2021年9月の道北暮らし自然観察日記(後半)

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もくじ

2021/09/16

今日もハナイグチ、シロヌメリイグチ、ホテイシメジが豊作

今日も忙しかったですが、ちょっとだけ森を散歩。

朝からあまり調子がよくなく、胃が動いていない感じがありました。消化に悪いとされるナラタケとハナイグチを食べ過ぎたのか、サツマイモの葉柄のきんぴらのせいなのか…。

森を歩き始めても、最初のうちは足どりが重く、今日はあまり長居できないかな、と思いました。でも、1時間くらい歩いているうちに元気になってきて、結局、2時間以上うろうろ。キノコもいっぱい採れました。

体調が悪くても、森を歩いたりサイクリングをしたりしているうちに元気になってくる。最近は極端に体調の悪い日が少なかったので、懐かしい感覚ですが、そういえば初期のころはよくありました。

今日探検したのは、森に入ってしばらく歩いた左手側にある北向き斜面です。去年の初夏に探検して何もめぼしいものがなく、その後は冬に歩いてみただけの場所。

しかし、カラマツとトドマツのマツ林で、ササが少なく多少シダが生えているだけの場所なので、もしかしたらキノコ狩りには好都合かも? そう考えて、初めて秋に足を踏み入れました。

歩き初めは何もないようでしたが、少し奥まで進んでいくと、まずシロヌメリイグチの幼菌をたくさん発見。幼菌にしては傘の色がもう白っぽくなっているので若菌か。裏側はとてもきれいな締まった白い管孔でした。

さらに奥に進んでいくと、ハナイグチも発見。誰も絶対に採りに入らない場所なので、点在するカラマツの根元にかなりの量を見つけることができました。いつも出るとは限らないけれど、森の入り口付近でアクセスがいいので穴場かも。

もっと斜面を探索したい気持ちもありましたが、いつもの森の奥の様子も見たかったので引き返します。普段から歩いているカラマツ林を通っていると、足元に点々と見つかるホテイシメジ。

その後も森のあちこちを歩いているうちに、時たまカラマツのある場所に、1本、2本で散生していて、気がつくと7本ほど形のいいのが見つかりました。採らなかったものも含めれば10本以上。

ホテイシメジは、当初、見分けにあまり自信を持てませんでしたが、詳しく調べ、見慣れたことで、今では自信をもって採ることができます。わたしはアルコールを一切飲みませんから、味のよいこのキノコは乾燥保存しておいて出し汁に使いたいです。

途中、9/2以来、久々に森の一番奥まで登って、ウメガサソウと無印イチヤクソウを見てきました。道中あるはずのキンセイランはやはり発見できませんでした。小さな株だったので枯れてしまったのかも。

ウメガサソウは前回とほとんど同じ姿。こう見えて背丈10cmの常緑小低木なので、これから秋が深まってまわりの植物が枯れても青々とした葉をつけているのかもしれません。

一方、イチヤクソウは草本なので、明らかに前回よりも枯れかけていて、実もいくらか落として地味になっていました。常緑多年草なので、根元に生えている小さな葉は枯れないのでしょうが、花茎は遠からず朽ちてしまいそうに見えます。

そこから、森の中の一番大回りのルートをぐるりと一周して帰ってきました。

今日の収穫。ホテイシメジ7本、シロヌメリイグチ7本、ハナイグチ16本。昨日の今日で多すぎるので、ハナイグチは全部友達にあげました。見分けやすいキノコなので問題ないでしょう。

今日のキノコ。アシグロタケ、アイシメジ等

そのほかの今日見つけたキノコたち。なんと全て食用にできるキノコ、…でしたが知識不足で持って帰ってきませんでした…。

(1)アシグロタケ
最初に見つけたのは、倒木から生えていたヒラタケのように見た目のキノコ。でも、採取してよく観察してみたら、全然違った。

裏側は完全に管孔。しかしとても柔らかく、ヨガマットみたいな感触。

傘は褐色。扇形に広がっていて、中心が凹んで黒くなっています。

裏側を観察していたとき、柄が黒いのに気づいて、正体が判明。前に見つけた、柄の半分だけが黒いタマチョレイタケ科のキノコのアシグロタケでは? あのときは1cmくらいの極小でしたが今回は10cmくらいあり巨大。

大きさの違いから、当初は無印アシグロタケかと思ったのですが、アシグロタケなら柄全体が黒いはず。これは柄の下半分だけ黒いのでキアシグロタケ。色も赤褐色ではなく黄褐色です。

また傘の表面(背面?)に放射状の繊維紋があるのがキアシグロタケ、ないのがアシグロタケだと書かれていましたが、どの部分のことを言ってるのかよくわかりません。言われてみるとあるような、ないような…。

肉はゴムみたいな質感で、なんと、手で裂くことができませんでした。頑張って裂こうとしても下の写真のようにひび割れが入る程度。

当然噛み切るのは無理ですが、アシグロタケもキアシグロタケも、なんと相当美味な出汁がとれるそうです。それを知っていたら持って帰ってきたのに残念。巨大なアシグロタケはそうそうないと思うので、つくづく惜しいことをしました。

でも、こんどこそ覚えたので、次回からは採れるはず。今年だけで2回もキアシグロタケを見ているので、決して珍しいキノコではないはず。3度目の正直に期待です。

(追記 : 傘の色合いと大きさからして、やはり無印アシグロタケのほうかと思い直しました。ネットで写真を調べてみたら、アシグロタケでも柄の下のほうしか黒くない個体もあるようでした。

またキアシグロタケの特徴の一つである、傘の放射状の繊維紋は、9/2に見たキアシグロタケでは確認できたものの、このアシグロタケにはないように見えました)

(2)ヤマイグチ
未知の真ん中にぽつんと出ていたキノコ。傘の色合いからシロヌメリイグチだろうと思いましたが、傘がぬめっておらずマット質に見えたので、少し違和感を覚えたので、横から覗き込んでみました。

すると、盛大に膨らんだ巨大な管孔。これはもしや初遭遇のニガイグチ?

と思いましたが、引き抜いて柄を見てみると、網目模様はなく、どこかで見た記憶のある黒い鱗片がびっしりとついています。確かヤマイグチだったっけ?と記憶を手繰り寄せましたが、合っていたようです。

柄の表面以外の見た目は、ニガイグチの画像検索で出てくる写真とそっくりですね。

傘は光沢やぬめりはなく灰褐色。この個体は5cmくらいのサイズ。

残念ながら管孔はもうボロボロ。とても食べられそうもありません。まだいい状態のヤマイグチには一度も遭遇できていません。

試しに半分に割いてみました。肉は白色で変色せず。管孔は上生から離生。

じつは柄の部分の肉は、空気に触れると青く変色するそうです。柄を折ってみたら内部もボロボロで、中空とも中実とも言い難い状態だったので、写真には残しませんでした。もっといい状態のが見つかったら変色性も見てみたいです。

(3)コガネヤマドリ
またトドマツ林で見つけたコガネヤマドリ。でも状態は悪く、傘に虫が入ってそうな見た目だったので、今回も味見することは叶わず。

(4)ワタゲナラタケ
その後のナラタケ。なんと月曜に幼菌の姿を確認したのに、3日でもう傘が傷んで黒くなっていました。

傘はボロボロ、ひだも傷んでいて、とても食べられそうにはありません。

大量に生えているので状態のいいのを選別すれば大丈夫ですが、うわさ通り傷みは相当早いキノコです。幼菌を確認してから2日が限度。3日目(今日)は怪しく、4日目(明日)はほぼ無理。

でも、そもそもわたしは、あまりナラタケが好きではないっぽい。今シーズン2回大量発生に遭遇して採りましたが、ごく普通のキノコという以外の感想がありません。消化が悪いと言われるので、翌日の体調に響きそうな気もするし…。

地元の人はナラタケ(ボリボリ)とハナイグチ(ラクヨウ)をやたらと重宝するのですが、個人的にはどちらもそんなに魅力は感じません。両方ともナメコみたいな感じ。

ハナイグチは味噌汁に入れたらナメコより美味しいので、見つけたら積極的に採りまくっています。でも、ナラタケは大量発生したときにちょっと食べるくらいでいいかなーという程度のキノコです。

(5)アイシメジ
帰り際、カラマツとトドマツのあいだに生えていた初めて見るキノコ。近くにシラカバも生えていて、以前にチャオビフウセンタケやイタチタケを見たので、広葉樹林生の可能性もありそう。

黄色っぽいというか、黄土色や金色を思わせる、めったに見かけない傘色をしていたので、すぐに図鑑で見たアイシメジでは? と思い浮かびました。9/13の(8)で、シメジっぽいキノコを調べている時に知ったもの。

傘の大きさは6cmくらい。柄はほぼ白で、少しだけ黄みがかっています。アイシメジは柄の上部が白色で、下にいくほど少し黄色いという特徴があるそうです。

傘裏のひだの様子。後で調べて知りましたが、ひだは白色なのに、傘の外周部だけ黄色くなっているのがアイシメジの特徴だそうです。下の写真でも確認できます。

断面。ひだは離生、柄の内部は繊維質で髄状。調べてみると、中実から髄状となっている資料中空となっている資料空洞になっているものもある、という資料もあり、ばらつきがあるようです。

アイシメジの名前の由来は、幾つかのサイトを見ると、何種か挙げられている近縁種の中間、間の子の特徴をもつ、という意味だそうです。

特に、ここのサイトで書いてあるシモコシ(全体が黄色っぽいシメジ)と、シモフリシメジ(もう少し黒っぽいシメジ)の中間というのが一番わかりやすそう。

アイシメジより、別名のシモフリキンタケ、という名前のほうが見た目と合っているかも。(キンシモフリシメジと名付けたほうがさらに良いとは思いますが)

他に黄色いシメジには、キシメジ、ニオイキシメジ、カラキシメジ、シモコシなどがあるそうです。調べてみたら、なにやらややこしいことになっている様子

しかしいずれも、ひだか柄の色が黄色っぽいため、どちらもほぼ白いアイシメジと区別できそうです。

他にハエトリシメジも似ている色合いで、こちらはひだや柄も白っぽいですが、全体の形状や、アイシメジは白いひだの外周部だけ黄色いという特徴から見分けられるはず。

アイシメジは多少苦いものの、食用になる美味なキノコとされているため、見分けやすいのはありがたい点です。今回は知らなかったので持って帰りませんでしたが、次回見つけたら、もう少し調査してから食べてみるかもしれません。

2021/09/17金

天塩川支流、源流域の風景

今日は一日時間が空いたので、前々からずーっと行ってみたかった、近所の天塩川支流の源流域に行ってきました。

国有林なので、林道の鍵を借りないと入っていけない場所。地元の人たちは、釣り、山菜採り、狩猟などで入っているという話を聞いていましたが、初めての経験なのでドキドキ。

去年の秋に入ろうと思ったら、猟期が始まっていて入林できず。今年の春も入ろうとしたら工事中で許可が降りず。やっと今日許可が下りたので探検に行けました。

ゲートの鍵を開けて入ると、そこから10km以上、砂利道の林道が川沿いに続いています。点在する橋の上から、並走する川の風景を見ることができます。びっくりするほど澄み切っていて、ゴミひとつない源流域の風景です。

遠くに見える山々は、植林されていない自然林なので、錦絵のような彩り豊かに紅葉し始めています。

大きな川だけでなく、無数の小さな支流に枝分かれしていて、鬱蒼と茂った木々に覆われています。そうした小さな川は和名がついておらず、カタカナのアイヌ語名がそのまま使われています。

秋でもう雪解け水がないからか、水がほとんど枯れかけている川や、完全に枯れて川床の石だけが敷き詰まっている川もありました。春の増水期だけに出現する川なのか、橋はかけられているのに、GPSでは存在しないことになっていました。

途中、大きく開けている本流の川辺に降りて釣りをしている人を見かけました。きっと地元の釣り人なのでしょう。遠くからわざわざゲートの鍵を借りてまで、ここに釣りに来る人はいないと思います。おかげで清らかな風景が保たれています。

橋から見下ろすと、眼下の河原に白い花が密生しているのが見えました。

拡大してみると、ヤマハハコに似た花。名前だけ知っていたカワラハハコに違いないと直感しました。こんなにたくさん咲いているものなんですね。

しばらく走っていると、対向車が走ってきました。狭い狭い一本道の林道ですが、待避所は用意されているので、すれ違いは可能です。

すれ違う時に見ると、なんと知り合いの釣り人でした。お互い車を停めて、久しぶりに話しました。

その人は、2人連れで釣りに来ていましたが、川に降りたところ、親子連れのヒグマの新しい足跡と、サクラマスを食べた痕跡を見つけたので、慌てて引き返してきたとのこと。わたしも川には降りないよう忠告されました。

どのみち、この源流域は、素人が川に降りれそうな道は整備されていません。川辺に降りるイコール藪こぎして道なき道を行く、ということなので、わたしには無理です。道沿いに走って橋の上から川を眺めるくらいです。

さらに林道を進んでいくと、脇に立ち並ぶ巨大なキハダの木が目に入りました。特徴的なボコボコした樹皮と、対生の奇数羽状複葉だったので、おそらく正しいはず。おそらく20mくらいあるでしょうか。

こんなに巨大なキハダを見たのは初めてだったので見とれました。まっすぐ伸びる樹形のハルニレやヤチダモと比べ、どことなく曲線美が感じられます。

幹は細くひょろ長いのですが、樹冠の葉はこんもりと生い茂っていて、ちょっと異国情緒漂うのっぽさん。特に根拠はないのですが、オーストラリアのユーカリの森を思わせました。似ているのかな?

さらに進んでいくと、今度は巨大なハルニレも立っていました。写真だと全然サイズ感が伝わりません。手前に生えているイタドリのやぶが3mくらいあるので、比較するとこれも20mはありそうです。キハダに比べてがっしりした力強い樹形です。

林道脇の岩場に大量に着生していたイワデンダ。先月、滝を見に行って、初めてイワデンダを見つけて大喜びしていましたが、今では、岩場あるところにイワデンダあり、というほどたくさん見つかるようになりました。

もしかしてイワデンダ以外の着生シダも生えているのでは? と目を凝らしてみましたが、わからないですね。じっくり観察しようにも、いつヒグマが通りかかってもおかしくないので、気持ちの余裕がありませんでした。

イワデンダを拡大してみると、橙色に黄葉しているのがわかります。シダの黄葉や紅葉はいつ見ても美しいものです。

手の届く場所にも生えていたので、イワデンダのソーラスもまた観察できました。

やはり岩場に着生していたマルバキンレイカ。これも先月、滝の岩場で見つけて喜んでいましたが、ここの林道脇の岩場には無数に生えていて、手で触れることもできました。

もう花は終わっていて実になっていたので、最初何の植物だろう?と思いましたが、岩場に生えていること、そして特徴的なギザギザの葉からマルバキンレイカだと推理。

風で飛んでいくためなのか、一枚の羽がついていて、ヤチダモの実に似ています。

マルバキンレイカの実や種を検索しても、誰も注目していないのか画像がまったく見つかりません。でも、キンレイカはオミナエシの親戚だと知っていたので、オミナエシの実を調べてみたら、よく似ていました。

大きなホオノキも見かけたので、よく観察してみると、色づいた実がなっているのも見つけました。そろそろ収穫適期ですね。去年のホオノキのお茶のストックがなくなったので、また採って飲みたい。

林道脇に大量に生えていた葉っぱ。シダの仲間かなと思って降りて観察したら、さわり心地が柔らかく、セリ科だと気づきました。たぶんシャク? 春に来たら山菜の宝庫でしょうね、きっと。

林道脇から顔を出したシマリス。しばらく顔を出してくれていましたが、うまくピントをあわせることができず、ピンぼけ。リスたちが忙しく走り回る季節なのか、何匹か道路を横切るのを見かけました。

林道の奥まで10kmくらい走ると、残念ながら治山工事中で、それ以上は入っていけませんでした。

地図によると、さらに10kmくらい道があるそうなのですが、草刈りもされていないと聞くので、本当の源流域にたどり着くのは難しそうです。誰も見たことのない、話だけ伝わる幻の滝があるというような噂も…。

ほとんど車に乗りっぱなしで、どう自然を味わってよいかわからなかったのが残念な点。川の近くは音や匂いがかき消されるため、ヒグマが怖くて自由に探検できないのが辛いところです。

いまだ日本に残っている秘境。その入り口を見ただけでしたが、原始の森と川を思わせる雄大な風景に心洗われる思いでした。

近所に出るのはワタゲナラタケとクロゲナラタケ(ホテイナラタケ)か?

帰ってきたら、まだ時間が早めだったので、近所の湿地帯の森を散歩。しばらく来てなかったので、珍しいキノコが出てないか様子を見ておきたく感じました。

向こうの森でナラタケが大量発生している間に、こっちの森でも同じ大雨後に大量発生していたようです。一度大量発生済みなので、今シーズンはもう出ないかと油断していました。

さすがに前回大量発生していた倒木には今回は出ていませんでしたが、それ以外の木の根元、倒木、林内地上などに、所狭しと生えていました。でも、発生後4~5日経っているようで、もう傷んでいました。

一般的にナラタケは材上に生えるとされるので、去年はこの地上から生えているキノコがナラタケなのか随分悩みました。しかし、先月8/20に書いたように、よく調べた結果、地上に生えやすいタイプであるワタゲナラタケだろう、ということになりました。

明らかにトドマツの根元から出ているナラタケもありました。ナラタケという名前なのに、広葉樹ではなく針葉樹に出現するのか?と当初は感じていましたが、これもよく調べたら、別にどちらからでも出るようです。

上から見る限り、また食べれそうな外見に見えるのですが、採取して裏返してみると、ひだが黒ずんでいました。好きな人なら全然問題なさそうですが、わたしはナラタケは微妙なので、わざわざ傷んでいるのまで食べません。

別の倒木に生えていたナラタケ。前々から薄々感じていましたが、ここの森って何種類か別のナラタケが出ているようですね。こちらのナラタケは黒い鱗片が目立つ代わりに、条線があまり明確ではありません。

せっかくだから、このよく見かける2種類のナラタケを持ち帰って比較してみました。並べてみると、同じナラタケの仲間とは思えないほど外見が違っています。

左側のナラタケは材上にしか出ず、黒い鱗片が目立ち、(傘が乾いているせいか)条線はあまり目立ちません。つばは痕跡だけ残っています。

右側のナラタケは、材上にも地上にも大量に発生し、黒い鱗片はあまり目立たず、(傘が多少湿っているからか)条線ははっきりしていて、つばは痕跡だけ残っています。

また、左側のナラタケは柄の基部が太くなっています。

この特徴は「ホテイナラタケ」と呼ばれる種類を思わせます。しかし、見分けるのに役立ちそうな詳しい情報がネット上にありません。後述しますが、資料によると、DNA分析的にはクロゲナラタケと近縁とされています。

クロゲナラタケは、ワタゲナラタケの近縁で、基部が球根状に膨らむとされているので候補に上がります。つばが消失性であることも一致しています。

次の写真は、左側のナラタケの鱗片の拡大画像。尖った鱗片ではなく、細かい黒い毛であることがわかります。クロゲナラタケの「黒毛」という名前の由来がわからないのですが、この黒褐色の毛のことだとすればそれらしいと言えます。

傘のふちの条線は非常に分かりづらいですね。個人的意見としては、たとえナラタケらしくても、条線が不明瞭な場合は、毒キノコとの区別があいまいになるため採りたくないです。

次の写真は、右側のナラタケの鱗片の拡大画像。色が黒ではなく、ほぼ褐色から茶褐色です。こちらも鱗片というより毛のような感じで、案外上のナラタケと似ています。

鱗片が黄色いキツブナラタケという種類がありますが、ワタゲナラタケでも黄色い写真が見つかるので、他の特徴からしても、これはワタゲナラタケだと思っています。詳しくは後述。

単に湿っているだけかもしれませんが、条線は非常にはっきりしています。こちらのナラタケの特徴として、傘に白っぽい模様がつく点があるのですが、ワタゲナラタケに見られる、傘に白色の内被膜の残片がつくという特徴と一致します。

最後に柄の内部の比較。左側の黒っぽいナラタケのほうは、柄が硬く締まっていて中実なので、折るとはっきりポキっと音がします。ナラタケの異称の由来になった、柄を折るとボリボリと音がする、という特徴を備えています。

一方、右側の色が薄いナラタケは、柄がふにゃふにゃしていて、締まりがありません。折れば一応ポキっというくらいの音はしますが、内部も中空ぎみ(髄状)です。本当にナラタケなのか随分悩まされた特徴です。

これらの特徴を踏まえて、改めて20年前の資料「日本産ナラタケ属について」を確認すると、興味深い点が幾つか見つかりました。

ここまで名前が挙がった、クロゲナラタケ、ワタゲナラタケ、ホテイナラタケ、キツブナラタケ、以上4種の特徴を簡単にまとめてみます。

クロゲナラタケ
・倒木上に出る
・傘の鱗片は黒っぽく繊維状。密で脱落しない
・条線は比較的明瞭だが、不明瞭なタイプもあると言われる
・柄は中実だが細い空洞があることも
・柄は下方に向かってやや膨らむ
・柄の色ははじめ白く、のちに褐色
・柄の上方に灰白色の綿毛状鱗片がある
・つばは消失しやすい

ワタゲナラタケ(ヤワナラタケ)
・腐植土・草地に出る
・傘の鱗片は綿毛状、繊維状、ささくれ状で脱落しやすい
・傘の周囲に白い被膜の名残りが付着する
・周囲の条線はやや不明瞭
・柄は髄状(海綿状)
・柄はつばより上は白っぽく、それより下は黒っぽい
・つばは消失しやすい

ホテイナラタケ
・腐朽木、周辺の土壌に出る
・傘の鱗片は黒っぽいささくれ状
・条線はやや不明瞭
・つばは膜質でやや永続性、柄に圧着する
・柄の根元が球根状に膨らむ
・柄の上のほうは白色、下に向かってやや淡褐色
・DNA分析ではクロゲナラタケとの分化が完全ではない
(ネットでは、ホテイナラタケはキツブナラタケと同一種とする資料もあるが、クロゲナラタケの間違いなのか、どこかにそういう資料があるのかは不明)

キツブナラタケ
・倒木上に発生
・傘に棘状の細かい褐色の鱗片が密につく
・条線は短いが比較的明瞭
・つばは薄い膜質で永続性
・柄はしばしば基部で急に肥大
・柄は幼菌時、傘と同じ褐色の鱗片で覆われる
・全体的に黄色みが強い

こうして比較してみると、やはり今回見つけた2種のナラタケは、ワタゲナラタケとクロゲナラタケの可能性が高いと思います。

まず、鱗片が「繊維状」なのは、その2種です。拡大画像で見たとおり、ささくれ状や棘状ではありません。

また、つばが消失しやすいのも、その2種です。つばが残っていないので、少なくともキツブナラタケではありえません。

2種のうち、最初の画像で左側だったナラタケは、大半の特徴でクロゲナラタケに当てはまっていますが、基部が膨らんでいる点や、条線が不明瞭な点はホテイナラタケに似ています。しかし、両者がDNA的に近縁であるなら不思議ではないでしょう。

最初の画像で右側だったナラタケは、ほぼすべての特徴でワタゲナラタケに当てはまっています。柄の柔らかさも別名ヤワナラタケと呼ばれるにふさわしく、間違いないと思います。

ということで、うちの近所によく出ているナラタケは、材木上にも地上にも大量に出るタイプがワタゲナラタケで、材木上に出る鱗片の濃いタイプがクロゲナラタケ(ホテイナラタケ)だと結論づけたいと思います。

ただ、ナラタケの同定は、手持ちの図鑑を見ても全然解説されておらず、ネット上にも情報が非常に少なく、ほぼ「日本産ナラタケ属について」に頼って解釈しているので、果たしてどれくらい正しいのかは分かりません。

今日のキノコ。猛毒バライロウラベニイロガワリ、ウスタケ、チャワンタケ等

その他に見かけたキノコたち。

(1)キカラハツモドキ
環紋が非常に明瞭なチチタケ属。全体が褐色ですが、アカモミタケほど赤っぽくはありません。

ひだは疎。

割いてみるとごく少量の白い乳液が出ました。ということは、いつものカラマツチチタケ? しかし、カラマツチチタケのひだは密とされているので違和感があります。

また、柄の内部が意外にも中実。チチタケ属で中実のキノコなどあるのか?と調べてみたら、いくつかありましたが、ひだの特徴が違うのばかりでした。

悩みながら図鑑を見ていたら、キカラハツモドキというチチタケ属が、針広混交林内に現れ、傘に黄色とオレンジ色の交互環紋があり、乳液は白色、ひだは疎、柄は中実、とあらゆる特徴が当てはまっていました。

少しでも違和感があれば、たまたまだとか個体差だとか考えず、調べ続ければ答えが見つかるものなのだな、とキノコの奥深さを感じました。名前のない未記載種だという可能性もあるのがキノコですけれど

(2)ワサビタケ?
森の奥の倒木から生えていた小さな褐色の側生キノコ。周囲のコケはカモジゴケでしょうか。

傘が波打つ側生キノコですが、触ってみると柔らかい上、裏側は管孔ではなくひだです。多孔菌ではありません。

大きさはこのくらい。ひとつひとつの傘のサイズは指先程度なので1cmくらい。

貝殻のような形。

 

短いながら柄は存在しています。

ネットの画像と比較するに、ワサビタケでしょうか。wikiで見ると、チャヒラタケ、イタチナミハタケというよく似たキノコがあるそうなので、それらのうちどれかだと思います。細かい区別の仕方はわかりません。

(3)フジウスタケ
去年の8/25や9/21に見たのとまったく同じ場所に群生していたウスタケ。去年の時点では、色が淡褐色で大型、鱗片が大きく目立っていることなどから無印ウスタケではなく、フジウスタケと判定していましたが、今年もそう見えます。

カリカリに焼きあがったせんべいのような内側のイボ。美味しそうですが食べられません。

形は漏斗型で長く伸びたひだがあります。ラッパタケ科とされていて、確かにラッパのような形。ちなみにヨーロッパで食されている有名なクロラッパタケは、ラッパタケ科ではなくアンズタケ科らしいですね。キノコってややこしい。

たくさん生えていたので一つ割いてみましたが…、特に代わり映えしません。

せっかくなので、内側のささくれなどを接写してみましたが、特に発見はありませんでした。

見た目がわかりやすく、とても美しい大型キノコなので、鑑賞したり、いい写真を撮ったりして楽しむとよいのかもしれません。

(4)ススケヤマドリタケ?
もう朽ち果てていた謎の白い塊。内側の柄が見えているので、かろうじてキノコだとわかりました。

傘部分をひっくり返してみると、管孔が白いイグチの成れの果てのようです。

残っていた柄をじっくり見てみると、茶色の地に、なんと一面にはっきりとした網目模様が。大きな手がかりです。

ちょっと進んだところに、また白い塊がありました。

裏返してみると、やはり白っぽい管孔のイグチ。少し黄色っぽくなっています。柄は完全に失われていて、かろうじて茶色っぽい付け根が残っているくらいです。

傘が大きく白色で、管孔も白色、柄が茶色で網目模様が目立つイグチっていったい何でしょうね。一枚目の写真だと、傘の表面はもともと茶色っぽく、その内側の肉が白かったようにも見えます。後から表面がカビた可能性も。

だとすれば、条件に合うのはススケヤマドリタケだと思います。発見した場所もトドマツ林なので、可能性が高そうです。食べれる時期に発見ではなかったのは残念ですが…。

しかし、もし元々が白いイグチだとすれば、ホオベニアシグロイグチなど他にも色々と候補があるでしょうから、この朽ちた外見では同定できません。

(追記 : 翌年7/20に、この近くで似たキノコを見つけました。特徴を見たところ、ニガイグチの仲間らしいことがわかりました。柄の網目模様は、上部に少しだけあるものから、上半分を覆っているものまでありました。しかし、このキノコのように、柄の下まで網目に覆われているのはなかったので、別の種類かもしれません)

(5)バライロウラベニイロガワリ
今日一番の大発見。森の一番奥でキノコを物色していると、なんとなく来たほうの森から怪しい物音が聞こえてきたような気がして、怖くなりました。

この付近では9/10にヒグマが目撃されていますし、その二日前の9/8には、森の中でデントコーンを食べたらしきフンを見つけていました。それ以降は特に目撃情報はないのですが、ヒグマの行動圏であるのは間違いないでしょう。

帰るためにはどうしても物音がしたほうに引き返さなければなりません。少しだけ迂回できる林道を通ることにしましたが、熊撃退スプレーをホルダーから取り出し、すぐに放てるようにして歩きます。

しばらく歩いていると、林道脇のトドマツ林の中に、見たことのない大型キノコらしき姿が見えました。本当にキノコなのか確かめるべく、カメラでズームして確認してみます。すると、間違いなくキノコ。赤みを帯びていて、かなり大型。

どうしても気になったので、立ち止まって変な気配がないか入念に確認してから、キノコを見に林内に戻りました。去年はアカモミタケがたまに出ていた場所。

これがそのキノコです。

マイヅルソウの赤い実が散らばる林床に、どでんと現れた大型の赤いパンケーキのようなキノコです。真上から見てみるとこんな感じ。

手の大きさとの比較。傘のサイズは15cmくらいありますね。

いったいどんなキノコなのか。引っこ抜いて確かめてみることに、後になって、引っこ抜く前に、見上げるアングルの写真などを撮っておけばよかったな、と後悔しましたが、森の奥であまり余裕もなかったし仕方ありません。

傘の裏を見てみると、

まさかのイグチ! 想像していませんでした。真っ赤な管孔と柄のイグチといえば、わたしですら知っている、あの猛毒キノコでは…?と思いがよぎります。そう、バライロウラベニイロガワリ。

イグチなので、まずは柄を確認。すると、非常にはっきりした網目模様がびっしり。確か「網目模様があるイグチは毒がない」という通説を覆したのが、バライロウラベニイロガワリやミカワクロアミアシイグチだったはず。ますます怪しい。

この写真からは、柄の上のほうに網目模様があり、下のほうでは網目がはっきりしなくなって粒点に変化している様子がわかります。後で知りましたが、これはバライロウラベニイロガワリを同定する大きな手がかりです。

各部の拡大写真。

まず柄の網目模様。薄い赤っぽい地色に真紅の網目です。

傘裏の管孔。穴は小さめで表面は赤っぽい。しかし、その奥は黄色っぽく見えます。

傘の表面。ただ赤いのかと思いきや、濃い真紅の鱗片のようなものが散らばっています。

こんなに美しい立派なキノコなのにもったいない、という気持ちはありましたが、引っこ抜いてしまったし、二度と出会えないかもしれないので解体します。今シーズンは、キノコに詳しくなるために、分解することに決めたのです。

いつものように、傘を真っ二つに割いてみました。パンケーキを裂くかのような手応え。なんと、傘の内部の肉は真っ白でした。

管孔の表面は赤でしたが、さっきの接写写真から予想できていたとおり、内部は黄色です。

管孔の拡大写真。縦にびっしりと長い管が並んでいるのがわかります。ちょっとグロテスク。

柄の内部も見たかったので、美しい網目模様を引っ剥がして、内部を露出させてみました。少し赤みがかっていますが、こちらの肉も白だとわかりました。さらに内部も調べてみたのですが、中実であることがわかりました。

それにしても、小さなキノコならいざしらず、これほど巨大で美しい模様があるキノコを解体していると、芸術作品を毀損しているかのような背徳的な気持ちになつてしまいます。本当にもったいない。

そうしているうちに、裂いた傘の内部が変色してきました。イグチの仲間はさまざまな変色性をもちますが、これも同定に役立つはずです。

まず、黄色かった管孔は、濃い紺色に染まりました。

白い肉の部分はあまり変化がありませんが、裂いた直後の画像と比較すると、周辺部の青みが強くなっているように見えます。

変色のスピードはさほど早くなく、わたしが観察していた数分間では、ここまで変化しただけでした。これも、似ている他のキノコと区別する手がかりになりそうでした。

帰宅後調べてみると、バライロウラベニイロガワリには、よく似た無印ウラベニイロガワリ、オオウラベニイロガワリ、アメリカウラベニイロガワリというキノコがあるそうです。

これらのうち一番情報が充実しているのは、アメリカウラベニイロガワリで、食用にもなるそうです。別に帰化種というわけではなく、先にアメリカで名付けられただけらしい。

アメリカウラベニイロガワリは、猛毒キノコに似ているにも関わらず、食べている人がいるということは、よほどはっきりとした相違点があるのだろうと思います。

調べてみると、柄に網目模様がないことや、傷つけると即座に青く変化することなどが、特徴のようでした。これに限っては網目模様がないほうが食用になるのですね。

変色速度については、アメリカウラベニイロガワリは10秒もかからずに真っ青になると書いてあるサイトがあります。しかし、今回見たキノコはそんなに早く変色していません。

今回撮ったキノコは、一般にバライロウラベニイロガワリと検索して出てくるキノコの写真と、多少色が違うように感じます。特に、管孔の色が、ネット上の写真の多くは真紅であるのに対し、このキノコは朱色です。

しかし、ここのサイトの写真で見ると、管孔が膨らんだ老菌の場合、色が褪せて朱色っぽくなっているのが確認できます。

また、バライロウラベニイロガワリの特徴として、柄の上のほうの網目模様は隆起していて鮮明、下のほうは不鮮明になり粒点のようになる、としている説明があり、今回のキノコの特徴と完全に一致しています。他方、アメリカウラベニイロガワリは通常、網目模様はないそうです。

さらに、バライロウラベニイロガワリは針葉樹林生、アメリカウラベニイロガワリは広葉樹林生のようです。バライロウラベニイロガワリは亜高山帯の針葉樹林にのみ発生するそうで、本州の高山か北海道のみとする説明もありました。

このキノコを見つけた場所はもちろん北海道の北部、そしてトドマツの針葉樹林なので、バライロウラベニイロガワリの可能性が非常に高いことがわかります。

手持ちの「北海道きのこ図鑑」には、バライロウラベニイロガワリ、アメリカウラベニイロガワリ、無印ウラベニイロガワリの3種が載っていましたが、後者2つは広葉樹林生でした。

無印ウラベニイロガワリは、柄に網目模様があることなど類似性がありますが、柄の地色が黄色らしく、少なくとも写真で見る限り、今回のキノコのような全身真っ赤ではありません。

ということで、このキノコはバライロウラベニイロガワリだと判定してよいと思います。

まさか、ネットで話だけ知っていて、中毒体験記なども読んで、きっと珍しい縁遠いキノコなんだろうなぁ、と思っていたバライロウラベニイロガワリと出会ってしまったとは!

名前はキノコ好きの人々の中では有名ですが、実物を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。有名人に会ってサインしてもらうのってこんな気分なのかもしれません。

阿寒湖周辺でも確認されているようですし、もしかしたら、北海道ではそんなに珍しいキノコではないのかもしれませんが、もっとじっくり美しい写真を撮ったりしなかったのは悔やまれます。

圧倒されるほど大きく、見惚れてしまうような美しいにも関わらず、猛毒というトゲがある、バラの名を冠するにふさわしいキノコだと思いました。

(6)チャワンタケの仲間
帰り道の針葉樹林内の地面に生えていたチャワンタケ。いつもにニカワジョウゴタケかな、と思ってしゃがみこんで観察してみたら、完全にお椀型でした。

大きさは2cmくらい。色合いからモリノチャワンタケかなと思っていたのですが、モリノチャワンタケは3~10cmで違うかもしれません。

モリノチャワンタケは広葉樹林生であるのに対し、発見した場所はトドマツ林でしたが、写真に写っているようにミズナラなどの落ち葉も確認できたので、可能性はありそうです。

手に載せてみました。採取するときに右側が破れてしまいましたが、完全にお椀型をしています。

ひっくり返してみると、半球形。

クレソンに覆われて地面から生えている様子は、ミニチュアのソファみたい。小人が座っていたら絵になりそう。

その帰り道は、夏にジンヨウイチヤクソウが咲いていた場所。先日ヒグマの気配に怯えながら早足で帰ってきた時は、もう実がなくなっているようだったと書きましたが、改めて見てみると実は残っていました。

なんだかバライロウラベニイロガワリを観察していたら、気持ちに余裕ができたので、今日は座り込んで観察。相変わらず5mmくらいしかない小さな実。変色していたので立ち止まらないと見つかりませんでした。

接写レンズで撮影。面白い形のまま茶色く枯れました。

帰宅後、あまりに疲れてしまって、しばらく寝ました。一日空いたからといって、源流域探検から森歩きと連続行動するのはハードすぎたようです。特に林道を長距離運転したのが緊張してしまったのかも。

でも、こうして出かけないとバライロウラベニイロガワリは見られなかったでしょうから満足です。森はいつ出かけても新鮮な発見をもたらしてくれます。

2021/09/18土

寂れた自然公園の遊歩道を探検する

道北には、過疎化によって寂れてしまい、もう使われなくなってしまった場所がたくさんあります。でも必ずしも立入禁止になっているとは限らず、自己責任で入っていけることが多いです。

家から車で20分ほどのここもその一つ、近所の自然公園の遊歩道ですが、整備されているのかどうかも不明でなレベルで荒れ果てています。でもきっと、月に数人?いや年に数人は物好きな人が足を踏み入れていても不思議ではありません。

前々から、近くを通りかかるたびに、森に入っていく道があるのは知っていました。でも鬱蒼としていて、絶対整備されていなさそうな雰囲気だったので、探検したいと思いつつ先延ばしになっていました。

しかし、今日は1時間ほど余裕があって、森に入る装備も持ってきていたので、意を決して入ってみることにしました。熊撃退スプレーを買ってから、少し積極的になっています。それが良いことなのかは不明ですが…。

森に入ってみると、ほんの数十メートル歩いたところで、もう鬱蒼と茂る草に覆われて道がなくなっているように見えました。でもその地点だけかき分けて進めば、かつて舗装された砂利道が現れ、森の中へずっと続いてました。

林内には自然公園らしく古い案内板や、植物名の標識が残されていました。たとえば、「キレンゲツツジ」「カバレンゲ」などと書いてあり、今さらながら初夏の黄色やオレンジ色のレンゲツツジの正式名称を知りました。

オヒョウ、ハルニレ、キタコブシといった、樹木名の看板も立ち並んでいましたが、特にこれといって聞き慣れない植物名はありませんでした。

林内の足元は、無数のツタウルシの紅葉した葉っぱに彩られていました。ウルシに弱い人はツタウルシの生える林内を歩くだけでかぶれると言いますが、幸いわたしは大丈夫です。むしろ、ウルシの美しい紅葉に胸がときめきます。

ツタウルシに混じって、いち早く真っ赤に紅葉して林内を彩っているのはオオカメノキでした。ほかにヤマブドウの葉っぱも真っ赤で目立ちます。他の草木の葉がまだ緑色なので、虹色のグラデーションになって、とても色鮮やかです。

もっと奥に進んでいくと、水がほとんど枯れて湿地のようになった池と小川があり、その周囲を取り巻く遊歩道と木で作られた手すりがありました。

いきなり目の前に新しいスポットが現れて、全然違う景色が広がるのはゲームの演出のようで楽しくなってきました。これが普通の整備された公園だったら意外性もないのですが、なんといっても鬱蒼とした森の中ですから。ファンタジーの世界観です。

ここの公園が整備されたのは30年以上前と聞いています。きっと往時はよく草刈りされた普通の公園だったのでしょう。案内板も立て、欄干も作ったのにもったいない、と感じる反面、だからこそわくわくするところもあります。

わたしにとっては、きちんと草刈りされた公園より、生い茂った草木に覆い隠されるように人工物が一体化している風景のほうが魅力的です。

さらに道なりに進んでいくと、道は大きく蛇行して、朽ちかけた木製の椅子がある休憩所のような場所に出ました。クマが出そうな場所で休憩したまはないですが。

足元にはたくさんのシダ植物が生い茂っていて、その種類から、人の手があまり入っていない自然の豊かさが感じられます。

たとえばシシガシラ。珍しいシダではありませんが、人里近くでは見ません。普通の公園にもあるはずがなく、ここが森の奥だと実感させてくれます。

シシガシラの胞子葉は燭台のように立ち上がっているものだと思っていましたが、もう秋だからか垂れ下がっていました。シシガシラの葉をライオンの頭に例えると、胞子葉がメッシュカラーみたいに見えますね。

胞子葉の拡大。もうすっかり胞子を飛ばし終えて役割を終えた後でしょうか。

めったに見かけないゼンマイの葉もありました。自然豊かな森の中でもほとんど見かけず、もしかすると川沿いのヤマドリゼンマイのほうが多いのではないかと思うくらい見かけません。この時期になれば葉っぱをたまに見かけますが、胞子葉はついぞ見たことがありません。

初めて見たメスグロヒョウモン、猛毒ニガクリタケ?

林内を飛び回っていた白黒のチョウ。肉眼でもエゾスジグロシロチョウではないことがわかったので、いったい何だろうと思い、写真を撮ってみました。後でGoogle Lensで調べたら、どうやらメスグロヒョウモンのようです。

メスグロヒョウモンはヒョウモンチョウの一種ですが、名前のとおりメスは黒くて、全然色が違います。オスは見たことがありますが、メスの姿を見るのは初めて。

羽を開いている瞬間は撮れませんでしたが、青緑っぽい光沢があって、これまで見たどのチョウとも違った印象を感じ、初めて見るチョウだと直感しました。

休憩所の足元の朽木から生えていたキノコ。現地では何の種類か全然わからなかったのですが、改めて写真で見てみると、クリタケの仲間では? 色が黄色っぽいからニガクリタケの可能性を考えたのですが…、

傘の大きさは5cmくらいあります。クリタケの仲間のモエギタケ科を調べてみると、クリタケや先日見たアカツムタケは、3cmから10cmくらいまで大きくなるうです

一方、ニガクリタケは1~5cmほど、通常は3cmくらいで、もっと群生するので、どうやら違うようでした。

傘の裏側はわずかに紫みを帯びたひだで、どちらかというと密に見えます。

柄は上のほうが白く、下のほうが黄褐色、赤褐色を帯びています。

柄の中身は中空、ひだは直生に見えます。

だとするとキナメツムタケ? しかしひだの色が傘と同色だとされているので違います。傘の周囲にあるとされる鱗片もないような…。

一方、ニガクリタケを調べてみると、ひだはオリーブ色から紫褐色に変化するそうです。ひだは密、直生~湾生、柄は中空と、かなり当てはまっています。ということは、これは大きめのニガクリタケ?

もう少し調べてみたら、クリタケモドキのほうが、大きさやひだ色がもっと近いように見えました。しかし、ここの説明によれば、ニガクリタケは束生するのに対し、クリタケモドキはしないそうです。写真を見てのとおり、このキノコは束生しています。

また、ニガクリタケモドキも似ているそうですが、より小型との説明があるので違うと思います。

いったいこのキノコは何だったのだろう? かじってみればニガクリタケか否か即座にわかるはずですが、そこまでして種類を確かめたくもありません。

(追記 : 後日経験を積んでから改めて写真を見た感じではクリタケに見えます。傘が大きい、ひだが紫みを帯びて、直生、密、柄が長く下のほうだけ茶色で中空、束生している、といった点はすべてクリタケの特徴です)

もっと探検したかったのですが、時間がなかったので、全体の5分の1くらい改めて写真を見た感じではクリタケに見えます。400mほどを歩いただけで、途中の出口から出てきました。やはり誰も使っていないようで、ひどい草むらを歩いて、やっと道路に合流。

この奥には花木園などがあると案内板に書かれていましたが、探検はまた今度となりそうです。面白かったけれど、野生動物の住み家になっていそうで、細心の注意も必要だと感じました。

森を出て、車を置いた場所まで歩いていると、道路脇に、たわわにチョウセンゴミシが実った木を発見。今年は豊作のようです。一粒味見してみたら驚きの酸っぱさ。アスコルビン酸の塊。

せっかくなので、何房かいただいてきました。感想させて五味子茶にしたら、酸味が疲労回復に効きそうです。

それから午後は農家のお手伝いに行き、トマトを大量に収穫して、14日に続いて、今季2回目の瓶詰め作業をしました。そういえば去年の日記でも同じころに瓶詰めトマトソースを作っていますね。あれからもう一年が経ったとは感慨深いです。

帰りに見た田園地帯の夕暮れと月。肉眼で見ると、桃色の雲をまとった月が、模様まではっきり見えて、ファンタジックだったのですが、写真だと感動を切り取れませんでした。

2021/09/19日

今日のキノコ。初ウコンガサ、巨大ノボリリュウタケ等

キノコが食べたくなったので、いつもの森にキノコ狩りに行ってきました。連日あちこちうろうろしているので疲れも出ていましたが、車の運転ではなく、森林浴とキノコ狩りなら体力が回復するはず。

今シーズンになって発見した、森を入ってすぐのところのキノコ狩りスポット。トドマツ・カラマツ混成林。

冬しか入れないと思っていた場所ですが、雪のない季節でもササが生い茂っておらず、シダやトクサが生えているだけだと気づきました。この前 探検してみると、案の定、ハナイグチやシロヌメリイグチがたくさん見つかりました。

しばらく雨が降っていないので、さすがに今日はないかなぁ、と思っていましたが、普通にたくさんハナイグチやシロヌメリイグチが出ていました。傘が開いていない幼菌も多数あり、すぐにキノコのかごがいっぱいになってしまいました。

もう十分採れたので帰ろうかな、と思いましたが、まだ森に来て30分も経っていません。ヌメリイグチ以外のキノコも食べたいので、いつものキノコ狩り地点まで入っていくことにしました。以下、いろいろ見つけたキノコ。

(1)傘の中央だけ黒っぽい謎のキノコ
そのカラマツ・トドマツ混成林で見かけた、傘の中央が黒褐色の謎のキノコ。

傘の大きさは3cmくらいで、ほぼ平らに開いています。あまり群生せず点々と生えていました。

ひだは傘と同じく、やや褐色みのある白で、密とも疎とも言い難い密度。

ひだのつき方は湾生に見えます。柄の内部は中空。

トドマツ林やカラマツ林に出るキノコをいろいろ調べても、全然それらしいのが見つからず、参りました。針葉樹林にも広葉樹林にも出るキノコに広げると、フウセンタケ科のヒメワカフサタケが似ていなくもないような…。

アンモニアや動物の死体に反応して生えるキノコらしく、森の中に生えていてもまったく不思議はありません。焦げた砂糖のような(カラメル焼きのような?)匂いがするそうですが、嗅覚に自信がないのでわかりません。

でも、ヒメワカフサタケは傘のサイズが3.5cm~とされている上、ひだがやや密だと書かれている点が食い違います。何よりヒメワカフサタケは中実とも中空とも記載がないのに対し、このキノコは明確に中空だったので、きっと別のキノコだと思います。

ベニタケ科カレバハツも、傘の色合いは似ていますが、広葉樹林生で、なおかつ北海道のキノコ図鑑2種に載っていないので違うようです。ひだも、カレバハツには、このキノコにあるような周辺部の細かいヒダがありません。

(追記 : その後、図鑑を眺めていて、シロナメツムタケではないかと思いました。ただし、違う可能性のほうが高そうではあります。

シロナメツムタケはモエギタケ科で、ナメコと近縁で食用になるキノコ。次のような特徴を持ちます。

トドマツ・カラマツ林、ブナ林などに出現。傘はまんじゅう型から平らに開き、色は白から褐色。中央部分が濃い。傘に小さな鱗片がつくこともある。ひだは白色で密、直生。柄は下部が褐色でややささくれている。

柄の内部がどうなっているかは記載がありませんが、チャナメツムタケの色違いであれば中実でしょう。

一方、今回見たキノコは、ひだがやや疎で、湾生、柄は中空とかなり異なっています。しかし、ネット上の説明では、なぜか、こちらのサイトの説明では「ヒダは柄に直生~湾生し、シイタケのようにやや疎」とあります。また、ひだはやや 疎で、柄は中空としているサイトもありました。

シロナメツムタケの実際のヒダの画像がここのサイトで見れますが、今回のキノコの写真と似ている気もします。傘の外周部では細かいヒダがあって密なのですが、柄に近い部分では大きなヒダだけになるので、やや疎とも言えるのかもしれません。

ただ、 後日、チャナメツムタケなどを見慣れた後で、改めて写真を見てみたところ、ナメツムタケ系のキノコに似ているとは、あまり思えませんでした。

一方、(3)に記したキノコのほうはシロナメツムタケだと思います)

(2)ウコンガサ?
去年、晩秋に大量発生していたウコンガサとおぼしきキノコ。まだ数は少ないですが、そろそろこれが出てくるということは秋も折り返し地点。名残惜しく寂しさを感じます。

傘は地色は白のようですが、黄色の鱗片がたくさんついています。この鱗片は幼菌のときに目立ち、大きく傘が開くとほとんど落ちてしまいます。

引き抜いてみると、意外と柄が長く5cm以上あります。傘のサイズは現時点で1cmくらいですが、これから開くと、おそらく2倍程度になるでしょう。

柄をよく見ると、傘と同じく、白い地に黄色い鱗片がついているのがわかります。柄につばはありません。

柄は中実でポキっと折れます。

いつものように傘を割いてひだを確認してみましたが、まだ傘が開いていないので、わかりにくいです。現時点ではひだは白く直生に見えます。

さらに進んでいくと、近くにもウコンガサと思われるキノコが何本か頭を出していました。

これがウコンガサだとしたら、カラマツ林に出るキヌメリガサの親戚で食用キノコです。でも、近くに大量に出る猛毒タマゴタケモドキと色が似ています。

黄色い鱗片が重要な鑑別点だと思いますが、確実に他のキノコと見分けられるようになるまでは、食用に採るのははばかられます。

ウコンガサの特徴を図鑑で調べてみたら、9月中旬からトドマツやエゾマツ林に発生、傘は開けば4~7cm、幼菌時は傘全体が黄色の小さい鱗片に覆われ成長すると傘の周辺部のみ黄色、ひだは白で垂生かつ疎、柄は幼菌時に黄色い鱗片がつくとのこと。柄の内部については記載がありませんが、近縁種のキヌメリガサと同じなら中実です。

現時点では、ひだが直生に見えることのみ矛盾していますが、たぶん傘が開けば垂生になると思います。食べてみるにしても、傘が開いて以降に、要観察です。

(3)シロナメツムタケ
ウコンガサの近くに出ていた束生キノコ。傘のサイズは5cmくらい。(1)のキノコ同様、傘は中央が黒っぽくなっています。

傘は平らに開き、中央が突出していないので、アセタケ属やネズミシメジではありません。

傘には白い綿くずのようなものがついています。

横から見た姿。傘がほぼ平らに開いていること、柄の下部に白いささくれのようなものがあることがわかります。傘の綿くずと柄のささくれは、(1)のキノコと関連して調べたシロナメツムタケの特徴に非常に似ています。

ひだは褐色を帯びていますが、元は白だったのが、古くなって変色したのかもしれません。シロナメツムタケも白色から褐色に変わるとのこと。柄は白から褐色で、下部がささくれに覆われています。

ひだのつき方は、やや密か。

ひだの付き方は直生。しかし、下の2枚目の別アングルの写真を見ると湾生に見えます。

柄は中実。(1)のキノコと同じものではないか、という疑念が湧いているのですが、あちらは柄の内部が中空だったことが決定的な違いです。

以上の特徴をまとめると、傘のサイズは5cmくらい。ほぼ平らに開き、中心の色が濃くなり、綿くずのようなものがついている。ひだは褐色で湾生。柄は白から褐色、中実で、下方にささくれがある。トドマツの近くに生える。となります。

ナメツムタケの仲間について調べると、いずれも中実としているサイトと、中空としているサイトの両方が見つかります。図鑑では中空とも中実とも書いていません。もしかすると個体差があるのでしょうか。

(追記 : 後日チャナメツムタケを見慣れた後では、ナメツムタケ系のキノコは中実が多いと思います。そして、このキノコはシロナメツムタケで正しいと思われます)

その他の候補としては、キシメジ科のミネシメジが、傘の色合いなど似ていることがあるようです。かなり見た目の変異が激しいキノコで、バリエーションに富むそうで、リンク先の茶色っぽいタイプがよく似ています。

ミネシメジは傘の中央や柄に鱗片があるとされていますが、柄にささくれがあるとの記述はなく、その点に限れば、(1)で候補に挙がったシロナメツムタケのほうが似ていることになります。

おそらくミネシメジだとしたら、もっと柄が太いのではないかと思います。またミネシメジは石鹸の匂いがするそうです。

(4)タマゴタケモドキ
最近タマゴタケが生えず、タマゴタケモドキばかり次々と生えてきます。アカモミタケを採ろうと斜面にジャンプして登ったとき、足元にたくさん生えていたので、この機会にひとつ採取して写真を撮ってみました。

ひだの色が白で、柄が黄色いのと対照的。タマゴタケは、ひだと柄がどちらも黄色なので、鑑別点になりえます。万一、傘の色がタマゴタケと似ていると思っても、ひだの色で違和感を覚えるはず。他にも相違点はたくさんありますが。

柄はタマゴタケと同じく中空。

(5)全身が黒褐色の小さなキノコ
トドマツの根元に生えていた謎の黒いキノコ。傘の大きさは3cmくらい。まとわりついている白いカビのようなものは、幼菌時に覆われているクモの巣状の被膜でしょうか?

横から見た姿。つばがあるかのように見えますが…、

一本抜いてみて、よく観察。表面を白いクモの巣のような菌糸が覆っています。わかりにくいものの、傘のふちには条線があるように見えました。

ひだや柄も同じような菌糸に覆われています。傘、ひだ、柄はすべて同じ黒褐色色。ひだは密でも疎でもない。

つばのように見えたのは虫食いだったようです。

断面。傘は平らに開いているようでいて、中心部が凹んでいるのが確認できます。ひだはあまり幅広くなく垂生。柄は中空。

すぐ近くに生えていた3つも、おそらく同じキノコでしょうか。傘はまんじゅう型から平らに開くようです。これもわかりにくいながら、真ん中のキノコの傘の左下をみると、ふちには条線があります。

特徴をまとめると、全体が黒っぽくクモの巣のようなもので覆われている。傘は平らに開き、中心部が凹み、ふちに条線がある。ひだは幅が狭く垂生、やや密。傘と同じ黒ながら、断面をみると少し色が薄い茶褐色ともみなせる。柄は黒く中空。となります。

トドマツ林に生えるキノコを図鑑で調べましたが、このような黒褐色のキノコはムラサキフウセンタケしか見つけられませんでした。

ムラサキフウセンタケは、傘が5~12cmと大型で、トドマツなど針葉樹林に出るキノコ。傘はまんじゅう型から平らに開き、暗紫色で、微細な毛やささくれで覆われます。ひだは直生~上生で疎。柄は下部がふくらみ、繊維状で中実。フウセンタケなのでクモの巣状被膜の名残りが残ります。

似ているところもありますが、このキノコはサイズが小さく、ひだが垂生、柄が中空である点がまったく異なっています。

ほかに黒っぽいキノコで、ひだが垂生しているのを探すと、クロチチタケとコキイロウラベニタケくらいしか見つかりませんでした。

クロチチタケは、チチタケ属には珍しく柄が長いため、今回のキノコと同じような見た目になりえます。しかしひだが白く、乳液が出るといった特徴は当てはまりませんでした。

コキイロウラベニタケは、傘は1~4cm、中央が凹み、湿ると条線が現れる、ひだが褐色に変化する、柄が中空、といった点が似ています。一般に芝生に生えるキノコですが、混交林の蘚類にも生えるらしく、発生場所も当てはまっています。

写真で見る限り、あまり形が似ているとうには見えないのですが、現時点ではもっとも特徴が近いです。

(6)巨大ノボリリュウタケ
その後、前から目をつけていた斜面の奥のやぶの中に生えているノボリリュウタケを頑張って採りました。もっと生えていましたが、あまりに奥だったので、手前の6本のみ。そのうち3本はこれまで見た最大級に巨大。

今日の収穫。小さなキノコのかごがあふれそうになったので、手で大事に抱えながら落とさないように持って帰ってきました。途中、頭上から物音がして少し身構えましたが、アカゲラが木をつつく音でした。久しぶりに見たかも。

ノボリリュウタケ6本、アカモミタケ6本、シロヌメリイグチ5本、ハナイグチたくさん。

帰りぎわ、旭川から来たという初老の夫婦に出会って話しかけられたので、そこの森に入ってキノコ狩りしていた地元の人です、という会話をしました。見たことのないキノコばかりだと驚いていました。

そういえば、ここに引っ越してきた初年度、別の森に遊びに行ったとき、大量のハナイグチ(色で遠目でもわかる)をビニール袋に入れて森から出てきた人を見て、びっくりしたのを思い出しました。今は立場が逆転したんだなぁ、と感慨深い気分。

一人で森に入って、謎な食用キノコを大量に携えて出てくるなんて、昔のわたしからしたら、一番縁遠いタイプの人間だったと思います。まさか自分がそんな立場になるなんて、人生どう転ぶかわからないものです。

2021/09/20月

ウェンシリ岳の原生林を初めて歩く

前からずっと憧れていた山があります。それはウェンシリ岳。西興部村、下川町、滝上町の3自治体にまたがる道北の最高峰1142mの山です。

この山がある地域は、天塩岳道立自然公園に指定されていて、植林もされていないので、北海道では珍しい原生林が広がっています。植生も非常に豊かで、高山植物だけで100種を超えるそうです。

近所の素朴な自然林もいいのですが、手つかずの本物の自然、ウェルダネスを地で行くようなウェンシリ岳の自然は、いつか体験してみたいと思っていました。

この山のことを知ったのは、初年度に氷のトンネルを見に行った時。すぐそばに登山道の入り口がありましたが、当時にわたしのレベルでは危険すぎる高難度ダンジョンでした。

ウェンシリはアイヌ語で「悪い山」の意味。別の地域の話ですが、「登ることも伝え歩きもできない山を、悪い山(ウエンシリ)というのだ」という文章がアイヌ伝説集」にあるそうですね。

その言葉どおり、ウェンシリ岳の登山道は非常に険しいとの噂。下川町ルート、キャンプ場ルートの2つがあると聞いていましたが、どちらも到底登れそうにありませんでした。

だから諦めていたのですが、2つのルートのうち一つは上興部から南下する中央登山道というルートで、女性や子供でも登れると知りました。わたしが勘違いしていたのですが、下川町ルートはもう使われていないとのことでした。

改めて中央登山道について調べてみたら、……この道でも頭頂できるイメージは湧きませんでした…。頂上まで片道4時間かかる上、ロープを伝って登るような場所もあるらしい…。わたしの体力では頑張っても2時間が限界です。

でも諦めきれないので、どんな場所なのかまず下見に行ってみることにしました。家からはかなり遠いのですが、車の運転には慣れてきたので登山口までは行けそう。

上興部から南下する道は、信号機もなくわかりにくい分岐路ですが、カーナビ地図を見る限り、他に南下する道はないので迷うことはありませんでした。

途中から1車線の幅になりますが、ずっと舗装された山道が続き、一昨日出かけた天塩川支流の源流域よりは楽です。でも、相当曲がりくねったカーブが続くので、神経を使いました。

2日前に行った人のレビューでは、道中はサファリパーク状態でシカやクマを見かけたとのことでしたが、わたしはリスを数匹とエゾライチョウを見たくらいでした。

市街地から30分ほどで登山口に到着。天塩岳道立自然公園の看板と、近隣のマップがあります。

キャンプ場ルートのほうが近いですが、家から遠いし、非常に急な岩場らしいので無理。山登りする人たちのレビュー記事はそっちのルートばかりなのですが。今日もそちらからは登った人がいたらしい

中央登山口ルートは遠いものの歩きやすいとの前情報。今日は他に車はいませんでした。ちなみに下川町ルートは本来1063峰(1083峰との情報もありどちらが正しいか不明)から分岐していたらしいです。

所要時間は、ガイドブックによると、中央登山口から1024峰までが1時間40分、1083峰までさらに1時間、頂上までさらに1時間20分で、合計4時間かかることになっています。わたしの体力だと、もし行けるとしても、1024峰まででしょうね。

さっきのレビュー記事だと山頂まで2時間で登っていたりするのですが、それは山登りに慣れた人の話であって、わたしの場合は、4時間コースだと思います。

今日は下見なので片道30分だけ歩いてみる予定。ちゃんと道があって歩けるようであれば、後日友達を連れてきて、1024峰を目指してみようかと思っています。

中央登山口の入り口は看板のすぐ横にあるのですが…、

これが道? 歩き始めてみると、確かにちゃんと草刈りされてるな、とは思うのですが、鬱蒼とした森の中に無理やり道を作ったようで、幅はかなり狭いです。

入り口からずっと激しいアップダウンで、30度くらいの勾配は当たり前。帰りが不安になるほど傾斜が激しく、レビュー記事でも降りる時に何度も転んだという話がありました。

両側には巨大なチシマザサなどの植物が立ち並んでいるので、壁と壁の間を歩いていく感じ。たとえ足を滑らせても滑落は防げます。雪渓が残っている時期に来たら死にますね。タケノコが大量に採れそう。

登山道の景色は、非常にすばらしい。本物の森の、道なき道を歩いていくことができます。ミズナラやシラカバの巨木が森の年齢を物語っています。

すばらしい道ではあるのだけど、この急勾配を1時間40分歩き続けるというのは正気? そこまでしてさえ、ウェンシリ岳山頂までの距離の半分でしかないとか…。ちゃんとした登山部のメンバーでなければ来てはいけない場所なのでは?

今の時期は咲いている花もほとんどなく、ミヤマアキノキリンソウ、ヨツバヒヨドリ、サラシナショウマくらいしか見当たりませんが、春や初夏なら植物観察が楽しそうですね。いつヒグマが出るともわからないような場所で落ち着いて観察できる気はしませんが。

あまり自然観察はできませんでしたが、足元に生えているシダの一つはオクヤマシダのように見えました。裂片の先が尖っていて、裏側に袋状の鱗片がないので多分合ってそう。いかにも奥山という感じがします。

坂道をひたすら歩き続けること30分。14:00になったので今回は引き返すことにしました。到達した場所はこの倒木が目印。先に進むにはこの下をくぐるしかないので、とてもわかりやすい目印です。

iOSのコンパスで位置を記録。

後でGoogle Mapに入れてみたら、登山道から尾根の1/3くらいの地点でした。1024峰まで1時間40分だから、30分で1/3というのは正確な気がします。航空写真だと、まるでジャングルの中にいるよう。あながち間違っていません。

帰りの下り道は、楽な場所は楽でしたが、急な場所は滑らないよう気をつけて降りました。まだ余裕はありましたが、片道30分でこれだと、本番はひざがガクガクになりそうです。

ちょっと残念だったのは入り口から2番目の倒木のあたりに、大量のプラスチック製使い捨てコップが捨ててあったこと。

地面に落ちていたのは2個ほどで、あとは20個以上のカップが重ねられて倒木の上に置かれていました。泥水が溜まっていたので、また来たときに使うつもりだったわけでもなさそう。

面倒でしたが、重ねられていたおかげで持ち運びはしやすそうだったので、持って帰って捨てることにしました。持ち歩くさまは聖火リレーのようでした。

こんな入口付近に、大量の使い捨てプラスチックコップを持って入るなんて不可解です。集団で山登りしたにしても、こんなに手前で休むはずなんてない。

大勢でネマガリダケ採りにでも来たんでしょうか。いずれにしても大自然のど真ん中にゴミを放置しないでほしいです。

ただ、そうは言っても、今どき、人工的なゴミのない山奥を歩けるなんて奇跡みたいなものなのです。富士山もエベレストもゴミだらけ、海岸線や深海も漂流ゴミだらけ。

それなのに、ここ道北の山奥は、いまだにゴミのない大自然を楽しめているのだから、本当に稀有で貴重な場所です。

帰りに道路沿いに見つけたサラシナショウマの巨大な株。ここまで群生しているのは家の近所の森では見たことがありません。

帰り道を運転することも考えると、今回の片道30分の下見でもかなりハードでした。片道1時間くらいまでは体力的に行けそうだったけれど、最初に峰でさえ1時間40分、頂上まで4時間ともなると、本当に行けるのかどうか…。

とりあえず、登るとしたら、かなり天気のよい晴天の日を選ばないと、足元が悪そうですし、森の中が暗くなって危険でしょう。

天気予報では残念ながら、向こう一週間は曇りです。10月も半ばになると雪が降りそうなので、第一週が限度でしょうか。そのころになれば紅葉も見頃だと思います。晴れる日があればいいのですが…。

今日のキノコ。カバノアナタケ、ジュラドロホコリ?等

全然自然観察する心の余裕はなかったけれど、ちょっとだけ。

(1)キオビフウセンタケ?
登山道の地面に幾つか生えていたキノコ。傘やひだからするとフウセンタケ科のようです。傘は3cmくらい、傘は橙色で、柄はもう少し薄く白っぽい。

柄にははっきりとつばがあります。ひだはやや密。

ひだは直生。

柄は中実。

はっきりしたツバのあるフウセンタケ科ですが、フウセンタケ科は幼菌のときはツバがあって、大人になると失われるものが多いようなので、あまり同定に役立ちそうにありません。

見た目が近いのはオオツガタケかな、と思いましたが、針葉樹林に生えるらしいので却下。ここはほぼ原生林の自然混交林。

よく観察すると、柄にツバやささくれが階層になっているように見えるので、前にも見たことがあるキオビフウセンタケではないかと思います。こちらは混交林の地上に生えるとのことで一致しています。

(追記 : 後で知ったのですが、自然公園はキノコも採取しないほうがよいみたいです。見つけても抜いたりせず、見るだけにするべきでした)

(2)カバノアナタケ
今まで何度もシラカバの木にカバノアナタケっぽい木瘤のようなものを見たことがありますが、どれもカバノアナタケの写真と異なるものばかりでした。でも今回は間違いありません。100%カバノアナタケです。

登山道のシラカバの巨木の幹に生えていました。このシラカバはあまりに大きくて、下のほうの幹はシラカバとは思えないひび割れ方をしていましたが、上のほうの幹はシラカバらしい樹皮でした。

薬効があるらしく乱獲で減っているそうですが、さすがにこの原生林の樹海にはたくさんあるのでしょうね。お茶にして飲むといいらしいので、もし地元で発見したら採取してみたいかも…。でも乱獲に加担するのは気が引けるからやめておこうか…。

(3)ジュラドロホコリ?
途中の倒木にくっついていた半熟玉子のような奇妙な物体。大きさは5cmくらい。ゴゼンタチバナの葉がちょうど大きさの比較対象になっています。

触ってみるとブヨブヨしていて非常に気持ち悪い。さらに触ったら、中からオレンジ色の液体のようなものが出てきて、気持ち悪すぎて写真も撮りませんでした。きっと虫の卵とか蛹とか怪しいものに違いない、と思ってしまいました。

でも帰ってGoogle Lensで調べてみたら、Reticularia juranaというのがそっくり。和名ではジュラドロホコリという、まさかの粘菌(変形菌)でした。

国内で多いのは、マンジュウドロホコリという近縁種のようですが、画像検索しても色が違います。ある成長段階でオレンジ色になるのか、それとも国内では珍しい種類なのか、よくわかりません。

珍しいものだったのなら、もっと写真を撮っておけばよかったと感じますが、気持ち悪かったのだから仕方ありません。数日後には泥のように溶けてしまうそうです。

2021/09/21火-2021/09/22水

ホオノキの実が色づいて、キクイモの葉が茂り始めた

火曜は畑仕事など忙しく、水曜からは天気が若干、雨模様。森に行けないため、溜まっている写真の整理など頑張ります。ここしばらく出突っ張りだったので、雨上がりにキノコ狩りするのを楽しみにして、少し体を休めます。

友達の家の庭のホオノキ。ひとつ実が落ちてきたそうです。すっかり赤く染まって、このまま乾燥させれば美味しいお茶ができそうです。

水曜日の夕方、近所の堤防のキクイモ地帯の様子を見に行ってきました。去年、大量に野生化したキクイモを掘らせてもらったところです。今年も、まだ膝丈くらいしかないものの、キクイモの葉が出てきていました。

いつも花が咲く頃にようやくキクイモだとわかるので、背丈の低い葉の時期に見分けたのは初めて。ここがキクイモの群生地だと知らなければわかりません。

河川敷では、ヤチダモの葉が完璧に黄葉しきっていました。今晩からまとまった雨が降る予報なので、黄葉したヤチダモやオニグルミ、紅葉したヤマザクラなどは、かなり散ってしまうかもしれません。

公園にキノコが出ていないか見て回ったら、9/13にイグチ系が出ていたのとまったく同じところに、やはりイグチを発見。

ひっくり返したら、見事に食い荒らされていました。黒いナメクジがたくさんついていて気持ち悪い。手袋をしていてよかった。

管孔は少ししか残っていませんが、黄色っぽく、穴の大きな網目状。

柄も食い荒らされていますが、柄の上部にもともと網目模様があったかのように見えます。垂生していた管孔の跡かもしれませんが…

管孔が大きく開いて、しかも柄に網目のあるイグチって何かあるのでしょうか。思いつかないので、柄の網目模様は無視して、前と同じく全体の色合いからアミタケかな、としておきます。

【気になったニュース】

新着情報: 北海道におけるエゾウイルス熱を発見~マダニが媒介する新たなウイルス感染症~(人獣共通感染症国際共同研究所 講師 松野啓太)

北大が北海道内で広がっているマダニの新規感染症を、エゾウイルスと名付けて発表。マダニはヒグマより怖いと思っているので、これからも重々気をつけたいです。

2021/09/23木

フランケンシュタインの怪物のように感じる

今日もあいにくの雨模様。雨が降った後はキノコが出るから楽しみですが、やらなきゃいけない仕事があるのに、ずっとノイズのような頭痛が続いていて辛いです。

全身あちこちに、ノイズ、不協和音のような違和感や不快感が絶え間なくあります。学生の時に、ある日とつぜん慢性疲労症候群になってからずっとです。それを意識すると、あまりにも気持ち悪く耐え難いので、死にたくなります。

自然の中で過ごすようになってから、かなり改善しました。でも自然の中にいるときだけです。昼間、森を歩いている時は全然問題なくても、夜、自宅で過ごしていると不快感に苦しめられます。だから、頻繁に森に出かけます。

どうして森で過ごすことにこんなにも効果があるのか、はっきりとは分かりません。もし誰もがこれほど心地よく感じるなら、今ごろ森は人々がひしめき合っているでしょう。でも実際はわたし以外に誰一人いません。

わたしは疲れている時、辛い時、耐え難い時、死にたい時に森を歩くと、驚くほど回復して生気が湧いてきます。でも普通の人たちはそうではありません。

わたしの脳機能に何らかの働きが欠けていて、森がそれを補う働きをしているのだと思います。それはドーパミンを補う働きをするもので、外的なリズムやフラクタルによる効果だと思っています。外付けの人工透析機のようなものです。

理想は毎日、森を歩くこと。それが無理でもせめて2、3日に一度はそうしたい。火曜日から、たった3日間森に行けていないだけで、こんなに苦しい。頭や体の内部を虫が這い回るような不快感や違和感に気が触れそうになります。

今までこの不快感の正体が何なのか、何度も考察してきましたが、科学的にいえば、ノーマンドイジが「脳はいかに治癒をもたらすか」で書いていたニューロンのノイズなのでしょう。さまざまな脳神経疾患で起こりうるものです。(p168)

別の言い方をすれば、内部で統合されていないということ。わたしは慢性疲労症候群になった朝、自分がバラバラに砕け散ったかに感じましたが、それが修復されきっていないということ。

脳内のニューロンは通常、複数のネットワークが同時に発火し、ひとまとまりになって機能します。でも脳に異常が起こると、うまく同時発火せず、バラバラに発火するようになります。その結果生じるのがノイズであり、不快感です。

今のわたしはツギハギであり、フランケンシュタインの怪物みたいなものなのです。バラバラになった破片は、ボディワークや自然がもたらす作用によって、ある程度、統合することに成功しました。だから、かろうじて日常を送れるようになりました。

でも、残念ながらわたしは、長年、何年もかけて真剣にボディワークに取り組むことはしませんでした。トラウマに向き合うより、自然の中で穏やかに、緩やかに回復できる道を選びました。

ピーター・ラヴィーンは、「トラウマと記憶」の中で、ボディワークがバラバラになった身体的記憶を統合して、一体として動けるようにするさまを、金継ぎに例えていました。たとえ統合に成功しても、おそらく継ぎ目が見えなくなるほどには回復しないのです。(p198)

わたしは今、継ぎ目が見えています。森の中を歩いている時は、わたしは一人の人のようになって、自分の継ぎ目を感じなくなります。しかし、今のように体調が悪い時は、古傷が痛むかのように継ぎ目がうずき、バラバラになりそうに感じます。

ノーマン・ドイジは脳内のシナプスのネットワークの働きを音楽のオーケストラに例えていました。(p176)

ネットワークがひとつにまとまっているときは、ひとつの洗練された音楽を奏でます。それが、自分の内側に違和感がなく、脳が健全に働いているという感覚。

しかし、ネットワークがバラバラになり、不随意にあちこちが発火してしまうようなとききは、ノイズに満ちた脳になります。オーケストラの各楽器が指揮を無視しして勝手に演奏するかのように。それが内部の不快感や違和感といったノイズとして自覚されます。

森の中を歩いていると、あたかも、森や地球全体を、ひとつのリズムが支配しているかのように感じます。そして、その外部のリズムに同期することで、内部のリズムも是正され、不協和音が消えていくようです。

本来は、内部から統合できるようになるべきなのですが、わたしはその訓練を十分継続しませんでした。だから、外部からリズムを与える必要があります。

前にもこのような話を何度か書いたことがあります。内部からネットワークのスイッチを切り替える能力がなく、外的刺激に頼らなければならなくなる、という問題について。それと同じ話を書いているつもりです。

無意識に人格が切り替わってしまう「スイッチング」とは?―多重人格をスペクトラムとして考える
複数の人格を抱え持つ多重人格(解離性同一性障害)は奇病のようにみなされがちです、しかし実際にはスイッチングというグレーゾーンの現象を通して、普通の人たちの感覚と連続性をもってつなが

わたしたちの意識は、一見ひとつにまとまって見えても、複数の内的な自己というネットワークを統合しているだけで、見かけ上、ひとつに見えているにすぎません。

心は複数の自己からなる「内的家族システム」(IFS)である―分離脳研究が明かした愛着障害の正体
スペリーとガザニガの分離脳研究はわたしたちには内なる複数の自己からなる社会があることを浮きらかにしました。「内的家族システム」(IFS)というキーワードから、そのことが愛着障害やさ

その「ひとつのまとめる」「統合する」という無意識下のプロセスがうまくいかなくなると、自分の内側がノイズだらけになったり、意思に反して動作のスイッチングができなくなったりする、ということです。

自分で統合できなくなってしまったのなら、外部の代替システムに頼る必要があります。耳の聞こえにくい人が補聴器をつけ、糖尿病の人がインスリンを打つように。わたしには森がもたらす外的なリズムやフラクタルや、わたしがまだ理解していない何らかの要素が必要なのです。

昔は、わかりやすく書くために腐心していました。参考資料もたくさん引用してまとめました。今はそうするだけの意欲がありません。とても大事なことだと思うのに残念です。

今のわたしは、自分がフランケンシュタインの怪物のようにツギハギだらけに感じるということ。内なるノイズが耐え難く、気が触れそうになる時もあるということ、そして、それを解消するために森を歩きたい、ということを書き留めるだけです。

2021/09/24金

ちょっとだけ今日のキノコ。爽やかな4日ぶりの森

たくさん用事が入っている日でしたが、朝にほんの30分だけ時間を作れたので、急いで森に出かけました。数日森に行かないうちに、突然、黄葉が進み、色鮮やかさが増し加わっていて、いよいよ本格的な秋が到来したようでした。

4日ぶりの森はとても気持ちよくて、爽やかで、このまま何時間も探検したいという思いに駆られましたが、時間がなくて早足でキノコ採取するしかなかったのはとても残念でした。明日またゆっくり来よう。

(1)オシロイシメジ
大量に出ているオシロイシメジ。…と思われるキノコ。シロシメジの類は類似種が多いにも関わらず、見分けるポイントがわかっておらず、単に傘に段差がついていることだけで判断しているので違うのかも…。

傘のふちに輪状の段差が現れています。

ひだは密。

断面をみると、ひだは直生~垂生、柄の内部は なぜか中実。オシロイシメジは中空のはずでは?

後で調べてみると、オシロイシメジは若いうちは中実で、のちに中空になるとのこと。ということは以前カラマツ樹下で見た謎のシロシメジっぽいキノコはやはりオシロイシメジではなかったということに…。

(2)シロヌメリイグチ
いつものシロヌメリイグチ。傘が開ききってぶよぶよになっているものが多数あり、ここ数日採りに来れなかったのが悔やまれます。ハナイグチも写真に撮る時間がありませんでしたが、同じような状況でした。

この写真のものは、比較的大きめで傘が開いているにも関わらず、管孔がきれいでした。大きくて管孔がきれいだと得した気分になります。むろん、中を割ってみないと本当に虫に食われていないかはわからないのですが。

(3)タマウラベニタケ?
漏斗状に反り返り、ひだが柄に長く垂生する白いキノコ。カヤタケを思わせる形ですが、傘が開いても中心が凹まない点はホテイシメジに似ています。

傘の大きさは開いているもので3cmくらいと小型。周囲の木はシラカバとハリギリなので広葉樹生と思われます。

下から見ると傘が反り返っているのでカヤタケに似ていますが、上から見ると傘が凹んでいないのであまり似ていません。ですから、シロヒメカヤタケではなさそうです。

傘の表面に繊維のようなものが見えます。実際に触って確かめたわけではありませんが、毛ではないように見えます。毛であればシロケシメジモドキの可能性が高くなりますが、そうではなさそう。

ひだは柄に長く垂生。やや密という程度か。柄はひだより色が濃く、ほのかにクリーム色を帯びています。

傘はほぼ平ら。柄の内部は中実。柄の色はコカブイヌシメジに似ていますが、コカブイヌシメジは柄が中空なので異なっています。またコカブイヌシメジは北海道のキノコ図鑑2種に掲載されていません。

ハイイロシメジや、シロノハイイロシメジだったらホテイシメジのように柄の根元が球根状に膨らむそうですが、そうは見えません。ホテイシメジでも個体差があるので、それだけで判別できるわけではないですが…。

今のところ、傘のサイズ、形、色合いなど最も近いのはコカブイヌシメジなのですが、柄が中実である点、北海道に存在するのかわからない点がネックで同定できません。

(追記 : 9/29の(14)で再度このキノコを観察していますが、イッポンシメジ科のムツノウラベニタケ、ヒカゲウラベニタケ、タマウラベニタケのいずれかだと思います)

森を出たら服についていた種。もしかしてヌスビトハギ? 今年は花を見られませんでしたが、いったいどこに咲いていたのでしょうか。

採ってきたキノコたち。あまりに時間がなかったので、集合写真を撮る暇もなく、塩水の中へ。

湖のヒシの実とハシリグモ、田園のノスリ

用事の合間に寄った近所の湖。こんなに晴れているのに、自然を満喫する時間がほとんどないのは嘆かわしいです。楽しい見どころ満載の秋の森を楽しめるのはほんのわずかな期間だけなのに…。

よくみると、ヒシの葉が湖を覆い尽くしていました。

まだ枯れていないようなので、ヒシの実がついているかも? 一度食べて見たかったので、採ろうと試みましたが、陸地から多少離れているところに茂っていたので、相応の道具がなければ無理そうでした。

ウェダーを着て湖の中に入って葉っぱを切るか、高枝切りバサミと網を持ってくるかの二択。ウェダーなら持っているので試せるかも。

水際には、去年のヒシの実と思われる黒い殻がぷかぷかと浮いていました。

マキビシにするにはトゲが足りなさそう。それでも、素手で触れてしまうとかなり痛そうです。

黒くなってぷかぷかと浮いているヒシの実は、残念ながら中身は入っておらず、ただの殻だけでした。(白いのは手袋)

殻だけの黒いヒシの実は「しいな」と呼ぶそうです。殻がしっかりしているのに、どうして中身がなくなったの?と疑問なのですが、ここの説明によると、もともと稔実不良の実なのかもしれません。

湖の浅いところに打ち上げられていたヒシの葉っぱ。ひし形という言葉はこの葉っぱの形に由来しています。

長い茎が伸びていて、無数の根っこが生えています。通常はこれで水底に固定されていて、水位の変動にも対応します。でも、このヒシの葉はなぜか抜けて漂流してしまったようですね。

よく見ると、葉柄の付け根に実がなっています。この実は今年できたものなので、きっと中身が詰まっていて食べることもできるはずです。

新しい今年産のヒシの実は、果柄がついていて緑色。この外皮が腐って落ちると、内部の黒い骨格のような殻がむき出しになり、さっき見つけたようにぷかぷかと浮かぶそうです

葉っぱは葉柄の途中に浮き袋がついています。このおかげで、根っこは水底に刺さっていても、葉っぱは水面も浮くことができるのでしょう。

一通り観察したので湖面に投げてみたら、ちゃんと浮きました。根は抜けていたるので、また打ち寄せられるだけでしょうけれど。湖面にうつる青空と雲が幻想的で、ヒシの葉が空を漂っているかのよう。

ヒシの葉の上から、水面を忍者のように駆け回っていた謎の虫。望遠レンズで撮ってみたら虫ではなくクモでした。あとで調べたら、その名もハシリグモという直球な名で呼ばれる種類だそうです。水面をスイスイ滑るアメンボとはまた違うシュババババっという走り方。

その後、田園地帯を走っているときに、道路脇のポールとすれ違った際に、トビのような鳥が至近距離から飛び立つのを見ました。トビにしては白かったので、ノスリ?

バックミラーで見ているとまたポールに止まったので、車を停めて、遠くから写真を撮ってみました。

やはりノスリ! トビよりやや小柄でつぶらな瞳。下腹部に腹巻きのような茶色い帯が入るのが特徴。たまに見かけますが、写真に撮れたのは初めてです。

もっと近くから撮れるかもと思い、近づいてみました。しかし、警戒心が強く、かなり距離がある段階で逃げてしまいました

今日の畑仕事は、トウモロコシの茎をナタで切って解体することと、サツマイモ掘りでした。作業が始まってから、これは腕にくる重労働だぞ、と気づきましたが、時既に遅し。翌日筋肉痛に襲われてから、準備体操をしておけばよかったと後悔しています。

2021/09/25土

森を歩いているうちは心が安らぐ

ここ数日、鬱々とした気分が抜けず、何をするにも虚しさを感じてしまいます。いつもの厭世観が首をもたげているようです。そんな中でも、森を歩いている時だけは、心が安らぎ、充実感に満たされます。

森の空気はとても爽やかで、現実とかけ離れた別世界のように感じます。それでいて、ここは現実よりも現実らしい場所。生命力にみなぎり、生きている実感をもたらしてくれる場所です。

森の風景は随分と変わりました。足元には白く輝く葉がたくさん。どうやら色が抜けたムカゴイラクサの葉のようです。ヤブニンジンなど他の葉も時々白くなっているのを見かけます。どうしてなのか知りたいけれど、調べても園芸関係の記事しか出てこなくてがっかりします。

秋になると葉が黄葉/紅葉するのは、葉緑素が分解されて、アントシアニンやカロテノイドの色が現れるからだとされています。アントシアニンは寒くなると作られるものですが、カロテノイドは元々光合成を支援している物質なので、紅葉しない葉でも黄葉するはずです。

調べてみると、コシアブラなど一部の葉は「白葉」すると書かれていました。なぜなのか調べてみたら、植物園の先生が、黄葉は葉に元々含まれているカロテノイドではなく、新しく合成された色素の色ではないか、と書いているのを見つけました

コシアブラなど白葉する種類は、葉緑素が分解されても黄色い色素を作らず、元々存在するカロテノイドだけの薄い色になるので、ほんのわずかに黃みがかった白になるようです。

新しく合成される黄色い色素というのが何なのかわかりませんが、ここに書いてあることが確かなら、もともと葉に含まれているカロテノイドは少なく、鮮やかな黄葉になるにはもっと多くのカロテノイドが合成される必要があるということなのかも。

結局、権威ある情報は発見できず、身の回りのよく知られた現象でも、まだわかっていないことは多いのかもしれないと思いました。それにしても、ネットで知ったかで語られている情報はつくづく当てにならないです。

見頃を迎えたツリバナの実。紅の星型の殻が弾けて、中の実が垂れ下がっています。どの植物の実も個性的で美しいですが、ツリバナは毎年見るたびに、可愛らしさに夢中になってしまう魅力があります。

まだ開いていない実。いびつな段差もない完全な球形。紅色に生える縫合線の黒いラインや、アクセサリーのような繊細な質感が好きです。

そこから、パカッとくす玉のように割れると、中の朱色の実が飛び出します。なんて美しく、目を楽しませてくれるデザインなのだろうと感嘆します。

オオウバユリの実。すっかり茶色くなり、乾燥してきました。手で触れるとまだ湿っていますが、軽く降ると、中の実が飛び散りました。

まだ実は裂け始めたばかりなので、盛大に種が飛び散るのはこれからです。ぎっしり詰まっています。

帰り道の林道脇で見かけたセリ科。どうやらオオバセンキュウ? 近所に生えているとは思っていなかったので意外。

規則正しい複葉で、ひとつひとつの小葉の形も整っています。もう少しギザギザが激しかったらシラネセンキュウらしい。

先端の頂葉だけは先がややくっついていてボタンの葉のようになってる点はエゾニュウに似ていますが、エゾニュウほど巨大な植物ではありません。

セリ科らしい花。今ごろ咲いているのがとても意外でしたが、花期は7~9月とあるので一般的なようです。最も遅く咲くセリ科のひとつだったんですね。

林道脇に生えていた謎の十字対生の植物。先端には実がなっています。Google Lensに頼ったら、セイヨウオトギリソウのようでした。花が咲いている時期はともかく、葉に注目したことは全然なかったので新鮮な発見でした。

背丈1~2mになるエゾヨモギとは別に、あちこちに生えている小さなヨモギ。膝丈くらいの高さ。よく見ると葉の形も違います。いったい何ヨモギ?

葉っぱの形。調べてみると、ヨモギの仲間はそれぞれ葉の形が全然違います。北海道に分布しているヨモギ属は、エゾヨモギ、イワヨモギ、オトコヨモギ、イヌヨモギ、サマニヨモギ、イブキヨモギ、チシマヨモギ、シロヨモギなど。

でも、この葉っぱの形からすると、これはおそらく無印ヨモギでは?

茎を見てみると、葉柄の付け根に、トゲのような小さな葉がついているのがわかりました。区別の助けになりそうと思って撮りましたが、調べてみると、無印ヨモギには存在し、エゾヨモギには存在しない仮托葉だとわかりました。

一般的に、無印ヨモギは北海道に分布していないことになっています。しかし、よく調べてみると、「ヨモギは北海道に分布しないことになっているが(佐竹ら 1981)、近年は北海道各地で生育が確認されている(北海道ブルーリスト2010) 」という記述がありました

北海道大学の2020年の植物園だよりでは、「九州から北海道石狩地方にかけて分布」とあるので、こんな道北にも生えていることに違和感がありますが、情報が古いだけでしょうか。

帰りに見た植栽樹のストローブマツの実。今年の冬(調べてみると3/4)に、この細長い実を見た記憶があったので、ストローブマツだと気づきました。チョウセンゴヨウだともっと短くて丸みを帯びているようです。

今日のキノコ。チャナメツムタケ、ニカワハリタケ、ヌメリスギタケモドキ等

(1)アカアザタケ
森の入り口近く、カラマツの根元に束生していたキノコ。20日前の9/4に同じ場所でシロシメジ?っぽいキノコを見つけましたが、種類が同定できずにいました。詳しくは9/4に追記しましたが、おそらく成長した後の姿で、アカアザタケと思われます。

前回はもっと傘が引き締まっていて、柄も短かったので、シロシメジの仲間に見えたのですが、今回はどう見てもモリノカレバタケです。

でも考えてみれば、前に見たときも、傘裏のひだは非常に密で、柄は中空でした。ということはシロシメジではなく、モリノカレバタケの幼菌だったのでは? そう考えれば、特徴がすっきり当てはまります。

モリノカレバタケというと、傘がぺらぺらで、ひだが非常に密で幅が狭く、柄が細長くて中空、というイメージでした。でも、それは成長後の姿だったのかも。

画像検索してみると、モリノカレバタケの中には、もっと傘が引き締まっていて柄が短い個体もあるようでした。近縁のエセオリミキは柄が短くて太めです。柄に条線が出ることで見分けられるそうです。

(2)シロナメツムタケ?
これも、森の入り口横のトドマツ・カラマツ林でよく見かける謎のキノコ。9/19にも見かけて、シメジっぽいと思っていましたが、もしかするとシロナメツムタケではないか?という結論になっていました。

前回見たときは傘が乾いていたのに対し、今日はひどく濡れてぬめっているため、別のキノコに見えます。本当に別のキノコなのかもしれませんが…。しかし大きさや、傘の中央が褐色めいていることは同じ。

よく見ると、傘に白い小さな破片のようなものが散らばっています。シロナメツムタケは「白色綿毛状の小鱗片が点在するが消失しやすい」とあり、これがそうなのかもしれません。

横から見た姿。すっかり反り返って、平らに開いています。シロナメツムタケはまんじゅう型から平らに開くそうです。

写真を個別に撮り忘れましたが、ひだは密とも疎とも言いがたく、前回の9/19の写真と似た密度に見えます。

柄には白い繊維状のささくれが縦に付いています。シロナメツムタケの柄の特徴に「表面は繊維状で多少ささくれる」という点があるので一致しています。柄の色は傘と同色で、基部が濃いとのことで、一応当てはまって見えます。

縦に割いてみたところ。ひだは直生、内部は中実。前回見たシロナメツムタケらしいキノコと決定的に異なる点です。前回は湾生かつ中空でした。ということは違うキノコなのでしょうか?

シロナメツムタケのひだは直生~湾生とされるので、一応はどちらも当てはまっていることになります。柄の内部については、多くの文献では中実とも中空とも書かれていないので、どちらもありうる、ということなのかもしれません。

だとすれば、前回も今回も同じシロナメツムタケなのかもしれません。しかし、今のところ確証が持てません。食用キノコではあるようですが、これほど見分けにくいと手を出しにくいです。

(追記 : のちに同じように傘の中央が褐色になり、カラマツ林に生える白いキノコとして、アケボノオトメノカサというキノコもあることを知りました。しかしやはり柄は中空と書かれていますし、傘は真っ平らには開かないようなので違うでしょう)

(3)キヌメリガサ? …ではなくハナイグチ
同じカラマツ林に埋まって、傘だけのぞかせていたキノコ。大きさ、色、場所の特徴からキヌメリガサかな?と判断。なんとなく引っこ抜くのは可哀想な気がしたので、これ以上は観察できていません。もしキヌメリガサなら初確認です。

(追記 : 後日9/29に確認したところ、なんとキヌメリガサではなく、黄色タイプのハナイグチでした)

(4)ハナビラダクリオキン
しばらく進んだ別のカラマツ・トドマツ林で倒木に生えていた鮮やかなオレンジ色のキノコ。針葉樹の材上だと思うので、ハナビラダクリオキンでしょう。広葉樹であればコガネニカワタケが似ています。

拡大してみると、花びらではなく脳みそような、うねうねした形をしていますが、まだ若い菌だからのようです。

アカキクラゲの仲間で、「ダクリオ」は学名由来の外国語という変な名付けです。

すぐ近くに生えていた同じ色のもっと小さな物体。ハナビラダクリオキンの幼菌?マメホコリなど粘菌のようにも見えますが、ビョウタケやピンタケにも見えなくもありません。柄があるかは確認していませんでした。

(5)トガリニセフウセンタケ?
謎のキノコ。やぶの中に生えていたので、遠くからちらっと見えただけでした。中央部分が異常にはっきりと盛り上がり、フウセンタケの仲間のような丸みのある傘で、ふちは白い。柄にはささくれが確認でき、中ほどにつばがあり、それより下は、ややだんだら模様になっているようです。

Google Lensの意見は、ナガエノスギタケダマシと出て、確かに画像検索してみると似ています。しかし、後日9/29に同じキノコと思われるものを観察したら、ひだが疎であり、ナガエノスギタケは密なので食い違っていました。

図鑑を調べたところ、トガリニセフウセンタケという種類がトドマツ林に生え、ひだも疎でした。柄につばがあるとかささくれがあるといった記述はないものの、ネットで調べると、そういった外見のものもあるので、おそらく合っているでしょう。

(6)チャナメツムタケ
別のトドマツ林で、遠くからでも鮮やかだったキノコ。ハナイグチに見えましたが、トドマツ林だから違うだろう、と近づいてみたら、フウセンタケ科らしい形でした。

傘はてかてかした濃いオレンジ色。ひだと柄はほぼ白。

何のフウセンタケだろう…、と悩んで色々写真を撮っていたのですが、帰宅後、写真を整理していて、最も重要な特徴が見切れて写っているのを発見。下の写真の下方にピンぼけで写っている赤い帯です。

次の写真の下部にもかろうじて写っていますが、写真に残っていたのはこの2枚だけ。

ほかにも柄の写真など撮っているのに、この最重要の特徴だけ迂回して撮ってしまっているものばかり。3Dで見ると気づかないのに、2Dで見ると気づける特徴って案外あるものです。きっと図鑑の写真が2Dだからですね。

この赤い帯があるということは、これはツバフウセンタケではないか?と考えました。この特徴のおかげで、比較的簡単に名前がわかるキノコだとされています。

図鑑を見ていると、カバノキ科や広葉樹林に発生、と書いてあるのに、ここはトドマツ林なのでおかしいな、と不安になりましたが、「北海道きのこ図鑑」にはトドマツ下でも発生するとあり、事なきを得ました。

ひだは直生、柄の内部は中実。この点もツバフウセンタケと一致しています。

ところが、ツバフウセンタケは、傘にぬめりは一切ないキノコとのこと。それなのに、このキノコは傘がテカテカしています。

近縁種に、トドマツ林に生える、ツバアブラシメジというキノコがあり、そちらは、ツバフウセンタケと違って、傘がぬめっているのが特徴。でも、柄に赤い帯ではなく黄褐色の帯ができ、ひだの色がもっと褐色らしいので、似ているようで違いそう。

ツバアブラシメジ、ツバフウセンタケも食用とのことですが、どうもフウセンタケ科は見分けるコツがまだわかりません。去年のショウゲンジかと思いつつそうではなかったキノコに始まり、フウセンタケ科だというところまでわかっても、それ以上の同定が難しい印象があります。

(追記 : 9/29に大量発生したために正体が判明。なんと、フウセンタケ科ではなくモエギタケ科のチャナメツムタケでした。優秀な食用キノコで、一枚目の写真なんて、知っている人が見たら垂涎ものの状態でした)

(7)ホテイシメジ
9月も末に近づいていますが、いまだにホテイシメジはカラマツ林によく出ています。雨で濡れていると、少し傘の雰囲気が変わってしまい、9割方ホテイシメジだろうけれど確実ではない、という場合があります。その場合は、柄の下部にはっきりと膨らみがあるのでなければ、念のため採らないことにしています。

(8)ニセヒメチチタケ?
9/13にカラマツの周囲に生えていたチチタケ属の謎の小型キノコ。去年から頭を悩ませているものです。改めて観察してみたら、頭の中のイメージより、傘の色合いが濃いことに気づきました。黄色と橙色の中間と思っていましたが、実際はもっと赤に近いです。

大きさは1cm程度。

ひだは白っぽく、柄は傘と同色。柄にはクレーター状のへこみ。

今日ははっきりと白い乳液が観察できました。量もそこそこあります。少なくとも短時間では変色はしないようです。

ひだは直生~やや垂生。

柄は中空。

かなり小さいこと、カラマツ林に生えること、赤みを帯びた橙色であることなどから、おそらくニセヒメチチタケでしょう。今のところ最も近いけれど、断定まではできないか。

唯一違和感があるのは、ニセヒメチチタケのひだは肉色をしているということ。この写真だともっと白っぽく見えるのですが、もっと色が濃い傘とのコントラストでそう見えるだけなのかもしれません。

(9)ニカワハリタケ
森から出たところで、わたしの他に唯一この森に出入りしていると思われる、いつもの詳しい人とばったり出くわしました。森で会うのは11ヶ月ぶりくらいか。

その人が採っていたのは、まさかのひだが針状のキノコ。わたしは何も知らないで、つい「これはカノシタですよね?」と知ったかぶりで喋ってしまいました。

その人はニカワハリタケという正しい名前を知っていたにもかかわらず、わたしは自分の見立てに変な自信があったので、たぶんカノシタだろうと連呼してしまいました…。なんという失態。

わたしが初見の植物やキノコを自信満々に同定する時は、これまでもたいてい間違っていました。初めて見るものに、図鑑の限られた知識が結びついてしまい、これだ、と直感してしまうのは悪い癖。

自分ひとりで観察する場合は、こうして日記を書くときに追加調査するので、おいおい間違いに気づけるので構いません。でも、その間違った思い込みで、自信満々にもっと詳しい人にまくしたててしまったのは非常に恥ずかしい失態でした…。

後で調べてみて、傘裏が針状のキノコは、カノシタだけでなく色々あることを知りました。ほかにハリタケ、コウタケ、シシタケモドキ、ケロウジなど。

カノシタだと言いながら、なんかブヨブヨした透明感のあるキノコなので、違和感は感じたんですよね…。昔、一度だけキノコ観察会でカノシタとシロカノシタを見ていますが、もっと普通のキノコらしい質感だったような…と。

ちなみに、カノシタも、このニカワハリタケも、食用にできるキノコ。カノシタは最近毒成分が見つかったとかで要注意扱いされているそうです。海外でも様々な料理に使われているおいしいキノコなので、茹でこぼせば大丈夫と信じたいですが…。

(10)ヤナギノアカコウヤクタケ
そこからさらに進んでいって、渓流沿いのヤナギ林へ。そろそろヌメリスギタケモドキが生えているかなと探しに行ったら、同じくヤナギに生えるヤナギノアカコウヤクタケを見つけました。

枯れ木にべったり貼り付く赤いキノコということで、初年度にはアカウロコタケとの区別がよくわかりませんでした。

いまだにわかっていないのですが、ここの説明によると、べたっと貼り付くのがウロコタケ、反り返って背中を見せるのがコウヤクタケという認識でいいのかな。だとしたら、このキノコは立体的に反り返っているのでコウヤクタケです。

(11)ヌメリスギタケモドキ
そして今年も見つけたヌメリスギタケモドキ。ヤナギ林の上方にたくさんくっついていました。

残念ながら手の届く場所にはなく、高枝切りバサミのような道具もないため、見るだけでした。でも、モエギタケの仲間らしいふっくらした傘と、ささくれに覆われた柄は、見るだけでも可愛らしいものです。

最後に今日収穫した食用キノコ。

入り口付近のカラマツ・トドマツ林で、大量のハナイグチを採取。大量発生の時期を逃してしまい、もうブヨブヨに膨らんだものが多かったですが、ちらほらと食べれそうなものもありました。

歩きながら点在するホテイシメジを採取。

先日も巨大ノボリリュウを3本ほど採った斜面のやぶに頑張って登って、シダの隙間に群生している巨大ノボリリュウをたくさん採取。実はまだまだ生えていましたが、足場の悪い茂みの中だし、8本で満足しました。

そして、いつものアカモミタケ採取スポットでたくさん採取。まだまだ幼菌が出ていたので、次に行ったときにはまた収穫できそう。すばらしい森の恵みのおかげで、今日もキノコごはんが楽しめそう。

渓流を遡上するサクラマス、ヤナギの幹のヒメヤママユ

その付近の渓流を遡上してきたサクラマス。ニカワハリタケ狩りに来ていた人から教えてもらって見に行きました。一昨年も別の川で産卵の様子を見ましたが、こんなに家の近所の小さな川にも来るとは知らなかった!

とても大きな数十センチはある魚なのに、似つかわしくないほど浅い渓流を遡上してくるのは驚きです。

しきりに尾びれをバタバタと動かして卵を生んでいて、たまに脇腹が見えると、サクラマスの名の由来になった赤い模様が見えました。

その後、ヤナギ林を歩いている時、幹に止まっているのを見つけた巨大な蛾。

望遠レンズで拡大すると、体の太さに驚きます。もともと虫が苦手なわたしにとっては、ボリューミーさが少し怖くて遠巻きに観察。

なかなか羽を開かないので、死んでいるのだろうか…と見ていたら、

やがて動き出して、色鮮やかな羽を見せてくれました。この時期に大量発生するヤママユの仲間のクスサンかと思ったのですが、クスサンはもっと色が薄く、目玉のような模様も下羽に一対あるだけです。

帰宅後調べてみると、やはりヤママユの仲間であるヒメヤママユというガだとわかりました。ヒメとつくものの、ヤママユ(15cm)に比べて少し小さいというだけでクスサンとは同サイズ(10cm)です。

スズメガなどと違って、ヤママユの仲間は成虫になると食事ができなくなってしまい、子孫を残して死んでいく儚い存在。姿が見られるのは今だけなので、こうして美しい羽を広げてくれたことに感謝です。

2021/09/26日

森にトドノネオオワタムシ飛ぶ。マツのてっぺんのノスリ

明日ウェンシリ岳に登る予定なのですが、今日もよく晴れたいい日だったので、かなり長時間森歩きしてきました。

出かけたのは、しばらく行っていなかった湿地帯の森。先回、先々回とヒグマ気配があり、いまだにその付近にヒグマ出没の看板が立ったままなので、少し不安でした。もし新しいフンを見つけるなどしたら帰ってくるつもりでした。

森に入ってすぐ、木漏れ日が明るく、鳥の声がとても賑やかだと気づきました。目視できる距離に、たくさんの鳥が飛び交っていました。でも動きが早すぎて、カメラを構えても追いつきませんでした。

すぐ目の前をかすめるように飛んでいった小鳥もいました。すれ違いざまに顔を見たら、白と黒のツートンカラーでパンダのようでした。コガラやシジュウカラだったのかもしれません。

ひときわ目立つ中くらいの鳥が樹冠近くの枝に止まっているのが見えたので、望遠で撮ってみました。すぐにアカゲラだとわかりました。少なくとももう一匹いて、繁殖期のオス同士の空中戦を見せてくれました。

アカゲラもカラ類も、冬によく見る鳥で馴染みがありますが、秋のまだ葉が生い茂る森で見かけたのは初めてでした。どれも留鳥なので一年中いるはずですが、木々が生い茂る季節にはなかなか姿を見れないものです。

そういえば、昨日、森を歩いているときに、たくさん飛び交っていた白い綿毛のような雪虫ことトドノネオオワタムシ。日記に書き忘れていましたが、今日も森の中でたくさん飛んでいました。

初雪が降るころに飛ぶというので雪虫の異称がありますが、経験からすると、トドノネオオワタムシが飛んでから数週間経たないと雪は降りません。去年は10/4に写真を撮っていて初雪は10月30日でした。

肉眼で見ると舞い散る雪のようで幻想的なのですが、写真で美しさを伝えることは、どうやってもできません。仕方ないので、黒い手袋を背景にして、一匹だけ姿を記録してみました。

足元の草を見ると、不時着しているトドノネオオワタムシが一匹いたので、接写レンズで写真を撮らせてもらいました。トドマツからヤチダモに旅する途中。腹部のふっさふさの綿毛がよく目立ちます。

なんだから今日の森は、平和な雰囲気。差し込む陽光が明るいからか、鳥たちの声が心地よいからか。過去2回のような不気味さはなく、リラックスしてのんびり森歩きとキノコ観察を楽しめました。

でも、さすがに森の一番奥のトドマツ林でキノコ狩りしているときは、ちょっと緊張しました。

チャナメツムタケを観察しているとき、さらに森の奥へと続くササやぶが、何度かガサガサっと急に音を立てたので身構えました。声をかけても反応がなく、音もそれほど大きくなかったので、おそらくキツネ程度だろう、と思い、観察を続けました。

さらにアカモミタケなどを採っていたとき、なんとなく森の奥のほうの黒いものが気になったので(幸いそれは倒木の根でした)、望遠レンズで確認しておこうと思い、カメラを構えました。そうしたらなんと電源がつかない! 慌てて確認すると、また底のふたが勝手に開いて、バッテリーを紛失している!

これで二度目です。一度目は森を引き返して奇跡的に発見できましたが、今回は歩いた場所もあいまいで、もう無理だと思いました。

こんなことにならないよう、バッテリーをテープで止めてあったのですが、役に立たなかったようです。底面にバッテリーが入っていて、衝撃で簡単に落ちるというのは、このカメラの構造上の欠陥だと思えてなりません…。

明日、ウェンシリ岳に行くつもりなのに、このタイミングでバッテリー紛失なんて、悔やんでも悔やみきれません。望遠レンズ付きのカメラなしで山登りしたら、観察しそびれるものがたくさんあるでしょう。

ダメ元でキノコを見た地点を幾つか周りましたが見つかりません。もう諦めて、このままアカモミタケ狩りに向かおうか、とも思いましたが、一応、来た道を引き返してみることにしました。

すると、

あった! どこを通ったかもわからなかったのに見つかるなんて、信じられない思いでした。運が悪いけれど運が良い。

今まで森の中でタオル2回、接写レンズ1回、バッテリー2回、手袋1回落としているにもかかわらず、全部見つかるってすごい。森の中でもわたしがADHDなのは変わらないけれど、観察眼は相当研ぎ澄まされているのでしょう。

しかし、本当の悲劇はこの後に訪れました。心ゆくまでキノコを観察し、アカモミタケも数個ゲットした帰り道、林道のアスファルトの道に出て、車まで後10mほどという場所で、地面にバッタを見つけたので、写真を撮ろうとスマホを向けました。

と、そのとき、手が滑ってスマホは画面を下にしてアスファルトへ真っ逆さま。画面が盛大に割れてしまいました…。タッチ操作は問題なかったので、内部まで損傷はしていないようでしたが、修理に出すしかない惨状でした…。

カメラのほうで撮り直したそのバッタ。修理費2万円とてんびんに掛けるには高額すぎる…。おそらくサッポロフキバッタか。

わたしはそそっかしいので、いつこうなっても不思議ではありませんでした。次からは保護フィルムとかではなく、画面保護シールドみたいなのを装着しておくべきなのでしょう。

残念でしたが、カメラのバッテリーを落とすよりましだった、という変な安堵感がありました。出費としては、カメラのバッテリーを落としたほうが安かったはずですが、明日の予定にどうしてもカメラは欠かせなかったので。

帰り道。林道脇の黄葉が鮮やかになってきました。

マツの木のてっぺんに止まっていたトビのような鳥。ちょうどいい距離に思えたので、車を止めて写真を撮ってみたら…、

なんとノスリでした! 昨日初めて写真に撮れたと書いたばかりなのに、2日連続。やっぱり、去年まで望遠レンズがなかったから、たくさんいるのに気づけていなかっただけみたいですね。逆光ぎみだったので、後で写真編集するまで、トビだと思っていたくらい色がわかりにくかったですし。

それから近所の橋を3箇所ほどまわって、川の様子を眺めてみました、1匹サクラマスがいるのを確認できましたが、夕日が水面に反射してしまって、写真には写りませんでした。意外と近所ならどこの川にもいるものなんですね。

道路脇で盛大に紅葉しているワラビ。わたしはワラビは食べないので必要ありませんが、この時期ならどこが群生地か丸わかりです。

たとえワラビを食べないとしても、シダ界のカエデともいうべき虹色のグラデーションの紅葉は、つい車を停めて眺めたくなるほど目を惹きます。

今日のキノコ。ザラエノヒトヨタケ、シロヌメリガサ、ケシロハツ等

あまりに気持ちいい森だったので、ゆっくりのんびりしていたら、カメラのバッテリーを紛失しかけ、iPhoneのガラスが割れるという散々な目に遭った今日。キノコの写真も大量に溜まってしまい、整理するのが大変です。

(1)チシオタケ
久しぶりに見たチシオタケ。といっても、こちらの湿地帯の森に来ると高確率で見つけます。広葉樹の枯れ木や倒木に発生するとのこと。ここの森は広葉樹の比率が多いので生えやすいのでしょう。

よく言えば桜色、ちょっと生々しい表現だと生肉っぽい色なので、一度覚えたら、かなり見分けやすいキノコです。傘の大きさは2cm弱、柄は10cmあります。

ひだは白で疎。柄は傘と同色。

傘の周囲には、イタチタケに見られる被膜の名残りのような、ギザギザした白い飾りがあります。これはフリンジと呼ばれるそうです。

半分に裂いてみると、チシオタケの名の由来になっている、生々しい血液のような汁がにじみ出てきました。チチタケ属のようにヒダからもにじみ出るわけではなく、あくまで傘の内側から出るようです。傘をナイフなどで傷つけば、もっと鮮明ににじみ出るでしょう。

(2)ズキンタケ?
チシオタケのすぐ横に倒木から生えていたゼリー状のキノコ。上のチシオタケの写真の一枚目にも写っています。ちゃんと柄もあるのでキクラゲではありません。Google Lensにかけると、子嚢菌でありながら柄があるズキンタケと出ます。

横から見た姿。傘は薄いクリーム色、ズキンタケは一般に黄土色とか暗い緑色と書かれていて、色が薄すぎる気もしますが、同じ種類かなと思えるくらいの色。

傘の色だけ見ると、ミズベノニセズキンタケのほうが近いのですが、傘の形や柄の色はズキンタケです。

柄は小豆色。ズキンタケはもっと柄が長く伸びるようですが、まだ幼菌なのかもしれません。

一本抜いて手に載せて見た図。驚きの小ささ。傘も柄も含めても0.5cmくらい。ズキンタケは0.3~1.5cmとされていたので、幼菌だとすると当てはまるサイズ。

拡大してみると、傘も柄もゼラチン質。柄にの表面には小さな鱗片がついていて、ズキンタケの特徴と一致しています。

(3)クヌギタケの仲間?
わっさわさと生えたコケの中から顔をのぞかせていた小さなキノコ。傘の大きさは1cm未満。コケの種類はちゃんと確認していませんでした。ホウオウゴケみたいなのの間にネズミノオゴケがたまにある感じ?

大きさと形からして、クヌギタケの仲間でしょうか。

傘は放射状の条線があって、中央部分が褐色。

下から見上げた姿。妙にうまく撮れた写真。ひだは白っぽく、柄は褐色。小さすぎたので、裂いてひだの付き方や柄の內部など確認するのは難しそうでした。

(4)コナカラカサタケモドキ?
白い傘から、やぶれた被膜の破片がぶら下がると、とても美しいキノコ。ワタカラカサタケがすぐ思いつきましたが、傘は真っ白でカラカサタケらしい模様はありません。だとすると、傘がきれいすぎる気もしますが、コナカラカサタケモドキでしょうか。

傘は1cmくらいと小型。柄は4cmくらいあります。

傘のすぐ下につばが見え、傘から垂れ下がるフリルはこれにつながっていたということが推測できます。

傘のふちのフリル。柄のつばとつながって、ヒダを覆っていたようです。傘はよく見ると、部分的に褐色になっているのがわかります。

ひだの様子。はっきりとした離生で密とも疎とも言いがたい。

柄は褐色を帯びていて、綿毛のようなものがまとわりついており、中空です。

コナカラカサタケモドキは北海道のキノコ図鑑2種に載っていない上に、このキノコは傘についている粉が少なすぎるように見えます。決め手に欠けます。

(5)キツネノカラカサ
いつものキツネノカラカサ。倒木でギャップができて、大量にキツネノカラカサが生えている地帯に今日も生えていました。

ひだはやや密。

(6)ザラエノヒトヨタケ
枯れ枝の下から生えていた、非常に美しいキノコ。今日見た中で一番印象的でした。たくさん撮ったにもかかわらず、もっといいカメラアングルの写真が撮れたのではないか、と後悔してしまうほど繊細で美しかったです。

傘のふちが反り返って、反対側に巻いているという奇妙な形の老菌。となりにある幾分若い個体も、同じように上側に傘のふちが反り返っているので、この種の特徴のようです。

また、傘の裏側のヒダが黒く変色していることから、ヒトヨタケの仲間ではないかと推測できます。

変色していない少し若い個体のほう。まるでガラス細工のような透明な傘。

横から見たところ。もうひとつの個体と違って、傘裏のひだは、また白です。傘の巻きが甘いので、これから黒くなって溶けていくのでしょうか。

もう黒く変色しているほうだけ、手に採ってみました。大きさは傘が3cm、柄が8cmくらい。

ひだは下側のみ黒で、周囲は徐々に黒ずんでくるように見えます。柄からははっきりと離れていて隔生。

柄は白いささくれで覆われています。

傘の表面。ガラス細工のように見えますが、これも拡大してみると、白いささくれで覆われているのがわかります。

最初、ササクレヒトヨタケかな、と思って調べたら、このように反り返っている写真がひとつも出てこなくて、違うキノコだとわかりました。

Google Lensに頼ってみたら、Hare’s foot inkcapという名前だとわかり、日本名はザラエノヒトヨタケでした。非常に似たザラミノヒトヨタケという種類もあるそうですが、胞子を見るのでもなければ区別できそうにありません。

じつは森の中だけでなく公園や道端にも出るキノコだそうです。こんなに美しいキノコなんて今まで見たこともありませんが、そんな身近にあるだなんて意外。

(7)ヒトヨタケ科老菌
黒っぽいシメジのようなキノコ。こういうキノコは、Google Lensでも一向に正体不明なことが多いので、苦手意識が強いです。Google Lensは今回はなんとハタケシメジだと主張するのですが本当に?

傘は茶色く黒光りしていて、中心部分が濃く、少し膨らんでいます。

横から見ると、傘はかなり平たく、柄は細長いです。傘は5cm、柄は10cmくらい。傘の形からクロサカズキシメジは除外できますし、柄が細長いことからハタケシメジも除外できます

傘の周囲には条線が見えています。

ひだは茶色。やや密。

ひだは上生、柄の內部は中空。

いろいろ調べてみた結果、湿っている時のヒカゲシビレタケの老菌に似ています。

ヒカゲシビレタケは通常は黄土色ですが、湿っていると暗褐色になるそうです。傘は1~5cm、柄は4~12cmと、最大レベルではあるものの、一応範囲内です。ひだが上生、柄が中空というのも一致します。

しかし、柄の表面にだんだら模様がないので、ヒカゲシビレタケではありません。ではその近縁の他のマジックマッシュルーム類かと思うのですが、いずれも公園やウッドチップに出現しやすいキノコらしく、あまり状況が当てはまっていません。

(追記 : 10/10に観察したキノコから、ヒトヨタケ科の老菌だとわかりました。時々この森で見かけていたキララタケかカバイロヒトヨタケのどちらかと思われます。

わかってみれば、上に載せた写真で、傘が黒くなってインク状に溶けているのが確認できるので、ヒトヨタケの仲間であることは間違いありません。

傘は老菌になると黒ずみ、ほぼ平らに開くため、若い時とは外見がかなり変化しますが、ヒダが黒いことや、絵が真っ白なことから、ヒトヨタケの仲間だと判別できます)

(8)オシロイシメジ
いつものオシロイシメジ。でも傘の環形のでっぱりだけで見分けすぎて、まともに観察していないことに気づいたので、今日も一応特徴を観察してメモ。

ひだはシロシメジの仲間らしい、ぎしっと詰まった密度。柄は妙に長いですが、図鑑によると3~10cmとされ、長くなることもあるらしい。

断面。ひだは垂生。しかしやはり柄は中実。傘が開ききっていない若いキノコだから中実なのでしょうか…。こんど老菌も観察しないと。

シロシメジなど、他の似た仲間とどうやって区別するのか、まだ知りません。傘のでっぱりと、薬品臭が特徴でしょうか。また匂いを確認するのを忘れました。

(9)チャナメツムタケ
みたらし団子のようなてかてかした傘のキノコ。傘は5cmくらい。森の奥の毎年フジウスタケが群生している場所の近くに生えていました。すぐ横がトドマツ林ですが、広葉樹も生えている混交林。

外見からしてチャナメツムタケでしょう。

傘はまんじゅう形に近いものもあれば、ほぼ平らに開いているものもありました。

みたらし団子を思わせる著しいぬめり。傘に白いささくれが残っている場合が多いそうですが、下の写真のふちに見えるのがそうでしょうか。

ひだは白で密。

柄は縦方向に白い繊維状のささくれが確認でき、ナメツムタケの仲間らしい特徴です。柄の色は白ですが、下のほうがやや褐色。チャナメツムタケの柄は成長とともに下のほうから褐色を帯びてくるとのこと。

断面。ひだは直生、柄は中実です。

毒キノコのカキシメジ(広葉樹林)やマツシメジ(針葉樹林)に似る場合があるそうですが、傘や柄にささくれがあり、中実であれば間違いなさそう。

しかし、カキシメジでも柄にささくれが生じることがあるらしく、マツシメジは中実なので、どれか1つの特徴ではなく、全部確認してはじめて採ってよいキノコです。

もっと頻繁にチャナメツムタケを見かけるようなら食べてみようかとも思えるのですが、今まで認識したことがなく、これが初見。最近よく見かけるシロナメツムタケらしきキノコも含め、今後、もっと経験を積んで見分けられるようになりたいです。

(10)クリタケ
チャナメツムタケが生えていた場所の近くの、広葉樹と思われる苔むした倒木から生えていた茶色いキノコ。傘の大きさは2cm強。

傘のふちは白くなっていて、被膜の名残りがあるように見えます。

ひだは白で密。柄は上部は白ですが、下にいくにつれて褐色を帯びています。

断面。ひだは上生か、やや湾生。柄は中空。

いずれの特徴もクリタケに当てはまっているので間違いなさそうです。経験がまだまだ少ないので採りませんでしたが、帰ってから調べたところ、これくらいが食べごろのようですね。

クリタケ採りで怖いのはもちろんニガクリタケ。傘の色相が違うので、まず間違えないと思いますが油断は禁物。幸い、ニガクリタケは生でかじると異常に苦いという特徴があるため、毎回味をみるようにすれば、必ず回避できます。

(11)ヒロハアンズタケ
前に見つけたと同じ場所に生えていたヒロハアンズタケ。というか同じ個体かと思います。前より明らかに大きくなっていて、表面も温かみのある暖色のグラデーションで目立っていました。

(12)シロヌメリガサ
同定が難しそうな真っ白い傘の平たいキノコ。傘は大きめで7cmくらい。トドマツ林の地上に一本だけ生えていました。

ひだは疎。細めの柄の表面をささくれが覆っているのが最大の特徴。

ひだは直生から垂生、柄は中実。

調べてみたら、やはり柄の上部にささくれがあるというのが決め手で、シロヌメリガサだとわかりました。トドマツ林に出るそうなので状況も当てはまっています。ひだが垂生、柄が中実な点も一致。

傘が大きく感じますが、ヌメリガサの仲間はシロヌメリガサ、キヌメリガサ、ウコンガサ、シモフリヌメリガサ等、いずれも傘が開くと3~7cmくらいになるので、十分に範囲内。柄の細さが、幼菌時の細さを物語っています。

同じヌメリガサ科のオトメノカサがそっくりですが、そちらはひだが柄に長く垂生しているという特徴で見分けられるとのこと。

いずれも食べられるキノコですが、今ひとつ見分け方を習得できていないのが課題。採るにしても白はなんとなく怖いので、キヌメリガサとウコンガサが狙い目。

いずれも、ひだが疎、軽く垂生、柄が細く上部にささくれがあることが多い、湿っている時には粘性がある、といった特徴が共通点だと思うので意識的に確認したいです。

(13)ミヤマトンビマイ
トドマツの根元に出ていた巨大キノコ。何枚かのキノコが群れをなしているのかと思い、表面の落ち葉を払ってみたら、まさかの一枚のキノコ。

落ち葉を払う前の写真。ほぼ手のひらと同サイズ。15cm以上ありそう。

落ち葉を払った後。ひらひらと波打つ硬い傘で、かすれた環紋があります。

下から見上げるとヒダは管孔で、白色。触ると柔らかく、毛皮のような気持ちいい手触り。

調べたところ、トドマツに出るミヤマトンビマイというキノコのようでした。これでも小型で、大きなものは30cmになるそうです。そして近縁のオオミヤマトンビマイは広葉樹に出て、100cmを超えることもあるとか。英名Berkeley’s polyporeで調べるとそんな写真がたくさん。

幼菌のころなら、天ぷらにして食べることができるそうですが、少し苦味があるそうです。幼菌を見分けられるかどうかも難しそう。

なんとつい数日前に食べた人のブログを見つけました。柔らかいイカげそみたいな食感だそうです。キノコは本当に動物や魚の肉を思わせる食感や旨味をもつものが多いですね。菜食主義者はキノコに詳しくなるべきでは?

(14)ミヤマタマゴタケ
奥山にしか生えない日本特産キノコとされるミヤマタマゴタケ。近所の森で去年よく生えていましたが、今年はここ渓流沿いの森でも発生していました。どちらもトドマツ林であることが共通しています。

白亜の灯台のようにそびえ立つ凛々しい姿。

非常に立派なジャボを首にまとっていて、立ち姿も美しかったので引っこ抜くのは忍びなく、周囲から写真を撮りまくるだけにしました。大きさは傘が5cm、柄が15cmくらいだと思います。

そこそこ珍しいと思われるキノコなのに、よく生えることから、じつは違うキノコ?と疑っていますが、そうでもなさそう。類似種にドウシンタケやハマクサギタマゴタケがありますが、色も発生場所も違うので、たぶんミヤマタマゴタケ。

ミヤマタマゴタケは、傘のふちに短い条線があるのが特徴のひとつですが、確かに写真でも確認できます。

柄の下部にささくれがあり、つぼも確認できます。食べている人もいるので、たぶん大丈夫なのでしょうが、タマゴタケとドクツルタケの間の子みたいな姿をしているので、どうしても命の危機を感じてしまいます。

(15)コガネカレバタケ?
明らかにモリノカレバタケの仲間らしきキノコです。傘の大きさは4cmくらい。

傘が濃いオレンジ色。柄はさらに濃い朱色。配色の時点で、モリノカレバタケ、カブベニチャ、ワサビカレバタケ、アマタケなど近縁種が除外されます。

傘表面。コガネカレバタケにしては褐色みが強すぎるのですが、他に似たキノコを知りません。

ひだはモリノカレバタケの仲間らしく、幅が狭くて密です。

柄の表面に毛はないので、アマタケやワサビカレバタケではありません。また、色やサイズからエセオリミキの可能性も考えましたが、エセオリミキなら、柄に条線があり、柄の下部が膨らむとのことなので違うようです。

柄の內部はモリノカレバタケの仲間らしく中空、ひだは直生。カブベニチャやエセオリミキは、ひだが上生らしいので、ここでもこの2種は除外されます。

ということで、ちょっと傘の色が濃いものの、一番近いのはコガネカレバタケという結論になりました。

(16)クダアカゲシメジ?
傘にささくれがあり、中央が膨らんでいる褐色のキノコ。柄の下部が膨らんでいるなどユニークな特徴が多いので、すぐに正体がわかるかと思ったのですが…。

傘はかなりシワやささくれが多いです。傘の中央が膨らんでいるため、アセタケ属の可能性あり。

横から見ると、明らかに柄の下部が膨らんでいます。柄の表面もささくれや凹凸があります。

ひだは傘や柄とほぼ同じ色でやや密。

ひだは直生かやや上生。柄は中実。

全体がささくれていて、中央部分が突出している特徴から、アカゲシメジかクダアカゲシメジの可能性を考えました。場所もトドマツ林なので合っているようです。柄が中実だったので、無印アカゲシメジのほうが近いです。

しかし、アカゲシメジは、柄の基部のほうが細いとされていて、柄の形状が真逆なのが食い違っています。また、中央部分だけ盛り上がるという記述は、クダアカゲシメジのほうにのみ書かれているので、アカゲシメジは盛り上がらないのかもしれません。

クダアカゲシメジは、柄が中空とされている点が異なりますが、傘の中央部分が盛り上がること、全体がささくれること、全体の色合い(ひだは老菌だから褐色になっていると思われる)などが一致しています。

また、こちらのクダアカゲシメジの写真を見ると、基部が膨らむ柄の形もよく似ています。

そもそも、北海道のキノコ図鑑2種には、アカゲシメジは掲載されておらず、クダアカゲシメジしか載っていません。

クダアカゲシメジの「クダ」は柄が中空であることを意味しているので、その特徴は絶対に確認できなければなりません。

しかし、老菌でボロボロだったので、空洞がはっきりしなかった可能性もあります。写真では柄の上のほうしか写っていませんが、うまく裂くことができなくて、中途半端な確認になってしまいました。

(17)ツチスギタケモドキ
よくあるツチスギタケ、もといツチスギタケモドキ。最近名前が訂正されたとか。森の中だけでなく、道端などでも見かけるキノコですが、特徴豊かでユニークなので、見分けやすくてありがたいです。

全体がささくれのような鱗片で覆われています。

傘と柄をびっしり覆うささくれ。

今回はなんと幼菌なのか、ひだが膜で覆われていました。きれいにラッピングされていて、キノコってこういう構造になって出てくるのか、と不思議に思います。自然界のものは、冬芽にしてもキノコにしても実にしても、リサイクル容器包装が見事。

(18)ケシロハツ
シロハツっぽいキノコ。

柄の上部が青っぽくなっておらず、ひだも密ではないのでシロハツやシロハツモドキではないですね。

白い乳液が出ます。観察していた時間内では変色しませんでした。

断面。肉は白くて柄は中実。ひだは幅が狭く、垂生ぎみです。

これだけ手がかりがあれば同定できるかと思いきや、シロハツ系統は次の6種類なのでした。シロハツ、シロハツモドキ、ケシロハツ、ケシロハツモドキ、ツチカブリ、ツチカブリモドキ。そうだ、毛が生えてるかどうか見なければならないんだった!

なんとなく撮ってた傘の接写写真がまさか役立つとは…! 最近、キノコの同定のためには、傘と柄の接写写真も撮る必要があるかもと思いつつあります。

明らかに微毛か生えていてビロード状。ということはケシロハツかケシロハツモドキ。ケシロハツはひだが疎で、ケシロハツモドキは密なので、このキノコはケシロハツで決まり。ケシロハツは中央が凹んで漏斗型になることも当てはまっています。久々にすっきり同定できました。

(19)アカモミタケ
今日の収穫。トドマツ林の腐葉土地帯を歩いていると、点々とアカモミタケが生えていました。

いつも採っている森は一箇所に次から次に出てくるのですが、こちらの森は点在するので探すのが大変。枯れ葉に埋もれているので踏みそうだし。

虫に食われてしまっているのも多く、10個くらい発見したうちの5つが比較的きれいだったので持って帰ってきました。それでも表面の枯れ葉を落とすのは面倒でした。

昨日採ってきた色々なキノコと一緒に柔麺に入れてみましたが…、これは異様なに美味しいですね。アカモミタケをキノコご飯に入れると、とんでもないコクと旨味が出ますが、柔麺でもまたしかり。魔法のアカモミタケです。

2021/09/27月

途中までだけどウェンシリ岳に登った!

先週下見に行ってきたウェンシリ岳、天気を見たら、よく晴れているのは今日しかなかったので、頑張って登ってきました!

友達と一緒に行こうと思って誘っていたのですが、最初はいい返事だったのに、先週の金曜になって

キャンセル。こんな険しい山に登ろうなんていう物好きはめったにいないので仕方ないですね。

下調べしたところ、ウェンシリ岳に登るルートは3つありますが、現状管理されているのは中央登山口ルートとキャンプ場ルートの二種類。キャンプ場ルートは近いですが険しすぎるので、中央登山口ルートから登ることに。

本格的な登山者は2時間くらいで頂上に登れてしまうようですが、ガイドブックによると、女性や子どもが登る場合は、全部で4時間くらいかかるようです。

中央登山口→(1:40)→1024m峰→(1:00)→1083m峰→(1:20)→1142m頂上

というコースタイムでした。てっぺんまで行くのはどう考えても不可能なので、最初の1024m峰で妥協することにしました。頂上とさほど高度も変わらないし、似たような景色が楽しめると思ったからです。

先に結果を書くと、実際に登ってみたら、910m地点まで2時間半かかり、16:00までに下山することを考えると、そこでタイムリミット。最初の峰まですら行けませんでした。どれだけ体力ないの…、という感じですが、数年前まで重病人だったので仕方ないですね。

しかし、その910m地点は、ほぼ森林限界にあたり、ちょうどハイマツ、エゾイソツツジなどの高山植物が現れたので、頂上付近らしい景観を楽しむことができました。望む景色はもちろん絶景!

普通の人よりずっと制限がある中でも、体力と時間の限界の範囲内でギリギリ高山帯にたどり着け、ウェンシリ岳連峰の頂上付近からの景色を楽しめたということで、大成功でした。

計画の段階から、きっとかなり手前で引き返すことになるだろう、1024峰まですら到達できないかもしれないと考えていたので、予想外の結果に大満足のウェンシリ岳登山となりました。

撮った写真はなんと300枚にも及び、しかも後から見返しても美しい景色ばかり。もちろん自分の足で登ったという体験が伴ってこそ美しく感じるのですが、厳選するのが大変でした。以下その記録。

本来なら、朝早くから登り始めるべきですが、わたしは朝が非常に弱い上に、ウェンシリ岳まで長距離運転しなければなりません。それで12:00に登山口に到達するのが精一杯でした。

当初、友人と登る計画をしていた際は、無謀にも朝1030から登ろうとしていたので、友人がキャンセルしてくれて逆に良かったです。わたしは朝早く起きると途端にパフォーマンスがひどく低下するので、もし当初の予定だったら死にそうになっていたでしょう。

ウェンシリ岳のある西興部村に到着したのは11:20ごろ。今日も道路脇にシカの群れが出迎えてくれました。さすがサファリパーク西興部。いつ来ても野生動物が見れます。

途中にそびえ立っていた印象的な形の山。後で調べたら、拳骨山(カッチヌプリ山)という名がつけられていて、頂上の大岩に登った人の登山記もネット上で読むことができました。整備された道はなくやぶ漕ぎだそうです。

道の駅に立ち寄ったときに止まっていた大きな蛾。この時期にたくさん発生するクスサンです。一昨日見たヒメヤママユの親戚で、町なかの街頭などでもよく見かけます。

ヒメヤママユは羽の目玉模様が4つありましたがクスサンは2つだけ。色合いもくすんだ黄土色で地味です。

上興部市街地から札滑川沿いに南下すると、ウェンシリ岳に通じる林道があります。分岐点に信号はありませんが、南下できる道は一つだけなので、カーナビを見ればすぐわかります。

ウェンシリ岳に向かう林道の風景。前方に見えているのは別の山。ウェンシリ岳はもっと険しい見た目。道中の札滑林道は舗装された走りやすい道ですが、一車線で曲がりくねっています。

30分弱走ると中央登山口に到着。入り口に立っている二枚の看板は前回掲載したので省略。ここが天塩岳道立自然公園の一部であること、およびウェンシリ岳の登山コース図が記されています。

登山道入り口は、GPSで計測すると高度540m。しかしここから数百メートル登るだけでいかに大変かを思い知らされることになります…。

12:00過ぎに、中央登山口から登山開始。5分くらい歩いたところで、ガムを噛むのを忘れたことに気づいて一旦引き返してタイムロス。喉が乾きにくいように、森を歩く時はガムを噛むことにしています。

改めて登山再開。この時期はあまり見頃の植物はなく、オオカメノキの鮮やかな紅葉と赤や黒に色づいた実だけが、ひときわ目立っています。

登山道はササ刈りがされていますが、両手を広げた幅より少し広いくらいの道しかなく、両側はチシマザサなどのやぶに覆われています。

左右の木々は混交林。細い木もあれば、大人二人が両手で抱え込んでも足りないほど太いミズナラなどもあり、いかにも原生林を歩いているという風情の趣ある道。倒木なども、そのまま残されているので目印になります。

整備された登山道というより、よくもまあ、こんな奥地に無理やり登山道を作ったものだ、と感心させられるような道。

常に30度くらいの上り下りの傾斜があり、道の片側が急斜面になっていることもしばしば。ササがあるので滑落の心配はありませんが、油断すると足を取られます。

オオカメノキ以外に目を引くのは、大量に生えているハナヒリノキの葉っぱ。地元の森では見たことがありませんが、山奥に行くとこれでもかと生えているツツジ科。

今は面白い形の実をつけています。どこにでも生えているので、高度が上がるにつれ、燃えるような紅葉に変化していくのを観察できました。

地面に生えていたツルタケっぽいキノコ。時々、菌臭がして周りを見回すとキノコを見かけましたが、じっくり観察している余裕はありませんでした。というか匂いでキノコを発見できるなんてすごい、と自分でも思いました。

傘はねずみ色、ふちに条線があり、柄につばはなく、根元に白いつぼを持っています。

大きさは傘3cmくらいと小柄でした。タマゴタケと同じテングタケ科で味はよいらしいですが、ツルタケダマシなど類似の猛毒菌があるので、手を出さないほうがいいでしょう。

(以前は、自然公園法の解釈から、自然公園でもキノコは例外で採ってよいと書いている人のブログを見たことがありました。しかし近年はキノコも採取できないという解釈になっているようです)

面白かったオオカメノキの紅葉。なんとすっぱり半分だけ赤くなっています。補色のコントラストが美しい。

左右反対のものもあり、いったいどういった理由でこんな色づき方をするのが気になります。一枚だけたまたまそうなっていたわけではないので、オオカメノキにたまに起こる現象なのかもしれません。

30分歩いてやっと、前回到達地点の倒木にたどり着きました。ここが行程の半分くらいだったら良いのに、とかなわぬ願いを抱くほどには、この時点でかなり足腰に響いていました。GPSでは高度670m。登山口から130m挙がったことになります。

前回発見した倒木近くの巨大なシラカパの木のカバノアナタケ(チャーガ)も確認できました。

このあたりだったか、もう少し先だったかは別れましたが、軽快に降りてくる下山者とすれ違いました。やはりウェンシリ岳には毎日幾人かは登っているのですね。誰かが入っていれば、ヒグマも出てきにくいでしょうから少しは安心。

その登山者は両手にポールを持ち、しっかり熊鈴も鳴らしていて、熟練者の雰囲気でした。こんな時間から登るなんて無謀だと怪訝に思われたかもしれませんね。

ここからは、いよいよ未踏破地帯。いきなり非常に狭い崖のような足場。足を滑らせても森の斜面があるだけなので命に危険はありませんが、足をくじかないよう慎重に進みます。

倒木に、びっしりとカワラタケ! 集合体恐怖症が刺激されて、ぞっとしてしまうびっしり感。カワラタケはどこでも見かけますが、これほど鮮やかな空色で一面に広がっているのは珍しい。

ひだを下から見上げるとまさに瓦のよう。

こんなに生えているのにまだ増えるつまりなのか、幼菌らしいのも。サカズキカワラタケの幼菌はシマメノウの断面のようでしたが、普通のカワラタケの幼菌は目玉のようです。…と思ったのですが、カワラタケ幼菌で調べてもこのような画像が出てこないから違うキノコなのかも?

カワラタケの倒木の側面に生えていた別ま黄色い極上のキノコあるいは粘菌。残念ながらピンぼけでした。スマホが修理から帰ってこないと接写は厳しいです。黄色いビョウタケにしては形が崩れすぎに見えるので粘菌の仲間かも。

また見つけたハナヒリノキの実。高度が上がってきたからか、さっきのに比べて葉も実も赤みを帯びています。

とらほら生えている低木。実もついていないので名前の判別が難しいですが、葉の形からするとイヌツゲの仲間に見えます。

手の大きさとの比較。湿地や蛇紋岩地帯ではないので、アカミノイヌツゲではないとして、イヌツゲかハイイヌツゲあたりでしょうか。冬芽を接写しておけばよかったのですが、疲れていて頭がまわらず。スマホも故障中だから接写は面倒ですし。

おそらく高度700mあたり。ここまで来ると、ところどころ森に切れ間が覗き、登山道の左手から連峰が見えるようになります。連なる峰は、まだ自分よりかなり高い印象を受けます。

よく見ると、遠くの峰は上のほうだけが色とりどりに紅葉/黄葉しているのがわかります。登っていくにつれて、左手に見えるこの連峰がどんどん近くなってくるのが圧巻でした。

そして、この辺りから、登山道でも徐々に黄葉/紅葉が鮮やかになってきます。さっきまで、オオカメノキや一部の葉を除き、ほとんど緑一色だった森がどんどんカラフルになっていきます。自然林ならではの色とりどりの森。

マクロの景色ばかりでなく、ミクロの景色も見惚れます。足元の岩を覆う地衣類ハナゴケの仲間が織りなすミニチュアサイズの森。何もかもが新鮮なので、もっと簡単に来れる場所だったら、時間を忘れて過ごせることでしょう。

謎のキノコ。例によってピンぼけぎみ。Google Lensにかけるとブナハリタケと出ました。普段は針葉樹林を歩くことが多いので、見かけないキノコです。ミズナラやイタヤカエデに出るらしいので、近隣でもチャンスはありそうなので、覚えておきたいところ。

手の大きさとの比較。とても優秀な食用キノコだそうです。ハリタケの名のとおり、裏側が針状で、似たキノコもないため、採りやすいそうです。疲れていてしっかり観察しなかったので、本当にこのキノコがブナハリタケなのかはわかりませんが…。

謎の紅葉している低木。種類を判別するなら、もっとしっかり葉の形でも撮っておけば良かったものを。登山中に観察は無理。

このあたり(標高750m付近)で、ヒグマのフンを発見。登山道の真ん中に落ちていました。左右にチシマザサの壁がそびえる狭い道で、出くわしたら大変なことになりそう。

見たところ直近のフンではなく、昨日より前のものに思えたので、注意しながら進むことに。

さらに10分くらい歩いたところで2つ目のフンを見つけましたが、やはり昨日以前のものに思えました。もし真新しいフンがあれば引き返すのもやむなしと考えましたが、それ以降はありませんでした。

それにしてもフンにはたくさんの実の殻のようなものが混じっていました。もしかするとハイマツの実の殻でしょうか。近所で見るヒグマのフンはサルナシばかり食べてそうな色なので全然違います。

このあたりから現れ始めた、黄葉したシダ植物。黄葉するということは、もしかするとヤマドリゼンマイか。

簡単に裂片を確認しただけですが、オシダやクサソテツのようなオーソドックスな形。柄に目立つ鱗片はなく、多少毛が生えている程度であることからして、ヤマドリゼンマイの可能性が高そうでした。

時刻は14:02。高度800mくらいでしょう。登山開始から2時間が経過しましたが、まだチェックポイントは見えません。女性や子供でも1時間40分で最初に峰に着けるはずでしたが、わたしには無理でした。

16時に下山するには、14:00に引き返さなければならないか、と考えていましたが、ギリギリまで粘って、14:30に引き返すことに決めました。

あと30分頑張ろうという気にさせてくれたのは、いよいよ燃えるように色づく鮮やな景色でした。高度が上がるとともに樹種が変化し、別世界のような幻想的な風景が広がります。

この写真は今日撮れた写真の中でも一番のお気に入りかも。高山帯という新エリアにつながる入り口であるかのような虹色のアーチ。

背の高い大木は少なくなってきて、登山道から見える景色も、より鮮明に。対岸の連峰が、目線の高さに近くなってきて、かなり登ってきたことを実感できます。上に広がるは遮るものが何もない蒼穹。

さっき見えていた対岸のてっぺん付近の色とりどりの紅葉/黄葉が、ひときわくっきりと見えます。それはきっと、自分が今同じくらいの高度にいるからでしょう。一足先に深まる秋に足を踏み入れました。

さっき見たとの同じヤマドリゼンマイと思われるシダが、踊り上がるように黄葉した葉を、登山道の両脇あちこちに広げていました。

高い木が少ないので、頭上が開けて青空が近いです。森林限界が近いことを伺わせます。正面に見えるのは、もしかすると1024峰? あれが目的地だとしたらもうすぐだ、と心が奮い立ちます。

また謎の赤い紅葉の低木…、と思いきや、後で写真を確認すると、実が見えるのでハナヒリノキでした。下層の森の中のハナヒリノキに比べて、なんと鮮やかに炎のごとく紅葉しているのでしょう。

この付近から突如現れた謎の低木。葉の形から推測するに、ツツジ科の小低木のアカモノでしょうか。

実がひとつも見当たらなかったのは残念。もうすっかり鳥や動物たちが食べてしまったのでしょう。前に食べた同じツツジ科のウスノキやオオバスノキは漿果でしたが、アカモノは液果だそうです。

今回は冬芽っぽいのを撮ってみましたが、アカモノの冬芽を撮るようなマニアックな人はいないのか、図鑑にもネットにも写真がありません。同定の助けにならず残念。

あらゆる色がひしめきあっている天空の多様性の楽園。厳しい山道を登ってきた人でないとたどり着けないエリア。それだけの価値は十分にある展望。

森林限界付近の木々の種類。

手前の黄葉はオガラバナ(ホザキカエデ)、奥の紅葉ははナナカマドに見えますが、タカネナナカマドやウラジロナナカマドだったのかも。手前のチシマザサは、普通は背丈より高いササですが、ここまで登ってきたらクマイザサ並みに小型。

ぶわっと一斉に逆立つようなヤマドリゼンマイの群生。遮るものがない日の光を浴びて輝く姿はステンドグラスのよう。

改めて見てみると、色づいてもまだまだ元気そうな栄養葉と、

枯れてくるくる巻いている胞子葉らしき葉がありました。栄養葉らしいほうにはソーラスがないし、胞子葉らしき葉もあるし、ヤマドリゼンマイで間違いないでしょう。

鮮やかな朱色に紅葉していた謎の木。下界ではこのような色ならヤマザクラだと考えますが、こんな高さに生えているのは何だろう?

じっきり観察する余裕はまったくないものの、せめて葉っぱの形をと思って望遠写真を撮りました。ピンぼけぎみだったのですが、幹の雰囲気からして、サクラであることは確かですが、亜高山から高山帯なので、チシマザクラだと思われます。

初めて登山道の右側の景色が開けたので見下ろしてみると、登ってきた高さがよくわかります。

登山道の左側(南)にはウェンシリ岳の連峰がそびえていますが、右側(北)にはこれ以上高い山がないので、ほぼ緑一色。はるか遠くに上興部市街地も見えました。それにしても空のスカイブルーが爽快。

足元に生えていた見慣れない低木。とても葉脈が目立つ特徴的な葉をしています。以前に見たことがあるミヤマハンノキかな、と思ったのですが、一応写真を撮っておきました。

冬芽も見つけたので撮っておく。先が尖ってツルツルとした赤茶色の冬芽。それにしても葉のギザギザがすごい鋭い。

葉の形が細長く鋭いのでミヤマハンノキではなさそう。ミヤマハンノキは、ケヤマハンノキに似て、もっと丸っこい葉です。(上の写真では下のほうの葉は丸っこく見えますが)

帰って調べてみたところ、おそらく、カバノキ科のヒメヤシャブシのようです。ミヤマハンノキとは近縁関係。ミヤマハンノキは3~10mになるのに対し、ヒメヤシャブシは3mくらいの低木で、多雪地や崩落地に多いそうなので、状況に合っています。

そして、ヒメヤシャブシは、ウェンシリ岳のガイドブックにも載っていて、一般に日本海側に多いとされるヒメヤシャブシが、オホーツク海に面したこの山にたくさん自生しているのは珍しいと言われているとありました。

同じく、やはり日本海側に多いサワフタギという木も自生しているらしく、瑠璃色の実がなっているのを、ぜひ見たかったのですが、発見できませんでした。名前どおり沢沿いに多いのでしょうが、雪渓の多い山なので、他の場所でもありそうな気がします。

わたしは草本よりも樹木の観察がこよなく好きなので、自分の知らない樹木が多い深山や高山には憧れを抱きます。ここがもっと気軽に来れる場所ならずっと入り浸るでしょうに。

いよいよ峰らしき場所に接近。天空へ続く虹色の道を進みます。

すると、なんとここから急斜面で、ロープが張ってありました! 事前情報で近年登った人のブログを読んで、ロープ地帯があることは知っていましたが、こんなに遠いとは思わなかった…。

新旧のロープが張ってあると書いてありましたが、そのとおり、白いロープと変色したロープがありました。それよりも結んであるダケカンバの木がさほど太くないのが怖い。

力を振り絞って、最初のロープ地帯をなんとか登ったと思ったら、まだまだ続く。ここからは比較的緩やかではあるけれど、ロープに頼らないと辛いです。

そこを超えると、次はなんと垂直に近い崖! さすがに驚いて、「ここまで来て正気?」と声に出てしまいましたよ。アスレチックは好きですが、こんな高山ですることになるとは…。

もう時間のリミットも近いけれど、この先にある景色をなんとかして見たい! 意を決して登ります。

幸い左右は崖っぷちではなく、落ちても大丈夫…、とはあまり思えないので落ちないよう慎重に。杖が邪魔なので腰にくくりつけますが、持ち物を落としたら取りに降りるのは無理そうな斜面です。

登る前に、足元のコケモモらしい葉っぱを撮る心の余裕はまだありました。

そして登ったところは…!

そこは間違いなく高山でした。足元には、ここまで見られなかったエゾイソツツジの葉が生い茂っています。

つぼみのように見える来年の冬芽もついていました。

わたしの背丈より低いハイマツも。おそらくここまではハイマツは生えていなかったと思うので、ついに森林限界に差し掛かったのでしょう。ここから上は高山植物の世界。

360度、視界を遮るような木がないので、絶景のパノラマを楽しめます。まさしく、ウェンシリ岳の尾根筋に出たのです。

左側を眺めると、これまでに何度も見えてきたウェンシリ岳の連峰が、自分とほぼ同じ高さにそびえているのがわかります。そして、連峰の左側をはるか望み見ると、

何か市街地のようなものが…。さっき見た上興部の市街地(北西)とは正反対の方向(北東)なので、おそらく西興部村の市街地。

望遠カメラで拡大すると、なんとここまで見えてしまいました。ホテル森夢らしい建物が見えるので西興部村ですね。このカメラはピント合わせはダメだけど、望遠に関しては本当に優秀。

一方、もっと視線を右(南東)に移してウェンシリ岳の連峰の一番高い峰。望遠レンズで見ると、尾根筋をまっすぐ道が続いているのが見えます。

あれこそがきっと、ウェンシリ岳山頂へと続くハイマツ帯を抜ける道。是が非でも行きたいけれど、今のわたしには決して行くことができない…。

それでも、この景色を見れば、ここまで来ただけでも、どれほど素晴らしいかを実感でき、達成感は十分です。

それにしても、ここは本当に目的地としていた1024m峰なのでしょうか。GPSを取り出して調べてみると、44°14’59” 142°52’17″。なんと920mしかありませんでした。

ガイドブックによると、森林限界は950mくらいとされていたので、その手前にもかかわらず、ハイマツやイソツツジの高山帯に差し掛かったのは運がよかったのか…。

さらに道の先を望むと、目の前には少し小高い丘のようなものがそびえています。おそらくあれが1024m峰?

しかし進路は、ここからいったん下っていくようなので、すぐに到達できそうには見えません。

時間も14:30のタイムリミットが来てしまいました。絶景が広がり、気温もちょうどよい、こんなに気持ちいい場所を離れるのは後ろ髪惹かれる思いでしたが、無事に帰らねばなりません。

無事にウェンシリ岳連峰の峰のひとつにたどり着き、素晴らしい景色を見ることができたことに、感謝と賛美を捧げてから、下山し始めました。

頂上の木の樹皮を覆い尽くしていた鮮やかな地衣類。ここは人間の世界とは隔絶された、空気の澄み切った場所なのだと実感できます。

 

下りながら眺める景色。なんと高いところまで登ってきたものか。

頂上付近で、「チュイー」と鳴く小さな鳥がいて、おそらく白黒の配色だったのですが、正体はわかりませんでした。ホシガラス?と思ったのですが、後で調べたら大きさも鳴き声も違いました。

そろそろ来年のために整列しているオオカメノキの冬芽が可愛くて、つい撮ってしまった写真。

帰りは傾いた太陽を背にして下るので、天空の楽園を埋め尽くす色づいた葉が、ひときわカラフルに見えます。

登ってきた時にも見た、ナナカマド、オガラバナ、チシマザサの3色コントラスト。時間を巻き戻すかのように、ついさっき出会った景色と再開しては別れていく。

ささくれに覆われた傘のキノコ。傘は5cmくらい。スギタケの系列に似ていますが、地面から生えていて、柄の上部にはささくれはなく、基部が太まる。ひだは白い。いったい何でしょう。詳しく観察する余裕はもうありませんでした。

立派な根曲がりの木のダケカンバ。豪雪に耐えてきた凄みを感じさせます。

うっそうとした森に戻ってくると、日が傾いてきたからか、少し暗くなってきました。この時期は日照時間が短いので急がなければ…。

森の木々の向こうに白い花畑のようなものが見えたので、ふと立ち止まります。

背が高くなつてきたチシマザサの隙間から眺めてみると、花ではなく、ススキか何かの穂が群生しているようです。

その一帯は斜面になっていて、木々が全然生えていないのがわかります。おそらく、ウェンシリ岳の有名な雪崩地帯なのかもしれない、と直感しました。「ウェンシリ」つまり「悪い山」の由来のとおり、ここは雪崩が頻発する急斜面の山として知られているからです。

膝や腰がガクガクになってきましたが、まだまだ先は長い…。目印となるような印象的な倒木が多くあり、あと1時間くらい、あと30分くらいと、なんとなく距離がわかり、気力を振り絞って歩きます。

登りに見つけたのとは別のシラカパに見つけたカバノアナタケ(チャーガ)。手の届く位置でしたが、下りの角度でしか見えない場所にありました。

ベニタケ属っぽいキノコ。ひだは離生?上生?、ひだも柄も白。ひだの外周部に傘の色がついていないのでヤブレベニタケではない。傘の中央が黄色っぽい気がするのでニシキベニハツかも。でもベニタケの仲間はややこしいので自信はありません。

樹皮にくっついていた謎の乾燥したキノコのようなもの。もう疲れ切っていて、樹種も調べなかったので、正体不明。

同じ木の幹に数個ついていて、不思議な見た目になっていました。

やがて、入り口から30分の、前回到達点の倒木までたどり着き、もう少しだとわかりました。よく見ると、そのそばにもヒグマのフンがありましたが、コケが生えていたので古そう。

ここまで来たら馴染みの道。まだ原生林の山奥を歩いているにもかかわらず、なんとなく安心してしまいます。

足がガクガクになりながら、ひたすら坂道を下り続け、ついに車が見えてきたときにはホッとしました。

時刻は16:00。もう森の中はかなり暗くなっていました。日没が17時15分くらいなので、余裕を見て16時には下山する計画でいましたが、すべて完璧に事が運んで自分でも驚きました。

汗が引くまで数分休んでから、自動車で札滑林道を引き返します。斜陽に照らされた山々の黄金色の紅葉も美しかったです。

途中、猛禽類が頭上を飛んでいくのを目撃。よく見たら、なんと尾翼が白い! おそらくオジロワシでしょう。慌ててカメラを構えて写真を撮ったけれど…、かろうじて白い尾が確認できるかどうかというレベル。

10月末ごろにロシアから渡り鳥として飛来するワシなので、もう来ているなんて気が早い、と思ったのですが、調べてみたら、少数が留鳥として北海道に住んでいるそうです。このオジロワシも、このあたりに年中住んでいる個体かもしれません。

林道では特に野生動物は見かけませんでしたが、帰り道の国道では、来たときとは反対側に、またしてもシカの群れがいました。お見送り、というわけではありませんが、一斉にこっちを見ています。

疲れていたので休み休みでしたが、なんとか暗くなるころに家に帰り着くことができました。無謀にも思えたウェンシリ岳登山でしたが、現状ベストの結果に終わって大満足でした。

これまでガイドブックを眺めて、ただ憧れることしかできなかった、人を寄せ付けぬ山ウェンシリ。

険しい山道を、そして最後はそそり立つ岩をさえ登って、その峰の一つに立ち、色とりどりの紅葉に包まれて、雄大な大地の鼓動を感じたことは、決して忘れないでしょう。

2021/09/28火

色づいたマユミの実、細長いハシドイの実

4時間に及ぶ登山から一夜明け。意外にも筋肉痛はほとんどありませんでした。ただ、全体的に疲れが残っていて、あまり動く気になれませんでした。

自然観察は用事ついでに公園に寄ったときに少しだけ。

すっかりピンクに色づき、いつの間にか割れていたマユミの実。花が地味だから気づきにくいけれど、花柄はツリバナと同じく長い。

黒ずんで何がなんだかよくわからないバイカウツギの実。背景が真っ白な冬のほうがわかりやすい。

低いハシドイの木があったのでじっくり観察。花と冬芽以外の時期にじっくり見た記憶がありません。

すっかり黄葉した葉。細かい葉脈が赤っぽい模様のようになっています。森で見かけたら、はたしてハシドイだと気づけるだろうか…。葉だけでは無理そう。ギザギザがなく、シンプルな葉であることが、かえって特徴になっているか

実を間近で見るのは初めてです。柿の種みたいなさやに入っていますが、他にあまり似た植物を思いつかない実。

すでに乾燥して弾けているものも。

內部には細長く薄い種が入っていました。確認できたのは一枚だけですが、もしそうだとすると、かなりの過剰包装な気もします。

街路樹のイタヤカエデ。一本の木と青空ですべての色を創り出している。

公園のニシキギ。名前のとおり、目が覚めるように鮮やかな紅葉。おかげで実が全然目立たない。

ツリガネニンジンの残った最後の花。秋の訪れを告げる花も、そろそろ散ってしまうそう。

実は初めて見ましたが面白い形。5本のおしべの痕跡が触覚のように生えています。なぜかハルキゲニアを思い出す形。

夜は家で写真の整理をしていましたが、大量に撮りすぎて一向に終わりません。日記にもまとめなければなりませんが、この日の時点では、まだ一昨日のキノコの写真の同定中。ウェンシリ岳の登山記には手をつけることができていませんでした。

それでも、地道に写真を撮って、ひとつずつ調べて覚えていくことが自然に詳しくなる秘訣。3年先の稽古。日々の積み重ねが3年後に生きるはずです。

2021/09/29木

今日のキノコ。チャナメツムタケ大量発生。ニセフウセンタケ&マンジュウガサ?再び

まだ疲れは残っていて、今日も別の予定がありました。でも、明日は雨で、その後の見通しも立たないので、今日森に行かなければ後悔すると思って出かけました。

(1)オトメノカサ
入ってすぐのトドマツ・カラマツ林に生えていた白いキノコ。ヒダが疎であること、柄が細長いこと、中実であることなどから、最近覚えたシロヌメリガサだと思ったのですが…

傘のサイズは3~4cm、柄はもっと長く10cm程度。

ヌメリガサの仲間だろうということで、初めて素手でぬめりを確かめてみましたが、ラバーのような感触でぬめりそうでぬめりませんでした。後で調べたら、ヌメリガサの仲間は湿っている時にぬめりが出るそうです。

柄を見ても、前回シロヌメリガサを特定する助けになった、上部のささくれ(鱗片)はありません。また、ひだは垂生ですが、単なる垂生ではなく、「長く垂生」に当てはまるように見えます。

柄の內部は中実。

多少、シロヌメリガサと特徴が違うので調べてみたら、これはオトメノカサのようです。どちらもトドマツ・カラマツ林に出ると図鑑にはありました。

参考サイトによると、オトメノカサはシロヌメリガサより長く垂生するとのこと。

また、シロヌメリガサは柄の頂部が「細粒状」と書かれているのに対し、オトメノカサの柄は「平滑」とありました。

これ以上の細かい分類までは難しそうですが、シロヌメリガサではなくオトメノカサの仲間で間違いなさそうです。

(2)キヌメリガサ…ではなくハナイグチ
前回、黄色い先端部だけ見えていて、きっとキヌメリガサだろうと結論したキノコ。そろそろ柄が伸びているかなと思って見に行ったところ、再発見できました。

しかし、引っこ抜いてみたら…、

なんとイグチでした。おそらくハナイグチの黄色バージョンだったのでしょう。

これで、残念ながらキヌメリガサはまた未発見に戻ってしまいました。こんなにカラマツ林があるのにキヌメリガサを見かけないのは謎です。

ただ、地元の図鑑によると、ウコンガサは9~10月、キヌメリガサは10~11月となっていたので、まだシーズンに入っていないのかもしれません。

去年はその時期にさえキヌメリガサは発見できませんでしたが、今年は新たに何箇所か歩くカラマツ・トドマツ林を開拓したので、注意して探してみようと思います。

ハナイグチはそろそろシーズン終わりかけかと思いますが、まだ時々、傘がきれいな個体を発見できました。美味しそうなどら焼きです。

(3)エセオリミキ?
カラマツ・トドマツ林に生えていた謎の小型キノコ。

傘は4cmくらいで褐色。ふちが白っぽい。やや中央が盛り上がっているように見えますが、断面から見ると、平らといってよさそう。

ひだはほぼ白でやや密。柄は傘と同じ色。根元に白い菌糸をまとっています。

ひだは離生。柄は內部がボロボロになっていてわかりづらいですが、中空?

全然検討もつかなかったのですが、ダメ元でGoogle Lensにかけてみたら、モリノカレバタケ疑いが。言われてみれば、特徴は合っています。

柄か少し太めなこと、柄の基部に菌糸をまとっていることなどから、モリノカレバタケの仲間のエセオリミキにも見えます。

(4)シロヌメリイグチ
カラマツ・トドマツ林に生えていた大型キノコ。一瞬、初めて見るキノコかとぬか喜びしましたが、近づくと、見覚えのある灰褐色の質感。

下をのぞくと、思ったとおり、シロヌメリイグチでした。晩秋には大型のシロヌメリイグチがあちこちでブヨブヨになっているものです。

(5)サクラタケ?
今日は3種類の紫色のキノコを見つけたのですが、その最初のもの。やはりトドマツ・カラマツ林に生えていました。

傘はうっすらと紫色を帯びていて、ドーム型に開いています。

裏側を見ると、ひだは傘と同色の薄紫色。やや密に見えますが、これはまだ傘が開いていない個体なので、開くと違うかもしれません。

ひだは離生。柄は傘と同じ薄紫色です。柄は比較的細く、根元が太くなります。

柄は明らかな中空でした。

紫色のキノコについて調べてみると、ムラサキシメジ、コムラサキシメジ、ムラサキフウセンタケ、(オオ)ウスムラサキフウセンタケ、ウスフジフウセンタケ、ムラサキアブラシメジ(モドキ)など多数。

ベニタケ科も入れたら、ムラサキカスリタケ、アシボソムラサキハツ、アオムラサキハツ、ウスムラサキハツなど色々あるみたいで、他にもムラサキヤマドリタケなど各科に色々あるようですが、今回は絶対に違うので考えないことにします。

いろいろ調べたのですが、柄が細く中空、というのが当てはまらず、最終的にGoogle Lensによってサクラタケ(mycena pura)だろうという意外な結果にたどり着きました。

サクラタケはたしかに以前この近辺に大量に発生していましたが、もっとピンク色で、チシオタケに近い色だと記憶していました。

しかし、調べてみると、バラ色からフジ色、さらには白まで変化に富むらしく、湿っているかどうかでも変わりそうです。また前回は明るい場所で見ましたが、今回は暗い林内でした。

(6)エセオリミキ?
あまり見慣れない褐色のペラっとしたキノコ。表面はすべすべしたテカリがあり、平らに開いていて、サイズは5cmくらい。

ちょうどナラタケくらいの大きさで形も似ているなーっと感じて、もしかしてこれは名前だけ知っているエセオリミキではないか?と考え始めました。

「オリミキ」というのは幹を折るキノコの意味で、木材腐朽菌のナラタケを意味する名前。「エセオリミキ」はナラタケと間違いやすいキノコだという意味。

実際は黒い鱗片がなく、ひだの付き方なども違うのであまり似ていませんが、色合い、大きさ、形は似ています。

柄は白っぽく、多少ささくれているのはツバの名残り? しかしエセオリミキにツバがあるという情報がない点は引っかかります。

柄の下のほうが太くなっているのは、エセオリミキの特徴と合っています。モリノカレバタケの仲間で、傘やヒダの雰囲気も似ていますが、この仲間ではおそらく唯一、柄が太めです。

ひだは白くやや密。この色合いもナラタケに似ていますが、ナラタケはひだが垂生なので、付き方が全然違います。

エセオリミキは柄に薄っすらと条線が出るそうですが、この写真だと見えるような見えないような…。スマホ修理中なので、接写が面倒くさく、森の中で撮る気になれませんでした。

断面を見てみると、ひだは上生~離生。柄は髄状でした。いずれもエセオリミキの特徴と一致しているので、おそらく正しそうです。

一応、食べることはできるキノコだそうですが、そんなに美味ではないとされています。

見た目の変化が激しく、見分けるのが地味に難しいそうで、エセオリミキだと思っていても、じつは違うのかもしれません。

(7)ニセフウセンタケ?
タマゴタケを採っているあたりにたくさん生えてきていたキノコ。傘の大きさは5cmくらい。帰ってから気づいたのですが、これは去年10月初頭に同じ場所で大発生していたフウセンタケのようです。

また、今年9/5にこのあたりで見た謎のフウセンタケ科も同じかも。傘が薄い灰褐色なのが特徴で、当時も似ているフウセンタケが見当たらず、全然同定できませんでした。(追記 : これに関しては、再確認したところ、傘の中央が突出していることや、柄の色が違うことから別のキノコに思えました。)

たくさん生えていましたが、今日撮った中で一番若かったのが次の写真。傘の周囲に白い被膜の名残りがあり、柄の下部に綿毛のようなツバの痕跡が残っています。

去年発見した時はさらに若い幼菌で、ツバがはっきり残っていたため、当初ショウゲンジではないかと疑ったのでした。

裏返してみると、クモの巣のような被膜がまだわずかに残っています。しかし、被膜やツバはやがて消失します。

断面。ひだは小ヒダを考慮しなければ、やや疎に見えます。ヒダの色はやや赤褐色。ヒダの付き方は上生~湾生。去年は知らなかった特徴。

柄は中実。

改めて「北海道きのこ図鑑」のニセフウセンタケの項を見ると、トドマツやミズナラ林に発生、傘は5cm前後、傘はキツネ色で乾燥時は肌色、ヒダは肉桂色、直生~上生、やや疎、柄は白から傘と同色とのこと。

ネット上の資料によると、ひだは直生~(上生~)湾生、柄は中実で消失しやすいつばを持つとのこと。また、ひだの縁がギザギザになっているとされ、今回の写真をよく見れば、確かにそう見えます。

両者の情報を総合すると、今回観察したキノコとすべての点で一致しています。おそらく去年の同定は合っていたのでしょう。

それにしても、何が「ニセ」なのかわかりませんし、ネット上の情報は近縁のサザナミニセフウセンタケが圧倒的に多く、食毒も不明扱いで、よくわからないキノコです。英語でさえ情報不足そう。

ちなみに、サザナミニセフウセンタケは、傘の色がもっと濃く、中央が膨らみ、ふちがギザギザになるなど、次項(8)に書くトガリニセフウセンタケの特徴も含んでいるような種類で、見た目はかなり違います。

(8)トガリニセフウセンタケ
おそらく9/25に見つけたのと同じキノコ。前回は手の届かない場所にあったので、同じ個体ではなさそうですが、特徴は似通っています。

傘の中央が異常に突出しているのが最もわかりやすい特徴で、さらに柄につばとだんだら模様があります。

25日に写真では、Google Lensでもナガエノスギタケモドキなどが表示され、少し似ているものの、納得がいきませんでした。しかし、今回の写真で、トガリニセフウセンタケだとわかりました。

ヒダは疎。ナガエノスギタケモドキは密なのに対し、トガリニセフウセンタケは疎です。

柄は中空。図鑑には記載がなかったりのですが、こちらのサイトでは中空と記されています。

ひだは湾生。いずれの資料でも直生となっているので、ここは食い違っており、気になる点でした。しかし、上のニセフウセンタケと同じく情報自体が少ないので、なんとも言えません。

(9)ウコンガサ
先日出始めていたウコンガサが、今日はもう大量発生モードに。森のあちこちで出ていて、図鑑にまれなキノコと書いてあるのが嘘みたいです。今日はついに食べてみたので、詳しくは次の副見出しにて。

(10)マンジュウガサ?
トドマツ林の斜面の地中の根のあいだから、晩秋の大量発生する巨大なフウセンタケ科。

去年も10月上旬に同じ場所から発生していて、マンジュウガサ、ニセマンジュウガサ、コガネフウセンタケモドキのいずれかではないかと推測していました。改めて今年観察することで、正体がわかるでしょうか?

傘の色は褐色で揚げ煎餅みたいな見た目。

傘はかなり大きく、10cmほどになります。柄も太くて、全体的に肉厚。つばやささくれなどは見当たらず、シンプルな形状。

ひだは密。少し色がついていますが、灰色というのか、薄紫色というのか。

肉は白で、柄は中実。ひだの付き方は直生~微妙に垂生でした。

こちらは幼菌。薄い膜に覆われていて、3cmくらい。去年も10/3ごろ、写真に撮っています。

改めてマンジュウガサを調べてみると、去年そう同定しただけあって酷似しています。類似種にニセマンジュウガサとコガネフウセンタケモドキというのがあるそうですが、どちらも情報が少なくてわかりにくいです。

手持ちの北海道キノコ図鑑2種には、片方にマンジュウガサが載っているだけ。ニセマンジュウガサはどちらにも記載されていません。ここのサイトでも、マンジュウガサしか載せられていないので、北海道にはニセマンジュウガサは分布していないのかも。

コガネフウセンタケモドキはさらに情報が少ないですが、ニセマンジュウガサは若い時、角度によってはわずかに紫みを帯びて見えるのに対し、コガネフウセンタケモドキはそうではないのが違いだと説明しているサイトがありました。これも北海道のキノコ図鑑2種には載っていません。

図鑑の説明によると、マンジュウガサは広葉樹林にも針葉樹林にも発生。表面は黄土色、湿っている時には粘性があり、乾いている時も光沢がある。ひだは灰白色から褐色に変化、密、湾生。肉は厚く白色。柄は傘は同色で太く根元が塊状なるとのこと(マンジュウの名の由来?)。

ひだが湾生、柄が傘と同色という特徴以外はすべて当てはまっています。写真のひだは、湾生といえなくもない形状なので、これも当てはまっているとみなせます。

柄の色については、ネット上の写真だと明らかに白く、「傘と同色かやや淡い」との説明があるので、これも当てはまっているといえます。

決定的な判別点のようなものがなくもやもやしますが、名前からするに、根元が塊状に膨らむというのが最大の特徴なのでしょう。採取するときに、柄を折らないよう根元から掘りとってみればいいのかもしれません。

(11)チャナメツムタケ
前回ツバフウセンタケ疑いのキノコが生えていたトドマツ林の奥で、また同じ場所に新しく生えていたキノコ。今回もツバフウセンタケかと思って柄を見ましたが、ツバの跡はありません。

この後、同じキノコが大量発生しているのを発見し、老菌を観察できたことで、すべてチャナメツムタケだったことがわかりました。そもそもフウセンタケ科ではなく、モエギタケ科だった! まだまだ見識不足です。

傘のふちには綿毛状の白い鱗片が残っています。これは類似の毒キノコであるカキシメジやマツシメジと区別する重要な手ががりです。

柄の表面が繊維状にささくれているのも特徴。若い菌ではほとんど白ですが、老菌になってくると表面が裂けてきて、白と茶色のだんだら模様になってくるようです。カキシメジ、マツシメジでは、めったにささくれはないそうです。

ひだは白く密。のちに褐色に変化するとのこと。有毒のカキシメジとマツシメジもひだの雰囲気は似ていますが、赤褐色の染みができるという特徴があります。

断面。ひだは湾生。柄は中実。カキシメジとマツシメジも、ひだは湾生で密。カキシメジは中空か髄状ですが、マツシメジは中実とされているので、これらの点から区別するのは難しそうです。傘の鱗片と柄のささくれのほうが大事。

さらにトドマツ林の奥に入ると、わんさか大量に赤茶色の開いた傘が地面に重なり合っていました。わたしでもカキシメジは写真で見たことがあるので、毒キノコだろうと身構えました。

引き抜いて観察してみると、束生になって生えていて、ボリュームたっぷり。すぐに柄が白と茶色のだんだら模様になっているのに気づきました。

さっきのキノコとは見た目が全然違うので、別物だと考えていました。あちらはフウセンタケ科で、こちらはなんとかシメジだろう、と。

傘は、異常なほどべたつき、手袋に表面の茶色いものがたくさん付着しました。

柄は中実。

これほど特徴的な柄をしていたら、Google Lensで一発でわかるだろう、とたかをくくっていましたが、全然正体がわからない。

だったら、直感を信じてカキシメジに似たキノコを探してみるか、と調べたら、すぐにチャナメツムタケだとわかりました。

数日前にも、別の森で、みたらし団子のようなチャナメツムタケを見ていたのに、同じものだとまったく気づきませんでした。

チャナメツムタケは非常に美味しいキノコだそうです。こんなに大量に生えていたのに、見分けられなかったとはなんともったいない…。でもキノコは100%見分けられるようになってから食べるべきなので、経験を積めたと思えば悪くないでしょう。

チャナメツムタケを見分ける時のチェックリスト
・傘の色は赤茶色や赤褐色
・傘が激しくぬめっている
・傘に白い綿毛状の鱗片。ふちにリング状に白い鱗片がつくことも。
・ひだは白から褐色で密、直生~湾生。
・ひだに赤褐色の染みがないことを確かめる
・柄の表面が繊維状でささくれている。
・柄は白だが、時間経過とともに根元から褐色を帯び、ときにだんだら模様。
・柄は中実

なお、モエギタケ科の類似キノコのうち、キナメツムタケ(猛毒ニガクリタケに似る)、シロナメツムタケ、チャナメツムタケの3種は食用になります。

一方、名前が似ているチャツムタケ、キツムタケ、アカツムタケ(クリタケに似る)、ヤケアトツムタケは食不適か有毒。

特徴をはっきり確かめれば間違えないでしょうが、いろいろ似たものが多そうで怖い気がします。

(12)ウスムラサキアセタケ
2つ目の紫色のキノコ。中央が盛り上がった傘で、サイズは3cmくらいと小型です。

ひだも柄も淡紫色。ひだはやや密。

ひだは離生、柄は中実。

特徴的なので、すぐわかるだろうと思ったら、また苦戦することに。コムラサキシメジが近い形になるようですが、大きさ、発生場所ともに違います。ムラサキシメジも写真だと一見似て見えますが柄がもっと太く、傘も大きいです。

おそらく、ここに書かれているシロトヤマタケの変種の、ウスムラサキアセタケだと思われます。

針葉樹林(図鑑によるとトドマツ林)に発生すること、傘が3cmくらい、ひだはやや密で離生、柄は細く中実、柄の表面が粉状になっている、など特徴は一致しています。

見た目どおりアセタケだったので特定できましたが、改めて、あまり一般的でないキノコでも普通に生えるんだな、と思わされます。

(13)謎のカヤタケ似の薄紫色のキノコ
薄紫色のキノコ3つ目。しかし、もしかしたら暗い森の中だったから紫みを帯びて見えただけかもしれません。周囲の木はトドマツ・シラカバ林でした。

傘は中央がわずかに凹み、ふっくらとしています。サイズは3~4cm。

裏返してみると、なんとひだが白いカヤタケやホテイシメジ似のキノコでした。ひだはやや疎、柄はクリーム色に見えます。

あれっ、ホテイシメジだったか?と周囲を見回しましたがカラマツはありません。傘の中心に黒い部分がなく、柄の根元が膨らんでいないこともホテイシメジらしくありません。

断面。傘の中央がほとんど凹まず、ひだは柄に長く垂生して反り返って、全体が逆円錐形になっており、柄が中実である点は、ホテイシメジにそっくりです。

しばらく歩いたところに、似たキノコが群生していました。おそらく同じもの?

暗くなってきて、ピントがうまく合いませんでしたが、特徴はさっきのキノコと同じに見えました。

ちょうどアオイヌシメジやシロヒメカヤタケを淡紫色にしたような特徴。

薄紫色の類似種を調べたら、一応、イヌムラサキシメジというキノコはありましたが、サイズがもっと大きく、学名で検索しても画像が少なく、あまり似ていないように見えました。

(14)タマウラベニタケ?
おそらく9/24の(3)に記した、シラカバ・ハリギリ林の同じ場所の同じキノコが成長した姿。傘のサイズは6cmくらいまで広がっています。

全体的に白く、傘がクラゲのようにひらひらとドーム型に広がっています。

裏側を見ると、ひだは柄に長く垂生していますが、傘の形状がカヤタケ属とは大きく異なっていて、まったく中心が凹まず、漏斗型になりません。

カヤタケ属や、ホテイシメジなどのキノコは横から見ると、垂生するひだが丸見えですが、このキノコは傘の形状のため何も見えません。

断面も白く、柄は中実でした。

前回はカヤタケ属のコカブイヌシメジではないかと書いたのですが、明らかに傘の反り返り方が違うでしょう。

傘が波打って、覆いかぶさるように広がるのは、ごくありふれたオシロイシメジに似ています。しかしオシロイシメジは多少垂生する程度で、ここまで長くカヤタケのように垂生はしません。

Google Lensに頼ってみると、イッポンシメジ科のヒカゲウラベニタケという聞き慣れないキノコが表示されました。調べてみると、イッポンシメジ科にもカヤタケみたいなキノコが幾つかあることがわかり、勉強になりました。

候補になるのは、ヒカゲウラベニタケ、ムツノウラベニタケ、タマウラベニタケの3種です。

図鑑や、ここの見分け方情報によると、ムツノウラベニタケは、ひだが汚白色~淡クリーム色とのことで除外できそうです。表面がひび割れるとされますが、それも確認できません。

また、ヒカゲウラベニタケは地面から、タマウラベニタケは朽ち木から生えるようなので、その区別からするとヒカゲウラベニタケになります。タマウラベニタケにあるとされる柄の繊維状の縦線も、この写真ではなさそうに見えます。

となると残るはヒカゲウラベニタケ。しかしながら、ネットの写真だと、もっとカヤタケのように傘が反り返っているように見え、違和感が残ります。傘の形に限れば、(ナラタケ菌に寄生されていない正常な)タマウラベニタケのほうが似ているようにも思えます。

それで、9/24の写真も改めて確認してみたのですが…

この角度だと、柄に縦の線が入っていますね。

また、柄が白や灰色ではなく色みがあることもわかります。図鑑によると、ヒカゲウラベニタケの柄は白や灰色の無彩色、タマウラベニタケの柄は灰褐色とされるので、タマウラベニタケの可能性が高くなりました。

タマウラベニタケは材上生でしたが、この場所は下に材木が埋もれていても不思議ではない場所でした。

それで、このキノコは今のところ、傘の形や他の特徴が最も合っているタマウラベニタケだと同定しておきます。

今日収穫したキノコ。

大量のアカモミタケ、ハナイグチ。初ウコンガサ。ノボリリュウタケは地面から生えていて、そのうち踏みそうに思えたので採ってきました。4本採ったはずが、途中で1本落としました。

今の時期に咲いている珍しい花、と思ったら、Google Lensによると、エゾアカバナらしいです。本来7~8月ごろ咲く花なのに、なぜ今頃咲いているのか謎。

アマチャヅルの実が黒く色づいていました。

ついにウコンガサを食べてみた!

ついに、去年からずっと気になっていたウコンガサを食べてみることにしました。

今年になって、近縁種のシロヌメリガサやオトメノカサも見分けられるようになり、ヌメリガサ科の近縁の食用キノコの特徴について分かってきたので、確信を持てたためです。

シロヌメリガサ、キヌメリガサ、ウコンガサ、オトメノカサなど、近縁の食用キノコはいずれも、傘がまんじゅう形から平らに開き、柄が細長い印象を受けます。

また、ひだが疎で垂生というのも重要な手がかり。か弱そうなキノコに見えて、柄は中実(やや中空の場合もあるとされる)。シロヌメリガサやウコンガサは、柄の上部に鱗片(ささくれ)がつきます。

ヌメリガサという名でも、表面がぬるぬるするのは湿っている時だけです。乾いているときは、ラバーのようなすべすべした感触です。

今日、トドマツ林で採ってきた、さまざまな成長段階のウコンガサ。

ウコンガサはとにかく、傘にも柄にも黄色い鱗片がつくため、一度覚えれば、まず間違わないキノコだと思います。

問題は、なぜか国内情報に乏しく、北海道きのこ図鑑にすら、「発生量は多くない」との記載があること。うちの近所では大量発生するのですが…。やはり道北は日本ではないのか?

北方系のキノコらしいので、おそらく日本の最北でしか、ほぼ出ないのでしょう。ネット上の写真も少ないので、学名のHygrophorus chrysodonで調べて、外見を確かめるのを推奨。

地は白いキノコなのですが、接写すると、大量の黄色い鱗片で覆われていることがわかります。

成長し、傘が開いてくると、この鱗片は失われていくのですが、傘のふちには残っているので、やはりルーペで観察するなどすれば、すぐに見分けられます。

また、同じ黄色い鱗片は柄にもついていて、特に柄の上部の傘との境目あたりにはたくさんついています。傘の鱗片が少なくなっても、柄の鱗片は残っているので確認しやすいです。ひだか疎で垂生であることも要確認。

この黄色い鱗片は他のキノコでは見たことがありません。わたしの知識はとても浅いので確証はできませんが、おそらく非常に見分けやすいキノコなのではないかと思います。

珍しいキノコであるせいか、レシピも見つからないので、近縁種の有名な食用キノコであるキヌメリガサのレシピを参考に料理してみます。今回はさっと茹でてポン酢で。

調理すると全体的に黄色っぽく見えるのは意外。英語文献によると、KOH(水酸化カリウム)を垂らすと傘や茎の表面に垂らすとレモンイエローに変色するとのこと。

味は特にありませんが、食感がトゥルトゥルとして、びっくりするくらい美味に感じました。タマゴタケと似ているかもしれません。

初めてのキノコなので、やはり食べるのは緊張しましたが、食後2日経った今でも問題ないので大丈夫そうです。(有毒キノコは食後すぐ症状が出るのに対し、猛毒キノコは1日から1週間後に出るのですが)

2021/09/30木

9月のまとめ

暑さやワクチン接種の副反応の苦しみから解き放たれてた今月。

自由を満喫するかのように、ひたすらキノコ狩りを楽しみ、近所の寂れた自然公園、天塩川源流域、ウェンシリ岳といった兼ねてより行きたかった場所を制覇できました。

本格的なキノコ狩りは2年目とあって、収穫量は飛躍的にアップ。キノコ採りのかごに入り切らないほどの量を採って、キノコご飯など秋に味覚を楽しめました。

ホテイシメジ、ホコリタケ、ウコンガサ、(10/1の)チャナメツムタケが初めて食べたキノコ。またナラタケは初めてホテイナラタケ(クロゲナラタケ?)やワタゲナラタケ(ヤワナラタケ)を区別し、自分で採って食べることができました。

去年に比べ、キノコのいろはも分かってきて、現地でポイントを押さえた写真を撮り、あとで図鑑の用語を読み解きながら同定する流れに慣れてきました。

まだまだ特定率は5割くらいですが、少しずつキノコの奥深い世界を行き巡り、知識の引き出しが増えてきているのを感じます。キノコの期間は短いですが、毎日着実に経験値を積めています。

ウェンシリ岳の登山では、あまり見たことのない深山や高山帯の樹木を幾つか見れましたし、燃えるような紅葉に包まれた幻想的な天空の楽園に足を踏み入れることができました。

引っ越してきた初年度から、このあたりにヤママユがいると聞いていましたが、今年初めてヒメヤママユとクスサンを見れたので、どんなガなのかイメージが湧きました。

野鳥観察は低調ですが、初めてノスリを写真に撮ってじっくり見れたのがよかったです。

水生植物のヒシの実も初めて観察できましたが、相応の装備がないと、湖の中から採取して食べてみるのは難しいとわかりました。来月か来年の宿題ですね。

あまりに見どころが多すぎて、日記は過去最長の長さになり、半月分だけでこれまでの一月ぶんを超えるほどになりました。忙しかったけれど、こんなに充実した楽しい自然観察ができたのは久しぶりです。

近隣の草木はほとんど覚えたと思っていましたが、キノコの季節には、9割以上が知らないものだらけになるので、飽きることがありません。

もっとも、知っていると思っているものでは、ほとんどは名前がわかる、見分けられるというだけにすぎず、実質は何もわかっていないのです。謙虚な気持ちを忘れず、身の回りの不思議に注意深く目を向けていきたいと思います。

もう秋も折り返し地点を過ぎ、キノコ狩りができる時期は、残り半月ほどとなりそうです。名残惜しいですが、ここまで楽しみ尽くしてきたのですから、悔いはありません。残りのシーズンも、できる限り経験値を積みたいです。

 

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2021年9月の道北暮らし自然観察日記(前半)
2021年9月前半の自然観察を中心とした記録

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投稿日2021.09.16