少し前のニュースになりますが、脳脊髄液減少症の現状について取り上げてあったので紹介します。
脳脊髄液減少症は、このブログでも何度か取り上げていますが、慢性疲労症候群(CFS)とよく似た関連疾患です。事故の鞭打ちから発症することがよく知られていますが、吹奏楽で発症することもあれば、特に思い当たる原因がないのに、髄液漏れが生じることもあります。
そのため、慢性疲労症候群(CFS)と診断されている患者でも、じつは知らず知らずにうちに髄液が漏れが生じて、症状につながっている可能性があります。脳脊髄液減少症について知識を得ておくことは大切なことです。
信州・取材前線:脳脊髄液減少症(その1) 無理解で二重の苦しみ 「心の病」「仮病」疑われ /長野 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース
信州・取材前線:脳脊髄液減少症(その2止) 自覚ない潜在患者も /長野 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース
深刻な病気ーしかし十分知られていない
この記事で、脳脊髄液減少症は、「脳や脊髄(せきずい)の周囲を循環する髄液が漏れて脳が正常な位置を保てず、頭痛や記憶障害などを起こす」病気だと紹介されています。
患者数は全国で30万人(慢性疲労症候群の潜在患者数と同等)と考えられているのに、まだほとんど診断されていません。「患者自身が同症を自覚しない潜在的な患者も多数いる」とのことで、慢性疲労症候群(CFS)と診断されながら、脳脊髄液減少症について知識を持ち合わせていない人たちも多いかもしれません。
また、記事の中では、『医療関係者にも、「髄液は簡単には漏れない」と否定的な見方』があり、医療体制が整備されないことが懸念されています。これも慢性疲労症候群(CFS)の医療現場とよく似ている点です。医者であっても、自分の目で文献を調べ、患者とじかに接することを怠る人は大勢いるので、残念ながらこの傾向はなかなか変わらないでしょう。
患者たちの苦しみ
記事には、脳脊髄液減少症の患者の生の声が幾つか掲載されています。
「激しい頭痛だけでなく、意識がもうろうとして新聞の活字も頭に入りません。昼過ぎまで起きられない日々が続きました。周りに病気を理解してもらえず、孤独感がどんどん募りました」
慢性疲労症候群(CFS)と似ているところがあるので、このブログの読者の方なら、この患者さんの気持ちを理解できるかもしれません。また『病院では「心の病」と言われたり、周囲から「仮病」と疑われたりして患者は病に加え、無理解による二重の苦しみを抱えるケースが多い』とも書かれていました。本来味方であるべき家族や医療関係者から加えられる言葉の暴力はたいへん辛いものです。
子供たちの脳脊髄液減少症
このブログでは、若年性線維筋痛症や、小児慢性疲労症候群(CCFS)など、年若い患者を取り巻く独特な問題について取り上げてきました。
脳脊髄液減少症の子供たちも例外ではありません。バスケットボールが頭に当たって発症した12歳の女の子についてこう書かれています。
発症時、医師に相談すると「子供も(同症に)なるのですか」と逆に尋ねられた。「医師ですら、脳脊髄液減少症の情報を持ち合わせていなかった」と振り返る。
…県内の脳神経の専門病院で診察を受け「自律神経調節障害」「女性ホルモン異常」「精神的な原因」など、幾つもの病名で検査を受けたが、結局、原因不明だった。
…重症化し、約3カ月後には、自分で起き上がれなくなるまで悪化した。
その子の母親は、「原因不明なままで苦しみ、不登校になる子供たちの数は潜在的にかなり居るはず」と呼びかけています。子供の場合は、自分の症状について表現する能力が乏しいですし、子供がそんな病気になるはずはない、怠け心だ、と片づけられてしまいがちです。
子供のころに、信頼する親や学校の先生、医者から信じてもらえず、ひどいことを言われると、心に深い傷が残るかもしれません。もしこのブログを読んでおられる方で、お子さんや受け持ちの生徒から、原因不明の体調不良を訴えられるようなことがあったら、すぐに真偽を決めつけようとするのではなく、まずその子の話に注意深く耳を傾けてあげてほしいと思います。
子どもの脳脊髄液減少症について詳しくはこちらをご覧ください。
脳脊髄液減少症の今後
患者会の働きかけや、国の研究班、各自治体の活動によって、患者を取り巻く状況は少しずつ改善しているようです。このブログでも、以前、ブラッドパッチ療法の先進医療認定についてお伝えしました。
すべての患者に恩恵が及ぶとは言いがたい状況ですが、こうした進展が、患者の境遇を好転させる足がかりになってほしいと思います。また、慢性疲労症候群患者のうち、脳脊髄液減少症の可能性がある方についても、適切な検査と治療が受けられるよう、脳脊髄液減少症が広く認知されることを願ってやみません。