年に一度だけ見れる氷のトンネル。北海道の秘境メルヘン西興部村に行ってきた

毎年7月の終わりに一日だけ一般公開される、西興部(にしおこっぺ)村の幻の氷のトンネルを見に行ってきました!

もともとは観光スポットだった氷のトンネル。しかし、不幸にも崩落事故が起こって、それ以降は村の青年団の立ち会いで一年に一日だけ公開されることになったのだそう。

そういや氷のトンネルとかあったなぁ…と思ってネット検索したら、なんと二日後が公開日だった。

それで、急遽、予定を調整して、ウェンシリ岳のふもとにある氷のトンネルまで、はるばるドライブしてきました。

ついでに西興部村の施設の観光もしてきたので、その体験記を書いておこうと思います。

 

時間がなかったけれど安全運転で

氷のトンネルがある西興部村は、道北と道東の境目部分にある村です。一応、オホーツク総合振興局だから道東扱いなのかな? 

道東といえば、観光地として有名ですが、西興部村は、流氷が見れる紋別から自動車で一時間くらいかかります。

北海道の観光地は、マナーの悪い人が多かったり、外国人だらけだったりしますが、西興部村は道東の中では、そこまで観光客が多くはない印象。

わたしは道北住まいなので、逆方向から、名寄市、下川町、西興部村と、国道239号線を抜けていくルートで行きました。

調べてみると、氷のトンネルの開放時間は10:00から14:00。

しかし、イベントを知ったのがたった2日前。すでにその日は正午近くまで予定が入っていました。

でも、前々から氷のトンネルのうわさは聞いていたし、年にこの日だけだから、なんとか行ってみたい! でもGoogleMapでルート検索したら時間ギリギリの到着予定。

西興部村役場に「明日、14時ギリギリに着いても大丈夫ですか?」と電話してみたら、「もう片付け始めていると思うけど見学できますよ」とのこと。

運転免許とってから3ヶ月の腕前で、時間に間に合うのかどうか不安でしたが、頑張って行ってみることにしました。

北海道の人は運転マナーがよくない人が多い気がします。他の車が少ないし、スピードを出して飛ばせる道が多いので、狭い町ばかりを走る都会と違ってマナーが身につかないんだと思います。

わたしは初心者マークだから、という理由だけでなく、野生動物保護の観点から制限速度はちゃんと守ることにしています。

国道239号線沿いの下川町の漫画家のはた万次郎さんも、制限速度を越えて走って動物を危険にさらすドライバーを批判してました

山道好きなせいか、まだ免許とって三ヶ月なのに、道路上にシカは出たし、タヌキも出たし、カエルもいたし、リスっぽいのも数回見ました。キツネに至っては20回くらい道路上で見てるけど、スピード出しすぎてたら危ない。

制限速度を守らない人たちは「ちんたら走ってると交通の流れを妨げてかえって危ない」とかいう論理を振りかざしてくるので、わたしは後ろに迫ってきたら追い越させるようにしています。

対向車がいない、道路端に余裕がある、上り坂ではない、といった点をしっかり確認してから、ウィンカー出して寄って減速。うまく抜かさせるのは無法ドライバーが多い北海道では大事な技術。

メルヘンな秘境、西興部村へ

今回目指す氷のトンネルは、西興部村のウェンシリ岳という山のふもとにありますが、道北から行くルートだとかなり遠い。

西興部村に入ると、まず道の駅「花夢」が見えてきます。さらに村中心の市街地まで進んで、南の山を越えて、道道137号線を南下して、ウェンシリ岳キャンプ場を目指す。村に入ってからが遠い。

この西興部村は「村」ということからわかるように、人口たった1000人超の自治体。でも、観光業で村おこしをしていて、訪れてみると超個性的です。

道北に住んでいると、スーパーでよく、「おこっぺ牛乳」という瓶入りのミルクが売っているんですが、そちらは西興部村ではなく興部町という別の自治体の特産品です。

この2つはお隣さんの自治体なので、すぐそばではあるけれど、雰囲気は全然違います。

西興部村は、人口は少なくても、東京23区の半分ほどの面積の森があります。

自然を満喫できるホテルやキャンプ場があったり、シカ牧場があったり、とてもユニーク。夜には満天の星空が見られるそうです。

なかでも、メルヘンだなぁと感じるのは、公共施設のデザインが、すべて統一されているところ。どれもオレンジ色の壁に深緑の屋根という配色で、とっても目立つ。

かなり思い切った配色ですが、冬の豪雪のときには公共施設がとても見分けやすくなりますし、そうでなくても、メルヘンチックな街並みに思わず見とれてしまいます。

北海道の町は、どこも美しい自然に囲まれていますが、ちょっと残念なのは、建物のデザインがマッチしていないこと。風景と合っていなくて、廃屋も点在しているので、どことなく殺風景に思えることもあります。

ここ最近は、北海道の風景に合った、地元の木材をふんだんに使ったような、環境に溶け込む美しいデザインの建物も増えつつありますが、たいていの町ではそんなに多くないのが現状。

そんな中、西興部村は、異国情緒を感じさせる配色やデザインの公共施設が多く建ち並んでいます。

ユニークだから、名寄と紋別のあいだを行き来するときには、必ず目にとまるほど。

ホテルだけでなく、各公共施設や公営のスーパーなども同じデザインなので、観光客や宿泊客もどこへ向かえばいいのかがわかりやすいんじゃないかな、と思います。そちらの観光の話は、氷のトンネルの後に書きます。

ウェンシリ岳キャンプ場への林道

時間ギリギリに着くかどうか、という予定でしたが、国道239号線はともかく、西興部村から山越えしてウェンシリ岳へ行く道道137号線は、貸し切り状態だったので、とてもスムーズでした。

途中でワゴン車とバイカーが背後から迫ってきたので抜かさせましたが、後ろから着いていくと目的地は同じでした。氷のトンネルイベントに行く人以外こんなところは通らないよね(笑)

西興部村から南下する道道137号線は整備された普通の道ですが、途中の岐路で、ウェンシリ岳キャンプ場へ向かう林道へ入ります。

その岐路に立っていた看板。

「見学できません」の看板は、崩落事故の後からずっと立っている案内板ですよね。

この日の一般開放のイベント用なのが、「夏 西おこっぺ氷のトンネル祭」の旗と「氷のトンネル一日開放日」の案内板かな。

ここからウェンシリ岳へ向かう6キロほどの林道は、舗装されていないガタガタの道。一車線分しかないので、すれ違う際には待避場所を利用する必要があります。

こういう道って、誰も来なさそうに思えて油断していると対向車が来るんですよね(笑) だから見通しの悪いカーブと上り坂はしっかり気をつけておく必要があります。

運転免許取得三ヶ月しか経ってないけど、松山湿原だったり、ナイオロップの滝だったり、こんな道ばかり走ってるので慣れたものです。

都会の道路よりこういう林道のほうがはるかに得意。オートマだけどエンジンブレーキ使いまくりです。

ところどころ分岐がありますが、丁寧に案内表示があります。

もちろん、山の中なので、クマくらい出ますよ。目撃はしなかったけど。

ここ数日、大雨が多かった道北ですが、この日はからりと晴れていて、すばらしい青空でした。おかげでかなり暑いですが。

起伏の激しい林道をひたすら進むと、ウェンシリ岳キャンプ場に着きます。

というか、こんなところ奥地にキャンプ場なんてあるんですね…。道北にも森の中のキャンプ場とかはけっこうあるけど、林道を何キロも走った奥というのは初めてだ。

これがキャンプ場の建物。

泊まってる人がいたので、中まで見に行くことはできませんでした。というか泊まる人いるんだ…。携帯電話も余裕で圏外だというのに。でも泊まってみたいかも(笑)

ウェンシリ岳キャンプ場に着くと、西興部村の青年団の人たちがテントを張っていて、そこからはシャトルバス(という名のワゴン車)で氷のトンネルの近くまで連れて行ってくれます。距離は5分もかからなかったかな。

携帯電話は圏外なので、無線トランシーバーで、「お客さんが来た」「今から送迎する」などの連絡を取り合っていました。さすが秘境。

ギリギリの到着だと予想していましたが、運転しやすい道路だったおかげか、13:30には到着できました。これで念願の氷のトンネルが見れる!

幻の氷のトンネル?

シャトルバスで送迎された場所から、氷のトンネルまで、5分ほど歩くことになります。

ここでもまた青年団の人たちがテントを張っていて、特産品や飲み物、そして記念グッズなどを販売していました。 

ちらっと見たら、100円の「氷のトンネル缶バッジ」や、200円の「氷のトンネル訪問証明書」などが売っていました。

このイベントは無料で公開してくれているので、少しでも支援したいなと思いましたが、時間が押していたので、後回しに。

これが失敗だった。帰ってきたころにはもう片付けられてしまっていました…。来年また来るか。

時間が押していたので、テントに吊るしてあった解説なども後で読もうと思って写真に撮っておきました。

なんだか書き方がクイズ形式?でわかりにくいですが…

■冬のなだれが谷を雪で埋めて、下に流れている川が内側の雪だけ溶かすのでトンネル状になる。

■氷のトンネルは、通常は大雪山などの高地にある。こんな低地にあるのは珍しい。

■真夏でも雪が溶けずに残っているのは、雪崩で巻き込まれた雪や草が断熱材になっているから。牧草断熱材の研究のヒントになった。

■この場所の氷のトンネルは手前から順に3ヶ所あり、2番目と3番目はつながっている

といったことが書かれています。このうち大事な情報は、氷のトンネルが3つあるという最後の情報だった。

氷のトンネルまで徒歩ルートは、ぬかるみを歩きやすいように仮設の橋のような足場が敷いてありました。これがけっこう丈夫で安定感があって便利。

道中には、氷のトンネルの崩落の危険を警告する看板も。

その先に、ついに見えてきた「神秘 氷のトンネル」!

あれ?

これだと氷のトンネルじゃなくて、氷のカベ、ですよね。いや、「氷」という表現から連想されるような透き通る白さでもなく、かなり黒ずんだ雪壁というか…。

確かにかなり巨大で、人間の身長を超える高さはあります。

下に入ってみると、頭の上を半アーチ状に反り返っているので、ああトンネルだったんだな、とはわかるんですが…。

ネットで「氷のトンネル」と検索したときに出てくる写真の神秘的な雰囲気に比べると、非常に物足りなく、残念感が漂っています。

過去の氷のトンネルの写真を見たら、このあたりの谷全体が雪に覆われているじゃないですか。スケール感がまるで違います。これじゃ溶け残った雪であって、氷のトンネルではない。

青年団の人にきいてみると、残念ながら今年は早く崩落してしまったとのこと。やっぱり温暖化の影響なのかなぁ…。道東の帯広で40℃なんてこともありましたし。

この残された氷の…というか雪のトンネルからも常に溶けた水がしたたっていました。8月には跡形もなくなってそうな予感。

触ってみると、確かに雪。冷たくて気持ちいい。土で汚れてはいても、ところどころくっきり見える白さは美しい。記念写真を撮っている人も大勢いました。

残念でしたが、仕方ない。これで帰るか…と思ったら、青年団の人が、「奥まで行けばトンネルが残ってますよ」とのこと。

奥?

そう、さっきの資料にもあったように、氷のトンネルはひとつだけじゃないんです。奥のほうのトンネルは溶けてないようだ。

さらに奥地の氷のトンネルを目指して

ならば、ぜひそっちも見なきゃ、ということで、他の観光客の人たちと一緒に、奥へ進んでいくことにしました。

ところが困ったことに…

川はあるけど道がないよ!

さっきまでの道は仮設で足場が架けてありましたが、ここから先は、見たい人だけ頑張って行ってきてね、ということらしいです。

この日は山登りの服装はしてきていましたが、川の中を歩くことになるなんて聞いてない(笑)

最初のうちは、岩から岩へつたって歩けばなんとか川を越えていけましたが、さらに奥へ進むと、もう川しかない。しかも深い。

長靴やウェダーがあればよかったけど、この日は持ってきていなかった。しばし立ち止まって考えた末、靴をびしょ濡れにすることを決めました。ここまで来て引き返せるわけがない。

幸い、替えのズボンや靴は持ってきていたので、膝下くらいなら濡れてもなんとかなるはず。

真夏だけど水が冷たい! 靴に水が入ってきてぐしょぐしょ! もうどうにでもなれ!という気持ちで川の中を歩いていくと、

ありました。第二の氷のトンネルです!

こちらはしっかり、トンネル状になったまま残っています。

手前で写真を撮っていると、空がよく晴れていたからか、神秘的な光が差し込む、こんなかっこいい写真まで撮れちゃいました!

ネット上の溶けてない氷のトンネルの写真にも見劣りしない、なかなかの神々しさだと思いませんか?

さらに川の中を進んでいって、氷のトンネルを見上げてみる。

もう何がなんだかわからないような、野性味あふれる世界。神秘というより、クマの寝床みたいな景色でした。

氷のトンネルの中を小さな滝のように段々になりながら、川の水が下ってきて、力強く流れています。

ひんやりとした風が吹いてくるほどではなかったけど、涼しげな渓流の音が反射して響いていました。

もうあと数歩進めれば、氷のトンネルの内部に入れそうだったけれど、ここから先は急に水が深くなっていました。踏み入れたら腰くらいまで浸かってしまいそうだったので断念。

自然が作り出した不思議な景色をすぐそばで堪能し、ちょっと名残惜しくも道を引き返すことにしました。

帰り道は、青空が反射して青く染まった川床が、とてもすがすがしく輝いていました。

ウェンシリ岳の雄大な渓谷にかかる、雪のトンネル。

手前のトンネルはもう崩落していてトンネルではなかったけれど、そのおかげで、例年の観光客は見に行かないような、さらに奥地の絶景を見に行くことができました。

温暖化は由々しき事態だけど、この体験そのものはとても楽しく満足でした。すごいものを見せてもらった。

ゆっくりと植物観察している時間はなかったけれど、渓流を歩いたことで、普段は見かけない花も写真に撮れました。

渓谷の岩壁にたくさん生えている、このウチワみたいな不思議な形の葉っぱの植物。

近づいてよく見てみると、独特な形の白い花を咲かせていました。川の中で足場が悪かったし、ちょっと写真がボケてしまって、きれいに撮れてないのが残念なのですが。

これは、ユキノシタの仲間のダイモンジソウといって、白い花が「大」の字にそっくりなことから名付けられたそうです。近縁種のジンジソウは「人」の字にそっくりらしいですよ。

ほぼ垂直に切り立った、テカテカと滑りそうな岸壁に、これだけの数が群生しているのを見るのは壮麗でした。こんなところを好む植物もいるんだなぁ。

一方こちらは、近くのヤブの中に見かけたミソガワソウ。

長野県の味噌川に由来する名前らしく、こちらも渓流沿いを好む植物ですね。

川のそばを歩くことでしか見られない、おもしろい山野草がたくさん。もっと時間があればじっくり探索してみたかったところです。

近くの池には、たくさんのエゾサンショウウオも。

この黒っぽいオタマジャクシみたいなのがエゾサンショウウオですね。子どもばかりかと思ったら、しっかり手足が生えているのもけっこういました。

生き物観察しながら帰ってくると、14時ぴったり。買おうと思っていたお土産屋さんは終わってて、青年団の人に聞こうと思ったらシャトルバスがすぐ出るところで…と、結局何も買えませんでした。

ふもとに降りると、一日開放終了のお知らせが貼ってありました。

といっても、係の人たちは柔軟に対応していて、わたしが帰るころにも、時間ギリギリに飛び込んできた子ども連れや年配のご夫婦が送迎されていたんですけどね。

さすがにもう疲れていたので、びしょ濡れになった靴を履き替えて帰ることにしました。

木の美術館「木夢」のメルヘンな世界

氷のトンネルイベントへのお布施ができなかったので、帰りは、休息がてら、西興部村の観光施設に寄っていくことに。

西興部村の施設はぜんぶ、森夢(リム)、IT夢(アトム)、花夢(カム)、里住夢(リズム)、来夢(ライム)といったメルヘンネームです。といっても街並みがメルヘンだから、そんなに浮いた感じはありません。

そんな公共施設のなかでも、異彩を放っているのが、木の美術館「木夢」(コム)です。入場料は大人500円。

木工細工のおもちゃを体験できる施設なんですが、子どもだけでなく、大人でも十分に楽しめるほど本格的。

こうした施設だと、普通、木で作られたおもちゃは子ども用の小さいものが多いと思いますが、ここの遊具は違う。大人も乗って遊べるサイズと重量感。がっしりした造りです。

大人でも思う存分楽しめる巨大な壁面パズルもありますし、

すべすべな丸い木のボールで埋め尽くされた砂場? もあります。

基本的に人は少なく空いているので、子どもたちがいないときに、この木のボール広場で寝そべってみると気持ちいい。さしずめ木のプールでしょうか。

木で作られたおもちゃが展示されている部屋もある。すごいのは、これぜんぶ、触って遊んでいい、というところ。

写真だと大きさがうまく伝わらないですが、ミニカーサイズなんかではなくて、両手で抱えないと持ち運べないほど大きく、ずっしり重量感があります。それでいて、関節部分や車輪はすべて可動式。

写真では数個しか映していませんが、これが大きな部屋全体に飾られていて、総数でいえば何百と展示されているんじゃないだろうか。途方もない作品の量です。

創業者は、この伊藤英二さんという方。もう亡くなられたようですが、その志をお弟子さんたちが受け継ぎ、引き続きおもちゃ制作や、後進を育成するサマースクールなどを続けているらしい。

その作品はどれも、リアルかつ、精密に作られていて、尋常ではない数に圧倒されます。展示されている全作品の数は3000点にも上るのだとか。

これだけのものを作るのにいったいどれだけの手間と時間が費やされたのだろう…。

木で作られた人形や家などを使った「木夢の島」という、メルヘンなミュージカルみたいなものも上映されています。(ちょっとセンスは古くさく感じられますが笑)

役者が出てきたり、派手な演出があったりするわけではなく、こじんまりとした仕掛けが動きだけのお話の朗読みたいなものですが、舞台に近寄って自由に近くで観察できるのがいいところ。

わたしは上映中、律儀に椅子に座って鑑賞していて、終わる直前に、あっ、自由に動き回って近くで見ればよかったんだ、と気づきました。

館内のお土産屋さんに売られているグッズもかなりのクオリティ。

この木夢という施設のコンセプトは「みて、ふれて、あそんで、つくる」。

都会の美術館だと、作品はガラスケースに入っていたり、進入禁止にポールが立っていて、近くでじっくり見れなかったりします。

しかし木夢では、ぜんぶの作品を「近くで見ていい」し、さっきの木の乗り物みたいなおもちゃ類は基本「触っていい」。

おもちゃ類は、子どもが遊ぶことを想定して、とても頑丈に、丸みをおびた形に作られているので安心して触れることができます。

なんでこんな北海道の奥地にあるんだろうと思ってしまうほどクオリティが高い。もしこんな施設が都会にあったら、もっと子ども連れが大勢来るのに、と思ったりもしました。

でもきっと、こんな北海道の奥地、森の中だからこそ存在できる施設なんだろう、とも思います。

今の都会からは失われてしまった、子どもが自由に遊べる空間、子どもの好奇心や遊び心を大事に設計された空間が、大自然の中の西興部村だからこそ残されているんでしょう。

子育てしてる親たちは、都会は便利だなんて思わず、もっと子どもを伸び伸び育てられる本物の自然がある場所に引っ越してきたらいいのに。

都会には都会にしかないものがあるけれど、大自然の中には大自然でこそ味わえないものがたくさんあって、そうした自然の優しさや刺激や体験こそ子どもに必要なものなのだから。

道の駅「花夢」のフラワーガーデン

氷のトンネルの帰りに寄ったのは、道の駅「花夢」。ここも西興部村の特産品などがいろいろ置いてありますし、リラックスして休める空間になっています。

白眉といえるのは、「音木林」(おとぎばやし)と呼ばれる、日本で唯一の木製からくりオルガン。

時報代わりにこれが起動して、メリーゴーランドのように回転しながら、木の小人たちがめまぐるしく体を動かして、さまざまな曲を奏でてくれます。

道の駅を訪れた人たちも、この時間だけは、オルガンの前に座って、透き通った音色に耳を傾けているのをよくみかけます。西興部村ってほんとメルヘン!

そして、この花夢には、5月から10月のあいだだけオープンする、かなり広いフラワーガーデンがあります。

入場料は100円ですが、有料だからと入らないのはもったいない。

そんじょそこらの植物園よりはるかに充実している。しかも、花を育てている方が、無料でガイドもしてくれる。

ちょうど、ベリーの実がなっていたので、ブルーベリー、ワイルドベリー、食用ホオズキなどを食べさせてもらえました。

北の最果ての礼文島の固有種のレブンソウとか。

おとなり利尻島のリシリヒナゲシなどの高山植物も見れる!

高山植物の女王コマクサまで。ぜんぶ地植え。さすがに疲れていたので、写真がどれも適当すぎるけど…。

ちょっと前までは、ヒマラヤの青いケシが咲いていたとも教えてくれました。

わたしは大阪の花博の跡地の、咲くやこの花館というところで、ヒマラヤの青いケシ(メコノプシス・ベトニキフォリア)見たことがありますが、あちらでは厳しく温度管理されてやっと咲いていました。

それなのに、ここでは地植えで毎年見れると聞いて仰天。北海道ってほんとすごいですね。大阪だと幻のケシとか宣伝されてたのに(笑)

ここのフラワーガーデンの良いところは、イングリッシュガーデンのような素朴な景色。ガイドをしてくれた方によると、できるだけ自然のままの風景を目指して育てているそうです。

わたしは、植物は好きですが、一面のヒマワリ畑、ラベンダー畑みたいなのは好きじゃないんですよね。

最初に見たときは一瞬だけ「わぁきれい!」って感動しますが、それだけで終わっちゃうから。

一種類か数種類の花が植えてあるだけなので、それ以上の発見がありません。

自然界は本当は、多様な花が共生するから美しいのに、特定の花だけ一面に咲くというのは人工的に作られた景色なんです。

その人工的な景色を作り出すためには殺虫剤などの化学薬品を使うこともある。だって自然は本来、多様性によって免疫を獲得するのに、単一栽培だと植物が弱くなるから、殺虫剤なしでは育たない。

それに比べると、ここのフラワーガーデンは、できるだけ自然本来の景色を大事にして、たくさんの植物を混生させて育て、殺虫剤もほとんど使っていないとのことでした。

単一種の花畑が好きなミーハーな人からしたら、雑然とした風景に見えちゃうのかもしれませんが、わたしはたくさんの種類が混生、共生している深みのある風景が好きです。

このフラワーガーデンは本当に多種多様な種類が植えられていて、季節によって咲いている花が違う。今後も数年計画で手入れしていくらしいので、また立ち寄ってみたいと思いました。

道北の暮らしは、確かに東京や大阪みたいな大都会からは遠く離れていて、スポーツの試合や、有名人の握手会やコンサートはありません。

でも、それとは別の、もっとすばらしいイベントがたくさんあります。今回の氷のトンネル一日開放日もそう。木夢も、フラワーガーデンも楽しかった。

都会だと、何千円、何万円も払ってチケットを買い、人がごみごみしたイベントにみんな出かけます。

ここはそんな高額な費用なしに、人混みに揉まれたりもせずに、大自然の中で、不思議と驚きに満ちた体験ができます。

ウェンシリ岳の山奥の秘境に架かる、自然が作り出した雪のトンネルを見上げ、珍しい草花を見つけ、北海道の豊かな木で作られた作品を楽しむ。

こんな体験ができるメルヘン秘境の西興部村は、ぜひまた足を運んでみたいと思える魅力的なスポットでした。

補足 北海道の気候変動について

北海道の気候変動について、ちょうど7/30にこんなニュースがあったので補足。

北海道の針葉樹、気候変動で衰退、北海道大学などが確認 | 大学ジャーナルオンライン

北海道の針葉樹が気候変動で衰退しているというニュースですが、調査されたのは、なんと道北の音威子府村の筬島らしい。

道外の人にはこの深刻さが伝わらないと思いますが、音威子府村というのは、今回の氷のトンネルの西興部村のもっと北で、日本有数の豪雪地帯。

道北在住のわたしでも音威子府に住むのはためらいます。いまだに大自然が残っている場所。松浦武四郎がアイヌの長老の言葉をもとに「北海道」を命名した地でもある。

そこがこれだけ気候変動の影響を受けているというのは、今年アラスカなど北極圏で異常な高温があったのと同じく、非常事態を通り越しています。

この夏の異常気象は、気候が「予測不能」な段階にきたことを象徴している|WIRED.jp

わたしが住んでいる道北は、冬にはマイナス30℃を超えるほどの厳寒地域です、マイナス41.2℃を記録した朱鞠内湖もあります。でもその寒さのおかげで、砂のように乾燥した最高級のパウダースノーが有名です。

しかし、ここ最近は冬場の気温がマイナス30に達することはまれになってしまいました。道北にずっと住んでいる年配の方々によると、雪も昔より水分を含んで湿っぽくなったとのことでした。

道外から移住したわたしからすれば、道北の雪のサラサラ加減は信じられないような感触だったんですが、それでもかつてとはまったく違うらしいです。

わたしは北海道に引っ越してきて、大多数の人間がいかに自然界から遠く離れてしまったかを目の当たりにして、残念ながら、もう人類は手遅れだと思っています。

【世界の議論】「現在は6度目の大量絶滅期」 英誌に衝撃の論文…環境破壊で「第4次」酷似(1/3ページ) – 産経ニュース

気候変動で多くの種が絶滅する? 地球上の生物は、あまりに急速な環境変化に適応できていない:研究結果|WIRED.jp

わたしたちが生きている時代は「バクテリアの時代」であり、多種多様な微生物という土台の上に、生態系が成り立っていると言われている。でも、そうした生態系の底辺のほうの環境が、すでに産業革命ごろから人為的に変化しているという研究も出ていました。

プランクトンの変化が突きつける、産業革命後の気候変動による「深刻な影響」|WIRED.jp

気候変動は人為的な理由によるものか、それとも自然なサイクルかという論争がありますが、それはどうでもいいと思っています。問題は気候変動よりも生物多様性の減少にあるからです。

人間の活動が気候変動をもたらしているというのは、おそらくは正しいものの、仮説にすぎません。一方、人間が途方もない規模で自然を破壊し、微生物の生態系を撹乱し、必須のキーストーン種を数多く絶滅させ、多種多様な健康問題を引き起こしてきたのは仮説ではなく、観察・証明されている事実です。

世界的な気候変動や環境破壊、さらにはその結果としてもたらされている様々な慢性病や発達障害の流行の流れを変えることはもうできない。

人間はそんな賢い生き物でもない。今の国際情勢を見たらわかります。大企業が何十年も前から気候変動を予測していたのに、自分たちの利益のためにまったく反対の情報を流していたなんて事例も。

石油メジャー最大手が40年前から地球温暖化による気候変動を予測していた – GIGAZINE

2018年、2019年と、科学者たちが作るいわゆる「終末時計」が過去最悪と同じ水準に調整されたことがニュースになっていましたが、たぶん来年2020年には過去最悪を更新するでしょう。

失われた、自然を読む力にも書いてあるように、人類はもう種としては存続できない道を歩んでいます。個人としては異なる道を選べるかもしれませんが、種全体の行路は変えられないでしょう。

われわれは個人としては自由意志を持っているが、種としては持っていない。

個人として進路を決められるが、集団としては予測可能な道を歩く。

個人が分岐点で曲がる方向は予測できないが、集団が曲がる方向は予測できる。(p281-282)

でもそんな黄昏の時代だからこそ、わたし個人としては自然を愛し、自然と共生する生き方をしたい。そのために、手つかずの自然がまだ残っている場所に引っ越してきたのですから。

投稿日2019.07.29