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もくじ
2021/10/01金
森の中で見つけたツチマメ、ハリギリの落ち葉の絨毯
昨日は一日中雨でしたが、今日は曇っていたので、森を少し散歩。10月に入り、黄葉が深まってきました。これから2週間くらいの間にあっという間に秋が終わってしまいそうです。
褐色になったカラハナソウのホップ(毬花)。
いつの間にか実になってしまったツルリンドウ。
黄葉したハリギリの落ち葉の絨毯。
まさか森の中に生えているとは思わず二度見にたツチマメ(ヤブマメ)。これまで林道脇に生えているものしか見たことがなかったので、意外でした。群生はしていなかったので、掘り返すまでは至らず。
改めて見に行ったマタタビ。普通の実だけでなく、こぶで覆われて硬くなった実がちらほらぶら下がっていました。これが高値で取り引きされ漢方などに使われているというマタタビミフクレフシか?と思ったのですが、そうではなく、ただの乾燥した実でした。虫こぶはもっと球形になるそうです。
今日のキノコ。アカモミタケ大漁、コショウイグチ等
(1)チャナメツムタケ? キナメツムタケ?
ニガクリタケかキナメツムタケを思わせる見た目のキノコ。傘の周囲に白い被膜の名残りのようなものが確認できます。
場所はカラマツ・トドマツ林の地面から生えていました。基本的にニガクリタケは倒木から出るのに対し、ナメツムタケは地中の腐朽木から出るらしいので、この時点で、ナメツムタケ類を思わせます。
ひだはやや密。褐色みを帯びていて傷んでいます。柄は下のほうが茶色。チャナメツムタケを思わせる柄の色。
ひだは離生に見えますが、かなりボロボロになっているので判別しにくいです。柄は中実。
後で調べてみたら、キナメツムタケは直生、チャナメツムタケは直生~湾生でした。ニガクリタケは上生~湾生。このキノコは傷んでいて判別しにくいですが、どちらかといえば湾生に近いです。
また、現地ではかなり黄色く見えたのですが、帰ってから改めて写真を見ると褐色みが強く見えます。ということはチャナメツムタケだったのでは?
Google Lensではニガクリタケと出ますが、ネットの写真だと普通にこれくらいの色のチャナメツムタケはありますね。
しかし、チャナメツムタケの特徴である傘の白い鱗片は、雨で落ちてしまったようです。傘の周囲に白いリング状の膜の名残りが残っているのは確認できますが、ニガクリタケも傘の周囲に膜の名残りが残るので、鑑別点にはなりません。
今日はチャナメツムタケを食べてみようと思っていましたが、疑わしきは食せず。後で見つけた若い菌くらい特徴がはっきりしていないと、食べるわけにはいきません。
(2)絵になるベニタケ属キノコ
生えている様子が背景込みで美しかったので、抜くのが忍びなく、種類の確認まではしませんでした。柄が白いので、ヤブレベニタケやチシオハツ系統ではなく、ドクベニタケ系統か。
(3)柄の長い茶色いキノコ
群生していた茶色く細い柄のキノコ。謎のキノコに見えたのですが、またモリノカレバタケに惑わされているだけかも…。
傘はそこそこ大きくて5cmくらい。平べったい。ふちが白い。
柄は褐色を帯びてささくれ、だんだら模様になっています。ひだは灰褐色。真下から撮るのを忘れたので、密度はよくわかりません。
ひだは上生。柄は細くて中実か中空かよくわかりませんでした。
なんとなく、傘が開ききったヒカゲシビレタケなど、マジックマッシュルーム系キノコに似ているような気もするのですが…。
(4)マンジュウガサ?
改めて若い菌を観察。一昨日は3cmほどの幼菌で、写真にも撮った個体です。もうすっかり傘が開いて大きくなり、キノコの成長の早さを実感します。
マンジュウガサの特徴は柄の根元が塊茎状になっていることだと知ったので、それを確認してこそ、マンジュウガサらしいと言えます。
今回はその若い個体を根元から慎重に引っこ抜いてみたらこの通り。まるでタマゴタケのつぼのような大きな菌糸の塊が根元に隠れていました。
前回観察した老菌は、ひだが直生ぎみで混乱しましたが、この若い菌は、はっきりとした湾生で、図鑑の記述と一致しています。
ということで、おそらくマンジュウガサのようです。食用キノコなので食べても良いのですが、あまり美味しくないらしいので気が進みません。
それに、根元が塊がついていたからといって、類似キノコであるニセマンジュウガサやコガネフウセンタケモドキとの鑑別になるかはわかりません。それらが可食かどうかさえ知らないので、食べるのはやめておいたほうが良さそうです。
そもそも、フウセンタケの仲間は見分けが難しいことで知られているので、よほど広く食されている種(カワムラフウセンタケやフウセンタケモドキ、ショウゲンジなど)を除けば、むやみに素人が食べるのは危険でしょう。
(5)ノボリリュウタケ
晩秋に差し掛かり、わらわらと生えてきました。去年も出始めはありがたがって採っていたのですが、いくらでも生えてくるので、やがて採りきれなくなったのでした。それでも不可思議な見た目はいつ見ても興味を惹かれます。
(6)チャナメツムタケ
先月、チャナメツムタケが大量発生していたトドマツ林の一角。初発見から同定までに時間がかかりすぎて、完全に好機を逸してしまいました。
でも、もしかしたら、まだ生えているかな、と思って見に行ったら、ありました!
傘が開いたばかりの美しいチャナメツムタケ。傘がオレンジ色で、傘のふちに白いささくれが残っているのが見えます。柄もささくれていて、下のほうが赤褐色になっています。チャナメツムタケで間違いありません。
写真の奥に写っているのもチャナメツムタケですが、ちょっと傷んでそう。今回は初めてだから、できるだけ鮮度の高いものだけを選ぼうと思いました。発見できた新鮮なチャナメツムタケは2本だけでしたが、味見するには十分。
帰宅後に撮った写真。まだ傘に白い鱗片が残っているのが見えます。
ひだは白色。密で湾生。ここに赤褐色の染みができていたら、毒キノコのカキシメジやマツシメジの可能性あり。
またカキシメジは多少の不快臭があると言われますが、特に変な匂いはしませんでした。
(7)コショウイグチ
謎のイグチその1。見つけた場所はトドマツ・シラカバ林。表面は赤褐色。傘のサイズは3~4cmくらいと小型。
管孔は傘と同色。穴は大きめで、柄に垂生。柄は傘と同色で細く、つばはありません。
全然気に留めていませんでしたが、次の写真で、根元に黄色っぽい菌糸があるように見えます。これが同定のポイントっぽい。
断面。肉はクリーム色っぽいですが、薄くてよくわかりません。管孔との境目はピンク色っぽくも見えます。
帰って似たイグチを調べたら、おそらくコショウイグチ。イグチの仲間では小さく、全体的に褐色。肉は淡いクリーム色。管孔は多角形。つばはなく、根元の黄色の菌糸をつける。ということで間違いなさそうです。
コショウイグチの名は、味が非常に辛いことから来ているそうですが、なんと無毒だそうです。コショウの代わりに使われるとの記述がありますが、さすがにそんなエキセントリックなことをしている人の体験記は見当たらず。
(8)ゴヨウイグチ?
謎のイグチその2。ほぼ同じ場所。全体的に白い…のですが、内側に褐色の傘や柄が見えているので、もしかすると白カビに覆われている? 傘のサイズは2~3cm。
なんとなく白カビに覆われそうな傘。
管孔も白く、穴は非常に緻密で見えません。
断面。表面は白かったのに、肉や管孔の內部は褐色でした。まるで生クリームでコーティングされたケーキみたい。
Google Lensによると、ゴヨウイグチという種類がとても似ていました。図鑑によると傘のサイズは3~10cmなのでギリギリ範囲内。
日本名で画像検索してもさほど似ていないのですが、学名suillus placidusで検索するとそっくりです。白カビではなかったようです。そもそもキノコ自体菌類だからカビなのですが…。
しかし、ゴヨウイグチはその名のとおり、五針葉マツの周囲に生えるキノコ。ここはトドマツ林です。周囲に絶対にチョウセンゴヨウやストローブマツがないとは言い切れませんが、確認したことはありませんでした。
とはいえ、ネットで調べてみると、必ずしも五針葉マツがなければ生えないというわけではないようなので、このキノコがゴヨウイグチだったとしても、不思議ではありません。
(9)アシボソノボリリュウタケ
今年も生えてきていたアシボソノボリリュウタケ。ノボリリュウタケによく似ていますが、柄が避けるチーズみたいになっておらず、普通の細い一本立ちした棒状なのが特徴。食毒不明とされています。誰も食べようとしないだけかもしれないですが。
(10)ニカワハリタケ
この前教えてもらったニカワハリタケ。トドマツ林下の、シノブゴケやコツボゴケ? ツルチョウチンゴケ?がびっしり地面を覆っている道に地面から生えていました。
一般に材上に生えるとされているのに、地面から生えていたのが奇妙ですが、針葉樹の根元とみなしてよいのかな。
食べれるキノコだと聞きましたし、ネット上にも食べたという意見が多いのですが、今日はチャナメツムタケを初試食の予定なので、やめとくことにしました。初めて食べるキノコが一日に2種は精神的にしんどい。
すぐ近くにニカワジョウゴタケも生えていて、ニカワハリタケと同じく可食なのですが、どちらもなかなか食べる気になれません。ネット上の体験記だと、両者ともに味のないゼリーみたいな食感らしく、美味しそうに思えないので。
(11)オシロイシメジ老菌
どこにでも生えまくっているオシロイシメジ。今回は傘が大きく開いて波打っている老菌を観察してみることにしました。
ひだは非常に密。そして浅い垂生なので、やはり一昨日見たカヤタケ似のキノコはオシロイシメジではなく違うものでした。
また、柄が中空になっているのを確認。オシロイシメジは成長するとともに中実から中空に変化するとされていますが、確かにこれまで見た若い菌では中実、この老菌では中空でした。
以前に見た若いオシロイシメジかと思ったキノコは、その時点から中空だったので、やはり別のキノコだったようです。今のところモリノカレバタケの仲間だったのでは?という結論になっています。
今日の収穫したキノコ。
ノボリリュウタケ6本、ホテイシメジ1本、ハナイグチ11本、ウコンガサ5本、チャナメツムタケ2本、アカモミタケ20本。
アカモミタケが非常に多いですが、トドマツ林のササやぶの中に大量発生しているのを見つけたので、斜面を登ってササをかき分けて採ってきました。傘を掃除するのが大変でした。
チャナメツムタケを食べてみた
チャナメツムタケも食べてみました。今回は小さいのが2本だけなので、茹でて醤油をつけただけ。虫出しで塩水に漬けたり、茹でたりしたら表面のぬめりが落ちるかと思ったのですが、みたらし団子みたいな見た目のままでした。
まず、何もつけずに味を見てみましたが、まったくの無味でした。そこで醤油をつけて一口でまるごと食べてみると…。
これはナメコに違いない。
傘はぬるぬる、つるつるという食感、柄はぎゅぎゅっとした歯ごたえ。ナメコの親玉というか、高級なナメコというか。どこまで行こうがナメコの域は出ないけれど、美味しいナメコという感じでした。
ぬるぬる系のキノコは、他にもハナイグチをはじめ選択肢が多すぎて、あまり新鮮さは感じられません。アカモミタケのような出汁になるキノコがいかに優秀か思い知らされます。
それでも、チャナメツムタケは、普通に生えていたら採ってこようと思える程度には、優秀な食用キノコに思えました。
カキシメジやマツシメジなど有毒キノコと間違わないよう、傘に白い鱗片が残っているものしか採らないと思いますが、それで十分。他のキノコのついでに採るくらいでよさそうです。
2021/10/02土
ホオノキの実を採取。早くもマガンのV字編隊が来た
今日は曇り空で若干の雨模様。朝からなんだか気が重く、あまり元気がありません。せっかくこんなに紅葉が見頃だというのに、ため息をついている間に、秋が終わってしまいそうです。
畑仕事に向かう途中で通りかかった自然公園の林。ふと見ると、立派なヌメリスギタケモドキがたくさん! ということはこれはヤナギの木なのでしょう。高すぎて採取できませんが、せっかくだから車を停めて、写真を撮りました。
ちょっと拡大。
さらに拡大。もうすでに傘が開ききった老菌ですが、とても立派で詰まった肉質がうかがえます。見つけても採れないのはもどかしいけれど、こうして見上げるだけでも嬉しい気分になれるキノコです。
友人宅では、別の友人が持ってきてくれた高枝切りバサミを使って、ホオノキの実を採りました。せっかく脚立を出してくれたのに、わたしの運動神経が悪くて、あまり活かせなかったのが残念。低い位置の実しか採れませんでした。
作業していると、上空を謎のV字編隊の鳥が飛んでいくのが見えました。真上を横切るときに、オアオアと聞き覚えのある鳴き声が聞こえたのでハクチョウ!?
妙に黒っぽい気がするけれど、逆光のせいかと思って写真を撮っていました。その場で去年の日記を見返したら、同じ場所でハクチョウを目撃したのは、なんと10/26でした。なぜか3週間以上早い?
しかし、帰ってから写真を見返してみると、かなりアップで撮れたものがあり、その姿はハクチョウではなくマガンのようでした。道理でハクチョウにしては早すぎるわけだ。
ところが、あとから聞いたところによると、別の友人がハクチョウを目撃したとのこと。確かにマガンとハクチョウは同じ時期に来るものなので、両方いても不思議ではありません。
だとしたらどうして今年は早いのでしょう? 思えば、トドノネオオワタムシも、ウコンガサも、マンジュウガサ?やニセフウセンタケも、去年より1週間早く出ています。
今週は本来10月末に飛来するはずのオジロワシも見ました。留鳥だっただろうと考えていましたが、ハクチョウやマガンが今頃来ているなら、あれも早めに渡ってきたオジロワシだったのかもしれません。
これらの鳥はユーラシア大陸やサハリンなどから渡ってきていると思いますが、なぜ例年より早め? いつもより早く気温が下がっているのか、餌となる実りが少なかったのか。それとも単なるわたしの思い込み? 異常気象のせいでなければ良いのですが…。
(追記 : 8日に福島県猪苗代湖にロシアからのハクチョウが到着したとありました。時期は昨年より1日早いだけですが、数がかなり多いようです。おそらく数が多いせいで北海道でも目撃しやすかったのでしょう。先遣隊が渡ってくる時期は少し早くなっているだけですが、温暖化の影響はたしかにありそうです)
2021/10/03日
森の植物。ナニワズの若葉、再会したキンセイラン等
明日また雨が降るらしいので、今日は時間を作って森に出かけました。2時間半もゆっくりと歩いたので、森の中のほぼすべての道を歩き回ることができました。
さまざまなキノコを観察でき、食用キノコもそれなりに採れましたが、全体的に発生量が減ってきていると感じました。今でもたくさん出ているのはノボリリュウタケくらいで、他のキノコはそろそろ店じまいのようです。
最初に踏み入れたのはトドマツ林。いつもとは反対ルートで森に入ったので、普段なら最後に訪れる場所です。チャナメツムタケが大量発生していたところなので、今日もちょっと期待していましたが、ここでは一本も見つかりませんでした。
(1)ヤブニンジン白葉
ムカゴイラクサとともに、葉の色素が抜けて白葉になることが多いヤブニンジン。まるで斑入りの観葉植物みたいでおしゃれです。
よく見たら、茎に毛が生えていました。これまで何度もヤブニンジンを見てきましたが、花、葉、実にしか注目しておらず、茎に毛が生えることに初めて気づきました。葉っぱが似ているヤブジラミと見分けるポイントになるかも…、と今調べてみたら、ヤブジラミも毛が生えていました。残念。
(2)ハエドクソウの果穂
長い針金のような枯れた花茎を伸ばしている植物が目に入りました。一瞬何だろう?と思いましたが、すぐ在りし日のハエドクソウの姿を思い出し、葉を確認してそうだとわかりました。花が落ちた後はこんな姿になるのですね。
花茎には実が幾つか残っていたので、ハエドクソウで間違いないことがわかります。でも、ほとんどの実は落ちてしまって、ただ黒っぽい針金のような花茎だけが残されています。
(3)ナニワズの若葉
その後、別のカラマツ・トドマツ林でハナイグチを探している時に見つけたナニワズ。青々と葉を茂らせていますが、それもそのはず、ナニワズは夏に葉を落として秋に出すので、これは生まれたての新葉です。
葉の付け根には冬芽…、ではなく来年の花芽が準備されています。葉がもう出ていて、この姿のまま越冬するので、冬芽をつける必要はない、という面白い小低木です。雪解け後に見る春の姿とまったく同じなのは不思議な感じです。
(4)ヤマブドウの落ち葉
その後、さらに別のトドマツ・カラマツ林の斜面を探索している時に目を引いた真っ赤な落ち葉。遠くから見ると、バライロウラベニイロガワリなどの赤いキノコかと期待してしまいましたが、ヤマブドウの落ち葉でした。そろそろ散り始めているのですね。
(5)キンセイラン
トドマツ・カラマツ林を後にして、森の奥へと登っていく道。もうすっかり色とりどりの落ち葉の絨毯に覆われています。色づいた木々の装いを楽しめるのも、あとわずかだということを物語っています。じきに丸裸になってしまいます。
その道を登っていく途中、先月何度探しても見つけられなかったキンセイランの葉を発見できました! 無事に生き残ってくれていたようでよかったです。しかし、残念なことに、実はひとつもつけていませんでした。結実しなかったのでしょうか。
根元を見ると、エビネの仲間らしい球茎が見えました。でも、葉が枯れたのか、ちぎれている跡も見えます。エビネの生態に詳しくないのですが、これって大丈夫なんでしょうか。どうすることもできないけれど、来年も元気に成長してほしいです。
(6)ウメガサソウ
そのすぐそばで実をつけているウメガサソウは、踏み潰されることもなく、まだ元気そうでした。さすが、常緑小低木。シーズンオフはありません。
こちらは前にも写真ょ撮りましたが、来年用の冬芽を準備していました。春、まだ他の植物が生い茂る前に、どんな様子か見に来たいです。
(7)無印イチヤクソウ
イチヤクソウのほうはもう立ち枯れして、今年の営業を終了していました。常緑多年草なので葉は枯れませんが花茎は枯れます。あとは乾燥した実が弾けたら、来年に向けて種を落とすことになるのでしょう。
(8)ヌスビトハギ
森を歩き回って出てきたら、またしても服にヌスビトハギの実が付着していました。全然気づきませんでした。
ヌスビトハギの名前の由来として、この種の形が盗人の足跡に見えるからという説と、気づかないうちにくっついているからという説がありますが、わたしは明らかに後者だと思うようになりました。
どちらも文面だけ読むと説得力に欠けるのですが、森を歩いて、いつの間にかこの実がくっついているのを実際に体験したら、気づかぬ間に盗人にスられたかのような驚きを感じるものです。
花が咲いている時期に見なかったのに、秋になって実だけがどこからか現れて、いつの間にかくっついているとなおさら。体験して初めて、昔の人の粋な名付けに納得できるものです。
(9)公園のサトウカエデ
帰宅後、夕方の公園にサイクリング。ベニテングタケなど面白いキノコが観察できました。
燃えるような鮮やかな虹色の木。
とても目立っていたので近づいてみたら、葉の形からサトウカエデのようだとわかりました。そういえば、冬にこの場所でサトウカエデの冬芽を見つけたような遠い記憶があります。
とめどなく流れる時間、移ろいゆく季節を目の当たりにすると、ふと寂寥感に駆られます。今ある美しいもの、楽しいことがもうすぐ消えていくのにとどめることはできません。
でも、今あるものが去れば、また新しいものがやってきます。人は時の流れを止めることはできませんが、時の流れに乗って、その日その時季を楽しむことはできます。いよいよ白銀の冬の足音が日に日に迫ってきています。
今日のキノコ。シワカラカサタケ?、シロヌメリガサ、アケボノオトメノカサ?等
食用キノコの発生量は減ってきて、全体的にキノコ発生のピークを過ぎたように感じられますが、まだまだニューフェイスがたくさん。
(1)色の薄いニセヒメチチタケ似のキノコ
またいつものよく分からないチチタケ属を撮ってみました。カラマツの周囲に生えることから、過去にとりあえずニセヒメチチタケだと同定したものですが…。
やはりニセヒメチチタケ(lactarius camphoratus)にしては色が薄いです。しかし、傘と柄が褐色の同色で、ひだが白(クリーム色)のチチタケ属というのは案外少なく、なかなか候補が見つかりません。針葉樹林生となるとなおさら。
ヒロハチチタケが上記の条件には当てはまりますが、傘の大きさは5cm~でヒダは疎。このキノコは傘が大きくても3cmくらいしかなく、ヒダはやや密なので違います。
となると、手持ちの図鑑に載っていないマイナーなチチタケ属かも。ここのページに載せられている小型チチタケの中では、アカアシボソチチタケの配色に似ていますが、このキノコは柄が長くないし、針葉樹林生なので、やはり異なっています。
今回も乳液は確認できましたが、少量で、やや透明感のある白色でした。この点はニセヒメチチタケ似ているのですが。
(2)ニオイアシナガタケ
そろそろ出てきた足の長いクヌギタケ系のキノコ。去年は、他のキノコが無くなる晩秋でも目立っていました。
傘の中心が突出しており、条線がはっきりしています。
手と比較すると、高さは10cmほどもありそうです。
ネット上の説明によると、アシナガタケは柄に条線があり、ニオイアシナガタケは条線がないとのこと。条線が確認できないので、ニオイアシナガタケの可能性が高そう。
また「北海道のキノコ」によると、アシナガタケは広葉樹林生なのに対し、ニオイアシナガタケは特にこだわりがなく森林内の落ち葉上どこでも発生するようでした。ここはトドマツ林なので、やはりニオイアシナガタケの可能性が高いです。
(3)ヌメリアカチチタケ?
トドマツ林で見つけたチチタケ属。傘の大きさは4cmくらい。全体的に薄い褐色で、傘の中心のみ色が濃く、その他の場所は肌色。
写真で確認する限り、傘も柄も白く粉を吹いたような光沢があります。後で書くように、これはぬめりなのかも?
ひだは傘や柄より少し薄いクリーム色で、やや密。
乳液は白です。
トドマツ林に発生する薄い赤っぽいキノコということで、アカチチモドキか、ヌメリアカチチタケのどちらかではないかと考えました。
アカチチモドキは無環紋、ヌメリアカチチタケは不明瞭な環紋があるとのことですが、撮ってきた写真ではよくわかりません。
よって無環紋のアカチチモドキのほうではないか、と考えましたが、アカチチモドキ(Lactarius helvus)の乳液は透明のようでした。わたしの写真の撮り方の問題で間違っているかもしれませんが、おそらくこのキノコの乳液は白です。
だとしたらヌメリアカチチタケ(Lactarius hysginus)なのか? 手袋で触っていたため、ぬめりがあったかどうかはわからないのですが、この角度からの写真だと、光沢のせいで、ぬめぬめしてそうにも見えます。
本当は、キノコを触るときはできるだけ素手で触れて、ぬめりを確認したほうがいいのでしょうね。最近は、次項のシロヌメリガサなど、粘性が判別の手がかりになると知っている場合は触るようにしていますが、所見のキノコだと確認するのを忘れます。
(4)シロヌメリガサ
トドマツ林で見かけた、平べったい傘の白いキノコ。先月9/26の経験から、これはシロヌメリガサではないかと直感。
前回も思いましたが、平たく開いた5cmくらいある傘は、純白の貝殻のような光沢があって、なかなか美しいです。
近くには傘が開ききっていない幼菌らしいキノコも。シロヌメリガサは若い時は傘の中央が盛り上がっていて、シロトマヤタケと間違えやすいそうです。
裏側を見てみると、ひだは疎、垂生。
そして柄の上部に、白いささくれのようなものが確認できます。ということで、シロヌメリガサで間違いないでしょう。
さらに、素手で触って確認したら傘だけでなく柄もぬめっていました。この点は近縁のオトメノカサとの違いでもあるそうです。
ここまで特徴をはっきり確認できれば、もうシロヌメリガサとして採取して食べてもいいと思うのですが、ヌメリガサ科は、今年やっと見分けられるようになってきた種類。
今のところ、ウコンガサだけ食べていますが、観察に慣れてきて確実性が深まってから、他の種類にも手を出そうかと思います。できればウコンガサの次は、やはり見分けやすそうなキヌメリガサを発見して、そちらを先に食したいですね。
(5)シワカラカサタケ?
トドマツ林に生えていた小さな褐色のキノコ。傘の大きさは2cmくらい。傘よりも大量の鱗片に覆われた柄が目立ちます。Google Lensにかけると、一発でシワカラカサタケ、ないしはその近縁のチャヒメオニタケと出ました。
傘は褐色一色で、ふちの部分が軽く裂けてギザギザになっています。
拡大してみると、ウロコのような模様かひび割れがあります。
柄は傘より濃い茶色で、表面がこな粒のような鱗片に覆われていて、触ると取れます。
ひだは傘や柄より薄い褐色。やや密?
驚いたのは、ひだの分岐が非常に激しいことです。ここまで不規則なひだは見たことがありません。ヒダが分岐することが特徴のキノコがあると読んだことがあったので、これは重要な特徴だと思いました。
裂いてみると、かなりわかりにくいですが、ひだは直生に見えます。シワカラカサタケを図鑑で調べてみると、一方には上生、他方には湾生~湾生とありました。この写真だと、左のひだが、かろうじて湾生には見えますね。
しかし、シワカラカサタケは、ひだの分岐が激しいとはどこにも書かれておらず、学名(Cystoderma amianthinum)で検索すると、ひだの写真の中にたまに分岐しているのがあるくらいで、顕著な特徴には思えませんでした。
外見からしても、トドマツ林に生えていることからしても、シワカラカサタケ属の何かであることは間違いなさそうですが、特にひだが分岐する種類など検索しても発見できなかったので、詳しい種別は不明です。
(6)シロナメツムタケ
トドマツ林の中の切り倒されて放置されていた材木の下から出ていたキノコ。一見、材木から出ているように見えますが、よく見ると材木の周囲の地面から出ています。
幼菌の傘はまんじゅう型のようです。
とにかく傘がぬめぬめ。色はシロヌメリイグチを思わせる灰褐色。傘りの周囲には、ちぎれた膜の白い破片のようなものがぶら下がっています。
柄は白く、縦に繊維状にささくれています。また、柄の根元には白い菌糸が綿のようにまとわりついていました。
ひだは密で茶褐色。
断面を見てみると、ひだは上生。柄は中空のような凹みがありました。
以上の特徴から、初見ではあるものの、普通にシロナメツムタケかな?と思いました。チャナメツムタケと似たような特徴で、傘が白っぽいことだけが異なっています。
幼菌のほうを採取して観察したら、チャナメツムタケと同じような傘の鱗片が確認できたかもしれません。
ひだは図鑑では直生となっていますが、チャナメツムタケと同じなら直生~湾生でしょうし、断面でないほうのヒダの写真だと直生っぽくも見えるので、許容範囲かと思います。
図鑑によると、チャナメツムタケ同様、材上ではなく針葉樹林の埋まった腐朽倒木周辺から出るらしく、地面から生えているように見えたこととも一致しています。
これもチャナメツムタケと同様、食べることができるキノコらしいですが、まだチャナメの見分けも初心者なので、もっと慣れるまではやめておきましょう。シロヌメリガサと同様、来年以降の宿題。
(7)アカヒダササタケ
場所を移動して、アカモミタケ地帯。アカモミタケはまだ4本ほど生えていたのですが、かなり小さめだったので、もうちょっと成長するまで様子を見ることにしました。
代わりに、今まで見たことのない鮮やかなターメリック(ウコン)色の小さなキノコを発見。写真でも伝わるかと思いますが、肉眼だと、森の中で他に似たものがないほど鮮やかで不思議な色です。
カレーのような色合い。
とても美しいキノコだったので、頑張ってかがみ込んで、下かにら見上げるアングルの写真も撮ってみました。
傘のサイズは2cmほどと小型。傘、ひだ、柄がすべてターメリック色。
半分に裂いてみると、ひだはちぎれてしまっていますが、湾生のようでした。 柄は中空に見えました。
特徴的な色なので、Google Lensがすぐ同定してくれて、ササタケの仲間だとわかりました。
そういえば前にはも、9/9の(5)で、同じ場所でアカササタケかアカヒダササタケと思われるキノコを見たなと思い出しました。同じ種類かもしれません。
この仲間には、簡単に調べたところ、ササタケ、オオササタケ、アカタケ、アカササタケ、アカヒダササタケと、少なくともややこしい5種がありましたが、いずれも主に針葉樹林に出るようです。
このうち、色合いや大きさが似ているのはアカササタケ、アカヒダササタケの2種ですが、「北海道のキノコ」によると、アカササタケは直生、アカヒダササタケは上生~湾生とされていたので、後者かと思います。
前回9/9の写真も改めて見返してみましたが、やはりひだが上生~湾生だったので、前回今回ともに同じアカヒダササタケだと思いました。こんな美しいキノコが身近に何度も発生してくれるなんて嬉しいことです。
(8)チャナメツムタケ
この前チャナメツムタケが大量発生していたトドマツ林には、もう若いチャナメツムタケは一つも見つかりませんでしたが、アカモミタケ地帯から少し歩いた別のトドマツ混交林の根元に、2本それらしいキノコを見つけました。
傘は茶色、白い鱗片があり、ふちにもリング状に鱗片が残っている。柄の表面が繊維状でささくれていて、特に下のほうが褐色を帯びている。
ひだは白く密。柄に直生から湾生。ひだに赤黒い点々とした染みはない。ということで、チャナメツムタケで間違いなさそうです。
特に傘の白い鱗片がよく目だっていたので見分けやすくて助かりました。素手で触っても傘のぬめりが弱かったのですが、おさらく傘が乾燥しているからで、そのおかげで鱗片が洗い流されずにすんだのでしょう。
そこからさらに進んでいったカラマツ・トドマツ林で、前回9/29にニガクリタケやキナメツムタケっぽいと思ったキノコを再確認。改めて色みを見てみたら、チャナメツムタケっぽいように見えますね。どのみち発見した時からボロボロでしたが。
(9)ウコンガサ
きれいなチャナメツムタケを見つけた場所はウコンガサがよく生えている地帯です。今日も採ろうと思っていましたが、ウコンガサは大量発生するのに、傘が傷みやすいのか、ほとんど食べられそうな状態のいい個体がありませんでした。
(10)オトメノカサ
その後、去年ハナイグチが大発生していたポイントで、今日もハナイグチの幼菌をかなりの数採ることができました。
さらに進んで、別のトドマツ・カラマツ林。森の入り口付近の斜面で、今年発見したハナイグチの隠れスポットへ。しかし今日は残念ながらハナイグチは出ていませんでした。
その代わりに見つけたこんなキノコ。傘の中心がほんのり褐色を帯びていること以外には、全身真っ白のキノコ。
抜いてみると、柄が予想以上に長いので、ヌメリガサがの仲間だなと直感。なんと長いだけではなく、ヘビのようにとぐろを巻いているという不思議な形でした。
ひだは疎で、柄に少し長めに垂生。この特徴から、おそらくオトメノカサだろうと考えました。
柄はねじれていて、出てくる時に苦労したことが推察されます。柄の上部にささくれがないので、シロヌメリガサの可能性は除外。
柄は中実。
いずれの特徴もオトメノカサらしさを示しています。傘の中心がほんのり褐色めいていることから、アケボノオトメノカサの可能性も考えました。
しかし、参考サイトによれば、無印オトメノカサでも中心がやや肌色がかることがあり、無印はヒダが柄に長く垂生なのに対し、アケボノオトメノカサは直生状垂生と書かれていたので、これは無印のほうかなと思います。
(11)ミイノヒガサタケ?
まだ時間があったので、そこから思いっきり森を引き返して、今度は登り道を経て森の一番奥のウメガサソウの裂いていた場所をぐるりと回って降りてきました。その下り道で見つけたキノコ。
傘の大きさは2cmくらいと小型。傘の形から、これはきっとシロトマヤタケだろう、と思ったのですが…、
抜いてみたら、まるでモリノカレバタケのように幅が狭く密なヒダ。柄もモリノカレバタケのように細く、下のほうが褐色を帯びていました。
またモリノカレバタケに騙されたのか、と思いましたが、Google Lensで調べたら、ミイノヒガサタケという聞き慣れないキノコがヒットしました。
情報の少ないキノコですが、傘に綿くず状の鱗片、傘のふちに短い条線、ひだが隔生、柄の下半分が褐色など特徴が一致しているので、おそらくミイノヒガサタケか、その近縁のキヌカラカラカサタケ属のキノコだと思います。
(12)群生していた白いキノコ
道の真ん中に群生してい白いキノコ。一番近い木はカラマツ。周囲には他の広葉樹も少しありました。
傘は5cmくらい。もともと白色ですが、老いると褐色になるもよう。
ひだは密で垂生。柄は傘に比べると細く中実。
傘は平らに開き、ふちは多少内側に巻くようです。
なんだか同じような白いキノコばかり観察するのに疲れてしまっていて、観察が適当。たったこれだけの情報で名前を特定するのは無理か。
Google Lensではまたしてもイッポンシメジ科のヒカゲウラベニタケやムツノウラベニタケの可能性が提示されましたが、老菌っぽい個体でも傘の周囲が波打っていないため違う気がします。柄も上から下まで同じ太さです。
(13)アケボノオトメノカサ?
その近くにあった、なんとなく苦手意識のある、中心が褐色を帯びた白いキノコの群生。
傘が開いたものを引き抜こうとすると、もうかなりボロボロで柄が取れてしまいました。ヒダは疎。またしてもモリノカレバタケか?と思っていましたが、その可能性は除外されました。
傘が開ききっていないほうも引き抜いてみたら、柄が長くてシロヌメリガサの仲間らしい雰囲気。ただ白地に褐色みを帯びている点が違うところ。
まだ傘が開ききっていなかったので判別しにくいですが、ひだは垂生のようでした。傘の色合いから、おそらくアケボノオトメノカサだと判断しました。
(14)謎のキノコ?
森をぐるりと回って、やっと入った場所まで帰ってきたあたりで見つけたキノコ。自分用の覚書として書いておくと、マタタビの実を見たあたり。広葉樹林と針葉樹林に挟まれた道。
大きな傘に覆われて、中が全然見えません。全体的に肌色で、柄が少し濃いようです。
上から見ると頭巾をかぶっているようです。
下から見ると、つばはありません。ひだはひしめき合っていて、密度を判別するのは難しい。
断面。柄は完全に中空。写真が白飛びしていますが、ひだは直生? 傘のてっぺんにへこみがあるようです。
さすがに傘が開いていないこの状態のキノコから種類を判別するのは無理でした。引っこ抜かずに残しておいてあげればよかったです。
今日採ったキノコ。ノボリリュウタケ6本、チャナメツムタケ2本、ウコンガサ3本、ハナイグチ12本。ノボリリュウタケだけは大量に生えていたので、大きいものを選んで採りましたが、他は発生量が減ってきているのを感じました。
キノコ全盛りのスパゲッティ。2日前に採ってきたアカモミタケの出汁と、他のキノコの食感が合わさって、具だくさんで美味しかったです。
公園のキノコ。大量発生したベニテングタケの成長ステージ
帰ってきてから夕方に出かけた公園で見たキノコたち。
(15)イボテングタケ
なぜかこの公園はイボテングタケが発生しやすいようで、今日も大量に出ていました。でも出たそばから虫にかじられてしまうようで、きれいな形のまま成長するのはまれ。虫も公園だと他に食べるものがないみたい。
周囲に落ちたマツの葉のぐるりと囲まれて、鳥の巣の卵みたいなイボテングタケ幼菌。
(16)ヤマイグチ
ヤマイグチもこの公園に大量に発生しやすいキノコ。これもきれいなのを見つけたら食べてみようかなと思っているのですが、出たそばから虫に食われてしまってだめです。
上から見ると何のキノコだろうと思うような傘の不規則な広がり具合ですが、横から見ればイグチだとわかります。
さらに、柄を覆っている特徴的な黒い鱗片を見れば、ヤマイグチだとわかります。
(追記 : 傘がひび割れているため、10/12に見つけたイロガワリヤマイグチかもしれませんが、詳しく観察しなかったので不明です)
(17)シロノハイイロシメジ
公園の芝生に生えていたキノコ。まんじゅう型の傘が柄を覆っていて、內部がほとんど見えません。
傘がめくれているものを撮ってみると、ひだは柄に長く垂生しているようでした。やはり、少なくとも傘の開いた個体でないと、種類を判別するのは無理ですね。
(追記 : 10/11(12)で成長後の姿を見て、シロノハイイロシメジらしいとわかりました)
(18)ベニテングタケ
そして今日一番の発見は、公園に出ていたベニテングタケ! 去年ヤマドリタケモドキが出ていたあたりを歩いていたら大量発生していました。幼菌から老菌まで、すべての成長段階を観察できる豪華版!
去年、森の中で一度だけ美しいベニテングタケを見たことがありましたが、こんなに大量に、しかも一番美しい姿を見ることができるとは思いもよりませんでした。見事なマリオのスーパーキノコですね。毒ですが。
手と比較した大きさはこのくらい。傘のサイズは7cmくらいかな。
せっかく大量に出ていたので、成長段階ごとに写真をまとめてみました。
まず生まれたての幼菌。真っ白な傘に包まれています。表面はひび割れ始めたばかりで、イボイボもまだ鋭くありません。地面に埋まっていて、地上に出ている部分は半球型です。
もう少し成長した姿。盛り上がって柄の部分が見えてきましたが、まだ全身が白い殻に包まれています。殻の裂け目がしだいに大きくなるとともに、イボイボが鋭くなってきました。
でも、大きさはまだこの程度。地上に出ている背丈は3cmくらいしかありません。
殻の裂け目が薄くなって、ほんのりとオレンジ色の地が見えてきています。
次の成長段階。さらに大きくなったので、上の白い殻が裂けて、中身がオレンジ色の傘が見えています! とろとろの半熟卵のような美味しそうな色です。
真上から見てみると、鋭いイボが分離しているのが見えます。成長段階をすべて見ることができれば、なるほど、ベニテングタケやイボテングタケのイボというのはこのようにして傘に残る殻の破片なのか、とよくわかります。
柄が伸び始めて、さらに大きくなった個体。この個体は残念ながら柄が折れていたので、手に取って写真を撮っています。
イボがあることを除けばタマゴタケにそっくりな色合い! もし雨でイボが流されてしまっていたら、タマゴタケとの区別に要注意とされる理由がはっきりわかりますね。
断面。表面の皮の部分はいかにも美味しそうな色合いですが、柄もヒダも白いことがわかります。タマゴタケの柄やひだは黄色、ベニテングタケは白という違いを覚えておけば、間違えることはないでしょう。
そしてついに、成長して傘が目一杯に開いたベニテングタケ。傘のオレンジから赤へと変化しているグラデーション、トッピングのように覆い尽くすイボが、まるでデコレーションされたケーキのように魅力的に見えます。
ベニテングタケは古くからキノコの代表として、さまざまな画家に描かれてきましたが、まさに絵になるキノコです。描いてみたいと思わせる魅力に満ちあふれています。
表面のイボの拡大。よく見ると、イボとイボをつないでいた被膜がまだ残っていてくすんだ色になっていますが、完全に裂けた割れ目から、ベニテングタケの鮮やかな色がのぞいています。だから、ベニテングタケは成長とともに鮮やかさを増すのでしょう。
傘の縁に近い部分のイボを拡大。傘のふちのほうでは、まだ白いヴェールがかなりの範囲で残っています。傘の中心部分は真紅なのに対し、周辺部分はオレンジ色に見えるのは、薄い被膜が残っていることも関係していそうです。
最後に、近くに倒れていたベニテングタケ老菌。一度も雨に降られなかったのか、傘のイボは残ったままですが、傘がシワシワになってしまって、虫食いの穴だらけ。あれほど美しいキノコも最後には朽ち果てる。盛者必衰を感じさせます。
ベニテングタケはそうそう発生するものではないと思っていたので、こんなにたくさん、すべての成長段階を見ることができ、感動ものでした。この美しさで、しかも食べて美味しければ言うことがないのですが…。完全に無毒化する方法が発明されたらいいな。
2021/10/05水
大雨の翌々日の森。ヒグマの足跡?も見つけた
大雨の翌々日の湿地帯の森に行ってみました。渓流がごうごうと音を立てて流れていて、真夏の干ばつのころと正反対。いつも静かなこの森ではおよそ聞いたことがないほどの音量です。
森の地面はあちこちぬかるんでいましたが、春の雪解けシーズンほどではありません。それでも時々、泥に足を取られて、ぬかるみにはまりそうになります。
森の中一帯は落ち葉が積もっていて、もうキノコを見つけるのは簡単ではありません。比較的落ち葉が少ないトドマツ林で、さまざまなキノコを見つけることができましたが、混交林ではほとんど見つけられませんでした。
地面に落ちていた謎の木の実。そういえば以前8/12にも似たようなものが落ちていて、何だろう?と考えて、色合いからして、とりあえずキハダかなと書いた覚えがあります。
でも、今日は実をつぶして匂いも嗅いでみましたが、無臭で果肉は薄く、大きな種が入っているなど、明らかに違うものでした。
実の色はまるでノブドウのようにさまざまでした。青、赤、黄のそれぞれの色相の実がついていて、このように色づく木の実が何なのか思いつきません。ルイヨウボタンは色とりどりに色づく時期がありますが、実の形が違います。
Google Lensにかけてみたら、エゾニワトコの実ではないかと出ました。確かに色を除けば、実の大きさや果柄の形は似ているような気がします。ニワトコの実に虫が寄生したら色が変わるとか?
普通のエゾニワトコは赤色の実、キミノニワトコは黄色の実、そしてセイヨウニワトコは黒い実をつけますが、まるで、そのすべてを混ぜ合わせたかのようです。
(追記 : 後日、8月に見たものはミズキの実だったことがわかりました。ミズキの実をネットで画像検索してみると、緑から黒く色づく途上で色とりどりに変色するようなので、これもミズキの実だと思われます)
森の奥の湿地まで進んでいくと、地面がまたぬかるんでいて、丸い足跡のようなものがついていました。サイズはわたしの手がすっぽり入るくらい。爪痕までは確認できませんでしたが、ヒグマの足跡では?
なんとなく爪を含めたクマの足の形のような、そうでもないような…。写真だと立体感が出ないので、足跡らしく見えないかも。
そこからしばらく、足跡は不明瞭になりましたが、キノコ観察をしていたトドマツ林のふちの斜面に、また足跡のようなものがありました。
拡大してみると、さっきと同じくらいの大きさ。調べてみたら、このような形の足跡は前足だそうです。後ろ足はもう少し細長い形になるようでした。
秋めいてきて、森の中は見通しがよくなってきましたが、今日は渓流が大きな音を立てて流れていることもあり、ヒグマが近くにいたら気付けるだろうか、と少し不安でした。しっかり鈴を鳴らし、匂いも意識して歩きました。
帰り道、別の道を遠つて帰ってきたら、普段はない小さな川が出現していました。
ここはは春先、たくさんゴミが散らばっていて、掃除したところでした。しかし、また新しいゴミが数個現れていたので、何が起こっていたのか、やっと把握できました。
わざわざ森の中まで来て不法投棄するような輩がいる、とわたしは憤慨していたのですが、どうもそうではないらしい。大雨が降ったり、雪解けの時期には、この道に小さな川ができて、上の林道や工事現場などのゴミを運んできてしまうのでしょう。
道の真ん中の一箇所に大量にゴミが捨ててあったように見えたのは、雪解け水の川が、そこでせき止められていたからに違いない。来年の春もまた掃除しなければならなさそうです。
帰りに立ち寄った近くの小川。この前来たときはサクラマスが産卵していましたが、今日は濁流になっていて、魚がいるのかどうかも見えませんでした。この勢いだと、穏やかになるまで、魚はどこかに避難していそうです。
今日のキノコ。初ムキタケ発見、キハツダケ、クロサイワイタケ等
道なりに見つけたキノコいろいろ。
(1)センボンアシナガタケ?
最初の湿地を抜けたところにある、広葉樹と思われる朽ち木の根元に出ていたキノコ。今年、オニノヤガラが生えていた木なのでミズナラの朽ち木かもしれません。
朽ち木の根元に群生。もうかなり傷んでいる古いキノコに見えます。
傘はキツネ色。放射状の線が入っていて、外周部が白く縁取られています。柄は傘より薄いクリーム色で、下のほうがやや赤みを帯びています。
傘を上から見たところ。ドーム型に開いていて、平らにはならないようです。
ひだは白で疎。細かい小ひだで互いに連絡しているように見え、とても特徴的です。このような脈は「連絡脈」といい、アンズタケ科のキノコなどに見られる特徴だそうです。
断面。ひだは湾生。柄の內部は中空でした。
特徴が最も近いのは、センボンアシナガタケ。ミズナラなどの切り株や根ぎわに群生するキノコで、大きさ、形、全体の色合い、柄が中空であることなどよく似ています。
しかし、手持ちの図鑑によると、ひだは直生でした。小ひだで互いに連絡しているといった特徴も記載されていませんでした。ネットで写真を見る限り、連絡脈はなさそう。
連絡脈のあるキノコを調べてみたら、アンズタケ科の数種のほか、ワサビタケ、サクラタケ、ハダイロガサなど。どれも違うように見えるので謎です。
(2)林内地面に生えていた茶色のキノコ
傘に白いささくれた鱗片がついている、茶色のぬめぬめしたキノコ。
傘のふちに、チャナメツムタケを思わせるような白い鱗片がついているのが特徴。しかし、柄の表面やひだの密度は全然違うため、何か別のキノコです。
傘の大きさは3~4cmくらい。柄は白く、黒い縦線が入り、表面は光沢があって、すべすべしています。イタチタケなどの仲間を思わせる質感。
傘の中心が少し盛り上がるようです。
ひだはやや疎。たまに分岐しています。
ひだは直生~上生? 柄は中空。
Google Lensで調べても全然正体がわかりません。ムササビタケは多少似ていますが、材上生なので違う。カバイロタケが図鑑の写真では似ているのですが、傘はともかく、柄につばや鱗片がないので違うようです。
(3)キララタケ
苔むした倒木から生えていたヒトヨタケ科。傘が白いつぶつぶで覆われているのでキララタケでしょう。まだこんなに鱗片が残っているということは大雨の後に出てきたのかも。
大きさは1cmくらいとまだ小さいです。絵になるキノコだし、まだ若く、1本だけで生えていたので、引き抜くこともしませんでした。
下から見上げた姿。ヒトヨタケ科らしい風貌。
(4)ヒメアジロガサモドキ?
キララタケのすぐそばの落ちていた枝から生えていたキノコ。傘は1cmほどと小型。外見が、名高い猛毒キノコのドクアジロガサや、その近縁のヒメアジロガサのそっくり。
北海道キノコ図鑑の2種では、ドクアジロガサやヒメアジロガサは北海道に存在しないことになっているので、親戚のヒメアジロガサモドキの可能性が高そうです。区別には顕微鏡観察が必要とのこと。
傘はドーム型に開いていて、中心が凹み、周囲には条線があります。中心部分は一般的には、突起がある、と書かれているのですが、ネットの写真だと中心が陥没してカルデラのようになり、そのさらに真ん中がわずかに隆起しているような写真をよく見かけます。
ひだは傘と同じキツネ色。直生~上生で疎。よく分岐しています。ネットで見るヒメアジロガサモドキのひだの写真とかなり違うのが気になります。これだけ見るとキツネタケっぽいのですが、キツネタケは地上から生えるから違いそう。
ヒメアジロガサモドキは柄につばがあるとも書かれていて、消失しやすいともされますが、このキノコには見当たりませんでした。外見が似た別のキノコかもしれません。
(5)マメホコリ
落ちていた木材に生えていた球体のキノコ…、ではなく粘菌? Google Lensで調べてみると、マメホコリだと出ました。
ホコリタケの仲間のタヌキノチャブクロかと思ったのですが、はるかに小さくて、柄も見当たりません。
マメホコリは、もっとオレンジ色やピンク色だと思っていたので意外でした。どうやら未熟な段階では鮮やかな色で、成熟すると黒っぽくなり、中身も粉状になるそうです。鈍色の光沢が美しい。
別の日に改めて撮ってみた写真。指でつまむと、表面が破れて、中の粉が出てきました。中身はこんなふうになっているのか、と新鮮な驚き。
(6)クロサイワイタケ
苔むした切り株から生えていた黒い枝状のキノコ。背景に同化していて、じっくり見ないとキノコであることに気づけませんでした。
しかし、Google Lensで調べたら、クロサイワイタケだと出て、そういえば去年も見つけたことを思い出しました。調べたら11/27でした。名前を覚えていただけで、姿は覚えていなかったのが悲しい。
根っこがかなり頑強で、力いっぱい引っこ抜かないと抜くことができませんでした。コケの中に埋もれていた部分がとても長い。
接写レンズで撮った写真。去年の日記で、接写レンズで撮ってみたかったと書いていますが、20倍程度では何もわかりませんでした。
(7)フキサクラシメジ?
トドマツ林に2本だけ生えていたキノコ。前に見たアカツムタケに似ているので、モエギタケ科の〇〇ツムタケという名前がついているかも、と思ったのですが、柄の特徴なども見ると、そうではなくヌメリガサの仲間かも。
傘は滑らかのドーム型で粘性があり、肌色~オレンジ色。
傘のふちは垂直になっていて、ひだの先端がはみ出てギザギザに盛り上がっています。
引っこ抜いてみると、柄が太めで思ったより長いのがヌメリガサ科らしいポイント。柄は上のほうは肌色、下のほうは白。
ひだは白。やや疎。ヌメリガサ科のハダイロガサにも似ているのですが、ハダイロガサほどヒダが疎ではないですし、ハダイロガサの特徴である連絡脈もないので違うでしょう。
柄の上のほうにささくれがあるのが目立ちます。これはシロヌメリガサに似た特徴。
断面。ひだは直生~垂生、柄は中実です。
トドマツ林には他にアケボノサクラシメジ、フキサクラシメジ、サクラシメジモドキなどのヌメリガサ科が生えるそうです。
しかしいずれも、柄の上部にささくれがあるといった記述は見当たりません。またフキサクラシメジ(3~10cm)以外は大きすぎます。
でも、フキサクラシメジで調べてみると、柄の上部にささくれがあるように見える画像もありました。
トドマツ林に生え、傘のみ薄いオレンジ色を帯びるシロヌメリガサの近縁種、という特徴に、今のところ当てはまるのはフキサクラシメジだけ。とりあえずはこの名前で判定しておきます。特徴的な臭みがあるそうですが、確かめていませんでした。
(8)キハツダケ
トドマツ林に生えていた大きなチチタケ属。
今まで見たチチタケ属の中で最大級。傘は10cmを超えています。
柄はクレーターがあり、ボコボコしています。
乳液は白。10分くらいしてから再確認しに行きましたが、変色していませんでした。しかし、翌々日10/7に見に行ってみると、青緑色に変色していました。
柄は中空。
トドマツ林に大量発生して、多少傷んだものでは、傘の表面やひだが青緑色に変色していたため、変色性があることを推察できました。全体的に薄い黄色で、乳液が白で後に青緑色に変わる特徴を持つチチタケ属はキハツダケということで特定。
おそらく去年も同じような時期にここで見たと思うので、あとで日記を見返してみたいです。
(9)クリタケの仲間の老菌?
前にクリタケが生えていたような気がする倒木についていた黒いキノコ。もしかしてクリタケの老菌?
しかし、傘の大きさは2cmくらいと、クリタケにしては小さすぎます。もう朽ちかけていたので、写真を撮ってみてもよくわかりませんでした。
(10)ワサビタケ
苔むした倒木から生えていたワサビタケと思われるキノコ。以前見たのと同じもの。
イタチナミハタケとか別のキノコの可能性も考えていましたが、この写真がwikiのイタチタケの写真とそっくり。ひだの間に細い連絡脈があるとのことですが、この写真のひだにもかろうじて写っているように見えます。
(11)ニガクリタケ?
さっきのワサビタケの写真で、右下に群生していたニガクリタケと思われるほうのキノコ。傘のサイズは1.5cmくらい。老菌なのか、傘のふちが裂けています。
柄は傘より少し濃いオレンジ色。
ひだは傷んでいますが、もともとは白? そして密に見えます。
ひだは直生、柄は中空。
噛んでみれば確実にニガクリタケかどうか判別できるのですが、怖くてできません。
(12)ムキタケ
森の一番奥の倒木に大量発生していた謎の平たい側生キノコ。
サイズは5cm以上あり、大きめ。おぼろげながら、こういったキノコは食用になるヒラタケか、毒キノコのツキヨタケの可能性がある、ということは知っていました。
しかし、帰ってから調べてみると、全然ヒラタケの色とは違っていて、ムキタケだとわかりました。名高い食用キノコとして名前は聞いたことがあったけれど、実物を認識するのは初めてでした。
下から見上げた写真。ひだが非常に密なのがわかります。後で知ったことですが、ひだが密~やや密なのがムキタケ、やや疎なのかツキヨタケという相違点もあるそうです。
ひとつもいで手に採ってみたところ。表面がゼラチン質でぷるんぷるんです。この質感もムキタケの特徴。ツキヨタケなら、表面にスギタケやナラタケのような黒っぽい鱗片があります。
裏側。ひだが密であることは明らか。
柄の付け根の部分に肉眼でもわかる毛が生えているのも特徴。ほかに傘の表面にも微細な毛が生えているとのことでしたが、そちらはルーペでないと確認しづらかいようでした。
また、ツキヨタケであれば、柄の付け根に指輪のように盛り上がったリング状のツバがあるので、ここも区別点となります。
最大の区別点は、まっ二つに裂いた時の柄の內部。ここに黒い染みがあればツキヨタケだという知識はあったので、現地で裂いて写真を撮りました。黒い染みはありません。
現地ではまだムキタケだとわかっていなかったですし、ヒラタケだという確信もなかったので、食用になるキノコだろうとは思いつつ、持って帰りませんでした。
調べてみたらムキタケだとわかり、採ってみたくなったので、後日、より詳しく観察して採取する予定。
ちなみに名寄市北国博物館のキノコ図鑑によると、この近辺ではムキタケやヒラタケは発生しますが、ツキヨタケはまだ見つかっていないそうです。
一般的にはツキヨタケの分布は北海道南部以南とされていて、ツキヨタケがおもに発生するブナの北限と一致します。ただし、ツキヨタケはイタヤカエデにも出ることがある、とされていますし、近年は温暖化していることを思えば、必ずしも安心はできません。
去年の日記を見ると、10/18に全く同じ場所で同じキノコを見て写真に撮っていました。当時は経験値が少なかったので、ツキヨタケかもしれないと、書いていましたが、ムキタケだったと訂正しておきました。
こうして毎年経験値を少しずつ積んで、レベルアップしていくのですね。
(13)ムキタケ幼菌
ムキタケが出ている倒木の下方に出ていた黒いキノコ。
下から見ると、ひだではなく管孔に思えたので、最初はムキタケとは違う種類のキノコだと思いました。
ひとつむしり取ってみましたが、このように肉眼ではひだには見えません。白い管孔のサルノコシカケなどの仲間であるかに思えます。
しかし、ルーペで管孔を確認しようと拡大してみたら、かなり分かりづらいものの、なんと管孔ではなくヒダでした。非常に細かく密なヒダがぎっしりと詰まっています。これを見て、もしかしたらムキタケの幼菌なのかな、と思い始める。
手触りはムキタケにそっくりでぷるんぷるんしていますし、裂いてみると、これまたムキタケに似ています。柄の內部の染みはないので、ツキヨタケではありません。
しかし、後で図鑑を見てみたら、ムキタケと一緒に生えることが多い色の濃い幼菌のようなキノコは、2014年にオソムキタケという別のキノコだとわかった、との記述がありました。ならこれはオソムキタケ幼菌?
しかし、ほぼ日のサイトによると、ムキタケには褐色タイプ、紫色タイプ、緑色タイプの3種があり、そのうち緑色タイプがオソムキタケなのだそうです。これは暗褐色でしかないかに、普通にムキタケ幼菌かも。
(追記 : 後日10/8に、もう少し成長した姿を確認しました。
普通にオレンジ色になったので、無印ムキタケの幼菌だったようです)
(14)エセオリミキ?
トドマツ林のふちのミズナラなど広葉樹のそばに生えていたキノコ。
傘の大きさは5cmくらいで、現時点ではドーム型。平たく開けば、かなり大きなキノコになりそう。
ひだは白色、柄は傘より薄い褐色(クリーム色)で、根元にいくほど太くなっていて、根元は白い菌糸で覆われています。
ひだは密。下の断面の写真では直生に見えますが、上の写真からすると柄とひだの間にはっきりとした隙間があるので、上生~離生が妥当そうです。柄はうまく折ることができず、中空か中実かははっきりしませんでした。
以上の特徴からするに、おそらくエセオリミキ? 他の森でも出ていたので、今がシーズンなのでしょう。ナラタケの最盛期とはずれているように感じますが、図鑑を見る限りは特に晩秋に発生するキノコとも限らないようで、たまたまかもしれません。
(15)公園のベニテングタケ
最後に、一昨日見つけた大量発生していたベニテングタケを公園に見に行きました。
大雨にイボが流されて、タマゴタケに似た姿でも見られるかな、と期待していたのですが、なんと残骸になってしまっていました。
幼菌だったものさえ見る影もなく無残でした。おそらく一本たりとも生き残っていないようでした。ベニテングタケ以外の、名前のわからない白い別のキノコは無事に成長していたので、格別ベニテングタケが雨に弱いのでしょうか。
美しい時は一瞬。美しさとは儚いもの。そんな不条理さを教えられます。
2021/10/06水
函岳の紅葉を見に行った
8月に函岳に登ったとき、秋の紅葉のころに、ぜひまた登ってみたいな、と書きました。
道北なら、紅葉スポットは大雪山系を中心に層雲峡など色々とありますが、観光地には行きたくありません。比較的、家に近く、車で1000m超えの高さまで登れる函岳は絶好の紅葉スポットであるかに思えました。
マイナーすぎるのか、ネットで調べても、ほとんど情報はありませんでした。でも、この前登ったウェンシリ岳だって、素晴らしい紅葉でしたが、どこにもそんな情報は書かれていません。道北の秘境だから仕方ないし、逆にそれが人混みにならないというメリットでもあります。
函岳は例年、10月中旬には積雪でゲートが閉じられるので、紅葉を見に行くなら、10月第一週目しかないと狙っていました。
しかし天気が悪い…。かろうじて晴れ間が広がりそうな予報の今日、水曜日に、わざわざ他の予定をずらしてまで登ることに決めました。
天気予報は「晴れ時々雨」。道中いきなり通り雨に降られ、先行き不安。でも雨雲レーダーで見てみると、真上に小さいのがあるだけ。案の定、雨雲はすぐに通り抜け、湖に着くころには晴れていました。
ここでヒシの実を採れたらいいな、と思ってウェダーを持って立ち寄ったのですが、10月となると時既に遅し。もうヒシの葉は沈んでしまって、見当たりませんでした。ぎりぎり間に合うかと思っていたけれど、無理だった…。来年9月に再チャレンジします。
湖には、もうマガモたちが来ていました。近づくとどんどん逃げていったので、じっくり観察することはできませんでしたが、望遠レンズのおかげで、姿をとらえることができました。
逃げて飛んでいく時の翼鏡も、ピンぼけながら、一瞬だけ。マガモらしい瑠璃色です。マガンが渡ってきて、ハクチョウが来ているという噂もあり、マガモたちが湖にいる。いよいよ秋の終わりが近いことをひしひしと感じます。
函岳に向かうにつれて晴れることを期待していましたが、かえってどんどん雲行きが怪しくなり、天気予報は晴れマークなのに、ひどい雨に降られながら、林道入口に到着しました。空一帯真っ白で、晴れ間がどこにもありません。
しかも林道入口には看板が立ててあって、なんと月曜の大雨のせいか、加須美峠から函岳山頂までの道は通行止めとのこと。つまり、最初の17kmは走れるものの、山頂に通じる後半10kmは通れないようです。
がっかりして帰ろうかと思いました。ところが、入口のところに、練馬と八王子ナンバーのバイクに乗った3人連れがいて、話し合った結果、途中まで登ることに決めたようで、林道に入っていきました。
わたしも、迷った結果、たとえ加須美峠までしか行けなくても、そこそこ高度はあるだろうから、いい景色が見られるかもしれない。このにわか雨も、天気予報どおり止むかもしれないと思って、行けるところまで行ってみることにしました。
17kmの林道では、下ってくる3台の車とすれ違いました。こんな雨降りでも登った人がいるんだなぁとびっくり。でも、その3台と、バイクの人たち、そしてわたしの車だけなので、道北らしい人の少なさで安心しました。
走っているうちに雨がやんで、太陽の光が差し込み、紅葉がつやつやと輝いて、虹色のトンネルをくぐっているみたいでした。写真は帰りに撮ったものですが、雰囲気は出ています。
8月に来たときは、なんて長い林道なんだろうと感じましたが、景色に見とれて運転していると、すぐに加須美峠に到着しました。長期間の運転は大変は大変ですが、一度走って慣れた道は少し楽になりますね。
峠に着くと、視界が開け、遠くの山肌の紅葉に目が惹かれました。山頂に向かうゲートの前では、先に登ったバイクの人たちが休んでいましたが、ゲートはなぜか解放されていました。
きっと、途中で通行止めになっているんだろうな、と思ったので、行ける場所まで登って、そこから景色を楽しもう、と山頂への道を登り始めました。
ところが、登れども登れども、通行止めらしき場所はありません。途中、多少地面がガタガタになっているところがありましたが、危険を感じるほどではありませんでした。後ろからバイクの人たちも上がってきたので先に行ってもらいました。
登りながら見下ろす景色は、一面の紅葉。きっと大雪山のロープウェイから見下ろす紅葉の景色も、こんな感じなのでは? 人混みに行かずして、同じような感動を味わえるのが道北のよいところ。
手前に見えるのはチシマザサの緑。奥の紅葉は、オレンジ一色なので、同じ樹種ばかりなのかな、と思います。正体はおそらくダケカンバ。
時期が違えば、タカネナナカマドの紅葉や、ミネヤナギの黄葉も混じるはずですが、もうすでに散ってしまって、葉がほとんどありませんでした。
しかも、森林限界に近いあたりのダケカンバは、すでに紅葉さえ散ってしまって、裸の枝をさらしています。下界は今は紅葉の見頃ですが、山頂付近の見頃は先月ウェンシリ岳に登ったころだったのでしょうね。
そうして景色を見ながら、慎重に走っているうちに、ついに山頂まで来てしまいました。先に登ったバイクの人たち以外は誰もいません。
来てしまってよかったのだろうか…と感じましたが、どこも通行止めになっていなかったので仕方ありません。(追記 : 後で公式情報を調べたら、翌日10/7~10/8が、砂利道整備のため通行止めと発表されていました。その後、通行止めが延長され、よく晴れた10/9にも及んだので、本当によいタイミングでした)
ということで、晴れて函岳山頂の二回目の景色を楽しむことができました。気温はかなり寒く、風も強く、おそらく5℃を下回っていたのではないかと思います。フリースの上着などを持ってきていてよかった。
山頂からの景色は期待していたような紅葉ではありませんでした。高山帯に入ってしまうと、紅葉する木々がほとんどないようで、ハイマツやチシマザサの緑が目立ちました。
それでも、よく晴れた青空の下、遠くまで見渡せる山頂の景色は爽快でした。
オホーツク海と書かれた方角には、確かに枝幸の海のようなものが見えました。大気が霞んでいるので、遠くの山々であるかにも思えますが、平坦に見えるので、きっとオホーツク海なのでしょう。
前に来たとき、遠くからタチギボウシの花が咲いているのが見えた高層湿原。今はすっかり色あせていますが、変わらず水をたたえています。動物たちが水を求めてやってきたりするのかな?
先回来たときは、すっかり見落としたいたのですが、函岳の山頂からは、晴れていたら利尻富士(正式名称は利尻山)が見えるそうです。高さは1721m。道北の山々である、函岳、ピヤシリ山、ウェンシリ岳などよりずっと高い、北の最高峰。
案内板が示す方角を見てみると、遠くの山並みの向こうに、ひとつだけ富士山を思わせる形に巨大な山がそびえているのがはっきり見えました。間違いなく利尻富士です!
ほとんど横並びの高さばかりの道北の山々に混じって、利尻富士のなんと巨大なことか。その手前に見える平坦な部分は海なのかもしれません。いつか行ってみたい…、とは思うけれど、観光地になっているなら別に見るだけでいいかも。
しばらく山頂の景色や植物を楽しみましたが、あまりに寒いので長居はできませんでした。昼間でこれなのだから、雪が降って、登山道が閉鎖されるのも時間の問題でしょう。ぎりぎりの時期に登ってくることができてよかった。
東京の練馬や八王子ナンバーのバイクの人たちも、景色を楽しんだようでした。せっかくこんな道北まではるばるやってきたのだから、頂上まで登れて嬉しかったのではなかろうか。
帰りはその人たちを先に行かせて、わたしは安全運転でゆっくり下り、何度も停車しては、植物や景色をじっくり楽しみながら帰りました。今この山にいるのは、もう自分だけなのだと思うと、これほど壮大な景色を独り占めできることに感謝。
まだ空は曇っていましたが、時おりのぞく青空と差し込む陽光に照らされて、山肌の紅葉がキラキラと輝く様子は絶景でした。
遠くの曇り空の下の山々も、望遠レンズでそこだけ撮ってみれば、なかなか荘厳な雰囲気。
登ってくるときにも眺めたダケカンバ地帯のオレンジ色の紅葉がじつに鮮やか。欲を言えば、他の色の木々もあったほうがよかったですが、ダケカンバ、ハイマツ、チシマザサが彩る景色こそ、高山帯の醍醐味とも言えます。
もう少し下って谷を見下ろすと、さまざまな樹種による、色とりどりの七色の紅葉が広がっています。もう日が傾いているからか、あまり色鮮やかに撮れなかったのがちょっと残念。でも、美しさは写真ではなく目に焼き付けるべきものです。
谷あいを拡大して撮ってみると、色とりどりの樹種の混交林であることがわかります。自然林の紅葉を上から見下ろすと、こんなにも美しい虹色なのですね。
かなり下まで降りてきて、もうすぐ出口というところで出くわしたメスのエゾシカたち。片方が体が大きめだったので、もしかして母娘でしょうか。
すぐに逃げてくれるかな、と思って車を停めたのですが…、
じっとこちらを見つめているだけで、逃げる気配は全然なし。仕方ないので、そろりそろりとアクセルを踏んで、低速で近づいてみましたが、同じくらいの速度でゆっくり離れてこっちを見ているだけ。
フロントガラスを挟んでいるとはいえ、距離にして10mもないかもしれません。大きい。ほとんど歩くような速度でシカたちの後ろをしばらく走っているうちに、ようやく、道路脇のササの中によけてくれました。でもその中からまだこっちを見ている。
こんな近くで逃げないエゾシカを見たのは初めてだったので、ちょっと嬉しい体験でした。おそらく、このあたりは禁猟区で、エゾシカたちも人間に襲われることがないのかもしれません。
シカからしてみれば、あの巨大でそろりそろりと近づいてくる物体はなんだろう?と警戒しながらも興味津々だったかも。これくらい動物と人間の距離が近くて、互いに脅かさずに暮らせたら、どんなにいいだろうと思います。
帰りは、美深町で少し休んでから、無事に家まで運転できました。家に着くころに、ちょうど日が暮れて暗くなりました。
これできっと今年の紅葉も見納め。十分堪能できたので満足です。平地ではまだ、もう一週間か二週間くらいは紅葉を楽しめるかもしれませんが、道北の山々に雪が降るのはそう遠くないでしょう。
高山帯の植物。ミネヤナギ、エゾノマルバシモツケの冬芽など
(1)ゴゼンタチバナ
山頂でまだ実をならせていたゴゼンタチバナ。葉が美しく紅葉していますが、水っぽい実はふやけたような外見。
(2)ミヤマナナカマド
葉の散った低木になっていた真っ赤な実。色と形からして、ナナカマドの仲間だとわかりますが、実が上向きについています。
道北の高山帯のナナカマドは、タカネナナカマド、ミヤマナナカマド、ウラジロナナカマドですが、実が上向きにつくのはミヤマとウラジロ、そしてミヤマのほうが背丈1mくらいと小さいので、おそらくこの木はミヤマナナカマド。
冬芽は低地で見るナナカマドそのものの見た目。
(3)コメバツガザクラ
夏に来たとき、なんだろうと思って調べた、とても小さいツツジ科の小低木、コメバツガザクラ。常緑なので、寒くなったにも関わらず元気そうに、山頂の岩場に茂っていました。
そしてこの葉っぱの真ん中についている極小のが冬芽?

そして、なんと前回見られなかったコメバツガザクラの花が幾つか咲いていました! 白いおちょぼ口の極小の花。紅色のがくとの対比が大人びたコーデです。花期は8~9月とされているのでギリギリ残っていた花ですね。
残念ながら、ネット上に写真がある直立した蒴果らしきものは見つけられませんでした。現地では花を見つけたことで喜んでしまって、実を探そうという思考に至らなかったので、もっと探していればあったのかもしれません。
(4)謎のイネ科/カヤツリグサ科
頂上付近には、前にも見たイネ科/カヤツリグサ科っぽい草が生い茂っていて、なんとオレンジ色に紅葉していました。他に紅葉している大型植物はほとんどないので、非常に目立ちます。
未だに全然名前がわからないのですが、これほど鮮やかに紅葉する種類なら、何か手がかりがないものか。
(5)ミネヤナギ
あちこちに生えている、わたしの背丈より低い低木のミネヤナギ。夏に来たときは、モクメシャチホコの幼虫がむしゃむしゃ葉を食べていましたが、もうほぼすべての葉を散らしてしまっています。
樹木としてはかなり珍しい、鮮やかな黄色をした1年枝と冬芽が、とてもユニークです。
こんなに真っ黄色の冬芽は見たことがないかも。シナノキやイタヤカエデも、時々黄色みを帯びますが、ミネヤナギは枝から冬芽まで全部黄色。
こんな目立つ色ならさぞ人気があるだろうと思ってネット検索したら、一件も出てきませんでした。図鑑の写真とは一致するので、ミネヤナギで間違いないと思うのですが…。
ちょっとだけ残っていたミネヤナギの葉。黄葉しています。葉の形はヤナギの仲間では特に丸いです。
キツネヤナギやタライカヤナギも、ミネヤナギと葉の形がそっくりな低木のヤナギですが、これらのうち亜高山帯や高山帯に生えるとされるのはミネヤナギだけなので、これはきっとミネヤナギのはず。
高山帯にはもっと葉が丸い、匍匐性のヤナギであるエゾノタカネヤナギなども生えるそうですが、今のところ見たことがありません。
(6)オノエヤナギ?
山頂付近で見かけたもう一種類のヤナギ。前回はたしかオノエヤナギかエゾノキヌヤナギではないかと書いたんでしたっけ。確かに残っている葉も冬芽もそのように見えます。
先が尖っておらず、丸みを帯びていて、枝に寄り添うようにちょこんと伸びる冬芽。
家の近所でも普通に見るオノエヤナギが、こんな高山帯にも分布しているとは驚きです。ただし背丈は非常に低くなっています。オノエヤナギの名の由来は四国では「尾根の上」に生えるからだそうですが、ここでもそうなのかも。
(7)ハイマツ
頂上付近を覆い尽くしているハイマツ。今年生まれの小さな松ぼっくりをたくさんつけていました。
少し大きめの、熟しきった去年の松ぼっくり。ぽろっと落ちていたのを見つけました。数はそんなに多くなかったので、ホシガラスなどの動物が持っていった後なのでしょう。
ハイマツの冬芽。褐色の鱗片に覆われていて細長く、先が尖るという形で、チョウセンゴヨウなど他のゴヨウマツ系の冬芽にも似ています。
(8)エゾノマルバシモツケ
謎の低木。ここで見たのは何だっただろうか、と思い出して、葉や冬芽の形状から検索したところ、おそらくエゾノマルバシモツケのようです。
葉は紅葉していて、ふちは小さなギザギザ。葉の大きさは2cmくらいと非常に小さいので、接写レンズの画面内に収まっています。
枝はジグザグした形で、白い小さな冬芽が互い違いについていました。図鑑の冬芽の形ともよく似ているので、おそらく正しそう。あれほど立派な花や実がつく植物なのに、冬を迎える前にこうもスリムになってしまうのか。
(9)ヤマハハコ
ヤマハハコはまだ白い花を咲かせていました。息が長い花です。他のキク科と同じく綿毛をつけた実を飛ばすのだと思いますが、雪が降ってからでしょうから見ることはではそうもありません。カワラハハコなら可能かも。
(10)ヤナギラン
白く弾けた穂を立てる謎の草…、と思いましたが、そういえばここにあったのはヤナギランだったような。
ヤナギランはアカバナ科なので、実が弾けると白い糸のようになるはず。家の近所にも普通に咲いていたヤナギランですが、実の時期に気づけたのは初めてです。
(11)コケモモとヒカゲノカズラ
コケモモの葉の間に生える、白っぽくなったヒカゲノカズラ。おそらく黄葉しているのだと思いますが、ネットで調べてもそうした記述は見つかりませんでした。太古の昔の巨大ヒカゲノカズラことフウインボクは黄葉したのだろうか…。
(12)ハナヒリノキ
紅葉している木々がほとんどない高山帯で、ひときわ目立っていた真紅の低木。これもわたしの腰以下の高さしかありませんでした。
何の木だろう?と思いましたが、葉っぱを見ると、ウェンシリ岳で見たハナヒリノキの木の紅葉を思い出しました。
冬芽も撮って調べてみましたが、ハナヒリノキで合っているように見えます。下界の深山から、こんな高山帯まで彩るハナヒリノキは、森を美しく彩るいぶし銀的な役者といえるかもしれません。
(13)ゼンマイ
前にイワデンダを見つけて喜んでいた道中の岩場。雨水がしきりに流れてツヤツヤしていました。
岩場の一角で紅葉していたゼンマイの葉。道北ではかなり珍しいので、たったこれだけの葉が集まっているだけでも、なんだか群生地を発見したかのように思えてしまいます。
紅葉した葉は、まるで鳥の羽のような模様が浮き出ていて、色合いも相まって化石のような風情でした。
もっとじっくり観察してみたい気もしたけれど、山頂はとても寒かったですし、帰り際はかなり疲れていました。時間と体力が限られているわたしにできるのはこの程度。でも普段見ない面白い植物や樹木との出会いが豊富で楽しかったです。
2021/10/07木
初めてムキタケを食べた
本日の気温は、稚内でマイナス0.6℃、朱鞠内でマイナス0.1℃と、ついに氷点下になりました。わたしが住んでいるところも似たような気温だったので、霜が降りるかと思いましたが、まだその形跡はありませんでした。しかし時間の問題でしょう。
一昨日発見したムキタケをぜひ食べてみたかったので、同じ湿地帯の森に出かけました。雰囲気は一昨日とよく似ていて、今日も水音が大きかったので、ヒグマに気をつけて匂いも確かめながら、森の中を歩きました。
森の地面に落ちていたツルアジサイの実。じっくり見たのは初めて?
接写すると、実の形がかなり面白い。2本の雌しべの花柱が残っていて、動物の耳みたいでかわいいです。
改めてヒグマらしき足跡を見てみる。たぶかん一昨日見たのと同じもの? 湿地なので地面に跡が残りやすく、どれくらい新しいものかは知るよしもありません。
森の奥まで行くと、普通にまだ、ムキタケが残っていました。たった2日で傷むような足の早いキノコではなさそうです。
前回は気づきませんでしたが、倒木の裏側なども見てみたら、かなりあちこちにたくさんムキタケが出ていました。ツヤツヤのぷるんぷるんのゼラチン質で、いかにも美味しそう。
まだ小さいのも多いから、後日採りに来たら、何回か食べれそうです。
トドマツ林の落ち葉の中に擬態していた2本のアカモミタケと、お試しに採ったムキタケ5枚。ムキタケは道具がなかったので手でもぎ取りましたが、かなり固く付着しているので、ナイフを使ったほうが採りやすいことに気づきました。
帰宅後、本当にムキタケで合っているか、毒キノコのツキヨタケと間違えていないか注意深く確認。
ムキタケであることを確かめるチェックリスト
・ムキタケは傘に鱗片がない。ツキヨタケはよく見れば鱗片がある場合がある。
・ムキタケは傘の表面や柄に微細な毛がある。
・ムキタケはひだが密。ツキヨタケはやや疎。
・ツキヨタケは、ひだと柄の付け根にリング状のつばがある。最も(重要なポイント。採取するときにこの部分を残しておかないと確認が難しくなるので注意。
・ムキタケは表皮がつるりと剥ける 。ただしツキヨタケも剥けるとする記述もあるため、確実とはいえない。
・ツキヨタケは半分に裂くと柄の內部に黒い染みがある。ただしツキヨタケも小さい個体など染みが目立たないものもあるため、他の特徴も含め総合的に判断。
表皮の拡大。これが微細な毛なのかどうかはよくわかりません。
一方、柄の部分であれば、肉眼でも目視できるほどの毛が生えています。
表皮がつるりと剥ける様子。Wikipediaだとツキヨタケは剥けないことで区別できると書かれていますが、実際に両方とも剥いてみせている人がいるので信用ならなさそうです。
半分に裂いたところ。すべてのムキタケを裂いて、黒い染みがないのを確かめました。
確認できたら、一晩塩水に漬けておいて虫出し。翌日、表皮をすべて剥きました。当初の見た目とは随分変わってしまってお餅みたいですね。
ラーメンの具に入れて食べてみました。しっかりムキタケであることは確認しましたが、一口食べてから、1時間半ほど様子を見て、お腹が痛くならないのを確認してから完食しました。初キノコは毎回、細心の注意を払っていますが、それでもドキドキします…。
味は特にありませんでしたが、食感が面白いキノコで、擬音で表現すれば、モキュモキュといった感触でした。ハナイグチよりも弾力性があり、見た目も食感も餅っぽいキノコです。今まで食べたヌメリ系のキノコとはまた違う、初めての体験。
フカヒレに似ている、と表現されることがありますが、本物のフカヒレは食べたことがないのでわかりません。似ているのなら、サメをむやみに殺したりせずに、ムキタケを栽培すればいいのに。キノコは食感も旨味も肉や魚にそっくりなのが多いので、工夫すれば十分代用になると思います。
今日のキノコ。クリタケ老菌、オニナラタケ、クサハツ等
晩秋になって、全然名前のわからないキノコがまた増えてきて、げんなりしています。頼みの綱のGoogle Lensも、キツネ色系の似たようなキノコにはほぼ無力で厳しい。図鑑をパラパラめくっていて、たまたま見つけて同定するくらいしかチャンスがないかも。
(1)ニガクリタケ
また大量発生していたニガクリタケっぽいキノコ。
ひだは白く密で上生。柄は中空。
確実な同定はできないけれど、まあ普通にニガクリタケなんだろうな、と近寄りがたい感じ。いつかクリタケを食べようということにでもなれば、味見するなり区別方法を覚える必要が生じるけれど。
(2)キハツダケ
前回10/5に裏返してみたキハツダケ。その時点では白い乳液が変色するのを確認できなかったのですが、今日見てみると明らかに青緑色になっていたので、キハツダケだと確定。乳液が出てから10分くらいでは変色しませんでしたが、どれくらいの時間かかるのかな。
ちなみに、キハツダケは食べれるキノコだそうです。かなり大きいキノコで、なおかつ大量発生するので、美味しいなら素晴らしいことなのですが…、残念ながら味は今ひとつ良くないらしく、あまり挑戦する気になれません…。
(3)クリイロムクエタケ?
トドマツ林の地面にたくさん出ていたタヌキっぽい色合いの尖った傘のキノコ。この種の色合いのキノコは、特徴的なのに全然Google Lensで手がかりが得られず、毎度苦労します。
傘は中央が盛り上がっていて、放射状の線がうっすらと見られます。
横から見ると、傘は山型。色や形状はクリイロムクエタケに似ているのですが、柄の色や太さが異なっています。傘も、これで最終形態なのか、もっと平らに開くのか、反り返るのかは不明。
柄とひだは傘とほぼ同色の茶色です。ひだは密とも疎とも言い難い。
断面。ひだは離生、柄は中実でした。
(3)チャナメツムタケ?
同じくトドマツ林の地上から出ていた茶色いキノコ。もうこの手の茶色い正体不明のキノコには見飽きてげんなりしていますが、気力を振り絞って確認。
表面はぬめりがあってテカテカ。
ひだは白く密。柄が茶色っぽくてささくれているので、もしかしてこれはチャナメツムタケの老菌では? と気づきました。
ひだが湾生で、柄が中実である点も一致。老菌なので、チャナメツムタケの重要な特徴である傘の白い鱗片がありませんが、トドマツ林なので、生えていても不思議ではありません。
(4)アカハツ?
トドマツ林に潜むアカモミタケ。落ち葉が多くなり、地表に同化しているので、運が良くなければ発見できません。今日は合計6本ほど見つけましたが、食べれそうな若いアカモミタケは2本だけでした。
これは何の変哲もない傷んだアカモミタケ…、と思ったのですが、傘が一部青緑色に変色しているのが違和感。もしかしたらそっくりさんのアカハツ? 区別点はオレンジ色の乳液が青緑色に変色するということだけ。
アカハツは外国のマツ林のキノコというイメージですが、「北海道のキノコ」によると、両者ともにトドマツ林に発生しうるようなので、もしかしたらアカハツだったのかもしれません。
(5)クリタケ老菌
トドマツ林の端っこの倒木に大量に束生していた謎のキノコ。傘は4cmくらい、柄は10cmと長いです。倒木の種類は分かりません。
傘の表面はふかふかのどら焼きみたいな質感で、平らに開いています。中心は焦げ跡がついているかのように黒くなっています。
柄に特徴があり、かなり長いです。また、傘に近い柄の上部は白っぽいのに対し、柄の下部は茶色っぽくなっています。
傘の色合いはチャナメツムタケに似ており、柄の上部だけ白いという特徴も似ています。しかし、柄の表面にささくれがないため、チャナメツムタケではありません。また倒木から生えている点も異なっています。
もっと明らかな相違点はヒダの色。やや寒色を帯びた白で密。この写真からヒダがやや垂生であることもわかります。
柄は中空。これもチャナメツムタケと異なる点です。
Google Lensで類似画像を調べても、全然わからないので、お手上げかと思いました。しかし、もしかしたら、特徴的な寒色がかったヒダの写真が手がかりになるかもしれないと思ってGoogle Lensにかけてみたら狙い通り。
正体はクリタケだったと判明しました。若いクリタケの画像は見慣れていましたが、老菌がこのように平らに開くとは…。道理で図鑑をいくらめくっても似た写真が見つからないはずでした。
大量に発生していて、珍しくなさそうなキノコなのに、いくら調べても正体がわからない、という時は、旬の時期がずれているため見た目が変わっていると考えるべきですね。
クリタケは、傘の直径は3~8cmと大きく、表面にはほとんど粘性がない(=ふかふかのどら焼きみたいに見える)。ひだは直生~湾生、最初は乳白色で成長とともに紫みを帯びる。柄は上部は白く下部は茶色、中空。
ということで、全ての特徴がすっきりと当てはまっています。正体がわかってよかった。敷居が高いクリタケも、少しずつ身近になってきました。
(6)オニナラタケ(ツバナラタケ)
トドマツの根元に生えていた巨大なナラタケのようなキノコ。傘の鱗片、ふちの条線、つばの痕跡など、特徴はナラタケそのものなのですが、大きさが通常の2倍くらいあり、色も濃いです。
傘の表面はナラタケに似ていますが、せんべいのようにデコボコしています。
傘の大きさは10cmくらいあり、直径は通常ナラタケの2倍。面積としては4倍なので、ものすごく巨大に感じます。
柄にはツバがしっかり残っていました。
傘の中央の黒い鱗片。オニナラタケは、ささくれ状の大型の鱗片が特徴とされますが、この鱗片はさほど大きくなく、クロゲナラタケなどをそのまま大きなサイズにしただけにも見えます。
傘のふちの条線。上の写真に写っている別のもう少し小さなキノコでは、条線のあたりにも鱗片が確認できます。
柄のツバ。鱗片、条線、ツバとナラタケを見分ける三点セットはそろっています。
柄は中実、ひだは湾生? しかし上の写真だと垂生に見える部分もありました。
オニナラタケを調べると、世界最大の生物とかいうコピペ記事みたいなのばかりでてきて困ります。Googleの除外検索はこういう時に役立ちますね。別名のツバナラタケてで検索するのも良さそうでした。
オニナラタケの写真は幼菌から若い状態のものが多く、濃い鱗片、柄のささくれ、大きなつばなど、あまり似ていないようにも感じます。しかし、ここのサイトのオニナラタケ(老菌寄り)の写真はそっくりなので、おそらく合っているのでしょう。
傘の鱗片が少ない気はしますが、一緒に写っている若い小さなキノコは鱗片がもっとはっきりしていて、傘の中心だけでなく、ふちまで覆われています。大きいのは雨に洗われて流されたのかもしれません。
オニナラタケは、おもに針葉樹の枯れ木の根元に出るそうなので、発生状況も一致しています。
北海道のキノコ図鑑2種を調べてみると、ツバナラタケという名前で掲載されていて、他のナラタケとはっきり区別されて記載されていました。
両方の情報をまとめると、9月下旬~10月中旬に発生する、最も遅く発生するナラタケで、針葉樹の倒木や周囲に発生。傘は暗褐色で鱗片が多く、4~14cm。ひだは垂生、直生、湾生。ツバは強固で最後まで脱落しない。柄の表面は繊維状から綿毛状で時にだんだら模様。
という特徴で、いずれの特徴も一致していると思います。8~9月に発生するワタゲナラタケやホテイナラタケと比べると、食べごたえはあるものの、味は劣るそうです。
(7)フウセンタケ科
トドマツの根元に出ていた傘色の薄いフウセンタケ科。去年もここで似たようなキノコを見て、ニセフウセンタケではないかと思ったのでした。
柄につばの痕跡はなし。ニセフウセンタケなら柄は白ですが、少し褐色を帯びています。
ニセフウセンタケなら、ひだのふちがギザギザになっているはずですが、そうした特徴は見られないので、違う種類かも。
柄はたぶん中空。
ひだは湾生?
(8)ハダイロガサ?
トドマツ林に出ていた薄い黄色のキノコ。傘は5cmくらい。
一昨日10/5に見つけた(7)の、ヌメリガサ科フキサクラシメジではないかとしたキノコと同じかと思いました。しかし、あちらは柄が中実でヒダが直生ぎみなので微妙に違うようです。
Google Lensの候補に出てきたのは、ヌメリガサ科オトメノカサの変色種であるハダイロガサ。確かに全体的な色や、ヒダの特徴は一致しています。ヌメリガサ科なので、柄も太めで、しっかりしているようです。
全体的に肌色ですが、柄は太めで1cmくらいあります。
ヒダはやや疎で、傘や柄より薄いクリーム色。柄にはっきり垂生しています。フキサクラシメジは直生~やや垂生、ハダイロガサは垂生とされていて、ハダイロガサのほうが近いです。
柄の上のほうのヒダとの境目は、多少ささくれているようにも見えます。
ところが、柄はスカスカでおそらく中空。
普通ヌメリガサは柄が中実なので、こんなにフニャフニャしていないはず。またハダイロガサはヒダに連絡脈があるそうですが、少なくとも撮った写真ではそれは確認できませんでした。
とはいえ、一枚目の写真に写っている、もう少し若い同種のキノコは、キヌメリガサが地面から顔を出してきた時の姿にも似ているので、ヌメリガサ科らしさは感じます。
(9)クサハツ?
トドマツ林で見つけた、てっぺんが平たく、屋根のような形に開いているキノコ。傘は薄いクリーム色で、粒状の条線が走っています。
引き抜いてみると、不自然なほど柄が太く長い。しかもフニャフニャしていて締まりのない感じ。表面は白い光沢があります。
サイズは傘は3~4cm、柄は10cmくらい。傘の裏側を見ると、赤い染みになっていましたが、触ると変色するわけでもなく、理由は不明。
フニャフニャした柄なので、当然內部は中空だろうと思っていましたが、柄を折ってみると髄状でした。
ひだはやや疎で、上生~離生。Google Lensはヌメリガサ科のハダイロガサと主張するのですが、全然違うようです。
以前にこれと似たようなキノコを見たことがあるような…、といううっすらとした記憶をたどってみたら、そういえばクサハツモドキの幼菌がこんな形だったのでは?と思い出しました。
改めて調べてみたら、傘の粒状線といい、妙に太い柄の質感といい、かなり近い雰囲気です。
図鑑によると、トドマツなどの混交林内に出る、ヒダは離生、柄は最初中実でのちに中空、とあり、特徴が一致していると思います。ただし、ヒダが密であると書かれている点は異なっていました。
ところが、こちらのサイトを見ると、クサハツはヒダがやや疎、クサハツモドキは密とされています。クサハツモドキのほうは広葉樹林生のようですし、今回のは無印クサハツのほうかもしれません。
しかし、傘の色はクサハツのほうが濃く、クサハツモドキは薄いとされていて、傘の色だけ見れば、クサハツモドキのほうに近く見えます。それでも、クサハツの近縁のベニタケ属であるというのは間違いなさそうです。
Google Lensを使っても、全然ヒントが出てこないキノコでしたが、過去の経験から答え(らしきもの)にたどり着けたのは嬉しいです。確かに一般的なクサハツとは違う成長途上の姿なので、似た画像が見つからなかったのも不思議ではありません。
傘の粒状の条線と、妙に太い柄の締まりのない質感、という特徴をじかに見て経験によって知っているのでなければ、絶対わかりませんでした。ここのところ晩秋の謎キノコだらけで辟易していましたが、少しは自分の成長を実感できて安心しました。
2021/10/08金
ムキタケをたくさん採ってきて料理
今日は雨模様でしたが、午後から少しやんだので、森にささっと出かけて、今が旬のムキタケを追加採取してきました。今回はナイフを持っていったのでスムーズ。また雨が降ってきたので急いで退散。
採ってきたムキタケはこれだけ。さらに採ろうと思えば出ていましたが、あまりに採りすぎても仕方ないので。保存食として塩水などに漬けておいてもいいですけどね。
同じ場所から採ったし、道北にツキヨタケはないはずですが、念には念を入れて、すべて並べて確認しました。
ナイフで切り取ったため、最大の特徴ともいえる柄のつばの有無を確認できないものも混じっていましたが、他と比べて、同じ色、同じ質感、同じヒダの密度かどうか調べれば、ムキタケだと確定できます。
少なくともムキタケだと確信できるのが一つあれば、それと比較して違和感があるものが混ざっていないか比較できる、というホテイシメジの時も使った手法。
すべて問題なさそうでしたし、その上で切れ込みを入れて柄の內部を見ても全て黒い染みはなし。皮もつるりと剥けたので、複数の証拠から複合的に考えてムキタケで間違いありません。
友達にムキタケのことを話してみたら、焼いてみたら美味しそう、というので試してみました。ホットプレートで焼いて味付け。醤油だけだとわずかに臭みがありましたが、コショウを振ると問題なくなりました。もちもちした食感が比類ない。
確かに森のフカヒレと呼ばれるのも納得の食感。フカヒレは食べたことがありませんが、スープにされることは知っています。それで、焼いたムキタケを卵スープに入れてみました。
これは美味しい! くにゅくにゅしたゼラチン質の食感が気持ちいい。動物や魚の肉など食べなくても、森のキノコだけで十分、歯ごたえや旨味を代用できます。今のところムキタケの食感は、他のキノコでは代用できないオンリーワンだと感じます。
2021/10/09土
まだ採れたハナイグチとシュークリームを交換
近所の滝に向かう林道の途中にある橋。春に訪れたとき、とてもいい雰囲気だったので、さぞや紅葉がきれいだろう、と行ってみました。
しかし、赤く紅葉したヤマザクラは散った後、イタヤカエデはあまり色づいていないとあって、全体的に黄色成分が強く、赤成分が少なくて、ちょっと物足りなかったです。
川沿いのヤナギの枯れ木にたくさんついていたヌメリスギタケモドキ。採れたらいいけど高いなぁ、と今シーズンは指をくわえて見ているだけ。
そのあと、近所の森を10/3以来、ほぼ一週間ぶりに散歩してキノコ狩り。もう日が傾いていたので、写真は少なめ。
地面に落ちていた枝についていたサカズキカワラタケ。
白い貝殻のようなキノコで何だろう?とよく見ると、前に見た縞瑪瑙のような椀状体を発見。まずこのサカズキが形成されて、それから白い貝殻が伸びて広がるようです。
椀状体は横から見ると、意外と背丈があります。確かにサカズキのようです。
白い貝殻部分。裏側は多孔菌らしく細かい管孔。
コケについていた白いつぶつぶ。虫の卵のようにも見えますが、Google Lensで類似画像を調べたら粘菌のようでした。
全体的にキノコの数が減り、寂しい森の中。枯れ葉が堆積して見つけにくくなったのもありそう。
たまにチャナメツムタケが出ていました。4本見つけましたが、うち傘に鱗片が残っていて、ヒダも比較的傷ついたいなかった2本を採取。
今日の収穫。ノボリリュウタケ10本、ハナイグチ14本、アカモミタケ3本、チャナメツムタケ2本、ウコンガサ1本。
ハナイグチがまだ出ていたのが意外でした。しかも成長しきっておらず、傘裏がきれいなものがけっこう多かったです。ノボリリュウタケは大量に出ているので、大きめのものや、踏んでしまいそうな場所に出ているもののみ採取。
アカモミタケは先日あえて採らないでおいたものが成長していたので回収。それ以外に新たに出ているものはなかったので、去年より早く店じまいかも。ウコンガサはそこそこ出ていましたが、他のキノコが十分な量だったので、手近なものを1本採っただけ。
ちょうど森から出たところで、友人から電話がかかってきて、シュークリームを持ってきてくれるとのこと。そして、ラクヨウ(ハナイグチ)を採りに行ったものの見つからなかったという話を聞いて、物々交換することに。なんというベストタイミング。
こうしてハナイグチ14本が、大きなシュークリーム2つと練乳入り塩パンになりました。長いこと洋風スイーツを食べていなかったので嬉しかったです。北海道ではこういうのをばくりっこというのですね。
2021/10/10日
今日のキノコ。オニナラタケ幼菌、キシメジ?等
今朝はほとんど0℃だったのに、昼頃には21℃。道北ではそんなに珍しいことではありませんが、寒暖差20℃超えでした。
午後に少し時間が空いたので、14:00ごろに森へ。空模様が怪しく、今にも降り出しそう。歩いていると心なしか蒸し暑い。風が強く、樹木があおられて軋む音が、獣の鳴き声のように聞こえてドキッとします。
サイハイランの実。まだ残っているなんて意外でした。前に見かけた時は緑色でしたが、すっかりひなびたワラ色になりました。葉っぱのほうはまだ青々としています。調べてみたら常緑多年草でした。知らなかった。
森を歩き始めてすぐ、雨がぱらぱらと降ってきて、次第に森の中にまで雨音が響くようになりました。木々の葉っぱに当たる音が増幅されているだけとはいえ、これからひどくなる可能性も。
もう途中まで来ていたので、湿地帯のぬかるみを引き返すのは得策ではありません。あまり立ち止まらず、できるだけ早足で森を抜けて、林道に出て戻ろうと思いました。と言いながら、その途中でも、最低限のキノコは観察したのですが。
(1)キララタケ老菌?
シナノキのような樹皮をした広葉樹の、根元のコケの隙間から出ていた、黒っぽい傘のキノコ。傘の中央が山なりに盛り上がっていますが、アセタケやイッポンシメジの仲間ほど明確に突出しているわけではありません。
傘はほとんど平ら近くまで開き、傘のふちは反り返っています。
このような傘のキノコはしばしば見かけるのですが、そのたびに謎で、てっきりヒカゲシビレタケなどマジックマッシュルーム仲間かと思っていましたが、柄の特徴が合いませんでした。直近では9/26の(7)で見ています。
傘は3~4cm、全体が焦げ茶色で、中央は色が薄く、盛り上がっています。傘のふちには放射状の条線があります。
柄はとても長く、10cmを超えていて、白い光沢があります。内部は中空。
ひだは真っ黒で、やや密、上生でした。写真のひだが欠けているのは、傘を触っただけで欠けてしまったためです。かなり傷んでいることに気づきました。ということは元からこの色ではないのでは?
傘の上側からの写真をGoogle Lensにかけても、いつもどおり全く手がかりが得られませんでした。
しかし、傘の下側、ひだと柄をGoogle Lensで調べたら、極めてそっくりな写真が出てきました。外国語のサイトだったので学名を参考に検索してみたら、なんとキララタケの近縁種でした。
ヒトヨタケの仲間は、ひだが黒くなって溶けることは知っていましたが、傘がこんなに反り返ることや、焦げ茶色になるとは知りませんでした。しかし、言われてみれば、黒いひだに白い光沢のある柄と、特徴がそっくりです。
ヒトヨタケの親類であることは、もはや間違いないと思うのですが、それ以上踏み込んだことはわかりません。たとえばカバイロヒトヨタケの老菌の写真を載せてくれているサイトなど存在しないので。
傘は傷んでいても、流れ落ちるほど液化はしていないので、ヒトヨタケではありません。また、傘の中央に褐色みが残っていることから、元は褐色系統だったのではないかと思えるので、キララタケなのかもしれません。
ネット上のサイトでは一般に、キララタケは離生とされています。今回の写真は上生に見えましたが、傘が触れただけで欠けたことからしても、実際には柄にくっついておらず離生のような気がします。
「ハラタケ類の属検索表」というものを見つけたのですが、なるほど、胞子の色が違うから、成菌ならひだの色を見れば、ある程度、属を絞り込むことができるのですね。(現在はキララタケ属が作られているなど、細かい区分は変化していますが)
キノコは幼菌と老菌でまるで見た目が違うものが多いので、典型的な状態でなければ、特定するのが難しいです。幼菌や老菌もわかるようになるには、経験を積むしかありません。キノコだけでなく山菜や他の植物も同じです。
(2)ムキタケ幼菌のその後
キララタケ?老菌を観察している時に雨が降ってきたので、急いで、でもヒグマを警戒して慎重に、森の一番奥のムキタケ地帯まで、向かいました。
途中、ヒグマの爪痕が残った足跡のようなものを見かけてぎょっとしましたが、よく観察したら、大きなくぼみの中に、ちょうど紛らわしい位置にエゾシカのひづめの跡が残っていただけでした。
ムキタケは、先日から採取している第一弾のほうは、かなりボロボロになっていて、まだ幼菌だった第二弾が成長しつつありました。でもまだ食べるには小さそうです。
第一弾の成長しきったムキタケのうち、まだヒダがきれいで、虫食い跡も少ないのを選んで、食べれそうなものは全部採取してきました。ムキタケは茹でて保存しておくこともできるので、腐らせるよりは採っておこうと思いました。
なんとなく肉眼では緑色がかっているものもあって、オソムキタケかな、と思っいましたが、後で写真を撮った限りでは、普通に褐色タイプだったようです。ネットで見る限りオソムキタケはもっと無彩色に近く見えました。
(3)クリタケ老菌のその後
先日、頑張って判別に成功したクリタケ老菌のその後の姿。黒糖パンになっていました。
(4)オニナラタケ(ツバナラタケ)幼菌
こちらはトドマツに出ていたオニナラタケのその後。この前出ていたものを確認しようとしただけだったのですが、なんと、同じトドマツの四方からオニナラタケがたくさん発生しているのがわかり、さまざまな成長段階を観察できました。
まず成長しきったオニナラタケのうち、この前、撮影し損ねたもの。傘の大きさは10cmに達していますが、まだ非常に毛深い鱗片が残っています。
鱗片の拡大写真。前回のはクロゲナラタケを大きくしただけの感じ、と書きましたが、今回のは明らかにもっと毛深く、剛毛です。
その近くにあった幼菌。写真だけ見ると、コバリナラタケの幼菌にも似て見えますが、大きさが全然違うはずです。オニナラタケ幼菌は、傘が開く前のタマゴタケと同じくらいありそうな大型。
幼菌はさらに鱗片が密集して濃い印象を受けます。ネット上の写真もこれくらいの段階のものが多く、馴染み深いです。
オニナラタケは別名ツバナラタケですが、幼菌時には、その名の由来になった強固なツバがヒダを覆っていた様子を観察できます。
コバリナラタケのツバは白、オニナラタケは褐色のようですが、この角度では不明。いずれにせよ、ツバが永続性で成長しても残っているのがオニナラタケです。
さらに木の裏側にも出ていたオニナラタケたち。これだけ出まくっているということは立ち枯れしているトドマツなのかも。
特にはっきりと鱗片がついていて美しい傘。
傘のふちには、明瞭な条線も確認できます。わかりにくいですが、左上の個体は、ツバも写っているように見えます。
これだけあれば、食べるために採取することは可能でしたが、まずはしっかり確認してから、と考えました。ほぼオニナラタケで確定のつもりでしたが、幼菌や特徴のはっきりした個体を見ると、もはや間違いないと言い切れます。
でも、食べるとしたら、ナラタケは傷みが早いから、今日採らなければ無理だったかも。だけど、もうムキタケも採ったし、気が進みませんでした。
一度見てサイズ感や成長段階を把握できたので、もし今後見つけることがあれば採取はできそうです。
(5)ベニテングタケ再び
森から早々に撤退しましたが、雨がやんできたので公園へ。大雨でいちどベニテングタケが死に絶えていましたが、また元気にもりもりと生え出てきていました。
シラカバ林に生えていた真っ白い幼菌。
ヤマザクラ、シラカバ、オニグルミ、ヨーロッパアカマツなどの混交林に生えていた、もっと大きなベニテングタケ。前回群生していた場所とほぼ同じです。
黄色から赤色にかけての色のグラデーションも前回観察したものに似ていて、とてもカラフルです。イボの立体感も、イボテングタケ並みにはっきりしています。
そしてそのすぐそばに生えていたもう少し若いベニテングタケ。赤色系統のベニテングタケを初めて見ましたが、マリオのキノコにそっくりですね!
上から見た姿も可愛らしい。でも、黄色系統にものに比べると毒々しさが強いかも。黄色系統は甘いケーキを思わせる色合いですが、赤色系統はいかにも毒がありますと主張しているかのよう。
シラカバとヨーロッパアカマツ林を背景に。画家がモチーフにしたくなるのがよくわかる存在感です。
大雨を経て復活した、新しい世代の美しいベニテングタケ。そのメルヘンチックな姿に心躍る思い出した。しかし今夜また、かなり雨が降る予報。ベニテングタケ一家の受難は続きます…。
(6)キシメジ?
その近隣のヤマザクラの木の根元に出ていた謎のキノコ。傘は黄土色で、わずかにつぶつぶの模様があります。前回、すぐそばで見たヤマイグチの傘に似ている色と模様でしたが…、
裏返してみると、なんと管孔ではなく、ひだ状で密。上生~離生。しかも色は鮮やかな黄色でした。柄は白で中実。
傘を上から見た写真を、Google Lensで調べてみると、ハタケシメジやホンシメジと出ました。まさかそんな、と調べてみたら、ひだが白いので違いました。ホンシメジを無駄にしたとなるとショックが大きいでしょうからホッとしました。
逆にひだのほうで調べてみると、キシメジが候補に出てきました。そういえば、前にアイシメジを見つけたとき、アイシメジ、キシメジ、シモコシといった黄色いヒダのシメジがあるのを知ったことを思い出しました。
ほかにもさらに、ニオイキシメジ、カラキシメジという近縁種があるそうです。ただ、どれもよく似ていて見分けが難しいようでした。
このうち、アイシメジはひだの外周部が濃い黄色で縁取られていますが、その特徴は確認できないので、アイシメジではありません。傘の色にしても、アイシメジはもっと黄金色のような印象でした。
他の類似キノコのうち、シモコシは海岸のクロマツ林に出るとされ、北海道ではまれなようです。ニオイキシメジは不快臭があり、カラキシメジは変色性があるそうですが、軽く観察した限りではどちらも気づきませんでした。
一方、無印キシメジは、傘に鱗片があり、柄は全体が黄色っぽいなどの特徴があり、最も近いと感じます。
非常に伝統的で優秀な食用キノコであるのに、近年、外国からの一報だけで毒キノコ扱いされているという理不尽なキノコ。その情報がなければ、わたしも採って食べようか検討したはずですが、論争に決着がつくまで難しそうです。
(7)謎のキノコ(追記:クギタケもしくはニワタケかその近縁種と思われる)
その近くの別のヤマザクラの周囲の地面から出ていた謎のキノコ。まだ幼菌のようなので、調べても全然わかりませんでした。できれば後日改めて観察に赴いて、特定したいところ。
現時点では非常に小さく、最も大きなものでも2cmくらいです。
傘には鱗片やひび割れのような模様が確認できますが、さらに開くにつれどう変化するのかわかりません。
横から見ると柄にささくれがあります。傘裏のひだは、まだツバに完全に覆われているので、ひだ状が管孔かさえ確認できませんでした。幼菌でこれから成長が見れると思ったので、分解して確認することもしませんでした。
ついにポルチーニを見つけた! 食べた!
そして、今日最大の収穫。この公園では去年10/4に、アカヤマドリっぽい大型イグチの老菌を見つけたので、今年はぜひ若いうちに見つけて食べてみたいと狙っていました。
これまで定期的に探していたものの、同じ日付を過ぎても見つからないので、もう出ないのかと諦めつつありましたが…、
(8)ヤマドリタケモドキ
今日はキノコが多めだったので、もしかすると、と思ってじっくり探してみたら、何やら赤くて丸い傘が!
ぜんぶで4本あり、最も大きいものは傘のサイズがすでに5cmあります。
図鑑で見たアカヤマドリの幼菌のしわくちゃの傘とは違いましたが、成長段階によって変わるのかもしれないと思い、期待をこめて横からのぞく。すると、
思ったとおり! 明らかにヤマドリタケの仲間を思わせるずんぐりむっくりした姿! マリオのスーパーキノコのモデルはベニテングタケだと言われますが、模様ではなく形はこちらのほうがずっと近い。
小さいほうの個体は、柄が白いのでさらにスーパーキノコに似ていました。
さて、どうしよう。これは最大で20cmくらいになるキノコだから、このサイズだとまだ小さい。ポルチーニの仲間だとわかった以上、もう少し成長を待つべきか、それともここで採るべきか。
悩みましたが、一番大きく成長しているものだけ採ってみることにしました。どれくらいが採り頃か知らないし、一般的にキノコは若いほうが虫食いが少なく美味しいものです。
そうして引き抜いてみたのがこちら。
なんと立派なヤマドリタケ! 図鑑でしか見たことがなかった理想的な姿が今、手のひらの中に! 管孔も膨らんでおらず、虫食いもなく、きめ細やかで芸術作品のよう。
ルーペで見ると、管孔はまだほとんど開いておらず、膜に覆われた状態のようでした。道理できれいなはずです。
それにしてもなんて太い柄なのだろう。そう思ってじっくり観察してみると…、
なんと柄の全体に網目模様があるのが肉眼でもわかりました。ルーペで見るとさらにはっきりわかります。
去年から知識が多少なりとも増えているので、ここで違和感は決定的に。アカヤマドリはたしか柄に網目模様がなかったはず。これはアカヤマドリではなく、ポルチーニでは?
ポルチーニの仲間は、柄の上半分に網目模様があるのがヤマドリタケ、柄の全体に網目模様があるのがヤマドリタケモドキでした。それによって柄に網目模様がない毒キノコ、ドクヤマドリと区別できます。
帰宅後、よく調べてみたところ、すぐにヤマドリタケモドキだと確定できました。このずんぐりむっくりした姿が最大の特徴。
また、去年の写真も確認してみて、当時アカヤマドリだと思ったものにも網目模様があり、このヤマドリタケモドキが成長した姿だとわかりました。
ついにポルチーニを食べることのできる日が来ようとは! 「皇帝のキノコ」タマゴタケからキノコ採りを初めて、2年目にしてやっと「キノコの王様」を発見できたのは感慨深い。
念のため、毒キノコではないかチェック。
まずドクヤマドリは、管孔にも肉にも青っぽく変色する特徴がありますが、柄の基部の汚れている部分を切り落としても変色はしませんでした。もとより網目模様がある時点で除外できます。管孔も黄色です。
次にニガイグチは、傘が褐色で管孔が白いなど、全体の配色が似ています。しかし、針葉樹林に生え、柄の上半分に網目模様があり、管孔は傷つくとやや褐色に変化するといった特徴があり、いずれも今回のキノコの特徴とは違います。
可食か毒かの情報が錯綜しているウツロイイグチについては、柄に網目模様がなく条線がみられる点で異なっています。また色もウツロイイグチのほうが濃いようです。
スライスしてみたヤマドリタケモドキ。管孔にも肉にも変色性は見られませんでした。ネットで調べたヤマドリタケモドキの断面の色とも一致したので、これは大丈夫と確認できました。
傘はビロード状で、濡れてもほとんど粘性がないとされていたので、切る前に水洗いして触ってみましたが、確かにぬめりはほぼありませんでした。一方、本家ヤマドリタケは傘に強い粘性があるそうです。
また、良い香りがするとあったので匂いも確かめてみましたが、少しキノコばなれしているような甘い香りがありました。どう表現したらよいのかはわかりませんが。
形が独特で、特徴も非常にはっきりしていて、似た毒キノコが少ないため、初めて食べるキノコとしては、最近の中では一番安心感がありました。
半分は干して乾燥させてみることにして、半分はスパゲッティに投入。
塩コショウで味付けしたはずなのですが、今まで経験したことのない深みのある甘い旨味が染み渡っていました。これがキノコの王様と呼ばれるゆえんか!
二つ名にたがわぬ力を見せつけられた気がして、衝撃的でした。今までどのキノコも美味しい美味しいと食べてきたけれど、確かにこれは別格かも。モドキじゃない本家ポルチーニのほうはさらに美味だそうですが、想像もつきません。
これが毎日たくさん採れるような地方に住んでいたらさぞ幸せだろうな。きっとこの近辺でも出る場所には出ているのでしょうが、シラカバ林のキノコ狩りスポットは未開拓です。
公園で見つけたヤマドリタケモドキは、まだあと3本、幼菌がありました。公園といっても、非常に広く、めったに人が通らないような場所ですし、去年、巨大な老菌になって放置されていたことからしても、わたし以外に狙っている人はいないでしょう。
だから、定期的に通って経過を見ていれば、残りも収穫できると思うのですが、いつくらいに採るのがいいのだろう? かなり成長が早いとか、虫が入りやすいとか書かれているので、欲張らず明日か明後日に、今日と同じくらいのサイズになったのを採るのがいいのかも。
2021/10/11月
今日のキノコ。カワムラフウセンタケ、ハラタケ、シロノハイイロシメジ等
今日はメンテナンスの仕事で出かけて、1時間かけて壁面の清掃をして、それから近くの市内の公園に寄って、いろいろ自然観察しました。普段訪れない場所なので、珍しいものが多くて楽しかったです。
冬に来たときに川か溝かと思って歩かなかった場所が、じつは道だったとわかったので、端まで歩いてみたところ、ゴルフ場に通じていました。途中の森も公園の一部のようで、橋が架かっていましたが、ササやぶになっていて入れませんでした。
道の途中にたくさん落ちていたヤマブドウ。もしかすると今年は豊作? ヒグマたちが満腹になって気持ちよく冬眠してくれたらいいのですが。
見たことのない葉のカエデがあったので葉を撮って調べてみました。すると、カラコギカエデという名前でした。本来は湿地などに生える在来種で、公園にも植栽されているそうです。
最初、ネグンドカエデの葉に似ているかな、と思いましたが、ネグンドカエデは別名トネリコバノカエデで、葉がトネリコのように複葉になるはず。このカエデは単葉だったので、違う種類だとわかりました。
実はイタヤカエデに似ていましたが、カラコギカエデは別名ヤチイタヤと呼ばれるそうです。カラコギとは、鹿の子(かのこ)木から来ていて、剥離した樹皮の模様が子ジカに似ているとか。そこまで観察していませんでした。
ここからは公園で発見したキノコ。
(1)ムジナタケ
たくさん生えていた全身真っ茶色の小さなキノコ。傘の表面は細かい毛か鱗片のようなものに覆われていて、動物の毛皮のよう。安易にムジナタケだと考えたくなりますが、よくある見た目のようで、苦手意識があります。
ひだは茶色で密。ひだ側の写真をGoogle Lensにかけてみたら、ムジナタケと出ました。やっぱりムジナタケで合っているのか。
柄は白い地に、黒いつばの痕跡があり、褐色の毛(鱗片)で覆われています。ムジナタケにつばがあるとは知りませんでしたが、調べたところ、白いつばがあり、のちに胞子で黒く変色するそうです。
今まで見たムジナタケ疑いのキノコの中では、最もムジナタケの特徴に一致しています。林内や草むら、路傍に生えるキノコとのことで、公園に生えていても不思議ではありません。
ひだは上生~離生、柄は中空でした。これもムジナタケの特徴と一致しているため、今まで見た中で最も典型的なムジナタケとしてよさそうです。むしろ、今まで森の中でムジナタケ疑いとしていたキノコたちは別物の可能性があるでしょうね。
(2)ヒメホコリタケ
公園に点々と落ちていた柄のないゴム球のような?キノコ。触ると白い粉が手に付着しました。
引き抜いて確かめなかったのですが、叩くと胞子が煙のように飛び散ったのでホコリタケの仲間のようです。
森の中で見る一般的にホコリタケ(キツネノチャブクロ)とは色や形が違うな、と思ったら、近縁のヒメホコリタケだったようです。芝生などに群生するキノコとのこと。
(3)カワラタケ
枯れ木に大量発生して、鳥の巣やハチの巣のようなボール状に近い外見になっていたキノコ。
Google Lensで調べたら、普通にカワラタケと出ましたが、森や川で見るカワラタケとは大きさも色合いも違っていて、細かい種別が違うのだろうかと疑問に思います。
森で見るカワラタケよりはるかに小さいですが、画像検索したらそっくりな写真もあるので、普通にカワラタケなのでしょう。色合いの多彩さには目をみはるものがあり、どんな背景にも溶け込む引き立て役です。
表面は貝殻のような模様で、裏面は白っぽい管孔になっています。
(4)カワムラフウセンタケ?
ミズナラ、カエデなど広葉樹林地帯の地面に生えていた茶色っぽい傘のキノコ。引き抜いてみたら、あらびっくり、柄とひだは鮮やかな紫色。
頭をよぎったのは、ムラサキシメジや、ウスムラサキフウセンタケ。紫色のキノコは食用が多いイメージがあるので、これも食べられるキノコかな?と思いました。
傘の表面は赤茶色で革のような模様があります。ふちは強く波打っています。サイズはなかなか大きく、10cm弱ありそう。
ひだは鮮やかな紫色で密、上生~離生。柄は薄紫色で、白い毛が密生しており、中実。
調べてみたら、カワムラフウセンタケか、フウセンタケモドキという種類が近いようでした。
なぜか手持ちの図鑑には、片方にはカワムラフウセンタケのみ、片方にはフウセンタケモドキのみしか載っていません。見た目がかなり似ているようなので混同されている?
比較して違いを調べてみたら、フウセンタケモドキは柄の下部の色が傘とほぼ同色の褐色となっていました。また、カワムラフウセンタケのほうが紫色が濃く、傘や柄の繊維が少ないとしているサイトもありました。
特徴からすると、今回見たキノコは柄も紫色なので、カワムラフウセンタケのようです。
ちなみにカワムラフウセンタケは、元々は単に「フウセンタケ」という名前だったそうなので、無印フウセンタケとフウセンタケモドキがよく似ている、ということなのですね。
カワムラフウセンタケでも、フウセンタケモドキでも、どちらでも美味しく食べられるそうなので、今度傘が茶色でひだが紫のフウセンタケを見つけたら、ぜひ持って帰りたいです。
なお、最初、よく知らずに候補に挙げてしたムラサキシメジも食用ですが、よく似たウスムラサキシメジは毒らしく紛らわしいです。
ウスムラサキシメジの毒性を調べたら、ホテイシメジのようにアルコールに反応するタイプのようだったので、なら大丈夫かな?とも思ったのですが、情報が錯綜ぎみ。普通に食べている人もいれば、アルコールに反応して半身麻痺になると述べている人もいて、不可解でした。
(5)キツネタケ?
芝生上にたくさんあった、オレンジ色の小さなキノコ。色合いからしてキツネタケ? 大きめだからオオキツネタケか?
Google Lensで調べたら、そのものズバリな名前のシバフタケというのが候補に出てきたのですが、シバフタケはホウライタケ属で、傘に条線が出ていて、ひだが上生~離生のようなので全然違うようです。
傘が開いていないのでわかりませんが、たぶんこのキノコは垂生。柄は中空ぎみ。特徴的には、知っている範囲内ではキツネタケに似ています。オオキツネタケは公園などには生えず、林内のようなので違いそう。
(6)イロガワリヤマイグチ
広葉樹が色々生えているあたりで見つけたイグチ。傘の表面は非常にキッコウアワタケっぽい模様なのですが…、
管孔は白っぽい灰褐色。柄は白から茶色の地に黒いつぶつぶ。ヤマイグチに似ています。もしキッコウアワタケなら管孔は黄色、柄は赤色のはずなのですが…。
しかし、ヤマイグチでいくら検索しても、ここまでひび割れた写真は見つからないので、キッコウアワタケなのかもしれません。あるいは、他に似た特徴を持つ別のイグチがあるのかも。
(追記 : さらに調べた結果、こちらのページに載せられている写真に近いため、イロガワリヤマイグチだろうと判断しました。その後、翌10/12に別の公園で見た同じようなイグチもイロガワリヤマイグチだと思われます)
(7)コガネコウヤクタケ?
エゾヤマザクラの幹についていた肌色のコウヤクタケ系キノコ。単に樹皮が剥がれて内皮が見えているだけにも見えますが…、
実際には樹皮より盛り上がっていて、拡大してみると管孔のようなものも見えるのでキノコの一種のようです。
似ていそうなキノコは、コガネコウヤクタケのほか、コガネネバリコウヤクタケ、ニオイウロコタケなど。どうやって見分けるのか全然わかりません。
(8)ハラタケ
芝生にたくさん生えていた白いキノコ、傘にスギタケのような鱗片がある、傘から柄を白い膜で覆われ、柄に白いつばが残る、傘が開ききる前から、ひだは薄茶色をしているといった具体的な特徴があります。
傘が開ききった古いもの。傘にささくれた模様。
ひだは薄茶色で離生~隔生。柄は白でつばが残っています。また柄の根元が球根のように膨らんでいます。柄は中実。
まだ傘が開ききる前の幼菌。この段階からすでにひだは薄茶色。こちらの場合は柄の上部はひだと同じ色に見えます。
この最後の写真をGoogle Lensにかけたら、大量に同じキノコの写真が出てきて、すぐに正体が判明しました。なんと科の名前にもなっている、あの有名なハラタケのようです。
画像検索で見つけたのが英語サイトだったので、学名を見て検索しなおしたのですが、Agaricus campestrisとあって、よく聞く健康食品アガリクスとも関係があると知りました。
また、なんとハラタケは、マッシュルーム/ツクリタケ(Agaricus bisporus)の近縁の野生種らしいです。普段見かけないものだから、全然知らなかった…。こういう発見があるから、森だけでなく公園でもキノコ観察をするべきなんですね。
ひだは最初から茶色なのかと思っていたら、もっと若い時は白に近いピンク色だそうです。若いほうのキノコの柄の上部が茶色に見えたのは茶色い胞子をかぶったからだと思われます。
マッシュルームに近縁の美味なキノコとのことで、そんな良いものが公園に出るなら、食べてみたい、とも思うのですが、図鑑ではすぐ真下にハラタケモドキという毒キノコが載せられていて怖い。画像検索したところ、ハラタケモドキは傘中央がもっと黒っぽいので区別できるとは思うのですが。
またハラタケの仲間は、発がん性物質であるアガリチンやフェニルヒドラジンが含まれており、実はマッシュルームも例外ではないそうです。加熱すれば減るようですが、野生キノコを採取してまで積極的に食べるようなものではないのかも。
ただ、特徴はわかりやすいですし、海外では食用キノコとして大人気らしいので、覚えておいていつか食べてみるのもいいかもしれません。でもなぜか、ネット上でも妙に食べている人が少ないのは不安材料…。
(9)ベニテングタケ
その後、帰りに近所の公園に寄ったら、昨日のベニテングタケが成長していました。
昨日真っ赤でマリオのキノコにそっくりだったベニテングタケは多少黄色っぽく。赤系統のベニテングタケかと思ったら、単に時間経過で赤から黄色へと変化していくようです。
一方、昨日、傘が開いて赤色から黄色のグラデーションを呈していたほうは、もう色がぬけてしわしわに。
ベニテングタケの成長過程を見ると、若くてみずみずしい肌の10代の人が壮年になり、やがて年老いてシワが多くなっていく人生の縮図のようで、キノコの一生と人の一生の儚さが重ね合わさります。
(10)謎のキノコのその後(追記 : クギタケもしくはニワタケかその近縁種と思われる)
昨日見て謎だったキノコ。ちょっと成長しましたが、傘は依然として開いておらず、謎めいた姿のままでした。ひだなのか管孔なのかさえ不明。
(11)チャナメツムタケ?
上のキノコが根元に生えているサクラの木の裏側に出ていたキノコ。上のキノコが成長した姿かと考えましたが、どうも違うみたいですね。
傘は褐色でふにゃふにゃした形。縁には白い被膜が残っています。
ひだは黄土色でやや密? 湾生。柄は上部は白く、下部は茶色で、表面にはささくれがあります。
Google Lensで調べるとササタケと出ました。ひだの黄褐色であること、柄の上下で色が違うこと、ささくれていることは似ていますが、傘の表面に毛がないという点が異なるようです。
ということは安易にヌメリササタケかと思いましたが、検索してみると全然違う見た目ですね。難しい。
それにしても、この柄の特徴ってチャナメツムタケにそっくりなような…、傘に白い被膜が残っているのも似ているし…。
と思ったところで、じつはチャナメツムタケそのものではないのか、と思いあたりました。そういえばヒダも直生~湾生だし。
ヒダの色が全然チャナメツムタケっぽくないのが違和感でしたが、調べてみると、白から汚褐色に変化するそうです。
ならチャナメツムタケか?とも思いますが、今のわたしの経験値では、まだ確信が持てないため、食用としては絶対に採らない部類です。
(11)シロノハイイロシメジ
10/3の(17)で見たキノコの成長後の姿と思われる姿。
傘は白からややクリーム色。
柄は傘と同じ色。ひだは柄に長く垂生しており、傘や柄より濃いクリーム色なのが特徴です。
ヒダの写真をGoogle Lensにかけてみると、Clitocybe robustaというものが似ていて、和名はハイイロシメジでした。確かに似ていますが、傘の中央が灰色ではないので、シロノハイイロシメジかと思います。
学名からしてカヤタケの親類なので、ひだは垂生。表面は白~乳白色、ひだは白からクリーム色に変化とのことで色も合っています。まんじゅう型から水平に開くというのも、過去の観察と一致しています。
匂い、味とともに良いとされますが、酒と一緒に食べると悪酔いするらしく、ホテイシメジのコプリンによく似た成分なのかなと思います。
(12)ヤマドリタケモドキ
昨日見つけたヤマドリタケモドキ。今日見てみると、残り3つのうち、2つが昨日採取したものとほぼ同じサイズに成長していました。
その近くに、昨日はわからなかったヤマドリタケモドキが2つ出ているのも見つけましたが、片方はもう一回り大きく成長して、傘が割れて虫が入りかけていました。
それで、きれいなままのヤマドリタケモドキを食べたいなら、この段階が限界なのかも、と思い、採取することにしました。
さらに、傘が割れていたもう一回り大きいヤマドリタケモドキも、バラバラになってはいたものの食べることはできそうだったので、、合計3つを持って帰りました。
残りの2つの小さなヤマドリタケモドキは、もう十分採ったので、採らずに残しておくことにしました。
残念ながら、わたしが発見した場所は、そんなにたくさん次から次に出るわけでもないので、これからも毎年出てくれるのかは不明。
もしかしたら、今年が最初で最後になってしまうかもしれないけれど、伝説のポルチーニを味わうことができたので満足です。
2021/10/12火
ある日森の中クマさんに出会った
いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていたけど、来てほしくなかったー!
今日、キノコ狩りがてら、いつも歩いている森を散歩していたら、20~30mくらいの距離で、ヒグマを見かけました。相手はまだ気づいていない状態だったので、落ち着いて退却して事なきを得ました。(追記 : 後日現場に行ったら15mくらいでした)
しかし、ヒグマ5度目の目撃にして、初の生身での遭遇とあって、非常に…、なんと言えばよいのか、非常に怖かったでも、非常に焦ったでもないのですが、今に至るまで、気持ちが多少動転しています。
以下、詳しい経緯。
場所はいつもキノコ狩りをしているところ。家を出たのは1時前くらいでした。今日は時間もあるし、出かけたのもいつもより早かったので、ゆっくり森じゅうを探索するつもりでした。
まず、入り口近くのカラマツ・トドマツ林の林床に入って、シダやトクサが生い茂る中をキノコを探して歩きました。でも、もう全然何も見つかりませんでした。
それから、道なき斜面を登って、一回道に出て、向かい側にある、もう一つのトドマツ・カラマツ林の斜面も探索。
ハナイグチの残骸を2つほど見かけたほかに、白い小さなキノコが点々とあったくらいで、特にめぼしいものは見つかりません。
それで引き返して道に出ようとしたところで、背後からバケツを一気にひっくり返したようなジョボボというような水音が聞こえて、びっくりして振り返り、しきりに熊鈴を鳴らしながら音がしたほうを見ました。
でも、特に茂みに何か潜んでいるようでもなく、空耳だったのだろうか、と思いました。森の中で空耳はよくあることだからです。
たとえば、自分の衣擦れの音とか、足元の枝などを踏んだ音、さらには遠くのヘリや自動車の音などが、まったく別の音として聞こえてしまうことがあります。音源がどこにあるかわからず、距離感もつかめないからです。
今回の音も、非常に奇妙な音だったので、何か別のたわいもない音が異質に聞こえた空耳だろう、と納得しかけたその時。
こんどは背後から男性に話しかけられるような音がして、ぎょっとしました。背後の上方から聞こえた気がしたので、慌てて振り返ると、すぐ背後のカラマツの枝の上に、キツツキのようなシルエットが見えました。
しかし、よく見るとそれはエゾリスでした。アカゲラなどのキツツキと大きさが同じくらいなので、一瞬錯覚したわけです。
シルエットが枝の上を滑るように動いて初めて、ふさふさのしっぽのエゾリスの姿だとわかりました。こんな近くでエゾリスを見たのは初めて。たぶん5mも離れていなかったと思います。色も毛並みもはっきり見えました。
カメラを構えるも、すぐにカラマツの上のほうに登っていってしまい、写真は撮れませんでした。
どうやら、わたしが聞いた奇妙な音は、どちらもすぐ真上をエゾリスが動き回っていることで立てた音だったようです。音源と距離感がわからないせいで、脳が聞いたことのない音を勝手に解釈して、水音や人の声のように感じてしまったのでしょう。それはまあよくあることです。
それからさらに登っていった別のカラマツ林には、まだハナイグチがたくさん出ていて、幼菌も含め、かなりの量を収穫できました。
さっきまで歩いていたカラマツ林は、おそらく北側斜面だからか、先月9月によくハナイグチやシロヌメリイグチが採れました。気温が下がるのが早かったのでしょう。
一方、ここはほとんど平坦で、西日が差し込むカラマツ林だからか、10月に入ってからハナイグチが採れ始めました。場所によって出る時期が違うのは、日当たりや気温が関係しているのかな、と思いました。
ハナイグチがたくさん採れたので、さらに森の中に進んでいきました。ここからはノボリリュウタケやアカモミタケが採れるトドマツ
林および混交林なので、ちょっとくらい見つかればいいな、と思っていました。
最初の上り坂のあたりに去年ノボリリュウタケがたくさん出ていたのを覚えていたので、探してみました。すぐ見つかりましたが、ごく小さな5cmほどのものばかりで、傷んできていたので、2本しか採りませんでした。
それから、タマゴタケ、アカモミタケ、ノボリリュウタケなどがよく発生する、斜面横の道を歩き始めました。もう晩秋だからか、たまに小さなウコンガサやノボリリュウタケはあるものの、採るほどのものには思えませんでした。
少し進んだところに、去年の秋に写真を撮った場所がありました。真っ黒に枯れているヨブスマソウの群生だと書いた記憶がありました。(2020/10/27の日記を参照)
しかし、改めて葉がある段階で見てみると、葉っぱが三角形のものは数本だけで、他のものは葉っぱの先が裂けていました。
どれも2mちょっとくらいの高さで、茎も花も非常に似ているのですが、ヨブスマソウは一部だけで、後のものはハンゴンソウらしいと気づきました。
これは後で去年のブログを訂正しておかないとな、と思い、熊鈴を鳴らす手を止めて、しばし写真を撮りました。
写真に記録された時刻をみると、14:05と14:06だったので、植物観察していたといっても、長くて1分ほどだったと思います。
普段、キノコの写真を撮っている間、両手がふさがって熊鈴を鳴らせないような時は、頻繁に声を出したりして、音を立てるようにしているのですが、今回は、ちょっと油断していました。
十分観察したのでそろそろキノコ探しに戻ろうかな、と思ったその時。
右後ろの斜面からガサッと物音がしたので、そっちを見ました。イタドリやシダが生い茂っていましたが、その隙間に、黒い毛深い太い足が見えました。
そして、ドッ、ドッと大きな足音がして、二、三歩斜面を下ってきているところでした。
すぐに、クマだー!!! と気づきました。
とりあえず距離は20~30m離れていそうでしたし、「相手はまだ気づいていない!」状態だと思えたので、熊鈴を鳴らして存在を伝えながら、歩いてその場を立ち去ることにしました。
走って逃げてはダメだと知っていましたし、あまり刺激するとまずいと思ったので、普通の速度で歩き、そのあいだに腰につけたクマ撃退スプレーをホルスターから抜きました。
幸い、追ってくる気配はなく、どこにいるのかもわかりませんでした。確かめる必要もないので、時々背後を振り返りながら、その場を立ち去りました。
そのヒグマがどれくらいの大きさだったのかはわかりません。イタドリやシダの茂みの中を歩いてきていて、全身も顔も見えなかったからです。
印象としては、3mもあるような大型ではない気がしました。でも、はっきりと黒く太く毛深い足は見えたので、エゾシカやキツネ、タヌキではないはずです。
また、かなり距離があったと思うのに、足音がかなり重々しく、ドッ、ドッと響きました。ドスッでもガサッでもなく、ドッ、ドッという擬音そのままです。森を出てしばらくも、その足音が耳から離れませんでした。
ヒグマだとわかった直後のわたしは、半ばパニック、半ば冷静でした。
完全に冷静だったら、「ヒグマと出会ったら、じっと立って相手を見、ゆっくりと後ずさりする」という原則のとおりに行動したでしょう。
しかし、そこまで気持ちの余裕はなく、徒歩の速度とはいえ、背中を見せてそこを立ち去ってしまいました。気づかれる前に立ち去ろう、と思ったのですが、同時に熊鈴も鳴らしてしまったので、存在を伝えたいのか、気づかれたくないのか、一貫性のない対応をしてしまいました。
また、クマ撃退スプレーをホルスターから取り出すのもワンテンポ遅れていましたし、結局、安全装置は外さないままでした。
もしヒグマが追ってきていたら、対処できたのか…、それこそパニックになって、走り出してしまっていた可能性をぬぐえません。頭ではわかっていても、いざというとき冷静でいるのは難しいものです。
ヒグマとの正確な距離はわからないので、感覚で20~30mくらいとしていますが、実際には違うかもしれません。現地に行けば、位置関係は完璧にわかると思うので、そのうち安全な時に確かめてみたいと思います。
一番びっくりしたのは、いつもキノコ狩りをしまくっている場所だったことです。ウェンシリ岳のような奥地ではなく、これまで何十回、いやもしかすると100回近く通っている場所でした。
ヒグマが下ってきた斜面は、冬にスノーシューで登りましたし、春にそこでコゴミを採りましたし、つい先日、そこに登ってアカモミタケとノボリリュウタケを採取したばかりでした。
ここの森にヒグマがいることは、秋に多いフンなどの痕跡から気づいてはいましたが、まさか14:06という真っ昼間に遭遇してしまうとは…。
熊鈴を鳴らしてなかったといっても、直前の1分間くらいだけで、それまではジャラジャラ鳴らしていました。
わたしの進路に対して、ヒグマは右手方向の斜面を下ってきていたので、1分手を止めていれば聞こえなかったのだと思いますが、たった1分が命取りになる可能性もあることを知って末恐ろしくなりました。
ヒグマに遭遇したからといって、今後、森に入ったり、キノコ採りをしたりするのをやめようとは思いません。わたしにとって、それは体調維持のための命綱なのでやめるわけにはいきません。
でも、次回同じ場所を通ったとき、冷静でいられるだろうか、という懸念は感じます。きっと大丈夫だろう、とは思いますが、ちょっと緊張してしまうかも。
でも、少しは緊張したほうがいいということなのかもしれません。熊鈴をしっかり鳴らしていれば生身で遭遇しないだろう、と考えていましたが、それは浅はかでした。
かといって、今日の反省点といえば、一分だけ手を止めていた期間に、もっと声を出すべきだった、というくらいしか思い浮かびません。
結果的に、かなり早くヒグマに気づけて、無事に帰ってこれたから、良かったのかもしれませんが、できることなら、今後、もっと確実に遭遇を避けられる方法があれば…と思わずにはいられません。
(追記 : 一週間後に行ってみたら、場所はアカモミタケやコゴミを採った場所よりも、もう少し手前だったことがわかりました。
また、クマを見かけた距離は、20~30mも離れておらず、10~15m程度だったことがわかりました。詳しくは10/19の日記参照)
今日のキノコ。オオイヌシメジ、色々なヤマイグチ等
(1)エセオリミキ
ほとんどキノコはありませんでしたが、カラマツ・トドマツ林でハナイグチを探している時に見たもの。
まず最近よく見る褐色のキノコ。表面は平らに開き、ややラバーのような光沢があって、少し色ムラがあります。傘の大きさは4cm。なんとなく見ただけでエセオリミキかな?とわかることが多いです。
引き抜いてみると、白い密なヒダ、傘と同色の柄。特に、ヒダが上生~離生で、柄が根元に向けて太くなっているという特徴があれば、エセオリミキだろう、と判断しています。
柄が中空であるのもモリノカレバタケの仲間らしい特徴。この時期にはありふれたキノコです。
(2)シロヌメリガサ?
丸い頭の白いキノコ。形からして、たぶんシロヌメリガサかオトメノカサのどちらか。傘の大きさは1cm未満と小型。
しかし、傘が開く前はシロヌメリカラカサタケと見間違いやすいとのこと。でも、この場所で見たことはないので、ヌメリガサっぽい気がします。
シロヌメリガサ特有の柄の上部のささくれは確認できませんでしたが、傘の中に隠れていただけかも。小さいキノコだったので、そこまで確認できず。
(3)シロトマヤタケ
傘のてっぺんが尖っている白いキノコ。傘の大きさは2cm弱。普通によくあるシロトマヤタケかと思います。
ひだは黄土色がかっていて、やや密、上生でした。いずれの特徴もシロトマヤタケに合致しています。
(4)オオイヌシメジ(オオカヤタケ)
地面にたくさん群生していたカヤタケ似のキノコ。傘の大きさは最も大きなもので8cmくらいあり、キノコが少ない今日の森では、ひときわ目立っていました。
普段ホテイシメジがよく生える場所で、形は似ていますが、色がホテイシメジよりずっと褐色で、柄の基部も膨らんでいないので見分けは簡単でした。
前に見たカヤタケより明らかに大型でがっしりしています。カヤタケも図鑑によると最大12cmくらいにはなるそうですが、単なる大きさより、肉厚で柄もしっかりしていることに目がいきます。
もしかしたらカヤタケなのかもしれませんが、どちらかというと、オオイヌシメジ(オオカヤタケ)に似て見えます。オオイヌシメジの場合は傘の中央に中丘があるそうですが…、この写真だとどうだろう?
傘は逆円錐型に広がっていて、ひだは長く垂生。がっしりした雰囲気がホテイシメジにそっくりです。しかし、ヒダは密で、柄の根元が膨らんでいないので、雰囲気はやや異なります。
断面。中央が凹んでいて、カヤタケのように漏斗型に広がっていますが、カヤタケほど漏斗の底が深くないのではないかと思います。漏斗の底の部分がやや膨らんでいて中丘があるような気もするのですが、見慣れていないので何ともいえません。
参考までに、依然撮ったカヤタケと思われるキノコの断面の写真を下に載せてみます。比較すると、上のオオイヌシメジの漏斗の底が浅く、中央が盛り上がっていることは明らかです。また、上のほうが肉厚で柄も太いです。
オオイヌシメジは図鑑によると食べられるそうです。肉厚な雰囲気から美味しそうだな、とは思うのですが、カヤタケやホテイシメジの親戚なら一癖も二癖もありそうで気が引けます。ネット上でもあまり食べた人がいないし。
(5)面白い形のハナイグチ
柄が2つあるハナイグチ。成長する中で、傘が癒着してしまったのでしょう。
傘裏はきれいだったので普通に食べれるとは思ったのですが、ちょっと考えてみて、お化けタンポポを思い出し、もし遺伝子異常とかだったら嫌だなと思って持って帰りませんでした。
キノコで傘がくっついているのは、遺伝子異常とかではなく、普通によくある現象なのだろうとは思うのですが。
今日採れたハナイグチとノボリリュウタケ。ノボリリュウタケはこれから探そうというところでヒグマに遭遇したので、3本ほどしか採れませんでした。
それにしても、ハナイグチは本当に優秀なキノコです。秋のキノコの中で真っ先に採れ始める上、こんな晩秋でもたびたび安定して採れるなんて。味もそこそこ良いので嬉しいです。
(6)イロガワリヤマイグチ
ここからは公園で見たキノコ。昨日別の公園で見つけたキッコウアワタケのような傘をしたイグチが、近所の公園にも大量発生していました。場所は広葉樹林のふちの空き地。
傘の大きさは5cmくらい。傘だけ見ると、どう見てもキッコウアワタケに思えるのですが、
しかし、やはり柄は黒い粒で覆われているので、ヤマイグチっぽく見えます。さらに柄にはツバの痕跡?のようなものも見えます。キッコウアワタケもヤマイグチもつばがないはずなのですが…これはいったい?
つばの痕跡がない個体も。
管孔は白で、柄に上生から離生。
管孔の断面はクリーム色、傘と柄の断面は白。柄の基部まで真っ二つにして、もっと時間を置いて変色性を確認してみるべきだったかも。
キクバナイグチも、ひび割れた傘になり、柄にツバの痕跡のような裂け目ができるようなのです。しかし、キクバナイグチは柄に黒い粒々がないですし、管孔も黄色です。
ここに載せられているleccinum rogosum(アカツブキンチャヤマイグチ)の写真が、傘がひび割れている、柄にツバの痕跡がある、柄が黒い粒で覆われている、と特徴がかなり似ています。ヤマイグチ系であるのは間違いない?
普通に身近にあるヤマイグチだと、傘の色からキンチャヤマイグチだろう、ということになります。
(追記 : 昨日10/11に別の公園で見たものと同じく、ここのサイトの写真からイロガワリヤマイグチだろうと判断しました。
WikipediaのKozák habrovýという項目に載せられているこの写真がよく似ていたので、調べたところLeccinum carpiniというキノコを指しているようで、Leccinum griseum(スミゾメヤマイグチ)と同一のようでした。
しかし、スミゾメヤマイグチはシデ類の下に出るキノコで、このあたりではシデは見かけません。さらに調べたところ、このイロガワリヤマイグチという近縁種が目に止まりました。
先程のサイトの説明によると、イロガワリヤマイグチは傘がひび割れるのが特徴で、乾燥していると褐色や黄色みを帯び、濡れると黒っぽくなるようです。今回発見したのは乾燥した個体ということになります。
ほかに、管孔に変色性があり、傷ついたところがうっすらと赤くなる、柄の上部が白く、下部が赤褐色である、といった特徴も一致しています。
手持ちの北海道のキノコ図鑑2種には記載がありませんが、他に一致するキノコが見当たらないので、イロガワリヤマイグチで合っているでしょう。
このキノコに違和感を感じたのは、ヤマイグチにしては傘がひび割れているからでしたが、無印ヤマイグチも乾燥するとひび割れることがあると書いているサイトもあります。
それで10/3に見たものは、傘がひび割れているヤマイグチだったのかもしれません。改めて見ると、ひび割れが多いので、イロガワリヤマイグチかもしれませんが、詳しく観察していないのでどちらかは不明です)
(7)ヤマイグチ?
傘は10cm以上のかなり大きなイグチ。シラカバ林などに出ていました。傘は黒褐色。柄も同色。管孔はもっと黒い。
管孔は上生。柄は上部は縦に条線が走っていて、全体的に黒い粒に覆われています。
公園内の別の場所で見た、同じ種類と思われるイグチ。周囲にはオニグルミやイヌエンジュなどの広葉樹、アカマツなどの針葉樹がありました。
管孔や柄の特徴は同じ。
調べてみたところ、おそらく無印ヤマイグチ? 依然に森の中などで見たヤマイグチより明らかに巨大ですが、5~20cmになるそうなので、これでも中型。
むしろ、他の黒いイグチはここまで巨大になるのが少ないため、おのずと候補がヤマイグチにしぼられます。さらに柄に黒い粒々があるものといえば、他に候補がなくなります。
色は、ヤマイグチにしては妙に黒く感じますが、図鑑によると、傘は灰色~暗褐色、柄は淡灰色の地で黒い粒に覆われる、管孔は最初白でのちに灰褐色になる、とのことなので、最終的には黒っぽいようです。
(8)ヌメリイグチ
アカマツ林の隣に出ていたハナイグチっぽいキノコ。でもなんとなく雰囲気が違う。ハナイグチはカラマツなので、本州産アカマツの横ということは北海道の森では見ないヌメリイグチか?
ハナイグチより傘の色が淡く、ミカンの皮っぽい色。ハナイグチも黄色やオレンジ色の個体はありますが、最も印象的なのはどら焼きっぽい色なので、このキノコより濃く感じます。
大きさは5cmくらいから、もっとブヨブヨした大きいものまで。おそらくハナイグチと同じようなサイズ。
管孔はクリーム色。老菌らしきものでは、もう少し濃い黄色になっているものもありました。
でも、ハナイグチは幼菌の時点ですでに鮮やかな黄色、老菌になると茶色なので、傘だけでなく管孔も、このキノコより濃いです。
断面は白。特に変色性はないようでした。
ハナイグチとの最大の違いは柄が白っぽいこと。ハナイグチの柄は褐色なので、かなり見た目が異なります。
柄を拡大してみると、白地に紅の点々があるようでした。また、ハナイグチと同様、つばの痕跡もあるようです。これはつばを持たないチチアワタケやアミタケとの区別点となりそう。
以上の特徴を図鑑と比較してみたら、やはりヌメリイグチのようでした。wikiの色の説明を見ると、やはりハナイグチよりは全体的に薄いような印象を受けました。
一応、アカエゾマツやトドマツ下などにも発生する可能性はあるようですが、普段まったく見ないキノコなので、アカマツが植林されている公園ならではの発見でした。
味はハナイグチと同じらしいですが、ここに生えていたのはもうブヨブヨになっていたので、食べるには遅すぎました。
(9)キンチャヤマイグチ?
アカマツ林の中に生えていたイグチ。謎イグチと思ったのだけど、後で見返してみると、傘が割れる前の(6)と同じキンチャヤマイグチっぽい? でもキンチャヤマイグチはカンバ林に生えるらしいので違うような…。
傘は赤茶色、管孔は白。
管孔に傷をつけてみましたが変色性はなし。
柄は白地に、黒いつぶつぶ。上部は条線のようになっていて、真ん中あたりは黒い点々に覆われ、下のほうはやや不完全な黒い網目模様っぽくなっていました。
断面。肉は白く、管孔と同様、変色性はなし。(と思いましたが、あまり長く観察していなかったので不明、キンチャヤマイグチなら、淡ワイン色のちほとんど黒色となるそうです)
アカマツ林の中にたくさんありました。
キンチャヤマイグチっぽいのにアカマツ林に発生しておかしい…と思って調べていたら、なんと本州ではそういう事例があるとのこと。
どうもアカマツと共生するタイプの類似種があって、じつはもっと細分化できそうだけど、現時点ではよくわからないみたいです。
キノコの種の壁って、どの程度まで安定しているのかわからなくなる時があります。広い意味での種の壁は安定していなければタマゴタケなんて怖くて食べれませんが、もっと細かい意味での種はどんどん分化しているのかなと思います。
(10)ハツタケ
ヌメリイグチと同じアカマツ横に群生していたキノコ。
傘が不思議な色合いをしたキノコで、赤、青、黄すべての色みを含んでいるように見えます。触ってみると、表面は固く乾いていましたが、チチタケ属っぽい形。
しかし、そんなことよりも、ひっくり返してみて今までキノコを見てきて一番驚きました。
なんだこの鮮やかな水色は!? かき氷のブルーハワイシロップのような色というか、見る角度によって色が変わる構造色みたいな色というか。とにかく自然界のものとは思えないくらい鮮やかなラメっぽい色。
横から見たところ。ひだだけ青く染まっています。傘はクリーム色っぽく、柄はほんのりと紅いです。横から見ても三色。
傘の色。青く染まったり、黄色っぽく見えたりしていましたが、基本の色は柄と同じく、ほんのりと薄い赤色のように見えます。
真下から撮ってみたところ。柄が中空なのがわかります。また、傘と柄の表面が、思ったより赤みが強かったこともわかりました。見る角度によって色味が変わるようです。
ひだの青色は傘の外周の少し内側までだけなんですね。
チチタケ属と思われることから、乳液が出るだろうと思ってヒダを裂いてみましたが、なんと何も乳液が出ずねカラカラに乾いていました。
断面。見てのとおり縦には裂けにくいです。ひだの幅は狭く、ひだのみが青いことがわかります。中の肉は特に色はついていません。
柄は小さなクレーターがあり、ところどころ青く染みていました。
ということは、傷つけたら青く変色するのかも?と思って爪を立ててみましたが、全く変色せず、影になって赤みが強調されただけでした。
こんなにヒダが鮮やかなキノコなら、すぐ種類がわかるだろう、と思って、帰って調べてみたのですが、なぜか全然わかりません。
ヒダが青いチチタケ属を調べると、ルリハツタケという種類が出てきましたが、日本では稀な上、傘や柄も青色なので、違うと思いました。
でも、こんなに鮮やかなヒダのキノコなんだから、誰か写真を撮っているだろう、と信じてGoogle Lensで調べたところ、なんと無印ハツタケらしい! 確かにハツタケで画像検索すると青く染まっている写真がたくさん出てきます。
ハツタケは、乳液はワイン色の乳液を出し、やがて青緑色に変色するそうです。だから、乳液を含むヒダと、傷ついた傘や柄の一部が変色していたのでしょう。後から裂いても乳液が出ず、柄を傷つけても変色しなかったのは、乳液が全て乾燥した後だからだと思われます。
あるいは、類似種のアカハツの可能性もあります。アカハツは名前のとおり、赤っぽいハツタケで、外見はアカモミタケのそっくりさん。
乳液の色はアカモミタケと同じオレンジ色で、こちらもハツタケ同様、青緑色に変色するので、ヒダが青緑色に染まるようです。
しかし、アカモミタケに似ているほどには赤いとは感じなかったので、無印ハツタケのほうかな、と思います。どちらもアカマツなど二針葉マツ林によく生えるキノコで、同じように扱われて食用にされているそうです。
それにしても、ここまできれいにムラなく変色したハツタケやアカハツの写真はネット上でもなかなかないですね。Google Lensで関連画像を探せば、たまに海外のサイトで似たような写真が引っかかるものの、今回撮れたものが一番きれいです。
どこか傷ついて乳液が出てしまうとムラができてしまうので、よほど平穏な一生を送ったのでしょう。写真からわかるとおり、ヒダは全然やぶれていません。
どこも傷つかず、全体にまんべんなく乳液が残っていて、乾燥して萎縮する中で均等に変色したのではないでしょうか。
ここまできれいなハツタケの変色を見れるなんて、公園を散歩するのもいいものですね。
(11)ヒメチチタケ?
公園の一角のシラカバ林に出ていた茶色いキノコ。傘は2cmくらい。
チチタケ属のようですが、傘は褐色で、環紋はありません。全体的な色合いから、Google Lensはニオイワチチタケを候補に出すのですが、それだと環紋があるはずなので、違うようです。
裏側を見てみると、全体が傘と同じ褐色で、傷ついたひだから白い乳液を分泌していました。腐りかけて茶色くなったキノコに、虫の卵でもついているかに見えて、気持ち悪かったのですが、よくよく考えてみると乳液ですね。
柄は中実でした。
全体が褐色であること、乳液は白であること、そしてサイズが2cm程度と小型であることから、図鑑と比較するとヒメチチタケかと思います。
いつも森の中で見かける小さなチチタケ属は、ニセヒメチチタケではないかと考えていますが、あちらはカラマツなど針葉樹林生。一方、ヒメチチタケは、図鑑によると広葉樹林生だったので、シラカバの近くに生えていたことと一致します。
(12)シロトマヤタケ?
サクラの木の根元に出ていた白い小さなキノコ。傘の中央が盛り上がっているようなので、森のトドマツ林で見たのと同じシロトマヤタケかも? シロトマヤタケは針葉樹林、広葉樹林どちらにも出るそうです。
傘の中央が盛り上がっています。
ひだは黄土色から薄茶色で、湾生ぎみの直生。柄は白くて縦に避けやすい。
しかし、図鑑によると、シロトマヤタケのひだは上生~離生とのこと。そう言われてみれば、上生といってもよいような微妙なヒダ。
(13)ベニテングタケ
今日は公園の普段歩かない場所も歩いてみましたが、ベニテングタケがあるわあるわ。こんなに大量発生するキノコだと知らず、森での印象からてっきりレアだと思っていました。
同じく公園に大量発生するイボテングタケと仲良くツーショット。とても絵になる姿。ここはキノコ王国?
あと少しイボが取れたら、タマゴタケにそっくりになりそうなベニテングタケ。遠目からではほぼタマゴタケに見えました。これは危険です。柄とひだの色の確認を忘れずに。
(14)シロカラカサタケ
昨日見たハラタケに似たキノコ。柄が長めなのと、ひだまで真っ白な点が違います。
傘はほぼ真っ白。中央がやや褐色。
ひだは密で白く、柄にはつばの痕跡があります。昨日見たハラタケでわかるように、ハラタケかその親戚なら、この時点でもうヒダが茶色っぽくなってきているはずなので、違うキノコのようです。
もう少し若い、同じ種類と思われるキノコ。
ひだは離生。つばが早く消失している上、柄の下部にささくれは見当たらないので、ドクツルタケではなさそう。
意外とこの特徴に当てはまるキノコが見つからず悩んだのですが、Google Lensで調べたら、白いアガリクスこと、Leucoagaricus leucothitesがそっくりでした。
和名はなんとシロカラカサタケ。全然カラカサタケっぽい傘の模様がないので、違うのではないか、と疑ったのですが、傘の中央のみ褐色を帯びていることなどそっくり。
日本語のサイトでも、草地や路傍に発生する、表面は白でやや黄色を帯びることがある、ひだは白からピンク、などと書かれていて特徴は合っているようです。
可食のようですが、シロタマゴテングタケにかなり似ているのが怖すぎます。
(15)シロヌメリイグチ
菌環をつくるかのように群生していたキノコ。なんか見覚えのある傘だな、と思ったら、裏側が焦げ茶色の管孔で、シロヌメリイグチっぽい。よく見ると近くにカラマツの木もありました。
中には幼菌もあって、管孔が白かったので、シロヌメリイグチで間違いなさそうです。これくらいなら食べれるからどうしようかな、と思いましたが、今日ももう十分採ったのでいいか。なんとなく公園のイグチは虫食いが多くて汚い印象です。
公園の池周りの紅葉。水面に紅葉と空が鏡のように映し出され、うっとりするような虹色でした。
2021/10/13水
キハダが実り、夜空にはプレアデス星団
昨日採ってきたハナイグチをきつねうどんに入れました。幼菌はまるごと。ボリュームがあって美味しい。
今日は昨日ヒグマが出たのとは別の森に行きました。さすがに昨日の今日で同じところに行くのは怖いです。
昨日の遭遇がトラウマになっていないかと心配しましたが、やはりちょっと体が固くなって、周囲を気にせざるを得ませんでした。歩いているうちに多少リラックスしましたが、やはり緊張感はありますね。
森を歩いた後で、去年キハダの実を採った高台あたりに行ってみたら、今年もたくさんなっていました。いい利用方法が思いつけば、また乾燥キハダの実を作るのもいいかも。カレーに入れるとかどうだろう?
夜は晴れていたので、久々に山道に星空を見に行きました。気温は5℃でしたが、この前の函岳山頂ほど寒くはなかったです。
上弦の月が夜空に低い位置にあったため、かなり明るく照らされてしまって、期待していたほどの星空ではなかったのが少し残念。
でも肉眼でもプレアデス星団(すばる)が見えるなど、すばらしい星空でした。
遠くの森の中で、しきりにキツネと思われる遠吠えが響き渡っていて、野生動物たちの気配が感じられる夜の森でした。
今日のキノコ。またヤマドリタケモドキ、ヒトヨタケ等
(1)ムキタケ
前に幼菌だったムキタケが程よい大きさに成長していました。十分な大きさになったものや、もう傷み始めているものを収穫してきました。
今日採ってきたキノコ。ムキタケ16個。アカモミタケ1個。ムキタケが採れるのはあと一回だと思います。もう晩秋も晩秋。今日は最低気温が0℃だったので、いよいよ気温もマイナスになりそうです。
(2)シロナメツムタケ?
白い平たい傘のキノコ。ナメツムタケっぽい特徴にも見えましたが、たった一本しかなかったので違和感があります。
ひだはやや密で、少し灰色がかった白。
ひだは上生。ナメツムタケなら直生のはずですが、これくらいの違いはありうるか?
柄は縦にささくれているように見えて、ナメツムタケっぽさがあります。
(2)アカモミタケ
同じトドマツ林にて。てっきり前にこの近くで見たヌメリガサ科フキサクラシメジ疑いのキノコと同じもの(10/5の(7)を参照)だろう、と思ったのですが、抜いてみてびっくり。これはアカモミタケでは?
確かにいつもこの周辺でアカモミタケを採っているので、まったく不思議ではないのですが、今年はそろそろ見納めかなと思ってました。それに全体的に色が薄く、環紋も薄い気がします。
もしかしてアカハツ?とも思いましたが、あとでヒダを少し裂いてみたところ、オレンジ色の乳液が出て、変色もしなかったので、普通にアカモミタケだったようです。
(3)エセオリミキ?
最近よく見るエセオリミキっぽいキノコ。
ひだが白く、上生~離生で、柄の下に向けて太まっているので間違いなさそう。
(4)フキサクラシメジ?
トドマツの下に群生していたほんのりと赤いヌメリガサ科。
アケボノオトメノカサはカラマツ林なので違う。トドマツということはサクラシメジモドキ、フキサクラシメジ、アケボノサクラシメジのいずれか。
この3種をどう区別したらいいのか全然わかりせん。匂いで区別するとも書いてありますが、確かめていません。
ひだは垂生。柄の上部にはささくれがあるようにも見えました。「北海道のキノコ」では、柄の上部に粒点があると記載されているのはアケボノサクラシメジのみですが、果たしてそれが区別点になるのかどうか。
柄は中実。
(5)ヤマドリタケモドキ
友人がベニテングタケを見たいというので公園で待ち合わせしていたら、今までヤマドリタケモドキを採っていたのとはまったく別のシラカバ林で、偶然にも足元に発見。
シラカバの落ち葉と同じ色をしていたので、狙って探しても見つからなかったかも。ありがたく頂戴しました。けっこう公園内の色々なところに出ているのに、落ち葉に同化して見つからないだけなのかもしれません。
(6)ヒトヨタケ
ベニテングタケを見せた帰りに、友人が足元に見つけたキノコ。何箇所か株になって群生していました。
わたしは初見のキノコでしたが、見た感じヒトヨタケっぽいなーと話して、ヒトヨタケならヒダが白から黒になるのだけど、と説明。
小さな傘のものはヒダは白でしたが、大きくなって破れているものは実際に黒だと確認できました。
帰ってからGoogle Lensにかけたら、たぶんヒトヨタケで合っていたようです。ちょっと嬉しい。
2021/10/14木
今日のキノコ。クサウラベニタケ?、ハタケシメジ等
今朝はついに気温がマイナスを記録しました。まだ霜は降りなかったようですが、いつ雪が降っても不思議ではない気温になってきました。
忙しくて時間がなかったので、近所の墓地のそばの遊歩道を歩くことにしました。
山でも森でもなく、市街地の中にある林の中を通る道。それでも、入り口に、この前ヒグマが出たので十分気をつけてくださいとの看板が。どこも安全な場所はありません。
ここは、家の近所にも関わらず、めったに来ない場所で、一年に2回くらいしか歩いていません。キノコの季節に来るのは初。
いつも歩いているトドマツ・カラマツ林と違い、ざっと見回した限り、主な樹種はシラカバ、イタヤカエデ、ミズナラ、ヤナギという広葉樹林です。他にウダイカンバ、ハリギリ、ハリエンジュなども。
広葉樹林らしく、色鮮やかに色づいて、落ち葉が堆積して、とても秋らしい彩りでした。
地面の一角にカキドオシの葉がたくさん群生していました。完全に雑草として繁茂しているので、カキドオシ茶が飲みたいなら、ここで多少摘ませてもらっていいかも。
ハリエンジュの実が手の届く高さにたくさんなっていました。夏に来てみたら、花がたくさん見れるかもしれません。
(1)トガリツキミタケ
アカヤマタケに似た黄色いキノコ。傘のサイズは1.5cmくらい。アカヤマタケの黄色バージョンはアキヤマタケだと前に覚えたのですが、アキヤマタケは傘が尖らなかったはず。でもこのキノコは山なりに尖っています。
ひだはやや白っぽく上生~離生。たまに枝分かれしています。密でも疎でもない密度。
柄はひだより少し濃く、傘とほぼ同じ黄土色で、中空でした。
図鑑と比べると、傘が山型になっている以外の特徴はアキヤマタケと一致。類似しているツキミタケとキヤマタケはそれぞれひだが湾生~上生、垂生なので違うと思います。
またイッポンシメジ科のキイボガサタケも雰囲気は似ていますが、中央にもっとはっきりした突起があるので違います。
ネットで調べると、アキヤマタケは「円錐形ないしは饅頭型からほとんど平らに開き」とあるので、円錐形バージョンだと考えれば、アキヤマタケであるといえそうです。
(追記 : その後、トガリツキミタケという種類があることがわかり、傘の形、ヒダが離生である点など一致しました)
(2)クサウラベニタケ?
傘の中央ず膨らんでいて、光沢があるイッポンシメジ科っぽいキノコ。傘の色は薄い褐色、サイズは4~5cm。
柄は灰色で光沢があり、縦に線が走っています。縦に裂いてしまったので、少しわかりにくかったですが、おそらく中空。
ひだはやや密で、薄茶色。赤みを帯びているともいえます。
ひだは直生に見えますが、拡大してよく見てみると垂生か湾生ともいえそう。
厚生労働省のサイトのクサウラベニタケの写真にやや似ています。名前のとおり、成熟するとヒダがピンク色になり、柄は、絹のような光沢があり、比較的細く、縦スジがあり、中空のものが多いとされています。特徴が一致。
しかし、クサウラベニタケの特徴のひとつである、ひだがギザギザになっているという点は見られません。ただ、クサウラベニタケも細かく分類すると種類が多いそうなので、必ずしもこの特徴があるわけではないのかも。
クサウラベニタケやイッポンシメジなどは、手持ちの図鑑ではヒダは「やや疎」となっていましたが、ネット上ではWikiも含め「やや密」となっていることが多いです。
わたしは後者に見えたのですが、「やや密」と「やや疎」は観察者の主観が強すぎるので、どちらも信頼しないほうがいいでしょう。「密」や「疎」と書いてある場合だけ信用しています。
また、片方の図鑑はトドマツ林に出るキノコだとしていて、もう片方はミズナラなど広葉樹林に出るとしているのも謎。Wikiではかなり広範囲の広葉樹林、針葉樹林の両方に出るとされていました。
柄が中空に思えたので、クサウラベニタケを疑っていますが、他のイッポンシメジ科の可能性もあります。普段あまり見かけないキノコなので、経験値が不足。
(3)シロカラカサタケ?
真っ白なまんじゅう型のキノコ。幼菌を裏返すとハラタケに似ていますが、ひだまでほぼ真っ白です。
傘のふちに条線はないので、シロツルタケではなさそう。柄にささくれやつばは見られません。
ひだは白で密、上生~湾生。一昨日、公園でも見た白いアガリクスことシロカラカサタケかなと思いましたが、どうも違う雰囲気。
近くに成菌もあったので、観察してみました。傘は平らに開いていました。
傘はほとんど白で、中央部分だけやや褐色。ふちにうっすらと放射状の条線があるような気もします。
柄は長く、途中にツバの痕跡のようなものがあり、根元はL字に曲がっています。
ひだはほとんど白ですが、やや褐色に変色しています。ほぼ直生。柄は中実でした。
(4)コクサウラベニタケ?
よくわからない小さなキノコ。傘は3cmくらい。
多少、白い膜に覆われているかに見える傘。地色は肌色から褐色。
上の1つ目の写真のほうは、横から見ると、傘はほぼ平らに開いていました。
ヒダはやや赤みを帯びていてやや密で、上生か離生。
柄は白っぽい繊維状で、縦に裂けやすいようです。内部に細い空洞があり、中空といえそうです。
ヒダがピンク色を帯びていることや、縦に裂けやすいこと、ヒダが上生していること、全体の形や色合いからして、もしかするとこれもクサウラベニタケ? ただし小さいのでコクサウラベニタケかもしれません。
(5)アカヒダワカフサタケ?
これまた同じようなキノコ。現地では別のキノコに見えたのですが、改めて写真で見ると、(2)のクサウラベニタケらしいキノコが反り返る前の状態に見えます。
傘はまんじゅう型で黄土色。ふちは白くなっていますが、ツバなどがついていた形跡はありません。大きさは3cmくらいですが開くともう少し大きくなりそうです。
裏を見ると、これもピンク色がかったヒダで、やや密です。後で半分に裂いた写真では上生に見えますが、この写真では湾生に見えます。
柄は白く光沢があり、縦に条線が入っていて、ねじれており、クサウラベニタケやイッポンシメジに似ています。
縦に裂けやすい特徴も同じ。しかし柄の断面には褐色の組織が詰まっていて、中実ではありませんでした。髄状?
今ひとつクサウラベニタケっぽくないので、もう少し調べていたら、ワカフサタケの仲間ではないか、という線が浮上。ここの写真のワカフサタケの断面はよく似ています。
また、ヒダがピンクみを帯びていることからアカヒダワカフサタケかと考えました。ひだの外周部は赤みを帯びない点も似ています。
しかし、柄に光沢があり、縦に条線が入っていてねじれている点は、イッポンシメジ属っぽい気もするので、別のキノコかもしれません。
(6)ハタケシメジ老菌?
林内草地に束生して大量に生えていた謎のキノコ。一番近い木はミズナラ。
傘の大きさは10cmくらい、平らに開いている、色は褐色で中心部のほうが濃い。ふちに条線ではないものの、放射状の模様があるといった特徴。
束生しているので遠目にはナラタケっぽく見えたのですが、鱗片も条線もないので違います。
裏返してひだを見てみると、やや密でクリーム色。柄は傘と同じ褐色。
何のキノコが謎だったのですが、帰宅後、写真を見比べているうちに、(9)と同じハタケシメジの老菌ではないか?と思い当たりました。
ハタケシメジの特徴の一つである、柄が傘との境目で白くなる、という点が写真に写っています。また、ヒダが白色からクリーム色であり、赤みを帯びないこともハタケシメジの特徴。
老菌ではあるもののヒダはギザギザになっておらず、クサウラベニタケを除外できます。
断面。ヒダの幅が狭く、直生~やや垂生、柄は中実。(9)で撮ったハタケシメジの断面とそっくりです。
カキシメジの可能性も考えましたが、もっと色が赤みを帯びているはず。ネズミシメジなら、柄が白いはず。
断定はできませんが、ハタケシメジ老菌のような気がします。
(7)コキハダチチタケ?
ミズナラの近くに単性していたチチタケ属。
傘は3cm、傘と柄の色は肌色、環紋はなし。
ひだは傘と柄より、少し薄め。乳液は白。柄は中実。
すぐわかりそうでわからないのがチチタケ属。図鑑と照らし合わせたところでは似ているのはコキハダチチタケ。
特徴は、傘は3~6cmで汚桃色、無環紋、広葉樹林生、柄が傘と同色で、ひだは白から淡肉桂色に変色。乳液は白。
でもネット上にも画像が少なく、本当に似ているのかどうか不明。
海外wikiのキハダチチタケの写真は、傘の色合いや質感が今日見たキノコによく似ています。北海道にはキハダチチタケがなさそうだし、小さくて無環紋なので、コキハダチチタケかな、となります。
(8)チャナメツムタケ?
地面から大量に生えて束生していたキノコ。これも束生だからか、一見ナラタケに見えましたが、鱗片も条線もありません。
かなり老菌と見え、全体的に褐色。傘の色は中央が濃く、全体に褐色の細かい繊維くずみたいなものがついています。
横から見ると、傘はほぼ平らに開いています。ひだは褐色で密、直生。
柄は下のほうが色が濃く、中ほどに細かい白いささくれがあります。
縦に裂いたときは、内部は中空であるように見えたのですが、折ってみたところでは中実に見えました。どっちなのかよくわかりません。ここのサイトに断面写真が載っていますが、老菌では中空になっているようです。
束生している株をまるごと見てみると、どこか既視感が…。
これは以前見たチャナメツムタケの老菌に似ているのでは? しかしその時見たものよりずっと古そうです。
ところが、改めて調べてみると、チャナメツムタケは束生ではなく、単生~群生でした。ということは以前見たチャナメツムタケ老菌だと思っていたものも違うものだったのかも…。
しかし、このサイトの説明を見ると、「株になっていることも多く、近くに数個ある場合は、1つ引き抜くと一緒に株ごと引き抜けることが多い。柄は長い」とあり、地中の埋没木に束生し、地上では単生・群生であるかに見えるということらしいので、やっぱりチャナメツムタケかも。
他に、少し特徴が似ていて、束生するキノコとしては、オオワライタケ、クリタケモドキなどがありますが、どれも材上で出るキノコで、柄のささくれはありません。
(9)ハタケシメジ
上のキノコのすぐ横に生えていた束生キノコ。一番近い木はヤナギ類。一度も実物を見たことがないにも関わらず、もしかして有名なハタケシメジでは? と思いました。
図鑑やネットでハタケシメジを見たとき、こんないかにもキノコっぽい特徴のないキノコなんて絶対にわからないだろう、と思っていたのですが、キノコ観察の経験値を積むにつれ、意外とこれに似たキノコがないことがわかってきました。
傘は薄い褐色、つまり淡褐色。放射状のかすれた線が入っていて、中心部は粉をふいたように白くなっています。傘のふちは部分的に割れていて、白く厚い肉が見えています。
上の株は傘がかなり開いて色も薄くなっていましたが、すぐ隣にもっと若い株が。傘の色はもっと濃い黒褐色、傘の形はまんじゅう型。
まだキノコ観察に慣れていないころ、ハタケシメジをGoogle画像検索して、こんなに傘の色や形が変わるなんて見分けられない、と思っていましたが、不思議とわかるようになるものです。
小さいほうは、もしハタケシメジだとしたら食べてみたかったので、一番傘が大きく開いているものを採って、観察してみることにしました。
ヒダはやや傷んでいましたが、白といってよいでしょう。ハタケシメジのひだは白~灰褐色で密なので、一致しています。
もしヒダの色がピンクを帯びていたら、毒キノコのクサウラベニタケやイッポンシメジの可能性がある、という知識はあったので一安心。
クサウラベニタケやウラベニガサというキノコについて知った時、なぜ傘の色ではなく、ヒダの色が名前になるんだろうと疑問でしたが、食毒を区別する重要な手がかりになることがあるんですね。
また、クサウラベニタケなら、ひだに細かい鋸歯があるらしいですが、それもないことがわかります。
さらに、上の写真から、柄に傘と同じ淡褐色の色がついていることもわかります。毒キノコのクサウラベニタケやイッポンシメジは、柄が白く光沢があるとのことなので区別点になります。
加えて、ここのサイトによると、ハタケシメジの柄は、傘との境目が白くなっているそうですが、その特徴も確認できました。
しかし、クサウラベニタケも、柄に傘と同じ色がついている個体もあり、柄と傘の境目が白い特徴が見られるような写真があるので、確実な手がかりにはならなそうです。
断面。肉は白で、変色性はない。ヒダの幅は狭く直生。柄は中実。いずれの特徴もハタケシメジと一致しています。柄が中空~髄状であれば、クサウラベニタケの可能性がありますが、中実なので違うようです。
ほかに、区別が必要な毒キノコとしては、イッポンシメジ、ネズミシメジ、カキシメジがあります。
イッポンシメジは、ハタケシメジと同じく中実ですが、根元が束生することはなく、その名の通り単生か群生、つまり一本ずつ分離して生える、ヒダはクサウラベニタケと同じく成長するとピンク色を帯びる、柄は白色という点で異なっています。いずれの特徴も見られなかったので除外できます。
ネズミシメジは傘の中央が黒色でとがり、柄は白色、おもに針葉樹林に出るということで、外見も環境も異なっているので、除外できます。
カキシメジは傘の色が黄褐色~赤褐色で、古くなると赤褐色の染みが点々と生じる、柄は上部が白く、下部はまだらな赤褐色とのことで、これもまったく外見が異なっているので除外できます。
ということで、いずれの特徴もハタケシメジらしいといえます。わたしが知らない酷似している毒キノコがない限りは食べても大丈夫そうです。
ハタケシメジの見分け方はここのイラストが一番わかりやすいと思いますが、いずれも一致して見えます。
以上のほとんどの特徴は、帰ってから写真と突き合わせて調べたので、明日、改めて採ってきて確認する予定です。
(10)ツチスギタケモドキ
林の外の草地に出ていた、ごく普通まツチスギタケモドキ。どこにでも生えるキノコですが、個性的な鱗片が魅力的でつい写真に撮りたくなります。
何気に、ほぼ傘が平らまで開いたツチスギタケモドキを見たのは初めてかも? 柄も立派なささくれで覆われています。
ひだは褐色に変化していて密で、直生。柄は中空でした。
2021/10/15金
昨日のハタケシメジを食べる。ハクチョウが続々と飛来
畑仕事に出かける前に、昨日のハタケシメジを採ってきました。夜のうちに大雨が降りましたが、無事でした。
すでに傘が開いていた大きな株のほうも、ヒダを見る限り十分食べることができそうだったので、すべて持って帰ってきました。
それぞれ、いしづきの汚れている部分を切って、柄が中実であることを確認。柄の側面に傘と同じ色がついていることも確認。
ヒダが赤みを帯びておらず、ふちがギザギザになっていないこともルーペで確認。
香りも確かめましたが、シメジ特有の香りというのがわからないので、判断材料にはならず。普通に美味しそうな菌臭でした。
その後、塩水に漬けて虫出しし、茹でて一切れ食べてみましたが、数時間経っても腹痛などはないので、大丈夫だろうと考え、鍋に投入。
ちょうど畑で白菜が採れ始めたので、ハナイグチ、ムキタケなどと一緒に煮込み、美味しいキノコ鍋になりました。
肝心のハタケシメジの味は…、美味しいことは美味しいけれど、普通にスーパーで売っているキノコですね。現代人の贅沢な食生活のせいで、感動は薄かったかも…。
でも、ハタケシメジは道端や公園、畑などにも生えうるキノコで、今後も見かける機会があると思うので、この機会に見分け方を習得できてよかったです。
農家の仕事は、トマトのビニールハウスの解体でした。いつもの服装で作業していたら、非常に寒く感じられて、冬が近いのを感じました。もう朝方はマイナス気温になっているから当然か。
作業中、遠くからハクチョウの鳴き声がたびたび聞こえ、ときどき頭上を群れをなして飛んでいくのを見れました。晩秋の風物詩です。
ロシアの気温を見てみると、極寒で知られるサハ共和国などはもうマイナス二桁でした。ハクチョウたちも急いで南下してくるはずですね
10月後半はキノコも減って書くことが減ると思いますが、今月も日記が長くなってきたので、前後編で分割したいと思います。
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