秋の森は不思議な造形のアートがたくさん。あの有毒植物にもついに出会った!

この前行ってきたキノコ狩りは楽しかったことは楽しかったんだけど、あくまで都市の中にある、よく整備された森でした。

来ている人たちも、当然ながら、キノコ目当てなので、他の植物の話はぜんぜんない。

それでは物足りない! ということで、日を改めて自宅の近くの森まで数キロほどサイクリングして、秋の森を探検してきました。

今回の体験記では、秋の森を探検して見つけた、道北の植物について書きたいと思います。美しいデザインを楽しんだり、有毒植物に出会ってうろたえたり、楽しい冒険でした。

不思議な造形のアートを楽しむ

数万人規模の自治体である士別市がしっかり整備していた博物館の裏山と違い、うちの地元の森は野性味あふれる森。

一応、自治体が草刈りしてくれていて、森のなかを散策できるようにはなっています。

……とは言っても、けっこう投げやりな整備で、森の中の案内板は朽ち果てているし、道もところどころ通行止めだし、本当に草刈りだけです。

とはいえここは道北の観光空白地帯。旭川や札幌から高速道路でこれる士別市とは違う。

こんな辺境の森に入る人なんて、年に数十人いるかも怪しいので、草刈りだけでも十分にありがたいです。将来的にいつまでやってくれるのかはわからないけど。

グーグルマップの航空写真で見たら、未開の地の山奥にしか見えなかったり。家の近くの森なれど、普通にヒグマ生息地域なので、ちゃんと熊よけの鈴などを持って、万全の装備で入ります。

山や森は、人の手が入っていると外来植物だらけの痩せた森になりがちです。士別の博物館の裏山はかなり良いほうだったけど、それでもちょっと物足りなかった。

一方、人の手がほとんど入っていない森だと在来種がたくさん観察できます。だけど野生動物のナワバリでヒグマも徘徊しているというトレードオフ。

うちの近所のこの森は両者の境目みたいなところ。まったく人の手が入っていない原生林ではないから、外来種も道沿いにそこそこ見られる。でもそんなに人が立ち入らないから、在来の自然や野生動物の痕跡も残っている、と。

さすが人の手がほとんど入っていない森、というべきか。入り口付近から、おもしろいものを見つけました。

ツル性植物カラハナソウの雌花の毬花(まりはな/きゅうか)です。近縁種セイヨウカラハナソウは「ホップ」と呼ばれていて、ビールの苦味や香りの原料として使われているらしい。

わたしはお酒を飲まないのでわかりませんが、北海道にはカラハナソウが自生しているので、ビール醸造が始まったのだとか。

だけど、セイヨウカラハナソウのほうが芳香豊かなので、今ではそちらが主に使われているらしいです。

わたしが見たのが、もともと北海道に自生するカラハナソウか、それとも外来種として輸入されたセイヨウカラハナソウかはちょっとわかりません。

見分けはけっこう難しいらしい。カラハナソウの花に見える部分は、苞葉の集まりで、その苞の内側の腺を見て、腺が少ないと自生種らしいが…見比べてみないとなんともいえない。

こんな可愛らしいツル性の植物。鈴のようにぶら下がっている毬花。ビールの原料なだけあって、食べてみると相当苦いらしい。

その同じ入口近くで見かけた、これまた不思議な赤い実。いったいなんだろう。

実はまるでコボウズオトギリのような見た目。でもその果実を包み込むように、まだ枯れ落ちる前の花が残っています。帽子をかぶった小人さんみたい。

ここまで果実が大きくなってしまうと、花だったころが想像つかないですが、調べてみると、ツルリンドウでした。実からでも判別できるGoogle Lensすごい。

言われてみれば、花の形はリンドウですね。リンドウってこんな実がなるのか。

こんなところにリンドウが咲いていたなんて知らなかった。8月から9月ごろは、忙しくてバテてたから、あまり頻繁に森に来れなかったし。来年はぜひ花のころに観察したい。

さらに奥へ進んでいって見かけたのは、立ち枯れたオオウバユリの花茎。すっかり実も枯れて、いよいよ種子が散布されるころですね。

葉っぱがどこにもありませんが、それこそがオオウバユリの名の由来。花が咲くころには葉(歯)がないとかけて大姥(おおうば)なのだそうです。

オオウバユリの実が、森の中に立っているだけで、立派なアートだと思いませんか?

どんな彫刻家が、ここで作品を作ったのだろう、と思うほど気品がある佇まい。アイヌの彫刻家の砂澤ビッキ作とか言われても納得しそう。

実の内部の種もこのとおり、なんて精密なデザインなんでしょう。

木工細工を削って作られた芸術作品にしか見えないほど緻密。形も色合いも美しい。

オオウバユリを大切にしたアイヌも、きっとこの形や色合いを芸術作品のモチーフに取り入れたことでしょう。

続いて、この美しいブルーベリーのような紺色の実は、ルイヨウショウマの実でしょうか。

残念ながら、ルイヨウショウマの花は、まだ見たことがないんですが、実があるということはここに咲いてたんですね。見てはいるけれど、判別できていなかったということかな。

ルイヨウショウマ、サラシナショウマ、ヤマブキショウマ、トリアシショウマと、名前に「ショウマ」がつく仲間は、白い穂状につく花こそよく似ていますが、科や種類が違う。

それが明らかになるのが実になったときで、それぞれまったく違う見かけの実をつけます。花はあんなに似てるのに、なんで実はこんなに違うデザインなんだろうと思うくらいに。

来年は、それぞれの花も、咲いているときにちゃんと見分けられるようになってればいいな。

春の山菜採りに備えて場所を記憶!

次に迎えてくれたのは、たくさん立ち並ぶタラノキ。ウドと同じウコギ科なので、花や実はよく似ている。だけど樹形がかなり違うし、幹にトゲトゲがあることで見分けられる。

タラノキは、春に山菜としてタラノメを食べると極上のおいしさ、……だと言われている。

今年の春はまだ全然見分けができていなかったから食べられなかった。来年こそは味見したいから、ここを覚えておこう。いや、こんな目立つところだと草刈りする人が採っちゃうかな。

紫色の実がついたタラノキだけでなく、こんなにはっきり紅葉している虹色のグラデーションのタラノキもちらほら。

たぶん、どっちもタラノキで合ってると思うんだけど、どうして実がついて青々としているものと、実がついてなくてこんなに紅葉しているものがあるのかな。ちょっと時期がずれているだけだろうか。

すぐその近くには、今度はヨブスマソウの群生地を発見。家の近くの森だけど、ここまで奥まで来たことはなかったので知らなかった。

この三角形のコウモリの羽みたいな葉っぱが特徴のヨブスマソウ。とてもわかりやすいです。近縁種のイヌドウナはもうちょっと丸みがある。

わたしはこの特徴的な葉っぱのデザインが大好き。ヨブスマソウを見るといつも嬉しくなります。

もっと小さい春の時期は、山菜の「ボウナ」として食べれるらしい。来年、タラノメと一緒にここで探してみようと思いました。山菜の王者のタラノメは採られててもボウナくらい残ってそうだし。

アイヌはヨブスマソウをワッカククッタル(水・飲む・筒)と呼んでいて、その茎をストローにして使っていたと聞きました。

だから試しに、ちょっと失礼して茎を折ってみたら、

本当に中空のストローみたいな形ですね。刃物を持っていたら、葉っぱを落として円筒状に切ることで、すぐに即席のストローが完成しそうです。

ヨブスマソウの近くで見つけた、別の特徴的な葉。

でかい。とにかくでかい。こんなに大きな、手のひら状の葉っぱってなんだろう、きっと有名なやつに違いない、と思いました。

花が咲いた跡も残っているし、たぶん名前を知ってると思うけどなんだったっけ?

あとで調べたら、オニシモツケでした。よく知られた有名な植物じゃないですか。この夏にも一回花を観察したけれど、葉っぱをじっくり見たことはなかったな。こうして何度も出会うことで親しくなっていくものなんです。

そこそこ森の奥に行かないと見かけない植物だから、今まであまり観察する機会に恵まれなかったけれど、こんな場所にあったとは。これも来年、花をじっくり観察したいです。

ついにあの有毒植物に出会った! 用心は身の守り

さて、そんな森の中でひときわ目立つ異様な植物が。

なんだろう、この、真っ赤な実の集合体は…。山で見かける実って、もっとまばらについたものばかりなので、これはひときわ目立ちます。これだけ熱帯の植物みたいだ。

近くで観察すると、真っ赤なトウモロコシのよう。その下に見える地の色は紫色で、まるでなすびみたい。

トウモロコシほどの粒ですが、触ってみると、ポロポロと取れます。

こんなに目立つし、これ絶対に有名な植物だよね、名前を知っているやつに違いない。そう思って、頭の中を探ります。

じつは、数日前、士別市立博物館に行ったとき、地元種に限定された図鑑を読んでいました。わずか40ページほどにまとめられた図鑑で、有名どころはそこにぜんぶ載っていたはず。

その中で、わたしがまだ実物を見たことがなく、図鑑や本で名前を聞いたことしかない植物といえば、…いくつか思いつきましたが「大物」は数えるほどしかない。

あとで調べてみようと思い、葉っぱの特徴も写真に撮りますが、これまた不思議すぎる形状。

いわゆる葉の付き方には、対生(左右対称につく)、互性(左右交互につく)、輪生(輪状につく)、掌状複葉(手のひらの形)、羽状複葉(羽みたいな形)などがありますが、どれとも違う。なんだこれ?

あとで調べたら、この植物は「マムシグサ」ことテンナンショウの仲間でした。

テンナンショウ! やっぱりそうか! 

ちょうど数日前に士別で読んだ説明にあったんですよ。テンナンショウ。北海道の植物について調べてると、よく名前は聞くけど見たことないなぁって。

 

ついに実物を見てしまった。今まで、テンナンショウはこの独特のサトイモ科の花の写真しか見たことがなかったから、よもやあんな毒々しい赤いトウモロコシをつけるなんて考えてもみませんでした。

あの不思議な付き方の葉っぱは、やはり珍しい形で、鳥足状複葉と呼ばれるそうです。同じような付き方をするのは、アマチャヅルとか。先日松山湿原で見たはずだけで覚えてませんでした。

そして、ああ、ちゃんと手袋つけててよかったな、と思ったのが、このマムシグサの毒性。悪名高いシュウ酸カルシウムの針状結晶がたくさん含まれているので、恐ろしい激痛があるという。

味見しただけで、のたうちまわるほどの激痛が数時間から数日続き、触っただけでも、手がかぶれて大変なことになるのだとか。

けっこう不用心に触りまくって写真を撮っていたけれど、わたしが無事だったのは、手袋をしていたおかげです。

この記事を読み返すとわかりますが、カラハナソウやオオウバユリの実を触ったときは、手袋つけてなかったんです。だけど、森の奥に入ってからは用心のためにつけていた。正解でした。

同じようなことがもう一度ありました。こちらも、いったい何の実だろう?と思って、じっくり調べようとした植物。

そしてもちろん触った(笑) じっくり写真を撮るためにはやっぱり触って引き寄せないと無理なので。

こんな形の実がなるんだから、糸状の垂れ下がる花だよな、いったいなんだろう。

葉の形もどことなく見覚えがあるから、たぶん知っている植物だとおもうんだけど、でも目立たない実っぽいからGoogle Lensでは同定できないかな、などと思って写真を撮りまくる。

さて何でしょう。

答えはエゾイラクサでした!  (葉っぱの付き方からして、互生のムカゴイラクサ属ではなく対生のイラクサ属)

そうか、この青じそみたいな葉っぱはイラクサだったのか! 後になって気づいて、ぞっとしたけれど、手袋をしていたおかげで、まったくの無傷でした。よかった…。

よくよく自分で撮った写真を見ると、茎にうぶ毛のようなトゲが見えますね。いばらのような荒々しいトゲじゃないから目立たないけれど、毒成分のせいで触れるととても痛いらしい。

イラクサは、随分前から危険な植物として名前は知ってたし、山登りのときに、これがイラクサだと教えてもらったこともあったんですが、なにぶん経験不足すぎて、特徴を覚えられなかったんです。

こうして実体験を通してイラクサを知ったあとでも、見分ける自信はあまりない。平行脈が目立つ、ギザギザの葉っぱ、と覚えておきたいけど遠くからすぐ見分けられるかどうか。

だからこそ、今回みたいに用心しておいて正解でした。わたしは山や森に入るときは、ヤッケを着て、手袋し、足もゲイターをつけての重装備。途中からは虫が多くなって顔に網もかぶっていました。

おもにマダニの侵入を防ぐためにやっているけれど、今回みたいな経験をすると着込んでてよかったと思います。

今の季節でも、重装備していると暑いので、つい脱ぎたくなってしまう。だから手袋も最初はつけてなかったんですが、暑さより安全性のほうが大切だと痛感しました。

知識も経験もあんまりないのに、ついつい触って確かめようと思うものだから、マムシグサにしてもイラクサにしても、有毒キノコにしても、わたしみたいな素人の自然観察には重装備が必要なのだ。

だけど。

マムシグサにしても、イラクサにしても、昔から山菜として食べられてたんですよね。

イラクサは「アイコ」と呼ばれていて普通においしいと聞く。わたしも多分、食べようとしたら食べれるレベル。

マムシグサのほうは、そのまま食べるととんでもないことになるし、料理して食べてもとんでもないことになる。だけどアイヌは毒のない場所だけをうまく調理し、薬にも使ったという。(それでもうっかりとんでもないことになったケースもあるらしいが)

こんな恐ろしいものをさえ食べようとしたのは好奇心ゆえか食料不足の飢饉ゆえか。自然と人類の営みの奥深さに圧倒されます。

紅葉の錦に彩られた道を帰る

危険な場面はあったにしても、森に行くと本当に楽しいです。

夏場はうっそうとしたジャングルみたいになっていて、視界が悪くて何かが潜んでいそうで怖いし、虫はやたらと多いし、一面緑一色で見分けにくいし、何より重装備していると暑すぎる。

それが秋になると、にわかに自然観察しやすくなりました。視界は開け、色とりどりの紅葉が美しく、虫は比較的少なくなり、植物が見分けやすくなった。

士別市の裏山でのキノコ狩りもよかったけれど、地元の本物の山の中で、アイヌ民族に親しまれていた数々の植物を発見したときの興奮や喜びは格別です。

見つけた!という気になります。歴史のつまった草花だからです。

帰り道は、一般用の道路を走っているだけでしたが、とても紅葉がきれいでした。

道北で本物の紅葉を見るまで、観光地の紅葉の写真は、てっきり色鮮やかに編集されていると思っていたものです。本当にこんな色鮮やかな虹色にそまるだなんて、都会育ちのわたしには想像もつきませんでした。

何より美しいのは、一色だけじゃないこと。都会でもモミジやイチョウの並木道はあるけれど、人工的に一色で染め上げられただけ。それが本物の山や森では、色とりどりの錦の織物のように染まるんですね。

秋になって色づいてくると、自然林と人工林の違いが一目瞭然です。自然林はめくるめく色とりどりのモザイク模様に染まりますが、人工林は緑のままの針葉樹林だったり、不自然に色が段々に並んでいたり。

紅葉してみてはじめて、こんなにたくさんの種類の木が混生してたんだ!と気づきます。どれが何の木なのか、今のわたしにはまだわかりません。来年の秋にはわかるようになっていたいです。

あまりに美しいので、ずっとこのまま色づいていてほしい、と思ったりします。でも現実には、あと一週間か二週間もすれば色あせてしまい、長い長い冬がやってくるのです。

だけど、一瞬の美しさだからこそ、そして巡り巡ってくる美しさだからこそ、価値がある。そんな日本古来の感性が形作られた理由が、今になってよくわかります。

もうすぐ実は弾け、色づいた葉は落ち、木々は静かに眠りにつく。森はひっそりと静まり返り、雪に閉ざされ、春を待ちわびる。

でもそれでいいのだ。来年、またこの時期が巡ってくるときには、移ろい変わる四季折々を経て、よりいっそう豊かな感性で楽しめるはずだから。

投稿日2019.10.02