なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ

■身体はものすごく疲れているのに、夜眠れない
■頭が冴えてしまって深夜に絶好調
■ついつい夜更かしして朝起きるのが辛い
■いつの間にか昼夜逆転の夜型生活をしている

のような睡眠の問題を抱えるADHD(注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害)の人は多いと言われています。

別の記事で取り上げたとおり、ADHDだったとされる画家ピカソは、「生涯を通じて宵っ張りの朝寝坊」でした。

夜眠れず、朝起きれない、という睡眠相のずれは、努力不足や自己管理能力の欠如と思われがちですが、現代の医学では、「概日リズム睡眠障害」というれっきとした病気として知られています。

そして、子ども・若者の「概日リズム睡眠障害」を多く診てきた、「子どもの睡眠と発達医療センター」の三池輝久先生は、その背後にADHDが多い、と述べていることを以前に紹介しました

どうして、ADHDの人は、「概日リズム睡眠障害」になりやすいのでしょうか。なぜ、疲れていても夜寝つけなかったり、ついつい夜更かししたりしてしまうのでしょうか。どのような治療によって、その苦しい状態から抜け出すことができるでしょうか。

スルーできない脳―自閉は情報の便秘ですをはじめ、数冊の本を参考に、ADHDの睡眠異常の原因や、間違ったアドバイスの害についてまとめてみました。

これはどんな本?

今回紹介する本はおもに以下の3冊です。

スルーできない脳―自閉は情報の便秘ですは、ADHDと自閉症スペクトラムの当事者である、ニキ・リンコさんが、発達障害者のさまざまな脳の特徴を独特の語り口で解説する本です。この本にADHDの人が睡眠障害を抱えやすい理由が書かれています。

不登校外来ー眠育から不登校病態を理解するは、三池輝久先生による概日リズム睡眠障害の専門書です。ADHDのことは特に触れられていませんが、概日リズム睡眠障害が一般に言われているような「早寝早起き」で治るようなものではないことが解説されています。

8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識は、三島和夫先生による、概日リズム睡眠障害をはじめとした睡眠問題の解説書です。今まで誤って信じられた睡眠の都市伝説が一刀両断されています。

この記事は、執筆後に随時、追記修正を繰り返していますが、これらの本以外にもADHDと概日リズム睡眠障害の関連を示唆する文献が年々増えているため、現在は引用先がかなり多岐にわたっています。

ADHDの人が疲れていても眠れないわけ

ADHDの人が睡眠リズムの問題を抱えやすい点については、 知って良かった、アダルトADHD  (VOICE新書 知って良かった、大人のADHD )という本にこのような記述があります。

ADHD児・者を対象とした研究によれば、彼らは睡眠覚醒リズムが不規則で乱れており、全睡眠時間、入眠時刻、覚醒時間が日によって変動します。

一般に寝つきが悪く、寝起きも良くなく、睡眠時間は長すぎたり、短すぎたりします。(p147)

虎の門山下医院の山下喜弘院長も成人期AD/HD併存治療外来開始についてのページで、大人のADHDの6つの特徴を挙げていますが、そのうちの一つ目に朝起きられない問題を挙げています。

1)起床困難が発病前、あるいは幼い頃からある。体内時計が不安定である。

このような睡眠リズム異常は、「概日リズム睡眠障害」という病気であり、特に次の2つのタイプが多くみられます。

■睡眠相後退症候群(DSPS)…極端な宵っ張りの朝寝坊
■非24時間型睡眠覚醒症候群(Non-24)…毎日睡眠時間がずれていく

アリゾナ・プレスコットバレー睡眠障害センターの医長ロバート・ローゼンバーグは睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド の中で、ADHDと睡眠障害の関係をまる一章割いて詳しく解説しています。

その中で彼ははっきりと、大人のADHDは概日リズムが乱れやすいと述べています。

大人のADHDには、1日が過ぎるにつれて頭が冴え、夕方になると仕事や社交に意欲が出てきて、その結果就寝が遅れ、翌朝の起床が遅れる人がいます。

こうした睡眠覚醒問題によって、ADHDの人の概日リズムが大きく乱れるのかもしれません。(p228)

ADHDの人はどうしてこのような概日リズム睡眠障害になりやすいのでしょうか。

やたらと重いギアチェンジ

まず最初に、ニキ・リンコさんの、スルーできない脳―自閉は情報の便秘ですから、ADHDの人が疲れていても眠れず、むしろ盛大に夜更かししまくる理由について紹介しましょう。

ADHDの人は、子どものころから、親に「早く寝なさい」と言われて、しぶしぶ床に就くことはあっても、いくら寝返りをうっても寝られず、悶々と過ごすような夜を経験しているものです。

大人になって一人ぐらしをするようになったら、夜、眠くないのに布団に入る必要もなくなり、好きなことに熱中して、真夜中まで夜更かしすることも増えるでしょう。

ニキ・リンコさんは、そのような現象が生じるのは、意志の弱さや単なる生活習慣に乱れではなく、独特の脳の機能が関係しているという専門家の意見を複数引用しています。

まず最初はAttention Deficit Disorder: The Unfocused Mind in Children and Adults の著者である、ADHDの権威トーマス・ブラウンの意見です。

第一、〈眠る〉ことも〈起きる〉ことも、ひとつの状態から別の状態への移行ではないか。

これを覚醒度や活動レベルの調整(つまり、眠さそのものの設定の切り替え)の問題とみる考え方もあって、ADHDの権威のひとりであり、ブラウン・スケールの開発者でもあるトーマス・ブラウン博士は、ADHDの人々にみられる寝つきの悪さと寝起きの悪さを、

「たまたま自分が現在いる活動レベルに引っかかって、そこから動けなくなって」(Thomas E.Brown, Ph.D.“Attention Deficit Disorder: The Unfocused Mind in Child-ren and Adults”Yale University Press.2005.p.37) いるのだとしている。(p81)

トーマス・ブラウンはADHDの人が、「現在いる活動レベルに引っかかって、そこから動けなく」なるとしています。

これは簡単に言えば、ギアチェンジがスムーズにいかない、ということで、〈起きる〉から〈眠る〉へ、また〈眠る〉から〈起きる〉へと移行するのが、なかなか簡単ではない、ということを示唆しています。

ギアをチェンジしようとしても、何かゴミが詰まっているのか、錆びついているのかして、やたらと動かしにくい金属製のレバーを想像していただけるとわかりやすいでしょうか。モードの切り替えがやたらと重いのです。

巨大な石油タンカーはすぐ止まれない

この点をさらに詳しく説明するため、著者は別の文献を引用します。それは、さくらいクリニックの櫻井公子先生の著書どうして私、片づけられないの?―毎日が気持ちいい!「ADHDハッピーマニュアル」からの記述で、こうなっています。

前にも述べたように、ADHDタイプの脳では、前頭葉機能が低下していることが多いため、「動き出すことが困難」「動き出した後止まることが困難」という性質がある。

夜、興奮してなかなか眠れなかったり、いったんソファなどで脱力してしまうと、「これからちゃんと寝よう」という区切りをつけてきちんと眠りにつけないのもそそのあらわれなのだ。

…しかし、多くの人は「寝付きが悪い(入眠困難)」という意識をもっておらず、「眠くなるまで寝ないだけ、頭が冴えているから仕事しているだけ」という認識でいるようだ。(p80-81)

櫻井先生は、脳の前頭葉機能の低下のため、「動き出すことが困難」「動き出した後、止まることが困難」だと述べています。

これはあたかも重い石油タンカーのようなものです。巨大な石油タンカーは、動き出そうと推進装置に火を入れてもなかなか動き出せず、逆に止まろうとしてもなかなか止まれず、惰性でかなり長い距離を進んでしまいます。

ADHDの人も同様です。朝起きて、さあ活動に取りかかろうとしても、なかなか調子が上がらず、逆に夜にさあ寝ようと布団に入っても、なかなか止まってくれないのです。

重いタンカーがかなりの距離を進んでやっと止まってくれるように、ADHDの人もかなりの時間が経って夜更かしした後に、ようやく寝落ちできます。

このような特徴から、ADHDの人は生活リズムが乱れやすいと言われています。いわゆる「夜型生活」のライフスタイルを持っている人も多いでしょう。

ロバート・ローゼンバーグは睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド の中で、ADHDの人たちは、そもそもホルモン分泌のリズムからしてずれていることが多いと述べています。

コルチゾールのレベルも要因の1つです。コルチゾールはふつう、目覚めているとき、集中しているとき、仕事をしているときに高いレベルになります。

大半の人は、午後11時にそのレベルが最も低くなり、午前9時に最も高くなります。

ADHDの場合、レベルが下がっていくはずの夕方に頂点に達します。このために、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンの生産が遅れます。(p229)

人間にとって朝起きはストレスなので、わたしたちはふつう、起床時間前になると、あらかじめストレスに身体を備えさせるコルチゾールが分泌されるようになっています。朝起きが苦にならない人は意志が強いのではなく、このコルチゾールのおかげで備えができているのです。

同時に、わたしたちが眠れるのは、睡眠ホルモンのメラトニンが、寝る時間に先立って分泌されるからです。意志の力で寝ているわけではありません。

しかし、ADHDの人たちは、ホルモン分泌のパターンの切り替えもうまくいっていないのか、起きようとする時間にコルチゾールが分泌されず、寝ようとする時間にメラトニンが分泌されていません。

この記事執筆後、2017年になって、アムステルダム自由大学医療センターのサンドラ・コーイ博士が欧州神経精神薬理学会(ECNP)の会議で、ADHDと生体リズムの関係について、より踏み込んだ意見を述べていました。

「ADHDと睡眠障害は表裏一体である」との見解が明らかに | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

一方、コーイ博士の研究結果は、ADHDと睡眠との関連についてさらに踏み込んだものだ。

これによると、ADHD患者の75%は、睡眠のためのホルモンであるメラトニンの分泌変化など、睡眠に関連して現れる生理的兆候が、健常者に比べて1.5時間遅く、これに伴って、睡眠中の体温変化も遅れることがわかった。

コーイ博士は「昼夜のリズムが乱れるために、睡眠のみならず、体温や行動パターンや食事のタイミングなども乱れ、これが不注意や問題行動をもたらしているのではないか」と考察している。

その上で、概日リズム睡眠障害はADHDの二次症状のようなもの、というよりは、そもそも両者は切り離して考えることのできないものであり、「ADHDと睡眠障害とは表裏一体のような関係である」とまで述べています。

わたしたちが起きたり寝たりできるのは、身体に備わる生体リズムのおかげであることを理解すれば、それらが遅くずれてしまいがちなADHDの人たちが、周囲の人と同じように生活していても、活動のピークが遅い時間帯にずれ込んでしまうのは当然です。

身体そのもののホルモン分泌リズムが遅れているのもかかわらず、社会生活の時間に合わせて朝起きしようと努めているADHDの人たちは、意志が弱いどころか、ホルモン分泌リズムにあらがおうと四苦八苦している意志の強い人たちだとみなすことさえできます。

前頭葉機能の注意の切り替え能力

ギアチェンジがやたらと重く、巨大な石油タンカーのようにすぐ止まれず動き出せない、?このような脳の「切り替え異常」はなぜ生じているのでしょうか。

すでに述べたように、根本のおおもとは、「前頭葉機能」にあるのですが、もっと具体的にいえば、注意の切り替え、つまり注意のコントロール能力の欠如です。

ADHDという名前は、「注意欠如多動症」を意味していますが、より正確に言えば、ADHDは注意力が「欠如」するのではなく、注意力のコントロール能力が「欠如」しているという発達障害です。

その点は、ニキ・リンコさんも同書でこう指摘しています。

集中困難が主症状のひとつであることから、一見、切り替えが良さそうだと思われがちなADHDだが、実は過集中に悩む人も多い。

注意力が〈ない〉のではなく、〈制御できない〉障害なのだ。(p42)

この注意力の切り替え能力の欠如こそが、これまで述べてきた問題のおおもとにあるようです。

ADHDの人は、何かに集中すると、それを適度に切り上げて、次の作業に移ることができません。注意散漫で何にも集中していないように思えるときでさえ、次の行動に移る、という意味での注意の切り替えがスムーズにできません。

そうすると、すでに述べたような

■何か仕事や趣味をやりはじめたら、それを適度に切り上げて寝るという、注意の切り替えができない。
■いったんソファで脱力してしまうと、もう一度立ち上がって寝床に向かうという注意の切り替えができない。
■明日の支度をする、歯を磨く、風呂にはいる、といった次の活動に注意を切り替えるのに時間がかかるため、どんどん時間がずれ込む

といった状態に陥り、まさにトーマス・ブラウン博士の言うとおり、「たまたま自分が現在いる活動レベルに引っかかって、そこから動けなくなって」しまうのです。

このような注意の切り替えができないのは、前頭葉機能の低下や、ドーパミンの不均衡によるものと考えられています。

前頭葉は、自制心、意志力など、脳をコントロールする高度な能力に関わる部分です。ここがうまく働いていないと、人間は本能や惰性のまま動いてしまい、誘惑に負けたり、だらだらしたり、衝動的だったり、といういわゆる自己管理能力のない人になります。

またドーパミンは、動きをスムーズにする、という役割を担う、神経伝達物質です。ドーパミンが不足するパーキンソン病では、動きがぎこちなくなったり、止まろうとしてもすぐに足が止まってくれなかったりします。

ドーパミンとは、先ほどの錆びついたレバーのたとえでいうと、動きをスムーズにするための潤滑油のようなもので、それが不足していると行動のコントロールが難しくなるのです。

ADHDに見られる前頭前野の血流低下とドーパミンの不均衡は、注意力の切り替えをはじめ、自分の思考や行動をコントロールする脳の「実行機能」の不調に深く関係していると考えられています。

女性のADHD (健康ライブラリーイラスト版)には、最新の研究にもとづき、脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)に関わる切り替えがうまくいっていない可能性について書かれています。

従来、脳は体の活動時に働き、安静時に休んでいるといわれていましたが、安静時には安静時のネットワークが働いていることがわかってきました。そのネットワークがDMNです。

ADHDの人は、このDMNと活動時のネットワークの切り替えがうまくいかず、困っているのではないかという仮説があります。(p64)

デフォルトモードネットワークは、安静時の脳の状態のことですから、その切り替えが悪いというのは、とりもなおさず、くだんの重いレバーやタンカーのたとえのように活動と休息が滑らかに切り替わらないことを意味しています。

こうした理由から、ADHDの人はたとえ身体が疲れていても、脳を休息モードに切り替えられず、「疲れているのに眠れない」という現象に陥ってしまうのでしょう。

それは乳幼児期からの問題

ADHDの人が寝つけないという問題が、単なる生活習慣の問題ではなく、脳機能の問題である、ということを示す最も強力な証拠は乳幼児期の睡眠にみられます。

三池輝久先生の子どもの夜ふかし 脳への脅威 (集英社新)には、自閉症とADHDの乳幼児が、しばしば独特の睡眠異常を示すということが書かれています。以下は引用ではなく要約です。

■自閉症の乳幼児期
自閉症児(ASD)の場合は、おもに泣いてばかりでよく眠れない(反応性亢進タイプ)、眠ってばかりでほとんど手がかからない(反応性低下タイプ)に分かれます。(p57)

■ADHDの乳幼児期
ADHDの場合は寝つきが悪い「寝つき不眠」と夜中に何度も目を覚ましてグズる「頻回覚醒」が見られ、そのような報告を記した論文は、2007年以降だけで300を超えるそうです。(p60)

どちらの場合も、睡眠障害と発達障害は密接に関係していると考えられていて、もしかすると、乳幼児期から睡眠障害があるせいでよく眠ることができず、脳の発達が影響を受けているのではないか、とさえ書かれています。

これに即して、ロバート・ローゼンバーグは睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド の中でADHDだから睡眠障害になるというより、睡眠障害こそがADHDの兆候であるという考えを紹介しています。

睡眠の問題そのものが、ADHDの徴候であると考える研究者もいます。最近、ゼロ歳から11歳までの子どもの睡眠時間と睡眠の乱れを調べた包括的研究が行なわれました。計8195人の子どものうち、173人(2.1%)がADHDの基準に合致しました。

その研究によると、ADHDの子どもは、同じ年代の子とくらべて、夜中に目を覚ますことが多かったのです。

3歳から5歳までの子どもについては、睡眠時間の短さと睡眠の乱れは、ADHDの明らかな徴候と思われます。(p220)

この本は、たとえ健康な子どもであっても、睡眠不足などの結果、一時的にADHDのような症状を見せる場合があることも十分に認知した上で書かれています。そのようなケースは、睡眠を正せばADHD様症状はなくなります。

しかし、それを差し置いても、睡眠障害は生まれつきのADHD、つまり一時的な症状ではなく文字通りの発達障害としてのADHDとも密接に関連していると説明しています。

乳幼児期から幼少期に慢性的な睡眠障害が見られるなら、それはいずれADHDが発症する「明らかな兆候」とみなせるのです。

いずれにしても、赤ちゃんの寝つきの悪さを、意志力の問題のせいにする人はいないでしょう。ADHDの寝つきの悪さは明らかに生まれつきの脳の機能異常が原因です。

子どもの夜ふかし 脳への脅威 (集英社新)によれば、体内時計の形成不良や、持って生まれた概日リズムの長さなども関係しているのではないかとされています。

近年は、ADHDは睡眠覚醒の障害ではないか、という理論から、ドーパミンやノルアドレナリンではなく、睡眠・覚醒を制御する神経伝達物質であるオレキシンに注目した薬物療法もテストされているようです。

NLS Pharmaが成人のADHDへの投与でNLS-1の前向きな第2相データを発表、症状改善を実証 – SankeiBiz(サンケイビズ)

感覚過敏との関係も

また、ここまで見てきたADHDの人の注意のコントロール能力の問題は、刺激への敏感さと表裏一体の関係になっている可能性もあるでしょう。

先ほどのタンカーのたとえでいうと、エンジンの火を入れすぎて、スピードが出過ぎてしまうなら、やはり方向転換するのが難しくなります。

生まれつき、人よりも刺激に敏感で、ささいな感覚を強く受け取ってしまうと、ほかの子ならコントロールできるごく普通の刺激でも神経高ぶりすぎて、モード切り替えが容易にできず、なかなか寝付けなくなるのではないか、と考えられます。

その場合は、ADHDであると同時に、生まれつき刺激に敏感なHSPである可能性を考える必要があります。

HSPについて書かれたひといちばい敏感な子には、生まれつき敏感な子ども(HSC)の睡眠障害についてこう書かれていました。

生後6ヶ月頃になると、HSCの多くは、非HSCに比べて眠りにくい、すぐに目を覚ます、といったことが起こります。

…ある小児科医が見ている乳幼児のうち、約25パーセントが、夜じゅうぶん眠ることができず、そのほぼ全てがHSCだということも聞きました。(p231)

前述のロバート・ローゼンバーグは睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド の中で、慢性的な睡眠障害の一因としてHSPを挙げています。(p80)

おそらく、HSPの感覚過敏と、ADHDのコントロールしにくさは、かなりの程度オーバーラップして睡眠に影響を及ぼしていると思われます。

生まれつき敏感な子ども「HSP」とは? 繊細で疲れやすく創造性豊かな人たち
エレイン・N・アーロン博士が提唱した生まれつき「人一倍敏感な人」(HSP)の四つの特徴について説明しています。アスペルガー症候群やADHDと何が違うか、また慢性疲労症候群などの体調

生活習慣のアドバイスで寝つきが良くなるは嘘

世の中では一般に、「夜眠れず朝起きられない」という概日リズム睡眠障害は、病気ではなく、怠慢、つまり努力不足だと思われていることが多くあります。

ADHDの子どもが「夜どうしても寝つけない」というと、「もっと早起きしなさい」だとか、「早く布団に入りなさい」だとか言う、親や先生はとても大勢います。

しかし、古くから効果があるとして信じられているこれらの睡眠のアドバイスは、効果がないばかりか、有害であり、もっと、睡眠を悪化させることが知られています。最新の睡眠の専門家の意見を見てみましょう

「早起きすれば夜眠れる」という嘘

一般の非常に多いアドバイスの一つ目は、夜眠れないのは、朝起きるのが遅いためだ、というものです。

これは一見理にかなっているように思えます。夜眠れず、概日リズム睡眠障害に陥ってしまった人は、睡眠時間がずれこんでしまって、起きるのも遅くなっていることが多いからです。

お昼の12時頃まで起きだしてこない人を見て、「夜眠れないのは、朝寝坊しているからだよ。早く起きれば、しぜんに早く眠れるようになるよ」と言うのです。

ところが、ADHDの子ども・若者などの概日リズム睡眠障害を長年診てきた「子どもの睡眠と発達医療センター」の三池輝久先生は、不登校外来―眠育から不登校病態を理解する で次のように警鐘を鳴らします。

生体リズムの回復を試みるとき、多くは朝起きできない子どもたち を無理にでも早起きさせる傾向が強い。

早く目を覚ますことで早寝につなげたい意図としては理解できなくもないが、無理に朝起きを強制することは絶対にやってはいけないこととして理解していただきたい。

繰り返すが、一般常識化している、“早朝に起こすこと”は“禁忌”である。(p85)

ここでは厳しい口調で、概日リズム睡眠障害の子どもを早起きさせて、早寝させようとする取り組みは「禁忌」であるとまで言われています。どうしてそういえるのでしょうか。

三池先生は早く起きれば早く眠れる、というのは、健康で体力のある人にのみ当てはまるものであると述べます。時計機構がずれた子どもたち、つまり、概日リズム睡眠障害や不登校の子どもには当てはまらないわけです。

その理由を、続けてこう説明します。

なぜなら、現代の子どもたちは通学に、早朝練習に、早朝課外にと、すでに社会的強制力による早起きを実行しており、そのために多くの子どもたちはすでに慢性的睡眠欠乏状態に陥っている。

にもかかわらず、彼らの入眠時間は早くなっていないどころかますます夜型化していることはよく知られた事実である。(p85)

非常に簡単な論理です。少し冷静に考えてみれば、だれでもわかることです。

ADHDの子どもたちが、たとえ学校に行くため毎日早起きしていても、やはり「夜寝つけない」ことは、当事者の親ならだれもがわかっていることでしょう。

ADHDでなくても、普通に毎日早起きして学校に通っているのに、夜寝る時間がどんどんずれこんでいく子どもたちは大勢います。

明らかに、この場合、「早く起きれば早く寝れる」は嘘です。こんな単純な推論で誤りがわかるのに、多くの人は、ときには睡眠の専門家とされる人が声高に主張する「朝起き運動」に傾倒し、早く起きれば早く眠れるという嘘を信じ、子どもに強制しているのです。

三池先生は痛烈にこう批判しています。

子どもたちの脳機能を疲れさせ、学校から引き離すことにしかつながらない“早起き運動”は大人たちの勝手な自己満足である。

このような社会環境を作り、子どもたちに押しつけているにもかかわらず、何の反省もできない社会そして大人たちこそ責任を負うべき当事者である。(p86)

こうした浅はかなアドバイスによって、子どもの慢性的睡眠不足や不登校、果ては慢性疲労症候群が増加していると言われています。

なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?によると、科学者のメアリー・カースカドンは、睡眠時間を削って早起きして学校に通う生徒に、重大な睡眠障害、ナルコレプシーの徴候が見られると報告していました。(p146)

また慢性的な睡眠不足は、ADHDと似た状態を生じさせるという点も、三島先生が指摘しています。ADHDのせいで夜眠れないため、無理やり早起きをさせたら、ADHDが悪化することも考えられます。

興味深いことに、絆の病: 境界性パーソナリティ障害の克服 (ポプラ新書)では、「とにかく心の病気の人は早起きをしなければいけない」「ちゃんと規則正しい生活をしなければいけない」と言われてきたことで、かえって心身の健康が崩れた方の話が載せられています。(p123)

これは境界性パーソナリティ障害(BPD)の人のエピソードですが、ADHDの人はBPDになりやすいことが知られており、不安定で衝動的という類似した脳の特性を有しています。

一般に、精神的な健康には、早寝早起きが良い、などと言われたりしますが、本来の自分に合っていない生活リズムに合わせると、逆に精神的な健康を損なうことになりかねません。

ADHDの人たちは、もともと脳の機能の不安定さを抱えているため、無理やり睡眠を削ってまわりに合わせているなら、双極性障害や境界性パーソナリティ障害のような二次障害を抱えやすくなってしまうかもしれません。

この本の著者の、精神科医の岡田尊司先生は、「その人に合ったリズム」がある、と述べていますが、結局のところ、人はそれぞれ遺伝的に異なる個性を持っています。

三島先生の朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識によると、身長の遺伝率が86%であるのに対し、乳幼児の睡眠時間は60-70%と、それほど変わらない強い遺伝の影響が認められるそうです。(p123)

また、朝型夜型という概日リズムのクロノタイプも、遺伝の影響が50%、加齢による影響が数%、そして「環境的影響は小さいか、あってもごくわずか」であることが明らかになっているとされています。(p56)

個々の身長や体型を考えず、みんなに同じサイズの服を着せようとするとしたら、それは愚かなことでしょう。服に身長を合わせるのではなく、身長に服を合わせるべきです。

遺伝的に異なる睡眠時間や睡眠リズムを持っているすべての人に、早寝早起きというパターンを闇雲に当てはめようとするのも、それと同じほどばかげたことです。それぞれの個性に合った生活リズムが考慮されるべきなのです。

「早く布団に入れば眠れる」という嘘

早寝早起きでうまくいかない、と感じた人が次に持ち出すアドバイスは、「早く布団に入りなさい」というものです。

眠くならないのは、早く布団に入らず、電気をつけて作業しているからだ、というわけです。もっと早く寝る用意をして、真っ暗にして、ベッドに入ってしまえば眠れるだろう、というのです。

このアドバイスに関しても、大人の概日リズム睡眠障害を長年研究してきた国立精神神経センターの三島和夫先生は、8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識 という本でこう述べています。

不眠症では絶対にやってはいけないことです。それをやっているから、みんな不眠症がわるくなっちゃうんです。(p146)

この本の内容は、もともとナショナルジオグラフィックのWeb版で連載されていたことがもとになっているので、詳しくは、そちらから引用しましょう。

第4回 目からウロコの不眠症治療法 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト はてなブックマーク - 第4回 目からウロコの不眠症治療法 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

ここではたと気づいたのだが、子どもが眠れない時など、親としてよく助言してしまうあの考え方もダメってことにならないだろうか。

つまり、「眠れなくても、横になっていれば、体は休まるから、横になっていなさい。そのうち眠くなるから」というやつ。ぼく自身、これまで何度も言ってきたし、自分自身に言い聞かせ、眠れない夜を横になったまま過ごしたこともある。

「それ、よくかかりつけの内科の先生なんかに言われたという人は今もいるんですが、絶対、不眠症ではやってはいけないことです。それをやっているから、みんな不眠症が悪くなっちゃうんです」と三島さんの回答は、案の定、であった。

お医者さんでも誤解していることがあるそうだから、これも相当強力な神話なのだろう。

これはどういうことなのでしょうか。

三島先生は、これはいわゆるパブロフの犬現象と同じだ、と説明します。つまり、エサを与えられなくても、エサを与える合図のベルを鳴らしただけでよだれが出る犬の実験のことです。

この実験は、本来無関係なものであっても、同じ状況で同じことを経験していると、それらが結びついてしまい、条件づけが行われてしまう、ということを意味しています。

睡眠についても同様です。もし眠くないのにベッドに入って、何時間も悶々としながら起きている、というのを毎日毎日経験したらどうなるでしょうか。

頭の中で条件づけが行われてしまい、「ベッド」= 「眠れない場所」というつながりが生じてしまうのです。それを繰り返せば繰り返すほど条件づけは強固になり、ベッドに入ると逆に目が冴えるようにさえなります。

三島先生によると、特にお年寄りに多い不眠症は、このメカニズムで悪化し、慢性化しているということです。

「眠くなくてもベッドに入ればそのうち眠くなる」という良かれと思って与えられてきたアドバイスが、やはり睡眠障害の患者を量産していたのです。

ここまで見てきた、2つのアドバイス、「早起きしたら早寝できる」「早くベッドに入ったら眠れる」という2つの嘘は、当然ながら、夜寝つけないADHDの子どもや若者にも与えられてきたアドバイスです。

三島和夫先生による別の本朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識の中では、ADHDの子どもが、しばしば概日リズム睡眠障害を抱えることについて、次のように書かれていました。

注 意欠陥多動性障害(ADHD)の中には就寝抵抗が強い(寝床に入るのを嫌がる)タイプがいる。従来は睡眠障害でひとくくりにされていたが、夜型が原因の一 つであることがわかってきた。

同じADHD児でも、寝つきのよい児童に比べて寝つきの悪い児童では体内時計の時刻が遅れていたのだ。

結果的に、母親は「睡眠禁止ゾーン」で必死に寝かしつけようとし、子供は必死に抵抗するというバトルを繰り返していた。

寝つきの悪い子供の母親に限って早寝をさせることに躍起になってしまうことがある。

夜の親子げんかは子供の興奮を高めるばかりだし、睡眠薬も無効である。(p251)

わたしたちの睡眠には「睡眠禁止ゾーン」(睡眠禁止帯)というものが存在していて、本来寝つくことのできる時間から数時間前までは、寝ようとしても眠れないことが知られています。

つまり、子どもの概日リズムが夜型だと、無理にいつもより早い時間帯に眠るようベッドに入らせても、睡眠禁止ゾーンにひっかかって眠ることができないため、「ベッド」=「眠れない場所」という条件付けが悪化するばかりで、より眠るのが苦痛になってしまうのです。

子どものころから、こうしたアドバイスをまじめに実践しようとしたADHDの人の眠りは、余計に悪くなっていると考えられます。生来の脳機能のせいで寝つけない上に、睡眠不足の蓄積や条件づけが上乗せされ、余計に悪化していることでしょう。

ADHDの概日リズム睡眠障害を治療するには

このように、ADHDの人が、夜寝つけなかったり、疲れているのに眠れなかったりするのは、おもに生活習慣の問題ではなく、脳機能の特性の問題です。基本的にいって、生活を工夫するくらいでは治りません。

生活習慣を工夫するくらいで治るのであれば、それは定型発達者が時たま陥る単なる夜更かしにすぎません。それはADHDとも、概日リズム睡眠障害とも関係ありません。

ダニエル・エイメン博士が著書のタイトルで述べているように、ADHDの人は「わかっているのにできない」脳だから問題なのです。

では、ADHDの人の概日リズム睡眠障害には、どのような治療法があるのでしょうか。

概日リズム睡眠障害の治療をする

まずできるのは、寝つくことができないのは、意志力の問題ではなく、概日リズム睡眠障害という難治性の睡眠障害であることを認識し、その治療を受けることです。

さきほどの三島和夫先生の朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識では、ADHDの子どもの寝つきの悪さについて述べた後で、次のような対策が書かれています。

このようなケースでは光やメラトニンを使って体内時計を調節してやる方が効果的なのだが、残念なことに親も医療者も睡眠リズムの問題として認識していないことが多い。(p251)

さきほど引用した文中にあったとおり、概日リズム睡眠障害では通常の睡眠薬は無効ですが、体内時計を調節するホルモンであるメラトニンや、高照度光療法などの治療によって、概日リズムを修正できる場合があります。

メラトニンは、サプリメントとして入手することができますし、より効果の強いロゼレム(ラメルテオン)というメラトニン受容体作動薬も近年、医師の処方によって使用できるようになりました。

先ほど触れた「子どもの睡眠と発達医療センター」のような専門施設では、入院して概日リズム睡眠障害を治療する、強力な高照度光療法室が用意されていることもあります。

三島和夫先生の本では、夜型傾向はかなりの部分が遺伝的に決まるものなので、たとえ朝型に修正できたとしても、生活リズムを保つことには苦労が伴い、ちょっとしたことで元の夜型に戻りやすいという懸念も書かれています。

夜型体質の人の苦労を理解するには、下流(夜型)に向かう川に小舟を浮かべて、流されないように毎日必死にオールを漕ぐ船頭をイメージしていただきたい。

…夜型の人は激流との戦いである。流されないようにするのが精一杯。どうやって上流に行けというのか。カヤックのオリンピック選手でもいずれは疲れ果ててしまうだろう。(p49-50)

それでも、概日リズム睡眠障害が比較的軽症の場合は、こうしたメラトニンや光療法などの助けを借りることで、社会生活に睡眠リズムを合わせやすくなるかもしれせん。

脳を覚醒させると眠れる?

メラトニンや光療法でもうまく改善できない重度の概日リズム睡眠障害の場合はどうすればよいのでしょうか。

すでに登場したニキ・リンコさんは、スルーできない脳―自閉は情報の便秘ですの中で興味深い体験談を載せています。

ところで、おかしな話だと思われるかもしれないけど、〈往生する〉力の弱さには、私の場合、リタリンがよく効いた。リタリンといえば中枢神経刺激剤なんだから、飲めば眠れなくなりやすく、夕方以降は飲まないようにと言われていたりする。

ところが、その昔、徹夜明けなど、疲れすぎてハイになって騒いでいるときに、たまたま朝の薬の時間がきたからといつもどおりに飲んだら、パタッと眠れてしまうということが何度も続いた。

それも、いつもの行き倒れ状態ではなく、準備万端でおとなしく布団に入ったのである。

…リタリンは先のことに備えて目先の快楽を断念する力を支える薬だから、そう考えれば少しも不思議なことではないんだけどね。

そのため、主治医の許可を得て、就寝前に八分の一錠から六分の一錠の服用で好結果を得ていた時期が何度かあった。(p83-84)

リタリン(メチルフェニデート)は、かつてADHDの治療に使われていた薬です。短期作用型で、切れ味鋭いのが特徴で、ADHDの前頭前野の血流低下を改善するなど、脳の働きを正常に近づけることで知られています。

リタリンは、一般に脳を覚醒させ、目が醒める薬として過眠症などに用いられていますが、ADHDの人にとって重要なのは、注意のコントロール能力を改善させるという作用です。

そのため、ニキ・リンコさんのように、リタリンをごく少量服用することで、注意の切り替え能力が改善され、睡眠モードに入りやすくなる場合もあるのだと思われます。

残念ながら、現在リタリンはADHDに使うことはできず、ナルコレプシーという過眠症のみに適応があります。(すでに述べたように、無理やり早起きすることは、ナルコレプシーに近い徴候をもたらす場合があります)

代わりに、ADHDにはコンサータというリタリンと同成分の長期作用型の徐放剤が使われていますが、特殊なカプセル構造のため少量を分割して飲む、というような使い方はできません。

それにしても、一般に考えられているような睡眠導入剤ではなく、脳を覚醒させる薬が寝つきをよくするということ自体、ADHDの寝つきの悪さが脳の独特な機能異常によるものだという事実を強烈に裏付けしています。

脳を鎮静化すると眠れる?

ADHDの子どもの概日リズム睡眠障害を長年診てきた「子どもの睡眠と発達医療センター」で行われている薬物療法も、これと似たアプローチです。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するには、治療法について、こう書かれています。非常に多くの種類の薬について書かれていますが、ここではADHDの話題に関係のある部分だけを紹介します。

入眠に関しては、できればメラトニンと降圧薬(クロニジン)を試み、血圧の問題がある場合、あるいは効果が得られない場合に睡眠薬を用いる。

…プロプラノロール(β遮断薬:1~2錠)は脈拍数が多く喘息の既往がない例(喘息をもつ症例では使用できない)には睡眠質を向上させる意味で有効性が高いように思われる。

…この点からこれまでリタリンの少量(5~10mg/day)は有効性を発揮し、日中の眠気を少なくすることと夜の眠りをスムーズにする作用を示していたが、リタリンに関する一連の問題噴出のため残念ながら使用できなくなってしまった。(p87-88)

ここで挙げられている、降圧薬カタプレス(クロニジン)、β遮断薬インデラル(プロプラノロール)、リタリン(メチルフェニデート)はいずれも、ADHDの治療でよく用いられる薬であることは、以前の記事で紹介しました。

リタリンが「夜の眠りをスムーズにする作用」を持つというのはニキ・リンコさんの話と一致しています。

カタプレスとインデラルは、リタリンとは逆に脳を鎮静化させる薬ですが、ADHDの興奮した脳を鎮める作用があるとされています。夜に絶好調になったり、ハイになったり、目が冴えたりするのを防いでくれるといえます。

注目に値するのは、そうしたADHDに効く薬(クロニジン)が、通常の睡眠薬より優先して処方されていることです。これもまた、概日リズム睡眠障害には独特な脳機能が関わっている場合があることを示しているのかもしれません。

生活習慣の正しいアドバイス

先ほどは睡眠を正すための間違ったアドバイスを紹介しましたが、もちろん、入眠を助けるための正しいアドバイスも多くあります。

■光の当たり方
夜寝る前に電子機器を使用したり、明るい場所に行ったりしないというのは、寝るモードへの切り替えをよくするのに、いくらか効果が見られるかもしれません。しかし以前の記事で取り上げたように、概日リズム睡眠障害の人は朝早く太陽の光を浴びてはいけません

■眠くなるまで布団に入らない
前述の三島和夫先生は、「早く布団に入れば眠れる」の対極にある、「眠くなるまで布団に入らない」というアドバイスを紹介しています。

「眠くなるまで布団に入らない」ことで、ベッドに入ればすぐ眠れるようにし、ベッド=寝る場所という方向の条件づけが生じるよう脳を訓練するのです。

■寝る前の用事の簡素化
寝る前の注意の切り替え回数を減らすため、寝る前の用事は、早い段階で行ったり簡素化したりするのも有効かもしれません。そうすれば特定の活動で引っかかって先に進めないということが少なくなります。

早く寝るコツは、眠くなる前に寝る準備を終えておこと | ライフハッカー[日本版]

■脳機能のほうに生活を合わせる
ADHDの人がしばしば試みている手段かもしれませんが、脳機能のほうに生活を合わせる、という方法もあります。早寝早起きせずにすむ仕事を見つけたり、フリースクールに通ったり、自営業を行ったりするわけです。

もちろんすでに述べたように、ADHDの概日リズム睡眠障害は、脳の機能異常が原因であるため、軽症の場合はともかく、重症の場合は生活習慣を整えるだけでは解決しにくいでしょう。

「生存者バイアス」―そもそもこれは「障害」なのだろうか?

ここまで、ADHDの人たちが夜型になりやすい理由と、その対処法を「概日リズム睡眠障害」という病気の観点から考えてきましたが、最後に別の考え方を紹介しておきます。

現代社会では「朝型」は健康によく、「夜型」は健康に悪い、と考えられがちです。(例 : 睡眠:夜型の人は慢性疾患が多く、死亡リスクも高い:話題の論文 拾い読み!:日経Gooday)

朝型の子どものほうが成績がよい、といった研究もちらほら見かけるので、これは科学的事実のようにみなされています。

しかし朝型生活や早起き運動のメリットをめぐる研究には、根本的なところでバイアスがかかっていると思われます。

わたしたちの社会では「朝型」の遺伝傾向(クロノタイプ)を持つ人が多数派です。すると、社会は朝型に合わせてデザインされます。たとえば学校や会社の登校時間が早朝なのは、朝型人間が多数派だからです。

すると、生まれつき夜型の遺伝形質を持つ少数派の人たちは、社会に適応するのが難しく、パフォーマンスを発揮できません。結果、不登校になったり、健康を害したりしやすくなります。

本当は社会の要求する時間が自分の体質に合っていないから成績が悪くなるのに、「夜型」生活をしているせいでパフォーマンスが低下していると誤解され、「朝型」のほうが健康にいいという神話が作られます。

この種のバイアスは、「生存者バイアス」と呼ばれているものです。WORK DESIGN:行動経済学でジェンダー格差を克服する は、男女のジェンダー格差についての本ですが、「生存者バイアス」について次のような例が書かれています。

「リーダーにふさわしいのは男性だ」というステレオタイプには、根拠らしい根拠がない。リーダーの地位についてる女性の絶対数が少ないため、イメージが湧きにくいだけだ。

興味深い研究がある。2011年の大規模な調査によると、リーダーは男性のほうが好ましいと思っている人たちに、実際に女性のリーダーを目の当たりにさせると、女性リーダーを男性リーダーより低く評価することはない。

つまり、女性の上級マネージャーが男性より劣るという現象は、私たちの頭の中にしか存在しないのだ。(p38)

社会において、男性のほうが女性より能力があるとみなされやすいのは、社会の仕組みのせいで男性のほうが高い立場に就きやすいという「生存者バイアス」がかかっているからです。

実際の学力や資質などを調査すると、男性のほうが女性より優れているとする根拠はなくなり、男性にも女性にもさまざまなタイプがいて、多様性があるとわかります。

朝型のほうが夜型より優れているとする種々の研究も、まったく同じ「生存者バイアス」によって歪められています。

「夜型」体質の人が健康を崩しやすく、社会の正式な仕事につきにくいせいで、権力のあるポストにつけるのは生まれつき「朝型」の体質の人ばかりになります。

なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?の中で、欧州生物リズム学会の会長ティル・レネベルクはこう述べていました。

この結果は、意思決定者には朝型で睡眠時間が短い人が多いという仮説を裏付けている。それは単に淘汰による現象だ。

…彼らは体内時計が問題になるのは、感じやすい人だけだと思っている。あるいは誰でも規則正しい生活をすれば、一定の労働時間に適応できると思っている。

また若者が夜更かしで、午前中は頭が働かないのは、テレビの見すぎやディスコでだらだらしているからだと信じている政治家や教師もいる。

そのような批判をする人はほとんど朝型で、睡眠時間が短いタイプなのだろうか? もしそうなら、時間生物学の見解が、日常生活に採り入れられるのにひどく時間がかかるのも不思議ではない。

意思決定者は社会的時差ぼけに苦しんだ経験がないため、システムを変える必要性を感じない。(p273)

その人たちは、朝起きることに苦労したことがないので、学校や会社の仕組みは変わらないどころか、より朝型を目指す早起き運動などを奨励しはじめます。

極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ) の中で、スタンフォード大学 睡眠医学センターの河合真先生はこう書いていました。

こういうときにときどき睡眠相が前進している高齢の政治家、医者、ビジネスパーソンが、「早起きは三文の徳」といいだして、始業時間を早めようとしますが、これは絶対に認めてはいけません。

さらに始業時間は遅くても、朝学習、朝練習を奨励したりします。始業時間前に登校して、勉強をしたり、クラブの練習をしたりすることです。

大部分の10代にとって、これは全然集中力が上がらない時間帯の非効率的な方法ですから奨励すべきではありません。(p194-195)

こうした早起き運動の結果、夜型の人たちは、まだ社会に出る前に、学校生活の時点で可能性をつぶされます。

そして朝型の人たちの成功事例、夜型の人たちの失敗事例ばかり増えていき、朝型生活こそが健康的だという神話が強化されていきます。朝型の人たちが成功しているのは、ただ環境に恵まれているからにすぎないのですが。

社会的に少数派である夜型の人たちやADHDの人たちは、近年、注目されている障害の社会モデル論を知っておくとよいかもしれません。

これは、少数派の人たちが持っている個性が、多数派の社会になじめないというだけで、誤って障害とみなされているという考え方です。

有名なところでは、アスペルガー症候群があります。アスペルガー症候群は、長らく脳機能障害のようにみなされてきましたが、定型発達者が多数派をしめる社会で生活しているせいで、障害に見えてしまうにすぎないことがわかってきました。

もしも、アスペルガー症候群の人が多数派、定型発達者が少数派を占める社会があれば、社会になじめず、空気が読めないのは定型発達者のほうであり、健常と障害の概念が逆転するだろうと言われています。

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この記事で考えているADHDの人たちの概日リズム睡眠障害も、同じタイプの「障害」である可能性があります。

つまり、睡眠に苦労しない朝型の定型発達者たちが作り上げた社会に適応できないがために概日リズム睡眠「障害」とみなされていますが、もし夜型の人が多数派をしめる社会があれば、そもそも問題になっておらず、この記事も必要ないかもしれません。

あるいは、すべての子どもに早起きのスタイルを強制するのではなく、一人ひとりが持って生まれた体内時計のクロノタイプに合ったスタイルを選ぶことができれば、朝型の人も、夜型の人も、それぞれの長所を発揮できる社会につながると思われます。

すでに海外の一部の地域では、時間生物学の最新の見解にもとづき、子どもの早起きを進めるより、学校の始業時間を遅らせることが推進されています。詳しくはこちらをご覧ください。

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心理学者たちの中には、ADHDという「障害」は、学校や都市生活というシステムが一般的になったことで作られた文化的な病である、と考える人たちもいます。

ADHDの人たちが持つさまざまな特性は、学校や都市の環境で生きるときには不適応を起こし、さまざまな二次症状を引き起こしますが、それらが存在しなかった時代には、ひとつの個性にすぎず、むしろ長所とさえなったと思われるからです。

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おそらく、学校という早起きを強制されるシステムや、都市という真夜中まで明るさが蔓延している「光害」環境がなければ、ADHDの概日リズム睡眠障害は存在しないのではないでしょうか。

たとえば、電灯が普及して、24時間明るいままの現代社会では、レバーの切り替えが鈍い人は深夜まで寝られなくなり、どんどん睡眠リズムが狂います。

しかし、かつての光害なき社会では、夜はすぐに真っ暗になるので、ほとんど問題にならなかったかもしれません。また、夜型のクロノタイプの人が当時から存在していたとしても、都市の夜警として重宝されたかもしれません。

「障害」とは、必ずしも個人の生まれ持った欠点ではなく、その時代特有の文化・社会的背景によって、生み出されるものでもあるのです。

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それは意志の弱さや怠慢ではない

夜疲れたら自然に眠れる、というのはとても幸せなことです。普通の人たちは、このことを何とも思っておらず、何の努力もなく自然に行っていますが、それは決して当たり前のことではありません。

多くの人は、夜眠りたくても眠れないということを、(イベント前などを除き)めったに経験しないため、概日リズム睡眠障害を抱えるADHDの人が毎晩、毎朝、どれだけ苦労しているか、想像することさえできません。

そのため、事態を軽く考え、早く起きれば早く寝れるだの、早くベッドに入れば早く眠れるだの言うわけです。 寝る前にホットミルクを飲んだらぐっすり眠れる、というレベルの話で片付けます。

彼らは、ADHDの人が夜眠つけないのは、意志の弱さや自己管理能力のなさだと決めつけますが、それはあたかも車椅子の人に向かって、歩いたり走ったりできないのは、意志の弱さが原因だと言っているようなものです。

ADHDの人は、そのような根拠のない批判を真に受けて落ち込んだりしないよう、自分の脳の特性についてよく知る必要があります。

なぜ、他の人が当たり前のようにできることが、自分にはできないのか。なぜみんなは簡単にできることに、自分はこれほどにも苦労してしまうのか。その原因は、生まれつきの脳の働き方にあるのです。

概日リズム睡眠障害は、多くの人が思っているような生活習慣の乱れではありません。

三池輝久先生は、不登校外来ー眠育から不登校病態を理解するの中で、これを「昼夜逆転傾向をもつ難治性の睡眠障害」「日常社会生活を不可能にする究極の睡眠障害」だと表現しています。(p27)

ADHDの人が概日リズム睡眠障害に陥ってしまったら、周囲の人が良かれと思ってアドバイスする付け焼き刃の対処法ではなく、正しい知識を学び、専門家の治療を受けることが不可欠です。

発達障害という脳のブラックボックスがおおもとで起こっている症状に対処するには、その蓋を開けて中身をよく調べなければならないのです。

▼概日リズム睡眠障害について
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追記:その後の研究と薬物療法について

2021年の第 63 回日本小児神経学会学術集会でADHDの併存症として、睡眠障害の問題が扱われたそうです。以下のPDFで読むことができます。

特集・第 63 回日本小児神経学会学術集会<シンポジウム 1 : ADHD の周辺にある併存症について理解を深める>注意欠如・多動症(ADHD)と睡眠障害│脳と発達 2022

内容を簡単に要約します。

まず、論文の要旨によると、「注意欠如・多動症(ADHD)は側坐核,線条体,前頭葉などにおけるカテコラミンのみならず GABA,グルタミン酸神経系などの機能不全が病態の背景にあると言われ,様々な睡眠の問題を抱えている可能性がある」とされています。

今回の記事で、ADHDの人は、寝るか起きるかという睡眠と覚醒の「切り替え」がうまくいかない点に触れました。

この論文では、睡眠覚醒に関係する神経伝達物質のうち、アクセルに当たるのは脳を興奮させるグルタミン酸で、ブレーキに当たるのはGABAであると説明されています。脳幹や視床下部は調整の役割を果たしています。

ADHDの子どもたち(5~9歳)のGABA/グルタミン酸量を測定した研究によると、脳の複数の部位でGABAの減少があると報告されたそうです。予想どおりADHDの人はうまくブレーキが働かず、切り替えが苦手なことが証明されています。

また、脳の神経ネットワークには、頭を使っている時に活性化するタスク-ポジティブネットワーク(TPN)や、ぼーっとしている時に活性化するデフォルト-モード・ネットワーク(DMN)があります。

ADHDの人では、TPNが弱く、DMNが過剰に活性化していて、抑制機能の問題があるとみなされているようです。これも、スイッチのオンオフの切り替えが苦手なことを示唆しているとみなせます。

こうした脳機能の特徴、すなわちブレーキの効きにくさ、切り替えの難しさはどんな問題につながるのでしょうか。

この記事では特に概日リズム睡眠障害について考えました。しかし、論文では、ADHDに伴う睡眠障害はもっと多岐にわたっています。

それは、日中の過度な眠気、中枢性の過眠症、ナルコレプシー、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群、さらに慢性疲労症候群やそれに伴うブレインフォグ(脳に霧がかかったような感覚)などです。

興味深いことに、ADHDの子どもは、日中の過度な眠気のため、安静時の脳波を測ると本来睡眠時に増加するはずのシータ波が増加し、活動時に増加するはずのベータ波が減少している傾向があり、米国ではADHDの補助診断の指標と認められているそうです。

この脳波異常は、中枢性過眠症と共通している特徴だそうです。それゆえ、過眠症の治療薬として使われるリタリンと同じ成分(メチルフェニデート)の徐放剤コンサータがADHDの治療に用いられることには根拠があるといえます。

「ADHDにおける日中の強い眠気や覚醒度の不安定さは、ADHDの中核症状と密接に関わっていると考えられている」と書かれています。

一方、ADHDやASDの神経発達症の当事者の中には、強い眠気を訴えているにもかかわらず、脳波上は客観的な眠気が認められない場合もあるそうです。

その場合は、「不安などに伴う心的神経症的防衛機制やADHDとの関連も示唆されている慢性疲労症候群でもよくみられるブレインフォグなどが関係」しているのではないか、と書かれています。

この防衛機制とは、言い換えれば、おそらく「解離」のことだと思われます。慢性疲労症候群のブレインフォグも解離の一種である離人症が原因になっていることがあります。

また、突然、眠り込んでしまう発作や、金縛り(睡眠麻痺)、入眠時幻覚を特徴とするナルコレプシーもADHDとの併発がまれではなく、共通の遺伝的要因が関係していると考えられています。これを書いているわたしもナルコレプシーの傾向があります。

この記事で扱った概日リズム睡眠障害については、時計遺伝子のBMAL1、PER2が正常に発現していないこと、メラトニン分泌時刻の遅れ、メラトニン合成経路の障害、および生活習慣の悪循環などが関与しているのではないか、と論じられています。

レストレスレッグス(むずむず脚)症候群は、最大で半分弱のADHDの子どもに合併しているそうです。両者にはドーパミン系の異常活動や鉄欠乏といった共通原因があると考えられています。寝ている間に手足が動いてしまう周期性四肢運動の合併も多いそうです。

こうしたADHDに合併する様々な睡眠障害の薬物治療として、以下のような知見が記されています。

・メチルフェニデート(コンサータ)、リスデキサンフェタミンメシル(ビバンセ)、アトモキセチン(ストラテラ)など覚醒維持系のADHD治療薬が有効。適応外であるが、ナルコレプシー治療薬のモダフィニル(モディオダール)も。

・アトモキセチンは動物実験レベルでは、体内時計、寝つき、寝起きの改善が報告されている。

・不眠に関してはASD同様にメラトニンが有効。メチルフェニデートとメラトニンの併用療法が効果的かつ安全。メチルフェニデートを使った場合は1~2ヶ月で睡眠の変化が落ち着くことが多い。

・さらに睡眠相後退や不眠がみられる場合は、アトモキセチン、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬トラゾドン(デジレル、レスリン)、ミルタザピン(リフレックス)などを追加し、さらに改善しなければクロニジン(カタプレス)を使う。

・クロニジンと似たADHDの薬であるグアンファシン(インチュニブ)は副作用として眠気があるため、日中の眠気や夜間の中途覚醒を引き起こしていまう場合があるが、うまくいくこともある。