小児慢性疲労症候群(CCFS)と睡眠障害についてのニュース記事が3つ掲載されていました。(※16/01/26にニューズウィーク誌の記事を追加しました)
ひとつ目の日経新聞の記事では、CCFSがどんな病気で、原因や治療はどうするか、という点について、二つ目のエコノミックニュースでは、三池輝久先生の眠育の取り組みについて紹介されています。
そして3つ目のニューズウィーク誌の記事では、10代の慢性疲労症候群がアメリカで増加していることが書かれています。
慢性疲労、子供も注意 その夜更かし…不登校の原因かも 専門医受診/睡眠習慣改善を :日本経済新聞
欠席減少の鍵は「眠育」子どものスマホ依存が深刻化│EconomicNews(エコノミックニュース)
アメリカの10代の50人に1人は「慢性疲労症候群」 | カルチャー&ライフ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
CCFSは高学年になるほど治りにくくなる
ひとつ目の記事では、小児慢性疲労症候群(CCFS)と睡眠障害との関係や、脳機能の特徴について扱われていました。
CCFSは日常生活もままならない強い慢性的な疲労感を抱える子どもの病気です。
CCFSの子どもの脳機能を調べた、理化学研究所などの機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を用いた研究では、「健康な子供よりも脳活動の効率が悪いため、疲れを感じやすくなっている」ことがわかりました。
また大阪市立大学などが、2006から2008年に、小中学生約1000人を対象に生活習慣と疲労の関係を調べたところ、睡眠時間が短いほど疲れを感じやすくなっていて、中学進学時に突然睡眠時間が減ることが不登校と関係している可能性が示唆されました。
大阪市大ではさらに、国内の小中高生約1万人を対象にした実態調査を2015年春から始めたそうです。
小児慢性疲労症候群の専門家である。三池輝久先生はこう述べています。
症状が重い子供には睡眠習慣を元に戻す治療が効果を上げつつある。発症すると回復しにくいため、症状が軽いうちに睡眠習慣を改善するなど対応が大切だと専門家は指摘する。
…(中略)…
小児慢性疲労症候群が厄介なのは、高学年になるほど完全に回復するのが難しくなることだ。
同病院の三池輝久特命参与(熊本大学名誉教授)は「夜更かしの習慣が引き金になる。小さいうちから正しい睡眠の習慣をつけてほしい」と訴える。
三池先生の兵庫県立リハビリテーション中央病院では光治療やサプリメントなどで睡眠問題を治療する取り組みを行っていますが、対応できる専門家や医療機関は少なく、ほかの病気と誤診されている場合も少なくないようです。
スマホ依存を防ぐ眠育は予防に大切
二つ目の記事では、近年問題となっているスマホ依存による睡眠問題が取り上げられています。
CCFSのすべてがスマホ依存と関係しているわけではありませんが、就寝前に電子機器を使うことで、眠りの質が悪化したり、夜更かしになったりして、睡眠障害につながる例が少なくないそうです。
堺市立三原台中学校では、年間30日以上休む不登校予備軍のような生徒の多くは、スマホ使用などで午前0時以降に就寝していることがわかり、三池輝久先生の協力のもと、眠育をはじめたとのこと。
中学生は1日8から9時間の睡眠が必要であることを教え、家族の協力も得て、睡眠時間を記録させたり、就寝前にスマホとテレビを使わないよう指導したりしたところ、欠席日数が減ったとされています。
ソーシャルメディア依存が睡眠障害につながる可能性は、別のニュースでも取り上げられていました。
ピッツバーグ大学医学部、ソーシャルメディア依存と睡眠障害との関連性を指摘 | TechCrunch Japan
こうした予防の取り組みが進むとともに、発症した場合に完全に回復するための研究が進んでほしいところです。
アメリカの10代の慢性疲労症候群
3つ目のニューズウィーク誌の記事では、医学誌「ペディアトリックス」に発表された英国ブリストル大学の研究で、5756人の問診票を分析したところ、16歳の男女50人に1人がCFSに当てはまることがわかったと紹介されています。
この調査は問診票に基づく分析なので、CFSの診断基準に当てはまる、というだけで、実際には、他の潜在的な病気などが原因である人も多く含まれているかもしれません。そのあたりのことはこちらの記事でも触れられていました。
10代に慢性疲労症候群が増えている? | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
調査によると、女子がCFSの症状を訴える傾向は男子のほぼ2倍で、特に貧しい家庭の子供のほうがCFSの症状を訴える傾向が強かったようです。
しかしCFSを患う10代の94パーセントが医師に門前払いをされていることがわかったとも書かれています。治療できる医療機関が少ないのは、日本でもアメリカでも同じだといえます。
ニューズウィーク誌というと、1990年11月に慢性疲労症候群をセンセーショナルに取り上げ、一躍有名にしたことが知られていますが、そのときから25年が経った今でも有効な治療法が見つかっていないのは残念でなりません。
小児慢性疲労症候群について詳しくは以下の記事をご覧ください。