HSPのわたしが解離された過去を探しに専門家のところに行ってきた話(4)


これは、HSPのわたしが、じつは解離だったと気づいて、専門医を訪ねた記録の四番目。前回はこちら。

先回は、やっと専門医に相談したところまで書きましたが、トラウマ記憶の処理は今はまだ難しそうだということで、薬物治療で安定化をはかることになりました。最近のいろいろなトラウマの本を読んでも、記憶が解離されているなら、無理に掘り起こさず、おもてに出ている症状に対処していき、徐々に向き合っていくのが主流みたいです。

そのとき教えてもらった薬は、ラミクタール、モディオダール、そして個人輸入が必要なブプロピオンの3つ。とりあえず、主治医の処方で前2つを試しているところ。

今回は、その後の様子を書くとともに、わたしが頻繁に経験している金縛りと夢の体験から、ちょっと専門的に考察してみます。後半難しいので、ややこしいのが苦手な人はスルー推奨です。

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頻繁に起こる金縛りふたたび

まずモディオダールを試してみたところ、コンサータより弱いものの、確かに効いてはいました。眠気が少しましになって、まったく薬を飲んでいないときよりかは動けるように。まだ最低量なので、量を増やせば何か変わるかもしれません。

その後、いったんモディオダールはやめて、ラミクタールを試している最中です。こちらは、最初飲んだ数日は、頭がすっきりして効いたような感触がありましたが、増やせば増やすほど効き目を感じられなくなっていきました。まだ最低量にも達していないんですが、わたしの場合、効果を感じられないなら、増やしても無駄な気がします。

精神科の先生はよく、低量で効かなくても量を増やしてみるべきだと言いますが、たとえ服用量を多くして効いたとしても、大量の薬を飲み続けるのはぜったい体に負担がかかるし、あまりいい効き方ではない気がします。これまでわたしがありとあらゆる薬を試してきた感じでは、睡眠薬も抗うつ薬も、効かないものはどれだけ増やしても効きませんでした。逆に、カタプレスとコンサータという効いた薬は普通よりも低容量ではっきり効きました。

気になるのは、ここのところ、リアルな夢や金縛りが以前より増えているということ。

まず、リアルな夢としては、先日、もう近くにはいない父親をきっぱり拒絶する夢を見ました。ある日 突然自宅に現れたので、はっきりと「この男をここから追い出せ! もう何の関係もない」と毅然と言い放つ夢でした。夢の中なのに、室内など非常にリアルに再現されていて、感情はとても冷静でした。そのときの父の反応も、怒り出したりすることなく、顔色ひとつ変えず無言で立ち去るという、実に本物らしい立ち居振る舞いでした。父は完全にあらゆる感情をコントロールできる人です。ふだんよく見るリアルな夢とはまた違った、わたしの潜在的な感情を映し出したような夢で、いろいろ考えさせられました。

トラウマに目を向け始めると、解離された記憶が夢の中にフラッシュバックしはじめるのはよくあるそうですが、解離された記憶というより解離された感情がフラッシュバックする夢をよく見ます。現実では抑制してしまって表に出せない感情があらわれる夢がときどきあって、自分と向き合うきっかけになっています。

金縛りのほうは、もともとは不登校になる直前から頻繁に経験していました。一日に10回となく起こるようなときもあり、あまりにリアルで生々しい幻覚のような夢も伴うので、最初はオカルト的なものかと怖くなったのですが、よくよく調べると睡眠障害の一種だとわかり、冷静に対処できるようになりました。毎日何度も起こっていたのが近年は月に1,2回まで減っていて、それほど問題にはなっていませんでした。

それが、今年に入ってからちらほらと増えてきて、今月特に多くなり、まともに眠れなくなってきました。リアルな夢も、ふだんから多いのに、それに輪をかけて多くなり、ときには悪夢を見るようになってきました。

これほど金縛りが頻発するのは、不登校になりたてのころに近く、かなりまいっています。コンサータをやめてラミクタールに切り替えてから明らかに増えているようなので、あと数日待っても改善しないようなら、ラミクタールはあきらめるつもりです。

こうしてまた金縛りが繰り返しひたすら起こるようになると、昔の感覚がよみがえってきて、わたしの不登校は元をたどれば金縛りから始まったと思い出しました。たぶん、この奇妙な睡眠障害は、わたしの解離の正体を探る重要な手がかりになるのでは?とふと思いました。

それで、持ち合わせの知識を頼りに、今回、金縛りの正体を探ってみることにしました。

睡眠時無呼吸ではなさそう

金縛りが起こると、毎回毎回、あまりの苦しさから恐怖も伴い、起きたときにはぐったり疲れています。そしてそのせいで睡眠時間が短くなって断続的になる。

こういった睡眠の不具合でよく聞くのは睡眠時無呼吸です。睡眠時無呼吸はこれまで疑われたことがないので、おそらく違いますが、一応検討しておく必要があると思いました。

わたしが勉強したかぎりでは、睡眠時無呼吸では、一般に自覚を伴うことはまれです。自分で気づかないからこの病気はやっかいで、一緒に寝ている配偶者などに呼吸が止まっていることや、いびきがうるさいことを指摘されてはじめて検査を受け、自分が睡眠時無呼吸だと気づきます。

でもネット上で調べると、息苦しさを感じてハッと目を覚めることもあるみたいです。また個人プログなどでは、金縛りや悪夢を伴うという体験談もありました。

ただ、一般的には、睡眠時無呼吸の患者はレム睡眠が阻害される都合上、夢をあまり見ないようです。わたしが読んだ範囲の専門家の本でも、悪夢や金縛りを伴うとは書かれていなかったので、ネット上の記述はよくある別の症状の勘違いではないかと思います。ネット上の医療情報は、信頼できる出典が書かれてないものは、荒唐無稽なものが多いです。

悪夢で目が覚める睡眠時無呼吸は、わたしの知識の範囲で推測すると、たぶん、PTSDとの合併例だと思います。睡眠時無呼吸についても詳しいロバート・ローゼンバーグによる睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドという本によると、PTSDを発症する人のうちかなりの数が、発症前から睡眠時無呼吸を抱えていたことがわかっていて、もともとあった睡眠時無呼吸によるレム睡眠の不調のせいで、恐怖記憶が処理できずPTSDになるケースが多いそうです。つまり、パニックで目が覚めるような例は、睡眠時無呼吸に合併したPTSDの二次症状の可能性があります。

最近は研究が進み、睡眠専門医の推測が正しかったことがわかってきました。

PTSDの睡眠時無呼吸を持続的陽圧呼吸療法(CPAP)で治療すると、いやな夢を見る回数が減る、またはまったく見なくなります。

おそらくは、睡眠時無呼吸によってレム睡眠が分断され、悪夢を見るのでしょう。レム睡眠の分断によって、トラウマの処理と調整ができなくなり、悪夢が続くのです。(p210)

ところで、睡眠時無呼吸には二種類あります。(その2つの合併も含めれば正確には3種類ですが)

睡眠時無呼吸のうち、閉塞性睡眠時無呼吸(SAS)と呼ばれる より一般的なタイプは、寝ているときに物理的に気道が塞がれることで呼吸が妨げられます。太った中年の男性に多いと言われますが、あごの小さな痩せた女性などにも生じることがあるそうです。わたしは後者に近い体型だと思います。

このタイプにはいびきが伴いやすいようなので、専用アプリを使って、金縛りが起きている時間帯を録音してみることにしました。タイミングよく金縛りが起こってくれるかなー?と思っていたんですが、あまりに頻発に金縛りになるせいで、バッチリ? 決定的瞬間をとらえることに成功。しかしアプリには扇風機の音以外、何の音も録音されておらず、いびきをまったくかいていないことは確かでした。

また、このタイプは、横向きに寝ると気道が塞がれにくくなるそうです。しかしわたしの場合、どんな体勢で寝ても金縛りになります。抱きまくらを使って横向きに寝ても、うとうとしたら即なります。リクライニングチェアなどで姿勢を変えても同じです。そうしたわけで、閉塞性睡眠時無呼吸の可能性はほぼないはずだ、という結論になりました。

では睡眠時無呼吸のもうひとつのタイプ、よりまれな中枢性睡眠時無呼吸(CSA)のほうはどうか。こちらは何らかの理由で、呼吸をつかさどる脳幹が呼吸を停止させてしまい、呼吸が止まってしまい、脳が中途覚醒します。体格は関係ありません。

「何らかの理由」には脳卒中や脳腫瘍、パーキンソン病などの神経障害、オピオイド系鎮痛薬の副作用などがありますが、原因を特定できないことも多いらしい。

わたしがこちらに当てはまるかは、検査をしていないので何とも言えません。

睡眠時無呼吸について考えたあと、金縛りが起こったときに自分の様子を観察してみました。金縛りが起きている最中はもうろうとしているので、どこまで夢でどこまで現実かはわからないんですが、呼吸は止まっていません。

呼吸はできることにはできるんですが、自分の力ではどうにもならないので、ちょうど過呼吸みたいに恐ろしくなって、息苦しさを感じているような。

ただし、金縛りになって意識が気づく直前に、中枢性の睡眠時無呼吸が起こってレム睡眠が分断されている可能性はあるのかもしれません。レム睡眠中に呼吸が止まってしまうせいで、呼吸しようとして脳が覚醒し、そのときの状態が金縛りとして自覚されているという線はありえるかもしれません。

ナルコレプシー

けれども、わたしの症状がもっとよく似ているのはナルコレプシーのほうです。睡眠の分野では、金縛りや悪夢といえば、睡眠時無呼吸よりも断然ナルコレプシーのほうが関係しています。

ナルコレプシーは、極めて重い過眠症で、ときには立ったまま眠りに落ちてしまう睡眠発作や、強い感情で突然からだの力が抜ける起立不能(カタプレキシー)、そして金縛りや悪夢、幻覚が特徴です。

わたしは立ったまま眠るような強い症状はありませんが、サックス先生が見てしまう人びと:幻覚の脳科学で書いているように、ナルコレプシーは症候群であり、極めて重いものから軽いものまで、さまざまな程度が存在しています。

ナルコレプシーは、早くも1928年には金縛りや幻覚と結び付けられていました。わたしの場合、ふだん日常生活でこれが起こることはありません。けれども、夜中に金縛りのループに陥っているときは、よく起こります。

夜中に金縛りで目が覚めたとき、ものすごく強い眠気があり、すぐにまた眠り込んで幻覚と金縛りに閉じ込められ、恐怖とともに何とか起きてはまた眠りに落ち…を繰り返します。解決策としては、無理にでも立ち上がって完全に起きてしまうことですが、それでも耐えきれずベッドに倒れ込んでしまうこともあります。そのときのわたしはたぶん、一時的に重度のナルコレプシーのような脳になっているはず。

睡眠時無呼吸は中年以降に多いのに対し、ナルコレプシーは学生時代に発症することが多い病気で、わたしのプロフィールとよく一致しています。学生時代の睡眠不足によって、ナルコレプシーの徴候があらわれることも多いようです。

わたしの場合、前に書いたように、不登校になる直前ごろから、いろいろな症状に先立って、金縛りが起こるようになっていました。

当時、学校の勉強になんとしてでもついていかなきゃならないという思いから、睡眠を極端に削っていましたが、その結果、特に午前中の授業で座っているとき、がくんと突然眠り込む睡眠発作が毎日のように起きていました。

けれど、そんな経験なんて、誰にでもよくあるものだと思っていました。眠りをこらえて勉強するシーンなんて、アニメやマンガにはつきものです。キテレツ大百科の受験生の勉三さんだってそんな生活をしてる。

これくらい我慢して当然と思っているうちに、やがて睡眠時に金縛りが起こるようになり、不登校になってからは頻繁な金縛りや幻覚、悪夢に苦しめられるようになってしまいました。

ナルコレプシーに伴う幻覚については、オレキシンを発見した櫻井先生の<眠り>をめぐるミステリー―睡眠の不思議から脳を読み解く (NHK出版新書)にこう書かれていました。

しかし、ナルコレプシー患者は覚醒状態からの連続でレム睡眠に陥ってしまうという症状があるため、このときに見る夢は、本人すら夢と思えない、現実の中で起こったことを区別のつかない「幻覚」として認知されてしまう性質のものになることがある。

…もちろん、健康な人と同様、夢であることをきちんと認知している場合も多いが、いずれにしても、ナルコレプシーの患者さんが見る夢は非常にクリアかつビビッドで現実感に富んだものになる。(p129-130)

これは完全にわたしが見ている夢と一致しています。むかし書いたように、わたしはやたらとリアルな夢を見ます。

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わたしが見るリアルな夢は、大まかにわけると二種類あります。

ひとつは、金縛りが伴わない過眠状態の時期に見る夢。こちらは、感覚が非常にリアルで、空を飛ぶ夢や現実にない鮮やかな色彩の夢など、ファンタジックなものが多いです。夢の中の風圧や振動や感触、音、色、感情などはとても鮮明です。

もうひとつは金縛りに伴う夢。こちらはほぼ幻覚に近く、現実と連続した日常の延長を見ます。たいていは、眠りに落ちる直前の部屋やまわりの状態が再現され、それをもとに架空のストーリーがつづきます。

たとえば、寝ていると部屋にだれかが入ってくる。それも親だったり知り合いだったり、現実にあってもおかしくない程度でリアルです。チャイムが鳴って家族が出て、玄関口から聞こえる声から、ああ、誰々が来たのか、と思うこともあります。無理やり起きようとすると、金縛りで体がきしんで動かず、そのままベッドから転げ落ちる異様にリアルな感覚を伴うこともよくあります。

あまりにリアルすぎて、はっきり目が覚めても夢だったのか現実だっのかあいまいなこともあります。

一番衝撃的だったのは、去年、料理をしてごはんを食べてから寝たときのこと。しまった、火を消すのを忘れてた、ということを思い出し、眠くてもうろうとしながら、無理やり起き。ベッドの柔らかい感触によろけて壁に手をつきながらなんとか台所に行くと、案の定、火がつけっぱなしで、鍋の中のスープが蒸発し、なべ底にうどんが焦げ付いていました。気づけてよかったと思いつつ、火を消して、そのまま部屋に戻り、ベッドに倒れこみました。

そのあと金縛りになって、泥のようなだるさで起きたとき、そのことを鮮明に覚えていました。それは現実にあったことだと感じましたが、同時に、今までの経験則から、金縛りの前後には極めてリアルな夢も多いことを知っていました。一応確かめておこうと台所に向かうと、確かに先ほどと同じ位置に鍋はあり火は消えていました。しかし、鍋はとてもきれいで、何も焦げ付いていませんでした。

確かに思い返してみると、寝る前にぜんぶ食べたような覚えはありました。しかしそれよりも幻覚のほうが鮮明でした。もしも、鍋を確認するという証拠がなかったら、あれが夢だったのかどうか判別できなかったと思います。金縛りにともなうリアルな幻覚が、起きてから確認しようがない内容のものだったら、本当に起こったことだと認知してしまってもおかしくない。

じつは不登校になって金縛りが頻発していた時期を思い出すと、それと似たような記憶がいくつもあります。いや、わたしにとって過去の記憶はその時期だけでなく、幼少期のころも小学校のころも、そんなあいまいな記憶ばかりです。当時のことは、ほとんど記憶にないだけでなく、わずかな記憶は夢か現実か区別がつきません。どちらかといえば現実だと思っているのですが、わりと突拍子もない記憶も多くて、この体験からすると、幻覚を現実と思い込んでいるのかもしれません。

最近も、雨の中をずぶぬれになって歩いているときに、ふと昔、こんな体験をして、足が棒のようになって苦しかったのを思い出すデジャヴがありました。そういうときは、足が持ち上がらず動かなくなるので、後ろ向きになって歩いたものです。でも、そのときの思い出のようにやってみると、そんな歩き方はできない。どうやら、夢の中で体験した記憶だったみたいです。ふと思えば、過去のどんな記憶も、現実だった気がするけど、じつは夢だったかもしれない。今こうしているのも夢の中なのかもしれない。

ちゃんと日記などを残している内容はともかく、おぼろげに記憶している当時の出来事については、今となっては、本当にあったことなのかどうか、自信がありません。だからこそ、下手にトラウマ記憶などほじくり返さないほうがいいんだと思います。

もうひとつ、金縛りの最中に自分を観察していて気づいたことがありました。金縛りに遭ったとき、なんとか金縛りを解きたいので、体に力を込めます。でも動かないことが多く、徒労に終わって、どっと疲れを感じます。それで、息を整えて、一呼吸置いてから力を込めると、何度かやっているうちに金縛りの解除に成功します。いったん解除できたら、そのまま寝てしまうとまた金縛りになるので、どれだけ眠くても無理やり体を起こすようにします。

でも、こうやってものすごいエネルギーを消費して金縛りを解く代わりに、じっと金縛りを我慢して、そのまま再度眠ってしまうことはできないのか。金縛りの最中にそう思いついて、実際に試してみたことが何度かあります。金縛りを解いて起きるのはものすごくしんどいので、そのまま眠ってしまえるならそれに越したことはありません。

しかし、金縛りのまま何もしないでじっとしていると、ものすごく強い音がガンガン響いてくるんです。幻聴ではなく、扇風機の音とか、まわりの生活音とか、窓の外の鳥の声とか。いつも聞こえている音なのに、金縛りの最中は、鼓膜をつんざくような刺激音になる。なんとかリラックスして切り抜けようとしますが、あまりに刺激が強すぎて拷問のように感じます。

これは多分、起きている間は普通に働いている感覚フィルターが働いていないことによるのでしょう。ちょうど自閉症の人たちの感覚過敏と同じものを味わっているんだと思います。自閉症の人たちは感覚のフィルターが働かないせいで、自動車の音などが脳天に突き刺さると言いますが、わたしが金縛りに遭っている最中も、半分レム睡眠状態なので、抑制フィルターが緩んでいるはずです。

レム睡眠のあいだ、感覚の抑制フィルターが緩むせいで、強い情動や共感覚を伴う激しい夢を見るわけです。でも意識が落ちているおかげで、外からの感覚過敏に悩まされることはありません。

しかし、レム睡眠中に半分目覚めている金縛り状態になると、脳の抑制フィルターが緩んだまま意識があることになり、ごく普通の生活音が脳天に突き刺さるんだと思いました。これがある限り、金縛りの最中にじっと耐える選択肢は辛い気がします。

解離の人たちが、起きているあいだ感覚過敏を抱えるのも、脳の状態がレム睡眠寄りになっていて、夢と現実のはざまにいながら意識を保っていることによるのではないかと思います。

すべてをつなぐもの

こうして考えてみると、わたしの睡眠の問題は、ナルコレプシーと無関係ではなく、たぶん典型的ではないものの、不全型ナルコレプシーといっていいと思います。

ではその原因は何なのか。

これまでわたしが自分のルーツとして探ってきたものは、どれもナルコレプシーと間違いなく関係があります。

まず、のび太型ADHD。

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のび太型ADHDは不注意や眠気やぼんやり感が大きな特色です。おもにドーパミン系の異常だと言われていて、治療には、コンサータ(メチルフェニデート)が使われます。同時に、このメチルフェニデートは、ナルコレプシーに使われる薬でもあります。どちらも同じ薬で治療されています。

最近では、ナルコレプシーの根本原因がオレキシンの欠乏だと判明して、オレキシン受容体作動薬が研究されています。しかしやはりにこの薬は、ADHDにも効果があるとして、海外で臨床研究されています。

また、今回テーマにしているHSPと解離について。前に書いたとおり、HSPの人は鮮明な夢をよく見ます。

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HSPの人は解離になりやすいですが、解離性障害の特徴のなかには、金縛りや悪夢や幻覚が含まれています。また、のび太型ADHDのぼんやりする症状は解離の一種だと考えられていて、今回の一連の記事の最初に触れた 子ども虐待という第四の発達障害 (学研のヒューマンケアブックス)では、のび太型(不注意優勢型)ADHDとトラウマ障害の解離は見分けがつかないとされていました。

つまり、これらはたぶん、同じような領域の病気なのでしょう。おそらく共通した異常をもち、さまざまな程度が含まれる 何かの症候群が、睡眠専門医にはナルコレプシーとして、小児科医にはのび太型ADHDとして、トラウマ専門医には解離として、それぞれ極端な例が研究されてきただけなのではないでしょうか。それぞれ例えて言えば、足立区、葛飾区、江戸川区を研究しているようなもので、互いに連続していて、同じ東京二十三区というカテゴリーに含まれるものなのかも?

これはぜんぶ原因が同じだと言っているわけではありません。きっとこの症候群は多因子疾患で、遺伝が引き金になることもあれば、トラウマなどの環境が引き金になることもある。けれども脳の中では、結果として かなり近い部分に異常が生じているのではないか、そう思います。

たとえば金縛りは、睡眠医学的には、レム睡眠で骨格筋が脱力しているときに目覚めてしまう現象、睡眠麻痺です。さっき書いたように、ナルコレプシーの人は強い感情で脱力発作が起こることもあります。

ところが、これと同じことが睡眠障害以外でも起こります。それは非常に強い恐怖に直面したとき。トラウマ体験の最中に起こる恐怖性麻痺、凍りつき現象です

わたしが金縛り中に目覚めると、たいていこの状態にあります。無理やり動かそうにも麻痺していて、力をこめるとただギシギシとひしぐような感覚があるだけでまったく動きません。

生物の凍りつき反応は、さらに進行すると擬態死と呼ばれる段階になります。俗に言う死んだふり現象です。

動物も人間も、あまりに強い恐怖にさらされると、からだが凍りついて麻痺し、ついで脱力した虚脱状態になります。腰が抜けるともいいますね。

この凍りつきとか虚脱状態が解離です。あまりに強い恐怖から、脳がからだを切り離して感覚を麻痺させてしまう防衛反応。解離性障害の人は、この凍りつきや虚脱が日常的に生じています。

同時にこれは、睡眠中にだれにでも起こる症状です。レム睡眠のとき、脳はからだを切り離して感覚遮断します。それによって、夢で記憶を処理している最中に、からだが動かないようにします。これがうまくいかないと、レム睡眠行動障害という、夢を見ながら暴れてしまう睡眠障害になります。

言い換えると、わたしたちは睡眠中はだれでも解離しています。それなのに、起きているときにその解離が生じ、レム睡眠中の夢のような幻覚を見てしまうのが解離性障害です。

そしてまた、起きているときに、突然、凍りつきや擬態死が生じてしまうのがナルコレプシーです。解離性障害のように四六時中解離しているわけではないものの、眠りにおちた瞬間にからだが切り離されて麻痺する凍りつきが起こったり、強い感情などが引き金となって全身が脱力する擬態死に陥ったりします。

ナルコレプシーの脱力発作(カタプレキシー)の引き金になるのは強い感情ですが、トラウマ体験のときにあまりに強い恐怖を感じると、やはり脱力発作としての擬態死が起こります。

そして、わたしみたいなHSPの人は、その過敏性から強い感情にさらされやすい体質です。強い感情が沸き起こると、交感神経が興奮します。普通の人なら交感神経が高まりすぎることはありませんが、敏感な人はより強く感情を感じるので、交感神経が限界を超えてしまいやすく、その結果として脳か強制シャットダウンします。脳が危険を感じて急ブレーキをかけた結果起こるのが解離という切り離し、そして凍りつきや擬態死です。

こうやって考えると、症状のあらわれかたや、異常のある部分は少し違うらしいとはいえ、やっぱりぜんぶつながっているわけです。本来レム睡眠中に起きるはずの麻痺や虚脱が、なぜか起きているときに起こるようになってしまい、レム睡眠中の夢のような幻覚を見るのが、解離性障害でありナルコレプシーなわけです。

そしてこれらに共通する異常が何なのかというと、ドーパミンやオレキシンが関わる覚醒度のコントロール領域だと思います。覚醒度のコントロールが不安定だと注意がさまようADHDにもなれば、解離症状も起きるし、睡眠障害も抱えます。

ブプロピオンを試してみたい

こうやって筋道立てて考えてくると、じゃあわたしはどうやって治療すればいいのか、がなんとなく見えてきます。

今回、金縛りループがぶり返して気づいたのは、わたしの場合でいえば、ラミクタールとモディオダールは金縛りには効果がないということです。

まずラミクタールは、今、増量していっている途中ですが、ほとんど効果が感じられないだけでなく、金縛りの頻度が増えています。ラミクタールを飲む前から金縛りが多い時期は何度もあったので、金縛りがラミクタールの副作用というわけではない。そうではなくて、コンサータをやめてラミクタールだけを飲んでいることに問題があるはず。コンサータは金縛りを少なくする効果がありましたが、ラミクタールではダメなのでしょう。

次にモディオダール。モディオダールは一応ナルコレプシーの治療にも使われる薬ですが、コンサータとは作用するところが違うようです。以前、コンサータを飲んでいた頃、金縛りループに入ったとき、無理に起きてコンサータを飲んでしまえば、睡眠不足にはなるものの、金縛りからは解放されていました。それで、今回も、金縛りループに入ったとき、同じ要領でモディオダールを飲んでみましたが、そのあとすぐまた金縛りループに入りました。

モディオダールは確かに眠気をとってくれて、コンサータより弱いながらも動けるようになりますが、金縛りにはあまり効かないようです。ラミクタールと違って効果は感じているので、ただ量が少ないだけかもしれませんが、コンサータと違ってドーパミンに働きかけないからなのかもしれません。

そうすると、前回教えてもらった薬のうち、まだ試していないブプロピオンが一番効きそうな予感がします。この薬は、DNRIというドーパミンを増やす薬で、何年も前から調べては、自分の症状には合っているのではないかと薄々思ってはいました。ただ個人輸入というハードルが高かっただけです。

ブプロピオンはアメリカでは唯一のドーパミン系抗うつ薬ウェルブトリンとして発売されていると同時に、禁煙補助薬のザイパンとしても売られています。

のび太型ADHDの人は、ニコチン中毒などの依存症になりやすいと言われています。脳を覚醒させるドーパミンが少ないため、それを補うために報酬系を刺激してくれる薬物や嗜好品に手を出して中毒になってしまうらしい。

わたしみたいな創作しまくるタイプにはADHDの人が多いと言われていますが、ADHD傾向のある作家には何かの依存症を持っている人が大勢います。わたしが好きな推理小説作家のディクスン・カーは超ヘビースモーカーでしたし、ドラクエの音楽をつくっているすぎやまこういち先生もそうです。こうした人はすこぶる多作ですが、たくさん作品をつくるのもドーパミンを出すので、自然とそうなっていくのだと思います。

わたしはタバコは吸いませんが、やっぱり創作依存症で、色々なものの中毒になりやすい体質で、それが低覚醒の脳に関係していることをよく自覚してします。普段、脳の覚醒度が低いからこそ、シャッキリさせてくれる刺激がやみつきになってしまう。

だから、自分の体質からして、ドーパミン系の禁煙補助薬としても使われているザイパンは、かなり有望だと思っています。解離の専門医に勧められた3つの薬のうち、モディオダールはまあ効果がある、ラミクタールは微妙、ということまでわかったので、次はいよいよプブロビオンを試すときじゃないかなーと思いました。

この記事でナルコレプシーとの関係を掘り下げてみて、やっぱりドーパミンかオレキシン系の薬が答えではないかという気持ちが強まりました。今はまだオレキシン受容体作動薬は研究段階なので、とりあえず使えるのはブプロピオンだけです。同じドーパミンを増やすという意味では、コンサータと同様の体の負担を感じるのではないか、という懸念もありますが、試してみないことにはわかりません。

何が功を奏するかはまだわかりませんが、どのみち他に選択肢もないので、近々実行してみたいと思います。

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