わたしたちの目的は治ること

のエントリは、「CFSの原因はレトロウイルスの感染にある」という国際ニュースを受けて書いた、一連の記事の2番目です。結局、このニュースは否定されましたが、ウイルスだけが原因だとする考えは、海外ではいまだ根強いようです。わたしはウイルスだけが原因だと考えるのは望ましくないと思っています。その1番目の理由をお書きしましょう。

(1)医学の進歩を受け入れられなくなる

慢性疲労症候群(CFS)の原因が、ウイルスだけではない、ということは、さまざまな研究で示唆されています。日本でも、ウイルスの感染を機に初称したと思われる患者は感染後CFSと呼ばれていますが、すべての人がそうであるわけではありません。わたしも、おそらくウイルス感染型ではないと思います。

免疫機構が壊れることで、体内に潜伏していたウイルスが再活性化して症状が悪化する、ということはあるでしょう。しかし、単一のウイルスではなく、もっと複雑なメカニズムによって引き起こされる病気という可能性が高いのではないでしょうか。

書籍『危ない!「慢性疲労」 (生活人新書)』には「ウイルスとストレスが二大原因」と書かれていますが、このストレスには、精神的なストレスだけでなく、事故や環境や化学物質や過労といった身体的ストレスも含まれます。

もっともこの点は、まだはっきりしていません。医学の進歩に柔軟についていくことが必要です。現時点では断定を避けるべきでしょう。大切なのは、医学ではっきりと証明されたデータは、都合が良くても悪くても、事実として受け入れることです。

目的は治ること

もし、ウイルス説に固執してしまうと、医学の進歩が明らかにする新しい事実を受け入れにくくなってしまうかもしれません。実際、ある患者たちは、認知行動療法段階的運動療法の成果を示す研究を否定しているようです。明らかなデータがあるにもかかわらずです。それでは周囲の人たちから、CFS患者は宗教的な過激派とあまり変わらない、と思われかねません。

医学の進歩を受け入れない患者は、果たして回復することを望んでいるのでしょうか。それとも、自分の病気を認めさせることにこだわっていて、いつまでも病人でいたいと思っているのでしょうか。わたしは、究極の目標は治ることだと信じています。そのためには、たとえ不都合に思えても、医学が明らかにする進展を受け入れることが必要です。そうして初めて、治るための治療が受けられるでしょう。

このように、わたしがウイルス説に固執しない一つ目の理由は、偏見なく医学の進歩を受け入れられるよう、中立的な立場でいたいからです。