「人生の明るい面に目を向けるといいよ」
「もっと積極的な考え方をしなくちゃいけないよ」
みなさんは気落ちしているとき、こんな言葉をかけられたことがありますか? 気にかけてくれるのは嬉しいですが、このような通り一辺倒のアドバイスは、本当に苦しいときには何の役にも立たないものです。
それはちょうど、溺れて沈みかけている人に、がんばって泳ぐよう励ますようなものです。いっぱいいっぱいでそれどころではありません。
では、苦しんでいる人の助けになるには、どうすればよいのでしょうか。溺れている人を助けるには良い判断と的確な行動が不可欠です。苦しんでいる人を思いやる場合も同じです。
このエントリでは、わたし自身が病気と闘い、また病気の仲間とつきあってきた中で大切だと感じた3つの点を取り上げたいと思います。家族や友人を支えるときに、参考にしていただけたら幸いです。
苦しんでいる人を思いやる3つの方法
わたしは、自分が慢性疲労症候群(CFS)になって、多くの人から、思いやりに欠けた言葉をかけられ、傷ついたことがあります。
しかしいっぽうで、寒い夜の一杯のココアのように、身にしみる温かな言葉で元気づけてくれた人たちもいました。わたしは、今度は自分がその人たちのようになりたいと思いました。
わたしの周りには、いろいろな病気や障害を抱えた人が、常に大勢います。同じく病気に苦しんできた者として、その人たちの思いを汲み上げ、力になりたいと思います。どうすればそうできるのでしょうか。
1.注意深く耳を傾ける
苦しんでいる人を見れば、何かアドバイスをしてあげたくなるのは自然なことです。しかし、そこで自分の言いたいことをぐっと呑み込んで、耳を傾けることが大切です。
書籍いつも目標達成している人の「人の心を動かす」NLP会話術 (アスカビジネス) にはこのような詩が紹介されていました。長いので前半だけ引用します。
話を聞いてくれと言うとあなたは忠告を始める
そんなことは頼んでいない話を聞いてくれと言うと、そんなふうに考えるものじゃないとあなたは言う
そうしてわたしの心を踏みにじる話を聞いてくれと言うと、私の代わりに問題を解決してくれようとする
私が求めているのはそんなことじゃない聞いてください!私が求めているのはそれだけ
何も言わなくていい、何もしてくれなくていい
ただ私の話を聞いてください
ときには、相手のほうから「どうすればいいと思う ?」とアドバイスを求めてくるかもしれません。しかしその場合でも、その人が本当に求めているのはアドバイスではなく、「どうすればいいのか分からない」という気持ちを分けあい、共に泣いて、共に悩んでくれる人かもしれません。
問題を解決しようとするサービスは、世の中にいくらでもあります。しかし、問題に共感するということは、苦しんでいる人のそばにいるあなたをおいて、ほかのだれにもできないことなのです。
2.自尊心を取り戻させる
苦しい状況にある人は、往々にして自尊心を失っています。たとえ口に出さなくても「自分はつまらない人間だ」とか、「何の希望もない」と、心の奥で感じているものです。
自分のしたいことが思うようにできなくて、自分で自分を責めてしまうこともあれば、親族や友人に辛辣な言葉を浴びせられて、自分は無価値だと思うようになってしまうこともあるでしょう。
周りの人は、ふつう、その人ができていないこと、できなくなったことをあげつらいます。それらはとても目立つからです。もし苦しんでいる人のそばにいるあなたまで、できていないことを指摘するなら、その人はどう感じるでしょうか。
あなただからこそ見つけられるその人の良いところを探して、褒めてあげることが大切です。
苦しんでいる人の良いところを探すのは簡単ではないかもしれません。宝石を採掘する人のことを考えてみてください。
宝石は、初めからまばゆく輝いているわけではありません。大量の砂塵に埋もれて、にぶい光をわずかに放っているだけです。
それでも、採掘人は、注意深く原石を探します。ようやく見つけると、たとえそれがほんのわずかでも、心の底から喜びます。
苦しい状況にある人の良い所を探すのもそれと似ています。その人は一見、何もできていないように思えるかもしれません。しかしその人の身になって考えてみてください。言いようのない苦しみに苛まれている中では、ほんのわずかに家事をするだけでも、家から少し出歩くだけでも、そして、ときには一日一日生き抜くだけでも、並大抵のことではないのです。
例えばこのように言うことができます。
これをするのはさぞかし大変だっただろうね。
こんな大きな努力を払ってくれているんだから,○○(名前)は本当に立派だよ
そのように小さな働きに目を留めて、優しい言葉をかけてもらえるならどうでしょうか。その人は次第に自尊心を取り戻し、原石に過ぎなかった良いところは、磨き上げられた宝石のように、まばゆく輝くようになるでしょう。
◆褒める方法について詳しくは温かい褒め言葉をかける とっておきのテクニックをご覧ください。
3.辛抱強くある
苦しんでいる人の力になるのが難しい理由は、他にもあります。果物の木の種を植えるところを考えてみてください。芽生えるまでに時間がかかり、実を結ぶにはさらに年月がかかります。
その間、肥料をやるときに汚れたり、剪定するときに擦り傷を負ったりするかもしれません。日照りや長雨といった、自分ではどうしようもない環境を辛抱することも求められます。
同じように、病気や障害のために気落ちしている人が、すぐに元気になることは期待できません。多くの場合、反応は遅く、何ヶ月も何年も、変わらないように思える時があるでしょう。
また、苦しい状況にある人は、精神的な苦痛や消極的な気持ち,睡眠不足や疲労のため,乱暴な話し方をするかもしれません。
力になりたいと思っているのに、ひどいことを言われると傷つきます。けれども、意地悪な言葉や行動で仕返しすることは,絶対に避けるべきです。心にもないことを言ってしまうのは、病気や障害のせいであり、その人の落ち度ではありません。
最後に、わたしたちにできることには限界があります。日照りや長雨を変えることができないように、その人が患う病気や障害を取りのけてあげることはできません。それは医療が行う分野です。
わたしたちにできるのは、どんなときも変わらず、その人を支え続けてあげることではないでしょうか。つまり、辛抱強さが必要なのです。
共に喜ぶその日のために
ここまで苦しい状況にいる人を支える3つの方法を考えてきました。
◆何もかも分かっているかのようにアドバイスするのではなく、その人の言葉に耳を傾け、苦しみを分かち合う
◆その人がどれだけ苦しい状態にあるか、相手の身になって考え、温かい褒め言葉をかける
◆時間がかかり、ときには乱暴なことを言われるとしても、辛抱強く支え続ける
この3つを実践するのは簡単なことではありません。最初に書いたような、表面的なアドバイスでお茶を濁す方が、はるかに楽に思えるかもしれません。しかし、この3つの方法は、実践するだけの価値があるのです。
考えてみてください。注意深く耳を傾けるなら、相手は心を開いてくれます。自尊心を取り戻させるなら、その人の美しい人となりが、あなたの手の中で輝きを取り戻します。そして辛抱強くあるなら、やがて努力は実を結び、おいしい果実をほおばるように、笑顔になることができるでしょう。
あなたは愛する人と共に、喜びにあふれることができるのです。これに勝る益がほかにあるでしょうか。苦しい状況にある人を支えることには、計り知れない価値があるのです。