初めてボルダリングに通い始めたらゲーム感覚で上達できるのが楽しくなってきた

ここのところ体調があまりよくなかったので、体力をつけないとなーと思いたち、ボルダリングに行くことにしました。

ボルダリングって何?という方もいるかもしれません。わたしもつい最近までそんな感じで、見たことはあっても名前は知らなかったです。ボルダリングというのは、壁に取り付けられたカラフルな石(ホールド)をつかんで登っていくクライミングスポーツのことです。時々ガラス張りのスポーツジムなどで見かけて、面白そうだなーと思っていたんですが、なかなかやってみるまでは行きませんでした。スポーツジムなんて行ったこともないので敷居が高かったこともあり…。

そんなわたしがボルダリングという名前を知ったのは、意外なことにネットで見かけたこの記事がきっかけ。

 「ボルダリング」がうつ病改善に効果 米科学的心理学会で発表 : J-CASTヘルスケア

わたしはうつ病ではなくて、あんまり落ち込まない性格なんですが、聞いたこともない単語だったので記事タイトルに引かれました。読んでみると、ああーなるほど、あのずっとやりたかったクライミングって、ボルダリングって言うのね! と合点がいって、俄然やる気になりました。

この記事では、まったくの未経験者で、しかもスポーツなんてしばらくまともにやってなかったわたしが、いきなりボルダリングジムに飛び込んで定期的に通うようになったいきさつを書いてみます。

マインドフルネスを求めて

スポーツをやったこともないわたしが、どうしてボルダリングをやろうと踏み切ったのか。

さっきの記事で、ボルダリングはうつ病に効果的だとされていましたが、記事をよく読めば、これってうつ病に限った話じゃないよね、と思いました。「一瞬一瞬に気を配り集中する」ことが、「考えすぎることが問題」の人に効果があるのだとか。

これは言い換えたら、マインドワンダリングの状態をマインドフルネスの状態に持っていくということです。

詳しくは、意識と無意識のあいだ 「ぼんやり」したとき脳で起きていること (ブルーバックス)などの本を読んでもらえたら、と思いますが、人間は何もしていないときでもDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という脳の機能が働いています。たとえばボーッとしているとき、注意散漫でとりとめない空想をしているとき、いつの間にか時間が経ってたとき、DMNの状態にあります。これは脳のアイドリング状態とも言われます。

DMNのときは、あっちこっちに注意がさまよっている状態にあるので、連想が湧きやすく、アイデアが生まれやすいという利点があります。

けれども、それは裏を返せば、本来気に留める必要のないことに注意を奪われやすいということ。例えばうつ病の人は悲観的な考えに心を奪われますが、それは脳がDMNの状態で注意がさまよっているため、心配事や思い煩いに注意が必要以上に向いてしまい、頭が占領されてしまうわけです。それでこの状態はマインドワンダリングとも呼ばれます。

このとき、何に注意を奪われるかは人によってさまざまなので、うつ病に限った話ではありません。わたしはよく体にいろいろな不調(不定愁訴)を抱えていますが、これは、やはり注意がさまよって、本来気に留めるほどでもない体の不調(痛みとか疲労とか)に敏感に反応し、心を占領されてしまっているということです。

どちらも、本当はそれほど大きな問題ではないにもかかわらず、注意がさまようせいで ささいな問題に心を奪われて、ある意味、注意を向けるべきでないものに過集中してしまうというのは同じ。うつ病は精神症状ではなく体に出る場合もあって、仮面うつ病と呼ばれますが、それも似たようなメカニズムなんでしょうね。

わたしはマインドワンダリングの傾向が強くて、そのせいで不注意なADHDっぽくなったり、アイデアを創造的に活用できたりする。でも、その症状のひとつが、体の不定愁訴に心を奪われることでもある。

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そんな場合に役立つのが、最近話題のマインドフルネスです。

マインドフルネスは、グーグルなどの取り組みから瞑想の技法だと思われがちですが、その意味はさまよう注意を「今・ここ」に固定することにあります。注意を「今・ここ」に向ける方法であれば、瞑想でなくても、マインドフルネスを経験できます。例えば、趣味に集中しているときのフローとか、スポーツに集中しているときのゾーンはマインドフルネスの一種。

今回のボルダリングも、さまよう思考を「一瞬一瞬に気を配り集中する」ことに引き戻すことでうつ病に効果があったのではないか、とされていたので、うつ病でなくてもマインドワンダリングに陥りやすいわたしにも効くかもな―と思ったのでした。

もう少し言えば、全身を使う運動であったことも重要なポイント。わたしは普段からよく歩くので、運動不足ではないと思うんですが、歩くだけだと、あまり全身を使わないので、特に上半身の筋肉とかはほとんど無いような状態でした。かといって、腕立て伏せとかやればいいのかというと、体の特定の場所だけ鍛える運動は、全身のバランスを損ないがち。

そもそも筋肉って、ダンベル上げたりしてトレーニングで身につけるのは不自然です。だって野生動物ってダンベル上げないし、自然の中で生きていたころの人間だってそう。本来筋肉って、どこか一部を鍛えるんじゃなくて、全身でサバイバルするうちに自然と身につくもの。不自然なやり方でつけた筋肉は不自然な問題を引き起こす。

やっぱり全身をまんべんなく使う運動がいい、ということで、あたりをつけたのは、水泳かクライミングあたりでした。まあ水泳でもよかったんだけど、せっかくだから、やったことのないものを、ということでボルダリングをやることにしました。水泳だったらどっちかというとダイビングやりたいんだけど、すぐにできるようなものではないので…。

特に、わたしみたいな解離傾向が強い人は、運動機能もばらばらになってしまっていることが多いから、全身の協調運動を意識するアレクサンダー・テクニークやフェルデンクライス・メソッドが効果的だとよく言われます。そうしたセラピー的なものを受けるのもいいけれど、自分を観察して手足の動きに気を配るボルダリングは、たぶん似たような効果を生み出すだろうなと思ったのも理由の一つでした。

なんか小難しいことを色々書いてきましたが、ぶっちゃけ一番大きな理由は、子どものころからアスレチックが好きで、ボルダリングもすっごく楽しそうに見えたからなんですけどね!

はじめてのボルダリングジム

そんなこんなでボルダリング行ってみることにしたので、ネットで近隣の評判のいいボルダリングジムを探してみると、意外にもけっこうたくさんありました。ボルダリングって2020年の東京オリンピックの種目にもなるらしいですが、最近ちょっとしたブームみたいですね。

その中でも、初心者に配慮した体験メニューをやっているところがあったので、とりあえずそこに行ってみることに。シューズとかは向こうで貸し出してくれるらしいので、スポーツウェアなどを持っていく。というかしばらくスポーツなんかしてないので、スポーツウェアに使えそうなものがなく、わざわざUNIQLOで安いのを買った(笑)

そこそこ迷いながら到着してみると、なかなか雰囲気のよさそうなところ。壁一面にボルダリングのホールドが散りばめられていて、見た目にも楽しそうでした。

体験メニューを申し込んで、最初にちょっとしたレクチャーを受ける。

まず貸し出されたシューズは、足のサイズよりちょっと小さめで、指が収束されるような(外反母趾的な)のを履く。これによって足を固定しやすくなるらしい。ちょっと窮屈だったけど、痛かったりはしないので、問題なさそう。

次に、壁のボルダリングのルート説明。初心者用から上級者用まで10段階くらいにルートが色分けされている。てっきり自由に登れるものだと思っていたからちょっと残念。初心者用のものは、手だけ決められていて足は自由なんですが、上級者用は手も足も使えるホールドが決まっている。それらをどういう順番でどのように使うかは自由。

ルートが決められていることを最初はちょっと窮屈に思ったけど、やってみると、なるほどなーと思いました。ルートが決まってないと、どこを登ればいいか初心者にはわからないし、全部自由に使えたら楽しくない。難易度ごとにルートが決められてるから、上達を味わえるし、スキルも身につくんだとわかりました。ゲームの難易度設定みたいなもの。

そのほか、最初はスタート地点のホールドを両手で持って足を浮かせることから始めるとか、まわりの人に配慮するとか色々ルール説明を受けていざ初体験スタート。

ボルダリングをなめていた

行く前からなんとなくイメージトレーニングはやっていて、夢の中でよく壁登ったり空飛んだりしてるので(笑)イメージ的には、そんなに難しくないと思ってました。

でも実際壁に張り付いてみると重力すごい。一番簡単なコースでさえ、手にかかる負担が半端じゃない。一通り登って降りてみると、手首が痛くなっていました。でも楽しい!

一番簡単なコースは、力任せの脳筋プレイでもいけるので、何回かやってみて雰囲気をつかむ。その後で、次のステップ、10段階のうち一番下から2番目のコースをやってみると…

超難しい!

二段階目でこれ?? と思うほどきつい。指定されているホールドが、持つところがあまりなかったりして、どうやって力をこめればいいのかわからない。これだと落ちるだろという瀬戸際を強いられる。なんとか脳筋でも行けましたが、こりゃ明日家事できないなというほど腕を酷使してしまった。

改めて、もっと難しい段階のルート見てみると、それどこ持つの?ってくらいちっこいホールドばっかりなんですよね。申し訳程度に壁にくっついている膨らみくらいのものとか。本当にこんなところ登れるの?ってものばかり。

そういえば、テレビで、高層ビルを素手で登るアラン・ロベールの映像を見たことあって、あんなガラス張りの垂直面をどうやって登っているのか不思議でならなかったんだけど、クライミングって極めれば、そういう芸当ができるようになるんだなーと感じました。いや、あのレベルは無理だけど、ボルダリングジムの垂直面を登るだけでも相当すごい。

ここまで脳筋でやってきたわけなんですが、順番待ち中に、他の熟練者さんたちを見てると、これは力任せじゃないんだなーとわかりはじめました。中年のちょっとビール腹な(失礼)おじさんとか、華奢な女性とかでも、かなり難しいルートをすいすいと登っている。まだまだ未知の世界ではあるけれど、力よりスキルなのね、と理解しました。

ボルダリングってイメージの段階では、全身を使うスポーツのはずだったなんだけど、その日のわたしは、手首だけものすごく筋肉痛に。インストラクターのお姉さんが笑って、「私も最初やったとき、手に力が入らなくなってシャンプー押せなくなっちゃって」なんて言ってました。ほんとに力が入らなくなる。

でも!

手首が筋肉痛になるのは初心者の証なんだとか。上級者になると、手だけでなく、まんべんなく体を使うようになるのだという。わたしのイメージでもボルダリングってそんな感じのはずなんだけど、まだまだ道のりは遠いな―というところで、初回の体験は終わりました。

始めたばかりでまだまだわからないことだらけだけど、とにかく楽しかったので、ここに通おうと決意して、その日は帰宅。翌日すごい筋肉痛に苦しんだのは言うまでもなし(笑) 

ボルダリングのスキルを学ぶ

幸い筋肉痛は2日くらいで収まったので、またボルダリングジムに挑戦しに行きました。今回は、前回登れなかったあたりを攻略したいなーとわくわくしていました。ゲームをやってて、難しくて詰まってしまって、とりあえずセーブして寝て、休んでる間にアイデアを思いついて、次の日これ行けるんじゃね?と思いながら挑戦するあの感覚。これってゲーム世代のわたしに合ってるのかも、なんて思いました。

今回は、前回とは時間帯や曜日も違っていて、かなり常連さんとおぼしき団体と遭遇。中級者レベルのルートをすいすいと登ってたので、「すごいですね!」と声をかけてみた。ちょっと話してみると、数年前に始めて、それからしばらく休止期間があったけど、今年に入って週二日通っているのだとか。半年くらいやればできるようになるよーと言ってもらいました。

上級者の人たちの登り方を見ていて気づいたのは、壁にピタッと貼り付くようにして登っていること。ちょうどスパイダーマンみたいに壁から体が離れないんですね。登り方もいろいろなアイデアがあって、例えば足をホールドに置くときは、できるだけ離れた石にそれぞれの足を置くといいとか。そうすることでがに股みたいに足を開くことになるので、壁に腰がくっついて、貼り付く登り方ができるんですね。

ちょうどジムにボルダリングの登り方の本があったので、順番待ちがてら読んでみると、ちょうどそのへんのことが書かれてあってなるほどなーと。

本によると、クライミングはバランスとモーメントのスポーツであると。いかに全身のバランスを安定させて、回転モーメントが発生しないようにするか。あるいは回転モーメントを利用して遠くのホールドに手を届かせるか、なんてことが載っていました。回転モーメントを抑制して安定させるときは、教えてもらったようにがに股に足を配置すればいいし、回転モーメントを利用したい場合は、片方の膝を内側に入れて側面で壁にくっつく体勢になればいいと。言葉で書くとややこしいけど、壁を横向きの階段に見立てて、階段を登るときの要領で、膝を伸ばす力を利用して上がっていくということ。(後で知ったけど、「キョン」とか「ドロップニー」と呼ばれるらしい)

あと、初回に、こんなのどうするねん! 状態だった小さすぎるホールドは、手を引っ掛けるときは指先だけでなく、手のひらを覆いかぶせるように持って摩擦係数を大きくすればいいとか、足をかける場合は足首を内側に回転させるようにしてホールドに密着させることで滑りにくくするとか。(こちらは「スメッジング」と呼ばれる) スキルがいろいろあって、こりゃ楽しいなーということがわかってきました。

実際にそれを実践してみると、脳筋の動きじゃないから、最初はやりにくいんですが、難しいと思っていたやつもスイスイ登れるようになりました。難しいと思っていたのは、手でぶら下がっていたから。足をうまく使えてなくて、手の力だけでぶら下がって上がっていたので、手首が筋肉痛になるのも当然。

でも、壁に貼り付くようにガニ股になって登っていくと、体がしっかり安定するから、手にほとんど力がかからなくなって、代わりに股関節に負担が(笑) こんなに足を開いて運動することなんて日常生活でなかったから、一瞬グキッときたり。 そういえば、上級者の方が、登る前にお相撲さんみたいに股割りやってたのを思い出しました。そうか、こういうときのための柔軟運動かと。

こうしてスキルを覚えていくと、難所がスイスイ攻略できて、とたんに楽しくなる。これがもし、腕力勝負の脳筋スポーツだったら、そんなにすぐに筋肉はつかないから、上達をなかなか感じられないと思います。でもボルダリングは、腕力より技能、バランスのスポーツなので、コツをつかめば、それこそ中年男性でも華奢な女性でもスイスイ登れるようになるんだなーとよくわかりました。

まあ、相当難しいルートや壁が反り返っている傾斜のところは相当に腕力もいりそうですが、それに挑戦するころには自然に腕力もついているはず。こういう、腕立て伏せとかダンベル上げをしないでも自然に上半身の筋肉がつくスポーツをやりたかったので、やっぱりボルダリングを選んでよかったなーと思いました。

その日帰ってからは、案の定、手首ではなく、太ももとか股関節まわりが筋肉痛に。初回よりははるかに広範囲の筋肉を使ったんだなと実感できました。

ゲーム感覚で上達するのが楽しい

その後は、ゲーム感覚で、少しずつ挑戦しては楽しんでの繰り返し。上級者のプレイを観察してスキルを盗むのもまたゲームらしい(笑) アクションゲームとかが好きな人は、リアルでハマりやすいスポーツなのではないでしょうか。

ゲームと同じで、筋力よりも頭脳とかバランス感覚が必要とされたりもするので、若い女性にも人気なのかなーと思います。上級者を観察していると、若い男性は、筋力が強いから、脳筋プレイで難しいルートに挑戦している人もよく見かけました。でも、たぶんあれだと行き詰まっちゃうだろうなーと見ててわかる。逆に、筋力がそれほどない女性のほうが、頭をつかって登る必要があるので、スキルが身についているのが見ててわかる人も多かった。

頭で理解しても、なかなかその動きを身につけるのは難しいんですが、そこはトライ・アンド・エラーで繰り返し挑戦していくしかないですね。そのぶん、うまく攻略できたときは、ゲームで難関ボスを倒したときみたいな達成感があります。

もともとあまり運動が好きではなくて、すっかり運動不足になっていたわたしですが、ボルダリングと出会ったことで、体を動かすのが、楽しみになってきました。瞬間的な反射神経はあまり自信がないだけに、ボルダリングみたいなじっくり考えながら進んでいくスポーツは自分に合ってると思うし。

まだまだ始めたばかりなので、偉そうなことは言えませんが、半年くらいやれば、ちょっとはむずかしそうなルートも攻略できるかな?とわくわくしながら続けていこうと思います。

テクニックを読んで勉強したのはこの本でした↓

投稿日2017.09.19