10/13の毎日新聞、および公明新聞にて、 子どもの脳脊髄液減少症についての記事が、相次いで掲載されました。
教育・しずおか:親から子へ・ニュースの基本 休業補償巡り訴訟も 脳脊髄液減少症 /静岡- 毎日jp(毎日新聞)(リンク切れ)
子どもたちが危ない!
まず、毎日新聞の「ニュースの基本 休業補償巡り訴訟も 脳脊髄液減少症」という記事では、脳脊髄液減少症とはなにか、どのような背景が問題となっているか、といったことがわかりやすい言葉で説明されています。
前半部分では、脳脊髄液減少症が、これまで「心の病」と誤解されやすく、たとえ診断されても休業補償が降りなかったことが取り上げられています。
注目したいのは後半部分で、子どもの脳脊髄液減少症について読者の注意が換気されています。
車に乗っていて交通事故に遭うと、首に強い衝撃がかかる。スポーツ事故も原因になるので、事故に遭わないよう注意しないといけない。特に子どもたちはね。
国際医療福祉大熱海病院の篠永(しのなが)正道教授(脳神経外科)によると、大人よりも子どもの方が髄液は漏れやすいんだって。
中学校で武道・ダンスが今年から必修になったので、柔道の授業で患者が増える可能性も指摘しているんだ。
武道が必修になったことへの危惧は、このブログの以前のエントリでも取り上げました。こうした人為的な問題によって子どもたちの健康が損なわれ、脳脊髄液減少症がクローズアップされるとしたら非常に由々しいことです。
見落とされている不登校の原因
公明新聞の記事ブラッドパッチ療法小児の効果高い では、そうした脳脊髄液減少症の子どもたちを実際に治療したデータが記載されています。
中京病院では2000年から同症の診療を開始し、18歳未満の73例に対して計125回のブラッドパッチ療法を実施している。ただ、厚生労働省の診断基準が厳しく、これに基づく先進医療の適用は、成人も含めて13%にとどまっているという。
池田副院長は小児の場合、授業や部活動中のスポーツが主な原因だと指摘。その上で「脳脊髄液減少症が不登校の原因になっている可能性もある」との見解を示したほか、成人よりも小児の方が同療法の効果が高いと説明した。
以前から懸念していたことですが、画像診断で診断できる、いわゆる“脳脊髄液漏出症”のみに保険適用を限る方策では、やはり大半の人は恩恵を受けられないようです。
しかし、はるかに大きな課題は、脳脊髄液減少症が原因で不登校になっているのに見落とされている子どもたちの存在でしょう。
子どもたちは大人と違って、自分の身体の症状を適切に説明できません。言うことがコロコロ変わったり、楽しいときは元気そうに振舞ったりするので、心の問題や、仮病と誤解されがちです。
こうした子どもの不登校を巡る問題は、このブログでも、たびたび取り上げてきました。長年不登校の子どもたちを診てきた小児科医の三池輝久先生は「心身ともに健康な不登校はない」と断言しています。
何より辛かったのは周囲の無理解
こちらのニュースでは、家族が脳脊髄液減少症を発症したことをきっかけに、広島県の脳脊髄液減少症患者会の代表となった山口秀樹さんご一家の話が掲載されています。
こんにちは広島:県脳脊髄液減少症患者会代表・山口秀樹さん /広島- 毎日jp(毎日新聞)(リンク切れ)
山口さんの妻の早苗さんと娘の留加さんは、突然の事故により脳脊髄液減少症を発症しました。ひどい頭痛や吐き気に悩まされましたが、何より辛かったのは周囲の無理解だそうです。
◆症状を知らない医師が多く、病名が分かるまで事故から10カ月かかった。
◆「元気そうじゃないの」「みんなしんどいのは同じ」と、言われて仕事を押しつけられた。
◆たびたび保健室を訪れた留加さんは、養護教諭から「どこも悪くない。教室に戻れ」と言われ、登校を嫌がるようになった。
◆そばにいる秀樹さん自身、病名を知るまでは2人の詐病を疑った。
病名がわかり、ブラッドパッチ療法により症状は改善しましたが、今も数日に一度は頭痛で動けなくなるそうです。日々の治療費がかさむことも負担です。
家族の発症を機に山口さんは2010年に患者団体を立ち上げました。山口さんはこう述べています。
「病名を知るまで僕らは10カ月で済んだが、長い間理解されず、解雇や離婚されてしまう人もいる。風邪ぐらいに広く知られる病気になれば、もっと生きやすくなるはず」
山口さんのおっしゃるように、家族が脳脊髄液減少症のような難病を発症すると、離婚したり、家を出て行ったりして、家族を見放す人は少なくありません。
その中で、ご自身は脳脊髄液減少症を発症していないのに、家族を見放さず、理解しようと務め、患者会まで立ち上げた山口さんの姿勢はとても立派だと思いました。
速やかな対処を
もし不登校になっているお子さんがいらっしゃるなら、「気がたるんでいる!」と叱る前に、また「学校に行かないほうがのびのびしているから気の済むまでほうっておこう」と考える前に、何らかの病気の存在を疑ってほしいと思います。
最初に取り上げた毎日新聞の記事では、脳脊髄液減少症は「比較的軽微な外傷で発症し、頭痛、めまい、耳鳴りなど「頭のてっぺんから足の先まで」さまざまな症状が出る」と書かれています。
ですから、不登校の問題がある場合、特に思い当たる原因がないとしても、子どもの慢性疲労症候群や子どもの脳脊髄液減少症を疑ってみるのは理にかなったことと言えるでしょう。
幸い、早期治療をすれば、子どもの脳脊髄液減少症は治癒できる確率が高いようです。親や教育関係者の方には、普段から正しい知識を得て、子どもたちの変化に素早く対処していただきたいと心から願っています。
子どもの脳脊髄液減少症について詳しくはこちらをご覧ください。
▼脳脊髄液減少症のラジオ番組
広島県の脳脊髄液減少症患者会のブログでは、2012年9月25日(火)にエフエムふくやま RADIO BINGOで放送された、「こちら情報アンテナ」のオーディオが公開されています。
広島県 脳脊髄液減少症 患者会 2012年9月25日 エフエムふくやま RADIO BINGO
国立病院機構 福山医療センター 脳神経外科医長の守山英二先生が脳脊髄液漏出症について話す内容です。特発性タイプと交通事故後発症タイプの違いや、治療法などが詳しく説明されています。
番組の最後では、子どもに発症する脳脊髄液減少症に注意が換気されています。
なお、国立病院機構 福山医療センターは、脳脊髄液減少症に対して先進医療が適用されている硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)を行なっている15の病院(2012/10/16時点)の一つです。