パーキンソン病の新しい治療法「デュオドーパ」承認―携帯ポンプで腸へ薬を持続供給してウェアリング・オフ改善

外ではすでに広く導入されていて、日本でも期待されていた、パーキンソン病の新しい治療法、腸に直接レボドパ含有製剤を持続的に供給する「デュオドーパ」(DUODOPA)が、2016年7月に承認されました。

昨年1月に承認された米国をはじめ、今回日本で承認されたことで、デュオドーパは世界50ヵ国で承認されたことになるそうです。

アッヴィ、進行期パーキンソン病治療薬として「デュオドーパR 配合経腸用液」の製造販売承認を取得|アッヴィ合同会社のプレスリリース はてなブックマーク - アッヴィ、進行期パーキンソン病治療薬として「デュオドーパR 配合経腸用液」の製造販売承認を取得|アッヴィ合同会社のプレスリリース

進行期パーキンソン病治療薬「デュオドーパ」の承認取得-アッヴィ – QLifePro 医療ニュース

ウェアリング・オフを改善する「デュオドーパ」とは?

デュオドーパは、既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病症状の日内変動に対する治療薬として承認されました。

従来のパーキンソン病の薬物療法では、使い続けるうちに症状の進行とともに薬の効果の「オン」「オフ」の差が激しくなるウェアリング・オフ(wearing-off現象)に悩まされるようになる人が少なくありませんでした。

デュオドーパは薬剤を持続投与することで「オフ」状態を改善する効果があるそうです。

臨床試験では、1日あたりの「オフ」の平均時間が、これまでの抗パーキンソン病治療薬に比べ、デュオドーパ使用開始から12週間後では4.64時間、52週間後には4.28時間少なくなったとのことです。

アッヴィの公式サイトも、デュオドーパのページで製造販売承認の取得を伝えるとともに、概要を説明しています。

デュオドーパ はてなブックマーク - デュオドーパ

「デュオドーパR配合経腸用液」は、レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(ウェアリングオフ)に対する治療薬として、2016年7月に製造販売承認を取得しました。

デュオドーパは、小型の携帯注入ポンプと専用のチューブを用いて、空腸に直接、レボドパ製剤(レボドパ・カルビドパ水和物配合剤)を16時間にわたり持続投与する治療法とのこと。

胃ろうを作る前に、経鼻的に空腸に投与することで、あらかじめ効果を確認することもできるそうです。

デュオドーパについては、昨年、著書熱狂宣言の中で若年性パーキンソン病をカミング・アウトした、ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長もインタビューの中で期待を寄せていました。

若年性パーキンソン病と闘う飲食業社長「超えられない試練ない」(3/4ページ) – 産経ニュース

薬が効いているときとそうでないときの差が激しく調整に苦労する松村社長だが、腸管から薬を持続的に供給できるカートリッジ交換式ポンプが日本でも使用可能となることに期待を寄せる。

闘病生活が長くなる若年性パーキンソン病の患者ではウェアリング・オフ現象に悩まされることが多く、マイケル・J・フォックスもいつも上を向いての中でオンオフ症状について詳しく書いていましたし、日本の若年性患者の方たちもオン・オフのある暮らし―パーキンソン病をしなやかに生きるというタイトルの本を出していました。

今回の新しい治療法デュオドーパや、今後開発されるであろう様々な治療法が、多くのパーキンソン病患者が抱える日常生活の困難な問題を軽減する手段になればと思います。

▼追記(2016/9/1)
その後8/31に薬価収載され、9/1から販売開始されました。

アッヴィ、進行期パーキンソン病治療薬「デュオドーパR 配合経腸用液」の発売を開始|アッヴィ合同会社のプレスリリース

腸管へ直接投与する進行期パーキンソン病治療薬:日経メディカル

進行期パーキンソン病治療薬「デュオドーパ 配合経腸用液」を発売-アッヴィ – QLifePro 医療ニュース

上記のニュースでは、デュオドーパ発売にあたり、専門家による次のようなコメントが寄せられていました。

「デュオドーパRの発売によって、進行期パーキンソン病治療は新 しいステージに入ったと言えます。

これまでの薬物治療ではコントロールが難しい状態の患者さん、現在の治療に満足されていない患者さんにとって新しい選択 肢が増え、希望が生まれ、患者さんのご家族にとっても介護の負担が減ることが期待されます。」
―福島県立医科大学 宇川義一教授

「第Ⅲ相試験および長期継続投与試験において、 1日あたりの平均オフ時間が4時間以上も減少したことは、進行期パーキンソン病患者さんのQOL向上に大きく寄与することを示唆しています。

また、このこ とにより、介護時間の減少と負担の軽減が期待されます。」
―京都大学大学院 髙橋良輔教授

また、デュオドーパについて、次のような解説が併記されていました。

投与前の準備
デュオドーパを使用するには、まず胃ろうを造設し、それからチューブ(アッヴィPEGキットおよびアッヴィJチューブなど)と、携帯型 注入ポンプ(CADD-Legacy1400ポンプ)を用いて小腸へデュオドーパを供給することになる。

胃ろうを作る前に、「アッヴィNJチューブ」を用いて鼻から空腸に投与することで、効果があるかどうかを確認することができる。

■使用する量
朝に5~10ml(最大15ml)を10~30分かけて胃瘻を通じて空腸に投与した後、日中の16時間以内のあいだ、毎時間ごとに2~6mlをポンプで供給する。増量しても1日の総量が100mlを超えないように。

■デュオドーパとは
これまでのレボドパ・カルビドパ水和物製剤に比べ、配合の比率を10:1から4:1にした、1カセット100mlのゲル状懸濁液。

■カルビドパとは
デュオドーパに配合されているカルビドパは、末梢でレボドパの代謝を阻害して、より多くのレボドパが脳内に流れるようにする役割がある。悪心や嘔吐などの末梢での副作用を軽減する働きも。

これから徐々にデュオドーパを使用するかたが増えてくるでしょうから、よい報告を期待したいところです。

▼追記(2016/10/31)
アッヴィ合同株式会社はが開いたデュオドーパに関するプレスセミナーの記事によると、デュオドーパは海外では長期の実績があり、オンオフに対処しきれない患者に有効であることが説明されています。

進行期パーキンソン病、空腸への直接薬剤投与でオフ症状短縮-アッヴィ – QLifePro 医療ニュース はてなブックマーク - 進行期パーキンソン病、空腸への直接薬剤投与でオフ症状短縮-アッヴィ - QLifePro 医療ニュース

「デュオドーパは海外では10年以上の使用経験があり、脳深部刺激療法と並ぶ治療選択肢となっている。

日本でのエビデンスはこれから積み重ねていく必要があるが、1日に5回以上の服薬が必要な患者さんで、服薬タイミングの調整だけではオフ症状の発現に対応しきれない患者さんは、よい適応となるだろう」

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