2016年発刊の、わたしが関心を惹かれた本の一覧です。
気になる本のリストですので、内容を確認していないものも多分に含まれます。翌2017年のリストはこちら。
2016年の気になる本
■12/26 NHK きょうの健康 2017年 1月号
…「全身の痛み 線維筋痛症」の特集があります。
■12/24日経サイエンス2017年2月号
…腸内細菌の特集号
■12/23 失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織
…失敗を否認してしまう心理と、失敗をプラスに活かすための研究。
■12/20 睡眠・食事・生活の基本
…赤ちゃん学で理解する乳児の発達と保育 第1巻 (出版社による目次)
■12/16 すべての疲労は脳が原因 2 <超実践編> (集英社新書)
…食事、睡眠、生活環境において、疲労を予防・解消する具体的な方法
第一章は前巻の内容の疲労研究の復習、第二章からは、食事、睡眠、環境についての実際的な疲労大作のアドバイス、という構成からなっています。
読みやすくわかりやすい反面、限られた裏づけにもとづく短絡的なアドバイスが多く、ちまたのライフハック本に似た軽薄な印象を受けます。そういう考え方もあるか、と話半分に受け止めておくのがいいかもしれません。
実践編と言うだけあって、前巻よりも具体的な記述が多いですが、全体として見れば重複している内容がほとんどで、同著者の本をすでに一冊読んだことがあるなら、改めて読むほどではないように思います。
■12/12 児童心理 2017年 01 月号 [雑誌]
…ポジティブ心理学や防衛的悲観主義について載せられている
■12/12 PRESIDENT (プレジデント) 2017年 1/2号 [雑誌]
…「大敵はストレス!じわじわ心を蝕む国民的病気」で慢性疲労症候群が取り上げられている
■12/1 マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち
… 人間の体内に棲む何兆もの微生物群(マイクロバイオーム)について学びたい人のための基本書
■11/24 メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服
…境界性パーソナリティ障害の治療として注目されているメンタライゼーション療法(MBT)の本
■11/23 臨床場面での自己開示と倫理―関係精神分析の展開
…岡野憲一郎先生による精神分析における治療者と患者の関係性についての論説
■11/18 愛着障害の克服~「愛着アプローチ」で、人は変われる~ (光文社新書)
…愛着障害の専門家の岡田尊司先生による、愛着の治療の解説本。
感想:愛着障害の岡田先生の最新の本で、治療法に焦点が当てられた本、なのですが…子どもの症状は家族の病理の反映であることも多く、本人だけでなく、家族もケアして愛着関係を安定させていくのが有効、という「愛着アプローチ」の解説。 しかし語り口に くどさや押し付けがましさを感じることがあり、今までの本に比べて何か違和感が…。
特に、成人済みの人や孤児など、まわりに家族もいないのに、症状に悩まされている人の場合には通用しないので、あくまで家庭内のゆがみによる不安定な愛着にのみ通用する話である気がします。 本来の意味での愛着障害に対するアプローチについては、トラウマ研究の専門家の本のほうが役立つように思えました。
■11/16 つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線 (ブルーバックス)
…理化学研究所が送る、脳と心に関する9つの最新研究
少し内容が難しく、実験室の中の話ばかりなので ピンとこない部分があるものの、興味もそそられる話題もそこそこ点在している本でした。
話題としては記憶の仕組みに間するものが最も多く、そのほか特定の脳の疾患や愛着に関する章が少し。
記憶については恐怖記憶の生成についての部分が、青斑核から出るノルアドレナリンが、扁桃核や前頭前皮質での記憶の生成に関わっているなど、PTSDやトラウマといくらか関係していて興味深く思いました。
また愛着については、内側視索前野(MPOA)や分界条床核菱形部(BSTrh)が重要な役割を担っていて、その仕組みが機能しないことが虐待と結びついていそうです。抱っこして歩くと子どもが泣き止む輸送反応は、子どもの側が運ばれているのを固有知覚で感じられてはじめて成立するというのは、自閉症などの子の扱いにくさと関係しているかもしれません。
双極性障害のメカニズムを解き明かしていく章はこの本の中で最も興味深く、ミトコンドリア病と似ていること、眼瞼下垂が現れること、特に松果体や手綱核のミトコンドリアの働きに問題があることなど、もしかするとこのブログで見てきた慢性疲労や愛着障害、睡眠障害ともつながっているのかもしれません。
全体的に実験結果を細かく読み解いていくボトムアップ型の本なので、いったいそれがわたしたちの日常にどう関係してくるのか、という身近さが感じにくく、共感して読めるタイプの本ではないですが、基礎知識として知っておくとどこかで役立つかなと思いました。
■11/7 週刊ダイヤモンド 2016年11/12号 [雑誌]
…特集「疲労の正体」で、疲労研究や慢性疲労症候群などが扱われています。
■11/5 生きるための哲学 (河出文庫)
…愛着障害の専門家の岡田尊司先生による、歴史上のさまざまな著名人が想像を絶する逆境を乗り越えた考え方を分析していく本
岡田先生の本は、近年の本はわりと読ませていただいていますが、この本はその中でも屈指の名著だと感じました。他の愛着障害などのメンタルヘルスを売りにした本と違い、地味で目立たない本ですが、そのぶん医者としての立場や、治療という目的にとらわれない、純粋な作家としての岡田先生の筆致が楽しめます。
■11/5 脳はいかに意識をつくるのか―脳の異常から心の謎に迫る
…意識とは何か、という問いから、 統合失調症における「世界‐脳」関係の崩壊などまで考察されている
■11/4 スッキリ! 体と脳の疲れが消える本 (PHP文庫)
…疲労研究者の梶本修身先生による一般向けの疲労回復法の本
■11/2 成人病と生活習慣病 2016年 10 月号 [雑誌]
…特集「不定愁訴症候群とどう向き合うか」の中で、脳脊髄液減少症の篠永正道先生、慢性疲労症候群の松本美富士先生、線維筋痛症の西岡久寿樹先生がそれぞれ執筆されています。
■10/31 身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア
…ソマティック・エクスペリエンシングというトラウマセラピーを考案した神経生理学者ピーター・A・ラヴィーンによる技法の解説。
感想:タイトルどおり、トラウマの身体的な影響について、生理学的に解き明かしていく本。
トラウマをヒト特有の心の問題としてではなく、動物全般に関係する恐怖反応という生理学的問題として読み解いていく、とても読み応えがある本ですが、 原文の文章が難しかったらしく、訳者の努力にもかかわらず読みにくさが残っています。このたぐいの本としては語句索引がないのも非常に残念。
今でこそある程度理解できるけれど、先にヴァン・デア・コークの「身体はトラウマを記録する」などを読んでおいてよかったです。特にポイントになっているのが、不動状態と解離。
トラウマというとPTSDのような激しい反応を思い浮かべがちですが、本当に大変なのは、固まり、凍りつき反応が解除されず、エネルギーが枯渇して生ける屍になってしまうこと。
この状態は慢性疲労症候群、線維筋痛症などの身体症状として現れます。最初のほうに、線維筋痛症と慢性疲労症候群を合併した状態の若い大学院生の女性の話が出てきますが、原因になっていたのは、本人さえも解離させて忘れていた4歳のときの扁桃摘出手術のトラウマで、そのときの逃避不能ショックで生じた生理学的な不動反応がずっと身体で生じていたとのことでした。
体への侵襲も精神的な打撃も、脳と身体に恐怖反応を引き起こす点では同じであり、体と心のトラウマを分けて考えることはできない、ということになります。交通事故や手術後にしばしば発症する神経障害性疼痛も、身体がトラウマと闘い続けているせいで中枢感作が生じている、と捉え直すこともできそうです。
一般にトラウマというと心理的問題をカウンセリングで治療すると思われがちですが、トラウマに直面したときの凍りつき反応の不動状態が終了せず、ずっと身体が固まり・麻痺反応に閉じ込められてしまった人の身体感覚を治療するという、トラウマへの見方ががらりと変わる一冊でした。
内容的にはすばらしいので、これまでこの分野の本をすでに数冊以上読んでいて、多少読みにくい専門的な本でも大丈夫という方にはぜひおすすめしたいです。
■10/25 抗疲労と香り―香りの多様な働き・作用で美と健康をサポートする (香りで美と健康シリーズ)
…大阪市大による疲労、および香りの疲労回復効果に関するアロマテラピーなども含めた研究についての本
■10/22 鈍感な世界に生きる 敏感な人たち
…デンマークの牧師またカウンセラーであり、自身もHSPである著者のHSPの解説書
感想:HSPの特徴をうまくまとめた良書でした。全体像が手早くわかる反面、掘り下げは甘く、人によっては自分の知っていること、実践していることしか書かれていないと思ってしまうかも。入門編に最適です。
■10/11身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法
…トラウマ研究の世界的権威による集大成
感想:売日より2日早くAmazonから届きました(笑) 600ページ超えのボリュームでびっくり…。
発達性トラウマ障害(DTD)と愛着や解離との関連など、かなり詳しく扱われていて、この分野の本の総決算的な詳しさです。それでいて、文章は専門書っぽくなくとても読みやすい。
トラウマが単なる精神的な問題ではなく、全身の問題であることが強調されていて、たとえば「線維筋痛症や慢性疲労…など多種多様な身体的症状を引き起こしうる」理由も詳しく書かれています。(p91)
数十年後にまでバイブルとして読み継がれていたとしても不思議ではないほどの稀に見る名著なので、トラウマや愛着障害について興味のある人には是が非でも読んでほしい一冊です。
■10/6 ぼくが消えないうちに
…子どものイマジナリーフレンドをテーマにした少し不思議な児童文学
素朴な味わいのある児童文学かと思いきや、スリリングでドキドキするディズニー映画みたいな疾走感のある物語で、先が気になって気になってそのまま一気に読んでしまいました。
イマジナリーフレンドをテーマにしていますが、ちまたによくある心理学的に不正確な内容のものではなく、しっかりリサーチした上で、ファンタジー要素を織り込んでいます。真の意味で子ども視点の実体験を描けているように感じました。
■10/1 クリエイティヴィティ
「フロー」という概念の提唱者で創造性の研究で有名なチクセントミハイによる91名の偉人のインタビュー
じつはだいぶ昔に書かれた原著が今になってやっと翻訳されたもので、チクセントミハイの最新の著書ではありません。しかし今なお色褪せぬ丁寧な考察は、全然古臭さを感じさせず、十分に最先端の洞察と結びついているのではないかと思います。
惜しむらくはいつものチクセントミハイの本と同様、内容がかなり入り組んでいて複雑で読みにくいこと。かなりのボリュームもあいまって、読むにはちょっと覚悟がいります。その覚悟に見合った理解が得られるのもまたチクセントミハイの本ならではなのですが。
■9/29 極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ)
…スタンフォード大学睡眠医学センターの医師による本。子どもの睡眠障害にも警鐘。
■9/16 仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方
…大阪市大の疲労研究者で、東京疲労・睡眠クリニックの院長 梶本修身先生の新刊
■9/8 おいしく食べて疲れをとる
…大阪市立大による疲労を軽減する効果のある和食メニュー82品のレシピ本
■8/24 サックス先生、最後の言葉 (ハヤカワ・ノンフィクション)
…オリヴァー・サックスの死後に発刊されたエッセイ集
感想:15分くらいで読めるほど短いので、オリヴァー・サックスが好きで、彼の本をずっと読んできた人以外には縁がないかもしれない。
子どものころの疎開、喪失体験、内気さなどから、人よりも数字や化学に興味を持つようになった。そして自暴自棄になり薬物中毒にまでなった人が、やがて人を思いやり支える天職にめぐりあい、死の間際には、愛情あふれる人間関係と友情への感謝に満たされている。深みと温かみを感じるエッセイです。
特に印象に残ったのはこの言葉。
「人が死んだとき、誰もその人に取って代わることはできない。埋められない穴が残る。なぜなら、ほかの誰でもないひとりの人であること、自分自身の道を見つけること、…はあらゆる人間の運命―遺伝学的・神経学的運命―だからである」(p31)
まさしくサックスは唯一無二の、だれも代わりが務められない偉人でした。
■8/24 睡眠科学: 最新の基礎研究から医療・社会への応用まで
…睡眠研究の第一人者 三島和夫先生による専門書
■8/10 あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた
腸内細菌をめぐる問題についての本。「失われていく我々の内なる細菌」と内容が重複しているとの指摘も。
■8/4 やさしくわかる子どもの起立性調節障害
…昭和大学大学院保健医療学研究科准教授 田中大介先生による起立性調節障害の解説書
感想:起立性調節障害を取り巻く最新の話題をわかりやすくまとめた本。新しく見つかったサブタイプについての記述や、慢性疲労症候群、脳脊髄液減少症への言及など、浅く広く、話題を網羅しています。
■7/17 孤独と愛着-ダブルファンタジーへ生きのびる人々-
…愛着障害およびその周辺症状と闘ってきた人の精神世界についての実例と考察。
著者がカウンセリングの中で出会った症例から話をふくらませる短編エッセイ集のような体裁。イマジナリーコンパニオンについての部分は、おそらく当サイトの記事を参考にしたと思われる記述が見られました。
■6/30 脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線
…神経可塑性を引き出すことで、多発性硬化症や慢性疼痛などの難病を治療する研究の近年の進展を解説した本
感想:今年読んだ本の中でも五指に入るくらい興味深い。 慢性疼痛の治療としてイメージを働かせる方法や、慢性疲労症候群らも関連する段階的運動療法(この本ではパーキンソン病の治療法として登場)について、脳科学的なメカニズムを知ったことでイメージがガラリと変わりました。
イメージを働かせる治療が効果があるのは、疼痛などの過敏性と、想像力を働かせる脳の領域が同じで競合しているため。脳はどちらか一方しかできないので、痛みを感じる領域を意識して別の活動に転用することで、脳を再教育していけるのだとか。ただ人によって合う合わないはあるようですが。
段階的運動療法も、単に運動不足だから運動するようにというようなことではなく、意識的かつ段階的な運動には脳の可塑性を引き出す効果があって、たとえばパーキンソン病においては、失われた脳の能力を補う別の経路を作り出す助けになるらしい。太極拳が効果あるのもこのあたりでしょうね。
■6/27 黒板に描けなかった夢~12歳、学校からはみ出した少年画家の内なる世界
…東大の異才発掘プロジェクトROCKET第1期生の、いわゆるギフテッドの方についての本
感想: 学校になじめず、東大のギフテッド教育の異才発掘プロジェクトROCKETに行った子の作品集。
独特の感性による空想世界の絵と物語がおもしろい。文才があって架空の言語も作っていたダニエル・タメットを思わせます。 普通と違うことを安易に発達障害とカテゴライズせず、長所とみなして、そうした子にふさわしい居場所を作ってあげる大切さがわかります。
■6/13 生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 (朝日新書)
…岡田尊司先生の回避性パーソナリティ障害についての本
感想:岡田先生による回避性パーソナリティの本。 恐れ・回避型愛着スタイルが、成長とともに回避性パーソナリティになっていくという整理の仕方がわかりやすいです。
回避性パーソナリティとは、失敗や恥を恐れて一歩踏み出せず、引きこもりがちな人のことですが、単に社会から逃げたい、人づきあいが嫌い、というのではなく、本当は人とつながりたいけれど怖い、という相反する葛藤に悩まされることから、恐れ・回避型の愛着スタイルとの関連が論じられています。
具体例として、ショートショートの作家 星新一、ピーターラビットの作家ビアトリクス・ポターが挙げられていますが、どちらも名前くらいしか知らなかったので、回避性パーソナリティらしい独特な人生のエピソードが興味深かったです。一度一歩踏み出すと才能が輝き出すタイプですね。
■6月 難病患者の教科書―2016年5月版
…難病患者が知っておくべき制度やアドバイスがまとめられた手引書
■5/27 色の力 消費行動から性的欲求まで、人を動かす色の使い方
…学術的に裏付けされた、色の持つ不思議な力についての本
■5/27 教育と医学 2016年 6月号 [雑誌]
…小児慢性疲労症候群の特集。三池輝久先生らの記事
三池輝久先生によるCCFSの解説、倉恒弘彦先生による成人CFSの解説、そして水野敬先生による子どもの一般的な疲労についての解説の三篇が収められています。
分量的にはそれほど情報が多いとはいえませんが、コンパクトに慢性疲労症候群まわりの知見がまとまっていますし、近年では珍しい三池輝久先生による小児慢性疲労症候群の考察が読める上、値段も手頃なのでおすすめです。
■5/20 「アレルギーの臨床」2016年6月号
…化学物質過敏症の特集号。坂部貢先生らの論文
■5/12 障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
…障害のある子どもの将来ために親が利用できる制度の解説書
感想:具体的な各制度の使いかたや、「障害」「障がい」という言葉の捉え方など、実際的な面でも心理的な面でも役立つアドバイスが豊富でした。
■5/11 賢治の読者は山猫を見たか
…解離の研究からの宮沢賢治の作品の解説らしい
■4/29 「敏感すぎる自分」を好きになれる本
…生まれつき敏感すぎる人、HSPについての解説書
感想:愛着障害との関連、 HSPの人が過剰同調性になるとか、とても疲れやすいといったことが書かれていました。
HSP、愛着障害、発達性トラウマ障害などのクリニックを開院されています。当事者研究なども主催しているとのこと。
長沼先生の本には、慢性疲労症候群の背景としてHSPが見られやすい、という説明もありました。(p99) 感覚過敏による神経の過活動や、その結果としての愛着障害・発達性トラウマによる脳機能の変化が慢性疲労症候群の原因になっていることは、それなりにあるのではないかなと個人的に思います。
恐れ・回避型愛着スタイルによる生きづらさと、HSPによる疲れやすさ、そしてアダルトチルドレンなどを合併しているADHDの人の苦労は、全部同じものを別の面から見ているだけだと思います。どれが正しいというのではなく、切り口の違いではないかと。
■4/28 精神病と統合失調症の新しい理解: 地域ケアとリカバリーを支える心理学
…統合失調症とトラウマ障害(解離性障害など)との違いについての本と思われる
■4/28 心身医学 2016年 05 月号 [雑誌]
…線維筋痛症の全人的医療の特集。村上正人先生らの論文
■4/20 なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方
…アスペルガー症候群のミュージシャンについての解説・アドバイスの本
現場の当事者と医師による読みやすい対談形式で、アスペルガー症候群のミュージシャンの事例を中心に、発達障害と音楽的才能の関係や、発達障害のミュージシャンと周りがうまくやっていく方法、そうした人たちの才能を伸ばしていける環境づくり、企業として多様性(ダイバーシティ)に取り組む意義など、わりと深いところまで煮詰めていく良書でした。
■4/19 本当の夜をさがして―都市の明かりは私たちから何を奪ったのか
…夜の美しさや意義が失われたことで現代社会が抱える問題についての本
感想:表紙の美しさに一目惚れしてしまった本。現代の「光害」問題について多方面から書かれた興味深い内容。
こもかしこも明るくなっている理由のひとつに、夜道は危険で安全にするには明るくするしかない、という強迫観念がある。 しかし「明るいと安全」というのは錯覚にすぎず、街頭はむしろ犯罪を悪化させているというデータがあり、睡眠障害などの増加にもつながっているという。
本当の暗さを体験し、夜空の美しさを見たり、思索にふけったりしたことのない人たちが増え、ただ闇は怖いもの、危険なものという認識が広まっていて、社会は一日中明るく照らされていっている。一方で、「夜空の保護」を目指した取り組みも始まっているという内容で、共感できるところが多かったです。
■4/15 発達障害医学の進歩28
…杉山登志郎先生らによる「発達障害とトラウマ」をテーマにした特集
■4/15 すべての疲労は脳が原因 (集英社新書 829I)
…大阪市大の疲労研究の専門家 梶本修身先生による疲労のメカニズムの解説書
感想:良くも悪くも過去の梶本先生の本と似たような内容。初めて読む分には、疲労についての常識がひっくり返されて勉強になるし、前の本を読んでいたら目新しさがあまりなく感じがち。
ただ、睡眠時無呼吸症候群とCPAPの内容は今回が多分初めてで、無呼吸ほどひどくなくても、いびきをかいているだけで、自律神経に負担がかかり、慢性疲労が生じるとのこと。いびきをかいているかアプリなどでチェックして、当てはまるようなら、疲労回復CPAPというのを試してもいいかも。
■4/13 「病は気から」を科学する
…慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症、過敏性腸症候群(IBS)など、心身が密接に関連している病気の最新の治療法についての本
感想:気なく読んでたら、第四章が慢性疲労症候群をテーマとしていました。特にイギリスの医師と患者会の対立問題に優れた見方を提供していて面白い。
ここ最近読んでいる本は当たりが多いけれど、『「病は気から」を科学する』は特にすばらしかった。
線維筋痛症などの慢性疼痛をオキュラスリフトのようなVRで治療したり、条件づけによってADHDやパーキンソン病の薬の効果はそのまま減薬して副作用を減らしたり、催眠とイメージで過敏性腸症候群を治療したりして、実際に脳などの器質的な構造に効果が現れているという研究の数々は驚かされる。
もはや慢性疲労症候群や過敏性腸症候群などは「体の病気」か「心の病気」かといった論争が時代遅れなのがよくわかって、人間そのものについての理解が深まる本でした。
■4/11 そだちの科学 26号―こころの科学 特集:そだちからみたおとなの発達障害
…大人の発達障害の特集回
■3/25 右脳と左脳を見つけた男 – 認知神経科学の父、脳と人生を語る –
感想:脳の機能を知る上で、ものすごく面白い、そして理解が追いつかないほど深い本でした。
認知神経科学の父であり、現在よく知られている右脳と左脳の違いを最初に見つけたガザニガ先生のライフストーリーともいえる本。 一般に普及している、男性は左脳、女性は右脳、といった都市伝説ではなく、本当の実験から得られた脳の左右半球の違いがガザニガの人生とともに振り返られています。
脳には少なくとも2つの別々の人格があり、複数の異なるモジュールで世界を認識しているものの、通常は左脳のインタープリター(解釈者)の想像力で補って隙間を埋める、という働きによって、あたかも一つのまとまった人格であるかのように、自分にも他人にも思い込ませているというのが面白い。
左右の脳を切り離した分離脳患者ではそれができず、あたかも二人の別々の人のように思考してしまう。けれども脳はその状況に適応していき、やがて外部の合図をやりとりすることで、やはり左右の脳が協力して一人の人のように行動できるよう、さまざまな方法を学習する、という柔軟性がすばらしい。
しかし、脳はあくまでもモジュールから成り立っているので、ある部分が失われたとき、他の部分が補うことはできても、完全になり変わることはできない。だからこそ、脳に障害にある人は、健康な人のように「回復」することはできず、独自の柔軟な「適応」によって対処していく。それが可塑性の正体。
本当はバラバラなのに、本当は複数なのに、本当は障害があるのに、隙間を埋める解釈システムによって、まとまった完全な一つのもののように見せかけている。 ではそれがうまく行っていないのが自己の連続性が感じにくいアスペルガー症候群や、人格が複数になる解離性障害ではないのだろうか。
読めば読むほど疑問や興味が湧いてくる本ですが、ガザニガが認めるとおり、まだスタートラインに過ぎません。リアルタイムでどんどん新しいことがわかってきている状態。たとえば右脳にも視覚機能に特化したインタープリターがあるなど謎は深まるばかり。
ガザニガの自伝としての話もおもしろく、自分は大局を見るのは得意だけど、間違いが多くてすぐ飽きると告白して、ADHDかもしれないと述べていたり、幅広い友人たちとの面白いエピソードがあったり、科学者のあるべき姿勢についてアドバイスが興味深かったり。盛りだくさんの一冊でした。
■3/24 障害年金というチャンス!
…脳脊髄液減少症の社労士チームによる2016年の障害年金制度改正に対応した解説書
新制度の解説もさることながら、発達障害や線維筋痛症、脳脊髄減少症といった、制度の谷間で苦労しやすい病気の事例を収録していて、そうした病気の人が障害年金受給を考えるときに一通りの理解が得られる入り口的な一冊でした。
■3/1 絆の病 境界性パーソナリティ障害の克服
…岡田尊司先生の境界性パーソナリティ障害についての本
感想:非常によかったです。さすがAmazonで(現時点で)☆5つなのはダテではないなと(笑)
愛着障害の一冊目としては、いつもの「愛着障害子ども時代を引きずる人々」がいいでしょうが、二冊目にはこれを読むと理解が相当深まると思います。特にとらわれ型(不安型)愛着スタイルの人には最高の一冊かも。
どうして不安型の人(もちろん混乱型も)は完璧主義になったり、頑張り過ぎたり、安心できなかったりするのか、具体的な説明がわかりやすいですし、克服に役立つ方法もすぐ試せるユニークなものばかりで、経験者にしか書けない内容だな、と思いました。
■2/22 アートする科学 (別冊日経サイエンス211)
…芸術作品の科学的分析についての特集
■2/18 発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ (ブルーバックス)
…発達障害を障害ではなく認知の違いという観点から分析した本
感想:前著と同様の、発達における視覚の役割をはじめ、自閉症とは真反対の社交性を見せるウィリアムズ症候群との比較や、自閉症はひとつの個性であり、異なる視点に基づいた思考をしているにすぎないといった相対的な意見など、発達障害の理解の幅が広がる一冊でした。、
■1/23 教養としての認知科学
…認知科学の研究の解説書
感想:タイトルのとおり、まさに教養になる本。わたしたちの記憶や認知は、自分で思っている以上に不正確で、しかしその分コンピュータとは違って柔軟性に富むことが説明されています。
子どもは脳を決まったひとつの方法でなく、ゆらぎや変動性をもった様々な方法で使っていて、そのゆらぎがあるほど学習しやすくなるというのは興味深かった。大人がひらめき体験をするときも、本人は行き詰まっていると感じているときから、行動観察すると少しずつゆらぎが増えていっているのだとか。
この移ろい揺らいで、さまざまな神経の発火パターンが混在している状態が可塑性に富む脳の正体なのかもと思ったり。 ヒューリスティクスとバイアスのような行動経済学の話題もひととおり解説してあって、関連書籍も各章の終わりにたくさん紹介してある、よく整理された本でした。
■1/22 朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識
…国立精神神経センターの三島和夫先生による概日リズム睡眠障害の本
感想:大筋はナショジオのサイトに連載されているものそのままですが、本になったことで前後関係を理解しながら読みやすくなりました。
朝型・夜型の違いや、個人の必要睡眠時間は、身長・体重などと同様、遺伝の影響が強い、真性の夜型の人と夜型生活によって一時的に夜型に傾いている人は朝型リズムへの適応力が異なる、など、朝型がもてはやされる社会において、夜型の人が知っておきたい知識が満載です。