背腹運動の方法

西式甲田療法のやり方について分かりやすく解説するシリーズの第10回目です。今回は、上半身を振り子のように左右に振幅させ、脊柱を整えるという西式健康法の六大法則のひとつ、背腹運動について解説します。

▼シリーズ記事「西式甲田療法とは」
この記事は、シリーズ記事「西式甲田療法とは」のひとつです。CFSに効果があるとされる西式甲田療法についてまとめています。

背腹運動

上半身をメトロノームのようにリズミカルに振幅させ、自律神経バランスを整えます。準備運動と本運動からなります。

方法

◆準備運動

文字で読むと複雑そうですが、実際はとても簡単です。

1.膝と膝の間に余裕を持たせて、正座する

120513背腹運動 準備2.両肩を大きく上下させる(10回)
肩のこりを取り、血液循環をよくする働きがある

 

 

120513背腹運動 準備 (1)3.頭を右に傾ける(10回)。

アゴをグッと引いて十分に傾ける
同様に、頭を左に傾ける(10回)
右の肩から首にかけて筋肉が張っているなら、過食のサイン。夜食が多いことを示す。

120513背腹運動 準備 (3)

4.頭を前に傾ける(10回)。
首が胸につくまで深く傾ける

 

120513背腹運動 準備 (4)

5.顎を引いたまま、頭を後ろに傾ける(10回)
ここまでの準備運動で、頚椎第七番神経を刺激し、呼吸を整える

 

 

120513背腹運動 準備 (2)

6.右後ろを見るように首をひねる(10回)
同様に、左後ろを見るように首をひねる(10回)
これらの運動は、胸郭の異常を治すのに効果がある。背骨が歪んでいると、胸郭が扁平になり、内蔵が圧迫される。

 

120513背腹運動 準備 (5)7.両腕を左右に水平に伸ばし、手の平は正面に向ける。右後ろ、左後ろを見て首をひねる(1回ずつ)
腕の静脈管の働きをよくする。

 

120513背腹運動 準備 (6)

8.両腕を上に垂直に伸ばし、手の平は互いに平行にする。
右後ろ、左後ろを見て首をひねる(1回ずつ)
胸の筋肉が伸び、胸郭の異常に効果的がある。

 

 

 

120513背腹運動 準備 (8)

9.親指を入れてこぶしを握り、左右でガッツポーズを作る。力を入れることができるなら、頚椎第七番神経が正常。この過程で、体内の予備アルカリを整える。

120513背腹運動 準備 (7)

10.そのまま、顎を上げて胸をそらせ、頭を後ろに傾ける(1回)。5.と異なり、顎を上げる点に注意。胸部リンパ腺の働きを良くし、甲状腺と副交感神経を伸ばして刺激する。

 

 

本運動

120520背腹運動1.両膝を拳5つ分広げ、両足の親指を左が上になるよう重ねて座る

2.両手を膝の上に乗せる。小指と薬指を膝につけ、手のひらはわずかに開いて上向きにする。

3.上半身をメトロノームのように左右にふる。身体が左右に傾いているときは腹に力を入れ、中央を通過するときは腹の力を抜く。

これを一回10分、一日3回行う

メリット

◆背骨の左右の動きによって背骨の左右に通っている交感神経の幹が刺激され、体液が酸性に傾きます。腹の出し入れによって腹部の太陽神経叢という副交感神経が刺激され体液がアルカリ性に傾きます。同時にすることによって中性状態となり、自律神経のバランスが整えられます。

背骨の歪みが矯正されます。竹の筒に積み木をでたらめに入れ、背腹運動と同じようにして左右に倒すと、秩序正しく積み合わされるそうです。

ひとことメモ

◆首から尾てい骨まで、背骨が一本のまっすぐな棒であるかのように動かします。背骨を曲げて首や胸から上だけで行うと、腎臓に負担がかかるので禁物です。

◆座ったまま背伸びをするような気持ちで行うと、背骨がまっすぐになりやすいです。

◆はじめはゆっくりで構いませんが、慣れてきたら風をきるような速さでリズムに乗って左右に身体を動かします。

◆鏡やガラス窓に映った自分を見ながら行うと、不自然な動きを解消しやすくなります。

◆慣れるととても気持ちよくなり、ずっと続けていたくなるほどです。しかし、やり過ぎると背中の筋肉を痛めるので注意してください。

◆金魚運動と合わせ、寝る直前に行うと背骨の矯正に効果的です。昼間行うと、効果はありますが、起居動作のうちに、背骨が元の状態に戻ってしまいます。

◆おなかの出し入れは呼吸と関係がないので、歌いながらでもできます。

わたしの感想

◆比較的簡単だった
文字で読むと一見複雑そうに見えるこの背腹運動ですが、とりあえずやってみよう、と実践したところ、意外に簡単でした。評判通り気持ちよく、何気ないときに貧乏揺すりのようについやってしまうことがあります。

時間がかかるのが難点ですが、甲田先生のように語学講座のラジオを聞きながらやってみるのもよいでしょう。わたしはオーディオブックを聞きながら学習と兼ねています。

学習と兼ねる、というと、甲田先生の書籍では必ず、この背腹運動の効能として潜在意識のことが取り上げられています。自律神経を整えた状態では、自己暗示をかけることができる、というものです。しかし、わたしには思想的すぎてよく分からない、というのが正直なところです。

◆緊張の予防に用いる
わたしは立場上、人前で話す機会がよくあります。

リラックスしようとして、一時期は自律訓練法を行なっていたのですが、そのうち、リラックスするだけでは不十分だと気づきました。緊張するということは、力強い話をするために欠かせないアドレナリンが分泌される、ということです。要はバランスなのです

それで、交感神経と副交感神経のバランスを整える、という背腹運動を本番直前に行うようにしたところ、とても効果がありました。落ち着きと熱意とを両立させることができたのです。人前で振り子のように大げさな背腹運動はできませんが、小刻みな振幅でも十分だと思います。

緊張をほぐすには、もちろん、こうした工夫以前に、徹底した準備が大切です。首の筋肉をほぐしたり、考えを整理したりすることも有効です。そのようなわけで、もし人前で話すなど、緊張する場面がある方は、他のいろいろな方法と組み合わせた上で、背腹運動を取り入れてみると良いと思います。

背腹運動についての説明は以上です。西式甲田療法の4つの運動のうち、最も時間をかける基本的な部分なので、早期に取り組んでみてください。