてあったので、てっきりガガイモかと思ったのですが、そんなことなかった。自分が住んでいる場所の自然の豊かさを見直しました。
畑の間の道ですが、オニグルミやヤナギなどの広葉樹がたくさん立ち並んでいて、とても気持ちのよい空間です。今の時期は、オオイタドリが壁のように両脇にみっしり立ち並んでいて、その茎をイケマのつるがよじ登っていました。さながら巨人の肩に乗るニュートンのごとく。
実はイケマだけでなく、オオウバユリやクガイソウといった自生種もこの道にたくさん生えています。
ほかにも、マメ科のクサフジが咲き始めていました。
この時期どこでも見かける花ですが、若芽、若葉、花は食べれるそうです。畑の近くは農薬をまいているかもしれないので遠慮しておきますが、森の入り口などで見かけたら摘んでこようかな。
最近、近所をあちこち探検するようになって、同じように自然豊かに見える場所でも、かなりの差異があることがわかってきました。
たとえば、たまに用事で出かける道北の最大都市名寄は、裏道の山のほうを通ると、ものすごく鬱蒼としていて自然豊かに見えます。でも、めったに野生動物を見かけない。
それに比べると、わたしが住んでいる自治体は、出かけるたびに野生動物を何かしら一匹は見ます。家のすぐそばでキツネ、タヌキ、シカ、ヒグマ、リスを見るのは日常茶飯事です。ヒグマは家の近所ではまだ一度だけですが、出没情報は頻繁に聞きます。
だから、単に目で見て自然豊かだと感じるのと、実際に自然豊かかどうかはかなり差異がありそう。
動物はミズナラやコクワなど食物になる在来植物がたくさんあるところにしかいないから、動物がいない地域は何かしら植林や開発の手が入っていて、本物の森が少ないのではないかと思います。
こんなに動物たちと共存している地域が、まだ日本に残っているというのが嬉しいし、自分が住むようになった場所がそうだと発見できたのは喜びです。
ところで、さっきサイクリングに行ってきましたが、最低気温が13℃くらいでかなり肌寒い。7月とは思えない…と書きたいところだけど、一昨年7月に旅行に来たときはストーブつけていたくらいなんですよね。
真夏でも朝晩20℃を下回ることが多いし、そんなに異常気象でもないでしょう。どちらかというと、今年の夏はここまでのところ涼しく、この温暖化の時代には珍しく道北らしい天候かもしれない。
今年はコロナでプールに行けそうにないので、このまま涼しい夏が続けばいいのですが、そうそう都合よくいかないでしょう。日本各地を見ても世界を見ても異常気象の災害が多発している今、どこに住んでいても備えが必要だと感じます。
コロナウイルスについてのメモPart4.2
以前から、次に大きな展開があるとすれば7月に入ってからでは?と書いてきました。確かに7月に入って世界的に感染拡大のスピードが増し続けています。日本でも前回を上回る再拡大の兆しがあります。
世界の感染者、1300万人超 新型コロナ、増加ペース過去最悪:東京新聞 TOKYO Web
ワクチンができれば、コロナウイルスの終息も近づくかと言われていましたが、悪いニュースがありました。開発できるかも怪しいのに、効果が十分かどうか、全員に接種できるか、という点においても難題が山積みです。
新型コロナ、数か月以内に免疫消失か 研究 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
先日書いたように、やはりこの2020年は、1914年に匹敵する人類史の転機になる予感がします。世界大戦が1914以前の文化を破壊してしまったように、もう2020以前の社会には戻らないと思います。予想通り、北半球で夏を迎えるとともに、災害が頻発し始めました。日本の豪雨をはじめ、中国の河川氾濫、アジア各国の洪水など。異常気象に伴う災害は数年前から急増していますが、今年も相当多くなりそうです。
人類が直面している問題の中でコロナなんてほんの一部なので、コロナ問題だけに注目しても意味がないと思います。パーフェクト・ストーム直撃間近のような状況なので、もう引き返しようがないでしょう。
わたしたちは今この瞬間の世相や、限られた自国のニュースだけしか見れないので、大局的な思考ができませんが、後になって歴史を振り返れば、2020年をきっかけに数年単位で世界が変わっていったとの認識になるような気がします。
わたしの関心は、いつ国際社会が平和と安全の演出に向けて結託するか、というところにありますが、前からずっと怪しく感じている5カ国会議のニュースの進展も少しありました。
安保理5カ国のサミット協議 米ロ外相が電話会談:時事ドットコム
露米外相が協議 アフガン情勢、国連5常任理事国など – Sputnik 日本
どうもまだ日程が決まらないようで、7月末の線は薄いかな。ロシアの戦勝記念日の9/3に合わせるつもりなのか。
国連設立記念日かつ75周年の10/24を考えている可能性もありそうだけど、11/2のアメリカ大統領選挙の直前まで引き伸ばしたりするものだろうか。しかし直前のほうが劇的な発表にふさわしいともいえるのか?
今のところ何もわからないし、まったく的外れなのかもしれない。予想だにしないことが次々と起きてきた2020年はまだ折り返したばかり。これからも予期せぬことを予期して過ごすことにしましょう。
2020/07/15水
虹色の実のニワトコ、実がなりはじめたマムシグサ
今日は連日の疲れからか、妙に眠たくて何もする気になれませんでしたが、近くの森を少しだけ散歩しにいきました。
先日エゾスズランを見かけた森の中の小道を散策。遊歩道から外れて、ササの生えていない森の斜面をうろうろ。クマイザサがない場所は、丈がそれほど高くない在来種が色々見られるので、歩いていると楽しいです。
はじめに見かけたのは、エゾニワトコの実。
もう市街地では真っ赤に色づいていて大変目立つニワトコですが、森の中ではまだ完全に色づいていません。赤み掛かる途中の虹色のグラデーションがなんとも言えず美しい。
エゾニワトコは、セイヨウニワトコと違って、花に香りがないため、コーディアルづくりには向いていませんでした。でも実はホワイトリカーに漬けて果実酒にするといいらしい。でもわたしはお酒を飲まないから意味がない。
次に見かけたのは、あの特徴的な鳥足状複葉。マムシグサ(コウライテンナンショウ)です。いったん覚えてしまえば、他に類のない奇妙な葉っぱの形なので、すぐに見分けられるようになります。
ちょっとわかりにくいですが、写真中央の枯れている白いツルみたいなのが、マムシグサの花です。もう糸みたいになって枯れているので、これは雄花ですね。ということは、近くに雌花もないかなー?と軽く探してみましたが見つからない。
そこで、今まで行ったことのない、怪しい獣道の奥へ。怪しいといっても、遊歩道のすぐ近くだし、ヒグマがいそうな森の奥とは正反対の方向に伸びているものなので、たぶん林業関係者か何かが歩いた跡でしょう。植物の丈も低くて見通しがよいので危険はなさそうです。
行ってみると、見つけました! マムシグサの雌花です。
さっきの萎びた雄花と違って、まるでトウモロコシみたいな実がついています。こからどう見ても美味しそうなのですが…
食べたら大変なことになるシュウ酸カルシウムのカタマリなんですよね…。一応、頑張れば根っこくらいは食べれるそうですが、よほどの食糧危機にならない限りは挑戦したくない植物の筆頭です。
ユキザサ、オオアマドコロ、ホウチャクソウ、オオバタケシマランの実の比較
その獣道に生えていたユリ科(今はキジカクシ科)のややこしい植物群。どれも葉っぱだけでは見分けづらいものばかりですが、実がなっていたので、比較してみました。
まずは山菜アズキナとしても知られているユキザサ。ついこの前も写真に撮りましたが、比較的実がたくさん残っているものを発見しました。これならば赤く色づくまで残っているかな。
ユキザサは、葉っぱがやたらと似ているこの仲間の植物の中で、唯一、花や実が葉っぱより上につくので、花期以降はとても見分けやすいです。でも山菜として食べる芽の時期は、毛深さや根の形の違いを見ないと判別できません。
ユキザサとの見分けで一番困るのが、前に書いたようにホウチャクソウ。芽の時点では非常に似ていますが、実のころになれば、こんなに違う。葉っぱの下側にひっそりとぶら下がっているさくらんぼのような実(1~3個セット)で、青黒く熟します。
次の写真は、今日見かけたオオアマドコロと思われる実。アマドコロも芽の時期なら山菜として食べれますが、やはりホウチャクソウとの見分けが難しいので、あまり積極的に食べようとは思いません。
オオアマドコロはホウチャクソウと同じく、花や実は、葉っぱの下側にひっそりとぶら下がるようにつきますが、竿状になった茎に沿ってたくさんぶらさがるのが特徴。こちらも実は黒っぽく熟します。
そして、今日発見して驚いたのが、下の写真の実。葉っぱだけ見れば、ユキザサ、ホウチャクソウ、オオアマドコロ(とナルコユリ)などと区別がつきませんが、葉っぱの下に美しいグラデーションの実がぶら下がっています。オレンジ色になっていることからして、赤く熟すタイプだと推測できます。
また、上の写真の葉っぱは、すべて同じ茎から分岐していました。たくさん群生しているわけではなく、ひとつの株が枝分かれしていたようです。
アマドコロ、ナルコユリ、ユキザサは茎が分岐しないはずなので、それらとは違う。ホウチャクソウは茎が分岐しますが、上の写真のように実は先端にぶら下がるだけだし、色も赤ではなく青に熟します。
ということはこれはいったい何だ?
まさか…と思ってネットで調べてみたら、どうもオオバタケシマランではないかと思います。実の果柄がちょっとねじれるように曲がっているところもよく似ている。
オオバタケシマランは松山湿原のあたりの森で何度も見ていますが、まさかうちの近所の森にあるとは思ってもみませんでした。花も一度も確認していませんが、地味な花だから見逃したのでしょう。
ということは、サンカヨウも探せばどこか近所にあったのかなぁ。同じ道北の森なんだし、それほど植生が違うとは思えないので、林道の奥など探してみれば見つけられた可能性はあります。ヒグマと遭遇しない程度に来年も探検してみましょうか。
ヤマイヌワラビと思われるシダ
そのあたりで見つけた小さめのシダ。以前は、小さいシダは成長途上の葉だと勘違いしていましたが、シダ類はまず葉を伸ばしてから開くので、葉が小さければ、それは小さい種類のシダなのだと学びました。
それで、先日も小さいシダを見つけてよく観察したらジュウモンジシダでした。今回のシダはなんだろう? サイズはわたしの手の大きさの2倍弱。30cmくらいでしょうか。
葉の裏のソーラスを確認してみると、白い三日月形。明らかにメシダの仲間だということがわかります。
葉っぱの全体の写真。形は二回羽状複葉です。
一番の特徴は、茎がすべて赤紫色なこと。写真には映っていませんが、茎の根もとには茶色い鱗片がついていました。
また、羽片の先っぽは全部尖っていますが、小羽片の先は尖っていない点も、見分ける手がかりになります。さらに小羽片の一番下の裂片が耳たぶ状に膨らんでいることも特徴のひとつか。
これらの手がかりから、図鑑を調べてシダの種類を同定してみることに。
まず、小型のメシダだと当たりをつけてみました。北海道にある小型メシダは、イワイヌワラビ、ヘビノネゴザ、ミヤマヘビノネゴザの3種類だそうです。この中だとミヤマヘビノネゴザに似ている?と思ったのですが、細部が違います。
よくよく調べてみたら、これら小型メシダの葉っぱの大きさは15cmから20cmで、ほぼ手のひらサイズです。だから、今日見たシダの葉っぱは、小型メシダというには大きすぎるから違う。
ということは中ぐらいの大きさのメシダかな、と調べていたら、ヤマイヌワラビの特徴にとても近いことがわかりました。葉っぱの大きさは羽片の部分だけで30cmくらい、葉柄を合わせた全体は50cmくらいで、大きさが一致しています。
葉っぱ全体の形がスペードのような三角形になることや、羽片の先はとがっていて、小羽片の先はとがらないこと、付け根の裂片が耳たぶ状なこと、茎が紫色を帯びること、羽片の葉柄はほとんどないこと、なども一致。たぶん合ってるでしょう。
あと、ネットで調べてみたら、一番下の羽片の付け根のほうの小羽片がとても小さい、という情報があり、上の写真でもそうなっていますね。文章で書くとわかりにくい…。イヌワラビ類の見分けについてはここのサイトもよさげ。
さて、せっかく同定できて名前がわかったのだから、ヤマイヌワラビとはいったいどんなシダなのか、これまで人類の文化にどう関わってきたのか、という点をわたしは一番知りたいのですが、そういった情報は全然ありません。イヌワラビというからには、食用にならないんだなーという程度。
わたしは植物を細分化するマニアになりたいわけではなく、もっと人間味のある科学に興味があるわけですが、そのあたりは自分で探していくしかないんでしょうか。
でもとりあえず存在を知らないことには始まらないので、名前がわかって見分けられるようになるのは大切なことです。
夏の星座の位置関係を覚える
今日はよく晴れて星がきれいに見えていたので、久々に星を見分ける練習もしてきました。今年は雨が多かったので、まともに夏の星座を見るのは今日が初めてでした。
夜の22時ごろ。すでに春の星座のうち、しし座は地平線の下に消えていて、かろうじておとめ座の端っこが見える程度です。その代わりに、わし座アルタイル、はくちょう座デネブ、こと座ベガの夏の大三角がくっきりと天球に浮かんでいます。天の川の左下では、木星と土星がかなり明るく輝いています。
そのあたりの星座は簡単だけど、問題はそれぞれの位置的なつながりを理解すること。天候が悪くて曇っているときでも、天球全体の配置を理解しておけば、かろうじて見える星から方角がわかるに違いない。
起点になるのはやっぱり北斗七星。北斗七星のしっぽを伸ばした先に春の星座のうしかい座があり、北斗七星と背中合わせになっているのが、今はもう見えないしし座。
うしかい座の隣にはかんむり座、そしてヘラクレス座があり、ヘラクレスの左手のあたりにこと座のベガがある。(と思っていたら、ヘラクレス座のイメージは上下逆さまで、左手だと思っていたのは右足らしいが、わりとどうでもいい)
ヘラクレス座の下にはへび座があり、そのあたりに、右からてんびん座、へびつかい座、さそり座、いて座といった夏の星座が並んでいる。
これらの星座は、平面で並んでいるわけではなく、半球形の天球に配置されているので、どこかでつながるし向かい合ったりする。
星座の位置をたくさん覚えて、そのつながりを把握するにつれ、アリストテレスをはじめ、古代の人たちが、星は透明の半球に打ち付けられている飾りのようなものだと考えたのも当然だなぁと思う。
現代の科学という先入観なしで見れば、夜空はプラネタリウムのようなドームに見えるし、それぞれの星がはるか遠くに位置する巨大な物体で、しかも何もない空間に重力の綱引きによって浮かんでいるだなんて想像もつかない。
つくづく私達は不思議な造りの世界の中に住んでいるものだと感じる。
ところで、今、ネオワイズ彗星というものが飛来していて、道北の名寄の天文台で観測されたというニュースがありました。肉眼でも見えるそうですが、時間帯が明け方なのかな?
ネオワイズ彗星の撮影に成功、北海道の名寄天文台(ロイター) – Yahoo!ニュース
なよろ市立天文台きたすばるのサイトによると、夜20時ごろに晴れていれば、北斗七星の下あたりに見えるのかな? ただ、今後暗くなっていくそうなので、肉眼での目視はもう難しいのかも?
2020/07/16木
オニノヤガラ見つけた!
どうもあまり調子が良くないので家でゆっくりしていましたが、15時ごろになって今日も森に出かけることに。
晴れた日が続いたので、湿地帯の森もかなり歩きやすくなっていました。それでも入り口付近はぬかるみのドロドロ地面なので、下を見ながら気をつけて歩いていたら…
突然、顔をふと上げた瞬間にこれが目に入ってきました。思わず、「オニノヤガラだ!」と声に出してしまったくらい驚いた。
これはランの仲間の腐生植物(菌従属栄養植物)のオニノヤガラ。地面にぶっ刺さった巨大な矢のように見えるのが名前の由来。いい加減な名前の植物が多い中、インパクトのあるカッコいいネーミングです。
菌従属栄養植物ということで、光合成をせず、完全に菌から栄養をもらっているため、葉が1枚もない。だから矢に例えたネーミングはぴったりですね。
オニノヤガラが共生関係を結んでいるのはナラタケ菌で、ナラタケ菌がオニノヤガラに感染して、オニノヤガラ側がそれを栄養にするそうです。このあたりは秋にナラタケ(ボリボリ)が大量発生するので、オニノヤガラもきっと多いはず。
だから腐生植物といっても、オニノヤガラはそんなに珍しいものではないのですが、前々から見たい見たいと思っていた植物だけに、森の入り口付近で突然遭遇したことに興奮してしまいました。
去年も枯れた茎は見たけれど、花が咲いている状態はこれが初めてでした。
花の形は、独特な膨らみがあり、学名のラテン語では胃袋に例えられているそうです。
まだ上のほうはつぼみなので、無事に成長してくれれば、さらに花が順番に咲いていく様子を観察できそうです。もう少し早く来ていれば、地面から突き出した巨大アスパラガスのような全つぼみ状態も観察できただろうに。
どうしてこのオニノヤガラを見たかったのかというと、アイヌ時代からよく知られていた腐生植物で、たとえば松浦武四郎の石狩日誌に、オニノヤガラ(ヌスビトノアシ)を「アイヌのサツマイモ」として、焼いたり味噌汁にしたりして、ごちそうになったエピソードなどが伝わっているからです。
アイヌは茎の下の塊茎を食べたそうで、塊茎の形から別名ヌスビトノアシと呼ばれるようになったとか。塊茎はサツマイモやジャガイモのようで食べやすいとも。少なくともマムシグサみたいなゲテモノではなさそうです。中国では漢方薬にするため大量に栽培されているらしい。
アイヌ語名ウニンテプは、「そろって姿を消すもの」の意味だと考えられていて、気まぐれな腐生植物のランらしく、一箇所にとどまっていないことを指すらしい。(数年経てば同じ塊茎からまた花が出ることはあるそうですが)
今日見つけたオニノヤガラは、森の入り口の遊歩道に一本だけ立っていたので、さすがに採取する気にはなれませんでした。他にもこれを見つけて経過を観察している奇特な人がいるやもしれない。
どちらかというと、誰もこんな植物のことは気にしていなくて、秋に草刈りが入るときに無残に切られてしまう可能性のほうが高いか。願わくば、実がなるところまで観察したいところなのですが…。
道北でよく見られる腐生植物は、他にギンリョウソウがありますが、そちらはまだ発見できていません。オニノヤガラもたった一本だけでなく、もっとたくさんありそうなものなので、引き続き探してみて、あわよくば根を食べてみたいです。
イワガラミの花、ウマノミツバの実、マンシュウキスゲ?など
そのほかに見つけたもの。
まずはイワガラミ。ツルアジサイと似たツル状のアジサイ科の植物ですが、花びらのような萼片がたった1枚ずつしかつかないことで見分けられます。
なのですが、今まで一度もイワガラミを見たことがなく、ツルアジサイばかりだったので、身近には存在しないのかと思っていました。本当はたくさんあったのに気づかなかっただけなのか、本当に少ないのか不明。
今回見つけたのは、かなり低い位置に花が咲いていましたが、イワガラミという名のとおり、岩に絡みつくなど低い位置にあることが多いのでしょうか。思いがけない出会いでした。
次はウマノミツバの実。周囲にルイヨウショウマがたくさん茂っていて、この葉っぱも一見するとルイヨウショウマに見えたので、ひとつだけ違う実がなっているように見えて混乱しました。
しかし、実のようなものをじっくり見たら、なんのことはない、ウマノミツバらしい花が残っています。ウマノミツバは引っ付き虫状の実をつけるということを知っていたので正体がつかめました。
ウマノミツバも切れ込みの強い三出複葉なので、ルイヨウショウマの茂みの中にあると、見た目が紛らわしいんですね。
さっきのイワガラミのすぐ近くにあった、やたらと葉脈の目立つ葉っぱ。どうやら何かの若木のようですが、何の葉っぱかわかりません。これほど葉脈が目立つということは、ハカリノメの異名を持つアズキナシでは…?と思うのですが。
その辺に生えていた、そこそこ大きなキノコ。これも何かわからない。そのうち重い腰を上げてキノコ、コケ、地衣類も勉強しないとなぁと思いますが、来年以降かなぁ。(追記 : 卵の殻がついているのでツルタケか?)
最後は自宅の庭に咲いていた、黄色いユリ。ゼンテイカにしては黄色っぽいし、葉っぱも細いのでキスゲでしょう。このあたりならマンシュウキスゲかもしれませんが、もともと庭に植えられていた園芸種(ヘメロカリス)なのか、どこかから飛んできた在来種なのか不明。
車で走っているとき、道路脇に若いキツネがいました。大きさからして、今年生まれたばかりの子どもでしょう。まだ警戒心がないのか、好奇心が強いのか、車が近づいても、なかなか逃げようとしない。
注意しながらじりじり近づいたら、ようやくしげみに逃げ込みましたが、茂みの奥からこちらをじっと見ていました。
先日見た子グマは一瞬で逃げたのにキツネはのんきです。見かける頻度からしても、クマのほうがキツネより臆病。やはり獰猛な個体はアイヌ時代に淘汰されてしまったということなのでしょう。
2020/07/17金
ネオワイズ彗星見れた!
一昨日、なよろ市立天文台きたすばるが撮影したというニュースで初めて存在を知ったネオワイズ彗星。
時事情報に疎く、知った時にはすでに明るさのピークを過ぎていて、もうチャンスはないかな、とあきらめかけていましたが、今日はなんと快晴も快晴。プラネタリウムのドームのように、雲ひとつない空でした。
昼間は暑さで夏バテしていたこともあり、今日は夜にネオワイズ彗星を見るという目標に焦点をしぼることに。Comet Bookという優秀なアプリのおかげで、現在位置を参照して日時ごとの場所を調べることができました。
ここ道北のわたしの家の付近からだと、北斗七星のひしゃくの端っこの星ドゥベーと、やまねこ座の間にネオワイズ彗星が見えるようです。位置的には非常にわかりやすくて助かる。
アプリによれば、午後20時には20°付近の高さにありますが、21時には10°の高さまで落ちて、その後は地平線すれすれになり、再び上がってくるのは午前3時ごろでした。
朝は早起きが苦手なので、夜のほうがいい。夜空が暗くなるのが20:30くらいなので、観測のチャンスは、20:30から21:00くらいと限られています。
それで、20時15分ごろ、いつもの星空観測スポットまで、車で10分くらいかけて出かけることにしました。
家のすぐ近所ですが、野生動物がたくさん出る山の中の駐車場。今日も道中でキツネを二匹見かけました。安全運転を心がけ、スピードも極力落とします。
山の中の森に囲まれた場所ですが、高い山やビルはないので、10°くらいの高さまでなら十分視認できます。
星空の見えやすさを計測するボートルスケールでいうと、クラス2と3の間くらい。日本国内では十分に一級品の星空が見れます。もっと奥までいけばクラス1から2の場所もありますが、さすがに怖いので。
到着した時点では、まだうっすら夜空が明るく、限られた一等星や二等星しか見えていませんでしたが、それでも彗星らしきものが肉眼で見えました。すごい!
持ってきたカメラを向けてみると、露光撮影をするまでもなく、デジタル画面に彗星の姿がはっきり映っていました。彗星を肉眼で見たのは初めて。道北に住んでいてよかった!
それからさらに暗くなってくると、もっとはっきり肉眼で目視できるようになりました。ほかの星々も空を埋め尽くし、満天のドームに包まれます。
いつもこの場所にくると、日常の時間の流れを忘れて別世界に入り込んだような気がします。人間が作った社会ではなく、悠久の時が流れる地球の息吹が感じられます。
懐中電灯を消せば、もう何も見えません。闇が広がる中、頭上に星々がまたたいて、野生の音が響きわたるだけです。
どこからかカエルの大合唱と、キャン!と鳴くキツネの声が響いてきました。念のため、熊鈴を常時鳴らしていて、時々懐中電灯で周囲をぐるりと照らしましたが、幸い、野生動物が近づいてくることはありませんでした。
いつ来ても星空の豪華さに圧倒されますが、今日はそれに加えて、ネオワイズ彗星という旅人が立ち寄っています。次に現れるのはなんと5000年後。人間のスケールをはるかに超えた時間のサイクルに圧倒されます。
ほかの方向の星空もとても鮮明で、天の川もくっきり見えました。とりわけ今は木星と土星が明るく目立ちますが、双眼鏡程度では模様までは見えませんでした。
帰りの道中では、車の運転席の窓越しでも、彗星がはっきり肉眼で見えていました。それほど夜空が暗く、彗星が低い位置にあったということでしょう。
家について、車を降りると、家のすぐ前でも、驚くほど星空が燦然と輝いていました。家の前でもボートルスケールのクラス4は十分にありそうですが、今日は特によく晴れて澄み渡っていたのでしょう。
もしや…、と思って、北の空を見ると、北斗七星の下に、本当にうっすらと彗星が尾を引いているのが見えました。さらにカメラを向けてみると、はっきりそこに彗星があるのが映し出されました。
なんと家のすぐ前からでも彗星が見れてしまいました。山の中の観測スポットと違って、そこに彗星がある、とわかっていなければ 気づくのは難しい明るさでしたが、それでも10倍の双眼鏡で見ると、肉眼でもはっきり見えました。
ただ彗星を見たいだけなら、それこそテレビやインターネットの画像でいくらでも見れます。なよろ市立天文台の画像でもいい。
だけど、自分の調べて、山の中まで見に行って、ほんのりと涼しい夏の夜の風を感じながら、動物たちの鳴き声も聞きながら自分の目ではっきりと見た彗星は格別です。この思い出は、他のどんな写真や動画とも比較になりません。
見えないかもしれない、とあきらめかけていたけれど、挑戦してみてよかった。自分で経験したからこそ味わえる喜びが、今わたしの中に湧き上がっています。
2020/07/18土
友達とネオワイズ彗星鑑賞した夏の夜
17日に引き続き、空が雲ひとつない快晴なので、18日夜も友達を誘って、彗星を目視できるポイントに見に行っていました。コロナ対策のため、現地集合です。
21時ごろに着いていた友人のもとに、わたしが10分くらい遅れて到着し、さらにもう一人が15分くらい遅れて来ました。誰もいない真っ暗な森のそばでしたが、友人もわたしも待つのは苦になりませんでした。
涼しいそよ風と、ずっと見上げていても飽きない星のまたたき。みんなそろってからも、22時まで楽しくおしゃべりしました。
ランタンに灯をともしてみんなでしゃべっていると、見ず知らずの方の車が通りかかり、彗星の写真を撮っていかれました。
今回のネオワイズ彗星は、北海道では北極星を中心に回転して一日中沈まない周極彗星なので、意外と遅い時間でも観測できます。
昼は焼け付くような暑さですが、夜は涼しくて、子どもの頃の夏祭りを思い出します。まだ何十年も経っていませんが、あのころはまだ都市部の夜でも涼しかったような気がします。
ここ10年ほどでしょうか、東京や大阪は、夜もクーラーを入れないと寝られないほどの熱帯夜が増え、夕立ちの代わりにゲリラ豪雨が襲い、毎年のように九州や四国で豪雨災害が起こり、台風シーズンが命がけになってきたのは。
道北に引っ越したおかげで、わたし個人としては、そうした異常気象の影響をあまり感じなくなりました。ここにはまだ、わたしが子どものころの自然と、昼夜のメリハリのある気候が残っています。
真っ暗でお互いの顔も視認できないような夜の山道で、一日の終わりに涼しい風を感じながら、友達とおしゃべりして、彗星と満天の星空をゆったりと見上げる。なんて贅沢なんでしょうか。
いや、本来、こういう生活は贅沢なんかじゃなかったはず。ごく当たり前のように降り注ぐ星の下で、キャンプファイヤーを囲みながら談笑していた時代があったはずなのに。
家を出るときに、家の玄関のすぐ前を、まさに「脱兎のごとく」という言葉がふさわしい走り方で、エゾユキウサギが走り抜けていくのを目撃しました。観測値付近ではキツネやタヌキのような影も見かけました。
今はまだ平和で、温暖化の危機もそんなに感じられず、コロナの魔の手も伸びていない道北。だけどきっとこの平和はいつ壊れてもおかしくない、今となっては貴重なひと時なのだろう、と切実に思います。
2020/07/19日
シナノキがちらほらと咲いています
連日30℃でうだるように暑いです。まだクーラーは入れていませんが…。
公園でシナノキが咲き始めました。風下に立つと、とてもいい香りが漂ってきます。
森で野生のシナノキの花を見つけたらハーブティー用に採りたいのですが、手の届く高さのがまだ見つかりません。
オオウバユリのゆり根の調理方法を教わりました
下川町で行われたオオウバユリのゆり根をアイヌ式に調理するイベントに参加してきました。
このご時世なので、集団で食事をするタイプのイベントに参加するかは迷ったのですが、まだ名寄近辺は大丈夫そうな感じだったし、今後来るであろう食糧危機の時に少しでも役に立てばいいかな、と思って。
イベントのコロナ対策は形式だけのものだったので、もし感染者が紛れ込んでいたらアウトでしたね。士別以北はまだ一人も感染者は出ていないから、みんな油断しきっていますが、今回の第二波は危なそうな気がしています。
今回はまだここまで魔の手が来ていないから、形式だけの対策でも、そうそう感染してはいないと思いますが、今後こうしたイベントに参加するのは、やっぱり当分は控えたほうがいいかな、と思いました。
道北は人口密度が日本で一番低い地域なので、普通に生活していれば感染しないはずですが、もし感染者第一号となれば大騒ぎになるのでそれだけは避けないと。都市に出かけたり、イベントに参加したりは控えて自己防衛が必要です。
さて、肝心のイベント内容ですが、オオウバユリを森で掘るところから始めて、調理して、みんなで食べるところまでやってみるという、たいへん楽しい内容でした。
オオウバユリは道北に住んでいれば、名前は知らずとも誰でも見たことがあるほど一般的な自生種ですが、食べたことのある人はめったにいません。わたしも、アイヌの主食だとは知っていたけれど、自分で調理するのはハードルが高くて挑戦していませんでした。
今回は、まず、どのオオウバユリを掘ったらいいかから教わりました。オオウバユリは芽を出してから7年くらいかけて栄養を溜め込み、花を咲かせて一生を終えますが、ゆり根(鱗茎)を採るのは花を咲かせない株(アイヌ式に言うとメスのオオウバユリ)。
今年花を咲かせる株(アイヌ式に言うと「オスのオオウバユリ」)は、子孫を残してくれるので採るのはご法度だし、そもそも花を咲かせるために全エネルギーを使うので鱗茎がなくなっているそうです。
だから、花を咲かせる前年や前々年くらいの株がいいのかな。ギョウジャニンニクと同じですね。そうした花を咲かせない葉っぱだけの株は、今年花を咲かせる花茎が伸びた株の回りを見れば見つかります。
掘る時期は6月下旬から7月上旬くらいがいいとのこと。ちょうど咲いていて見分けやすい時期ですね
初めて掘ってみたオオウバユリの鱗茎。意外と浅くて、先日のエゾノリュウキンカの根っこよりは掘り起こすのが楽でした。
アイヌ生活文化再現マニュアルだと、専用の堀り道具を使っていたので、かなり大変なのかと思っていましたが、スコップで大丈夫でした。単にアイヌ文化の道具を再現してあっただけみたいですね。
この鱗茎を、みんなでたくさん採取しまして、
ひとつひとつ丸洗いして泥を落とします。このゆり根は鱗茎、つまり鱗が重なり合ったような形をしているので、洗いながら一枚一枚をパリッと剥がして、分解していきます。
そうして細かく分解した鱗茎のかけらを、杵と臼で、ひたすらすりつぶして砕いていくと、次第に粘り気が出てきてて、とろろ芋のような半液体状になってきます。水はまったく加えていません。
この砕く作業がかなり大変。こんな大変な思いをしてまでオオウバユリを主食にして食べていたのか…と思いましたが、よくよく考えてみたら、我々の主食である稲や麦を脱穀するよりかはよほど楽かもしれない。現代の都会人がその苦労を知らないだけで。
砕いてドロドロになったものは、水と混ぜて、何日も置いたり、発酵させたり、繊維を濾し取ったりするのを何度も繰り返して、高品質のデンプンを分離させます。詳しくはアイヌ生活文化再現マニュアル 食べ物【春から秋へ】を参照。
今回は、短いワークショップということで、そこまで手間はかけず、デンプンと繊維と混じり合ったままで、焼いて食べることになりました。
フキの葉に包んで焼いたり、
イタドリ(クッタル=中が空洞の意)の茎に詰めて蒸し焼きにしたり、
本来のアク抜きの手順を踏まないまま食べましたが、特に癖も苦味もなく、白米やパンを食べたときの印象に似ていました。やはり主食にするのは、癖がないけれど、噛むと美味しく、他の食材と合わせやすいものが選ばれるんでしょうね。
繊維を取っていないので、やや食べにくさはありましたが、食糧不足の時に食べるのなら、これくらいなんてことなさそう。
輪っか状にして吊るして乾燥させることで、保存食にもできます。というかむしろ、アイヌ民族にとっては、厳しい冬を乗り切るための保存食としての用途がメイン。
この一見ココナッツの塊みたいなのを、刃物で削って、お湯でもどして、おかゆや汁物に入れるなどして食べるようです。昔のインスタント食品ですね。
前からずっと、オオウバユリの根っこを食べてみたい、料理方法を知りたい、と思っていたので、とても勉強になりました。コロナ禍でなければ、友達を集めてみんなで料理してみたいと思うほど。
本当にいつか食糧不足が来るのか? そんな状況で、道北の自然はちゃんと作物を生み出しているのか? 将来のことは何もかもわかりませんが、この技術を活かせる時が来てほしいような、来てほしくないような…。
2020/07/20月
サンカヨウの実はほんのり甘くて美味しい
連日の30℃の猛暑の中、友達がどうしても松山湿原に行きたいと言うので、頑張って朝早く起きて行ってきました。コロナ対策のため現地集合。
登山道入り口あたりのサンカヨウの群落が、とてもきれいな実をつけていました。
まるでブルーベリーやプルーンのような見た目。事前調査で食べれることを知っていたので、試しに一粒口に含んでみると、ほんのりと甘い優しい味でした。
友人は水臭いと言うけれど、わたしは酸っぱいベリーが苦手だから、ほんのり甘いサンカヨウやエンレイソウの実の味のほうが好み。幾つか種が入っていたので、大地に返しておきました。
登山道ではつい先月や先々月に花を見た植物が、続々と実をつけていました。まずツバメオモト。まだラピスラズリのような藍色には熟していませんが、青と緑が入り混じったこの段階は、くじゃくの羽の色彩のようで魅了されます。
とっくの昔に花は散ってしまって、巨大なハクサイのように立ち並んでいるミズバショウの葉。その中に、これまた奇妙なトゲトゲした実が。ジャックフルーツみたいだな。
色とりどりに熟していたオオバタケシマランの実。これを見て、やはり先日家の近所の森で見かけたのはオオバタケシマランの実だったのだと確証が得られました。花が咲いているときは全然存在に気づかなかったのに。
オオバタケシマランの実を紹介してあげると、意外にも友人がとても喜んでくれました。葉っぱをちらっとめくると、裏側にこんな可愛らしい実がぶら下がっているという意外性が受けたみたい。近くにホウチャクソウとかアマドコロもあれば違いを説明してあげられたんだけど、見つからなかった。
ツルニンジンのツルにつぼみがついていました。夏に咲く花なので、もうすぐ開花しそう。うちの近所ではもう咲いているかもしれないので、今度探してみます。
登山道でたくさん見かけた、謎の小さなシソ科の花。ウツボグサにも似ていますが、Google Lens先生に調べてもらったら、どうもトウバナとかクルマバナと呼ばれる花の仲間らしい。
シソ科というところから予想されるとおり、ハーブとしても利用される。カラミンサという名前で流通しているとのこと。もしかしたら、うちの近所の森に最近生えていた謎のシソ科の葉はトウバナだった? 改めて花が咲いていないか見に行きたいです。
次のも何かよくわからなかった、謎のセリ科。花の形からして、シャクやオオハナウドでないことは明らか。その2つは周辺部の花びらがもっと大きいので。
見覚えがないところからすると、今まで見たことがないセンキュウ類かトウキ類か? 写真にかろうじて映っている葉っぱからするとミヤマセンキュウのような気がします。
もっとじっくり見たかったんですが、友人と一緒だったから、急かされてしまって、大雑把に写真を撮る時間しかありませんでした。他人と山に入ると自然観察できない。
(追記 : ミヤマセンキュウではなく、オオカサモチの可能性も。 オオカサモチの花期は7-8月、ミヤマセンキュウは8-9月なので)。
ヤマソテツの胞子葉、シラネワラビ?、ヒカゲノカズラの花など
登山道で目立っていたのが、ヤマソテツの胞子葉。あちこちからにょきにょき出てきていました。一ヶ月前に来たとき、この場でヤマソテツの前年の枯れた葉と若芽を見たのを覚えています。
昔ならシダなんて全部同じに見えていたけど、今はこの胞子葉が面白くてたまらない。葉っぱなのに葉っぱじゃない奇妙な魚の骨のような形。
これももっと近くで見てみたかったのですが、当然のように友人はシダには興味がないし、興味をもたせることもできないので、写真しか撮れませんでした。
道中見かけた謎の赤いシダも。すれ違いざまに写真に撮るのが精一杯。後で拡大すればわかるかと思ったのですが、解像度が足りませんね。たぶん表側が赤いのだと思いますが、ミヤマベニシダでしょうか?
(以下の写真2枚とその解説は11月に追記) 謎の五角形ぽい形をしたシダ。五角形にしては少し間延びしている感じがします。
ソーラスは白い粒状。裂片の先はとがってノギ状になっており、袋状の鱗片は見当たりません。よってこのシダはシラネワラビの可能性が高いか。
去年も見たヒカゲノカズラの花。きっと咲いていると思ったので、友達に紹介しようとしたけれど、探している間に先に行ってしまわれた…。記憶に残っているよりはるかに小さくて、すぐに見つからなかった。そういえば去年見たのは9月なので、もう少し成長した後だったんでしょうね。
7/3に訪れた時に見つけたのと同種と思われる謎のつぼみ?がかなり成長していました。あちこちでやたらと長い茎を伸ばしていて、葉っぱはわずかしかついていないので、かなり奇怪な見た目。
前回ちゃんと確認していなかった葉っぱは、この写真から2回3出複葉だと確認でき、葉っぱの形や葉脈のしわしわ加減からすると、おそらくサラシナショウマの可能性が高そう。サラシナショウマの葉は上のほうは2回3出、下のほうは3回3出だそうです。
つぼみのほうも、前回の写真では、サラシナショウマにしてはつぼみが小さすぎる?と思っていたら、ちゃんと大きくなってきて、花柄もちらほら伸びてきたので、総状の花が咲くことが予想できます。きっとサラシナショウマで合ってる。
湿原に咲く謎の可愛らしい花はじつは…
てっぺんの湿原でも面白い花がたくさん見れました。まずこの小さな白い花。友人にいったい何かと聞かれたけれど、全然わかりませんでした。白い小さな5弁の花といえばオオヤマフスマとかだけど、どうも違う…。
このとき、ちゃんと、どれが葉っぱなのかまで確認する余裕があったらよかったんですけどね。湿原の植物は保護植物で触ったりできないし、近くまで寄れないので確認が足りなかった。
帰って調べて驚きました。なんと食虫植物モウセンゴケの花でした。
この写真だと、ぼけてはいますが、花の真下にモウセンゴケの葉っぱがあることが確認できます。まさかあんなケバケバしい派手な葉っぱの食虫植物が、こんな普通で地味な花を咲かせるとは…。
今ちょうど見頃だったのはラン科のトキソウ。
鴇色に染まる花びらとドレスの裾ような装飾がついた唇弁が可憐です。
アキノキリンソウ?と思われる花。高山型のミヤマアキノキリンソウかな?
アキノキリンソウといえば、子どものころ汚染された河川敷に生えている侵略的外来種セイタカアワダチソウとセットで教わった記憶があるので、こんな山奥で見ると不思議な気分。
じっくり見たこともなかったけれど、そばで見ると、とても美しい造形に心奪われます。別名コガネギクと呼ばれるだけのことはある。
エゾゴゼンタチバナの実。樺太でいうヤマジンタンとはこれのことらしい。もっと熟したのを一度味見してみたいのだけど、ここの湿原は採取禁止なので食べれない。近所に他にもある場所の心当たりはあるけれど、今のわたしのレベルでは行くのが難しい…。
友人を連れてのガイド登山は、ずっと急かされっぱなしで疲れましたが、友人は楽しんでくれたようでよかったです。ずっとこの近辺に住んでいる地元の方ですが、なぜかすでに松山湿原とか植物についてはわたしのほうが詳しいので存分に案内できました。
一番喜んでくれたのは最後に案内した滝でしたね。いかにも秘境の隠れスポットといった雰囲気や、炎天下の登山の後の涼しい空間に、近所にこんなすごい場所があったなんて知らなかった!と大喜びでした。
2020/07/21火
指の痛みについての体調メモ
数日前から謎の痛みが体の数カ所に出ていたのでメモ。
まず顎が痛い。たまに顎関節症気味になる症状か。昔、慢性疲労症候群がひどかったころは、ずっと顎の筋肉が凍りついていて、マウスピースを作ったほど顎関節症がひどかったですが、最近は問題なくなっていました。
しかし、いきなり暑くなったせいで、体に負荷がかかって一時的に再発したのでしょう。幸い、これは数日で軽くなり、もう治りかけです。
次に肩甲骨の隙間あたりの刺すような痛み。これもたまに起こりますが、発生条件不明。先週のニンニク掘りの重労働が尾を引いた筋肉痛の一貫であればいいんですが。
最後に、これが一番困っているのが、右手中指の第二関節の痛み。原因がまったくわからず、今のところ治る気配がなく悪化ぎみなのが怖い。単なるキーボードのタイピングによる腱鞘炎だったらいいのですが。
不安なのは、東京にいた頃から、謎の指関節の痛みが時々起こっていて、リウマチ等の自己免疫疾患を疑ったことがあるから。その時は検査で異常は出なかったし、今回の痛みは左右対称ではないから、違うと思いたい。
オオバボダイジュが満開
友人の家のトマトの剪定などを手伝いに行く途中、何度か経過を見て日記にも載せていたオオバボダイジュが、ついに満開に咲いているのを見つけました。
手の届く高さに花が咲いているので、近くから見ることもできました。
ほんの10日ほど前はまだ花が咲いていなかったのに、今日見るともう満開どころか、実ができ始めているものも沢山あって、植物のタイムスケジュールは一瞬で過ぎていくんだなぁと痛感しました。
道端では、あちこちでアジサイのような花をつけた低木が見られます。一昨年も、去年も、ただのガクアジサイだと思っていたけれど、今ならこれがノリウツギだと見分けることができます。
普通のアジサイと違って、花が円錐形になっているのが特徴のひとつ。葉っぱの形も少し違いますね。冬に冬芽を見て歩いて、この地域はノリウツギだらけだと気づいていたので、ようやく花が見れて感無量です。
昔は、アジサイとガクアジサイの2種類しか知らなかったことを思えば、今やノリウツギやバイカウツギ、ツルアジサイやイワガラミ、ミヤマガマズミやオオカメノキなど、似たような花をつける木々をたくさん知っているのですから、わたしも変わったものですね。
スイレンとキツリフネ
今まで知らなかったといえば、睡蓮も一種類しかないものと思い込んでいました。でも、地元の自然ガイドブックを読んでいて、ヒツジグサなる種類を知りました。しかもそれがスイレンの仲間で唯一の在来種だとは。
今日もスイレンを見かけたのですが…
これはセイヨウスイレンのほうですね、残念。日本在来種のヒツジグサは、もっと花びらの枚数が少なくて、サイズも5cmくらいと超小ぶりなようです。
たぶん道北でも沼沢地などに行けば、ヒツジグサの亜種であるエゾノヒツジグサや、エゾベニヒツジグサが咲いていると思いますが、今のところ、家の近所ではスポットを発見できていません。
川辺や沼の植物は、今年全然発見できていないので、そのうちいい場所を発見して通いたいものです。ヒツジグサもそうだし、アイヌが利用したと言われるヒシやコウホネが見たい。
その近くではキツリフネもついに咲き始めていました。先日のヒヨドリソウもそうですが、キツリフネも去年、わたしが自然観察を開始した季節に咲いていたものなので、あれから一年経ったんだなぁと時の流れを感じます。
この写真で、キツリフネの下のほうに咲いている4弁花の黄色いドクダミみたいな花はいったい何でしょうね。たかが一年自然観察しただけではまだまだわからないものだらけです。
だいふ前にも見かけたミゾホオズキの花。
その名のとおり、ホオズキっぽい形の実をつけていました。
夏の最後を彩る外来種たちが咲き出した
ノラニンジン。別名クイーンアンズレース(アン女王のレース編み)。レース編みの時に針で指をついた血になぞらえられる赤黒い花がひとつだけあるのが特徴。
しかし、去年から、一見するとその赤黒い花がない個体がけっこう多いように思えて、別種なのかと思っていました。
けれども、今日、庭に咲いていたのをよくよく見てみてると、白い花に中心部の赤黒い花が埋もれて見えなくなっていただけで、なんのことはないただのノラニンジンでした。
セリ科の花を図鑑で見ていると、山菜のシャク(ノニンジン)とノラニンジンはいったいどうやって見分ければいいのだろう?と思って、調べても情報がなく、混乱したりしましたが、単に咲く時期が全然違うのですね。隣に並んで咲いたりしないので、わざわざ区別せずとも見分けられます。
もう一つ、道北の夏を彩る、うんざりするほどたくさん咲く外来種といえばオオハンゴンソウというルドベキアです。在来種の無印ハンゴンソウがめったに見つからないくらいオオハンゴンソウだらけになります。
今日そのオオハンゴンソウが道端でたくさん咲きだしているのを見かけて、いよいよ今年も夏の盛りがやってきたな、と気だるくも覚悟を決めたのでした。
カシス、ジューンベリー、ラズベリーのジャムづくり
友人の家で、カシス(クロスグリ)が黒く実っていました。
友人宅では、ほかにジューンベリーやラズベリー、トマトなども熟していたので、たくさんもらってきて、ジャムやペーストにすることにしました。
まずカシス。黒い豆のようなコロコロした見た目。酸っぱいけれど、ジャムにしたら美味しいのか?
サイフリボクの仲間のジューンベリー。こちらはかなり甘い。
ラズベリー。今ちょうど森の中でもキイチゴがなっている時期です。先日も2つ見つけましたが、写真を撮る前に同行していた友人が食べてしまった!
最後はトマト。すごい量に見えますが、ほとんど水なので、煮詰めると半分以下の量になってしまいます。冷凍して保存しておけば、いろんな料理に使えます。
2020/07/22水
ノリウツギのつぼみ、ツルウメモドキの実
連日動きすぎで死んでる…。この一週間は予定が多すぎたのに、自分でもよくこなせたと思います。今日は雨だし、家でゆっくり寝ています。
中指の第2関節と第3関節の謎の痛みも治らない…。悪化はしていないと思うので、一週間くらい様子を見れば治るような気がしますが、原因がまったく不明。
左右対称ではないし、関節を触っても、むくんでいたり、腫れていたり、熱を持ったりしているわけではないので、リウマチの初期徴候ではない…はず。可動域が狭くなったとか、引っかかるということもない。
ただ単に、曲げ伸ばしや特定の方向からの圧力に強い痛みがある。感覚的には突き指の症状に近いように思いますが、いったいいつ痛めたのか謎…。
以下は、雨の中、少しだけ家の回りを散歩して見たもの。
まだつぼみ状態のノリウツギ。昨日田園部で見たものは立派に咲いていたので、もやはり山や森の近くのほうが季節が少し遅れますね。田園部は森を伐採したせいで気温が上昇しやすいのだろうけど。
ツルウメモドキの実。まだ色づいていませんが、かなり大きく丸くなってきました。
例のフサスグリ(カリンズ)は、ワインレッドの実が増えてきていて、一粒食べてみたら酸っぱいけど柔らかくて食べごろでした。近日中に雨が止んでいるときを見計らって摘みに行きたい。
2020/07/23木
野良フサスグリ(カリンズ)の収穫
先日発見した、うちの裏のイタドリ林の中にある野良フサスグリが、かなりいい色に熟していました。食べてみると柔らかくて酸っぱい。そろそろ収穫時。
明らかに誰かが植えたものではない場所なので、たぶん鳥が運んできたものでしょう。量はそんなに多くありませんでしたが、収穫させてもらいました。ジャムにするには少なすぎるけれど…何に使おうか?
その近くのイタドリ林に埋もれているマユミの若木。まばらに実をつけていました。
花だけの時点では、マユミなのかコマユミ(枝に翼がないタイプのニシキギ)なのか、判別がつきませんでしたが、実がなってみると、明らかにマユミだとわかります。
一般に、マユミの実は、殻が4つに分かれ、仲間のニシキギやコマユミは2つ、ツルウメモドキは3つ、ツリバナは5つということで区別できます。この木は殻に稜が4つあるひし形なので、4つに割れるマユミだと同定できます。
なぜか稜が5つある星型の実も混じっていましたが、去年4つ稜のあるツルウメモドキも見つけたので、時々ゆらぎがあるんでしょうね。
上まで咲ききったオニノヤガラ
午後に近くの湿地帯の森の様子を見に行きました。前に行った時から一週間ほど日が経っているいるので、前回見つけたオニノヤガラがどうなっているのか気になっていました。
一昨日と昨日の長雨で地面がぬかるみがひどくなっているかと思いましたが、長靴でなくても、泥にはまることなく歩くことができました。しかし、途中で高い木が倒れて景色が変わっていてびっくりする場面も。
お目当てのオニノヤガラは、特に誰かに伐られることもなく、前と同じ遊歩道の端っこに立っていましたが、すでに一番上のつぼみまで咲いてしまっていました。
最上段のつぼみが咲いて、その下の花が枯れていると、いよいよ「矢」らしい見た目になりますね。周辺を探してみましたが、相変わらずこれ一本しか見つかりませんでした。ギンリョウソウのような他の菌従属栄養植物も見当たらない。
真上から撮ってみた写真。もしかしたら、フィボナッチ数列の黄金角で配置されているのかな? 花の角度がかぶらないように、わずかにずれているようにも見えます。つぼみの時も真上から撮ってみればよかったなぁ。思いつかなかった。
このオニノヤガラの花が終わったら、掘り返して芋を食べてみるかは悩みどころ。
調べたところによると、オニノヤガラは、一般に点々と違う場所に現れる植物だとされていますが、根が残っていれば、また栄養を蓄えて、数年後に同じ場所から生えることもあるらしい。
オニノヤガラの根っこの味を知りたいから食べてみたいけれど、こんな目立つところに咲く株はぜひ残しておいて、また数年後にお目にかかりたいという気持ちもある。
いや、やっぱりわたしとしては食べるのは忍びないな。別の場所の個体や群生地を根気強く探そうと思います。
少し前にこの森で発見したツルリンドウの葉っぱ。以前見つけた場所とは違うので同じ個体ではありません。たくさん分布しているようで、あちこちで見つかります。
よく見ると、つぼみらしきものがすでについています。ツルリンドウの花を見るのが楽しみ。
森を歩いていて見つけた、謎の気持ち悪い塊。おそらく草刈りでばっさり伐られたシダ植物か何かの茎に、トリモチのように寄生している菌類でしょうか。
鳥の糞のようにも見えるし、虫の卵のようにも見えるけれど、たぶん菌類じゃないだろうか。気持ち悪いので触ってみる気にはなれませんでしたが、いつか正体は知りたいものです。
そういえば、森の中に珍しくオオバコの花が咲いていました。オオバコなんてどこにでもある草ですが、森の中で花を見つけたのは今年初。
おそらく、一度遊歩道が草刈りされたからでしょう。これまで春から初夏にかけて、鬱蒼と茂る背丈の高い草にはばまれて成長できなかったのが、草刈りされて日光が当たるようになって、やっとこさ花を咲かせるにこぎつけたようです。
ナニワズの赤い実を思いがけない場所で発見
オニノヤガラからほんの少し歩いた森の曲がり角、まだ入り口付近のところに、思いがけず、真っ赤な大きな実を見つけました。近くでしゃがみこんで観察しましたが、初めて見る実です。
赤い実のサイズは、かなり大きめで一粒が指の先ほど。同じ赤い実でも、フサスグリ、ニワトコ、マイヅルソウなどの実より大きく、マムシグサほどのサイズはあります。
見たことのない実でしたが、葉っぱが1枚もない枝についていたことから、もしかすると、ずっと探し回っていたナニワズの実では?と推測。ナニワズは、他の植物よりワンテンポ早く花を咲かせ、夏には葉を落とし、実をつけてしまいます。
帰って調べてみたら、やはりナニワズの実で合っていたようです。少し楕円形をしているのが特徴。
この道はいつも歩いているのに、今までここにナニワズがあることに気づかなかったなんて。花が咲く時期に見逃したら、実が色づくまで地味すぎてわかりにくいんでしょうね。
春に花を見かけたナニワズを探し回っていたのに、どれも再会することかなわず、春に一度も見ていない場所で見つけることになるとは。
いかにも、林床を転々とする森の旅人ナニワズらしいといえばらしいか。実を見つけられなかったのが心残りだったので、こうして姿を見れて嬉しかったです。
ここからはナニワズに比べると、見つけやすい他の実いろいろ。
まずルイヨウボタンの実。はじめはゴルフのティーにセットされたボールみたいな形の実でしたが、かなり大きくなって目立つようになりました。ここから青っぽく色づいてくるのかな。
オオアマドコロの実。似通った葉っぱをちらりとめくって、オオアマドコロなのかオオバタケシマランなのかホウチャクソウなのか調べる遊びが地味に楽しい。何も実がついていなかったらハズレ。
葉っぱの見た目は同じなのに、実の形がこうも違うとはどういうわけなのでしょう。特にオオアマドコロの実は、まんまるボールで可愛らしく、緑から青に変わっていく色合いも実に滋味深いです。
葉が似ている有毒ハエドクソウとシソ科ヒキオコシ(ヤマハッカ)
道端に見つけた謎の植物。葉っぱはイラクサに似ていますが、見たことのない花穂が伸びています。
どうやら、ピンク色の小さな花がたくさん咲くようです。
困った時のGoogle Lens先生で調べてみたら、まずシソ科のヒキオコシという花ではないか、と出ました。聞いたことのない名前。
シソ科らしく薬草になり、お坊さんがこれで行き倒れの行者を癒やして引き起こしたというありがたい草らしい。類似した仲間に、ヤマハッカやイヌヤマハッカがあるそう。…ですが、
どうも葉っぱの形がよく似ているけれど違う。今日見たこの植物は、下のほうの葉っぱが、付け根でばさっとまっすぐ切れているような特徴的な外見でした。専門用語でいうと、くさび形ではあるものの、切形に近い。
それに葉っぱどころか、花の形がかなり違うように見えました。同じピンクの花でも、今日見たつぼみが、ヒキオコシやヤマハッカみたいな花柄のある花にはなりそうもない。中心の茎から直接咲いているように見えます。
これも専門用語でいえば、ヒキオコシやヤマハッカは円錐花序(総状花序)なのに対し、今日見た花は穂状花序といえる。
それで、もうちょっと調べてみたら、Google Lens先生が挙げてくれたもう一つの候補である、ハエドクソウという有毒植物だとわかりました。どのみちわかってしまうGoogle Lensの精度は本当にすごい。
ハエドクソウは、昔ハエ取り紙づくりに使われていた花なのだそうです。山菜採りで有毒植物についてはそこそこ認知しているつもりでしたが、まだまだ地元でも知らない植物があるものですね。
にしても、ハエドクソウは、シソ科の葉っぱによく似ている。花が咲いていれば容易に見分けられるけれど葉っぱだけで確実に見分ける自信がない。
大きさも全然違うので多分大丈夫だとは思いますが、似ているヒキオコシ、ヤマハッカなどを採取する時は、花を確認してからのほうが確実なのかな。
(追記 : 2日後、別の森でもハエドクソウを見つけました。そちらのほうが数が多く、すでに花が咲いていたので、よりしっかりと観察できました。
ひょろりと長い花茎が1つの株から何本も立ち上がっています。
極小の花を頑張って接写してみたら、濃い赤紫色の、三本の前髪のような模様が刻まれていました。
一つ一つの小さな花の形は、シソ科のウツボグサやイヌゴマに似ているかな。
ルーペで見ても小さすぎる上に、タニタデのような可憐さもなく、しかも有毒植物とあって、今ひとつ感動が湧きません…。しかし、細長いムチのような花序や、やがて実がなった後の折りたたみはとてもユニークです)
葉が似ている毒草キツリフネとシソ科トウバナ(クルマバナ)
葉っぱが似ているといえば、月曜にはじめて知ったシソ科のトウバナと、キツリフネも似ている…。トウバナがハーブとして有用なのに対し、キツリフネが有毒なことも同様。
最近森を歩いていると、「お、キツリフネかな?」という葉がやたらと沢山あったのですが、大半はトウバナで、一部のみキツリフネのようです。
これがトウバナで…
こっちがキツリフネ。
葉っぱだけ見ていると、あまりに似すぎていて困惑します。花やつぼみがない時期に見分けるとしたら、トウバナはシソ科らしく上から見ると十字対生なのに対し、キツリフネは互生であること。
実際、森を歩いていて、キツリフネは葉っぱがばらけているのに対し、トウバナは葉っぱはそっくりなのにいかにもシソ科らしい十字対生だったので、もしや別の植物かな?と勘付いてはいました。
トウバナは別名カラミンサ(美しいミントの意)と呼ばれるハーブ。キツリフネは苦味があるので毒だとわかりやすいそうですが、乾燥させてハーブティーにしてしまうと、苦味があっても気づかないかもしれない。
花が咲いている時期なら間違わないでしょうから、今のうちにトウバナを森でたくさん摘んでみようかなと思っています。
うつむき美人のクルマユリ、夏の折り返しを告げるイタドリの花
花が少ない今の時期の森の中で、ひときわ燦然と輝くクルマユリの花を見つけました。あまりの派手さから園芸種かと思うほどですが、アイヌ時代から利用されるれっきとした在来種のようです。
この時期花壇によく植えられているオニユリやコオニユリとよく似ている花ですが、クルマバソウやクルマバツクバネソウのような車輪のように輪生する葉っぱを見れば、クルマユリだとすぐ気づけます。
オニユリやコオニユリもそうですが、花びらの反り返りが強く、タコウインナーみたいな大胆な姿をしています。
うつむき加減に咲き、反り返りが強いせいで、上から見ても、そっちが正面かと錯覚しそうなほど。この反り返りの強さは、ツルコケモモの花を思い出させますね。
下から見上げるように撮ると、やっと美人なお顔を拝見することができます。
アイヌ語では各地方言による違いはありますが、いずれもいかにも実用性を重んじるアイヌらしい名付けで、ユリの花の可憐さなど眼中になく、食用部分のゆり根に注目した名で呼ばれていたようです。
オオウバユリの鱗茎ほどの主要の食物ではなかったものの、中心を取り除いてからほぐし、米にまぜて炊いて、クルマユリ飯として食べたと書かれていました。そのうち挑戦してみてもいいかも…?
そして、ついにイタドリの花が咲いていました…。こちらは雄花ですが、道路脇で雌花が咲いているのもちらりと見かけたような気がします。
接写で拡大してみると、こんなに小さいけれど、確かに花の形をしています。あの巨体に似合わぬ繊細な花の集合です。
オオハンゴンソウが咲き、オオイタドリが白い花を満開につけると、もう夏も折り返し地点に到達したような気分になります。
2020/07/24
貯水池周辺に咲いていたオトメイヌゴマ
気温は低く、涼しいというか肌寒いくらい。夜は明らかに寒い。少し雨降りでしたが、めったに行かない近所の貯水池まで出かけました。晴れ間の青空がのぞいて、爽やかな景色が広がっていました。
ピンクのヤナギランがアクセントカラーの彩りを添えていますね。
その近くの面白い形の山。
聞くところによると、昔はギョウジャニンニクがわんさか採れたそうです。近年は役場で入林許可をもらわないと立ち入れないので、行ったことはありません。
貯水池の周辺の林道には、他の場所と同じく、ノリウツギ、クサフジなどが咲いていて、ウツボグサも見られましたが、それらに混じって咲いていたこの花。
ウツボグサの群落の中にあったので、花穂がかなり伸びた豪華なウツボグサといった外見ですが、大きさはウツボグサの1.5倍か2倍あるので、別の花。色もウツボグサよりも鮮やかな赤紫です。
でも上から見下ろしてみると、シソ科特有の十字対生なので、ウツボグサと近縁の植物ではありそう。いったい何だろう?
後で調べてみたところ、おそらくシソ科のエゾイヌゴマという植物のようです。次から次に知らないシソ科が出てくるので、唖然としてしまいます。いったい近所にどれくらいの種類が自生しているんだろうか。
(追記 : さらに調べたら色の濃さからして外来種のオトメイヌゴマかも。日本では1986年に名寄市で確認されているとのこと。今回見た場所は名寄ではないけれど、同じ道北で近いので飛んできた可能性がありそうです。
私が見たものはウツボグサより少し大きい程度でしたが、1mにも成長する種らしい。牧草に混じって侵入したと思われ、道北の環境が原産地であるヨーロッパや北アメリカの気候に酷似しているとのこと)
果実がゴマに似るが役に立たないことから、イヌゴマの名前がついたらしい。そもそもゴマの果実というものを見たことがなかったので調べてみましたが…、そうか、ゴマってこんなふうに実って収穫されるものだったのか…。なかなかにカルチャーショック。
シソ科ということで、ハーブとして利用されているのかと思いましたが、近縁種のチョロギの塊茎が食用とされるくらいしか用法はなさそう。しかしイヌゴマ属には有名なハーブのラムズイヤー(ワタチョロギ)が含まれているそうです。言われてみればちょっと似てるか?
残念ながら、北海道に自生するエゾイヌゴマは、別名チョロギダマシといって、救荒植物であるチョロギに似ているけれど、根っこは食べることができないそうです。
花はシソ科の仲間では、オドリコソウによく似ていますが、オドリコソウが何段かに分けて輪状に花をつけるのに対し、イヌゴマ属は輪と輪の間隔が狭いため、穂状に見えます。(イヌゴマの属名は「麦のような穂状」という意味らしい)
ウツボグサやオドリコソウと見分けるときは、花の内部にあるジャガーの顔みたいな複雑な模様が手がかりになるかも。イヌゴマ属特有のものなのかどうかは確認していませんが、少なくとも今回の同定では役に立ちました。
2020/07/25土
ゲンノショウコの花、マタタビの花
今日はよく晴れた日。でも彗星が見えた頃の晴天の日が暑かったのに比べ、今回はかなり涼しく、過ごしやすい。夕方以降は肌寒く、秋の服装を引っ張り出してきたくらい。
涼しいので、重装備して森歩きするには好都合。まず、森の入り口で見かけたゲンノショウコの花。花だけだと何かわからなかったけれど、独特な葉っぱの形のおかげでゲンノショウコだと思い出しました。
葉っぱだけだと、キンポウゲ(ウマノアシガタ)、ニリンソウねウマノミツバなどと間違えそうですが、花が咲いている時であれば区別は容易です。
基本的には整腸薬としての使い方がメインのようですが、ハーブティーとして飲んでもいいのかな? 現の証拠というくらいだから、薬効が強いと思われるので、あまり量を飲むのはよくなさげですが…。
なぜか今ごろあちこちで咲いているマタタビの花。
一ヶ月くらい前に第一弾が満開になっていたはずなのに、なぜ今ごろ…?じつは種類が違って前に咲いていたのはミヤママタタビだったとか?
マタタビといえば、すっかり花が咲き終わって、雄株なので実もつけないサルナシ(マタタビの親戚)の木に大きなカタツムリがぶら下がっていました。吸着力すごい。
甘いクワの実、ニワトコの実、スモモの実
森の中でやっとニワトコの実が真っ赤に色づいてきました。市街地や田園部では2週間くらい前から真っ赤でひときわ目を引きますが、やはり森の中は少し遅いようです。お酒を飲むなら採取してみたいところだけど…。
ヤマグワの木の実(マルベリー)も、かなり色づいていました。もうすっかり黒く熟している実もあったので、幾つか摘んで食べてみました。量が採れたらジャムにもできそうだけど高いから難しいか。
スマホで写真を撮るために手袋を外して摘み取ると、汁がにじみ出て、指が紫にそまってしまった。味は今まで食べたクワの実の中では最も酸っぱさが少なく、とても甘かったです。
スモモの木の実。一度も食べたことがないので、採取時期がわかりません。本州でいう梅の実と似たようなものと考えればいいのかな? 少し色が赤みを帯びているものもありますが、本格的に熟すのはもう少し先でしょうか。
クリオネみたいなタニタデの花
森の中で見つけた知らない花。とても小さなピンク色の花がぶらさがっています。
調べてみたら、名前はタニタデだとわかりました。でもタデではなくアカバナの仲間。単に葉っぱがタデに似ているというだけ。同じく葉っぱの形から名付けられたヤナギランといい、アカバナ科の植物は変な名前をつけられやすいのか。
接写してみると、まるでクリオネのような可愛い形。正面からのアングルではなく、真上から見た花ですが。サイズもとても小さく、森の妖精の名にふさわしいかも。
類似種にミヤマタニタデという花があるそうですが、葉っぱがもっとギザギザしているようなので、今日見たのは無印タニタデだと思います。
ほかにミズタマソウやらウシタキソウといった仲間があるそうですが、名前が濃すぎて頭が圧迫されそう。
ミズタマソウは、上の写真の花の子房のボール状の部分を水玉に例えた名付けらしく、タニタデに比べてなかなかに個性的で素敵な名称です。
そもそも、タニタデはアカバナ科ミズタマソウ属なので、いっそのことここは属名のミズタマソウをメインに覚えてしまったほうが、森の妖精チックな花にふさわしいかもしれません。
コバノトンボソウ?と咲き始めたエゾスズラン
一ヶ月くらい前にこの森でたくさん見つけた黄緑色の花のラン、クモキリソウ。すでに花は咲き終わって、面白い形の実をつけていました。
パーティーのときに使うクラッカーみたいな形。
しかしクモキリソウとは別に、よく似ているけれど別のランらしき花のつぼみを発見。咲いてみないとわかりませんが、前に高層湿原で見たコバノトンボソウかもしれません。
クモキリソウほど多くはないものの、森のあちこちでつぼみを見かけました。
コバノトンボソウは変種がいろいろあって、ナガバノトンボソウやら、ホソバノキソチドリやら、これまた判別が難しい。ひとつのポイントは、下の写真のつぼみに下に付属している苞葉の長さらしいですが、まだこれから成長するかもしれないので様子見。
クモキリソウのほうも、コクランやスズムシソウといった近縁種がたくさんあり、細かく判別しようとすると頭が痛くなります。
他の植物にもいえることですが、有毒植物との区別が重要な山菜などを除けば、今のところおおまかな判別で良しとすることにしています。
先日見つけたもう1つのラン、エゾスズランのつぼみもかなり大きくなっていました。
ほとんどはつぼみでしたが、森のけもの道を歩いていると、早くも咲いている株を見つけました。初めて見るエゾスズランの花!
確かにスズランのように、うつむいて咲いているので写真を撮るのが難しい。だけど、しっかり近くで見ると、スズランの仲間ではなく、ランの仲間の花らしい形をしていることが見て取れます。
ツルニンジンのつぼみ、ゼンマイ、カラハナソウなど色々
ツルニンジンのつぼみ。かなり大きくてクルミの実くらいの大きさはあります。ということは、もう咲く日が近いのでしょう。
ゼンマイの葉。こんなところにゼンマイがあるなんて知らなかった。誰も話題にしないので、この地域にはゼンマイが自生していないのかとさえ思っていました。数は少ないので山菜の季節に見つけるのは難しいか。
森の一角に群生していたアキノキリンソウと思われる花。先日高層湿原でミヤマアキノキリンソウを見たので、花の形から判別できました。たかがアキノキリンソウと思っていましたが、なかなかどうして味わい深い花です。
(追記 : 花のつき方からすると、キオンの可能性もありましたが、成長した後のからするとアキノキリンソウで合っていたようです。両者は花のつき方で判別でき、キオンはまばらに広がる散房花序、アキノキリンソウは塔のようになる総状花序です)
ギザギザばさみでちょん切ったような縁取りの葉をつけたユニークなツル植物。後で調べたら、カラハナソウだとわかりました。ビールの原料になるホップの国産バージョン。
あの懐かしのフデリンドウとも再会。こんなに小さいのによくぞ三たび発見できたものだ。さすがにもう左の株は枯れかかっていました。来年もどこかで会えるといいな。
クサレダマの花、ガマの穂、そしてクサフジを食べる
その後、森を出て公園の池のあたりを散歩していると、ガマの穂を見つけました。スイレンもつぼみがたくさんありました。夕方だったから、もう花がしぼんでしまっていたのかも。
近所の川沿いを散歩していると、見慣れない黄色い花があちらこちらで輝いていました。調べてみると、クサレダマでした。去年教えてもらったけれど、自分で見つけるのはこれが初めて。
クサレダマというのは「腐れ玉」というひどい名付けではなく、「草連玉」、つまり低木の連玉(レダマ)に似ている草という意味。レダマは≒エニシダで、マメ科の黄色い花をつける低木。
まあ同じ植物に例えている上に、科も全然違うわ、花の形も全然似ていないわ、というひどいネーミングには違いないんですけれど。
クサレダマの合間にクサフジがたくさん咲いていたので、この機会に食してみようと思い、花を摘んできました。
茎は食べれないので花だけを水洗いして茹でました。残念ながら色あせてしまい、料理のトッピングにはなりませんでした。でもラーメンに入れたり、サラダに混ぜたりすると、普通に野菜らしい食感で美味しかったです。
今日のハーブティーは、先日摘んだ雑草のハルジオン。癖のない味ですが、特にこれといったインパクトもなく、積極的に飲むほどのものではないかな。
ほかに、先日書いたトウバナも幾つか摘んできました。改めて見てもキツリフネと似ていますが、花が咲いているおかげで、見分けやすくなっていました。
トウバナやクルマバナは、ハーブのカラミンサの仲間ですが、ネットで調べてみても、使い方の情報は全然ありません。たまに、カラミンサとのつながりから摘んでみる人がいるようですが、具体的な情報は見つからず。
葉っぱには薄いミントのような香りがあり、有毒植物でもないので、おそらくカラミンサと同様にハーブティーにできるものと思われますが…。どうしてこれほど情報が少ないのかは謎です。
2020/07/26日
エゾミドリシジミとギンボシヒョウモン
今日は忙しかったので、近くの湿地帯の森の入り口付近を散歩。とても美しいイリデッセンス(遊色効果)な孔雀色をしたチョウが湿地帯のミゾソバの葉にとまっていました。
背後にまわろうとしたら飛び立ってしまったので、角度の悪い写真しかありませんが…。
調べたところ、エゾミドリシジミかその近縁種のチョウではないかと思います。ミズナラを食草とし、6月下旬から8月にかけて現れるとのことで、条件も一致しています。
ほかに見かけたヒョウモンチョウ。こちらのほうはかなり近くから撮らせてくれました。
羽を閉じているときに裏側も撮れましたが、たぶんギンボシヒョウモンではないかと思います。よく似ているウラギンヒョウモンとの区別が今ひとつわかりませんが。
チョウの仲間はたくさん見かけはしますが、鳥と同じく撮影は難しいです。種類も非常に多くて、見分けられるようになるには年余の歳月がかかりそう。
キンミズヒキが咲いていた
森の入り口付近で見かけた、はじめて見る花。黄色のオカトラノオといった見た目ですが、葉っぱはかなり違います。
一つ一つの花は花びらが5枚なので、近くで見ると、いよいよオカトラノオに似ています。しかしオカトラノオとはまったく別の種類の科に属しています。
この花を見て、もしかして、と思い当たって調べてみると、やはりキンミズヒキでした。山菜図鑑で名前だけは知っていたものの、今まで未確認だった植物です。
ミズヒキ(水引)とは、祝儀品を入れる袋に熨斗(のし)と一緒につけられている飾り紐のこと。今では改まった場でしか見ないけれど、水引や熨斗は、昔の日本らしい手間をかけて心遣いをこめる文化のひとつですね。
もともと、花穂を水引に見立てたタデ科のミズヒキという花があり、キンミズヒキの花はそれに似ているということで、金色のミズヒキの名が冠されているようです。ややこしい。
花が咲くずっと前の若葉のころに葉を見つけることができれば山菜として利用できます。場所を覚えておいて、来年に挑戦したいところ。
葉っぱのつき方は、かなりユニークな羽状複葉。先端の3枚はイチゴに似ていますが、その下にさらに葉っぱが並び、大きい葉の間に小さい葉が挟まっていたりします。
葉っぱのつき方は、同じバラ科のキジムシロやツチグリとよく似ています。下の写真は先日オオウバユリを掘りに行ったときに見つけたもので、たぶんキジムシロかな?と思った葉っぱ。
葉っぱのつき方は似ていても、形は違うので区別できると思いますが、他にも似た形状の葉っぱがあるとしたら難しい。山菜の時期に見分けられるだろうか…。
その近くのフキの葉の上に、大量の花びらが舞い散っていて、いったい何だろう、と頭上を見上げてみたら、
はるか高みにオオバボダイジュと思われる花の房が見えました。ボダイジュの花を摘んでリンデンシロップを作りたかったですが、こんなに高いなら到底見つからないわけです。
例の腐生植物オニノヤガラは、一番上の花までついに咲ききってしまいました。次に出会えるのはいつになることやら。
絵を描きたいけれど、今の観察スタイルには向いていない
当初は絵を添えていた自然観察日記。しかし、色々と試行錯誤したものの、どうしていいかわかなくなって、絵を描かないまま1年が経ってしまった。
まず、絵を描く適切なデバイスが見つからなかった。3DSは立ち上げが遅すぎてストレス。タブレットは持ち歩くには大きすぎる。アナログは屋外で描くには不向き。
そもそも、森の中では、植物を観察しながらスケッチするのは無理。たとえば昨日、タニタデを撮影するとき、ピントを合わせようとたった数秒かがみこんでいただけで、虫の大群にたかられた。それに常に熊鈴を振っているので、静止して描くことができない。
虫がいないのは春の一時期だけ。夏、秋、極寒の冬は、森でスケッチなどできない。
仕方ないので、去年はカメラで撮った写真をもとに描いていたけれど、ほとんど意味が感じられなかった。写真だと、細部の立体構造がどうなっているのかわからず、勘で絵を描くことになってしまう。
ビアトリクス・ポターは家に標本を持ち帰って描いていたらしい。でもわたしはそれははばかられる。たとえば先日のオニノヤガラみたいにたった一本しか見つからず、採取しにくい植物もある。何より、標本を採取してしまうより、継続的に足を運んで、成長の様子を観察したい。
というわけで、自然観察でスケッチを描くのは現実的ではない、という結論に至ってしまった。またいつか良い方法を思いついたら絵を取り入れてみたいけれど、今のところ、わたしの観察スタイルには向いていない。
中指の関節の痛みは治ってきた。回復に感動する毎日
謎の中指第二関節の痛みはかなり治りました。一時は鼻をかむのさえ痛くて苦労していて、回復には一週間以上かかるかと思っていたので、案外に早くて驚いています。
ずっと慢性疲労症候群で、寝ても起きても体調が悪いという生活を長年送ってきたものだから、寝るとある程度回復し、怪我しても日にち経過で治るという事実に感動している自分がいます。本来は人間ってこういうものなのだなぁと。
今回の痛みに関しては、原因がわからないのが不気味でした。もし突き指とか理由がわかっていたら、なんてことないのですが、いつ発症したのかわからない痛みだったので、もしや以前もあったリウマチの兆候?とか思ってしまいました。
一応のところ、二年前の自己抗体検査でリウマチの兆候は否定されているので、今回もまったく関係のない痛みであったことを願っています。
【気になったニュース】
北極圏スバルバル諸島で史上最高気温、21.7度を観測 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
日本農業新聞 – バッタ大発生で食料不足 アフリカ・アジア4200万人危機 穀物輸入に影響も
日本国内に限れば、今のところ食糧危機も気候変動も、それほど大きなリスクには感じられませんが、世界的にはいよいよ雲行きが怪しくなっているというニュース。
先月までのシベリアの異常高温に続き、スバールバル諸島でも最高気温。やはり北極圏での気温上昇が顕著。この影響がいかにそれ以外の地域に波及するのか、現時点では何もわかりませんが、何も起こらないはずはなさそう。
食糧危機に関しては、アフリカと南アメリカではすでにかなりの規模で生じている様子。先進国にも何らかの影響が及ぶのかが不透明。
今回のコロナに端を発する問題に関しては、専門家の予想がまったく当てにならないレベルで予期しない展開が相次いでいるので、警戒は怠らないほうがいい。
2020/07/27月
岩尾内湖のエリカ公園に行ってきた
朝日町にある岩尾内湖ふもとのエリカ公園に行ってきました。アフリカなどに自生するツツジ科植物のエリカが、11種類6万本植えられていました。
丈の低い花が丘一面を覆い尽くしている様子は、確かにどことなくアフリカのサバンナっぽい雰囲気があります。行ったことないけれど、
ツツジ科といっても、コヨウラクツツジとかドウダンツツジみたいな壺型のエリカもあれば、
しっかりと花びらが分離している花もあります。でもどちらの花も非常に小さいため、ルーペで観察しない限り、花をじっくり鑑賞するのは難しい。
サフランのような黄色い茎葉の種類もあって、花だけでなく植物全体が彩り豊かでした。
遊歩道の一番奥には立派なヤマナラシ?ドロノキ?の木があって、実もたくさん地面に落ちていました。
展望台のほうへ徒歩で登るスロープ状の道があったのでえっちらほっちら登ってみました。気温がそこそこ暑いし、虫だらけだし、整備されていなくてところどころ道が草で覆われているし、思ったよりも難儀しました。
途中には立派なオオバボダイジュの木があって羨ましくなったり。このオオバボダイジュは下の方の枝まで花が満開。家の近くにこんないい木があったら、リンデン摘み放題なのだけど。
実がなっているミズキの木があったり。葉っぱがテカテカしているから遠目にはキハダかと思ったのですが、近寄ってみると、葉が単葉だったからミズキです。花の時期以来、ちゃんと見てませんでしたが、こんな実がなるんですね。
なんとか頂上までたどり着いたものの、いかにもクマが出そうな道路をさらに歩いて展望台に行く必要があるようだったので断念して降りました。
徒歩ルートとは別に、裏道の林道をしばらく車で走って迂回してくるルートでも、展望台に登ることができます。(上の写真の地図参照)
眺めとしては対岸の愛別線にある展望台のほうが眺めがいいし、アクセスもいいので、わざわざこちら側の展望台に来る意味が薄いのですが、一度くらいは来ておいてもいいか、という感じ。
展望台にある石碑は、裏に岩尾内湖ができたいきさつが彫ってありました。昔は田畑の水の争奪で紛争が起きたり、森を伐採しすぎたせいで洪水の見舞われたりしたのでダムを作ったとのこと。
昨冬の雪不足が尾を引いているのか、ダム湖の水がかなり渇水して、岩肌が見えいます。秋ごろには水位は下がるものですが、それにしても少なすぎるような…。
ダムの上を通って愛別線に出る道はあるものの通行禁止状態なので、もう一度来た道を引き返して帰ります。狭い一車線の林道で待避所も特にないため、対向車が来ないか不安でしたが、こんな所に来る物好きはいないらしい。
林道脇には、オオウバユリの燭台がたくさん立ち並んでいました。実が大きくなり始めています。
帰り道で道路脇に見つけたオカトラノオ群落。
2020/07/28火
ランの仲間オオヤマサギソウ?が咲いていた
今日の森は、マツの隙間からさしこむ木漏れ日でズダヤクシュの種が金色に輝いていました。
この前見つけた謎のラン。今回は花が咲いていました。
花を拡大してみたら…
コバノトンボソウじゃなかったですね。コバノトンボソウはもっと黃緑がかった色だし、花の形もまさしくトンボのよう。これは同じツレサギソウ属のオオヤマサギソウというランかもしれない。
名前からして有名なサギソウを思い出しますが、全然別のランです。これもまた名付けが適当すぎて混乱のもと。細かく同定しようとするとさらに訳がわからなくなる。
同じツレサギソウ属のキソチドリの可能性もありますが、どこがどう違うのか、具体的な情報を探すのがめんどくさいのでわかりません。とりあえず、ツレサギソウ属のオオヤマサギソウかキソチドリのどちらかということで。
エゾスズランはかなり上まで咲いてきていました。ツレサギソウ属に比べると、こちらは非常にわかりやすくてありがたい。
コクワ(サルナシ)の実を沢山見つけたけど高くて採れない
前に見つけた雄花ばかりで残念だったコクワの木の近くに、雌花(両性花)をつけて実がなっているコクワの木を見つけました。でもあまりに高すぎて、大量に実がついているので手も足も出ない。
高枝切りバサミがあれば採れないこともないけれど、森の中にそんなものまで持ち込んで採取するほど業突く張りではない。ジャムを作りたい気もするけれど、もっと簡単に採れる場所を見つけたらでいいや。
マダニの危険を顧みずに茂みの中に入れば、数個くらいは手の届く範囲にありそう。でもまだ熟していなかったので、写真を撮るだけにとどめました。秋ごろに何個か味わえたらそれで満足なのだけど。
かなり膨らんできたチョウセンゴミシの実。
コクワとは何の関係もないけれと、ヤマグワの実。先日も食べたけれど、今日はまたさらに熟している実が増えていました。甘くて美味しい。
キツリフネのつぼみ?と実
たぶんキツリフネのつぼみと思われるものを発見。咲いた後ではなく、つぼみのほうであってるよね?
まるでチョウのサナギのような形で、細い花茎からぶら下がっています。キツリフネの驚くべきところは、この細すぎる花茎についたつぼみは始めはとても小さいのに、いつの間にかこんなに大きな花まで成長してしまうところ。
別のキツリフネの花はもう散っていて、実がついていました。しっかりと熟していれば、ちょっと触れただけで爆ぜるのがツリフネソウ類の実特有の共通点。
今回は触りながら写真撮影していてもは爆ぜなかったので、まだ熟すまでもう少しかかるということなのかな。えんどう豆みたいに中のつぶつぶが分かるようになってきたら熟しているということかも。
ここのところよく見かける丈の低いギザギザの葉っぱ。もしやイラクサ?と思ったので、かがみこんで茎を見てみたら、イラクサらしきトゲがある。
葉っぱは対生ではなく互生。ということはこれが、今まで名前だけは知っていたムカゴイラクサなのかな?
イラクサ類は大きく分けて、葉が対生の無印イラクサ(エゾイラクサ)と、葉が互生でムカゴを作るムカゴイラクサとがある。アイヌは後者を小さなイラクサと読んで、茎から繊維を採ったりするのに利用していた。
ムカゴイラクサはエゾイラクサのように群生しないので、これまで認識できていなかったけれど、これがそうなのかもしれない。素手で触れば一発でわかりますが、痛いのは嫌なので、ムカゴができるかどうか継続観察してみます。
2020/07/29水
庭にネジバナ
うちの家の前にネジバナが3本ならんで生えていました。S巻きとZ巻きが両方あります。
去年も庭でネジバナを一本見たし、森の中で右巻きと左巻きが並んでいるのも見ました。ネジバナはS巻きとZ巻きがほぼ1:1らしく、2本見つけさえすれば50%の確率でS巻きとZ巻きが揃うから、そんなに珍しい光景でもないようです。
S巻き(左巻き)ネジバナ。
Z巻き(右巻き)ネジバナ。
その後は、鎌で庭の草刈り。刈った草は畑のマルチや肥料にするので無駄にはなりません。だけど、本来なら動物を放牧して草を食べてもらうのが、あるべき自然との共生の姿なんだろうなと思います。
畑で咲いていたコリアンダーの花。大きさは違えど、セリ科の仲間らしい花と種で、オオハナウドやエゾニュウと類似性がある。
今年も庭で咲いていたコボウズオトギリの真っ赤な実。
ゲンノショウコに似ているけれど、少し違う外来種アメリカフウロ。
夜になると、町じゅうに点在する草むらから、ギー、シャカシャカシャカという虫の大合唱が聞こえていることに気づきました。少し前から鳴いていたものの、ボリュームを増して最盛期を迎えています。
調べてみると、おそらくハネナガキリギリスだと思います。カラフトキリギリスも道北にいるらしいですが、オホーツク沿岸限定のようなので違うでしょう。
ハネナガキリギリスは7から9月にかけて鳴くとのこと。このギーという独奏に、他の音色が加わってオーケストラになるころ、秋が訪れるのでしょう。
トチノキとコブシの実
近くの公園では、トチノキの実がかなり大きくなっていました。ややこしいアク抜き作業を経て栃餅になる。
コブシの実も、かなり大きくなって、らしい形状になっていました。
去年の夏、このくらいの段階の実が川に落ちていて、ネイチャーガイドさんに何の実か尋ねたけれどわからなかったんですよね。ドロノキ?とか適当なことを言われた。
頑張ってもっと自然に親しんで経験値を積んで、そんじょそこらのネイチャーガイドなんて目じゃないレベルになりたいものです。今はやっとレベル5くらいかなぁ。
10代のころみたいに体力と気力が無限にあれば、フィールドワークすると同時にもっと本をたくさん読んで基礎知識を増やしたいし、スケッチも描いて細部を理解したいところなのですが、そこまで余力がなく、経験不足を補うに至らないのが残念です。
ところで、今日はコロナウイルスの確認感染者が全国で初の1000人超え、そしてこれまで難攻不落だった岩手も陥落してしまいましたね。同じく難攻不落状態の道北(天塩国の範囲)も今回はダメかもしれません…。
岩手の感染者の方も、関東にてテントで宿泊したら感染したというアウトドア勢のようです。アウトドア活動なら大丈夫とタカをくくらず、他人と接するあらゆる活動に気をつけたほうが良さそう。
この前のオオウバユリ掘りみたいなイベントも今後は自粛して、一人で森に行くだけにするつもりです。
2020/07/30木
「100年前の世界一周」を読んだ
また体調がひどく悪い周期が来ています。一時期月齢に同期しているかに見えましたが、今は完全にずれているので、偽相関だったようですね…。一ヶ月から一ヶ月半周期くらいで体調が上下するのは確かなようですが。
今日は、1905年に世界を旅行して風景を写真に収めたドイツ青年ワルデマールの手記に基づく本、「100年前の世界一周」を読みました。しばらく前にこの日記で触れた本です。
ドイツの裕福な家庭に生まれたワルデマールは33歳の時、見識を深めるために、いわゆる自分探しの旅に出ることにし、黄金時代を迎えた新天地アメリカ、極東の神秘の国日本、朝鮮、中国、インドなどを旅する1年半の旅路にでかけます。
ナイーブで人間嫌いだったワルデマールは、その旅を通して、自分の殻をやぶり、偏見を捨て去り、人間として大きく成長します。また、自分が自然を愛していること、しかし世界が自然との共生から逸れていっていることに気づきます。
やがて国々は世界大戦という混沌に呑み込まれていき、ワルデマールの家族も旅した国々も破滅的な傷跡を負います。結果として、彼が1905年に撮った写真は、世界がまだ希望に満ちていたころを伝える貴重な資料になりました。
この本は、ワルデマールの手記と写真をもとに、作家のボリス・マルタンという人が第三者視点から旅行の様子を解説していて、伝記のような感覚で読めます。この文章がまた秀逸で、そこそこ分量は多いのに、一気読みさせる魅力がありました。
見事で美しい写真というわけでもない。有名人が出てくるわけでもない。ただの100年前の青年の旅行記を追うにすぎない。なのに、心を強くとらえて離さない魅力があふれる不思議な文章。
ひとつには、100年前の世界という、半ば異世界のような国々を旅する探訪録として、現代とどこか違う風習や生活に惹かれるからなのか。現代と似ているところ、違うところが雑居していて、良質なファンタジーのこどき味わいがあります。
特に、100年前のアメリカの姿は、まるでスチームパンク風SFのよう。日本や中国がまだ前時代の生活をしているのに、アメリカだけ100年先を進んでいる発展度合い。人々の古風な服装を現代風に変えれば、今の風景だと言っても通用するくらい近代的です。
超崖っぷちに建てられて1907年に全焼したとされるサンフランシスコのクリフハウス・ホテルは、やはり崖っぷちに建てられてその約50年後に全焼した小樽のオタモイ遊園地の竜宮閣そっくりで、どの文明も通る通過儀礼みたいなものなのかと笑ってしまった。(p95)
そしてもう一つは、これこそ本題なのでしょうが、この半異世界が、もうすでに失われてしまっていて、二度と戻らないというノスタルジック。滅びる運命にある世界の悲哀と、その運命をまだ知らずに、今を懸命に生きている人々の儚い美しさ。それがこの本の魅力かもしれません。
この本の最後で、ボリス・マルタンが述べるこの文章こそ、この本のテーマにふさわしい。
思い出の写真は限りなく続く。しかし、美しき時代「ベルエポック」は終わり、進歩を信じる心も、平和を信じる心も打ち砕かれた。安全で安心に生きられる世界への希望は断たれてしまった。
20世紀初頭に存在していた夢は、爆弾やガス室にまみれて消えてしまったのだ。世界が無垢だったころの風景はもうない。(237-238)
もちろん、1914年以前の世界が幸福だったというわけではない。それは、ワルデマールの写真からも手記からもわかる。ゴールデンドリームのアメリカでは黒人たちネグロが過重労働の服させられていて、朝鮮では戦禍に疲弊した人々の姿がありました。
でも、当時のアメリカには、国際社会には、これからそうした問題を解決して平和と一致をもたらせるに違いない、という科学や文化への期待がありました。
人々は楽観的で希望を持っており、その象徴が未来都市のニューヨークでした。この本の中でも、若い女性たちが気軽に団体旅行していたり、わりと気軽に世界各地に旅行していたり、当時の平穏なアメリカとヨーロッパの雰囲気が伝わってきます。
幸せに満ちた時代だった。シュテファン・ツヴァイクは「この理性の時代においては、極端な出来事や暴動など起こりそうもなかった」と著書「昨日の世界」に書いている。事実、平穏な日々が続いた。(p230)
ところが、帰国したワルデマールを待ち受けていたのは、人類史上経験したことのない未曾有の戦争で、1914年を境に、かつての期待に満ちた時代は終わりを告げ、永遠に失われてしまいました。
すべてが速いスピードで変化し、歴史と記憶のあいだに存在する「薄闇のゾーン」も次第に消えることになる。…ツヴァイクが「安全な黄金時代」と呼んだ日々は去り、ホブズボウムが言う「極端な時代」が幕を開けた。(o230,231)
二度の恐怖の世界大戦を生き延び、両親や兄弟たちを失い、80歳になったワルデマールは、今は亡き世界を撮った写真を眺め、当時の記憶をまとめることにしました。そうしてこの本のもとになった手記が書かれました。
1914年の世界大戦がそれまでの世界を破壊してしまったのは、ひとえにそれが世界規模だったからでしょう。それまでも恐ろしい戦争はいつの時代もありましたが、局地的なものにすぎませんでした。世界の人々が同時に共通の恐怖を体験し、苦悩の記憶が刻まれたのはそれが初めてでした。
しかも、その後すぐに、第二波ともいうべき第二次世界大戦が起こり、はるかに多くの人たちが傷を負い、文化は滅び、歴史は断裂しました。
そして今、この2020年、人類は三度目の世界危機と言うべきものに直面しています。このたびは戦争ではありませんが、無差別に命を奪う凶悪なウイルス、そしてとめどなく広がる偏見や中傷、暴力の連鎖、貧困と食糧不足、そして異常気象などが世界同時に猛り狂っています。
1914年に破壊され、二度と元には戻らなかった世界は、それから100年あまり、壊れたままなりふり構わず、突き進んできました。しかし今や、そこにとどめが刺される時が来ていると思えてなりません。
2020/07/31金
いつものごとく森に入れば元気になる
ここのところ、あまり体調がよくありません。思い返せば去年もこの時期悪かった。
一年で一番暑い時期。暑いと言っても、日中の最高気温は30℃弱で、夜中は10℃台まで下がるから、十分に涼しいはずなのですが…。今やフランスを40℃超えの熱波が襲い、イラクでは50℃超えだというのに、贅沢なことを言うものです。
おそらく、気温が原因なのではなく、草刈りによるアレルギーか、田園地帯から飛んでくる農薬の影響ではないかと思います。住んでいるのは森のそばなので、普段はさほど影響ありませんが、この時期だけはダメなのかもしれない。
朝からなんにもやる気が起きず、ゲームを引っ張り出してダラダラと過ごしていましたが、昼から重い腰を上げて森に出かけました。
自転車で行ける距離だけど、この時期、森に入る格好で自転車に乗ると暑すぎる。仕方なく、車で冷房も入れずに走ること数分。
車に乗っているだけで暑いし、車を停めたら無数のウシアブ(巨大なハエみたいなアブ)がたかって、車体に体当たりをかましてくる。(理由を調べたら、どうも排気ガスに反応するらしい)
いつも行く森のうち、遠い山あいの森のほうは、ウシアブの猛攻にうんざりして断念。もっと近くの湿地帯の森にほうに行ってみると、こちらはウシアブはほとんどおらず、やっと森歩きする気になれました。
まずは入り口付近でヨモギの葉を探す。顔にも網をかぶって全身防備の服装ですが、手袋の背抜きメッシュ部分だけは刺されるので、ヨモギの葉を揉んで仕込まないと刺されまくります。
そうして森歩きを始めると…
あら不思議、やっぱり体調がよくなってきた。どうして家にいるとグダグダの体調になるのに、森に入ると、真夏にも関わらず何時間でも歩き回っていられるのだろう? 毎回このような結果になるのが不思議でたまりません。
ノブキの花とアマチャヅルの花
今日はじめて見た花は2種類。
まず、森の入口付近に咲いていた小ぶりな白い花。入り口のあたりなので、外来種のシロツメクサかなと思いましたが、じっくり観察するとまるで違いました。
花かんむりのように白い花がぐるりと中央のつぼみを取り囲んでいます。大きさは全然違いますが、ヤマアジサイを思わせる咲き方です。
別の花は中央の部分まで、すべて咲いていました。両方咲いているとわかるように、外周部の花と、中央の花は別物のようです。
調べてみると、これはキク科のノブキという花でした。葉っぱが同じキク科のフキに似ているとのこと。普段見慣れているのが巨大なアキタブキなので、あまり似ている感じはしませんが…。
花は、周囲の花かんむり状になっているのが雌花で実になる部分、中央の花は両性花で実にならないそうです。
面白い形の実をつけるそうなので、今後の変化も見てみたいところですが、なぜかほんの数株しか見かけませんでした。解説を見るにレアな植物ではないと思いますが、初めて知ったのでまだ実態がよくわかりません。
今日初めて見たもう1つの花はアマチャヅル。何の気はなしに、そういえば、アマチャヅルってそろそろ花が咲くのかな、と葉っぱの裏側を見てみると、極小のつぼみが何個かついていました。
つぼみがあるということは、少し早めに咲いているそそっかしい花もあるかもしれないと思ってさらに調べてみたら、ありました。でもこんなに小さい!
わたしは小さい花を形容するとき、小指の先ほどの大きさ、と言ったりしますが、これはさらに小さい。小指の先のそのまた半分くらいか。ハコベやキュウリグサの極小の花を思い出します。
しかしこんな極小の花でも、拡大してみると、なかなかどうして趣のある花です。そういえば、アマチャヅルはウリ科らしく、確かにスズメウリなどに似ている花です。カラスウリだと、この花びらの先端がレース状になって美しいですよね。
今日撮った花はどうやら雌花のようです。
(8/22追記: 別の場所で撮った雄花の写真。
中心部にある丸いものは、5本の雄しべが合着したものらしいです)
アマチャヅルの極小の花を見ながら、この森に来てアマチャヅルの花に注目した人なんて、これまでわたし以外にいたんだろうか、などと思いを馳せました。偶然で見つけることは考えにくく、咲いているかもしれない、と見当をつけた上で探さないと見つからないたぐいの花だと思います。
そのほか、こちらの森でも、前にもう1つの森で見かけたランの仲間である、エゾスズランとオオヤマサギソウを見つけました。でも数が少なく、エゾスズランは1つだけ、オオヤマサギソウは2つほどしか見当たりませんでした。もっと奥まで入れば無数にあるでしょうけどね。
オオヤマサギソウの花。葉っぱは対生し、下のほうに大きな2枚の葉があるのが特徴。上のほうの葉は小さな鱗片のようになります。
花のアップ。クリオネみたいな形。
近所の森にもサラシナショウマがあった
そして、今日一番の発見はこれ。多分サラシナショウマのつぼみだと思います。
葉っぱの形状はほぼ三出複葉。なぜか5枚セットの羽状複葉ぎみの葉もありますが、同じ三出複葉のはずのヤマブキショウマでも似たようなタイプがあったので、きっとそういうものなのでしょう。
この葉っぱで、このつぼみの形だと、同じキンポウゲ科のルイヨウショウマ(サラシナショウマに葉が類似しているから「ルイヨウ」)もそっくりですが、花期がまったく異なっていて、ルイヨウショウマはもう実になっています。だから、今ごろつぼみはありえない。
サラシナショウマのつぼみ自体は、先日も仁宇布の松山湿原でたくさん見かけたので、珍しいものではありません。でも地元の森では、なぜか全然見かけなかったので、わたしの行動範囲内には無いのかもしれないと思い始めていました。
仁宇布のような原生に近い森が残っている地域に行かないと、見れない植物は色々あります。たとえばサンカヨウがその1つ。なぜか家の近所の森で見かけません。ヒグマのテリトリーまで入れば咲いているでしょうが、それは怖い。
サラシナショウマもそういった類の花なのかなぁと思っていた矢先だったので、ほんの家から10分くらいの場所に発見できて、にわかにテンションが上がりました。
サラシナショウマといえば、わたしが慢性疲労症候群の治療で処方されていた補中益気湯の原料でもあるので、少し親近感が湧くのです。補中益気湯は全然効かなかったけど。
一本あれば、何本も見つかるのが普通ですが、なぜか他には見かけませんでした。花期は8-10月なので、花が咲いてみればもっと見つかるかもしれません。とりあえず1つ見つけたので、経過観察はできそうです。
そのあと、近くを探しているときに、おや、これもサラシナショウマでは?と思って駆け寄ったら違ったキンミズヒキのつぼみ。
穂状のつぼみも、ギザギザした三出の葉っぱも似ているけれど、サラシナショウマが三出複葉なのに対し、キンミズヒキは羽状複葉なので、よくよく見れば全然違います。
黄色い花が咲きかけていたので、確かにキンミズヒキです。
サラシナショウマか思ったつぼみがキンミズヒキだったので、もしやさっき見つけたサラシナショウマも、わたしが勘違いしていただけでは?と疑心暗鬼に駆られましたが、帰宅後写真を確認してみたら、間違っていなさそうでした(笑)。
相変わらず種類の見分けができないので謎のキノコと、
ササの葉にくっついていたカタツムリのドアップ。
オニノヤガラ、ルイヨウボタン、オオアマドコロなど色々な実り
そのほか、森の中で発見した色々な実り。
まずは例の一本だけ忽然と現れたオニノヤガラ。花はすっかり咲き終わってしまって、茶色の矢が地面に突き刺さっているかのようになっていました。
しかし枯れているわけではなく、実に変化したようです。花の子房の部分が膨らんでいました。
オニノヤガラは、そんなに珍しい腐生植物ではないと思いますが、わたしが愛読している「アイヌ植物誌」の著者の福岡イト子さんが、いまだオニノヤガラを見たことがないと書いていて驚きました。
オニノヤガラはアイヌ語で「互いを消えさせるもの」と呼ばれているように、どこに出現するかわからない植物なので、ある程度は運が絡むのかもしれません。(しかし多年草なので、一度咲くと近くに現れやすいようですが)
今年は、オニノヤガラに出会えただけでなく、つぼみの段階から、開花、そして実まで継続的に観察できたので、とてもラッキーでした。
一般人が好むような美麗な花ではないからか、オニノヤガラを見た感動を熱く語っても、誰も気持ちをわかってくれませんが、わたしはこういう奇妙で面白い植物が大好きです。園芸植物にはないエキゾチックな魅力があります。
オニノヤガラに比べるとはるかによく見かけるオオウバユリの燭台も、森の中に増えてきていました。花が終わって、実がなりかけている状態です。
オオウバユリの熟した実が立ち並ぶとそれだけでアートですが、今はまだ実がなりはじめたばかりなので、少し迫力に乏しい。
ルイヨウボタンの実は、ついに、ようやっと、色が変化していました。花が咲いている時期より、緑のままの実をつけている時期のほうがはるかに長かった不思議な植物です。これでもまだ色づいたのは数個のみ。
同じ藍色に熟す実でも、サンカヨウや、オオアマドコロ、チシマザクラなどは、またたく間に色づいてしまうのに、どうしてルイヨウボタンはこんなにもゆっくりなのだろう。
そのオオアマドコロの実。なんとも絵になる愛らしい形。こちらはすっかり味わい深い藍色に熟しています。いかにも美味しそうなのですが、食用になりません。
今が盛りのエゾニュウなどに比べ、一足早く実をつけている巨大セリ科オオハナウドの実。
よくよく見ると、2本触覚のようなものが飛び出ています。そういえば、同じセリ科のシャクの実にもこんな触覚がついていたなと思い出しました。どうやら、雌しべの柱頭の先が二裂した名残りらしいです。
まだ食べれそうなエンレイソウの実を見つけたので一粒摘んできました。前みたいにとろとろに熟しすぎていることもなく、適度な柔らかさで、今まで一番食べごろの実でした。甘くて美味しい。
エゾイチゴ(ラズベリー)の実。先日友人と歩いている時に見つけたキイチゴは、もっと整った形でいかにも美味しそうでしたが、写真を撮る前に友人が食べてしまいました。それから改めて探してみたものの見つからず、今日やっと実を確認できましたが、形が悪い。
エゾイチゴの若木はたくさん見つけるのですが、実が全然なっていません。もう食べられてしまった後なのでしょうか。時期を少し逸してしまったようです。
超グロテスクなマムシグサの実も見つけました。気持ち悪い。
あの怪しげな食中植物みたいな花を突き破って、こんなボコボコした集合体恐怖症を煽る実が増殖して飛び出てきて、しかもこれから朱色に染まり、猛毒まであるんですから、もう真夏のホラーです。
その後、近所の公園で見かけたプラタナス(モミジバスズカケノキ)の実。人差し指と親指で円を作ったくらいの大きめの鈴。
エゾノウワミズザクラの実。虹色のグラデーションに色づいていました。熟せば食べれないこともないが、美味しくもないらしい。ナナカマドやニワトコと同様、果実酒にすればいいらしいけれど、わたしは酒は飲まない。
森からの帰り道は、壮大な羊雲が大空を覆っていました。高積雲が出ているということは、天気が次第に下り坂になるということかな。巻積雲ほど先でもなく、層積雲ほどすぐでもなく。
「一年間地に足のついた暮らしをして」の記事を書きたいのでメモ
・生物の危機反応には5つの段階があり、トラウマ反応とは、2から5番目が延々と繰り返される状態。トラウマ治療の目的のひとつは、それらの反応が起こる前の1番目の段階にあたる、冷静に危険を観察する「静止」の段階にとどまれるようにすること。森を歩いていて、野生動物の気配を確かめたり、植物を採取する前に立ち止まって考えたりすることで、それが強化されているように感じる。つまり、自然界の中で生活していれば、静止の段階は、しぜんと身につくものだったのではないだろうか。
・虫が苦手で、家の中に何か出るたびに大騒ぎしていて、決して素手で触ることもできなかったわたしが、うっそうとした森の中を歩けるようになるまで。まず装備を整えてハードルを下げること、少しずつ体験するタイトレーションで無理のない範囲で適応していくこと。動物園にいた動物が、野生に戻っていくときに段階的な手順を踏むのと同じ。
・全身で経験するということ。植物園のように、丁重に保護された植物をただ目で見て、説明の表示を読むような方法では経験できない。自分の足で好きな場所を歩き、さまざまな手がかり(特に時期と大きさは大切)を通して種類を識別し、山菜、ハーブティー、コーディアルなどで味わってみてはじめて、自然と共に生きること、森によって生かされることを経験できる。食べようと思えばよく観察しなければならないので一石二鳥でもある。
・同じ場所に何度も足を運び、愛着を形成する。登山や旅行のような、歩いて終わりの体験ではなく、ひとつの場所を、時間や季節を変えて繰り返し再訪し、多様性のマンダラの変化を観察する。自分と地球が、同じ時間、同じ空間を生きていることを確認し、つながりを強化する。これは時間や空間の枠を越えて空想に逃避したり、ゲームやインターネットの虚構にこもることの逆である。
・いわゆる原始人のイメージのようにワイルドになりたいわけではない。レイチェル・カーソンや、ロビン・ウォール・キマラーのように、自然と深い絆でむ結ばれ、森の奥深くまで知っている人になりたい。2人のエピソードを引用。
7月のまとめ
7月に入って、日本国内ではコロナウイルスの第二波が吹き荒れ、世界各国の状況もより深刻化しました。
世界各地では、北極圏で異常な高温、アメリカのデスバレーで4日連続50℃超え、ラスベガスで最低気温が34℃、ヨーロッパ各地で40℃の熱波、イラクで51℃など、異常気象のスピードも増しています。
幸い、道北の士別以北ではまだ感染者が出ておらず、気温も平年並みなので、普段どおりの生活が送れています。
ヒグマを再度目撃したり、ニンニク掘りのお手伝いで力仕事をしたり、いろいろなランの仲間を見つけたり、ついにオニノヤガラを発見したり、ネオワイズ彗星を友だちと見上げたり、なかなか楽しい一ヶ月だったと思います。
ただ、この7月は予想通り暑くなってきたせいで、体調面では下り坂でした。途中、中指の関節の謎の痛みが続きましたし、あまり睡眠の質がよくなく、だるさが強い日があったりと、後半になるにつれ本調子でなくなりました。
予報によれば、8月はもっと暑いようなので、しばらくは低調が続きそうです。去年のアルバムを見ると9月からは秋に分類しているので、暑いのはもうひと月ほどの辛抱ですね。
世界情勢については、色々予想は外れているので、もうあまり、変な期待はしないほうがいいかも。ダニエル・カーネマンがファスト・スローで書いているように、未来予測とは専門家でさえ素人と大差ないか、より悪い精度であることを肝に銘じるべきです。
…と思っていたらニュースが来た。やはり、最初に動いたのは予想通りロシアでした。これが平和と安全につながる伏線のひとつなのかはわかりませんが、気持ちの準備だけはしておこうと思います。
ロシア「10月からワクチン接種」 安全・有効性に疑問視も | nippon.com
いったいどのように終わりに向かうかは、いずれ分かるでしょう。ストレスを貯めないためにも、先のことではなく、その日その日の、目の前のやるべきことに集中して、しぜんと時間が過ぎていくようにしましょう。
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