「まるで頭に霧がかかったようだ」
そのように思うことはありますか。思考がうまく働かず、人と会話するのも、文章を読み書きするのも、ちょっとしたことを記憶するのも煩わしい。
こうした慢性疲労症候群(CFS)独特の症状は「ブレイン・フォグ」(brain fog)と呼ばれるそうです。近縁の病気である線維筋痛症(FM)の場合もファイブロ・フォグ(fibro fog)というのが知られています。
このエントリでは、ブレイン・フォグとは何か、そしてどう対処できるかという点を探りたいと思います。うつ病の場合の思考に霧がかかった感覚についても触れています。
もくじ
ブレイン・フォグとは
さまざまな病気において、脳の血流が妨げられると、顕著に現れるのが、思考に靄がかかったような状態です。この症状は、CFSではブレイン・フォグ、メンタル・フォグ、FMではファイブロ・フォグなどと呼ばれます。
ブレイン・フォグは一般には高次脳の問題と呼ばれる症状に含まれます。しかし、CFSの場合は、ブレイン・フォグ、つまり「脳の霧」と述べたほうが分かりやすいので、わたしはこちらを用いています。
ブレイン・フォグの高次脳機能障害は、「思考に靄がかかる」とか「霧でかすむような」というように表現されるのですが、それでは表現不足な気もします。
2010年12月16日付のニュースウィークの記事「取れない疲れの原因を探れ」では、CFS患者で作家のローラ・ヒレンブランドについてこう書かれています。
「取れない疲れ」の原因を探れ | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
03年にニューヨーカー誌に寄せたエッセーで、ヒレンブランドは関節の痛み、リンパ節の腫れ、吐き気、疲労感について書いた。
むなしく医者を転々とした日々。無関心、恥辱、軽減しない症状。意識がもうろうとして、単語は意味を失い、思考は消えた。
「世界が遠く感じられた」と、ヒレンブランドは書いている。「透明なビニールにくるまれているかのようだった」
脳に霧がかかったような状態になると、筋道立てて考えることができなくなります。適切な言葉を探すことも難しく、コミュニケーションも困難です。おまけに物忘れも相当ひどくなります。本やテレビの話の筋が負えなくなる失読症も生じるかもしれません。
離人症と現実感喪失
CFSのブレインフォグ様の症状は、解離においても見られると言われています。実際には、性質の異なるものかもしれませんが、どちらも、「思考に霧がかかった状態」と表現されることが多く、症状も人それぞれなので、区別するのは困難です。
解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)によると、解離性の離人症は次のような症状を伴うことがあります。
自分と世界の間には半透明の膜があると感じる人が多い。目には見えないが、自分が膜に包まれていると感じている。(p39)
先のローラ・ヒレンブランドの「透明なビニールに包まれているかのようだった」という感想と似ているように思います。
一般に、CFSのブレイン・フォグは、頭が働かないという訴えが中心なのに対し、解離の離人感は、もう少し奇妙な不快感が伴うという特徴があるようです。
たとえば、解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)によると、解離による頭が働かないという訴えの場合は、異物感のような体感異常が伴うことがあります。
数年前から、脳の中に石のような固まりがいくつもできています。固まりは大きくなったり小さくなったりします。大きくなって脳の中いっぱいになると、なにも考えられなくなります。誰かと話していても、なにを言っているのか、さっぱりわからなくなります。(p31)
解離の当事者の中には、世界が白黒に見えたり、薄っぺらい紙でできているようにみえたりする、と述べる人もいます。自分が自分でないように思えたり、生きている心地がしなかったりするとも言われます。
興味深いことに、解離新時代―脳科学,愛着,精神分析との融合の中で、離人感についてこのような説明がありました。
また離人・現実感喪失についてはHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質軸)の異常も見られるという。
すなわちHPA軸の過敏反応(高いコルチゾールレベルと、ネガティブ・フィードバックによるその抑制が低下していること)のパターンを示すということだ。(Simeon,et al.2001)?
(参考までにうつ病やPTSDは逆に鈍化したHPA軸の反応パターンを示すとされる)。(p109)
ここでは離人感にはHPA軸が関係しているとのことですが、慢性疲労症候群でもやはりHPA軸が関係しているという研究があります。
また、離人感のHPA軸の反応はうつ病やPTSDと正反対であるとのことですが、やはり慢性疲労症候群もまた、うつ病とは正反対のコルチゾールなどの反応が見られるとされているのは興味深く思えます。
NHKスペシャル ここまで来た! うつ病治療という本には、抗うつ薬を飲んでも思考に霧がかかった感覚が治らなかったある日本の患者が、経頭蓋磁気刺激法(TMS)によって回復したという話がありました。
今ままでは頭に霧がかかったようなモヤモヤした感じだったのが、今では霧が晴れたようなすっきりとした気分ですよ。
薬を飲み続けてきたのに治らなかったうつの症状がなくなって、クリアになったと言うんですかね。(p186)
子どもの慢性疲労症候群の研究から
解離の研究は脇に置いて、慢性疲労症候群の話に戻りましょう。
ブレインフォグは、なぜか慢性疲労症候群(CFS)の研究では、あまり取り上げられることのない症状です。ところが、小児慢性疲労症候群(CCFS)の分野では、かねてから研究されていました。
小児慢性疲労症候群は、これまで大阪市立大学の倉恒先生のチームとは別に研究されてきた慢性疲労症候群の一形態です。
2001年、三池輝久先生を班長とするCCFS研究班が組織され、診断基準や治療法が制定されました。その活動は諸外国とも連携し、現在は「小児慢性疲労症候群国際基準」に基づいて診断・治療・研究が行われています。
わたしの知る限り、小児慢性疲労症候群(CFS)について解説した資料のうち、最も分かりやすいのは、学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてているという三池輝久先生の著書です。より詳しいことは不登校外来―眠育から不登校病態を理解するに書かれています。
CCFSは非常にはっきりした特徴を持つことで知られています。多くの子どもたちに見られる共通症状は(1)強い易疲労性 (2)睡眠相後退症候群 そして(3)学習・記憶機能障害です。最後の学習・記憶機能障害が、いわゆるブレイン・フォグではないかと思います。
これらは、大人の慢性疲労症候群にも見られる特色です。しかし、小児慢性疲労症候群においては特に顕著なため、中核症状と表現されています。
というのも、CCFSでは、学校にいけなくなる不登校という問題が絡んでくるため、思考に霧がかかって学業に集中できなくなるという訴えが重要になってくるからかと思われます。
三池先生は、「小児型慢性疲労症候群では情報の混乱がおこっており、情報が正しく伝えられていない」と指摘しています。また「神経線維間の情報の伝達に混線が起こり始めている、すなわち脳の働きに混乱が生じている」と述べています。(p42)
ブレイン・フォッグは、丁寧に整理した書類を、床に散らけてしまった時の惨状に似ています。すべてがバラバラになり、拾い集めて整理する労力を考えると途方に暮れてしまうのです。ブレイン・フォグは思考がバラバラになった状態です。
この認知の障害はいろいろな場面に影響を与えます。不登校外来―眠育から不登校病態を理解するにはこうあります。
読書をしても頭に入らない、暗記物は何とかこなせるが、文章読解問題や作文が嫌だ、またさらには雑誌やマンガを読むことさえ苦痛である、テレビやラジオを視聴するのが疲れて視聴したくなくなった、目では見ているがストーリーは入っていかない、手芸や絵を描くことが好きだったが面倒くさい、絵は描くが写し描きばかりするようになった、という声を聞く。(p73)
人とのかかわりに障害が起こり、人と会うことに異常な疲労を覚える状態になっている。
…脳機能のバランスを欠くために脳全体の細胞群を総動員して興奮させなければならず、エネルギー消費が高度となり脳神経細胞に対する負担が大きくなる。(p85)
学習・記憶機能障害の原因
こうした学習・記憶機能障害はどのような原因で起こるのでしょうか。
そのひとつは、脳の血流の低下にあります。小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもは、前頭葉や視床において、血流が低下していることがわかっています。
二つ目に、三池先生たちは、MRSを用いた検査によって、前頭葉にコリンという物質が蓄積していることを発見しました。
学習と記憶に重要であるアセチルコリンは、コリンとアセチルCoAから作られる。学習・記憶のコリン作動系神経細胞が、アセチルコリンを使って、学習・記憶のために働き、その後、アセチルコリンはコリンエステラーゼという酵素により、コリンと酢酸に分解される。
このコリンは需要に応じて、再びアセチルコリン産生に使用されるはずであるが、不思議なことに慢性疲労症候群の前頭葉にはコリンが蓄積しており、アセチルコリンの生産に障害がおこっていることを示している。(p203-204)
コリンは記憶や学習をつかさどる神経伝達物質、アセチルコリンの材料です。ところがアセチルコリンが造られなくなってしまって、材料だけが不良在庫になっているのです。
その原因のおおもとは、ミトコンドリアの機能障害にあると見られています。ミトコンドリアという発電所によって、コリンからアセチルコリンを造るためのエネルギーが供給されるからです。
小児型慢性疲労症候群では、学習記憶と生体の活動に必要なエネルギーであるATPそのものに直結するアセチルCoAの生産が障害されている。
このことは若者たちの慢性疲労症候群におけるきわめて強い易疲労性と学習記憶の障害のため、勉強がまったく手につかなくなる状況を説明することができる。(p204)
大人の慢性疲労症候群(CFS)でも、これらと似た研究結果があります。
たとえば、CFSで初めて明らかになった他覚所見は、脳機能異常だったそうです。CFS患者の脳では、前頭葉をはじめ、さまざまな部位で血流が低下していることは、以下のエントリで書きました。
いっぽう、最近明らかになった点としては、大人のCFS患者の脳内のコリンが低下しているという事実があります。論文によると、「この結果は認知能と関連するCFS患者における集中力低下の原因を証明した」と考えられています。
子どもの場合はコリンが蓄積し、大人の場合は低下しているわけですが、わたしは専門家ではないので詳しい意味はわかりません。調べた場所が違うのでしょうか。
どちらにしても、ひとつ言えるのはどちらの場合も、アセチルコリンの産生低下につながっているということです。どうやら、ミトコンドリアの機能障害におおもとの根っこがあるようです。
ブレイン・フォグに対処する方法
ここまでブレイン・フォグをCCFSの学習・記憶機能障害と比較して、原因とメカニズムに焦点を当ててきました。では、どうすれば、この思考の混乱状態に対処できるのでしょうか。
還元型コエンザイムQ10が効果的?
最近、還元型コエンザイムQ10が、慢性疲労症候群(CFS)の、睡眠・うつ・計算問題の3つの分野で効果が出たと報道されていました。この3つのうち、「計算問題」が思考力の回復に直接関係しています。
コエンザイムQ10は、おもに二つの効果を持つサプリメントです。
第一に、ミトコンドリアというレストランの“コックさん”として、エネルギーを作り出します。
第二に、活性酸素から細胞を守る盾であるビタミンEを回復し、細胞が抗酸化物質を作り出のを助けます。対酸化ストレス戦のカギを握る“ヒーラー”なのです。
慢性疲労症候群(CFS)では、エネルギー産生機能の低下や酸化ストレスの増加が知られています。還元型コエンザイムQ10がその症状を和らげるのは当然と言えるでしょう。
もちろん、効果は人それぞれなので、必ずしもブレイン・フォグを和らげると保証することはできません。また服用量も健常者より多めが推奨されています。
また学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてているでは、エネルギー生産の改善のために、ジクロロ酢酸ナトリウムが功を奏する可能性が書かれています。
前に述べたが、小児型慢性疲労症候群における糖代謝の異常がある。血液中のピルビン酸が増えており、血糖が高く、糖からのエネルギーの生産性が低下していることがわかっている。
そこでピルビン酸脱水素酵素複合体を賦活し、ピルビン酸からエネルギーであるアセチルCoAをどんどん生産してもらおうという考えである。(p205)
小児慢性疲労症候群(CCFS)では、血液中のピルビン酸が増えていて、血糖が高く、糖からのエネルギー生産が低下しているそうです。
そこで、ミトコンドリア病に効果のあるジクロロ酢酸ナトリウムを使い、ピルビン酸脱水素酵素複合体を賦活することで症状が改善する可能性があるようです。
食生活を吟味する
食生活の偏りが精神症状を引き起こすことがあるようです。慢性疲労症候群(CFS)に関係すめ病気のひとつに低血糖症があります。栄養状態を見直し、糖分のとりすぎを防ぐなら、思考の霧が緩和されるかもしれません。
また、栄養価を考慮した少食がブレイン・フォグの症状を和らげるとも言われています。 ブレイン・フォグとは認知面での機能低下であり、それを抑える方法はカロリー・カットです。
アンチ・エイジング医学 6ー3―日本抗加齢医学会雑誌 特集:疲労を科学するによると、慢性疲労症候群も研究している大阪市立大学の調査によって「注意・記銘力の低下」が顕著な人ほどエネルギーおよび個々の食品からの栄養素を多く摂取している傾向が認められたそうです。(p51)
少食により、記憶力が向上するという科学的な研究もあります。
空腹状態になると記憶力が上がる仕組みを発見│東京都医学総合研究所 - Topics
ここで気をつける必要があるのは、カロリー・カット=食事量を少なくする、ではないということです。食事量を少なくすることに加え、栄養が不足しないよう、食事の種類を厳選する必要があります。
学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている には同様の理由から、中鎖脂肪酸を使った食事の有効性について書かれていました。
成人型慢性疲労症候群において飢餓療法が功を奏する症例に報告がある。糖からのエネルギー生産性よりも、脂質からのエネルギー生産性のほうが効率がよいことが示されている。
そこでミトコンドリアにおけるエネルギー生産性が高い中鎖脂肪酸を用いることは理にかなっていると考えた。(p205)
成人型の慢性疲労症候群(CFS)において飢餓療法が功を奏するという報告から、脂質からのエネルギー生産性が保たれているらしいので、中鎖脂肪酸を含む食事で、エネルギー生産を狙う介入法だとされています。
中鎖脂肪酸を含む食事は、ミトコンドリアにおけるエネルギー生産性に優れています。ミトコンドリアに物資を運ぶには、カルニチンという“運送トラック”が必要ですが、中鎖脂肪酸の場合はそれが必要ないのです。
中鎖脂肪酸は酢やチーズ、ココナッツオイルに含まれるほか、中鎖脂肪酸油(MCT)という100%中鎖脂肪酸の油も販売されています。
また「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい 9割の医者が知らないストレス社会の新病という本では、頭にもやがかかったような感じは腸粘膜の異常、リーキーガット症候群と結び付けられており、食習慣の改善などによってよくなった例が示されています。(P40,78)
認知症の薬が効く?
学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてているでは、こうした思考の混乱は、前述のように、中枢神経においてコリンが蓄積している結果なので、アルツハイマー病に関係する抗コリンエステラーゼが役立つ可能性があるとされています。
小児型慢性疲労症候群では、ものにたとえると、コリン作動系神経細胞(車)はあるがガソリン(アセチルコリン)が不足している。しかし治療法としては、アルツハイマー病同様に抗コリンエステラーゼ剤が有効であると考える。(p206)
アルツハイマー病では、コリン作動系神経細胞群が減少しています。これはアセチルコリン(ガソリン)はあるものの、車(神経細胞群)がない状態です。小児慢性疲労症候群では、車はあるものの、ガソリンがない状態なので似ています。
抗コリンエステラーゼを使った治療は、アメリカでは、学習・記憶力障害や、ADHDの子どもの治療に効果を上げているとのことです。
また、ブレイン・フォグに認知症の薬であるメマンチンが有効だというニュースがありました。
認知症には様々なタイプがありますが、特にCFSと症状が似ているのは、レビー小体型と呼ばれるタイプです。比較的若くして発症した樋口直美さんの闘病記には、CFSと類似した慢性疲労や思考の霧がかった症状について書かれていました。
レビー小体型認知症におけるこうした症状は、リバスタッチなどの抗認知症薬で改善が見られます。
もしかすると、この記事で取り上げたような認知機能障害は、老人性の認知症と似たようなメカニズムで起こっているものの、認知症の薬がこれまで高齢者にしか使われてこなかったことで、治療上の盲点が生じているのかもしれません。
レビー小体型認知症は、パーキンソン病に併発しやすいことで知られており、同じ病気の別の側面であるとみなされるようになってきています。パーキンソン病の治療ではドーパミンが補充されますが、ドーパミンとアセチルコリンはシーソー関係にあるようです。
CCFSはパーキンソン病とは症状もメカニズムも異なっていますが、ドーパミン不足特有の症状を呈する傾向があり、ドーパミン系に影響する薬が効くので、何かしら似た部分があることを思わせます。
ちなみにパーキンソン病以外とは異なるタイプのドーパミン不足で生じる、ADHDや一部の抑うつなどに対して使われるDNRIと呼ばれるタイプの抗うつ薬ブプロピオンは、日本では認可されておらず、個人輸入でしか入手できません。
日本で認可されなかったのは、おそらく臨床試験で効果が確かめられなかったからでしょうが、不登校になる子どもというのは少数派なので、大多数に効果がない薬のほうが効く可能性があるともいえます。
こちらも、認知症の薬同様、これまで日本の臨床で使われてこなかったことを意味しているので、薬物療法上の盲点になっている可能性があります。
睡眠を改善する
疲労の研究によると、人間の活動の中で、疲労と最も関わりが深いのが睡眠です。そのため、CFSの最新の診断基準で採用された5つの客観的な検査法のひとつは「身体活動量から得られる睡眠時間」の測定です。
CFS患者の場合、ほぼ間違いなく睡眠障害が見られ、睡眠の質も低下しています。かといって、睡眠の大切さを軽視して良いわけではなく、むしろ健康な人以上に睡眠にこだわるべきです。
以下のエントリでも、睡眠について取り上げましたが、睡眠の改善方法は千差万別です。どんな方法を用いるにしても、改善を図るだけの価値があります。
そのほかの病気の可能性
ブレイン・フォグ様の症状は、つまるところ脳機能の低下なので、他のさまざまな病気でも二次的に生じることがありえます。
たとえば、以下のニュースでは、慢性疲労症候群と症状が似ていて区別するのが難しい脳脊髄液減少症のせいで、学生時代から「かすみがかったような頭の中」に悩まされていた方の経験談が取り上げられていました。
神戸新聞NEXT|神戸|「医者になる」 難病と闘い、夢を追う18歳少年
「一時は自殺まで考えた」。起き上がれないほどの慢性疲労、かすみがかったような頭の中、意識障害、吐き気に腹痛…。
小学生の頃から幾重にも襲いかかる原因不明の体調不良に苦しんできた少年が、ようやく病名を突き止め、治療を続けながら、「医者になる」という夢に向かって歩き出した。
脳脊髄液減少症が原因であれば、記事中でも書かれているようにブラッドパッチなどの治療法で改善できる場合があります。
しかしながら、近年、脳脊髄液の「減少」という現象は、他のさまざまな病気にも関係しているのではないか、とも見られています。脳脊髄液が漏れ出しているのではなく、髄液の産生が滞っている場合でも同様の症状が生じえます。
今のところ、髄液の「漏出」を調べる検査法はあるものの、「減少」を確かめる方法はまだないので、脳脊髄液減少症と診断されない他のブレインフォグでも、似たようなメカニズムが絡んでいる可能性は無きにしもあらずです。
マインドマップを使う
わたしの個人的な話ですが…マインドマップは、ブレイン・フォグに対処する上で、かなり役立ちました。
ブレイン・フォッグの困ったところは、文章の読み書きができない、という点です。つまり、思考を文章に変換したり、文章を思考に変換したりする過程がうまくいかないのです。
ところが、マインドマップは、そもそも文章を用いないノート術です。思考をそのまま紙に写し取ることを目的としています。
ですから、頭が混乱している時でも、それをそのまま紙に書き出すことができます。わたしは、ブレイン・フォグがひどくなると、その日のやることや、整理したい考えをマインドマップに書きだすことで、なんとかその日の予定を乗り切っています。
ブレイン・フォグがあっても、最低限の活動を続けるために、マインドマップという思考整理術は必須のテクニックなのです。
思考の霧を払う
慢性疲労症候群(CFS)を発症すると、かなりの確率で、ブレイン・フォグを併発するようです。この症状は、慢性疲労症候群(CFS)の数多くの症状の中でもひときわ厄介なものです。
身体の自由を奪われるだけであれば、スティーブン・ホーキング博士のように、思考の世界に羽ばたくことができます。しかし身体がどろどろに重だるいだけでなく、思考も霧がかかっているとなると、もはやできることがありません。
慢性疲労症候群(CFS)を非常に深刻な病気とならせている大きな原因が、このブレイン・フォッグにあることは間違いないのです。
しかし、ブレイン・フォグを学習・記憶機能障害として見れば、すでにメカニズムがかなり明らかになっている症状に思えます。ポイントはエネルギーの生産機構の正常化であり、そのための具体的な手段も、決定だとはいえないものの、いくつかあります。
このエントリに挙げたことは個人では試しにくい点ばかりですが、これからの進展に、少しは希望が持てるのではないでしょうか。
手がかりが少ないですが、わたしもブレイン・フォッグへの対策を引き続き探っていきたいと思います。