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もくじ
2022/02/01火
自然の中にいる時だけ体調がいい理由がわかったのでメモ
午後、雪かきで汗をかいた後、スキーに出かけるものの、ストックで地面を突いた時に左腕を痛めてしまい、あまり滑ることができず。
さて、引っ越してきてからこのかたというもの、体調が周囲の環境によって変動するのを実感してきました。
常に体調が良いわけではなく、屋内にいる時、および都市部にいる時は体調が悪く、以前の慢性疲労状態に近くなることが多いです。一方、自然豊かな公園にいる時や森にいる時は元気になります。
こうした環境による体調の違いは、注意力とドーパミンがオンになっているかオフになっているかで説明できると気づきました。
これは、特に新しい見解ではなく、何年も前から分かっていた理論に基づく考えです。しかし、思っていたよりもシンプルにまとめることができると気づいたので、ここにメモしておきます。
(1)1つ目の状況は、屋外の自然の中にいる時です。そのような場面では、とても体調がよくなりますが、これは自然の癒やし効果とか、自律神経の調節効果といった観点に頼らずとも説明が可能です。
屋外にいる時、特に森にいる時は、周囲の環境に自然と注意を向けています。たとえば、植物、足元の地形、景色、鳥のさえずり、動物の気配などに注意を向けます。
注意を向ける動機は恐怖ではなく好奇心です。周囲の刺激を不快に感じることはないので、意識から締め出そうとすることはありません。言い換えれば、解離が起こって意識がシャットダウンされることはありません。
意識から締め出すどころか、その逆で、最大限の注意を向けます。たとえば植物をじっくり、穴が開くほどルーペで観察します。鳥のさえずりを一瞬も聞き漏らすまいと耳を傾けます。最大限の注意を向けることができる環境です。
好奇心に導かれて健全な注意を周囲の環境に向けるので、注意力、意欲、動きに関わる神経伝達物質であるドーパミンが自然と分泌されます。そのため、思考は明晰で、体は軽く、意欲に満ちあふれて、「元気だ」と感じることができます。
(2)2つ目の状況は、屋内にいる時です。そのような状況では、あまり体調はよくありません。これも注意力とドーパミンから説明が可能です。
家の中にいる時は、家具や壁などに注意を向けたりはしません。ルーペで観察するようなことはもちろんありませんし、物音を聞き漏らすまいと耳を傾けることもしません。
もし、意識して注意を向けるなら、ホコリが気になったり、電子音や機械の音にイライラしたりしてしまいます。
周囲の環境に注意を向けるなら不快になるだけなので、無意識のうちに刺激をシャットアウトすることを選んでいます。言い換えれば解離が起こっており、意識がオフラインになっています。
注意を抑制するということは、当然ドーパミンもうまく流れなくなるということです。頭はもやがかかり、体はだるく、意欲は乏しくなります。
しかし、屋内でも、趣味やゲームなど熱中できるタスクがある時には、最大限の注意を向けることができます。なにかに熱中しているとき、つまりフロー状態や過集中の状態にあるときは、頭は冴え渡り、体の辛さも忘れることができます。
それで、屋内にいる時は、ふだんは無気力で体調も悪く、好きなことに没頭するときだけ過集中するというサイクルが生まれます。
(3)3つ目の状況は屋外の都市にいる時です。同じ屋外でも、この状況では体調は良くなりません。
都市部では、周囲にから来る刺激のほとんどが不快です。人混みの雑踏や、電柱やアスファルトの風景や、排気ガスや照明に注意を向けたいとは思いません。もし意識的に注意を向ければ、圧倒されてパニックになってしまいます。
都市に住む現代人は、誰もが無意識のうちに、そうした刺激をシャットアウトし、意識から締め出すことを選んでいるはずです。つまり軽度の解離が生じています。その代わりにスマホや音楽に夢中になることで、意識を保っているものです。
周囲の環境に注意を向けるとしても、純粋な好奇心からそうすることはまれです。たとえば都市を歩く人は、自動車に注意するはずですが、好奇心からそうしているのではなく、身の安全のため、恐怖心から注意を向けています。
恐怖心や警戒心が働いていると、リラックスできず、闘争・逃走反応や、凍りつき・擬死反応(不動状態)が引き起こされます。凍りつき・擬死反応が起こると、ドーパミンが流れることはなく、体は重くなり、意欲はなくなり、疲れ果ててしまいます。
以上のように、3つの状況による体調の変化は、ドーパミンと注意の観点から説明できます。
まとめると、周囲の物に健全な注意、すなわち好奇心を向けられる環境であれば、ドーパミンが自然に流れ、意識は研ぎ澄まされ、体の動きも滑らかになります。
しかし、周囲の物が不快で意識から締め出したかったり、恐怖心から病的な注意を向けざるを得ない環境では、ドーパミンが流れず、不動状態が引き起こされ、解離が生じます。意識はぼんやりとし、体は重く無気力になってしまいます。
このような説明をメモとして残しておこうと思ったのは、自分の体調の変化をかなりシンプルに説明できるからです。
自然の中にいると体調が良くなることには、自然のもつ既知の、あるいは未知のさまざまな健康促進効果が影響している可能性はあります。たとえば、自然界の美しいフラクタルのデザインや、フィトンチッドの香りなどが健康に良いのは確かでしょう。
しかし、それらは「好奇心を引き起こす、不快ではない刺激」とひとくくりにまとめてしまうことができます。そのような心地よい刺激にあふれた環境にいるなら、ドーパミンが自然と流れるので、体調がよくなるのです。
……と、このように書いていて、これは何年も前、つまり引越しするより前の頃、自分が理解していたことをちょっとばかり言い換えた内容にすぎないことに気づきました。改めて文章化しなくとも、もっと権威ある文献を引用してまとめた自分の記事がどこかにあるでしょう。
オリヴァー・サックスが「意識の川をゆく」で書いていたこのエピソードを思い出しました。
私は似たようなテーマでよく講演するが、良かれ悪しかれ、自分が前回言ったことを正確には思い出せない。以前のメモに(というか、一時間前の講演のためにつくったメモでさえ)目を通すのも嫌いだ。
前に何を言ったか意識的な記憶がないので、毎回あらためて自分のテーマを見つけ、それはたいがい自分にとってまったく新しいものに思える。
こうした忘却は、自己剽窃につながることもある。気づくとフレーズや文章全体を新しいものであるかのように写していて、それが純粋な忘れっぽさで度合いを増す場合もある。
自分の古いノートを見返すと、そこに略述されている考えの多くは何年も忘れられ、そのあと新しいものとして復活し、改変されていることに気づく。そのような忘却は誰にでも起こっているのではないだろうか。
そしてとくに物書きや絵描きや作曲家にはよくあるかもしれない。創造するためには、記憶とアイデアを再び生み出して、新たな背景や視点で見られるように、そのような忘却が必要とも言える。(p112)
わたしも、最近の自分の体調の変化を観察した結果、以前に気づいていた事実を再発見したにすぎないようです。多少、説明する角度は変わっているはずですが、内容はほぼ同じことです。
新しくなった部分はというと、「好奇心」という表現のあたりだと思います。
昔、トラウマの本を読んでいたころは、「純粋な好奇心に導かれた探索行動」がトラウマを癒やすのに必要だと書かれている理由がよくわかりませんでした。そもそも、ずっと引きこもりだったわたしには、そんな経験がなかったからです。
しかし、森で好奇心に導かれて、周囲のさまざまなものを無限に観察するようになって、その重要さがわかりました。好奇心に導かれた注意と探索行動が、注意をシャットダウンする解離と正反対のものであることに気づきました。
そのような理解を含めて、ややアップデートしたのが今回の見解というわけです。本当は、改めて文献を引っ張り出してきて、体系的な記事にまとめれば素晴らしいのだと思いますが、今のわたしには、そこまでする気力がありません。
2022/02/03木
青空の森でオジロワシやエゾシカに出会う
ここのところ、疲れが抜けなくて外出がやや億劫なのですが、貴重な冬の晴れた日だったので、気力を振り絞って、森を散歩してきました。出かければ絶対いいことがあるのに、屋内だと体調が微妙なので、最初の一歩が険しい。
2月に入って、少しずつ力強さを取り戻しつつある陽光が、森の中にも差し込んでいました。
こういう日に、細かい雪の粒が木々から舞い落ちると、まるでダイヤモンドダストのような写真が撮れます。正確にはダイヤモンドダストは氷の粒なので別の現象なのですが、きらめく雪の粒の美しさは引けを取りません。
森の中からふと空を見上げると、なんて鮮やかな青空! そこを飛び交っている2羽のトビのようなシルエットが見えて、もしかしたら…と枝の隙間から観察すると、やはりオジロワシでした。
わたしが住んでいる場所は内陸ですが、真冬にはよくオジロワシが空を飛んでいるのを見かけます。冬にトビのようなグライダーを見かけたら、かなりの確率でオジロワシです。
2羽のオジロワシが飛んでいたはずなのですが、どちらもすぐ視界から消えて、どこかへ行ってしまいました。悠々とゆっくり飛んでいるように見えて、その実、驚くほどの速さで上空を滑空し、あっという間に消えてしまいます。
前回来たときから、また雪が少し積もって、スノーシューで斜面を登るのはかなり疲れました。何度ここを登っても、初動の辛さは和らぎません。しばらく歩くうちに楽になってくるのを知っているので、辛抱強く登ることができます。
1つ目の丘を超えたあたりで、エゾシカの新しい足跡を発見。勢いよく飛び跳ねたのか、まるで重機の跡のように雪がごっそりえぐれていました。スノーシューで歩いても、気をつけなければ足をとられて転びそうなほどの段差ができていました。
そのあたりまで来ると、さまざまな鳥の鳴き声が賑やかになってきました。小鳥たちは、姿さえ見えませんが、近くのカラマツに止まったヒヨドリは撮れました。飛び立った瞬間の姿。
前回、野生のエゾシカと遭遇したあたりに近づいたので、目を凝らしてみると、今日もいました!
でも前回よりさらに遠い位置で、お互いに同時に相手に気づいたので、すぐ警戒声をあげて逃げられてしまいました。少なくとも3頭の立派なオスのエゾシカがいたようでしたが、遠すぎてほとんど目視する間もなく、丘の向こうへ逃げてしまいました。
後を追ったらまた姿が見れたかもしれませんが、まだまだ斜面が続きます。エゾシカたちのように、韋駄天のごとく走ることはできません。あれほどの筋力も体力もないので、休み休みゆっくり歩きます。途中で森の外の景色も眺めつつ。
やがて、やっと丘の頂上まで登ると、さっきのエゾシカたちが両足で飛び跳ねて走っていった跡が残っていて、地面がえぐれていました。さっき丘の下で見た足跡も、あの立派なオスのエゾシカたちだったのでしょう。
丘の向こうのカラマツ林には、もうエゾシカたちの姿はないようでした。遠くに走っていったに違いありません。
でも、面白い発見がありました。とてもはっきりとしたクマゲラの食痕です。近くまで見に行かなかったので、真新しいものかは不明ですが、穴の位置から、積雪の量によって食べる場所を変えているらしいことがうかがえます。
森のさらに奥へ続く、冬しか歩けない道にやってくると、地面に波型の模様がついているのに気づきました。
前回も見た模様で、わたしのスノーシューの跡に雪が積もったものではないかと推理しましたが、正解だったようです。うっすらとスノーシューの跡が確認できますし、ここを歩くのはわたししかいませんから。
そこで立ち止まって耳を澄ますと、無数の小鳥たちが忙しく飛び回っているのがわかりました。今の時期ならクマもいないし、疲れも和らいできたので、ゆっくり鳥たちを観察しようと思ってカメラを向けました。
森の小鳥は撮るのが難しいので、そんなに多くは写せませんでした。下の写真は何の鳥でしょうね。羽の色からゴジュウカラ?と思っていましたが、後で確認すると、頭が黒いようなので、ハシブトガラのような気がします。
次の写真もやはりハシブトガラ(もしくはコガラ)でしょう。丸々としたとても可愛らしい姿です。
と、ここまで撮ったところで、まさかのカメラのバッテリー切れ! 流氷を見に行った日から充電していませんでした。しかも、モバイルバッテリーも忘れてきたという痛恨のミス。情けなくて笑うしかありませんでした。
せっかく、こんないい天気の日に、こんなに頑張って森の奥までやってきたのに、さてどうしたものか。カメラなんてなくても、マインドフルに身一つで大自然を楽しめばいいのでは?
それは確かにそうなのですが、もしこれから珍しい生き物にでも出会って、シャッターチャンスを逃してしまったら、それはそれで長く後悔してしまいそう。
ちょっと悩んだ末、今日は引き返すことにしました。もともと疲れが残っていましたし、これから用事もあるので、あまり無理をするわけにはいきません。森の奥地へ進むのは、万全の時にして、今日は雪原を歩いて引き返すことにしました。それもまた楽しいのでよかろう。
帰り道は、青空の下の雪原の雄大な景色を楽しみながら、あれこれと考えながら歩きました。
森を歩いていると、思考が非常にすっきりして、まるで霧が晴れていくようだと感じました。わたしの場合もブレインフォグは、近年コロナに関係して取りざたされているものと違って、解離や離人症から来ていると思っています。
だから家にいると頭がぼんやりしてくるのに対し、大自然の中を歩いていると、どんどん思考が晴れてきます。それは一昨日書いた内容で説明できます。
歩いているうちに、考えがまとまって、一昨日書いた話を記事にまとめられるのではないか、という気持ちになりました。
「感覚が鋭敏なHSPで良かったと今だから言える理由」なんて記事を書くのはどうでしょうか。かつては足かせになっていた、感覚の鋭敏さが、今はどれほど役立っているか、という話です。
(ここでいうHSPとは、提唱者の定義どおり単に感覚が敏感であることを指すのであって、昨今のさまざまな当事者たちの互いに相反する論議とは無関係であることを明記する必要はある)
たとえば、この森で野生のシカと出会ったり、マイナス25℃の朝にクマゲラを見つけたり、夏に足元の極小の樹木であるウメガサソウに気づいたり、絶滅危惧種のランを見つけたりしたことを振り返りつつ。
歩いているうちは気持ちが高揚して、すぐにでも、書きたいという思いに駆られていました。でも、帰宅したら、最近そんな記事ばかり書いているので、ただの焼き直しになるだけではないか、という気持ちになりました。
実体験のエピソードとか、植物の写真や野生動物の動画を交えて書けば、面白い記事にはなるでしょう。でも、わざわざ時間を割いてまとめるべきか、というと疑問符がつきました。よほど新しい着想があるのでもなければ、まだ書くには至らないかもしれません。
2022/02/04金
マヒワの群れ、野生のエゾシカ、ハシドイの葉芽と花芽
昨日ほど天気はよくありませんでしたが、今日も晴れ間がのぞいてはいたので、昨日行かなかった森の最深部までの道のりを再度チャレンジすることにしました。
やはり森の奥まで登っていくのは骨が折れますが、昨日つけた自分の足跡があるので多少は楽だったかもしれません。
途中、いつもハシブトガラが群れている高いカラマツ林の樹冠に、今日も多くの小鳥が集まっていたので、ひと休みついでに写真を撮って観察してみました。撮っているうちに、どうもカラ類ではないかもしれない、と気づきました。
ちょうど真上で群れていたので、下から撮ってみたところ、なんと鮮やかな黄色! 冬場にこの体色をもつ鳥は一種類しか知りません。マヒワです。上の写真のまだらな腹部の羽ばたく鳥はマヒワのメスだったようです。
頭に黒い帽子をかぶり、あごひげがあるような模様はハシブトガラと共通しています。でも、この鮮やかな黄色さはマヒワにしかみられません。カラマツの種子か冬芽を、せっせとついばんでいたのかもしれません。
毎年見る鳥なので、珍しくはないでしょうが、今冬は初めての目撃でした。他のアトリ科と同じく、春が近くなってから見ることが多いので、今年も冬の折り返し地点を過ぎたということなのかもしれません。
昨日雪原に出たポイント。たくさん足跡がありますが、この中のどれかは、わたしの足跡。ほかはシカやテンなどの野生動物です。
今日も太陽の光が差し込んでいたので、ダイヤモンドダストのように見える、風で舞い散る雪の粒を観察できました。昨日ほど鮮明ではありませんが、いつ見ても美しいものです。本物のダイヤモンドダストは朝早く起きないと見られないので。
さらに進んで森の奥へと続く道の入り口あたり、昨日カメラの電池切れになった場所では、また丸々としたハシブトガラ(もしくはコガラ)がたくさんいました。
そして、今日は準備万端に到達できた森の奥地の風景。しばらく立ち尽くして、じっくりマインドフルに味わいました。果てしない空を漂う雲の舟、対面する人里離れた雪山。
ここは冬のあいだ、人が誰も足を踏み入れない雄大な自然です。今ここにいる人間は、間違いなくわたし独りだけです。あとはすべて野生動物たちの王国。そう思うと、世界の広さと人間のちっぽけさに畏怖の念を感じることができました。
そこからは下り道。今日も野生のエゾシカに出会えるだろうか、とわくわくしながら、野生動物の足跡だけが続いている雪を踏みしめます。
大木の幹の上のほうに貼り付いていたコケと地衣類が魅力的だったので撮ってみました。あいにく、木の下のほうには立派な地衣類は見つかりませんでした。
そうしているうちに、谷を挟んで向こう側の雪山の斜面に何かいることに気づきました。野生のエゾシカです。中央部分を拡大してみると…
このとおり、向こうもこっちをじっと見つめていました。お互い気づいたのはほぼ同時だったかもしれません。谷を挟んでいるので、非常に距離があり、60倍望遠でもここまでしか拡大できません。
写真を撮らせてくれたのはこの一枚だけで、すぐに立ち去ってしまいました。
そこからしばらく下っていると、右手にあるトドマツの若木の林の中で、大きなシカがガサゴソっと音を立てて逃げていくのにも遭遇しました。こちらはかなり近い距離でしたが、向こうのほうが気づくの早く、まったく写真は撮れませんでした。
先月ここに来た時も撮った覚えがあるヤドリギの実。ドライフラワーのガーランドのように吊り下がっています。
まだこんなに実がたくさん! 周囲のヤドリギも同じように赤い実をたわわにつけていまた。ヤドリギの実は他の木の実と比べるとあまり味がよくなかったりするのでしょうか。まだまだ冬は続くので貴重な食糧になりそうです。
エゾシカが去年たむろしていた小川沿いまで降りてみると、今日もエゾシカの足跡だらけでした。群れが来ていたようです。
もしかすると、上でわたしがのんびりしている間に、気配を察知して逃げたのかもしれません。さっき対岸の斜面にいたのがしんがりを努めていたのかも。
小川の周囲のヤナギには、今年もエゾシカの樹皮剥ぎ跡が見られるようになりました。先月の時点では全然ありませんでしたが、雪かさが増えて、徐々に食糧が減ってきたのかもしれません。それでも去年よりはずっとましです。
エゾシカが食べたハシドイの頂芽も見つけました。てっぺんだけ選択的に食べるのはかじりやすいから?
しばらく歩くと、木立の奥からこちらを見つめるエゾシカがいることに気づきました。今日出会った3頭目の野生のエゾシカです。写真の中心を拡大していくと…、
木立の中央に焦げ茶色の影。さらに拡大すると…、
じっとこっちを見ています。「なんやあいつ」とでも言いたげな顔ですね。警戒している表情というより、物珍しげな感じ。冬だから葉っぱが少なくてエゾシカがいることに気づけましたが、きっと夏でも野生動物たちに人知れず監視されているのでしょうね。
帰り道の林道。たくさん黒い実がなっているような木を見つけました。もしかしたらキハダの実ではないか、と思って望遠レンズで観察してみましたが、冬芽の形状が全然違う。これはヤチダモ?
さらに低い枝を拡大してみると、やはりヤチダモでした。おそらく今年の雄花の残骸。前からしばしば見つけて気になっていたのですが、ヤチダモの中には、少なくとも翌年まで雄花の残骸が残ったままになる木があるようです。
道中に生えているハシドイの芽。去年の冬にも書きましたが、ハシドイの芽には、赤みを帯びた巨大なもの(ややニワトコに似る)と、黄色い小さなものの二種類があります。当初は違う樹種かと思ったほど大きさと色が異なります。
赤みを帯びた巨大な冬芽は低木状のハシドイの枝につくことが多く、黄色い小さな冬芽はもっと成長して樹木になったハシドイの枝にみられるように感じていました。その点からしても、一見すると違う樹種であるかに見えました。
でも、それら大きな芽と小さな芽が、同じ木に同居しているのを発見しました。ということは別種ではなく、小さいのは葉芽、大きいのは花芽なのではないか、と思い当たりました。
大きいほうの芽。
小さいほうの芽。もっと黄色みが強いこともあります。
ハシドイも他の樹木と同じように、花は上のほうにつくのかもしれません。だとしたら、小さなハシドイだと花芽を観察できますが、大きく成長したハシドイだと、地上から観察できるのは細い枝の葉芽だけになるのでしょう。
ネットで調べても、そんな話は見つからなかったので、これが真実なのかはわかりません。でも、今のところ、自分の中ではもっともすっきり来る結論です。知識が増えてくると、少しずつ自然界の謎がわかるようになってくるはずです。
2022/02/05土
雪原を歩き、クロミサンザシの冬芽や実を見る
今日は曇り。にもかかわらず、同行者を案内して、また昨日と一昨日出かけた森に行くことになりました。
今日もいた丸々としたハシブトガラ(もしくはコガラ)。いつ森にいっても、ハシブトガラとヒヨドリだけは、確実に見つけることができます。
かなり甲高く響くキツツキの音がして、探してみたところ、おそらくアカゲラだったようです。同行者は目視できたようでしたが、わたしは角度が悪かったのか、たまに飛び交う影を見ただけで、姿ははっきりと見つけられませんでした。
エゾシカが樹皮剥ぎしたノリウツギ。森の手前のほうまで樹皮剥ぎしに出てきているのが意外でした。
森の奥には向かわずに、雪原を通って下ることにしました。遠くの林に消えていく野生のエゾシカを目撃できたので、後を追ってみたら、樹皮剥ぎされたヤナギをたくさん発見できました。
そのエゾシカたちに樹皮剥ぎされていたヤナギのつぼみ。冬芽の芽鱗がとれて、白いつぼみがあらわになっています。秋でも真冬でも芽鱗がとれれば白いつぼみがのぞくものですが、この光景をみると春が近いような気分になります。
まだ少しだけ実が残っていたクロミサンザシ。先月ここに来た時は、大量に実が残っていたのに、もうこんなに少なくなっていました。まったく実が残っていない木もありました。
実がなくなったといえば、家の前のナナカマドもすっかり実がなくなりました。この前来ていたツグミの群れが食い尽していったようです。ツグミたちは嵐のように食べ尽くして、どこかへ去っていきました。
地元で暮らす鳥からしたら迷惑な話だなぁ、と思うのですが、人間の勝手な思い込みなのかも。動物たちは、人間のようにがめつくなく、大地の実りを他者と分け合うことに何の抵抗も感じていないかもしれません。
昔の人たちが快く旅人をもてなしたように、旅するツグミたちに食べ物を分け与えるのは当然だと考えているのでしょうか。それもまた人間の勝手な思い込みで、実のところ鳥たちは本能的に賢く行動して、共生しているだけでしょう。
最後に体調についてメモ。
朝起きた時からかなり疲れていて、体のあちこちが痛く、寝ても疲れが取れず、まぶたが痙攣しているなど調子が悪いです。
まぶたの痙攣は、毎冬、雪の眩しさのせいで一度は発症してしまいます。サングラスをかけていても防ぎきれません。例年は冬の始めごろに発症するので、みこの時期になるのは異例です。治るまで一週間かそれ以上かかるでしょう。
体調が悪いので、どこも行きたくないのですが、仕方なく家の前を雪かきして、あまり気乗りしないまま森に出かけては、かなりの距離を歩いて帰ってきます。動き始めれば体調不良はあまり気にならなくなります。
帰ってくると、やはり疲れが出てしまい、夕方ごろ一眠りして、また寝覚めは非常に体調が悪くなります。それでも夜に雪道サイクリングに出かけ、かなりの距離を走るというのが、ここ数日続いています。
つまり、これってもしかしてオーバーワークなのでしょうか。しんどい、辛いと言いながら、一日に三度も外出しては、そこそこの負荷の運動をこなしているわけですから。相変わらずバランスをとるというのが苦手です。
2022/02/07月
公園のゴジュウカラのさえずり
昨日はかなり体調が悪く、光がまぶしかったり、まぶたが痙攣したり、寒かったりといった様々な症状が現れていたので、あまり無理しませんでした。普段なら、この体調不良が一週間以上続いても不思議ではありませんが、幸いにも今回は軽く、早めに治りそうでした。
これらの症状がどういうわけで起こるのかは不明ですが、オリヴァー・サックスが「サックス博士の偏頭痛大全」で書いていたところの、広い意味の偏頭痛前駆症状にあたるのかもしれません。
晩年の「意識の川をゆく」で補完されていたように、こうした感覚は、「何かが変だ」と感じさせるものであり、体のホメオスタシスが乱れていることを示唆するものなのでしょう。前駆症状に気づいて、早めに対処すれば、本症状を予防できる場合もあるはずです。
少なくとも、以前に出でいた周期的な発熱などの重い症状は鳴りを潜めているので、全体として症状が軽くなっていることは間違いないようです。それでも「何かが変だ」と感じたときは、無理せず立ち止まるのがよいでしょう。
さて、今日は無理せず、近くの公園をスノーシューで歩いただけでした。…と言いたいところですが、公園をほぼ一周したので、歩いた距離はかなりのものでした。でも無理にそうしたわけではなく、雪かふわふわでとても心地よかったので歩きたく感じたのです。
公園中の雪が、まるで生クリームのケーキの特盛りデコレーションのようになっていて、とても美味しそうでした。いえ、むしろ特盛すぎて、やや胸焼けしそうにも感じられました。
毎年、生クリームのような雪は見られますが、今年は例年より豪華に見えます。雪が多いわけではなく、むしろ少ないとはいえ、冬じゅう一度もプラス気温にならない優秀な気候のため、溶けなかったことが良かったのかもしれません。
大きな池のほとりのガマ。かなり種子を飛ばして、ほとんど軸だけになりました。
池の表面はもう雪に埋もれて見えず、キタキツネやエゾユキウサギの足跡が横断していました。わたしも歩けるかもしれないと思って、ストックで慎重に地面を確認しながら、水の上に踏み出しました。
しかし、数歩歩いたところで、ストックが氷を突き破って濡れてしまったので、これは駄目だと引き返しました。ここのところ、気温がマイナス2℃くらいまで上昇する日が多いですし、氷の分厚さが足りないのかもしれません。
公園でずっと鳴いていたゴジュウカラ。声だけは聞こえていましたが、姿を見ることができたのは、しばらく経ってからでした。トドマツのこずえの高いところで、威勢よくさえずっていました。
頭の毛をまるで冠羽のように逆立てて、よく通る声を響かせるさまは、まるで吠えるライオンのごとし。いつもカラマツなどの幹をハムスターのように走り回っているゴジュウカラと、とても同じ鳥だとは思えない雄々しさでした。
2022/02/08火
雪で埋もれた近所の小川
一日中吹雪いていて、屋外を歩くのは困難でした。家の近所の小川沿いを少し歩いただけです。
わたしより先に誰かが来ていて、隣の車から一直線にスノーシューの足跡が伸びていました。まだ帰ってきた形跡はなく、この雪の中、かなり遠くまで歩いていったようでした。
小川は雪にかなり埋もれていて、見るからに細くなっていました。かなり近づいて撮りましたが、川の上を歩かないよう気をつけました。大きな木やイタドリが生えている場所は陸地のはずです。
ずっと雪が降っているので、鳥たちの姿も全然見えませんでした。10分ほど歩いたかと思われますが、寒いしカメラも濡れるので、長居せずに帰ってきました。
ほぼ絶え間なく降っていたわりに、家の前の雪かきはさほど大変ではありませんでした。札幌では信じられないほどの雪が降り、交通が麻痺していると友人が言っていました。今年は道北では少雪傾向で、札幌や本州に流れてしまったようです。
2022/02/09水
久しぶりのシマエナガ
忙しい一日でしたが、ようやく夕方ごろ自由になったので、森に散歩に出かけました。空は晴れかけていて、時刻は夕方、ということで、鳥がたくさん見れるかなと期待していましたが、そうでもありませんでした。鳥の生態はまだよくわからない。
しばらく歩いていると、ジュリリジュリリとシマエナガの声が近くから聞こえてきました。去年も友人とシマエナガを見た、カラマツの若木の林にいるようでした。
シマエナガを探せ。
ここにいました。
経験上、成木より若木にいることが多いように感じるのですが、単に若木だと枝の位置が低く、目視しやすく声も聞こえやすいからなのかもしれません。
手前のトドマツ林に隠れて、遠くから撮影を試みたところ、久しぶりに可愛らしく飛び回る動画を撮れました。
でも、さらに大きく撮りたいと思って近づくと、わたしが近づいた分だけ、遠くにいってしまうのでした。シマエナガのパーソナルスペースの限界だったのかもしれません。
それからさらに歩いていると、広葉樹林の高いところにカラ類がいるのを見つけました。ちょっと面白い構図。枝が#のよう。
いつものハシブトガラかなと思って観察したら、ほかにもネクタイを結んでいる模様の鳥かいるのが見えました。ちょっと珍しいシジュウカラです。
その他、絶え間なくウソの鳴き声がしていて、たまにキツツキの音も聞こえるなど、鳥が全然いないわけではなかったのですが、ほとんど姿は発見できませんでした。
ようやくいつも歩いている森にたどり着いたころには、もう日が暮れかけていました。急に寒くなってきた感じもあったので、これ以上奥には進まず、引き返すことにしました。帰り道に見る森の夕焼けに心洗われる思いでした。
ふと森に巨大なキツツキの音が響き渡り、ちょうど帰り道の方角だったので、慎重に正体を確かめてみることにしました。音の大きさからしてクマゲラの可能性がありました。去年ここで鳴き声を聞いたこともあります。
何度か音がして、できるだけ音をたてずに近づいたつもりでしたが、まだ距離がある時点で、音がしなくなってしまいました。こういうことが本当によくあります。
ちょうど音がしていた場所あたりに来たとき、ヤマゲラらしき影が木を登っていくのが見えたので、音の主はそれだったのかもしれません。でも、それ以降ドラミングの音はしませんでしたし、一度も鳴かなかったので正体は不明のままです。
去年末に初めてクマゲラを見て、一度見れたのなら、また何度も見ることができるかもしれないと思いましたが、そう甘くありませんでした。ヒグマよりもレアなクマゲラ。次に見つけられるのはいつになることでしょう。
2022/02/10木
今日もシマエナガやエゾシカがいた
よく晴れていたので、こんな日は森歩きしないともったいないと思い、いろいろ予定があるにもかかわらず、多少無理して、森を一周してきました。
冬しか行けない場所も通りつつ、かなり運動強度のあるルート。しかし、冬も終盤のこの時期になると、数ヶ月にわたるスノーシュー歩きで体力がついているのか、それくらいなら問題なく楽しむことができます。加えて夜にサイクリングもできるくらいには。
途中、カラマツ林で、たくさん鳥が集まっていたので、のんびりバードウォッチング。今日もまたシマエナガを見ることができました。2日連続。相変わらず近づくと隣の林に逃げていきますが、望遠レンズの力で観察できました。
真っ青な空には上弦の月。
夕方が近かったので、そろそろ海原ならぬ雪原に沈みゆく太陽。
雪原で見かけた面白い足跡。凹んでいるのではなく、逆に盛り上がって浮かび上がっています。上から見るとウサギの足跡だとわかりますが、どうしてこんな形になるのだろう?
ウサギの足跡の周囲が体重で踏み固められるからでしょうか。そして最近の晴れ空の直射日光で、周囲の雪が溶けるかかさが減ると、踏み固められたところだけが残る? 全然違うかも。
けたたましく鳴いていたヒヨドリ。すぐ目の前の木に止まったので、たまには写真で撮ってみました。姿は美しく気品があるのに、騒々しさや数の多さで、「なんだヒヨドリか」とスルーしがち。
奥地に進む道には、わたしのスノーシューの足跡が残っていましたが、シカの足跡がまったく同じところを通って上書きされていました。人間の足跡だからといって、特に警戒するわけではなさそうです。もしかすると新しい足跡だと違うのかもしれませんが。
夏でも行ける最高到達点の丘の裏側の斜面。冬でないと入れないカラマツ林のエリア。去年も今ごろ立ち入っていた記憶があります。倒木も多く、雪が深い時期でないと、安心して歩けません。
今日ここを歩いてみたのは、キツツキの音がしたから。音の大きさからして、クマゲラではなく小型のキツツキに思えましたが、クマゲラの食痕が多い地帯なので、一応、様子を見に行ってみました。
結局、キツツキの姿は発見できませんでしたが、先日遠くから発見しただけだったクマゲラの食痕を間近で観察することができました。クマゲラの食痕は数あれど、ここまで全方位からボコボコに削られているものは初めて見ました。
樹皮が剥がれた黄色い彫り跡は遠くからでも目立ちましたが、それ以外にも、無数の穴が空いていることがわかりました。どの方向も大小の穴だらけで、クマゲラ以外のキツツキもこの木をつついているのかもしれません。
根本を見てみると、わずかながら、木くずが雪の上に落ちていました。今年も誰かが削りにやってきている証拠ですが、木くずの量が少なすぎるので、小型のキツツキかもしれません。クマゲラはもうこのあたりにはいないのでしょうか…。
いつものシカの溜まり場に向かう下り坂では、シカの群れの足跡はなく、単独行動のシカの足跡がまばらに続いているだけでした。やがて向かいの山の斜面に、オスのエゾシカが一頭いるのを見つけました。
シカのほうもわたしに気づいていて、そそくさと山を登って逃げていきました。さっきまで水飲み場にいたのかもしれませんが、わたしの気配を早々と察知して引き上げたのでしょうか。
去年はここでオスとメスの混合のエゾシカの群れがいましたが、今年はなぜかオスのエゾシカが数頭いる姿しか見かけません。
エゾシカたちの水飲み場について林道を引き返すころには、もう日が暮れて暗くなり始めていました。こんな時間帯でも、そんなに怖がらずに森を歩けるのは、今の時期ならではの貴重な体験です。
道端の湿地には、穴が空いて地面が見えている場所が数箇所ありました。動物たちが通っている足跡もあるので、掘り返したのかもしれません。黒い謎の小鳥が羽を休めていましたが、正体を判別する前に逃げてしまいました。
家の近くで見た夕日。残念ながらサンピラーにはならず。今年は見れないまま終わりそうです。
2022/02/11金
オニグルミを割ってみた
秋に採ったオニグルミの皮を剥いて、いざ殻を割って食べてみようと思ったのですが、全然割れません。水で湿らせてフライパンで炒れば割れ目ができるとされているのですが、なぜかうまくいかない。仕方ないので、専門の道具を購入しました。
クルミなんてくるみ割り人形でもあれば割れるのかと思っていました。でもネットで調べると、オニグルミは普通のクルミより殻が硬く、スタッドレスタイヤに配合されるほどだそうです。
そんなオニグルミを割るための道具がいくつか販売されていますが、ハサミ型のものは手が痛くなりそうだと思ったので、万力型のものを選ぶことにしました。
買ったのは、世界一硬いとされるマカダミアナッツ用のナッツクラッカーです。マカダミアナッツとクルミは形が違うのでうまくいくか不安でしたが、結論からいうと成功しました。でも、少しコツが必要でした。
このナッツクラッカーなら、どの方向からでも無理やり割ることはできますが、変な割り方をすると中身を取り出しにくくなります。
それでエゾリスがオニグルミを割るのと同じように、合わせ目に沿って、きれいに真っ二つに割るのが理想です。
しかし、ほぼ球形のマカダミアナッツと違い、オニグルミは縦に細長く、先端が尖っています。
最初は横向きに寝かせて割ろうと試みましたが、すぐに中心からずれてしまい、うまく合わせ目から割れないことがしばしばでした。
それで、縦向きにして割ることにしましたが、それに役立ったのが、なんてことはない金属のワッシャーです。
下の写真のように、ワッシャーをオニグルミの尖った先端にはめて土台にします。そして底面から割ると、ほぼ確実にきれいに割れました。
オニグルミを縦向きに固定するには、輪っか状のものがあれば、なんでも良さそうですが、非常に強い力がかかるので、金属製でないと割れると思います。同じ金属でも、立体的な構造の輪っかだとひしゃげてしまいました。平たいワッシャーを重ねて使うのがいいと思いました。
割るには力が要りますが、万力型なので、比較的楽です。たまに異常に硬いのがありますが、手袋をはめて取っ手をまわすと、手の皮膚を傷めなくてよいと思いました。
中に入っているクルミはあまり大きくありませんが、10個も割れば、一回ケーキを焼く分くらいは確保できます。そのくらいなら、さほど労力はかかりません。味は普通に美味しいです。
オニグルミの実は、毎年、近所の川沿いに大量になっているのを簡単に採ってこれるので、割れる手段さえ確保できれば、気軽に利用できそうです。
しかし、これほど硬いオニグルミを鮮やかに割ってしまうエゾリスはどんなマジックを使っているのでしょうね。その仕組みを再現できれば、もっと簡単に割れそうな気もするのですが…。
今季初オオワシ
昼から晴れていたので、前々から行こうと思っていた冬の宮の森に行ってみました。
夏は鬱蒼としたヒグマもいる手強い森ですが、冬に行ってみると、広葉樹が多いせいで、見通しがよく、こじんまりとした里山に思えました。気温はマイナス5℃くらいでしたが、北斜面なので日が当たらず寒く感じられました。
クマゲラがいることで有名な森だったので期待していましたが、鳥の姿は少なく、ゴジュウカラとヒヨドリの姿を見ただけ。ほかにカケスとコゲラの鳴き声を聞いたくらいでした。
もこもこの空飛ぶハムスター、ゴジュウカラ。
一番多く見かけたのはヒヨドリで、かまびすしくさえずっていました。面白かったのは、ヤドリギの実を食べている瞬間を観察できたことです。
くちばしにくわえると、放り投げるように上を向いて呑み込んでいました。動画のほうに写っています。そういえばジュラシックパークの恐竜もこんなふうに人間を丸呑みしていたような…。
しかし、森の中を歩いているとき、ふと空を見上げると、白い輝く尾羽のワシが頭上を滑空しているのを見かけました。白い尾からてっきりオジロワシだと思って写真を撮りましたが、後で確認してみると、なんとオオワシでした! 今年は見かけないまま終わるかな、と思っていたので嬉しい。
写真だとあまりわかりませんが、肉眼で見たときは、白い尾が神々しいまでに光り輝いていて、神話のフェニックスのようだと思いました。よく晴れた日だったので、太陽の光を透過していたのかもしれません。
雪で覆われた森は、遊歩道がどこにあるのか全然わかりません。しかも、道なき道を誰かが山スキーやスノーシューで歩いたような足跡があちこちにありました。それに惑わされて、まっすぐ頂上を目指すはずが、迷って大幅に回り道してしまいました。
でも、最近よく歩いているからか、大変ではなかったし、山頂のダイナミックな景色を楽しめたので、これはこれで良かったかも。
山頂から少し下ったところに、目的地の展望台がありのした。そこから見下ろす町並みは、相変わらずメルヘンチックなカラーリングで、北欧の町のようです。
人工物はあまり好きではないけれど、この風景は最高でした。人工物が悪いわけではなく、自然と調和するデザイン次第だということですね。
展望台のすぐ横にあった朽木。まるでチェーンソーで削ったような大胆な木くずが周囲に散らばっていました。でも、これっておそらく人工の木くずではなく、クマゲラが食べ散らかした跡では?
家の近所の森のクマゲラの食痕のまわりにたまに落ちている木くずとは量も大きさも全然違います。近所のは古いクマゲラの食痕にやってきた、他の小型キツツキのものだったのかもしれません。
さすがクマゲラがいるとされる森。残念ながらこの日はまったく気配がありませんでしたが、時間帯によるのかもしれません。朝早くなど、別の時間帯だったら、クマゲラを見れるのかもしれませんね。
帰り道は、適当に斜面を下るだけなので、とても楽でした。古い広葉樹林だけあって、奇妙な構造物をいろいろ見つけました。
まず巨大な木こぶ。恐竜の卵のようにも、大型キノコのようにも見えますが、近くから見てみると、おそらくただの木こぶです。
地域によっては、これでお椀を作ったり、工芸品に使われそうな面白い風合いに見えました。
続いて、かなり高いところが削られて、髪の毛のように露出している木。
地衣類などが付着しているのではなく、木そのものの繊維が削られて露出しているように見えました。いったいどうしてこんな状態になったのか想像もつきません。
サルノコシカケの上にある、モモンガやキツツキの巣穴? なかなか良い立地なのかもしれません。
ほかにも巣穴らしい穴がすぐ近くにありました。地面を見ると、他の木の下よりも屑が散らばっているように見えましたが、モモンガのフンらしきものはありませんでした。
もしずっとここにカメラを仕掛けておいたら、なにか写ったりするのでしょうか。
帰り道で見かけた道路脇にエゾシカ。いつものように何度も何度もエゾシカを見かけましたが、停車しにくい場所ばかりで、この一枚しか撮れませんでした。それでも、ごく身近に野生動物がいるだけで楽しい気持ちになれます。
さまざまな冬芽。シウリザクラ、ハクウンボク等
冬の宮の森は、寒いし町の物音が聞こえるし、鳥が多いわけでもないし、わざわざ長距離ドライブしてまで来るほどのものだろうか、と最初は思いました。でも、歩きながら見かけた道なる樹木の冬芽にすっかり心を奪われてしまいました。
ふだんわたしが歩く場所は、針葉樹の人工林が多く、あまり珍しい種類の広葉樹がありません。とりわけ、深山に生えるとされるようなレアな低木は皆無です。
しかし、この森は、見たことのないような冬芽を複数見かけました。にもかかわらず、ルーペを持っていくのを忘れたので、あまり写真の質がよくありませんが、いくつか載せておきます。
まず、低木のチューリップのような形の冬芽。芽鱗はなめらかな質感で、互生でした。
冬芽そのものは、知っている範囲だとツルアジサイに似ていますが、もちろんツル性樹木ではありません。ならエゾアジサイか、と言いたいところですが、エゾアジサイは芽鱗をもたない裸芽なので違います。今のところ正体不明のままです。
カツラの巨木で有名な森ですが、その周りを見てみると、
カツラの子供の若木が生えていました。蛇腹剣のような異質な雰囲気をはなつ重厚な枝です。
拡大してみると、ヤギの角やワシのカギ爪のように、内側に湾曲していて、迫力がありました。短枝には年輪のごとく節が重なりますが、10年くらいは経っていそうです。こんなに小さな若木で10年。巨木になるには何百年かかるのでしょう。
こちらはドロノキのような鋭い尖った冬芽をつけている若木。でも、こんな山間いにドロノキがあるはずもなく、おそらくシウリザクラではないかと思いました。この森は近隣では珍しく、夏にシウリザクラが数多く咲いていたからです。
ルーペを忘れてきたことが悔やまれますが、なんとか頑張って撮った写真。ネットで調べてみると、シウリザクラの冬芽と確かによく似ています。枝にサクラの仲間らしき点々があるのも、それを裏付ける手がかりです。
形こそドロヤナギの冬芽に似ていますが、ドロヤナギはもっと光沢がある印象。シウリザクラの冬芽はほのかな赤色に染まり、光沢の少ない和紙のようで落ち着いた印象です。
葉痕は半円形。図鑑の写真を見ると、半円形~楕円形のようだったので、シウリザクラで間違いないかと思います。
シウリザクラに関しては、一年目に図鑑を見て、冬芽の淡い色合いの美しさに感動して、ぜひ見たいと願っていました。気持ちが昂じて、ドロノキやシラカバなど全然違う冬芽まで、シウリザクラではないか、と日記に書いてしまったこともありました。
近隣ではシウリザクラやエゾノウワミズザクラは数が少ないため、観察する機会になかなか恵まれませんが、花が咲いているときにきちんと自生地を覚えておけば、こうして冬に見つけることもできます。
せっかくシウリザクラは発見できたのだから、エゾノウワミズザクラも、冬のあいだに冬芽を観察したいところです。すぐに見に行けそうな場所が2箇所くらい思い当たるので、近いうちに。
次は頂上付近で見つけたハンノキっぽい木の枝。
しかし普段よく見るケヤマハンノキのとは違い、冬芽の先端が尖っていました。このことから、奥山に分布しているミヤマハンノキだろうと考えました。
茶色い雄花序はいかにもハンノキっぽい雰囲気です。まだまだ小さくずんぐりとしていて、春までしばらくかかるのを感じさせます。
しかし、気になったのは実の形です。ハンノキだともっと丸みを帯びていないでしょうか。まるでミノムシみたいに、少し細長く、先が尖って見えました。ネットで調べても、ミヤマハンノキの実の形とは違うような…。
かといって、他のカバノキ科の仲間が当てはまるような気もしませんし…。カバノキ科のヤシャブシやシデの仲間は見たことがないのでわかりませんが、図鑑で見る限り違うような気がします。
最後にこれ、うぶ毛に覆われた小さな冬芽で、初めて見るものながら、ほのかなごく薄いオリーブ色がとても魅力的でした。図鑑と照らし合わせても正体不明でしたが、Google Lensで調べたところ、ハクウンボクではないかとわかりました。
特徴は、一箇所から複数の冬芽が重なるように出ていることです。どことなくゴクラクチョウカの花の構造にも似ています。かなりそっくりな写真を載せているブログがありました。
細い低木でしたが、樹皮はこんな感じ。去年1月3日に見たミズキの若木の樹皮と似ていると思いましたが、調べるとハクウンボクもこんな樹皮らしいです。
ハクウンボクとは初めて見る名前でしたが、北海道の樹木図鑑にしっかり載っていて、山中に生える落葉樹とされていたので、ここ広葉樹林の山に生えていても不思議ではありません。
エゴノキの仲間だそうですが、エゴノキは道南までの分布であるのに対し、ハクウンボクは北海道全体に分布しているようです。名前のとおり、白雲のような美しい花を咲かせるので、一度見てみたいものです。
この森では他にも、ミツバウツギやウリノキといった、やや珍しい広葉樹を夏に見かけています。だから探し回れば、もっと面白い冬芽をたくさん発見できたかもしれません。
家から遠いので、あまり気軽に遊びにくることができず、来ても長居できませんが、今日はすばらしい収穫がありました。つくづく自分は自然観察の中でも特に樹木の観察が好きなのだなぁと感じます。
2022/02/13日
広葉樹林の謎の地衣類の観察
一昨日の森に落ちていた地衣類。地衣類は成長が遅いので、剥がすのはどうしてもためらわれるのですが、珍しく地面に剥がれた状態で落ちていたので、裏側までじっくり観察できました。
一昨日はルーペを忘れてしまいましたが、持って帰ってきたので、改めて観察して写真を撮ってみました。地衣類は菌類と地衣類の共生体ですが、断片の雰囲気はワカメなどの海藻を思わせます。
表側。ミウラ折りのような段差がついています。種類がわからないのですが、このような模様がつくのはカブトゴケの仲間? だとしたら珍しいので嬉しいですが、新鮮なカブトゴケだったら、もっとレタスみたいな色のはず。
裏側。謎の白い斑点のような構造があり、肉眼でも確認できます。樹皮に付着するのに使われているのでしょうか。もしかして、これがヨロイゴケ科にみられるという盃点? 盃点だとしたら、ガス交換の器官と考えられているようです。
表面の拡大写真。細かいつぶつぶが見られますが、粉芽やパスチュールでしょうか。安易にコナカブトゴケ?と言いたいところですが、地衣類は複雑な上に全然知らないので多分違う。
粉芽っぽいでっぱりは大量についていますが、偽根やシリアと呼ばれる細い根っこやまつげのような構造は見当たりませんでした。
裏面、虫の卵が孵化した痕跡のようなものも残されていましたが、極小でした。
拡大すると網目状の繊維のようなものが走っているのがわかります。
これがいわゆるマキラと呼ばれる構造なのでしょうか。図鑑によると、マキラとは共生藻の層が見えているものらしく、共生藻がない場所が白くなっているとのこと。手持ちのレンズではこの倍率が限度ですが、かろうじて藻類っぽく見えます。
はっきり言って、全然わからない。でも初めてじっくり観察する特徴が多く、なかなか面白かったです。ネットや図鑑で調べても今ひとつよくわからないのは、経験不足だからですね。キノコの時もそうでしたが、もっと場数を踏んだら見えてくるものもあるでしょう。
2022/02/15火
雲海のような湖、毛深いネコヤナギの冬芽
今冬初めての岩尾内湖。天気予報では晴れの予報でしたが、薄曇りな感じで白っぽい空でした。
雪が例年より多いのか、岸辺に層のように積もっていて、まるで雲海のようにも見えました。これまで見たことのない荘重な雰囲気で、はるばる見にきてよかったと思えました。
スノーシューで岸辺まで降りてみました。どこまでが陸地で、どこからが湖なのか判然としませんが、雲海のような雪が積もっているのは陸地部分でしょう。でも慎重を期して、樹木が生えているところだけを歩きました。
湖畔の陸地部分に生えていた低木?若木?の冬芽。双葉のような裸芽に、小さな松ぼっくりのような花芽(雄花序)。
雄花の花芽が非常に小さく、おのおの1cmくらいしかなかったので、カバノキ科の知らない樹木ではないかと思ったのですが…。
葉芽が裸芽なのが特徴ですが、図鑑によると、それに当てはまるカバノキ科は、ごくありふれたハンノキやケヤマハンノキくらいしかありません。 珍しい木かと思ってわくわくしましたが、思い違いだったのかも。
湖畔に生えていたヤナギの仲間。螺旋状についていて、細長い楕円形の冬芽。サイズが小さく、手袋の指の太さと比較すると0.5mmくらいでしょうか。当てはまるのは、オノエヤナギやシロヤナギくらいです。
色は黄色がかっていますが、図鑑によると、オノエヤナギは5mm、黄緑色がかった褐色とされているのに対し、シロヤナギは4mm、暗褐色、細毛がある、とのことでした。だとすると、普通によくあるオノエヤナギみたいですね。
その横に生えていた、逆光でやたらと白く輝いていたヤナギの冬芽。
近くで見てみると、枝も冬芽も非常に毛深く、冬芽は大きく1cm程度、先が尖っています。冬芽の形からネコヤナギかと思ったのですが、これほど毛深い枝は見たことがありません。
図鑑によると、ヤナギの冬芽は、有毛~無毛のタイプと、無毛のタイプの2通りがあり、有毛~無毛のタイプは個体差があるようです。ネコヤナギもこれに属しているので、単にやたらと毛深いネコヤナギなのかもしれません。
一方、冬芽の形が似ているエゾヤナギは無毛タイプなので、毛深くなることはなく、除外できます。
すぐ隣に生えていた、別のヤナギの冬芽。こちらは枝に毛が生えているのみで、冬芽は毛深くありません。でも大きさや形はさっきのネコヤナギっぽい冬芽と似ています。すぐ隣に生えていたし、こちらはネコヤナギの無毛タイプ? よくわかりません。
さらに拡大して見てみると、やはりさっきの毛深い冬芽にそっくりです。意外と枝は毛深く、冬芽の芽鱗も、多少は毛が生えていることが確認できます。同じネコヤナギだとしたら、お隣さんでこんなに毛の濃さが違うのが面白いです。でも人間もそうかも。
それから、少し岩尾内川沿いをスノーシューで散歩。
奥まで行ってみようと思っていましたが、スノーシューだとかなり遠く感じられ、あまり遠くまで行けませんでした。真新しいウサギの足跡がずっと続いていましたが、姿は見られず、鳥もおらず。
なんだか布団を干してあるようなユーモラスな形の雪。
岩尾内湖周辺はダケカンバが多いことを去年確認してありましたが、これはダケカンバ? 幹から出ている枝が黒くないなら、ダケカンバの確率が高いと言われます。ほかにウダイカンバらしい木もたくさんありました。
ツリガネタケや地衣類がたくさん付着した枯れトドマツ。
上のほうには謎のキノコがぎっしり。
ヒダしか見れなかったので、何のキノコかまでは不明。チャカイガラタケを疑いましたが、チャカイガラタケは広葉樹生。ならば針葉樹生のキカイガラタケかというと、それならもう少しヒダが迷路状になっているはず。
採ってきたヤドリギの実を食べた。夜には久々の月暈
湖のあたりを探索しているとき、低い場所に茂っているヤドリギを見つけました。採取するつもりは全然なかったのですが、ちょっと引っ張ると取れてしまいました。
まだ瑞々しく見える実がついていましたし、前に調べたとき、韓国でお茶にされているようだったので、持って帰ることにしました。アイヌ民族は、この茎をつぶしてデンプンを採っていたそうです。
改めてネットで調べたら、2種類の有毒物質(または薬用成分)が含まれているという記述もありましたが、普通に昔から食べられているものなので、少量ならば問題ないと考えました。
試しに実を食べてみると、ほんの、ほんの少しだけ、ほのかな甘みがあり、ねばねばした食感でした。小さい実なので、わざわざ食べるほどの価値は特に見いだせません。
しかし、「食べられる野生植物大事典」によれば、3倍量のホワイトリカーなどで甘口のリキュールを作れるそうです。ニワトコといいナナカマドといい、生食には向いていなくても、果実酒にすれば飲めるタイプの実の一つといえそうです。あいにく、お酒を呑まないわたしには縁がありません。
前述のとおり、韓国では茎を乾燥させたものが伝統的なお茶として親しまれているそうです。茎を干してからまた飲んでみたいと思います。
夜になると、空が次第に曇り、久々に見事な月暈が出ていました。
スマホでもデジカメでも、肉眼で見るほどには明瞭な写真にはならず残念。
ファインダーに収まりきらない巨大な環は迫力がありました。せっかくだから、大きさが分かるようにと、公園まで出かけて樹木も映り込むような構図で撮ってみましたが、全体を写すには視野角が狭すぎました。
2022/02/18金
微熱で体調不良
ここ数日、体調不良でした。やっぱり無理をしすぎましたか。
相変わらず、自分で無理をしてていることに気づけないのが残念です。以前の記事で書いたように、自分の体の体性感覚のシグナルに疎いことが原因だからです。
とはいえ、体調不良が軽度ですんだことを喜ぶべきでしょうか。多少のどが痛くなり、37.1℃の微熱が出て、体のあちこちに違和感が出ただけで済みました。
かつてのように、高熱発作を起こすまで、大きなひずみを溜め込むということはなくなりました。これくらいなら、かえってあまり無理をしなくなったことを進歩とみなして喜ぶべきかもしれませんね。
今の時期だと、コロナの感染も疑われますが、ここ最近ずっと対面では誰にも会っておらず、人混みにも外出していないので、その可能性をすぐ除外できました。
もし自分が都会に住んでいて、毎日電車に乗っていたり、スーパーに買い物に行ったりしていたら、ちょっとした体調不良でも不安になってしまうでしょう。今さらながら、僻地に住んでいてよかったなと感じています。
2022/02/24木
吹雪と膝の怪我で外出できず。ロシアが戦争を始める
いつの間にか前回の日記から一週間経ってしまいました。色々あって、自然観察が何もできていないので、書くことがありませんでした。
まず、前回書いたとおり、微熱が出て体調不良になりました。すぐ回復したものの、週末は吹雪で外出できませんでした。
月曜の夜、雪かきをした後、なぜか左膝がひどく痛み出し、場所を調べると内側側副靱帯のようでした。少しでも膝を動かすと非常に痛く、その夜は歩くこともままならず、寝ていても少し姿勢を変えただけで激痛が走るありさまでした。
その痛みは、一昨年スキーで左手首を痛めてしまったときに匹敵するほどでした。あのときはおそらく骨にヒビが入っていたのではないかと思っていますが、回復まで1ヶ月以上かかったように思います。
今回も、それに匹敵する怪我を追ったのではないかと顔面蒼白になりました。しかし、奇妙なことに、いったいどこで痛めたのかまったくわかりませんでした。それに、痛みの強さに反して、外見はまったく変化なく、青あざなどもできていませんでした。
朝になっても強い痛みがありましたが、火曜の夜には、歩けるくらいには痛みが引きました。水曜には痛みはほぼなくなりましたが、試しに公園をスノーシューで歩いてみたところ、再発しそうだったので、無理はしませんでした。
そして今日、木曜には、もうすっかり痛みはなくなり、いつもの具合になりました。あの強烈な痛みは何だったのか、不思議すぎて狐につままれたような気分です。
このようなわけで、この一週間は自然観察が全然できませんでした。でも仕事がはかどったので、無駄にはなりませんでした。ここには載せられませんが、鳥や動物についての大量の資料をまとめて、よい作品ができました。
明日は、天気がよければ、久しぶりに森歩きに出かけるつもりです。もう冬も残り少ないので、森の奥地まで行ければと思っています。膝が問題なければよいのですが。
ところで、今日のニュースで、ついにロシアが戦争を始めたことを知りました。予想していたこととはいえ、いざ始まってみると、これからどうなっていくのだろう、と心がざわざわします。
国連事務総長が言っているように、近年最大の国際平和と安全保障の危機が現実になりました。コロナの流行を皮切りに、予想を超えたことが次々に連鎖する世の中になってしまいました。
いったいどのように物事が進展するのか、まったく想像もつきません。この戦争がどれほど拡大するのかもわかりません。世界が巻き込まれるほど状況が悪化するのでしょうか。
それとも国連の権限が強化され、未曾有の危機が奇跡的に回避され、平和と安全が宣言されることになるのでしょうか。それまでどのくらい期間があるのでしょう。数ヶ月か、それとも数年か。焦らず見守りたいと思います。
2022/02/25金
今年も見れた! ウソ、ヒガラ、そしてまんまるエゾライチョウ
やっと久しぶりにまともに森歩きに行けました。ヒグマの爪痕がある地帯も超えて、森の周囲の林道を初めて一周しました。3時間くらいかかりました。
出かけた時から雪がちらついていいました。でも、もう春の兆しが見えていて、明日は日中プラス気温になる予報なので、今しか時間がありません。
森の中を歩いているころには強風が何度も吹き付けて、枝が落ちてくることもありました。帰り道は吹雪。
膝の状態も心配でしたが、幸いにも完全に治ったようで、痛みの再発はありませんでした。しかしスキーで痛めた左肩の三角筋をまた痛めてしまいました。ストックを地面につく動作でたびたび再発してしまいます。病気で寝たきり期間が長かったせいか、あちこち脆弱性だらけです。
久しぶりにアカエゾマツ林やトドマツ林を歩いて、特にトドマツの樹皮を覆う立派なコケや地衣類に感動しました。いつ見ても、サンゴ礁のような豊かな生態系に魅了されます。下の写真はフラクタルが美しいヤスデゴケ。
ルーペを忘れたので、あまり接写ができませんでしたが、数珠の連なりのような形が面白いです。フラクタル状に伸びていく枝は、雪の結晶のようでもあります。
まだ入り口近くのトドマツ林の林道にて。夏は草刈りが入らず、冬にしか現れない古い道。この道を知っているのはわたしだけのはずでしたが、誰かの足跡がありました。わたしが頻繁にスノーシューで歩いていたせいで、ここも歩けると発見されてしまったか(笑)
そこを歩いていたとき、少し奥の木々の高い枝に、中くらいのサイズの鳥たちが群れで止まっているのを見つけました。
大きさからしてツグミかな、と思ったら、望遠レンズで見るとウソの群れでした。今シーズンはこれまで声は聞こえど姿は見えなかったので、嬉しかったです。
喉元が蛍光色のように鮮やかなオレンジ色なのがオス、地味なのがメス。かなりの強風が吹き荒れる中、群れでハリギリの実をせっせとついばんでいました。まだハリギリが残っていたのも驚き。やはり去年は豊作だったようです。
動画も撮ってみました。風で枝がすさまじく揺れているのがわかると思います。遊園地のアトラクションに乗っているかのようです。
そこからさらに奥へ進んでいき、冬しか進めない奥地への分岐点のあたり。カラ類の鳴き声が賑やかで、コゲラなどキツツキも何羽かいるようでした。
動きが素早く、逆光だったので、何の鳥なのか全然わかりませんでしたが、帰ってから写真の明るさを編集して確認してみると、なんとヒガラでした。
ヒガラも今季初目撃です。ボサボサの逆立った頭と、のどの三角模様が目印。カラ類の中では、ヤマガラと並んで珍しい印象です。見れるとちょっと嬉しい。
そこからは他人の足跡もなくなり、わたしだけが知っているエリアへと森の中の林道を進んでいきます。今回もヒグマの爪痕があるトドマツまでやってきました。何度見ても立派です。
いつもなら、ここで引き返すのですが、今日はこの先の未踏破地帯に挑戦してみることにしました。前にGoogle Mapで下調べしたところでは、この先は別の林道に合流して森を一周できるはずでした。
この先に行ったことがないのは、体力的に厳しかったからです。でも今日は、やや吹雪いているにもかかわらず、地面がとても歩きやすく、体力も十分にありました。数日間、森に来ていなかったので、やる気も満ちていました。
進んでいくと、シラカバ・トドマツ林が現れ、ついでアカエゾマツの人工林が現れました。
アカエゾマツの生い茂る葉っぱの中を、無数のハシブトガラ(コガラ)がハチのように飛び交っていました。わたしが近くを通りすぎても逃げませんでしたが、今思えば近くに巣があったのかもしれません。
とても素早い上に、生い茂る葉のせいでピントが合わせにくく、動画を撮れたのはほんの少しでした。でも、もこもこの丸い姿がしっかり写っています。
アカエゾマツ林を越えると、この林道の終点。別の林道に合流して、引き返すことになります。こちらの林道はアスファルトで舗装されていて、雪がない時期はゲートの鍵があれば車で通れます。
雪が積もっている時期は、舗装されているかどうかなど全然わからず、左右の景色を見ても、森の中とさほど変わりありません。頭上が多少開けていて、雪を遮るものが少ないという違いはあります。
折り返してしばらく歩いていると、道の左側の広葉樹林に、たくさん実が残っているホオノキを見つけました。
残っていると言っても、中身を食べつくされていて、殻が枝にくっついたままになっているだけですが、この殻こそがお茶にすると美味しいのです。毎日飲んでも飽きない味なので、できるなら、この殻全部持って帰りたいくらいですが、到底手は届きません。
さらに歩いていると、道の右側の若木が立ち並んでいる森に、巨大で丸い異様なシルエットが見えました。もちろん、見てすぐに正体に気づいて興奮しましたが…、
ズームせずに撮るとこんなに小さく映るのは驚き。人間の目のなんとよく見えることか。この風景の中心部を拡大していくと…、
マツの葉の切れ目から、奥の広葉樹の若木の枝を見ると、何か丸いものが見え…、
さらに拡大すると、シラカバの若木の枝に乗っているラグビーボールのような丸い物体だとわかり…、
最大限まで60倍ズームして見ると、エゾライチョウだとはっきりわかりました。
わたしはエゾライチョウが大好きなので、ぜひ写真に撮りたいと思い、急いで焦点を合わせました。しかし、当のエゾライチョウは逃げるそぶりはまったくありません。雪が降りしきる中、吹きさらしの広葉樹の枝の上で、泰然自若の様子で丸く膨らんでいました。
それにしても、このエゾライチョウ、どうやって枝の上に乗っているのでしょう? 写真で見る限り、ものすごく細い枝の上につかまっているように見えますが、そんなに軽いの?
調べてみると、まるまるとした体のイメージに反して、なんと350g~400gしかないそうです。ニンテンドースイッチ並みに軽い! それなら、これほど細い枝に乗っているのも納得です。
丸いのは、たんまりエサを食べて太っているからではなく、単に羽毛の間に空気を含んで暖かくしているだけなんですね。それにしても、たった400gしかない鳥を美味しいからって狩猟する人間も、野蛮だとしか言いようがありません。
肉眼で見た感じの大きさは、これまで見たエゾライチョウの中で最も大きく、カラスやトビに近いくらいの存在感がありました。カラスもだいたい500gくらい、トビは750gくらいらしいので、当たらずとも遠からずか。
一方、非常に軽い小鳥であるシマエナガはたったの8g程度しかなく、10円玉2枚程度です。その体であれだけの活動量を維持していることに驚きを隠せません。
さて、エゾライチョウは頭以外全然動かないので、いつまでも見ていることもできましたが、3方向くらいからじっくり観察して満足したので、別れを告げて帰ってきました。
昨今のニュースで、いささか不安が募っていましたが、エゾライチョウを見て、なんだかとてもホッとした気分になれました。
まだ森の入り口までは、かなりの距離がありましたが、ここでスノーシューがぶっ壊れるというアクシデント。もともとネジが外れて壊れていたのを、紐で縛って応急処置してあったのですが、その紐がついに切れてしまいました。
スノーシューを脱いで歩こうかとも思いましたが、あまりに雪が深くて断念。しばらく足を固定できない状態で不自由な足取りでしたが、しだいにスノーシューをうまく機能させながら歩くコツがわかってきて、無事に帰ることができました。
久しぶりの森歩きは大満足でした。今シーズン初の出会いが3つもありましたし、今まで行ったことのないスノーシューハイクのルートを開拓できました。もう残り短い冬を、心残りなく楽しみたいです。
2022/02/26土
今日も森の奥にエゾシカがいた
今日は最高気温がプラス4℃。この冬は実に優秀で、厳冬期間にプラス温度になることは一度もなく、雪道が溶けてぐちゃぐちゃになってしまうこともありませんでした。でもついに春の兆しがやって来たようです。
2日連続の森歩きで、今日は、もうひとつの別の森にやってきました。家を出た時間が遅かったので、すでに日が傾きかけていましたが、森の一番奥の、エゾシカの水飲み場の地帯まで踏破することができました。
入り口ではさっそくアカゲラがお出迎えしてくれました。美しいチェッカー模様の羽です。
カラマツ林にいたハシブトガラ(コガラ)。シマエナガもシルエットが見えていましたが、高すぎるのと、やや薄暗いのとで、うまく撮れませんでした。
カラマツ林の地面には、無数のツルアジサイのドライフラワーが落ちていました。近所の人が、ツルアジサイの枯れた花が落ちるようになると春が近いと話していたのをを思い出しました。
今まで、冬になるとツルアジサイの花は落ちるものだと思っていました。でも、これほど大量に落ちているのを見ると、その人の言うように、春が近づくと落ちるのかも。理由はよくわかりませんが、気温が上がり始めると、ツルアジサイが活動を再開して、離層を形成するのかな?
でも、もしかすると、ツルアジサイの花が一斉に落ちたのは、数日前の猛吹雪のせいかもしれません。
森の中の吹き溜まりになっているあたりには、砂漠の段丘のような雪紋ができていました。目で見ると、大理石のマーブル模様(大理石は英語でマーブル)のようで、実に味わいがあるのですが、写真だと、全然伝わりません。3Dだからこその美しさです。
暖かいので、雪の表面が溶けてひび割れ模様もできていました。なんとなく発泡スチロールみたい。
いつもエゾシカと出会うあたりまでいくと、いくつもの大木が、なんとも惨めな姿に樹皮剥ぎされてしまっていました。
去年の冬は若木ばかりを狙っていたように見えたのですが、今年はなぜか大木が被害に。若木はもう食べ尽くしてしまった? 植林された針葉樹が多い中、広葉樹は貴重なので、なんとか回復してほしいところですが…。
夏は入れない場所の境界で見つけたミズナラの若木。芽にいくつもの虫こぶらしきものがついていました。質感がハチの巣を思わせます。というより、ハチの巣なのかもしれません。でも、今まで見たミズナラメウロコタマバチやタマバエの巣の形とは違う気もします。
そこを下っていくと、野生動物のすみか。先日見つけたクマゲラの食痕を再度確認してみましたが、食べに来た形跡はありませんでした。もう使われていない食痕だったようです。残念。
今日はなかなかシカに会わないな、と思いながら、エゾシカの溜まり場へ下っていくと、向かいの雪山の斜面でもぞもぞ動いているのを見つけました。遠かったですが、望遠カメラならちゃんと観察できました。
もう少し進んだところで、もう一頭見つけました。こちらも向かいの山の斜面を登っていました。どちらも、わたしには気づいていないように見えましたが、いかんせん遠すぎて、木々の枝に隠れてしまい、よく見えませんでした。でも今日も野生のシカに会えたので満足です。
帰り道。林道の脇にある池のひとつが雪解けしていました。日当たりが良いのかもしれません。また春になればカエルたちが集うことでしょう。
その付近の森にて。コウヤクタケの仲間っぽいペースト状のキノコと、それに挟まれた場所で亡くなっているセミの遺骸。
最後に、林道から出て、車に向かう道で見かけたシジュウカラ。もう暗くなっていたので、ピントがぼやけていますが、ネクタイをして首を傾げた姿がおしゃれでした。
2022/02/28月
2月のまとめ
全体としてやや低調だった2月。まぶたが痙攣したり、疲れて微熱が出たり、原因不明の膝の靭帯の痛みが一時的に生じたり、吹雪で外出できなかったりして、あまり自然観察はできませんでした。
でも、出かけることのできた日は、かなりの長距離をスノーシューで歩き、今年初めて歩く領域を開拓できました。
野生のエゾシカにも高確率で出会い、シマエナガ、ウソ、オオワシ、エゾライチョウといった、お気に入りの冬の野鳥にも一通りお目にかかることができました。
シウリザクラやハクウンボクといった初めて見る冬芽も観察できましたし、オニグルミの実を割って食べられるようになりました。
また鳥や動物について調査して、みんなにクイズをシェアしたり、遠方の友人たちと連絡もとれました。
特筆すべきことは少なめだったとはいえ、やりたいと思っていたことは十分にできた一ヶ月だったと思います。嫌なことが幾つか起こった1月より、振り返ってみれば、ずっと満足度が高く感じられました。とても良い冬でした。
今年の雪の量は非常に少なく、地元の人が言うには例年の半分くらいだそうです。バイアスがあるので、のちのち気象庁の統計を確認するまでは確かなことは言えませんが、多くて平年の7割程度ではないかと予想しています。
雪が少ない年だったにも関わらず、非常に満足度が高いのは、真冬の間じゅうずっと、気温が一度もプラスにならなかったからです。おかげで雪が溶けず、しっかりササが覆われて森歩きを楽しめました。回数は少なかったものの、雪道サイクリングも満喫できました。
2月も後半になると、日中プラス気温になる日もちらほらと出てきて、少しずつ春の足音を感じるようになりました。さすがにこれは例年通りなので仕方ありません。
冬を楽しめたか、というと「100点満点」ではないものの、現状の「ベストを尽くせた」と思います。だから間違いなく良い冬だったと振り返ることができます。
世の中に目を向けると、この2月に起こった最も重大な出来事は、ロシアによるウクライナ侵攻です。普通ならありえないことが次々と連鎖的に生じています。
今後、どう進展するかは注視しているしかありません。でも、何が起こってもいいように、準備は整えておきたいと思っています。そのために限られた時間を有効に用いるようにしたいです。
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