コウモリ観察会に行ってきた。すぐそこにいるのに見えない可愛らしい生き物

道北の名寄市でコウモリ観察会があったので行ってきました。

都会育ちのわたしですが、過去にどこかでコウモリを見た記憶が。夕暮れに建物の陰から一斉に飛び出していく黒い影を、「あれはコウモリだよ」と誰かに教えてもらったのかなぁ。電車の窓から見たような記憶も。

でも、近くでじっくり見たことはなかったので、せっかくの観察会だし行ってみることに。

コウモリについて知る

場所は名寄市の北国博物館。アイヌ文化などの展示もありました。ちょっと早く着きすぎたので、いつものように植物スケッチしながら待っていました。

この日に観察してたのはハリエンジュ(ニセアカシア)だったかな。地元はイヌエンジュばかりなので、違いが面白かったです。ちょうど豆ができていました。

時間になって、北国博物館の二階へ。夏休みだったので、けっこう子ども連れの家族がいました。何年か前にも来たことがあるリピーターの方も。

     

専門家の先生が、毎年コウモリ観察会を開催しているらしい。ここ数年は、飛んでいるコウモリは見れても、コウモリの捕獲には失敗しているそうですが、今日は果たして…?

まず最初は、スライド解説で、コウモリについて座学。先生がコウモリの標本みたいなのをたくさん見せてくれるのでなかなか面白かった。

こっちに引っ越してきてから、コウモリを見た記憶がないのですが、なんとこのあたりにも8から10種類くらい棲息が確認されているらしい。発見されていないコウモリも含めたらもっといるのかも?

空を飛んでいるコウモリのシルエットは、明らかにカラスやトビと違うので、見ればわかりそうなものですが、見かけてないですね。見ているのに頭がそれと認識できてないだけなのか、本当に見てないのかどっちでしょう。

コウモリは、闇夜に活動してエサを探します。目で暗視するのではなく、超音波の声を発して、その跳ね返った音で空間を認識します。これは反響定位(エコーロケーション)という能力ですね。

わたしがこれまで読んできた本の中でも、エコーロケーションは有名で、いろいろな文献に出ていました。といっても、わたしはコウモリの文献ではなく、人間の能力の文献ばかり読んでいるのですが。人間もエコーロケーションを使うんですね。

ちょうど、直近に読んでいた、ナチュラル・ナビゲーション: 道具を使わずに旅をする方法という本にもその話が出ていたので、引用してみます。

講座では、受講生に前に出てきてもらい、まずは手をうしろに組み、目をつぶった格好で、これ以上近づくとぶつかると思うまで、壁に向かって黙って歩いてもらう。

次に同じ格好で、今度は「ラララララ」と声を出しながら歩いてもらうのだ。音を立てて歩くと、ほとんどの学生は黙って歩いたときより30センチくらいは壁に近づくことができる。

いうまでもなくこれがレーダーや音響測深機の原理なのだが、こうした機器がつくられるずっと以前から、この原理は実用に供していたわけだ。(p42)

わたしたちも、反響によって、空間の大きさを把握する能力を、たいてい無意識のうちに使っているわけです。もし高性能な耳栓などつけて、生活音すべてをミュートすることができたら、距離感にちょっと戸惑ってしまうようなことがあるかも。

でも、この人間版エコーロケーション能力を最も有効活用しているのは目の見えない人たちです。目の見えない人は視覚の不足を補うために、脳の視覚野が他の感覚に転用されていることがわかっています。だから聴覚とか触覚が鋭敏。

中には、エコーロケーションと顔面感覚(空気の流れを顔で感じる)で自転車に乗ったり、球技をしたりする目の見えない人もいるという話をどこかで読みました。この本にもそうした例のひとつが載っています。

ベン・アンダーウッドというカリフォルニアの10代の少年は、反響音を利用して自宅周辺を歩くだけでなく、ローラーブレードで自由自在に動きまわることができた。

彼は全盲だったが、歯をカチカチと鳴らし、その跳ね返りを聞いて、通りにあるものは車でもゴミバケツでも遠くから言い当てた。

そのうえ、人並み外れて敏感な耳を駆使して、テーブルサッカーやコンピュータゲームまでやりこなしたという。(p42)

コウモリの使う反響定位は、この話とほとんど同じ。違うのは、ヒトとコウモリでは可聴音が違うから、コウモリの用いる音はもっと高周波のヒトには聴こえない音だということだけ。

それを聞くために作られたのが、その名もバットディテクター(コウモリ探知機)。コウモリの鳴き声を、人間にも聞こえる音に変換してくれます。ただコウモリの声を聞くだけの装置なのに、数万円もするらしい…(笑)

先生が、バットディテクターで録ったいろんな種類のコウモリの声を聞かせてくれましたが、クリック音みたい。コツコツとかプツプツとか、種類によってかなり違うのがわかりました。

ここで最初の話に戻りますが、コウモリがたくさん身近に住んでいるのに、その姿をなかなか目視できないのもこれが原因。

コウモリ本人でさえ、自分の目で目視できないような闇の中をエコーロケーションで飛んでいるわけなので、そもそも人間の目で見える範囲にめったにいないんですね。

そんなコウモリも、昼間に巣で寝ているときは見れるはずですが、その巣がどこにあるのかめったにわからないのだそう。

都会だったら、体育館の屋根裏や壁の隙間にいるのが、糞によってわかったりするみたいですが、自然の中だとさらに難しい。

廃屋、使われなくなった農業用水路の裏、洞穴や木のうろ、さらにはオニシモツケなどの植物の枯れた葉にくるまっていたりもするらしい。専門家でも住みかを探し当てるのは簡単ではないとか。

こうして、わたしたちの身近な隣人であるにもかかわらず、コウモリを見れる機会はめったにないわけです。

そんなコウモリが食べるのは、このあたりでは主に虫類。地域によっては有名なフルーツコウモリなんかもいますけれどね。

オリヴァー・サックスの色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記 (ハヤカワ文庫 NF 426)によると、ミクロネシア島の悲劇的な難病「リティコとボディグ」(風土病として起こるALSとパーキンソン病に似た複合病態)の原因に、ソテツの実を食べるオオコウモリが関係していた可能性もあるとのこと。

オオコウモリがソテツの実を食べると、その毒素BMAAが体内で1万倍にも濃縮される。島の人々は当時、オオコウモリが大好物だったので、食物連鎖の毒素の蓄積で難病を発症してしまったのではないかと。(p363)

コウモリの捕食者としては、エゾフクロウのような鳥類のほか、爬虫類とか、さらに北海道ではオニグモの巣にかかってやられたりもするらしい。

北海道のオニグモは本当に巨大で、8月から9月ごろには、500円玉よりも一回り大きくなります。

特に夜にでかい巣を張るので、わたしも夜にサイクリングしていたときに引っかかったことが数回。糸の強度もすさまじく、輪ゴムでパッチンとやられた時みたいな衝撃が。

この前なんか、大きなオニグモが自転車の上に降ってきたので、あわてて近くの葉っぱを抜いてきてつつき落としました。もともと虫が苦手なほうなので怖い。

確かにあのオニグモなら、コウモリくらい捕獲して食べそうだ、と思わせるだけの迫力があります。

コウモリとネズミは、哺乳類の中でも特に種類が多く、世界にコウモリは1000種類ほど、ネズミはさらに多く1200種かそれ以上いるのだそう。

世界のほとんどの地域で、ネズミの種類のほうがコウモリより多いようですが、なぜか日本はコウモリのほうがわずかに多いらしい。(あとで調べたら、コウモリ35種、ネズミ24種) その理由は今でもわからないみたいです。

先生はコウモリについて語りはじめると熱くなってしまうのか、時間が押してしまい、スライドを最後までじっくり説明してくれる余裕はありませんでした。

コウモリについて学んでみた感想は、身近な生き物のことでさえわかっていないことだらけなんだなぁ、ということ。いかにこれまでの科学が生態学を軽視していたかに尽きますね。

いよいよコウモリ観察

ここからはいよいよ、夜の森に繰り出して、本物のコウモリを観察。

夜の森は虫だらけだし、ちょっと涼しくなってきた今の時期はマダニの危険も増加しているので、わたしは重装備でいきました。上にはヤッケを羽織り、足首にはゲイター(スパッツ)を。隙間からマダニなんかかが入ってこないように。

他の人たちもかなり重装備で、長靴をはいて、登山用の顔にかける虫除け網をつけている人もいたし、かなりの数の人がヘッドライトをつけていました。

ただ、個人的にはヘッドライトは対面したときにまぶしくて不快なので嫌いなんですよね。自分は見えやすいのかもしれないけど、人には迷惑。だからわたしの明かりは手持ちランタンです。

みんなで森の中に入り、狭い笹薮にポールを立て、数メートルにわたって長い網を張ります。

かわいそうなコウモリがこれに引っかかってくれたら捕まえて観察できると。前回捕まったのは4年前くらいらしく、捕獲確率は低い。コウモリもそうやすやすとは捕まりません。

それでも、貸してもらったコウモリ探知機(バットディテクター)を森にむけてみると、あちこちでクリック音がします。目には見えないけど、確かにそこにいる。

大人も子どもも、ひたすら暗闇の中でバットディテクターをWiiリモコンみたいに振り回している姿は、自分も含めて滑稽でした。コウモリのほうからすれば丸見えなのに、人間はこんなにも何も見えないんだなぁって。

そうこうしているうちに、なんと、コウモリが一匹網にかかった! 先生が網をほどいて捕獲にかかりました。種類はウサギコウモリとのこと。大きな耳が特徴的です。

しばらくしてからまたもう一匹。ここ何年も捕獲できてなかったのに、いったいどういう風の吹き回しなんでしょうか。ウサギコウモリたちにはかわいそうですが、ちょっとの間だけ研究に協力してもらいます。

それから、北国博物館に戻るがてら、ここ数年よく、飛んでいるコウモリが見れたというスポットに行きました。でも、しばらく目をこらして見回していたものの、何も見えず。例年とは運の風向きが逆方向だったみたいです。

その観察場所は、夜間照明が新しくされたのか、巨大で明るい街灯が一帯を照らしていました。さすがにこんなに明るかったらコウモリは別の道を通るんじゃないかなぁ。

こんな道北の町でも、やっぱり都市化や光害の増加が問題なんですね。悲しいことに。

捕獲したコウモリの観察

博物館に戻って、エントランスで捕獲したコウモリの身体測定をします。いきなり明るい部屋につれてこられて、大勢の人間に固唾を呑んで見守られる中で身体測定とはコウモリたちもたまったものじゃありません。

ジタバタともがいていましたが、そこはコウモリ観察の百戦錬磨の先生。うまくコウモリの身体を傷つけないように扱って、よく見えるように広げてくれます。

どちらのコウモリもねウサギコウモリの雌。体長も同じくらいでした。先生の説明によると、翼の肘?のあたりの骨を光に透かして形をみることで、成体か幼体か判別できるとのことだったけど、ちょっと聞きそびれてしまったな。丸いと子どもなんだったか?

先生がコウモリを触らせてくれましたが、なでなでした感じ、ハムスターの感触にそっくりでしたね。北海道のコウモリは特に病原体とかは運んだりしていないらしい。素手で触っても大丈夫ですが、一応あとで手洗いはします。

捕獲したコウモリたちには、翼の上部の腕の骨のとこに小さな識別タグをつけて野生に返します。このコウモリたちが、再び生きてだれかに発見されることはあるのでしょうか。

最後、野生に返すときには、飛んでいる姿を撮影できるというので、動画を撮ってみました。なかなか飛んでいるコウモリの姿は撮れないので貴重かも。

ちょっとかわいそうなことをしたので、大丈夫か心配でしたが、しっかり飛び去ってくれて安心しました。一匹目は地面に落ちてやきもきさせられたけど、二匹目は一瞬で飛んでいきました。

コウモリ観察会を終えて

はじめてのコウモリ観察会を終えて。

じつはこういう生き物関係のイベントに参加したことがないので、おっかなびっくりでした。

でも、専門家の先生が心強く、ただ見守っているだけだったので楽しかったです。やっぱり素人すぎるから、自分で捕まえたり、触ったりするのはちょっと厳しい(笑)

コウモリ観察は、種類を選ばなければ、わざわざ北海道に来なくてもできます。東京のような都市圏でも、どこでもコウモリは住んでいるとのことでした。だってネズミより種類が多いくらいだし。

本当は、わたしたち人間のすぐそばにもたくさん住んでいる。日本に住む120種類ほどの哺乳類のうち、なんと1/4以上も占めている。なのに、なかなか目につかないのがコウモリ。

その理由は、そもそもエコーロケーションで飛ぶ生き物だから。でもそれだけじゃなく、人があちこち光害だらけにしてしまうなど、闇夜を好むコウモリが住みにくい世の中にしてしまっているのかもしれない。

だから、たまには、コウモリの姿を目にして、手で触れて、すぐそばにいる隣人のことを考える機会を持つのは大切です。

気づかないところで生きている、わたしたちに近い哺乳類の仲間である、この愛らしい生き物について、少しでも知れて、とても楽しい観察会でした。

専門家の先生や博物館の職員の方たち、そして何より、わたしたちが観察するのを辛抱してくれた二匹のウサギコウモリたちに感謝して、体験記を終えます。

投稿日2019.08.27