道北で見つけた山菜・野生ハーブの見分け方や食べ方まとめ

どもの頃、ひどい好き嫌いがありました。野菜も果物も大嫌いでした。親戚の家に預けられて以降、何も食べなくなったそうなので、何かのトラウマの影響かもしれません。

学校の給食では特に苦労しました。食べるまで居残りさせられ、水や牛乳で無理やり飲み込みました。食べることが大嫌いで、あの太宰治と同じく、空腹という感覚を感じたことがありませんでした。

加工食品やお菓子が大好きでした。家の中に引きこもってゲームばかりしていました。虫がいると大騒ぎしました。飼い犬や猫に触れることも怖くてできませんでした。

そのわたしが、今では毎日、森の中を歩き回って、野草を観察し、山菜やキノコを見分けて採ってきて、胡麻和えにしたり、乾燥させたり、ジャムにしたり、シロップにしたり、ハーブティーにしたりしているなんて、信じられない思いです。

どうして変わったのか自分でもわかりません。わかっているのは、森歩きがとても楽しく、大自然の中で採ってきたものは美味しい、ということです。

思えば、病気になってから飲んだ漢方の生薬は、効果は実感できなかったとはいえ、どれも「美味しい」と感じました。人類が長年親しんできた自然界の食物の味は、化学調味料と違って、わたしに合っていたのでしょうか。

この記事では、わたしが道北に引っ越して以降、森を歩き回って採取し、味わってみた山菜や木の実など数十種を五十音順にまとめました。自然に親しみ、じっくり観察するのに、味わうことがなぜ大切かも考えたいと思います。

キノコについては長くなるため、別の記事に分割しました。

道北の森で見つけた、食べられるキノコの見分け方まとめ
これまで北海道の森で採取した、食べられるキノコの見分け方についてまとめました。

もくじ

なぜ自然に親しむために味わうのが最適か

まず始めに、自然界の植物を味わうことのメリットを5つ挙げましょう。

特定の山菜やハーブについて知りたくてこのページに来た人は、前置きを飛ばして、上の目次から項目にジャンプできます。([ ]がついているのは、見つけたものの食べるに至っていない項目です  )

1.「味わい知る」とは経験によって実感すること

「味わい知る」という言葉があります。単に「知識として知る」より、ずっと奥深く「経験として知る」という意味です。

現代社会には、インターネットをはじめ、文章や動画を介しての知識はあふれています。学校ではそうそうたる科学者たちが積み重ねた発見の要旨を学べます。

しかし、それらはどれも、実際に触ったり味わったりできない、表面的な知識です。 以前の記事で書いたように、「地に足がついていない」薄っぺらいものにすぎません。

頭で覚えただけの知識は簡単に忘れます。一方、体で経験したことは決して忘れません。 ジークムント・フロイトフロイトがこう述べていたように

「こころは忘れてしまう。でもからだは忘れない―ありがたいことに」

「生きている実感」が希薄な人への処方箋―ソマティックなエクスペリエンスが必要な理由
現代社会では「生きている実感が希薄だ」と感じる人が増えているようです。どうして現実感に乏しい人が増えているのか、どうすれば、もっと生き生きとした充足感を感じることができるのか、ソマ

森に生えているものを味わってみると、さまざまな発見があります。 その野性味あふれる独特な風味は、化学調味料で味付けされた加工食品とはまったく異なる味わいです。時を越えて、何百年、何千年前の人々と同じものを味わっているのです。

昔の人々が食物を得るために、どれほど知識を蓄えていたかを知ると驚きます。現代人は文明以前の人々をばかにしがちですが、現代のわたしたちより、はるかに自然界について詳しく、鋭い観察眼があり、濃厚な味わいを楽しんでいたはずです。

化学調味料に増して味わい深いギョウジャニンニク、栽培物とは比較にならない香り高い野生のウド、複雑でエキゾチックな味わいのホオノキの実のお茶。

舌で味わってみると、それぞれの植物により親近感がわき、記憶に定着します。マルセル・プルーストが名著失われた時を求めてで紅茶に浸したマドレーヌから幼い日々に思いを馳せたように、味や匂いといった感覚は、より強力な記憶に直結しています。

現代の人々はつながりが希薄だと言われます。過去の祖先とのつながり。この地球とのつながり。現実世界とのつながり。自然を味わい知るなら、それらのつながりが修復されていきます。

古代の人々と同じ大地を踏みしめ、同じものを味わい、同じ時の流れの中に生きていることが感覚的にわかってきます

地面に生えたものを自分で採取し、調理し、味わうとき、自分が架空のバーチャル世界の住人ではなく、現実の地球に地に足をつけて生きている動物であることを実感します。

山菜の味は強烈な「生きている」という感覚を呼び覚まします。 ですから「味わい知る」ことは、自然界に親しみ、古代の人々の豊かな知恵に触れ、生きている実感を味わう優れた方法の一つだとわたしは思います。

2.慎重にじっくり観察しないと食べられない

自然界の植物を「味わい知る」には地道な観察が必要です。わたしもそうでしたが、現代人のほとんどは、身近な野草や、家の前に生えている街路樹の種類すら、見分けることができません。

いざ森の中に入ってみると、自分たちを取り巻く自然界について、唖然とするほど何を知らないことに気づきます。 多種多様な植物やキノコが生い茂っているのに、どれも同じようにみえて、ただただその量に圧倒されるだけです。

まるで言葉が通じず、知り合いも誰もいない異国の大都会に来たかのように。以前の記事で書いたように、植物と叡智の守り人はでは「種の孤独」と表現されていました。

自然を愛する感受性豊かな人にどうしても勧めたい一冊の本がある
自然が身体にいいのはわかっている。必要なこともわかっている。でもどう自然と関わっていいのかがわからない。そんな人に、ぜひ読んでほしい本、ネイティブアメリカンの血を引く植物学者ロビン

わたしは、この3年、特にコロナ禍が始まってからの1年は、頻繁に森に通って、地道に観察を続けてきました。

週に何度も森の中を歩けば、どの植物も花が咲いている瞬間に出くわします。 花の写真を撮ることができれば、文明の利器であるGoogle Lensを使って、かなりの精度で種類を特定できたり、候補を絞り込んだりできます。

その上で、その地域の植物図鑑や山菜図鑑と照らし合わせれば、ほぼ確実に名称にたどり着くことができます。

たとえば、有名な山菜であるユキザサ(通称アズキナ)は、まだ葉が開いていない芽のころに採取します。

しかし、過去2年間、全然見つけることができませんでした。花が咲いている時なら気づけても、芽の時期に見つけるのは簡単ではありません。

それで、夏の間、ユキザサの花を見つけるたびに、その位置を記憶しました。また、形がよく似ているオオアマドコロや、毒草のホウチャクソウも、花の時期に場所を記憶しました。

その上で、翌春、覚えていた場所に見に行くと、それらしい芽が出ているのが分かりました。

図鑑やインターネットの情報をよく調べつつ、山菜としてのユキザサはどれか、毒草であるホウチャクソウの芽とどうすれば見分けられるか、慎重に観察して採取できました。

自然界は時として危険な場所です。野山に生えているものを食べるのはリスクがあります。

トリカブトやドクゼリのような猛毒の植物は、ごく普通に自生しています。キノコに至っては、もっと恐ろしい毒性をもつものが知られています。たとえば下の写真のドクツルタケがそうです。

こうした危険があるので、野山のものは食べるべきではない、と主張する人もいます。

しかし、以前の記事で書いたように、それは極端な意見だと思います。スーパーで売られているものもまた、農薬や食品添加物で汚染されていて、健康に安全だとは言い難いからです。

大切なのは、野山に生えているものであれ、スーパーで売られているものであれ、それが安全な食品かどうか確かめることです。

わたしは買い物するときはも、必ず裏側を見て、原材料表示を確認します。同じように、森や河川敷で山菜採りするときも、それが本当に食べられるものなのか、じっくり調べます。

幸い、自然界に自生している植物は、現代人が思っているほど危険ではありません。猛毒のある野草はごく一部です。

山菜図鑑を見れば、紛らわしい毒草がある山菜は、注意が喚起されているので、はじめのうちはそれを避けて、安全そうなものからチャレンジすることもできます。

今では先に挙げたGoogle Lensや、ネット上の詳しいサイトなど調査ツールが充実しているので、じっくり観察する気さえあれば、植物の名前を調べるのは、そんなに難しいことではありません。

でも、さらにもう一歩踏み込んで、「これは食べることができるのか」という目で調べると、より慎重に、より深く調べることにつながります。

単にきれいな花を咲かせる山野草、というだけでなく、山菜として食べることができる、ハーブティーとして楽しめる、アイヌ民族やネイティブアメリカンが利用していた、ということがわかってくると、より親しみが湧きます。

自分の口に入れるわけですから、本当に、間違いなく、100%見立てが合っているか、見分け方を詳細に調べるようになります。茎のつき方、全体に生えている薄い毛、根っこの方向といった特徴を覚えます。そこまで詳しくなれば、もう間違うことはありません。

近くに誰も教えてくれる人がいないから無理だ、と感じる人もいると思います。わたしもそうでした。

確かに教えてくれる先生がいれば、とは思いますが、そのような縁はありませんでした。せいぜい地元の友人から、森に入る時の服装と、ウドなど数種類の山菜について教えてもらえただけでした。地元の人々もそれ以上知らないからです。

そのほかは全部、自分で森を歩き回って観察し、Google Lensや図鑑やインターネットを駆使して、自分で調べました。徹底的に調べて、この植物で間違いない、と確信してから、口に入れるようにしました。

そうして確信できた植物を採取し、味わってみると、思いのほか美味しかったり、歯ごたえがよかったり、独特の香りだったりして、親しみが湧きます。

去年味見してみた山菜やハーブを今年も採りに行くリピーターになります。どこに自生しているか記憶に刻まれます。

ですから、味わうことを目的に自然観察すると、ただ自然を眺めるよりも、はるかに深く調べ、印象に残ります。

3.「見る」以外の「嗅ぐ」「触る」「味わう」といった五感を使う

現代社会で育ったわたしたちは、五感のうち、おもに視覚に偏って暮らしているものです。

学校のテストも、ほとんどが視覚だけで判断する筆記試験で、ときどき聴覚のリスニングが加わる程度です。そのせいで、自然界を「テスト」する際も、視覚だけに頼りがちになります。

自然観察を始めたころ、ヨモギとトリカブトを見分けるのが苦手でした。知っている人からすれば全然違う野草なのですが、切れ込みのある葉っぱの形が似ています。つまり、視覚だけに頼っていると、似ているように見えてしまいます。

しっかり観察すれば、ヨモギは表面に細かい毛が生えていますし、葉の付き方も違います。慣れれば視覚だけでも十分見分けることはできます。

でも、より確実なのは「匂いを嗅ぐ」ことです。ヨモギの葉を揉むと、独特のハーブの香りがします。真夏にヨモギを揉んで顔のそばにぶら下げれば、虫除けにもなります。匂いの記憶は強烈なので、一度覚えれば、もう判断に迷わなくなります。

高級山菜として著名なギョウジャニンニクも、若芽の段階では猛毒のスズランとよく似ていると言われます。確かに写真で確認すると、遠目に見たときの雰囲気がよく似ています。

しかし、現地で採るときには、匂いを確認すれば間違えようがありません。ギョウジャニンニクは、切り取ったときに切り口を嗅ぐと、強いニンニク臭があるからです。

現代人はまた「触る」ことも苦手です。山菜採りのときはもちろん手で触って採りますが、指先に神経を集中して、じっくり形状を確認することは、あまり思い当たらないものです。

たとえば、ユキザサ(アズキナ)とよく似たホウチャクソウという毒草があります。どうすれば、これらを見分けることができるのか。

ひとつの手がかりは茎の形状が違うことです。指で茎をつまんで形を見れば、ユキザサは円柱形なのに対し、ホウチャクソウはかくばっていて引っかかりを感じます。

「見る」だけでなく「嗅ぐ」や「触る」を駆使するなら、より詳しく違いを観察することができます。

そして、それが食べることのできる山菜だと分かれば、最後に「味わう」によって、もっと深くその植物のことを知ることができます。

4.瞬間的な観察ではなく、継続的な観察が物を言う

自然界に親しむとき、まるでクルーズ旅行で出会った異性に一目惚れするかのように、つかの間の恋を楽しむ人もいます。有名な景勝地を訪れ、大自然の写真をパシャパシャ撮って、満足して帰っていくような人がそうです。

しかし、山菜採りをしようと思ったら、そんな一目惚れの恋ではうまくいきません。少なくとも数年間にわたる結婚生活のように、毎日毎日じっくり観察し、自然と親密さを深めないなら、いつどこに何が生えてくるか見当もつかないからです。

羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季に書いてあったことが思い出されます。

湖水地方にずっと住んでいた著者の祖父について、「祖父の自然との関係は、旅行先での束の間の恋というよりも、長期にわたるタフな結婚生活という感じだった」と書かれていました。(p107)

一方、旅行客は行楽日和の季節にしか訪れません。その違いは、「若いころに出会った美人の女の子への感情と、何年もの結婚生活を経たあとの妻への感情の違いに似ているかもしれない」と描写されています。(p128)

自然界のものを味わうという特権は、行きずりの旅人ではなく、長年、辛抱強く絆を育み、森に親しんだ人にのみ開かれます。

先ほど書いたように、春の芽出しの時期に植物の種類を見分けるのはとても困難です。一方、花が咲いている時期なら種類を調べるのは簡単です。しかしその頃はもう食べるには遅すぎます。

それで、自然のものを味わいたいなら、一年中何度も自然の中に通って、どこにどんな花が咲き、どんな種類の植物が自生しているかを観察する必要があります。

場合によっては真夏に汗だくになりながら森に入り、花を見つけます。そうやって頭の中に自生地マップを作っていきます。

森に通い詰めていると意外な出会いもあります。まったく知らない花を見つけ、名前を調べてみると、じつは若芽のころには食べることができるとか、葉っぱをハーブティーにできる、という経験談やレシピが見つかることがあります。

それが分かれば、次に春がめぐって来たときに同じ場所に探しに行って、芽出しの時期に見つけることができます。場所さえわかっていれば、どれほど地味で目立たない芽でも、図鑑を頼りに探し当てることができます。

しかし、いつ花が咲き、いつ芽が出るか、知る方法はありません。図鑑にはおおまかな時期は書かれていますが、地域によってずれます。そして山菜は、わずか一週間や数日のずれでも、時期が早すぎるか遅すぎることがよくあります。

ですから、できるだけ毎日、毎週、自然の中に足を運んで観察する必要があります。自然に親しめば親しむほど、そこに自生している植物の生態系や、動物たちの暮らしについてわかってきます。

自然との関わりに、「時短」という言葉はありません。夏に見つけた植物を味わうには翌春まで待たなければなりません。時期を逸すれば次は一年後です。

夫婦生活と同じです。どれだけ時間をかけて寄り添ったかが結果に現れます。時間をかけたぶんだけ、新しい発見があり、味わえる山菜や木の実も増えます。近道がないからこそ、努力したぶんが努力しただけ返ってくるからこそ、自然観察は楽しいのです。

5.自然を守りたい、大切にしたいという気持ちが育まれる

自然豊かな場所に住んでいても、誰もが自然界を愛しているわけではないことを痛感させられます。無思慮にゴミを捨てたり、自生地を踏み荒らしたり、木々を伐採したりする人々も跡を絶ちません。

明らかに、大自然のそばに住んでいれば、自然を愛するようになるわけではありません。レイチェル・カーソンがセンス・オブ・ワンダーで書いていたとおりです。

どれほど美しい自然がそばにあったとしても、「見ようと思えばほとんど毎晩見ることもできるために、おそらくは一度も見ることがないのです」。(p31)

現代人は、どこに住んでいても現代人です。どんなに辺鄙なところに住んでいようが電気が通じ、テレビを楽しむことができ、車でスーパーやネット通販で買い物できます。大自然の中に住んでいても、自然のことなど何一つ知らないまま生きることができてしまうのです。

わたしは、自分が大都会で育ち、自然のことを何も知らないまま大人になって、実はよかったのかもしれない、と感じることがよくあります。そのおかげで、自然があることのありがたみがわかるからです。

親の愛に恵まれて育った人の多くが、普通の家庭で育つありがたみを全然理解していないように、自然界に包まれて育った人の多くも、豊かな自然のありがたみを自覚していません。

わたしは、この記事を書いている時点で、まだ道北に来てまだ3年目です。というより、自然観察を始めて3年目です。それまでは自然とはまったく無縁の暮らしをしていました。

でも、そんなわたしでも、もうここに住んでいる人たちの上位5%に入るくらい自然に詳しいと思います。わたしがすごいわけではなく、現代人はどこに住んでいようが、自然界についてほとんど知らない人ばかりだということです。

 あなたの子どもには自然が足りないのこの言葉を思い出します。

いたるところに、しみか汚れのようなブルドーザーの痕が残っている。保護されていると思われているところでさえも、同じだった。

「こういう生態系の破壊はたいがい、私利私欲と無知からなされるんです」

彼女によれば、人々は名前を知らないものには価値を認めない。

「植物の名前を知るたびに何か新しいものに出合った感じがする、と言った生徒がいたわ。名前をつけるということは、その存在を知ることなのよ」(p60)

名前を知らなければ、存在しないも同じなのです。自然豊かな場所に住んでいても、何一つ植物の名前も知らない人は、平気で環境を破壊します。たとえ数種類の山菜を知っている人でも、他の大多数の植物については存在しないも同じで、愛着も持っていません。

しかし、自分で足しげく森に通い、あらゆる植物に興味を持ち、ひとつひとつ調べた人は、そんな過ちには陥らないでしょう。日毎に移り変わるすべての原生の植物が愛おしく感じられます。

たった数種類だけではなく、何十種類もの山菜やキノコやハーブを味わい知るまでには、数え切れない命との出会いがあります。

人知れずひっそりと咲く、目立たない樹木の花ですら、何度も何度も目にします。一つ一つの木々の個性を知り、生活に役立てる方法も学びます。

自然のあらゆる面に親しみ、森とともに生きるようになれば、最初は背景としてしか見ていなかった雑草や雑木でさえ、多様で個性ある生命だと気づきます。無造作に傷つけたり、乱獲したり、踏み荒らしたりするなんて、考えられなくなります。

いかに21世紀の文明社会で生きていようと、自分が地球という大自然のゆりかごの中で生かされていることをわきまえ知るようになります。

「インターネットさえあれば生きていける」などと言う人もいます。でも、わたしたちはデータではなく、バーチャルな存在でもありません。

インフラが整備された現代社会では、巧妙に隠されてはいますが、わたしたちはもとより動物にすぎません。地球が生み出す食物を食べ、地球を取り巻く大気に包まれ、自然すべてと共生しなければ生きていけません。

自然界のものを観察し、調べ、味わい知るなら、現代人が忘れてしまった事実、すなわち自分が地球に依存している一個の動物であることを思い出すことができます。だからこそ、豊かな自然を大事にしたい、守りたいと思えるのです。

簡易スケジュール

お気に入りの山菜類のスケジュール表です。時間があれば、もっと詳細な表を作りたいです。

4月、5月は目まぐるしいので、上旬・中旬・下旬に分けています。必ずしも順番通りに出るわけではないので、時期が近づいたら様子を見に行くべきです。

◯印の山菜は数週間かそれ以上にわたり採取できるので、長く利用できます。逆に△印の山菜は数日で旬が終わるため、注意深くないと時機を逸してしまいます。


4月上旬
フキノトウ、シラカバ(樹液)

4月中旬
エゾイラクサ、エゾエンゴサク◯、シャク◯、オオハナウド◯、チシマアザミ

4月下旬
エゾノリュウキンカ◯、ギョウジャニンニク、カタクリ、エゾニワトコ、ヤマブキショウマ△、オドリコソウ、キバナノアマナ

5月上旬
オオアマドコロ、ハンゴンソウ、ヨブスマソウ、クサソテツ△、カラハナソウ、エゾネギ、シラカバ(葉)、エゾヨモギ、ニリンソウ◯、オオイタドリ、ユキザサ、フキ◯、チャイブ(葉)

5月中旬
タラノキ△、ハリギリ△、ワラビ、クマイザサ◯、エゾマツ、クルマバソウ◯、マユミ△

5月下旬
ウド、ガガイモ◯、イケマ、マタタビ(芽)△、サルナシ(芽)△、ミツバ◯、ヒトリシズカ◯、カキドオシ、エゾゼンテイカ◯

6月
ハリエンジュ
チシマザサ
アマチャヅル
チャイブ(花、根)
ヤナギラン◯

7月
ヤマグワ
ゲンノショウコ◯
ウツボグサ◯

9月
ヒシ
ツチマメ
オニグルミ
サルナシ(実)

10月
キクイモ
ホオノキ
キハダ
チョウセンゴミシ

【草本編】食用になる草花の葉や実まとめ(五十音順)

ここからは、過去の自然観察日記をもとに、これまで味わった山菜・ハーブなどを五十音順に整理したいと思います。木の実や海浜植物は次の副見出しにまとめています。

キノコについては、長くなるので、別の記事に整理しました。

道北の森で見つけた、食べられるキノコの見分け方まとめ
これまで北海道の森で採取した、食べられるキノコの見分け方についてまとめました。

この記事のトップにある目次を使えば、各項目にジャンプするのが楽です。([ ]がついているのは、見つけたものの食べるに至っていない項目です  )

観察はしたものの、食べるまでには至らなかった植物も参考までに掲載しています。今後、食べてみたものが増えたら、追記する可能性があります。

わたしもまだ経験が浅いので、この記事に書いてある情報はすべて正しいとは限りません。参考にする場合は、さまざまな情報源を複合的に調べるようになさってください。

自生している植物は地域によって異なるという点にもご注意ください。この記事で扱っているのは道北地方に分布している植物のみです。他の地域には、ここで扱っていない毒のある植物が分布しているかもしれません。

また、どの植物を採取する場合でも、以下のような点を確認してください。

・山菜の採取が禁止されていない場所かどうか。
・その植物の特徴を一つだけでなく複数確認できているか。
・参考資料として複数の情報源を調べたか。
・ヒグマ、マダニ、アブ、スズメバチなどの対策をしているか。
・1/3以上採ってはならない、という原則に従っているか。
・苦味のある山菜はピロリジジンアルカロイドなどの毒成分を含むので、食べる前にアク抜きする、食べすぎないことが重要。

アオミズ

アオミズは、7月中旬ごろから、森のやや湿ったところに群生するイラクサの仲間です。夏にエゾイラクサとよく似た、十字対生の葉の青々とした植物が群生していて、茎にイラクサのようなトゲ(刺毛)がなければアオミズです。

しかしながら、「アオミズ」という山菜には、込み入った事情があります。

詳しくは、ここのページでまとめてくださっていますが、有名な山菜の「青みず」と、植物としての「アオミズ」は別物です。

山菜の「青みず」と呼ばれているのは、ヤマトキホコリという植物で、「赤みず」はウワバミソウという植物です。両者ともにイラクサ科ウワバミソウ属です。

一方、植物としてのミズは別に存在していて、山菜の「青みず」「赤みず」とは無関係です。具体的には、ミズ、アオミズなど10種類近くあり、いずれもイラクサ科ミズ属です。

つまり、俗に「みず」と呼ばれている山菜は、イラクサ科ウワバミソウ属の植物で、正式な植物名としての「ミズ」はイラクサ科ミズ属の植物です。正式な植物名を知らないまま、地元の慣習で山菜採りをしている人が多いせいで、このような混乱が生じています。

山菜としての「みず」も植物としての「ミズ」も、いずれも食用にできます。わたしの住んでいる地域では、今のところ、植物としての「ミズ」しか見つけたことがありません。

どちらも同じイラクサ科なので、葉の形はよく似ていて、三行脈が目立ちます。イラクサ科なのにトゲ(刺毛)を持たないことも共通しています。しかし、葉の付き方が、まったく異なっています。

北海道のイラクサには、葉が十字対生(2枚ずつ向かい合ってつく)のエゾイラクサと、葉が互生(互い違いにつく)のムカゴイラクサの仲間がありますが、「みず」と「ミズ」も、同じ違いをもっています。(「エゾイラクサ」の項も参照)

まず山菜の「みず」、つまりウワバミソウ属の2種は、葉が互生で、ムカゴイラクサに似ています。ウワバミソウは実際にムカゴもできて食べられます

一方、植物の「ミズ」、つまりミズ属のほうは、葉が十字対生なのでエゾイラクサに似ています。この項で扱うアオミズも、トゲがないことを除くと、芽出しの頃のエゾイラクサそっくりの姿をしています。

花のつけ方もよく似ていて、エゾイラクサと同じく葉の付け根からビーズを通した糸のような紐状の花をぶら下げます。しかし、エゾイラクサが1mを超える高さに成長するのに対し、アオミズは成長しても30~50cmと小さいままです。

また、葉を茂らせる時期も、エゾイラクサは初春(4月)、アオミズは(8月中旬)と全然違います。「アオ」ミズの名のとおり、葉っぱの緑みが強く、テカテカとしているのも目立ちます。

晩夏にエゾイラクサの若葉のようなもの見つけたら、かがみこんで茎葉にトゲがあるか確認してみるといいでしょう。ツルツルだったらミズやアオミズだと同定できます。

ミズとアオミズの違いは、ミズは茎が赤いのに対し、アオミズは茎も緑で、葉先がより尖っているといった点で見分けられます。

通常、山菜「みず」として食べられているのは、ウワバミソウ属のほうですが、このミズ属の本家ミズやアオミズも食べることができると山菜図鑑にありました。

ただし、食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、ミズ属は「10種内外があり、(味や匂いにそれぞれのクセがあり、好き不好きがあっても)その多くを食べることができるが、実際に利用価値のあるものは、アオミズ、ただ一種」だと記載されていました。

わたしも今のところ、発見できたのはアオミズだけなので、柔らかそうなのを採取して食べてみました。定番の胡麻和えにしてみたところ、不思議なことに、なぜかミツバの味がしました。

あまりに奇妙だったので戸惑いましたが、調べてみたら、アオミズを食べた人はやっぱりミツバのような味とシャキシャキした食感だと書いています。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダにも、「なぜか、ミツバに似た香りがある」と書かれていました。謎は深まりますが、間違ってはいなかったようです。

ミツバに似ているので普通に美味しいですが、花が咲くとやや硬くなってしまうので、食用に適する時期は短めです。芽生えてすぐの7月中旬ごろなら全草を食べられますが、8月以降は柔らかい葉を選ぶといいかもしれません。

決して不味いわけではありませんが、イラクサが春の野菜のない時期に堤防などに生えて重宝するのに比べ、食べるものが有り余っている時期にクマが出そうな森の奥のアオミズをせっせと採取して食べるかというと気が進みません。

また注意点として、有毒植物のハエドクソウの若葉にやや似ていることが挙げられます。

ハエドクソウはイラクサ科ではありませんが、下の写真のように、若葉が十字対生で、茎にトゲ(刺毛)もないので、ミズ属の植物と見間違える危険があります。

とはいえ、ハエドクソウが若葉の状態なのは7月で、アオミズが現れる8月中旬にはすでに大きく成長して、もっと大きな葉になり、すでに長いムチのような花穂を伸ばしています。時期に着目すれば間違えないでしょう。

またハエドクソウの葉は、よく見ると基部(柄がついているところ)が切形(ハサミで切ったように平ら)になっていることが多いので、慣れれば見分けられます。

ほかに、シソ科のトウバナの葉も、下の写真のように、夏頃生える、十字対生、草丈が低い、といった特徴から少し似ています。

しかしアオミズの葉脈はイラクサの仲間らしく三行脈(主脈が3本)なのに対し、トウバナは普通の葉脈(主脈が1本)なので、よく見れば区別できます。

 

アキタブキ/フキノトウ

言わずとしれた、非常に有名な山菜アキタブキ。

フキは地下茎を伸ばして繁殖する植物なので、茎は地下に埋まっていて見えません。 早春に出てくるフキノトウは花芽、つまりつぼみです。

都会だと高級食材のように扱われていますが、自然豊かなところだと、雪解けとともに、道路脇でも畑のふちでも川沿いでも森の中でも、無限にボコボコと萌え出てきます。

あまりに多く生えるからか、ほとんど見向きもされず、食べる人はほとんどいません。

都会のスーパーで販売されているフキノトウは、かなり大きくなって花が開き始めたものを売っていることがありますが、自分で摘んで食べるときは、つぼみ(正確には苞)が開く前の段階のものが、苦味が少なく香り高いです。

だいたい手のひらにすっぽり収まるくらいのサイズなので、手で根元を掴んでひねるようにすると、うまく採取できます。

どこにでも生えますが、道端のものは避けたほうがいいでしょう。個人的には森の中の腐葉土から出てきたものが苦味が少なく美味でした。

特に似た植物はありませんが、本州以南ではハシリドコロという有毒植物の芽が似ているそうなので注意が必要です。

フキノトウには雄株と雌株があり、どちらを食べても構いません。

しかし、ネットで調べたら、雄株の花粉でアレルギーが出る人もいる、雌株のほうが苦みが少ない、といった意見もあったので、少し苞をめくってみて、雌雄を確かめるのもよいかもしれません。

雄株は星型の花(両性花)のみを咲かせるのに対し、

雌株は糸状の雌しべだけを持つ雌花が目立ちます。

フキノトウは地下茎から生えるので、群生している場合はひとつの株から出ている花芽である場合がよくあります。つまり、雄花の近くには雄花が多く、雌花の近くは雌花ばかりです。

一方、フキは地下茎から生える葉に相当します。地上に伸びる茎のように見える部分を食べますが、実際には葉についている柄(葉柄)にあたる部分を食べています。

フキは5月に葉を出してから、巨大に成熟する7月頃まで、かなり長く採取できる山菜です。若いフキは柔らかく、成熟したフキは歯ごたえがあります。多くの人は成熟したフキのほうを好みます。

アイヌ民族は5月頃の若いフキは、皮をむいて焼いて食べたり、汁物の具や煮物に用い、ときには生で食べたそうです。一方、7月頃の成熟したフキは、茹でて皮をむいたものを天日干しにして乾燥させ、冬の保存食としたそうです。

フキはどこにでも生えますが、道端に生えているものなどは茎(葉柄)が赤く変色していることがよくあります。

一般に「赤ブキ」はまずいとされているので、茎(葉柄)がみずみずしい薄緑色をした「青ブキ」を選んで採取するのがいいでしょう。

どのフキも若いころは茎が緑色なのに、成長とともに変色しはじめます。まだサイズが小さく、青ブキが多い時期に採ってくるのも手かもしれません。人がめったに入らないような森の中や河川敷なら、大きくなっても茎が緑色のフキがたくさんあります。

青ブキだと思っても、切ってみたら、内部が変色しかかっていたり、泥を吸い上げたりしているものもあるので、一つ一つ確認してから採るべきです。

なぜ葉柄が赤く変色するのかは、調べても十分な根拠のある情報がありませんでした。わたしとしては、傷んだり、勢いが弱ったり、頻繁に刈られたりしている株に多いようには思います。

また、上の写真のようにフキの葉は一箇所から複数生えますが、真ん中の太いものを「中ブキ」、外側に中ブキにかぶさるようにして生えているものを「外ブキ」といいます。

根元の葉柄の重なり方を見れば、どちらが中でどちらが外か判別できます。

一般に、個体の保護の観点から、「外ブキ」のほうを採取し、「中ブキ」は残すと良いと言われています。外ブキのほうがシャキシャキして美味しいともされます。詳しくはアイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から夏へ】のp42参照。

フキの調理方法については、ネット上にたくさん情報があるので割愛します。

農林水産省の資料によると、キク科であるフキは、肝毒性のあるピロリジジンアルカロイド類を含んでいます。加熱しても壊れませんが、茹でこぼし、水さらしなど伝統的なアク抜きで減らせるそうです。

アイヌのように乾燥保存する場合は、7月頃の成熟して巨大になった青ブキを採ってきます。

1~2分茹でて、水にひたして冷まし、端から筋を引っ張って取り除きます。天日干しにすると黒っぽくなります。

乾燥させて保存したフキは、2日ほど水にさらして戻せば、料理に使えます。

アマチャヅル

初夏に森を歩くと、大量に伸び広がっているツル植物、アマチャヅル。健康茶ブームで有名になった時期もあるそうですが、普通に生えているので、いくらでも採取してお茶にできます。

鳥足状複葉という特殊な構造の葉ですが、5枚セットの手のひらのような形の葉のツル植物と覚えておくだけでも十分です。

酷似した植物に下の写真のヤブガラシがあります。同じくツル性の5枚セットの葉が似ていますが、科が違う植物なので他人の空似です。アマチャヅルよりも葉が硬くゴワゴワしている印象を受けます。

また、上の写真にも写っていますが、巻きひげがどこから出ているかで容易に見分けることができます。

アマチャヅルの巻きひげは茎と葉の間(葉腋)から出るのに対し、ヤブガラシの巻きひげは葉と対生(向かい合って生える)しています。ネット上の詳しい記事も参照

アマチャヅルとヤブガラシが似ているのはツル植物である点と葉の形だけで、花や実は全然似ていません。

ヒメゴヨウイチゴなど、5枚セットの似た葉をもつ植物は他にもありますが、ツル植物ではないので区別できます。

お茶として利用する場合は、若葉の時期である6月半ばごろに採れば、虫食いが少ないです。乾燥させて飲むと、ほんのり甘いですが、ほとんどわからないレベルです。若い葉は茹でて食べることもできるようです。

8月ごろになると、いかにもウリ科らしい目立たない極小の花をつけます。

10月には熟した実が黒っぽく色づきます。花びらと萼がついていた場所にリング状の痕が残り、裂けた花柱の痕跡が3つの点となって残るので、面白い模様に見えます。

イケマ/ガガイモ

その不思議なツル植物との出会いは初冬でした。雪道の農道をサイクリングしていると、背の高いイタドリの茎に絡みついた、奇妙な形の実を発見。中には整然と折りたたまれた種が詰まっていて、引き出すと綿毛を広げて飛んでいきました。

この植物はいったいなんだろう、と調べてみたら、ガガイモかイケマだということがわかりました。この2つの植物はとても似ています。ガガイモは毛深くてゴツゴツしていて男性的、イケマはすべすべして女性的だという違いがあるようでした。

後日、その近くで似たような実を見つけましたか、もっと殻が薄かったので、そちらがイケマだとわかりました。並べてみると、こんなに大きさが違います。大きくてゴツゴツしているのがガガイモの実、小さくて薄いのがイケマの実です。

では実をつける前の夏場はどんな植物なのかというと、イタドリなどの背の高い茎をもつ植物に巻き付いて葉を茂らせ、小さな花をたくさん咲かせます。

ガガイモの葉は先の尖った長細いハート型。質感はゴワゴワしていて、波打ちます。

花は毛深く赤紫色で、まるでヒトデのよう。

一方、イケマの葉は同じ長細いハート型ですが、質感は柔らかく、ふちも波打ちません。

花は白い星型で、毛深くなく、ヒトデっぽさはありません。

 

ガガイモとイケマは、どちらも若芽を食べることができます。芽を出すのは意外に遅く、わたしの地域では晩春の5月下旬ごろ、ウドやワラビと同じ時期です。巻き付く支柱になるイタドリなどの茎が高く成長するのを待って、芽を出すようです。

芽の時点でもお互いよく似ています。どちらもツル状で、葉が対生、つまり向かい合ってセットでついています。

ガガイモの茎には白い毛が生えているのに対し、

イケマの茎は紫色を帯びていてすべすべしています。

茎の色の特徴は花の色とは反対ですが、ガガイモは男性的で毛深く、イケマは女性的ですべすべしているとおぼえておけば区別できるでしょう。

どちらの場合も、先端の20~30cmくらいを採取します。すでに長く伸びたツルでも、先端のほうを手で折り取れば食べられます。手で自然にポキっと折れるところまでが柔らかいということです。

どちらの茎も、折るとすぐに白い乳液がしみ出てきます。このユニークな特徴のおかげで、他の植物と間違うことはまずないでしょう。同じように乳液が出るツル植物はツルニンジンがありますが、葉のつき方など見た目が違いますし、いずれにせよ食用にできます。

どちらもアクはないので、さっと茹でて、お浸し、和えもの、炒めもの、卵とじなどにするもよし、そのまま天ぷらにするもよし、いろいろと料理できます。イケマの紫の茎は、茹でると濃い緑色になります。

独特の風味がありますが、イケマのほうがやや濃く感じました。食感はどちらもまるでインゲンマメのような歯ごたえがあって美味しいです。ウドと同じ時期に採れるので、ウドのついでに採って一緒に調理するのもいいでしょう。

改訂新版 北海道山菜図鑑によると、ガガイモの場合、若い未熟な実も食べることができるそうです。熟してしまうと最初の写真のように中に種と綿毛が作られてしまうので、9月までに採取する必要があります。

下の写真は8月中旬のガガイモの実で、おそらくこの時期くらいが良いのでしょう。天ぷらにしたり、漬物にして保存食にするとありました。わたしはまだ食べていませんが、オクラのようで美味しいと書いている方がいました

ではイケマの実も、同様に食べることができるのか、というと、なぜか改訂新版 北海道山菜図鑑にはガガイモの実は食べられると記載されているの、イケマの項にはそう書かれていません。

逆に、食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダには、イケマの実は天ぷらにできると記載されているのに対し、ガガイモにはその記述がありません。

おそらく、どちらの実も、若い時期なら食べることができるのでしょうが、情報が少なく、よくわからないところがあります。

イケマもガガイモも、根には強い有毒成分を含んでいます。その毒性の強さゆえに、アイヌはこの植物を「それ(神)の足」を意味するイケマと名付け、崇めました。少量なら薬として利用できますが、多量に摂ると脳性痙攣を起こします。

若芽や実は食用になるとはされていますが、強壮作用もあるとされ、弱いながらアルカロイドを含んでいます。とても美味しい山菜ですが、多量に食べるのは控えるべきでしょう。

ウツボグサ

6月下旬以降、雑草として、公園でも道端でも森の中でも、さまざまな場所で見かける植物。有用なシソ科のハーブのひとつ。

葉っぱを普通に山菜として食べることもできるますし、花をハーブティーにすることもできます。

夏の終わりごろに枯れかけて褐色になった花穂は、夏枯草と呼ばれて、生薬として使われています。利尿作用、消炎作用、眼球の痛みなどに効能があるそうです。

肝心のハーブティーとしての味や香りはほとんどなく、他のハーブとブレンドして利用しました。

とりたてて美味しいものではありませんが、どこでも見かけるので、ちょこちょこ集めて、乾燥させてストックしておくと冬にハーブティーが楽しめます。

ウド(ヤマウド)

高級山菜の代表のようなウド。道北では、森の中に立ち入らなくても、山道の道路沿いに普通に生えていたりするので、見分け方を知ってさえいればお手軽な山菜です。

スーパーなどでは軟白栽培の白ウドが売られていることもありますが、野生のウドに比べると香りも味も劣ります。

同じウコギ科の山菜としては、タラノキやハリギリがあります。他にエゾウコギ、コシアブラ、タカノツメなどもありますが、道北では見ません。

タラノキとハリギリの二種は「木」なのに対し、ウドは「草」です。いずれも5月中旬に芽が出ますが、木であるタラノキやハリギリは出てすぐの芽を食べるのに対し、ウドは地面から生えた芽がある程度成長してから食べるので、およそ二週間程度、旬の時期は遅れます。

採り頃は、図鑑によると地面から30cmくらい伸びたころとされていましたが、近所の人たちは60cmから80cmくらいになってから食べるのが好きなようでした。大きくても普通に柔らかくて美味です。

ウドは、地上に出ている緑色の茎の下に、地下にも少し白い茎が伸びています。中には、地中に埋まっている根元の白い部分が美味しいと言う人もいます。

その部分を採取したければ、園芸用スコップを突き刺して深い場所から茎を切り取るようにします。それよりさらに下には大きな根の塊があるので傷つけないよう気をつけます。

わたしも試してみましたが、白い部分は軟白栽培の白ウドに似ていて、味も香りも薄いです。濃い味と香りが好きなら、わざわざ、地面を掘り返してまで食べるほどではなさそうです。

ウドは1つの大きな根の塊から数本の茎を生やすので、地上部だけ見ると群生しているように見えます。それらは同じ地下の根から生えているものなので、全部採らずに数本残すようにすれば、地下の根は生き続け、また来年採ることができます。

地面から太くて長い茎がにょきっと生えていく様子は、オオハナウドや、エゾニュウなど、大型のセリ科植物とよく似ているので、初心者は混同するかもしれません。(「エゾニュウ/アマニュウ」「オオハナウド」の項を参照)

しかし、茎が緑色で毛深いこと、切った時にウド特有の香りが非常に強いことなどから、見分けは容易です。間違えると危険な毒草もありません。

また、オオハナウドやエゾニュウの芽は、4月の雪解け直後の他の植物が全然ない時期に生えてくるのに対し、ウドは木々が青々と茂った5月半ばに生えてくるので、時期がまったく違うことからも区別できます。

芽出しの時期のウドを探すのは、慣れるまでは難しいかもしれません。一方、夏には背丈よりも高く生い茂ったウドが、打ち上げ花火のような豪華な花をつけます。

そして秋には色とりどりの実に変化します。

この時期のウドは、車を運転しながらでも、道端に頻繁に見つけられるほど目立ちます。それで、花や実の時期に群生している場所を覚えておいて、翌年の5月末ごろに見に行けば、確実に採取できるでしょう。

調理するときは皮を剥きますが、こちらのページで解説されているように、5分くらいかけてしっかり茹でてから皮を剥くと、手で簡単に剥けます。太い茎の場合は、そこそこ厚めに剥くと筋なく食べられます。

一本のウドでも、茎の部分は酢味噌和え、若葉や芽は天ぷら、皮はきんぴらというように様々な方法で利用できるので、調理の工夫しがいのある山菜でもあります。

エゾイラクサ

何も知らずに触れると、ひどい痛みに襲われるイラクサ。イラクサの漢名は「蕁麻」で、漢字のとおり触れたところが蕁麻疹のように腫れることに由来しているようです。

イバラやハリギリのように、物理的に鋭いトゲがあるわけではなく、肉眼で見ると葉や茎が細かい毛に覆われているだけに見えます。

しかしこの毛は刺毛と呼ばれ、注射針のような構造になっています。触れると皮膚に毒液が注入されてしまい、痛みや発疹に襲われてしまいます。

これだけ知ると、やっかいな有害植物のようですが、実際にはイラクサは非常に優秀な山菜またハーブです。

イギリスではネトル(針を意味するNeedleが由来)と呼ばれ、春にはヨモギ摘みならぬネトル摘みの習慣があり、スープにしたりお茶にしたりと愛されています。

見た目はシソの葉に似ていますがシソ科ではなくイラクサ科。しかし、よく葉と茎を観察して、刺毛があればイラクサです。

また、横から茎を見たとき、茎の分岐点に白っぽい双葉のような托葉(2つ上の写真を参照)がついていることからも判別できます。

面白いことに、イラクサの刺毛は、茹でるか乾燥させるかすると無力化されます。

茹でればほうれん草のような癖のない野菜として、乾燥させれば効能豊かな緑茶のような香りのハーブティーとして楽しむことができます。

さらには虫を落とすためにイラクサを水に漬けておいたり、調理するために茹でたりすると水が赤っぽく変色しますが、この汁は畑の有機液肥としても使うことができます。

食材として採取するのは、春先の4月末ごろ、ほとんどまだ緑がないころに枯れ葉の中から出てきた、芽出し後すぐのものを採取します。

慣れれば様々なところで発見できますが、河川敷など日当たりのよい開けた場所に多く、すさまじい数が群生しています。

採り頃のサイズとしては、下の写真のような手のひらより小さな時期が望ましいです。

次の写真くらいの、手のひらより大きいサイズになってしまうと、茎に筋が出てきてしまい、野菜として食べると気になってしまうかもしれません。しかしハーブティーの茶葉としての利用は可能です。

イラクサを採取するときは、手全体を覆ったゴム手袋をつけ、全身を覆うウィンドブレーカーなどを身につけるべきです。布の手袋や、メッシュ加工のもの、薄い服などは刺毛が貫通します。イラクサは群生するので足も長靴、長ズボンがいいでしょう。

ある程度育ったイラクサの場合、小さな0.5mmほどの幼虫などが住んでいることもあるので、中心部の重なり合った芽の内側や、葉っぱの裏側に虫がついていないか見ながら採ります。

野草だから虫が多い、というわけではなく、無農薬野菜と同じく新鮮な証拠です。

採ってきたイラクサはしばらく水に漬けて虫を落としてから、手袋をつけたまま水洗いします。鍋に投入して茹でるか、干して乾燥させるかすると、素手で触っても問題なくなります。

茹でたイラクサは冷凍すれば、長期保存ができます。冬場に青野菜がなくなった時のために保存しておくと、とても便利です。

本場イギリスの方法に倣ってネトルスープすると、濃厚なコクのあるスープに仕上がり、とても美味でおすすめです。

乾燥させて茶葉にし、ハーブティーを淹れると、緑茶のような香りと味わいで、とてもリラックスできます。

抗ヒスタミン成分が含まれているため、花粉症などアレルギー性疾患に効くとされており、他にもさまざまな効能が期待できます。

イラクサは刺毛があって多少扱いにくいため、敬遠されがちですが、もしトゲがなかったら絶滅していたかも、とさえ言われるほどの有用性の塊です。

美味しい上に、健康にもよく、大量に群生して、他の山菜採りの人と競争になる可能性もまったくないため、わたしは春の山菜採りの際には、イラクサ採りを一番楽しみにしています。

なお、イラクサには複数の種類があります。ここで書いたエゾイラクサは葉が左右対称につく(対生)のが特徴ですが、ムカゴイラクサ、ミヤマイラクサといった葉が左右交互につく(互生)種もあります。

東北地方でアイコと呼ばれて親しまれているのは、このミヤマイラクサのようです。

道北ではムカゴイラクサをよく見かけますが、芽出しの時期が遅く、すでに他の植物が茂ってきたころに現れます。

ムカゴイラクサの特徴は、その名のとおり、秋になると茎の脇にむかごをつけることです。ネットで調べても食べることができるものなのか分からなかったのですが、アイヌのごはん―自然の恵みには、食用になるとの記述があります。(p87)

いずれにしても、茎に細かいトゲがあるという共通点があり、どのイラクサでも美味しく食べることができます。

また、フィンランドのハーブについてのサイトでは、秋にイラクサの種を採って食用にできるとの記述がありました。まだ試せていませんが、とても面白そうです。

道北では8月末から10月ごろ、イラクサの実(種)を見かけます。緑色のネックレスのようで、見た目にもとてもきれいです。

エゾエンゴサク

長い冬が終わり、雪解けともに真っ先に咲き始める花々は、スプリング・エフェメラル(春の儚いもの)と呼ばれます。

4月に一斉に花を咲かせて野山を彩り、5月にはすっかり消え去ってしまいます。

道北では、エゾエンゴサク、キタミフクジュソウ、キバナノアマナ、アズマイチゲ、ヒメイチゲ、ニリンソウ、カタクリなどがスプリング・エフェメラルの代表種。

このうち、最も頻繁に目にし、山菜として食べることもできるのがエゾエンゴサクです。 エンゴサクという奇妙な名前は漢名に由来しており、近縁種の地下茎が薬草として使われていたそうです。

毒草が多いケシ科の近中で、エゾエンゴサクは珍しく全草が食用になります。

見分けるのはまったく難しくなく、花が少ない時期に寒色系の小さな花を穂のようにたくさんつけます。花は奥行きのある細長い独特な形で、葉は丸いマメ科のような形です。

全盛期には他のスプリング・エフェメラルとともに、堤防、公園、畑のふち、森の中など、あちこちに一斉に咲き乱れ、春の訪れを告げます。

早春の花の時期には簡単に見つけられますが、背が低い草のため、花が終わると非常に見つけにくくなります。

味わうなら花が咲いている時期に、群生地から数本まるごと採取するのがいいでしょう。

アイヌ民族は根茎も食べて、保存食にしていたことで知られていますが、わたしは食べたことがありません。保護の観点からも、根は残しておくほうが良いと思われます。

気をつけるべき類似した毒草としては、同じケシ科キケマン属の、エゾキケマンやムラサキケマンがありますが、どちらも花の色や葉の形が全然違うので、そうそう間違わないでしょう。いずれも死ぬほどの猛毒ではなく、吐き気や下痢程度のようです。

わたしの住んでいるところではムラサキケマンはまだ見ていません。エゾキケマンはまれに見ますが、エゾエンゴサクほど大量に群生していません。

エゾエンゴサクの花の色は、下の写真の4色(水色、紫色、ピンク色、まれに白色)なので、エゾキケマンのような黄色や、ムラサキケマンのようなツートンカラーの紫ではありません。

料理の仕方は、おひたしや天ぷらなどにできます。茹でると退色しますが、彩りとして添える程度には残ります。天ぷらにするともちもちとして美味しいです。特に味はないので、他の山菜に添えるといいでしょう。

エゾゼンテイカ(エゾカンゾウ)/ヤブカンゾウ

夏に橙色の鮮やかな花を咲かせるユリ。別名エゾカンゾウ。

道北では、サロベツ湿原に一面に咲き乱れる様子が有名ですが、普通の河川敷や草原にも時々生えています。

若芽、つぼみ、花を食べるとされますが、つぼみと花しか食べたことがありません。わたしが住んでいる場所では、若芽は4月下旬~5月上旬、つぼみは5月下旬~6月中旬です。

あらかじめ生えている場所を知っていれば、特に似た植物はないため、つぼみは簡単に発見できます。(本州以南の場合ヒガンバナ科のキツネノカミソリという有毒植物が似ているそうです)

徐々に開花するので、すでに咲いている花が近くにあって、見つける手がかりになることもあります。

つぼみは、特に味はありませんが、アスパラの芽の先端のような歯ごたえがあります。簡単に茹でて味付けしてトッピングするだけけでも、料理のアクセントになります。茹ですぎると食感がなくなるので注意。乾燥保存もできるそうです。

下の写真のように、つぼみにはさまざまな成熟度合があります。大まかに言って、まだ小さい緑色のものと、大きくなって咲きかけている黄色っぽいものに区別できます。

それぞれ食感に違いがあり、小さく緑色のものはシャキシャキした歯ごたえがあり、黄色い咲きかけのものは玉ねぎのような滑らかな舌触りです。わたしは小さい緑色の時期のほうが好きですが、人それぞれです。

近縁種は色々ありますが、いずれも黄色~オレンジ色の花を咲かせるユリで、どれも同じようにつぼみを食べることができます。

キスゲは、花がもっと黄色っぽく、夕方から咲き始めることで区別できます。

また、やはり近縁種のヤブカンゾウは、花が八重咲きで、葉の幅がやや広いことで見分けられます。道端に普通に生えていることも多いです。道北ではエゾゼンテイカが終わった後の8月ごろ見かけます。

中国では、これらの花の近縁種ホンカンゾウのつぼみが、中華料理の高級食材「金針菜」として知られているそうです。

近縁種でも味は変わらないと思うので、本場の高級食材が身近に手に入ると思えば、かなり嬉しい野草かもしれません。金針菜で調べれば本格レシピも出てくるので、調理の参考にできます。

エゾニュウ/[アマニュウ]

エゾニュウは、道路脇や河川敷など、色々なところに生えている巨大なセリ科植物。大きいものは3mを超えます。

多年草ですが、木ではなく草なので、春に芽を出して数ヶ月でその大きさになるのが驚異的です。

北海道にはオオハナウド、アマニュウ、エゾノヨロイグサ、オオカサモチ、オオバセンキュウなど、数mの巨大セリ科植物が多いですが、その中でも最大を誇ります。

真夏に爆発するかのように大量の花を咲かせるのが圧巻です。

セリ科の大型植物は似た種類が数多くありますが、芽出しの時期であれば、エゾニュウを見分けるのは難しくありません。下の写真は4月下旬の雪解け直後に出てきたエゾニュウの芽です。

わたしが住んでいる地域では、早春の雪解けのころに真っ先に芽を出すセリ科の大型植物は、エゾニュウ、オオハナウド、シャクくらいです。どれも葉の形が違うので、区別は簡単です。いずれも、若芽や若い茎を食べることができます。(「オオハナウド」「シャク」の項参照)

アイヌ民族は、エゾニュウの若い葉や葉柄を食べていたそうです。葉が開く前の段階で採取し、柄の部分の皮を剥いで食べるそうです。

しかし、アクや苦味が強く、癖のある山菜だと言われます。エゾニュウを意味するアイヌ語「シウキナ」には「苦い草」という意味があります。

若い葉は天ぷらにすれば食べられると改訂新版 北海道山菜図鑑 にありました。食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、塩漬けにして保存し、塩出しをして料理することもあるそうです。

近縁種のアマニュウは、その名のとおり比較的甘く食べやすいようです。しかし、大型セリ科植物はどれもよく似ていて、近くで葉の形を調べないと判別できないので、なかなか発見するのが困難です。

エゾニュウの若芽は、人間が食べるというより、ヒグマの大好物として知られていて、時々かぶりついた痕跡を見つけます。

長らく及び腰でしたが、勇気を出して実際に食べてみました。まず若葉を生のままかじってみましたが、今まで経験したことのないレベルの苦さでした。「苦い草」という名のとおりでした。

茎の部分も、ニ度ほど茹でこぼしてから食べてみました。葉と同じくらい苦くて、舌がしびれそうでした。あまりの苦さにびっくりして、口の中を噛んでしまったほどです。

エゾニュウのお浸し

明らかに手強い山菜で、簡単に茹でてお浸しにできるようなものではありません。エゾニュウが生える時期には、他にいくらでも美味しい山菜があります。塩漬けにしてまで食べようという気にはなれないというのが本音です。

エゾネギ(チャイブ、セイヨウアサツキ)

前に住んでいた人が庭に植えていたようで、引っ越してきた時から庭に咲いているチャイブ。繁殖力も旺盛で庭の外まで増えつつつあります。

日本にはアサツキと呼ばれる植物があり、チャイブは別名がセイヨウアサツキなので、てっきり海外から持ち込まれた外来の植物だと思っていました。

しかし、よく調べてみると、チャイブ(セイヨウアサツキ)はまたの名をエゾネギといい、原産地は日本を含む北半球の温帯~寒帯だとされています。

一方、アサツキのほうが、エゾネギの変種であり、原産地は一部資料によると中国だとされています。

どのような経緯をたどって現在の分布になったのかは不明ですが、もしかするとチャイブ(セイヨウアサツキ)のほうが、昔から親しまれていた在来種なのかもしれません。

いずれにしても、チャイブ(セイヨウアサツキ)とアサツキの違いは夏に葉が倒れて休眠するかどうかのみで、容易に交雑もするので、取り立てて区別する必要はなさそうです。

チャイブは非常に有用な植物で、春から秋までさまざまな用途に利用できます。

下の写真は4月下旬に芽生えたチャイブです。ネギのように筒状になった葉なので慣れるとすぐ見分られます。この時期から5月上旬ごろまで、柔らかい若葉を摘んで薬味として食べることができます。

6月には、ピンクの小さな花を咲かせます。花は和え物やお浸し、サラダのトッピングなどにできます。

固くなった葉や茎は、刻んでハーブティーとして利用できます。なんとなくネギっぽい香りと味で、好みは分かれる風味ですが、健康には良さそうです。

増え過ぎたら鱗茎を掘り起こして食べることもできます。花が咲く時期にはよく目立つので、土手などで野生のチャイブの群生を見つけることがあり、何株かごっそり抜いて、鱗茎を採取させてもらうことがあります。

鱗茎には赤紫色の皮がついています。水洗いして土を落とし、しばらくザルで乾かしてから、手でつまむと簡単に剥けます。上の写真は剥く前、下の写真は剥いた後です。

鱗茎は生のまま食べることもできます。辛い玉ねぎのような味ですが、味噌をつけると風味が引き立って、おやつのようにポリポリと食べることができます。見た目も食感もラッキョウにそっくりです。

焼いたり炒めたり、天ぷらにしたりもできます。味噌漬け、醤油漬けにすれば保存食にもなります。わたしは炒めご飯に入れるのがお気に入りです。

エゾノリュウキンカ(通称ヤチブキ)

北海道の春の非常に代表的な山菜エゾノリュウキンカ。有毒植物の多いキンポウゲ科の中で珍しく毒がなく、「ヤチブキ」と呼ばれて親しまれています。

都市近郊では近年数を減らしているようですが、道北では川沿いや道路脇などに頻繁に群生している非常に身近な花で、早春の景色を彩ってくれています。

雪解け後すぐの時期に、季節外れなほど鮮やかな緑色をした葉っぱがこんもりと萌え出てきて、似た植物もないため、見分けは容易です。つぼみも目立つので、一度覚えれば間違いません。

たくさん生えているといっても、他の人が採っていないような場所で、葉を間引くように採るのがよいでしょう。

若い葉、茎、つぼみなど、全体を食べることができます。 同時期に生える、エゾエンゴサクやギョウジャニンニクなどと一緒に煮物や天ぷらにすると、互いが互いを引き立てて、とても美味です。

面白いことに、アイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から秋へ】によると、アイヌ民族は、エゾノリュウキンカも根を保存食として食べていたらしく、わたしも一度だけ試してみました。

森の中に根を張っている植物の根を掘り出すのは、畑の野菜を掘り出すよりはるかに骨が折れました。

植物と叡智の守り人に、森の土を掘るというのは、地球の皮膚の内部を見るということだというエピソードがあったのを思い出しました。(p299)

スコップを突き入れるというのは肌にメスを入れるのと同じで、地球の血管をブチブチ切ってしまうこと。 アイヌ時代は、保存食として根を食べなければ生き延びられなかったかもしれませんが、今は違うので、山菜の根を掘り出すのは、あまり望ましく気がしました。

このように掘り出したエゾノリュウキンカの根のうち、食べられるのは白くて太い根っこだけです。茶色い根や、白い根についている細い糸状の根も苦いので取り除くとのことでした。

後で知りましたが、アイヌのごはん―自然の恵みによると、掘り返したその場で新しい根だけ切り取り、古い根は残したまま埋め戻せばよかったようです。(p81)

根っこなので、噛み切れない繊維のような食べにくいものかと思っていましたが、意外なことにとても柔らかい触感でした。ゆり根とかふかし芋に近いでんぷん質です。

しかし味と香りは強烈でした。山菜としてのエゾノリュウキンカは独特の癖のある味わいですが、それを10倍に濃縮したかのようです。酒のつまみにされるような、いわゆる珍味の類でした。

エゾノリュウキンカの根を保存食として利用する場合は、花が咲いている時期に場所を覚えておき、9月ごろに根を掘り出し、白い部分だけを採取して埋め戻します。

白い部分の表面に生えている糸状のヒゲ根も取り除き、鍋で3分ほど茹でてから水で冷やします。茹でた根はでんぷん質で柔らかくつぶれやすいので注意して扱います。

天日干しにして乾燥させて、保存します。食べる時は、水に浸してから、もう一度茹でて料理に用います。

エゾフユノハナワラビ

7月に森を歩いていると、季節外れの山菜のような芽を見かけることがあります。

これはエゾフユノハナワラビというシダ植物の芽です。

秋になっても枯れず、青々とした葉のまま冬越しし、夏に新しい葉を出すという、ナニワズに似たユニークなライフスタイルが特徴です。葉が開いて目立つ見た目になるのは8月ごろです。

三角形の手のひらサイズくらいのワラビのような複葉を一枚と、シダにしては珍しい花穂のように見える胞子嚢穂をつけるため、「ハナワラビ」の名で呼ばれています。

サイズはあまり大きくないので、注意して歩かなければ踏んでしまっているかもしれません。しかし特徴的な姿なので、慣れればよく見つけられます。

アイヌのごはん―自然の恵みの本によると、アイヌ民族は、葉を刻んで煮魚にふりかけたり、煎じて疲労回復薬にしたりと利用したそうです。(p88)

オリヴァー・サックスがオアハカ日誌で、ハナヤスリ科ハナヤスリ属のシダをお茶にする地域があることに触れていますが、エゾフユノハナワラビはハナヤスリ科ハナワラビ属と多少近いので、似たところがあるのかもしれません。(p33)

一枚しか葉を出さない植物なので、採取するのはちょっと可哀想だったのですが、試しに2株ほど採取して、乾燥させてお茶に淹れて飲んでみました。

すると、いかにも草という香りが漂ってきて、ほのかに黄色く染まったお茶になりました。味は何もありませんが、飲み終わってから、青臭い香りがこみ上げてきました。

お世辞にも美味しいタイプのお茶ではありませんでしたが、疲労回復効果に期待です。

エゾヨモギ/ヨモギ/オトコヨモギ

春を代表するハーブとして有名なヨモギ。北海道には、数種類が自生しますが、どれも葉の裏面に白い毛があり、揉むと特有の香りが漂います。

下の写真のように、芽出しの時期は全体が白い毛で包まれていて、薄緑色に見えます。これくらいの時期が摘むのに適しています。

成長するとともに毛は減り、葉裏だけが白さが残ります。 

北海道に多いエゾヨモギは、別名オオヨモギ、ヤマヨモギとも呼ばれ、その名のとおり丈が大きく成長するのが特徴です。夏には人の背丈より高くなることも珍しくありません。

秋にはノボロギクのような花びらのない地味な花を一斉に咲かせ、ヨモギ・ブタクサ花粉症の原因になります。

ヨモギ摘みで危険なのは、猛毒のエゾトリカブトと葉の形が似ていることです。河川敷や森の中で摘もうとすると、同じ場所に混生していることもあります。

おそらく下の写真はトリカブトで、

次の写真は左がヨモギで、右はトリカブトかニリンソウかと思いますが確証はありません。すべて同じ日に同じ場所で撮った写真です。

トリカブトはかなり自然度の高い場所にしか生えないので、町の近くだと、ヨモギと混生している可能性は低いです。

いずれにしても、白い毛で覆われていることや香りを確認すれば間違わないでしょう。

食用ではなく、よもぎ茶のようなハーブとして利用する場合は、成長してから採取しても問題ありません。

わたしはアイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から夏へ】を参考にして、森に入るときに、道端のヨモギの葉を拝借して、揉んで虫除けに使っています。(p31)

春に摘んだヨモギを、重曹でアク抜きし、冷凍保存しておき、秋に餅つきをした時に混ぜて、よもぎ餅も作りました。

エゾワサビ/オランダガラシ(クレソン)

アブラナ科には、〇〇ガラシ、〇〇ワサビと名のついた草が多くあります。いずれも葉や茎や根に辛味があるのが特徴です。

エゾワサビは初夏に渓流沿いや登山道などにたくさん生えているワサビの仲間。葉っぱは500円玉くらいで、背丈も低いので、とても地味な草です。

ふちに軽く切れ込みの入った丸みのある葉が特徴。羽状複葉ですが、ほとんど頂葉しか目立ちません。

アブラナ科らしい白い4弁の花をたくさんつけます。

下の写真のように、まだ花がつぼみの時期に見分けて採取します。案外に根が浅いので、そっと地面から引き剥がすように引っ張れば、土を掘らなくても根茎まで採取できます。

葉、茎は柔らかく、根はカリコリした食感で、すべて食べることができます。花が咲いてからだと茎が硬くなってしまい、食べられませんでした。

改訂新版 北海道山菜図鑑には、茎や葉は熱湯に浸すと辛味が出、根茎もピリッとした辛味があってワサビと同様に用いるとありましたが、わたしはほとんど辛味を感じませんでした。

同じアブラナ科のオランダガラシは、クレソンの別名で、ステーキなどに添えられる有名な野菜です。

非常に強力な外来種で、道北の森の中までも広がっているので、見つけ次第採っても大丈夫です。鳥の羽のような形になる羽状複葉の葉っぱが目印です。

これもアブラナ科らしい4弁の白い小さな花をたくさん咲かせるので、葉っぱの特徴さえ押さえておけば見分けやすいです。

いずれも独特の辛みや苦みのある種類なので、単独で食べるというより、何かの料理に添えるのに向いています。「コンロンソウ/オオタネツケバナ」の項も参照。

エンレイソウ

3枚の葉と3枚の花びらが印象的で、とても美麗な春の花エンレイソウ。 厳しい冬を乗り越えながら、15年近い歳月をかけてやっと花を咲かせる忍耐強い花です。

一度咲くと何十年も生きるそうなので、もしかすると目の前の花はわたしより年上かもしれません。

小型の様々な色の花をつけるエンレイソウや、

大型の白い花をつけ、雨の後には透明になるオオバナノエンレイソウ、

そしてうつむき加減に花を咲かせ、時にピンク色を帯びるミヤマエンレイソウなど、さまざまな種類かあり、春の森歩きを楽しませてくれます。

4月半ばに芽生える若葉は、3枚の葉をねじって巻いた筒のような形をしています。とてもユニークな形なので、見慣れればすぐ見分けられます。

興味深いことに、もっと後の時期に出てくるミツバも、やはり三枚の葉からなりますが、若葉は同じようにねじれて巻いた姿をしています。

エンレイソウの若葉は、水に十分にさらせば食べることができるそうですが、茎の下部と根に毒があるとのことで、注意が必要です。わたしは食べたことはありません。

一方、夏以降に熟す実は、甘くて、生のまま食べることができます。わたしの地域では7月上旬が食べ頃です。実の形がソバの実に似ていることから、地方によってはヤマソバと呼ばれて親しまれているそうです。

森歩きをしながら、大きく膨らんだ重そうな実を見つけたら、味わってみるといいかもしれません。ぶよぶよに柔らかくなるまで待つと虫が入りやすいので、触ってみて弾力性があれば、持って帰って数日追熟させて食べるのも手です。

ベリーのような種が多いため、積極的に食べるようなものではありませんが、クワの実と同じように、歩きながらちょっと楽しむにはちょうどいい果実です。

オオアマドコロ

釣り竿のような茎を伸ばし、提灯のようにたくさんの花をぶら下げる面白いユリ科の花。根茎がヤマイモのトコロに似ていて、甘味があることから、その名がつきました。

近縁のナルコユリもよく似た形状の花で、こちらは長い竿に多数の花がぶら下がる様子が、鳥よけの農具である「鳴子」に例えられています。

見た目が非常に美しく面白い花ですが、オオアマドコロもナルコユリも、若芽の段階では山菜として食べることができます。

問題は、ホウチャクソウという毒草と見た目が似ていることです。死ぬほどの猛毒ではないようですが、下痢やめまいを引き起こすとされています。

ホウチャクソウはイヌサフラン科であるにも関わらず、ユリ科のオオアマドコロと葉っぱの雰囲気がよく似ていて、花の形も類似しています。

下の写真は、一枚目がオオアマドコロの花、二枚目がホウチャクソウの花です。形こそ似ていますが、ホウチャクソウのほうは花弁が上から下まではっきり分離していることで見分けられます。

花が咲いた後は、オオアマドコロは球体の実をつけ、ホウチャクソウは楕円形の実をつけます。一枚目がオオアマドコロ、二枚目がホウチャクソウです。どちらも熟すと青くなります。

山菜として採る春の若芽のころも見た目が少し似ていて、慎重に見分ける必要があります。

オオアマドコロは、5月始めごろに芽が出て、茎が太く、開けた明るい場所を好みます。

茎はかなり角ばっていて、六角形鉛筆のようです。(花がそっくりで、芽出しのころに食べることもできるナルコユリは、茎が円柱状で角ばっていません)

ホウチャクソウは、芽出しが少し遅く、茎はほっそりしていて、森の中のような暗い場所を好みます。

茎は多少角ばっていますが、オオアマドコロほど太くなく、角も多くありません。

 

ホウチャクソウは茎が分岐するという特徴がありますが、若芽の場合、必ず確認できるとは限りません。また、切ると不快な匂いがするとも言われますが、わたしはわかりませんでした。

たまたま摘んだのが花芽をつける株であれば、葉を開いて中を見ればつぼみの形が違うので区別はできます。

より確実なのは、少し茎の根元の土をよけて、根っこを確認してみることです。食用になるオオアマドコロやユキザサは、下の写真のように、横に伸びる根茎があります。ホウチャクソウにはこのような根はありません。

一度同定して覚えれば、生えている場所や、茎の太さ、角ばっている度合いだけでもわかるようになってきます。実際、太さの印象だけでもかなり違います。

ほかに、同じユリ科であるユキザサやオオバタケシマランとも似ていますが、ユキザサの項に譲ります。ユキザサは山菜として食べられますが、オオバタケシマランは食用にはなりません。

オオアマドコロの芽は、不思議な甘さと苦さがあり、他に似た山菜が思い浮かばない味です。後味が苦いので、よく水にさらすなど、調理を工夫する必要があるかもしれません。ネットを調べればレシピは出てきます。

茎、葉、苞のそれぞれで食感が異なっていて、わたしの場合は、茎が一番好きです。角ばっていますが、筋のようなものはなく、苦味も弱くて、アスパラガスの食感に似ています。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、花も甘酢などで食べることができ、根茎も天ぷらや煮物にできるとのことですが、試したことはありません。アマドコロとその仲間の根茎は滋養強壮の生薬で、萎蕤(いずい)と呼ばれているそうです。

オオイタドリ

オオイタドリは、道内全域に呆れるほど群生していて、見かけない場所はないといってもいいほどです。普通の町の中や、民家の庭や、道路脇、そして森の中にも、どこにでも生えます。

成長すると2mを超え、森の中では3mを超えるほど巨大になることもあります。 近縁種のイタドリはオオイタドリより小型ですが、海外では日本由来の侵略的外来種として忌み嫌われていて、世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されているほど繁殖力旺盛です。

そんなイタドリですが、各地で山菜として利用されていて、若芽の時期に茎の部分を食べることができます。

北海道に自生しているオオイタドリは、芽出し直後の高さ20cmくらいの時期に採取します。旬はほんの1週間ほどしかなく時間との勝負です。わたしの住んでいる場所では5月中旬です。

太さは小指くらい、茎の長さは10cmから20cmくらいが理想的です。細い茎なら、多少長くても剥きやすさは変わりません。しかし、親指よりも太い茎だと、皮が剥けにくくなり、下処理に苦労します。

採取する時は、根元からハサミなどで切り、葉っぱをその場で落とし、茎だけを持って帰ります。

採ってきた茎は、まず水にさらして虫を落とします。

それからフキと同じように手で皮を剥きますが、あまり水にさらしすぎないうちに下処理するほうが、つるりと剥きやすい気がします。ハサミで切った切り口側(根元側)から爪で剥がして剥くとスムーズです。

お湯につけて温めると剥きやすいとネットに書いてありましたが、小指程度の細い茎であれば、そのままでも苦労せず剥けます。

親指より太い茎を採ってきた場合は、皮がかなり剥けにくいです。勢いにまかせて剥くと皮が途中で千切れてしまうので、ゆっくりゆっくり少しずつ剥がすようにすると端まで剥けるかもしれません。

それでも剥けない部分はピーラーを使って皮を取り除きます。しっかりと皮を剥くことができれば、滑らかな食感になります。

皮を剥いた後、茹でて水にさらすなどして、多少のアク抜きをします。

様々な料理に合いますが、甘辛く煮たりすれば、しこしこした食感と酸味が美味しいです。

意外にも、イタドリはジャムに向いていて、甘酸っぱい果物のような味に仕上がります。皮をしっかりと剥いていれば、食感も滑らかで絶品です。

イタドリはタデ科で、やはりジャムに加工されるルバーブの親戚です。そのため、ネット上に数多くあるルバーブジャムのレシピをそのまま使えます。

味もルバーブジャムによく似ていて、ルバーブジャムより好みだと言ってくれた友人もいました。

オオイタドリは、エゾイラクサ、オオハナウドと並んで、わたしが大好きな山菜の一つです。どれも大量に生えて、自生地の保護を気にせず気兼ねなく採れる上、旬の時期さえ逃さなければ、驚くほど美味な食材に変身するからです。

オオウバユリ

アイヌ民族の主食として知られるオオウバユリ。若芽の時点で食べることができますが、それよりも塊茎を掘り出してデンプンを抽出する利用がメインです。

わたしが住んでいる地域では、河川敷でも道路脇でも森の中でも普通に見られる植物で、夏に咲く巨大な花は圧巻です。

オオウバユリは芽を出してから7年くらいかけて栄養を溜め込み、花を咲かせて一生を終えますが、ゆり根(鱗茎)を採るのは花を咲かせない株です。

今年花を咲かせる株は、子孫を残してくれるので採取しません。そもそも花を咲かせるために全エネルギーを使うので鱗茎が小さくなっているそうです。

アイヌ植物誌によると、アイヌの人たちは、花が咲く株はオスのオオウバユリ、花が咲かない株はメスのオオウバユリとみなしていました。後者のメスのオオウバユリが「トゥレプ」と呼ばれ、食用にされました。

若芽のころは、くるくると巻いた葉が可愛らしい見た目です。似た植物はないので見分けるのは簡単です。この芽の段階でも食べることができ、ネット上にも複数の体験談があります。かなりアク抜きに手間がかかるそうです。

デンプンを採る場合は春か秋に株を掘り返します。花が咲かない株を選んで掘るためには秋のほうが望ましいでしょう。 花が咲く株は独特の巨大な花茎を伸ばすので見分けるのは簡単です。

下の写真のように、一箇所に群生していることもしばしばで、花茎を伸ばした株のまわりを探せば、花を咲かせない株も見つかりやすいです。

アイヌ植物誌によると、花を咲かせない株は、光沢のある広い葉の様子がヒメザゼンソウの葉に似ているとされます。(p53)

わたしはまだヒメザゼンソウを見つけたことがありませんが、こちらのサイトで写真が比較されていました。いくつか違いはありますが、オオウバユリの葉は、葉脈が赤みを帯びることで区別できそうです。

なお、アイヌのごはん―自然の恵みによると、ヒメザゼンソウの葉も食用になりますが、生のままだと毒があり、乾燥させたり茹でたりする必要があるそうです。(p82)

デンプンを採る際は、葉だけのオオウバユリを根っこから掘り返します。わたしも試してみたので、以下に写真と説明を載せておきます。

アイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から夏へ】によると、それ専用の堀り道具が使われていたようですが、スコップでも代用できます。

掘り起こした根は、ひとつひとつ丸洗いして泥を落とします。このゆり根は鱗茎、つまり鱗が重なり合ったような形をしているので、洗いながら一枚一枚をパリッと剥がして、分解していきます。

それから、細かく分解した鱗茎のかけらを、杵と臼で、ひたすらすりつぶして砕いていくと、次第に粘り気が出てきてて、とろろ芋のような半液体状になってきます。水はまったく加えていません。この作業はかなり大変です。

砕いてドロドロになったものは、水と混ぜて、何日も置いたり、発酵させたり、繊維を濾し取ったりするのを何度も繰り返して、高品質のデンプンを分離させます。詳しくはアイヌ生活文化再現マニュアル 食べ物【春から秋へ】を参照。

採取したデンプンは、輪っか状にして吊るして乾燥させることで、冬の保存食として用いられます。

乾燥させた輪っかは、刃物で削って、お湯でもどして、おかゆや汁物に入れるなどして食べるようです。

また、ドロドロになったデンプンは、フキの葉に包んで焼いたり、

イタドリ(クッタル=中が空洞の意)やヨブスマソウ(ワッカククッタル=水を飲む筒の意)の茎に詰めて蒸し焼きにしたり、色々な用途に使えます。

味は、癖も苦味もなく、白米やパンを食べたときの印象に似ています。しっかり濾したものでなければ、繊維質が多いです。

ほかに、採取した鱗茎を剥がして、ゆり根と同じように茹でて調理することもできるようですが、試したことはありません。ネットでは天ぷらにして食べた感想などがありました。

オドリコソウ

ちょうどイラクサ採りの旬が終わった5月半ばごろに、堤防や森の中などにこんもりと茂ってくる、シソ科の有用ハーブ。

葉っぱの雰囲気はイラクサとよく似ていますが、かがみこんで横から茎を見てみると区別しやすいです。

まず茎が細くひょろひょろしていて、イラクサのような白い托葉や、全体を覆う刺毛がないことで区別できます。

また、オドリコソウは、早い段階から小さなつぼみを葉っぱの付け根に輪状につけているので、判別の手がかりに利用できます。花を2段以上咲かせる株、最上段だけ咲かせる株、まったく花の株があります。

若葉だけでなく花まで食べることができますが、花が咲いてしまうと虫が入りやすいので、わたしはつぼみの時期に、なるだけ花が咲かない株を選んで採取するようにしています。

採取したオドリコソウは、イラクサと同じように利用できます。 茹でればほうれん草のような癖のない野菜になります。

わたしはイラクサを大量に採って冷凍保存してあるので、ハーブティー用に乾燥させることが多いです。

ハーブとしてのオドリコソウは、婦人疾患や泌尿器系疾患に効能があるとされ、イラクサ(ネトル)と同様ね幅広い健康促進効果があります。あまり味はないので、他のハーブとブレンドするといいかもしれません。

似た仲間として、外来種であるヒメオドリコソウも道ばたなどに大量に群生します。オドリコソウより葉がかなり小さく、オドリコソウの葉が確認できるころにはピンク色の花が満開なので、区別に迷うことはないと思います。

ヒメオドリコソウもハーブとして利用できるとのことですが、おもに道端や畑のあぜ道に生えていて、わたしが山菜採りするような場所にはないので、試したことはありません。

ヒメオドリコソウは外来種でどんどん増え広がるため、身近にあるようなら、遠慮なく採ってしまって大丈夫だと思います。

オオハナウド

オオハナウドはわたしが大好きな山菜です。どこにでも大量に生えるので気兼ねなく採れる上に、味も一級品です。しかし非常に癖が強いので、好きな人と嫌いな人にはっきり二分されるかもしれません。

オオハナウドを初めとする北海道のセリ科大型植物は、姿こそ似ていますが、芽出しや開花の時期に若干の差があるため、見分ける際の参考になります。

オオハナウドは、別項のエゾニュウ/アマニュウ、シャクとほぼ同じ時期、つまり春一番に芽を出します。初夏の6月には、早くも2m前後まで成長し、他の類似した大型セリ科植物の花が少ない時期に、一足先に満開の花を咲かせます。

リンク先の資料(時期は6月)によると、アイヌ民族は、これくらい大きくなったオオハナウドでも、花穂のつく茎を採って、皮を剥いて生のまま食べていたそうです。

アイヌのごはん―自然の恵みでは、5月下旬の若い茎を採ると書かれていました。アイヌ植物誌によると「7月ごろのハナウドの花が咲かない若い茎が美味しい」とも書かれています。

わたしも、試しに花が咲く時期に茎を採ってきたことがありますが、硬くて酸っぱくて無理でした。すでに時期遅れなのか、と考えましたが、じつはそうではなく、開花株から採取したことが間違いだったようです。

ネット上には、開花株は硬くて食べられないという情報がありました。同様に、アイヌ植物誌によると、アイヌの人たちは、「花の咲くのがオスで、茎は堅くて食べられない。採るのはメスのほうで、そのまま皮をむいて食べる」とみなしていたそうです。

この雌雄はオオウバユリと同じく便宜上のものです。オオハナウドは多年草なので、未開花株とはまだ年齢の若い株、つまり来年以降に花を咲かせる株のことと思われます。

一方、「若いうちは男のほうが皮がよくむける。女のほうはむけにくい。しかし、女のほうが甘くてうまい」とも書かれているので、4月半ば~5月上旬くらいの若芽の頃なら、開花株かどうかに関わらず食べることができそうです。(p42-43)

改訂新版 北海道山菜図鑑によると、葉が開きかけたころの白っぽい茎を採るとあります。前述のとおり、オオハナウドは早春に芽を出すため、紛らわしい他のセリ科とも区別しやすいメリットがあります。

早春のオオハナウドの若芽は、下の写真のような見た目です。

毛深くてウドに似ていますが、オオハナウドは雪解け後すぐ、木々がまだ葉もつけていない4月上旬には芽を出します。

一方のウドは、森が青々と茂って鬱蒼としてきた5月半ばまで出てきません。そのころには、オオハナウドはもう2m近くまで成長しているため、時期に注目すれば間違うことはありえません。

そもそも名前や姿がやや似ているとはいえ、オオハナウドはセリ科、ウドはウコギ科の植物です。

オオハナウドは茎の内部が中空ですが、ウドは中身がつまっています。さらに葉っぱの形も全然違うので慣れれば見分けに苦労することはありません。

オオハナウドと同時期の4月上旬に芽を出すのは、同じセリ科であるシャクやエゾニュウです。しかし、どちらも葉の形が違うため、区別するのは簡単です。

オオハナウドの葉は、4月中旬に開き始めると、下の写真のように、モミジをさらに複雑にしたような切れ込みの多い形になります。この時期の似たような葉にはチシマアザミがありますが、アザミはトゲがあるので区別できますし、どのみち両方とも食べられます。

この時期の若いオオハナウドを採って、洗って茎の皮を剥き、生でかじってみると、とても柔らかく、筋もなく食べやすく感じました。不思議な薬味のような味がしましたが、個人的にはセロリよりも好きな風味でした。

よくよく観察すると、5月中旬ごろまで、一株につき一本くらい、葉の開いていないor開いたばかりの若いみずみずしい茎がついているので、若い茎だけ選んで採取すれば、1ヶ月以上楽しめる優秀な山菜です。

もちろん、他の山菜と同じように、時期を過ぎても標高の高い場所に行けば、まだまだ若い茎葉を採取できます。オオハナウドの利点は、どこでも簡単に見つかることです。

前述のとおり、アイヌの人たちは、6月や7月でも茎を食べたようです。5月中旬ごろまでの若葉はそのまま食べることができますが、それ以降の茎を食べる場合は皮むきが必要でしょう。表面に赤いかすれた線が入っている茎は硬いことも覚えておくといいでしょう。

わたしの場合は、若芽の時期にそのまま食べるのが好きです。葉っぱごと茹でておひたしにしてみると、茎だけでなく若い葉っぱも問題なく食べることができました。やはり薬味のような強い香りと風味がありました。苦味のような後味がしばらく残りますが、不思議と爽やかな印象でした。

天ぷらにもしてみましたが、独特の香りが引き立つ逸品でした。本家ウドも天ぷらにすると美味ですが、勝るとも劣りません。特に若い葉っぱが、香り豊かで柔らかいもっちりした食感なので好きです。

どこでも生えていて、ウドよりも長い期間楽しめるので、見かけるたびに採っては色々な調理法で食べていますが、期待を裏切られたことがありません。

ネットでは、オオハナウドを食べてみた人は非常に少なく、食べた人の体験談も、苦いとか、香りが強すぎるといった感想ばかりです。確かに癖が強いので、好みが分かれる山菜だとは思います。

でも、改訂新版 北海道山菜図鑑には「食べなれるとおいしい山菜」と書いてありますし、アイヌの人たちも好んで食べていました。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、アシタバのようにビーフステーキに添えてハーブ焼きにすると美味しいとの記述もありました。

また、アイヌの人たちは乾燥保存してお茶にしたり、根を刻んで粥に入れたとの記述もあります。アイヌ植物誌にも、ハナウド料理のさまざまなバリエーションが記載されています。

慣れれば見分けやすく、河川敷や林道に大量に生えている植物なので、独特の風味を求めてぜひ挑戦してみてほしい、個性的な山菜です。

なお、オオハナウドについて検索すると、サジェストに毒という候補が出てドキッとしますが、海外の別のセリ科の植物が誤ってオオハナウドと翻訳されたことから来ているそうです。

また食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、本州以南に自生するハナウドの場合、汁液が肌について日光に当たると軽いやけどのような症状が出るそうです。

しかし北海道に分府するオオハナウドの項にはそのような記述はなく、さまざまな料理に活用できるとされているため、安心して食べられます。

オニシモツケ

ひと夏で巨大葉っぱになる草本シリーズの一つ。カエデを思わせる形の葉ですが、大きさが桁違いで、アキタブキの葉ほどもあり、余裕でお面にできるサイズです。

実はこの葉は、非常にわかりにくい羽状複葉で、葉の茎を見ると、とても小さな小葉があることがわかります。

茎を挟み込むハサミのような形の托葉とともに、オニシモツケを見分ける手がかりになります。

6月中旬以降に、真っ白な細かい花をたくさん咲かせ、夏場に霜を付けているかのように見えます。

だから「シモツケ」かと思ったらそうではなく、栃木県の古名下野国(しもつけのくに)に由来するそうです。

仲間のシモツケソウや、元々の由来になった樹木のシモツケも、花の形は似ていますが白い花とは限りません。

意外なことに、アイヌのごはん―自然の恵みによると、オニシモツケは頂上の若葉の部分を食用にしたり、根を煎じて薬用にしたりと利用していたそうです。

そのようなわけで、下の写真のように、4月下旬の芽出しの時には山菜として食べることができます。芽出しの時期には赤みを帯びていることもあります。独特な形と質感の葉ですし、すでに葉の茎には小さな小葉があるので、見分けるのは簡単です。

試しにお浸しにして食べてみたところ、食感がややサクサクして面白いかな、という程度でした。食べることはできるけれど、さほど特徴はなく、美味しくも不味くもないようです。

オニユリ/[クルマユリ]

食用のユリ根の原料としても知られるオニユリとクルマユリ。どちらも普通に道端などに自生していますし、花壇や庭にも植えられています。

互いに花がそっくりですが、クルマユリは名前のとおり葉が車輪のように輪生します。

オニユリも葉が180度ぐるりとつきますが、輪生はしておらず、互い違いにつく互生で、螺旋階段のようになります。葉の付け根にむかごができるのも特徴で、むかごのないオニユリはコオニユリと呼ばれ区別されます。

このむかごが食用になるということで一度茹でて食べてみましたが、かなり苦くて後味がよくありませんでした。大量にあるので残念ですが、二度と利用することはなさそうです。

オニユリ、コオニユリ、クルマユリはいずれも鱗茎をユリ根として食用にできますが、まだ試したことはありません。

ネット上の情報によると、オニユリよりコオニユリの鱗茎のほうが苦味が少ないそうです。クルマユリは、アイヌが鱗茎を利用していたとも伝わります。

カキドオシ

5~6月ごろ道ばたや土手、野原などに生えるシソ科有用ハーブのひとつ。

小さな紫色の花と、丸みを帯びた波型模様の可愛らしい葉っぱが目印。シソ科なので十字対生に葉っぱがつきます。

同じシソ科のオドリコソウと同様、食用になるだけでなく、解熱や咳など、さまざまな症状に効く薬草でもあります。

英名は「アイビー」と呼ばれていて、各地でハーブとして愛されているそうです。

カキドオシ(垣通し)の名前は、垣根の下をくぐりぬけて侵入することから名づけられたとありました。

その名のとおり、匍匐状のつるが地面を這っていて、引っ張ると芋づる式にたくさんついてきますが、根こそぎ採ってしまわないよう注意が必要です。

採取すると、ハーブらしい芳香があって、ミントなどに負けないくらい強いクールな香りがします。しかし残念なことに、乾燥させてお茶にすると香りはなくなり、あまり味も感じられません。

味や香りというより、他のハーブとブレンドしたり、効能を期待したりして利用するハーブといえそうです。

カタクリ

本来、鱗茎がカタクリ粉の原料になっていた花。今ではカタクリ粉はじゃがいもなどから作られていて、カタクリは希少な植物となっています。

春先に咲くスプリング・エフェメラルの一種で、エンレイソウやギョウジャニンニクと同様に、咲くまでに7年以上の歳月がかかります。そのため、野生のカタクリの鱗茎を採取するのは控えるべきでしょう。

明るい林などに群生し、他のスプリング・エフェメラルが開花するのと同じ4月中旬から末ごろ、美しい赤紫色の花を一斉に咲かせます。花の奥に刺繍のような繊細な模様があり、見ていてとても美しい花です。

つぼみ、花、葉も含めた全体を食用にできますが、少量を彩りとして味わうにとどめるのが無難です。お浸しや天ぷらなど、何にでも使えます。

[オニノヤガラ]

オニノヤガラは、ランの仲間の腐生植物(菌従属栄養植物)で、地面にぶっ刺さった巨大な矢のように見えるのが名前の由来です。

菌従属栄養植物ということで、光合成をせず、完全に菌から栄養をもらっているため、葉が1枚もありません。ナラタケ菌と共生関係を結んでいるそうです。

アイヌ植物誌によれば、オニノヤガラはアイヌ時代からよく知られていて、塊茎はその形から別名ヌスビトノアシとも呼ばれ、サツマイモやジャガイモのようで食べやすいそうです。

たとえば松浦武四郎の石狩日誌に、オニノヤガラ(ヌスビトノアシ)の塊茎を「アイヌのサツマイモ」として、焼いたり味噌汁にしたりして、ごちそうになったエピソードなどが伝わっています。(p176)

アイヌ語名ウニンテプは、「そろって姿を消すもの」の意味だと考えられていて、気まぐれな腐生植物のランらしく、一箇所にとどまっていないことを指すとのことです。ただ、数年経てば同じ塊茎からまた花が出ることもあるそうです。

わたしがオニノヤガラを見つけたのは2度で、まったく別々の場所でした。一本だけ突っ立っているので掘り返すのも忍びなく、まだ塊茎を味わうことはできていません。

その後、この記事を書いた翌年に、さらにもう一度見つけましたが、昨年見つけた場所の近くでした。そのあたりには枯死したミズナラが多く、ナラタケが大量発生しやすいこととも関係しているのかもしれません。

カラハナソウ

セイヨウカラハナソウはビールの原料のホップとしてよく知られています。在来種のカラハナソウは、苦味や香りづけに使うには弱いようですが、花の様子などはよく似ています。

ビールの原料になるのは、セイヨウカラハナソウの松かさのような形の毬花(雌花が変化したもの)ですが、在来種のカラハナソウも秋に同様の毬花をつけます。

北海道には昔からカラハナソウが自生していて、アイヌはカラハナソウを「コサ」と呼んで、例のごとく根を食用にしていたそうです。果実を発酵させて麹を作ったという記述もありました。

カラハナソウはツル植物で、葉っぱの縁に非常にはっきりとしたギザギザがあるので、比較的見分けやすいです。(時には3から5枚に裂けて手のひら状になる葉もあるそうです)

面白いことに、カラハナソウは芽出しの時期に食べることができます。

セイヨウカラハナソウの芽は、海外では英語でホップシュート(hop shoots)イタリア語ではブルスカンドリ(bruscandoli)、と呼ばれ、珍重されているとの情報がありました。

特に有名なのはビールの生産地ベルギーのホップの芽で、旬の食材としてレストランでも供されるとのことです。 日本のカラハナソウの芽も同様に食べることができ、ネット上にも利用している記述が散見されます。

わたしが住んでいる場所では、5月初頭に、自生地の地面からもやしのように生え出てきます。

左右対称につく葉が少し開きかけていれば、カラハナソウであると見分けやすくなります。

採取するときは、芽の先端の柔らかい部分(15cmくらい)だけを手で折り取って摘むといいそうです。自然にポキっと折れるところまでが柔らかく食べやすいということでしょう。

画像に写っているように、ツル植物であるカラハナソウは、からみつくために茎がザラザラしていますが、2分ほど長めに茹でれば気にならなくなると書かれていました。

わたしが採ったのはごく少量なので、胡麻和えにするとこんなに少なくなりました。

 

食感は普通にシャキシャキして美味しいです。これと似た山菜がないので、オンリーワンの魅力があります。

オムライスやポーチドエッグに入れたりすると合うらしいですが、野生のカラハナソウをそれだけの分量を採取するのは難しいかもしれません。

キクイモ

かつて栽培されていたものが、あちこちで野生化しているキクイモ。畑のふちに多いですが、河川敷や堤防にも生えています。

繁殖力が強い上、根茎が救荒食糧として優秀で、オリヴァー・サックスの「色のない島へ」では、子どもの頃、庭にシダ園があったのに、「第二次世界大戦が始まるとキクイモの栽培が奨励されたため、シダは根こそぎ抜かれてしまった」と回想されていました。(p237)

他の鮮やかな花がすべて枯れてしまった9月から10月ごろ、最後に花を咲かせるのが最大の特徴です。その時期に目立つ花はもうキクイモくらいしかないため、見つけるのは簡単です。

下の写真のアングルではわかりにくいですが、背の高さは2mを超えることもあり、近づいてみると大きさに驚きます。

大型のキク科の黄色い花という点で、北海道で大繁殖している外来種のルドベキア、オオハンゴンソウと似ているところもあります。

しかし、オオハンゴンソウがほとんど枯れた後に、キクイモが咲きますし、葉っぱの形が全然違います。

類似した植物に、キクイモモドキ(ヒメヒマワリ)がありますが、葉の付き方で区別できます。

キクイモは葉が下のほうは対生(向かい合ってつく)、上のほうは互生(互い違いにつく)なのに対し、キクイモモドキは上から下まで対生です。つまり、上のほうの葉が互生ならキクイモです。

いずれにしても、引き抜いてみて芋があればキクイモで、特に似た毒草もないので、安心して食べることができます。

引き抜く時に芋が地中に残りがちですが、来年以降そこからまた芽が出るので、気にせずに次々に引き抜いて、採れた分だけ持ち帰ればいいでしょう。

普通のイモと同じように、煮物にしたり、スープにしたり、味噌汁にしたり、ポテトチップスにしたりと、何にでも使えます。低カロリーなので、血糖値を下げる健康食にもなります。

キバナノアマナ

スプリング・エフェメラルのエゾエンゴサクやアズマイチゲと同時期、早春の4月下旬ごろから咲き始める黄色い小さなユリ、キバナノアマナ。

近年、都市近郊では数を減らしているそうですが、わたしが住んでいる場所では河川敷の堤防に、エゾエンゴサクなどと一緒に一面に咲き誇って壮観です。

名前のとおり、薄緑色の細い葉っぱを、甘みのある菜っ葉として利用することができます。

根茎も食用になりますが、自生地が減っているとのことなので、葉っぱを利用するにとどめるのが無難です。

独特のほんのりとした甘味があるので、お浸し、胡麻和え、天ぷらなど、いずれの調理方法でも、春の味わいが楽しめます。

近縁種に小型のヒメアマナ、葉が茎を抱くエゾヒメアマナがあるそうですが、意識して違いを観察したことはありません。この二種は自生地がまれとのことなので、おそらくそうそう見ないでしょう。

ギョウジャニンニク

数ある山菜の中でも特に愛されているギョウジャニンニク。

アイヌも「キト」(プクサ)と呼んで活用していて、各地にギョウジャニンニクの群生地を意味する「キトウシ」のような地名が残っています。

4月から5月にかけて、森や渓流沿い、河川敷など、多少湿り気のあるところに生えているのを見かけます。一箇所に固まって群生していることもしばしばですが、同じ場所で採りすぎないよう注意が必要です。

成長が極めて遅い野草のひとつで、北の健康野菜―行者ニンニクの薬効とその秘密によると、発芽して5-10年でやっと食べられるようになります。根を残して葉だけ採った場合、再生はしますが、3-4年かかるようです。(p20,31)

葉が1枚、2枚、3枚のものがありますが、1枚葉のものはこれから成長する株、3枚葉のものは今年花を咲かせて子孫を残す株なので、2枚葉のものだけを選んで採ります。しかし2枚葉も取り尽くさないよう注意します。

特有の辛味と薬効を楽しみたいなら、アリシンの含有量が多い芽出し直後のものがよいと言われます。しかし、わたしは贅沢すぎるように思えて、その段階では採ったことがありません。(p19)

一方、アイヌのごはん―自然の恵みによると、アイヌ民族は、6月から7月ごろに、かなり成長した後の、ミが入って食べごたえのある大きな葉を食べたそうです。(p120)

わたしも、うちわくらいの長さに成長した葉をよく採りますが、アイヌが食べたのはさらに大型と思われます。

大きな葉は、味が少しマイルドで、食べやすく感じます。刻んで醤油漬けにして、餃子やチャーハンの具にすると極上の美味しさです。 同時期に採取できる、エゾエンゴサク、エゾノリュウキンカ(ヤチブキ)、ニリンソウなどと一緒に天ぷらにして、春の到来を味わうのが毎年楽しみです。

採取するときは、猛毒のスズランとの見分けに注意します。

スズランは日当たりのよい草地に自生するので、ギョウジャニンニクが生えているような場所にあるのは見たことがありません。しかし、遠くから見た群生の様子は、ギョウジャニンニクと似ています。

近くで見た場合も、スズランやドイツスズランは、根元に赤みを帯びたハカマ(葉鞘)がついている点がギョウジャニンニクとよく似ています。

自生地で間違うことよりも、庭にギョウジャニンニクとスズラン(またはドイツスズラン)を同時に植えていて間違うことのほうが多いかもしれません。庭に植える花では、イヌサフランの芽もよく似ていて、しばしば誤食事故が起こっています。

一番わかりやすい確実な区別点は、ギョウジャニンニクは切るとニンニク臭がするのに対し、スズランは無臭だということです。採取するときに、切り口を匂ってみる癖をつければ間違いません。

匂いが薄くてわからない場合がたまにありますが、根元の赤いハカマをめくって匂ってみるとしっかりニンニク臭がするものです。

しかし、庭に植えている場合は、ギョウジャニンニクの香りが薄くなっていることもあり、間違える可能性もあるそうです。

ギョウジャニンニクを育てる場合は、スズランやイヌサフランを植えないようにするのがいいと思います。

また、芽生えのころは、遠目に見ると、やはり毒のあるバイケイソウとやや似ているかもしれません。葉がで鮮やかな緑色でしわしわになっている点がギョウジャニンニクの芽生えと少し似ています。

下の写真は、ギョウジャニンニクとバイケイソウが混生している場所を撮ってみたものです。右手前の赤いハカマ(葉鞘)がついているのがギョウジャニンニクで、左奥のハカマがないのがバイケイソウです。

とはいえ、写真では一見似ているようでも、実物のギョウジャニンニクを山菜採りしたことのある人なら、そうそう間違えるものではありません。そもそもバイケイソウは根元が太いので、ギョウジャニンニクのようには採れません。

ギョウジャニンニクを採る時は、一本ずつハカマをめくって匂いを嗅ぐ習慣をつけていれば、スズランにしてもバイケイソウしても、間違えることはないでしょう。

キンミズヒキ

夏に黄色の花穂をつけ、森を明るく彩るキンミズヒキ。

奇数羽状複葉でありながら、小葉と小葉の間に、もっと小さな葉がはさまってつくという非常に特殊な形の葉をしているので、若葉のころから見分けるのも簡単です。

近縁種にヒメキンミズヒキとチョウセンキンミズヒキがありますが、共に道内では南西部にのみ生えるそうです。ヒメキンミズヒキは小葉の数が少なく、ほぼ三出複葉に見えることで、チョウセンキンミズヒキは托葉の形が異なることで区別できるようです。

参考までに、キンミズヒキの托葉の写真。ハサミのように先端が尖っています。チョウセンキンミズヒキの托葉は見たことがありませんが、ここのサイトの写真と比較すると形が違うのがわかります。

5月初頭、イラクサ採りをする時期に、キンミズヒキも若葉も出ていて、食べることができるとのことだったので試してみました。アクがあるので、塩を入れた熱湯で茹でます。

しかし、食感がパサパサして、後味が嫌な苦さで、食用に向いているとは思えませんでした。味付けをしたところで美味しくなる気はしません。

キンミズヒキは、薬草としても知られていて、漢方の生薬では「龍牙草」「仙鶴草」などと呼ばれており、口内炎に効き、整腸作用もあるそうです。

近縁種のセイヨウキンミズヒキは、学名Agrimoniaからアグレモニーと呼ばれ、やはりハーブとして利用されています。

それでお湯を淹れてエキスを抽出してみると、黄色っぽいハーブティーになりました。 食べたときと同じく、あまり好きではない苦味はありますが、後味が残ってしまうことはありません。

漢方薬を美味しいと思える人なら普通に飲みたい味かもしれませんが、美味しいと不味いの紙一重的なところに位置する味でした。

クサソテツ(通称コゴミ)

食用とされる三大シダの芽の中でも、わたしが一番好きなのがクサソテツ(コゴミ)です。

ゼンマイやワラビと比べ、アクが少ないので下処理の必要がほぼなく、どんな料理にも合い、乾燥・冷凍保存することもできる万能食材です。

唯一の欠点は、収穫適期が非常に短いことです。わたしが住んでいる地域では、5月のゴールデンウィークごろの一週間が勝負です。

クサソテツは、他のシダの仲間と同じく、くるくると巻いた芽(フィドルヘッド)の形状で出てきます。

シダの種類はかなり多種多様なので、シダの見分けに慣れていないと、どれがコゴミの芽なのか、わかりにくく感じるかもしれません。しかし2つの特徴を覚えておけば簡単に見分けられます。

第一に、次の写真のように茎が深緑色で、すべすべしているのが特徴です。かつお節のような鱗片をマフラーのようにまとっていますが、茎そのものは毛深くありません。

茎の色が緑っぽくても少し色味が違っていたり、茎が毛深かったりすれば違うシダです。下の写真はジュウモンジシダで、食用にされることもありますが、コゴミより食感は劣るようです。

第二に、クサソテツの芽は、茎の内側に凹みがあります。下の写真では、茎の断面がU字型になっていて、はっきりくぼんでいるのがわかります。葉っぱが成長した後もこの凹みは残るのでクサソテツの判別に役立ちます。

注意点として、この茎のくぼみの中に、1cmくらいの細長いコメツキムシ(クロアシコメツキモドキやルイスコメツキモドキ)が隠れていることがあります。(農業試験場による参考写真)

採取する際には、渦巻き部分を少しひねるようにして、内側のくぼみの隅まで確認するのをお勧めします。一本ごとにチェックして、虫がいたら息で吹き飛ばせば問題ありません。採取した後に水につけて虫出しするのも忘れずに。

一方、次の写真のように、茎の色合いがクサソテツに似ていても、茎の内側が凹んでいない芽は違うシダです。おそらくオオメシダの芽かと思います。

クサソテツは、少し湿り気のある林内や川沿いに群生します。林道や山道を走っていると、しばしば大群落も見かけるので、覚えておけば、たくさん採ることができます。

秋に胞子葉という独特の形状の葉を伸ばして繁殖し、翌春まで残っているので、クサソテツの群生地の目印になります。

この胞子葉が鳥のガンの足に似ているため、「ガンソク」という異名があります。

アイヌのごはん―自然の恵みによると、アイヌ民族はクサソテツの胞子葉の中から出る黒い小さな胞子「スクスク」と呼び、ふりかけのように米に加えて炊いて食べていたそうです。特に味はないらしく、見た目を意識したトッピングのようです。(p31,125)

このような形状の胞子葉を立てるシダは、北海道にはガンソク(クサソテツ)とイヌガンソクの二種類しかありません。

下の写真がイヌガンソクですが、胞子葉が少し小さめで、芽はクサソテツより緑色がずっと薄く、あまり似ていないので、山菜採りの時期に間違うことはないでしょう。

クサソテツの芽は円陣を組むように生えてきます。採取するときは、すべて採るのではなく、間引くように数本を採取するようにします。ハサミではなく、手で折り取るようにすると、柔らかい部分だけ自然と採れます。

背の高さは20cmくらいに伸びたものが理想ですが、ひとたび芽を出すと驚くようなスピードで成長し、すぐに下の写真のように成長しすぎてしまいます。

この場合でも、先端のほうを手で折り取れば、まだギリギリ食べることができるかもしれません。あるいは、同じ株に生えている芽でも、成長の早さにばらつきがあるので、よく調べてみれば、比較的短い芽が見つかるはずです。

採取に適した時期は、芽が見えてから数日後で、一週間もすれば遅すぎます。自生地によって成長の度合いは違うので、少し成長が遅れる採取スポットを見つけておくと役立ちます。

必ずしも日当たりの悪い森の中のほうが成長が遅いわけでもないので、色々な場所で群生地を見つけて、場所ごとの特徴をよく観察するのが大切です。もう旬を過ぎてしまっいても、時期を覚えておけば来年採取できます。

群生地はたくさんあるので、時期が合えば大量に採取できます。天ぷらやお浸し、油炒めなどにすれば、他の山菜にないカリコリとした食感が楽しめます。

同じシダでも毒性の強いワラビと比較すると、アクが少なく安全な山菜ですが、カナダ政府によると、「生や調理不足のまま摂食した後に、下痢や吐き気、嘔吐、急激な腹痛、頭痛などを訴える症例が毎年報告される」そうです。

それを防ぐために「①冷水で水を数回換えて洗う。②沸騰した湯で15分間ゆでる。または、柔らかくなるまで10分から12分間程度蒸す」という下処理が推奨されていて、十分に調理した場合は、健康被害の報告はないそうです。

また、茹でてから冷凍したり、醤油漬けにしたりすることで、保存食として活用できます。

干す場合も、まず茹でてから、巻いている場所をぎゅっと押してしぼることで、乾燥する速度が早くなるように思います。

保存しておけば、同じく大量に採れて癖のないイラクサと同様、冬の青野菜がない時期の食材として重宝します。

なお、シダ類でおもに食用とされるのは、ワラビ、ゼンマイ、クサソテツ(コゴミ)の3種ですが、他のシダ類も、別に毒があるというわけではないようです。むしろ、毒性だけみれば、ワラビが一番強いかもしれません。

他のシダ類も、有名ではないだけで、しばしば食用にされています。たとえば沖縄の伝統食材のオオタニワタリは有名ですし、別項に書いているハナワラビも葉を食べることができ、ハナヤスリも葉をお茶にするそうです。

さらに、前述のジュウモンジシダ(俗称カスコゴミ)のほか、キヨタキシダ(俗称イッポンコゴミ、赤コゴミ)、ミヤマメシダ(俗称ダケワラビ、ゴマコゴミ)など、各地方でマイナーな山菜として食べられているシダの芽は色々あるそうです。

シダ植物の見分けに慣れてみたら、それらマイナーなシダの山菜に挑戦するのもいいかもしれません。

クサフジ

5月半ばに葉を出し、6月から7月に花を咲かせるマメ科のツル植物。町の草地、林のそば、河川敷などどこにでも生え、紫色の花が咲くと長く目立ちます。

若葉や花を食べることができるとのことで試してみましたが、葉っぱは若くても筋っぽさがありました。

花のほうは、特に味はなく、見た目がきれいなので、さっと茹でて料理の彩りに添えるのに向いています。かなり長い時期にわたって採取できるのも便利です。

クマイザサ

北海道にはタケノコ(モウソウチク)はありませんが、代わりに美味なササノコがあります。

道内でタケノコと呼ばれるのは、チシマザサ(ネマガリダケ)という、やや高い山に生える種類のササの芽です。

道内のありとあらゆる場所に生えているササは、クマイザサという種類で、残念ながらチシマザサの芽ほど味わい深くありません。

クマイザサの芽(笹竹)なら、どこにでも無限に出るので、食べ放題なのですが、試してみたら細くて筋っぽく、あまり美味しくありませんでした。とはいえ、食用にできないほど不味いわけでもありません。

 

一方、このササノコは若葉が丸まったものなので、輪切りにして乾燥させれば、クマイザサの茶葉として利用できます。ササノコをお茶用に採取する時は、根元で切るより、先端を持って引っ張ればすぽんと柔らかい部分が抜けます。

どこにでも生えているものなので、5月末から6月にかけて、森や河川敷を歩くたびに片手間に新芽を引き抜いて歩けば、かなりの量がたまります。

乾燥させてお茶にすると、かすかに黄色っぽい色が出て、緑茶のような味わいがあり、なかなか美味しいです。

ササはめったに花を咲かせないことで有名ですが、クマイザサはなにせ大量にあるので、小規模であれば毎年どこかで花を咲かせている群生と出会います。

イネのような穂になる実は食べることができ、かつては救荒食物としても利用されたそうです。臼でついて粉にし、でんぷん状に丸めて団子を作り、焼いたり煮たりして食べたとされています。

古くから「タケやササに花が咲くのは凶作の兆し」との言い伝えがあり、実際に作物が少ない年にササが一斉に実をつけることが多く、北海道の入植者たちが飢えをしのぐ助けになったと言われています。

2022年は開花しているクマイザサが多かったので、7月に実になっている穂を持ち帰ってきました。幸い、この年の畑は凶作ではなく、言い伝えは迷信にすぎないことが確かめられました。

穂の中には、茶色くシワの寄った穀粒が入っていました。そのまま食べてみると、柔らかいものの、とても粉っぽく、美味しくも不味くもありませんでした。煮るなり粉に挽くなりしたほうが良さそうです。

ササの実は麦角菌(LSDの原料)が寄生することがあり、戦時中にはササの実でパンを作って、妊婦が早産・流産したといった中毒も起こったそうです。よほどの食料不足でもない限り、食べないほうが良さそうです。

クルマバソウ

晩秋から初夏にかけて、林内に群生して、小さな美しい花を楽しませてくれるクルマバソウ。

桜と同じクマリンが含まれているので、乾燥させると桜餅の香りがします。

ドイツではヴァルトマイスター、アメリカではウッドラフと呼ばれ親しまれているそうです。 日本でも、函館ではクルマバソウの香りをプラスしたアイスクリームが売られているというニュースもありました。

国内情報ではシロップの作り方がわかりませんでしたが、「wie macht man waldmeister」というキーワードでGoogle検索すれば、ヴァルトマイスターの作り方という意味になり、本場ドイツのレシピを探せました。

注意点として、クマリンには抗酸化作用や抗菌作用がある一方、肝毒性、腎毒性、血液が固まりにくくなる作用があります。とはいえ、クマリンはクルマバソウ以外の植物にも広く含まれていて、誰でも日常的に摂取している物質なので、大量に服用しなければ大丈夫とされています。

クルマバソウを摘むときは、咲く直前のつぼみくらいのがいいとされます。しかし、花が咲いてしても咲き終わっていても、香りはあります。

採取する量は、手でわしづかみにした時、二束くらいあるとよいようです。採ってみるとこれがかなりの量ですがクルマバソウが自生している場所なら、問題なく生えているでしょう。

そのままだと香りがしないので、洗って虫を落としてから、しばらく乾燥させます。1日か2日くらいおいておけば、ほんのりと桜餅っぽい香りが立ち込めてきます。

それから、1リットルの水を沸騰させ、1kgくらい砂糖を溶かします。わたしは甘さ控えめできび砂糖を700gにしました。

そこにクルマバソウ二束を投入し、一晩くらい放置してから濾します。

クルマバソウは青臭さがあるので、それを取るためにレモン汁やクエン酸を少々入れます。入れすぎるとせっかくのクルマバソウの香りが負けるので少しだけです。

出来上がったシロップを炭酸で割って飲んでみると、ちょっと青臭さがありますが、飲み終わると、ふわっと桜餅の後味が残るのが美味しいです。

このシロップはきび砂糖のせいで色がついていますが、クルマバソウ自体は色が出ません。

本家ヴァルトマイスターのように緑色にするには茎葉をミキサーで刻んで入れる必要がありますが、青臭さが強くなりそうでためらいます。

トウヒ(エゾマツ)のシロップとともに、非常に爽やかな初夏の味で、もはやなくてはならない季節の飲み物です。

なお、クルマバソウには、非常によく似たクルマムグラやオククルマムグラという植物があります。

特に毒性はないようですが、香りの抽出の点では、クルマバソウだけ採ってきたほうがよいようです。

wikiによると、オククルマムグラにはクマリンが含まれないとありました。実際にオククルマムグラらしい草を摘んで乾燥させてみましたが、青臭い匂いしかしませんでした。

クルマバソウは輪状についている葉が6~10枚と多いのに対し

クルマムグラやオククルマムグラは、ほぼ6枚で固定されているので、葉の枚数を見れば区別できます。クルマムグラの葉の枚数が少なめだからか、太ましく丸みを帯びて見えます。

また花が咲く時期が少しずれているようで、5月から6月にクルマバソウが咲くのに対し、クルマムグラは入れ替わるように6月から7月に咲いている印象があります。

そして花の形状にも違いがあります。上から見ると白い小さな4弁花でまったく同じに見えます。一枚目がクルマバソウ、二枚目がクルマムグラです。

しかし横から見ると、クルマバソウは漏斗状の立体的な花ですが、クルマムグラは平べったく見えます。これも一枚目がクルマバソウ、二枚目がクルマムグラですが違いは明らかです。

ゲンノショウコ

非常に薬効がはっきりしているため、「現の証拠」と呼ばれるようになった野草。胃腸の不調によく効くとされます。

葉っぱの形は3つに咲けた逆T字型ですが、切れ込みが大きい場合もあり、トリカブトに似ていることがあります。また、やはり有毒植物のキンポウゲ科のウマノアシガタとも葉の形が似ています。

しかし、ゲンノショウコは、7月から8月に紫の線が入った白い花をつけるので、花や実を覚えて、それとつながっている葉だけを採れば間違いません。

薬草ではあるものの、普通にお茶として飲むことができます。 乾燥させて茶葉にし、お湯を淹れて、しっかり味が出るまで放置してから飲むと、色がかなり黄色っぽくなり、薬草茶らしい味が出ておいしいです。

もともと人家の近くに生える草で、すぐ採ってきて使えることで有名なので、見かけるたびに摘んで常備しておくと便利です。

花が終わると、棒状の実がつき、バナナのようにめくれて弾けます。その様子からミコシグサという異名もあります。秋になると真っ赤に紅葉する様子も見られます。

[コウライテンナンショウ(マムシグサ)]

いまだ食べたことがなく、今後も食べないであろう植物ですが、見た目は面白くて好きなので、参考までに記載しておきます。

いかにも毒々しい茎や実、奇怪な花、そしてマムシグサという異名。どう考えても危険な有毒植物で実際そうなのですが、なぜかアイヌが食用にしていました。

同じくサトイモ科のコンニャクなどと同様に、シュウ酸カルシウムの針状結晶を根や実に含むため、そのまま食べようものなら激しい痛みに襲われます。

茎、葉、花、実、すべてがユニークなので、自生地では見つけるのは簡単です。わたしが普段歩いている場所にも相当数生えていて、春の芽出しから秋の実りまで、奇妙な姿を楽しませてくれます。

春の芽出しは5月上旬。下の写真のように、ササの芽のような鋭い棒状で地面から突き出してきます。緑色のものも、赤いものもありますが、いずれもマムシグサ特有のマムシの皮膚のような模様ですぐ判別できます。

しばらくすると、あたかもヘビが脱皮するかのように、茎の中から葉がぬるりと現れます。

5月末にはもう葉を展開させて、異称「ヘビのたいまつ」の由来となっている奇妙な形の花を咲かせます。根が痩せていると葉だけだったり、小さな雄花をつけたりします。根が十分肥えていれば大きい雌花をつけます。

 

雌花と雄花は花の大きさのほか、花の下のほうに出口があるかどうかで区別できます。雄花だと隙間が空いていて虫が脱出できますが、雌花は脱出口がないので、受粉させた虫は出られず死んでしまいます。

葉のつけ方も非常に独特で、いわゆる鳥足状複葉で、まるで中心の茎を取り巻く環のように広がる葉をつけます。フラダンサーの腰ミノみたいとも言えるかも。

あまりいい写真がなかったので、ネット上の挿絵などのほうがわかりやすいかもしれません。

夏にはトウモロコシのような実をぎっしりつけ、一見美味しそうに見えますが…、

秋には毒々しいほど真っ赤に熟してよく目立ちます。シュウ酸カルシウムの針状結晶を実にも含むので、間違って食べると一週間は口が腫れて痛むそうです。

こんなに危険な植物ですが、アイヌは赤い実を腹痛の薬として利用していました。口に触れると針状結晶で痛むので噛まずに飲み込んでいたそうです。

また、やはり針状結晶を含む根っこを食用にしていたそうです。アイヌのごはん―自然の恵みによると、実が色づく頃になると、毒成分が塊茎の中心部に集まって黄変します。

蒸し焼きにすると、中心の黄色い部分は毒性が強く食べられないものの、周辺部は「くりとさつまいもを足したような味」のようで食べられるとされていました。挑戦する度胸はありません。(p91)

ちなみに名称の「テンナンショウ」は、この白い塊茎を天南星(カノープス)に例えたそうですが、緯度の関係から北海道では見えません。

ゴゼンタチバナ/[エゾゴゼンタチバナ]

山道沿いなどにたまに咲いているミズキ科の花。地面すれすれに咲く草花ですが、樹木のミズキやヤマボウシによく似た花を咲かせます。しわのある葉がよく目立ちます。

秋に赤い実をつけ、食べることもできます。しかし、特に美味しくもまずくもなく、大きな種が入っています。甘くも酸っぱくもなく、ほのかに甘みがあるかな、という程度でした。

一方、高山地帯には、近縁種のエゾゴゼンタチバナという花が咲きます。葉っぱが十字対生になり、花の中央が黒い、気品のある姿です。

わたしの知り合いのおばあちゃんが子どものころ樺太に住んでいて、エゾゴゼンタチバナの実をよくおやつ代わりに食べたと話してくれました。「ヤマジンタン」と呼ばれていたそうです。熟すと甘くて美味しかったといいます。

残念ながら、エゾゴゼンタチバナは、日本では北海道の一部にしか自生しておらず、準絶滅危惧種に指定されているため、実を味見することはかないません。

自宅で育てている人や、海外の自生地近くに住んでいる人は、ヤマジンタンを味わってみてください。

コンロンソウ/オオバタネツケバナ

別項の「エゾワサビ/オランダガラシ(クレソン)」と同じ、アブラナ科の植物。

〇〇カラシ、〇〇ワサビなどの名前がつく植物の近縁種で、特有の辛味があります。 いずれもアブラナ科なのでよく似た花びら4枚の白い小さな花をたくさん咲かせます。

オオバタネツケバナとコンロンソウも葉の形が全然違っていて、見分ける手がかりになります。 オオバタネツケバナは、わたしの住んでいる場所だと5月半ばに咲きます。

葉っぱは羽状複葉で、先端の小葉が大きく、その下に小さな小葉が羽のようにつきます。

やはりアブラナ科である野菜のルッコラを思わせる形状です。(ルッコラの葉の形にはバリエーションがありますが)

コンロンソウは、オオバタネツケバナより少し遅れて、5月下旬に咲いていました。

葉っぱの形は、5枚か7枚セットの羽状複葉で、とても整った形をしています。森の中を歩いていると早春からよく目立つので、すぐコンロンソウだとわかります。

これらの植物は、若芽、若葉、つぼみなどを食用にできます。

改訂新版 北海道山菜図鑑によると「タネツケバナの仲間は、それぞれ特有の辛味をもち、おいしく食べられるものが多い」とありました。

また、食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、オオバタネツケバナは「すこしばかりの辛みと苦み、青っぽい香りがすばらしい」、コンロンソウは「おひたし、ワサビ・ドレッシング、バター炒めなとがいい」などと詳しく解説されています。

わたしは、花が咲いた5月末ごろに何度かコンロンソウを食べました。本当はもっと早い時期がよいでしょうが、花が咲いた後でも先端部分の若い葉くらいなら食べることができます。

そのまま食べてもただ苦いだけですが、ケチャップやソースと合わせると味が引き立つように感じられました。

コンロンソウをはじめ、タネツケバナの仲間、エゾワサビ、オランダガラシ(クレソン)などは、いずれも単独で食べる山菜ではなく、何かの料理に添えて味にアクセントを加えるような使い方が向いているのだと思います。

あまり目立たない草なので、採取する機会を逸してしまうのですが、旬の時期に積極的に採取できれば、かなり美味しい野草なのかもしれません。

[サイハイラン]

道北の森にはさまざまなランが自生しています。キンセイランやサルメンエビネのような絶滅危惧種も見たことがありますが、希少種のランはさまよえる旅人のようで、どこにいるかほとんど手がかりがありません。

しかし、もっと身近で数の多いランの仲間もあります。わたしがよくいく森では、ネジバナ、エゾスズラン、クモキリソウ、そしてこのサイハイランを、かなりたくさん見かけます。

6月上旬ごろから艶やかなピンク色の花を咲かせ、よく目立ちます。そして8月末から9月には、黄緑色の紡錘形の実をつけます。

花が終わると葉が枯れますが、秋に新芽が出て大きくなります。春の雪解けのころには立派な葉っぱが地面から一本ずつ生えているのがよく目立ちます。

一見ギョウジャニンニクの葉に似ていますが、ギョウジャニンニクはまだ芽出しの時期なので混同することはありません。

この根元を掘り返すと、サトイモのような根が見つかります。これは偽球茎で、アイヌの人たちが食用にしていました。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、アイヌ語のニマクコトウクは「歯につく」の意味で、噛むとねばねばして甘みを増す根の食感に由来しているそうです。

数が多いといっても、無数に生えているわけではない貴重なランの仲間なので、まだ食べてみたことはありません。

サンカヨウ

雨に濡れると透明になる花として名高いサンカヨウ。6月初頭ごろに、フキのような葉っぱに白い花が咲くため見分けやすく、一箇所に群生することもあります。

森の奥深くに咲くので、雨が降ったからといって、おいそれと見に行けるわけではありません。たまたま小雨が降っている時に、うっすらと透明になっているのは見ることができましたが、ガラス細工のような状態はまだ見たことがありません。

あまり知られていないのは、花が咲き終わった後の藍色の実が食用になること。そのまま生で食べることができます。

しかも味が甘くてかなり美味なので、山歩きをしながら、サンカヨウの群生を見つけたら、ひとつ実を頬張ってみると、いい思い出になります。

わたしが最初に食べたのは7月で、とても甘かったのですが、翌年8月に食べた時は酸っぱかったので、時期によって印象が変わるかもしれません。

シャク

別名ヤマニンジン。早春、まだ畑の野菜がないころに萌え出てきて、ニンジンの葉っぱのような葉を青々と茂らせます。

あまり見向きもされませんが、河川敷や道端などに群生し、とても利用しやすい山菜です。他の野菜や山菜が不足する時期に自然のものを味わうにはぴったりです。

問題は、似ている毒草が存在すること。

1つ目はドクニンジンで、ソクラテスの処刑に用いられたとされるほど猛毒です。もともと日本にない外来種で、わたしは見かけたことがありませんが、近年、野生化して広がっているらしいので注意が必要です。

茎の下のほうに、「ソクラテスの血」と呼ばれる赤紫の斑点があることや、切ったときに悪臭がすることから区別できるそうです。ネットで写真を確認しておくことを推奨します。

2つ目はフクジュソウ。早春に花が咲いている時は似ていませんが、花が終わった後の葉は少し似ているかもしれません。下の写真は花が終わって実になったものです。

フクジュソウは日本には4種類ありますが、北海道に自生するフクジュソウとキタミフクジュソウは、いずれも茎が中実(中心に空洞がない)で無臭(嫌な匂いがあるという人もいる)です。

一方、シャクの茎は中空(中が空洞)で、揉むとセリ科らしい爽やかな香りがあります。

3つ目はムラサキケマンですが、エゾエンゴサクの項に書いたように見たことがありません。かなり葉が似ているという経験談があったので、気をつけたほうがよさそうです。

ただ、シャクは葉っぱの形以外にも見分けるポイントがあるので、それを押さえておけば大丈夫だと思います。

とても重要な特徴は、次の写真のような白い毛です。シャクの葉の付け根をよく観察すると、外側の茎がさやのように内側の茎を抱みこんでいて、白い膜と毛に覆われています。

また、ヤマニンジンと言われるだけあって、根元の土を少しよけてみると、根っこがニンジンのように太いです。こちらのサイトに掘った後の写真もありました。 この根は食用にもなるそうです。

シャクは、6月初頭ごろ、似ているセリ科の大型植物の中で真っ先に花を咲かせます。

小さな花の集合ですが、花びらの大きさが少しいびつで、外周部の花びらが大きくなります。迷う場合は、花の時期にしっかり特徴を確認しておいて、来年採ればいいと思います。

シャクの葉は、茹でて食べるとニンジンの葉と同じように、野菜として利用できます。お浸しにしても美味しいですし、酢醤油もお気に入りです。天ぷらは香りが引き立つものの、葉が歯に挟まって食べにくかったです。

茹でてから干せば乾燥保存もできます。どこにでも生えていて大量に採れる山菜なので、葉物野菜がなくなる冬の保存食にも適しています。

ゼンマイ/ヤマドリゼンマイ

ワラビと並んで有名な食用シダであるゼンマイは、北海道では日本海側に多く、わたしの住んでいる場所は分布範囲の境界域です。

そのため、自生していないと思っている人もいるほど数が少なく、わたしも新芽の時期のゼンマイは見つけたことがありません。

しかし、葉が開いてしまうと、シダ植物にしては珍しい、普通の植物の葉っぱのような形状なので見つけやすくなります。森を歩いていると、ところどころにぽつんと一株ずつ点在しているのを見かけます。

名前が似ていて食用にもされるヤマドリゼンマイは、道内全域に広く自生しているようです。

わたしの住んでいる地域では、山登りの道中の水辺や湿原に、ときどき生えています。日当たりのよい川沿いを好むらしく、わたしがよく行くような鬱蒼とした森では見かけません。

芽の段階ではゼンマイによく似ていて、オレンジ色の綿毛に覆われています。この綿毛は手で触ると取れます。他の多くのシダのような毛や鱗片はなく、綿毛を剥がすとつるつるしています。

ゼンマイと同様、栄養葉(普通の葉)になる芽と胞子葉(胞子をつける葉)になる芽が混じって生えています。(一般には胞子葉=男ゼンマイ、栄養葉=女ゼンマイと呼ばれる)

胞子葉になる芽は、渦巻部分の中心が分厚く黒っぽいので、なんとなく見分けがつきます。子孫を残してもらうためにも、できるだけ胞子葉は残して、栄養葉を採るようにします。

下の写真は左が栄養葉の芽、右が間違って採ってしまった胞子葉の芽。基本的に胞子葉のほうが先に伸びるので、短い芽を採るようにすれば、このような間違いは避けられます。

採取した芽は、綿毛を手で取り除いてつるつるにします。巻いている葉の部分にからまった綿が取りにくいので、もしたくさん採れた場合は葉の部分を捨てて、茎だけ食べる人もいるそうです。

重曹を少量入れて茹でるとたくさんアクが出て、茹で汁が赤く染まります。

しっかりアク抜きしたら、乾燥させて干しゼンマイにします。時々手で揉んで繊維を柔らかくすると良いそうです。詳しい方法は普通のゼンマイと同じなので割愛します。

ヤマドリゼンマイは、芽の段階ではゼンマイに似ていますが、葉が開くと似てもにつきません。大型シダらしい雄大な葉を広げ、金色の胞子葉がよく目立ち、秋には美しく黄葉します。

ダイコンソウの仲間

春の終わりから夏にかけて、小さな黄色い5弁の花を咲かせ始めるダイコンソウの仲間。小さな花ですが、背丈が高いので意外と目立ちます。

花が終わった後には、引っ付き虫のボールになるため、これもまたよく見かけます。これといって美しい花ではないものの、ダイコンソウという庶民的な名とともに、素朴で印象に残る植物です。

ダイコンソウはバラ科なので、ダイコンとは何の関係もありません。しかし、地面すれすれに生える根生葉の形がダイコンの葉っぱに似ていることに由来しています。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによれば、ダイコンに似た羽状複葉の葉を、秋から翌年晩春にかけて採取すれば、食べることもできます。ダイコンソウのすべての種を同様に食べられるそうです。

しかし、北海道のような豪雪地帯では、根生葉も分厚い雪の下で越冬しているので、その時期に目にする機会はほぼないでしょう。

山菜図鑑には載っていませんでしたが、アイヌがダイコンソウを風呂に入れて神経痛の薬にしていたという記述を見かけました。また、「水楊梅」という名の生薬として知られているそうで、腎臓病や膀胱炎に効くそうです。

海外ではセイヨウダイコンソウが「ゲウム」というハーブで知られています。画像検索してみたら、ダイコンソウという名前から連想される田舎っぽいイメージとは正反対の、垢抜けたオシャレな花でした。

日本には、ダイコンソウ、オオダイコンソウ、カラフトダイコンソウ、ミヤマダイコンソウなど複数種が自生しています。背丈、葉の形、花が咲く時期などの違いで区別できますが、利用するぶんには、ダイコンソウの仲間とわかればそれで良さそうです。

春と秋の境目の5月末ごろから、一番早く咲くのはカラフトダイコンソウです。葉は上のほうは3つに裂けていますが、下のほうはあまり裂けていません。さらにもっと下の根生葉はダイコンの葉に似た羽状複葉になっています。

わたしの住んでいる地域だと、ダイコンソウはさほど自然度の高くない町と森の境界のような場所にも生えています。多少在来種が生えるところであれば、道路脇でも普通に見られます。

ダイコンソウは茎全体に粗い毛があり、手袋をしていても、採取するときにチクチクしました。痛みのあるトゲではないですが、たわしのように密生していてます。

同じ時期に咲く黄色い花というと、キツネノボタンやウマノアシガタなどがあります。これらはキンポウゲ科で有毒なので注意が必要です。

どちらも5弁で黄色い小さな花、実が引っ付き虫状になる、葉の形も多少似ているなど、類似点が多いです。

しかし、ダイコンソウの花は花びらが円形ですし、茎が直立して全体に粗い毛がある点が全然違うので、見慣れれば間違うようことはありません。

全草を採ってきて乾燥させ、お茶にして飲んでみましたが、特にこれといって味はありませんでした。多少野菜っぽい香りがあるかな?という程度で、あまり印象に残っていません。

タチギボウシ/オオバギボウシ(通称ウルイ)

おしゃれな立体感のある葉脈の葉で、背の高い花茎に擬宝珠に似たつぼみをつけ、夏に涼しげな紫色のラッパのような花をつけるギボウシの仲間。

東北では人気の高い山菜で「ウルイ」と呼ばれているほか、干したものは「ヤマカンピョウ」としても親しまれているそうです。

おもに湿原に生える植物なので、野生のものより、庭に植えられた園芸植物として見かける機会のほうが多いです。園芸種でも同じように食べることができ、ネットで調べると増えすぎたから食べてみたという人もいました。

わたしも当初は、採取できない亜高山の湿原などでしか見たことがありませんでした。しかし、近所の川沿いに小さな群生地を発見したことで、採取して味わってみることができました。

一般に山菜は新芽を食べるものが多いですが、ギボウシの場合、改訂新版 北海道山菜図鑑によると、「ふつうは葉柄だけを食用にする」とありました。食べる時は、フキと同じように葉(葉身)の部分は落とします。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによれば、春先に芽吹いたばかりの、葉が巻いている若芽なら、葉(葉身)ごと食べられるようですが、それでも苦みが強いことが多いとのことでした。

春先の新芽より、そこそこ葉が大きくなって伸びた6月に採取して、葉柄だけを食べるほうが良いようです。

ギボウシの仲間は大別するとオオバギボウシとタチギボウシがありますが、オオバギボウシの葉は基部がハート型に凹みます。葉柄が50~70cmまで伸びるので食べられる部分が多いです。

一方、タチギボウシはハート型になりません。わたしが河川敷で採る野生ギボウシは、下の写真のとおり基部が凹んでいないのでタチギボウシです。葉柄は長くても30cmくらいなので、食べられる部分は少なめです。

ギボウシの葉柄は、ひとつまみ塩を入れた熱湯でさっと茹でると、特有のぬめりが出て美味しくなります。試しにわさびマヨネーズ和えにしてみたところ、食感はほのかなぬめりがあり、キャベツのようにシャキシャキしていました。

単独で食べるとキャベツっぽさが強いので、何かの料理に混ぜるほうがいいでしょぅ。炒めご飯に使ってみると、味も食感もより引き立ちました。

オバギボウシの場合、茹でてから干したものがヤマカンピョウと呼ばれているそうです。タチギボウシでも似たような保存食は作れるかもしれません。

ほかに花やつぼみも食べることができ、酢味噌和え、三杯酢、サラダの彩りなどによいとのことでした。

注意点として、毒草であるバイケイソウと間違える危険があると言われています。

バイケイソウはわたしの住んでいる地域では、ギボウシよりはるかに頻繁に見かけます。山や森の近くなら、どこにでも生えているような植物のひとつです。

次の写真はやや葉が伸びてきたバイケイソウですが、立体感のある葉脈を見て、ギボウシと間違える人がいるそうです。

しかし、最大の相違点として、バイケイソウの葉には長い葉柄がありません。次の写真はもっと成長したバイケイソウですが、一本の直立する茎から、葉身が直接生えていて、葉柄がまったくないことがわかります。

つまり、ギボウシは葉身ではなく葉柄の部分を食べるものだと知っていれば、バイケイソウと間違えようがないと思います。そもそも食べる場所がないからです。

ほかにも、上に載せた写真を比較すると、葉脈にも違いがあることが見て取れます。バイケイソウの側脈はすべて葉の基部に合流していますが、ギボウシの側脈は基部より上で葉の中央脈から枝分かれしています。

いずれにしても、若芽の時点でわざわざ食べようと思わずに、6月に葉柄を食べるようにしていれば間違えないでしょう。

チシマアザミ

トゲトゲの葉っぱのアザミは、意外にも、昔から各地で食用にされてきた歴史があります。

庭に雑草として生え、分厚い手袋なしでは抜けないトゲトゲのアザミは、外来種のセイヨウオニアザミ。

一方、北海道に自生するのは、もっとマイルドな柔らかいトゲの、チシマアザミ、エゾノキツネアザミ、エゾノサワアザミなど。このうち最も多いのはチシマアザミです。

改訂新版 北海道山菜図鑑にによると、道内には10種類以上アザミがありますが、どれも若芽を食べることができるそうです。

まだ他の山菜や野菜が少ない4月下旬、真っ先に芽を出すアザミは昔から貴重な食糧だったのでしょう。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、チシマアザミは雪解け水をいっぱい吸収して一気に伸びるので、柔らかくて質がいいとのこと。若芽はアイヌ民族に人気のある食材だったそうです。

下の2枚の写真のように、葉の形にはかなりの変異があり、深くギザギザに切れ込むものから、ほとんど切れ込みがないものまであります。詳しくはこちらのサイトで解説されています。

いずれにしても、葉のふちや付け根あたりには目立つトゲが生えています。葉の形よりもトゲを確認して、アザミかどうか見分けるといいでしょう。

夏には2mもの高さになる大型植物ですが、食べることができるのは下の写真のような芽出し直後から、大きくとも背丈が30cm弱くらいまでの期間です。柔らかいトゲとはいえ、刺さると痛いので、手袋をして根元からハサミで切ります。

天ぷらにするか、5分くらい長めに茹でるかすれば、トゲは魚の小骨程度に気にならなくなります。癖がなくので、お浸しのほか、バター炒め、煮物など、どんな料理にも合います。

じつはアザミはゴボウの近縁種で、花もよく似ています。ということは、もちろん根もよく似ていて食べることができます。わたしはまだ試していませんが、茹でた後、よく水にさらし、ゴボウと同様に調理して食べるといいそうです。

チシマザサ(ネマガリダケ)

身の回りに飽きるほど生えているササはクマイザサですが、それより有用なのがチシマザサです。モウソウチクが分布していない北海道でタケノコといえば、チシマザサの芽(ササノコ)のことです。

チシマザサは、クマイザサより標高の高い場所に生えるので、普段の生活圏内で見ることはまれです。

しかし、ちょっと高い山に登山に出かけると、見渡す限りチシマザサが群生しています。車で行ける場所でも、標高の高い山道沿いにはチシマザサが生えていて、毎年大勢の人がタケノコ採りに訪れます。

クマイザサの背丈がせいぜい人の高さくらいなのに対し、チシマザサは余裕で2mを超え、茎も太くなります。

クマイザサが下のほうから分岐するのに対し、チシマザサは上のほうでしか分岐せず、別名「ネマガリダケ」の名のとおり根元が曲がってしなるので、より多雪地域に適応した種だと言われます。

チシマザサの群生地に行くと、6月初頭ごろから、クマイザサの芽の何倍も太い芽がにょっきりと生えています。これを根元から折り取って採取します。

チシマザサの群生地は、ヒグマの生息域と重なっている上、ササやぶの背が高すぎて、むやみに入ると遭難の危険があります。必ずヒグマ対策をして、複数人で位置を確認しながら採取すべきです。

採取したタケノコはすぐ劣化するので、現地で採ってすぐ焚き火であぶって食べるのが極上だそうです。

それはなかなか難しいので、できるだけ早く皮を剥いて、茹でて下処理します。タケノコごはんにしても、天ぷらにしてもおいしいです。

アイヌのごはん―自然の恵みによると、数年に一度採取できるるチシマザサの実も混ぜご飯などに利用されるそうです。わたしはまだ見つけたことがありません。(p89)

[ツリガネニンジン(トトキ)]

「山でうまいはオケラとトトキ」と言い習わされ、おいしい山菜の代表とされるトトキ。正式名称はツリガネニンジンというキキョウ科の植物です。

ニンジンという名がつくのは横シワのある太い根が、チョウセンニンジン(オタネニンジン)に似ているからです。別名のトトクは、別項のツルニンジンの韓国語名トドクと関係しているという説もあります。

山菜として食べるのは若芽のころですが、普通は成長して花が咲いた時期にしか気づかないでしょう。

夏も進んだ8~9月ごろ、1mにもなるまっすぐな茎を立ち上げ、ツリガネのような紫色(まれに白色)の花をぐるりと何段もつける様子はとても優雅で涼しげです。

山菜として食べるのは若芽の頃なので、5月中旬~6月初頭ごろです。慣れないと若芽を見分けるのは難しいので、前の年の花の時期に群生地を確認しておいて、翌年の春に探しに行くとよいでしょう。

採取するのは10~20cmほどの若い芽で、根元から採ります。もう少し成長している場合でも、先端の柔らかい部分を摘むといいそうです。

葉の形や大きさには変異が多く、基本は楕円形ですが、卵型に近いものから、もっと細長いものまで様々です。

しかし、3~4枚の葉が輪生する(輪になって生える)、葉のふちに粗いギザギザがある、葉の柄はほとんどない、といった特徴は共通しているので見分ける手がかりになります。

また茎を折ると、白い乳液がにじみ出るので、本当にツリガネニンジンかどうか確かめるのに役立ちます。乳液は変な匂いがして、手につくと黒ずみますが、無毒なので心配いりません。

どんな料理にも合う優秀な山菜で、さっと茹でてお浸しや和え物にしたり、卵とじ、天ぷら、煮ものなどにも良いそうです。花やつぼみも食べることができ、サラダの彩りに使うことができます。

またチョウセンニンジンやツルニンジンに似ている根も食用にでき、油炒め、きんぴら、漬け物などに向いているそうです。

残念ながら、今のところ、採取できるほど豊かな群生地を発見できていないので、どれも試すことができていません。より詳しく観察できたら追記します。

ツルニンジン(トドク)

真夏の8月ごろに、釣り鐘形の美しい花をたくさんぶら下げて咲かせるツル植物、ツルニンジン。

花の形からもわかるようにキキョウ科ですが、根っこがチョウセンニンジンに似ていて食用にされることが名前の由来です。

花が終わった後には、これまた面白い五角形の実をならせます。花や実の時期に探せば、見つけるのが楽です。

ツルニンジンは花の中の斑点をそばかすに見立てて、爺さんのそばかす「ジイソブ」との別名がありますが、近縁種に小型の婆さんのそばかす「バアソブ」ことヒメツルニンジンがあります。

見た目で区別するのは困難ですが、実ができていれば、内部の種の形が全然違うので、見分けられるようになるそうです。

ツルニンジンは韓国ではトドクと呼ばれ、おもに根が高級食材として親しまれているそうです。ドラマの「チャングムの誓い」にも登場したとありました。

若芽も山菜として食されるとあったので、5月にツルニンジンの芽を見つけたときに試してみました。

花がなくてもツル植物であることと、4枚セットの葉があることから見分けられます。茎を切ると白い乳液が出てきて変な匂いがしますが、成分としては体にいいそうです。

若芽は茹でてお浸しにしてみましたが、味も食感も普通の野菜のようで、味付けをしないで食べると青臭く、美味しいものには思えませんでした。やはりツルニンジンは葉ではなく根を食べてこそなのかもしれません。

残念ながら、ツルニンジンは自生している数があまり多くなく、根を掘り返して食べる気にはなれません。食べたければ本場の韓国の栽培品を購入しかなさそうです。

トクサ/スギナ

じめじめした場所なら、どこにでも生えているシダ植物のトクサ。写真は初夏に出てくる新芽です。

棒そのものな見た目が印象的で、太古の昔の石炭紀に反映したロボクのような巨大シダ植物の仲間です。わたしたちが使っている石炭はトクサの仲間のシダ植物の成れの果てです。

原生のシダ植物としては、トクサ科トクサ属のスギナ(ツクシ)が近いです。

アイヌ植物誌によると、表面がザラザラしているので、アイヌ民族は「シプシプ」と呼んでヤスリや歯ブラシとして使ったとされています。

それ以上の使いみちはないと思っていたら、オリヴァー・サックスのオアハカ日誌を読んでいたとき、「血液の病気の治療や利尿薬として使われる乾燥したトクサ」に触れてあって、興味が湧きました。(p50)

調べてみると、乾燥させたものは木賊と呼ばれて薬用にされ、目の疾患に用いられるほか、利尿作用、収斂作用などの効能がありるらしく、サックスの記述と一致しています。

トクサをお茶として飲んだ人もいるようだったので、わたしも試してみました。一度目は秋に成長しきったものを採りましたが、二度目は6月の若い芽を採ってみました。

採取するときは、ハサミなどを使うと硬くて刃こぼれするかもしれません。かえって道具を使わなくても、手で引っ張れば節ですぽんと抜けて簡単に採れます。

トクサは節でつながったロケット鉛筆のような構造をしているので、たやすく節ごとに分解できます。分解したものを干して乾燥させるとこうなります。

これをお茶に淹れてみると、黄色っぽい色がわずかに出ます。味はほとんどなく、匂いも特にありません。

好んで飲むようなものとは思えませんが、目の病気や腸疾患などに薬効があるとされています。同じくお茶にされるスギナと近縁なので、同じような効果があるのかもしれません。

ニリンソウ

春一番に咲くのはエゾエンゴサクやアズマイチゲなどのスプリング・エフェメラルですが、それらより少し遅れて咲き始め、森に華やかさを増し加えてくれるのがニリンソウ。

イチリンソウとサンリンソウもありますが、名前のとおりの花の数になるわけではなく、ばらつきがあります。

イチリンソウは北海道に自生せず、サンリンソウは自生するとはいえ多くありません。ニリンソウは葉っぱに柄がありませんが、サンリンソウは葉っぱに柄があることで区別できます。

 毒の多いキンポウゲ科の中では、優秀な山菜のひとつで、樺太では「フクベラ」と呼ばれて、汁の実など普段の食事に利用されていたそうです。

癖がなく美味な野草ですが、唯一にして最大の問題は、葉っぱが猛毒のトリカブトに酷似していることです。 次の写真は花があるので確実にニリンソウですが、

下の写真はトリカブトだと思いました。とはいえ、トリカブトの葉はバリエーションが多いので、葉っぱだけで確実に見分けるのは難しいです。

しかし花が咲いてしまえば、明らかに区別できるので、ニリンソウを山菜として気軽に利用できるようになります。

ニリンソウは5月に白い花をつけますが、トリカブトはずっと成長してから、8月から9月ごろにやっと下のような花を咲かせるので、間違いようがありません。

トリカブトの親戚のエゾレイジンソウという植物も葉っぱが多少似ています。6月初頭にクリーム色の花を咲かせますが、やはり花の形は全然違うので、花で見分ければ問題ありません。

ニリンソウを採取するときは、白い花を確認して、白い花がしっかりつながっている葉っぱだけを採るようにすれば大丈夫です。

また、ニリンソウと同じ時期に、同じキンポウゲ科の、アズマイチゲ、ヒメイチゲ、エゾイチゲ(ヒロハノヒメイチゲ)などの白い花が咲きます。

それらにはおそらく軽い毒がありますが、ニリンソウとは葉の形が全然違うので、区別することができます。

文章で書くと、やたらと毒のある植物との区別が必要な危険な花であるかに思えますが、実物を観察すれば、決して見分けにくい野草ではありません。

お浸しや天ぷらなど、どんな料理でも美味しいです。 ニリンソウは大量に群生して親しみ深い上、まれに緑色のミドリニリンソウが咲くので、見て美しく、探して楽しく、食べて美味しい野草です。

アイヌはニリンソウを天日干しにして乾燥させ、ギョウジャニンニクなどと並ぶ冬の重要な保存食として用いました。

興味深いことに、ニリンソウはお浸しにすると特に癖のない味ですが、汁物に入れると旨味が出るそうで、アイヌはオハウキナ(汁の草)と呼びました。

さらに、わたしはほぼベジタリアンなので試したことはないですが、特に肉と一緒に煮ると旨味を引き出す珍しい山菜だと言われています。

ノブキ

ノブキは、森の中のやや湿った日陰にたくさん生える、とても地味な植物です。森のあちこちに普通に生えていて、オオバコなどと同様、知らず知らず踏んで歩いているようなものです。

名前は葉の形がフキに似ていることに由来していますが、言われてみれば似てると言えなくもない、という程度です。葉身の大きさは最大でも20cm程度で、アキタブキには遠く及びませんし、本州のフキよりも小型です。

フキのように地面から立ち上がるしっかりした葉柄はありません。葉柄には細い翼(葉身の延長として茎につく幅の細いヒレ状の葉の部分)がつくのが特徴です。

5月~6月中旬ごろに、20cmくらいに伸びた若葉を山菜として食べることができますが、あまりに地味なので、意識して採るような人はいません。

7月末~8月にかけて咲く花もまた地味です。ひょろりと長い花茎を、腰くらいの高さまで伸ばして、シロツメクサのような小さな花をつけるだけです。

ルーペで見ると小さな花が集まった可憐な姿ですが、たいてい誰にも気づかれません。面白いことに、この小さな花はフキの両性花(「アキタブキ」を参照)に似ているので、ノブキという名もあながち的外れではないようです。

森歩きしていて、最もノブキに目を惹かれるのは、8月~9月の実の時期でしょう。実の形はかなり異質で、アスタリスクのマーク「*」のような姿をしています。

ルーペで見ると、サボテンが放射状に並んでいるかのようです。先端はネバネバした突起で覆われていて、くっつき虫の要領で人や動物に付着し、種子を遠くに運ばせます。

とても地味な植物ですが、5月~6月中旬ごろの若葉は、山菜として食べることができます。触ってみると葉柄は意外と固いですが、茹でれば問題なく食べることができます。

苦みがあるので、よく塩ゆでして水にさらします。お浸し、煮物、バター炒めなど、色々調理できます。味付けすることで苦みも気にならなくなります。細かく刻んで、米粉と混ぜれば、草餅にも使えるそうです。

とはいえ、単に食べられるというだけで、これといって美味しいとは思いませんでした。同時期に優秀な山菜のミツバが採り放題なので、わざわざノブキを採る理由は見当たりません。

ハンゴンソウ

北海道では、夏にオオハンゴンソウというキク科の外来種がいたるところで咲きますが、それとは別にハンゴンソウという在来種があります。どちらもキク科ですが、花はあまり似ていません。

オオハンゴンソウが黄色いルドベキアなのに対し、ハンゴンソウはキオンの仲間で、アキノキリンソウに似た黄色い小さな花をたくさん咲かせます。

ハンゴンソウは写真のように、葉っぱの先が手のように分かれていて、この形を死者の魂を呼び寄せる手招きにたとえて、反魂草の名がつけられたという説があります。真偽はともかく、覚えるのにわかりやすいです。

花の時期に群生地を覚えておき、翌春に採りに行きます。若芽のころに山菜として食べることができますが、やはりこの葉の形が見分けるのに役立ちます。

5月上旬には、地面から赤い茎が伸びていますが、小さな葉の先がすでに分かれています。

20~30cm程度の大きさの芽を根元から折り取って採取しますが、アクが非常に強いので、手袋をはめ、他の山菜とは別の袋に入れるようにします。

重曹をまぶしてから、茹でて水にさらし、一晩置いてアク抜きし、茎の皮を剥いて調理します。天ぷらにする場合は、下処理なしでも大丈夫とされます。

ただし、「森林で遊ぼうシリーズ3おもしろい草花の話」によると、他のキク科と同様、肝毒性のあるピロリジジンアルカロイドを含んでいる可能性が指摘されています。フキノトウと同じく十分にアク抜きすれば問題ないと思われます。(p171)

わたしの場合は、一応アク抜きしてからまるごと揚げました。天ぷらにすると苦味が和らいで、意外なほど美味しいです。ウドに似たような風味があり、茎も筋がなくカリッとした歯ごたえがあります。

ウドに似た風味だからか、ヤチウド(谷地のぬかるみに生えるウド)という別名もあるそうです。本州以南に自生するサワオグルマという植物もヤチウドと呼ばれますが、どちらもキク科キオン属の近縁種で、同じように食用にされています。

ヒシ

夏に沼や湖の水面を覆い尽くす幾何学的な形の水草ヒシ。菱形という言葉はこの植物の葉の形に由来しています。

秋の気配を感じる9月初頭ごろ、この植物の葉がまだ浮かんでいるうちに、ウェダーを着て湖に入ります。

ヒシの葉は湖底から茎が伸びて水面に浮かんでいるので、それを裏返してみると、写真のように十字形のヒシの実が数個くっついています。

この実には鋭いトゲがついているので、厚手の手袋をつけて、一つずつ注意深く切り離して集めます。ハサミは必要なく、実をつまんでひねるだけで簡単に果柄がポキっと折れます。

岸に真っ黒い実が流れ着いていることもありますが、すでに中身のない殻(しいな)なので、必ず葉から切り離して採取します。

採ってきたヒシの実はよく洗ってゴミを落とし、10分間塩茹でします。アク抜きが必要と書いているサイトなどもありましたが、すぐ茹でてしまっても問題ないようでした。手持ちの山菜図鑑2種もアク抜きには触れていませんでした。

茹で上がったヒシの実は茶色っぽく変色しています。小さな実は殻が柔らかくなっていますが、大きな実は殻が硬いままです。

剥き方についてはネットで調べてみても、これといった方法がなく、人によってさまざまな方法で剥いている印象を受けました。

色々試してみた感じでは、実をまるごと取り出したいというこだわりがなければ、平たい面と並行に半分に切ってしまうのが一番楽でした。逆に平たい面と垂直に半分に切ってしまうと中身が取り出しにくくなるのでお勧めできません。

切る時に不安定に感じるなら、先に出っ張っている部分を落としてから半分に切ってもいいですが、包丁の扱いに慣れている人なら、そのままでも切れると思います。

半分に切ると、断面から中の白っぽい果実の部分(仁)が見えるので、それを手作業で殻から取り出します。さらに真ん中で半分に割ったりすると取り出しやすいですが、どうしても出てこないなら小さいスプーンなどで掻き出します。

取り出した中身。形にこだわらず、多少割れてもいいと思って剥いたので、不揃いになりました。かなり大変だったので、もっと効率の良い剥き方もあるのかもしれません。

割れずにうまく剥けたものは、下の写真のようにハート型になります。食感の点では、これが1/4くらいに割れていても問題ありません。

そのまま食べると、塩水で茹でたので少し塩味がついています。食感は栗にとても似ていて、後味として心地よい甘みを感じるところまでそっくりです。

食感は茹で具合によって変動があるらしく、軽めに茹でるとヤーコンやナシのような食感にもなるそうです。

癖がないので、さまざまな料理に使えますが、定番料理はヒシの実の混ぜご飯です。すでにヒシの実に味がついているので、炊きあがったご飯に、ヒシの実、ゴマ、ノリを混ぜるだけのシンプルさ。

さっぱりした塩味とほのかな甘みのおかげで、いくらでも食べられそう。

栗ご飯にかなり似ていますが、栗よりも食感に歯ごたえがあるのが気に入りました。今回採ったヒシの実を全部投入したので、ゴロゴロとたくさん塊が入っているのが贅沢です。

山菜の皮むきが苦にならないわたしでも、ヒシの実の殻剥きはかなり手こずり、ここまで苦労するならもういいかも、と思いかけていました。でもヒシの実ご飯を食べてみて評価は一変。この美味しさだったら頑張る価値あり。

何度も採ってきてたくさん食べるようなものではありませんが、旬の食材として、毎年一回は味わいたいと思えるものでした。

ヒトリシズカ

5月下旬に、森の中で可憐な白い花を咲かせるヒトリシズカ。花弁のない雄しべだけの花ですが、十字形の光沢の葉っぱも相まって、他の花にはない清々しい雰囲気があります。

アイヌ植物誌、およびアイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から夏へ】によると、アイヌ民族はヒトリシズカを「イネハム」と呼び、葉っぱをお茶として利用していました。(それぞれp49,p54)

ヒトリシズカは花の時期に目立ちますが、花が終わって実をつけた後、7~8月ごろに、もっと大きくなった葉を採取します。植物は子孫を残すことができ、人間は大きな茶葉が手に入るので一石二鳥です。

ただ、その時期まで待っていると、葉が虫食いだらけになってしまうこともよくあります。

それで、妥協案として、6月ごろから、4つある葉のうち1~2枚を間引くように採取するのもよいかもしれません。個人的な経験では、きれいな状態の葉が採れるのは6月末が限度です。

ヒトリシズカの葉を干して乾燥させてお茶にすると、漢方薬のような苦味になります。

冷やして飲むほうが苦味が和らぐとありますが、わたしにとってはこの苦味が極上です。冬のあいだ、ひたすら温かいヒトリシズカ茶を飲んでいました。

人によって好みが分かれるとは思いますが、好きな人はめっぽう好きな味で毎年森歩きしながらせっせと葉を集めています。

ミツバ

5月半ばごろから、森の地面をはじめ、湿り気のある場所でよく見かけるようになりミツバ。ミツバゼリとも呼ばれ、セリ科なので、摘んだときに爽やかなセリの香りがします。

3枚の葉が三角形につく3枚セットの葉(三出複葉)です。

大きさは様々で、直径2cmくらいの小さな葉から、下の写真のように15cmを超える大きな葉まであります。食べるために採る場合は5cmくらいのサイズで、傷みのないきれいな葉を選びます。

それぞれの小葉はさらに裂けて切れ込みが入ることもあります。真ん中の小葉に細長い柄があって間延びしているように見えることが多いです。下の写真は、その特徴が特に強い葉ですが、たいていの葉に多かれ少なかれ見られる特徴です。

 

6月末には直径1~2mmほどの極小の花を咲かせます。それでも、食べようと思えば、まだまだ柔らかい葉を選んで採取することは可能です。

かなり長い期間にわたって、食べられる優秀な山菜なので、森を散歩するついでに採ってきて、その日のおかずに添えるといった使い方ができます。

卵とじなどの料理に使うのも、香りが引き立って美味しいです。

注意点として、同じセリ科のウマノミツバと少し似ているように見えることがあります。

ウマノミツバは、毒はありませんが不味いと言われています。人間が食べるものではない、という意味で「ウマノ」がついています。

ウマノミツバも名前どおり3つに分かれますが、裂け目が多くて手のひら状になっていることが多いです。ミツバも時々、裂け目が多い葉があり、下の写真のように近くに生えていると、いささか似ています。(左がウマノミツバ、右がミツバ)

しかしウマノミツバは、葉の質感が硬そうに見えますし、摘んだときに茎を嗅いでみるとミツバ特有の爽やかな匂いがしないので、そうそう間違うものではありません。

また、先ほど書いたように、ミツバは3枚セットの真ん中の葉に細長い柄があるように見えますが、ウマノミツバの場合はそのような特徴がないので、慣れれば簡単に見分けがつきます。

ヤドリギ

湖のあたりを探索しているとき、低い場所に茂っているヤドリギを見つけました。採取するつもりは全然なかったのですが、ちょっと引っ張ると茎ごと千切れてしまいました。

一般的なヤドリギは黄色い実がつくそうですが、わたしが住んでいる地域では赤い実しか見たことがありません。赤い実の品種はアカミノヤドリギと呼んで区別されています。

ヤドリギは、一部の情報ではビスコトキシンとヤドリギレクチンという2種類の毒を含んでいるとされています。しかし、ヤドリギの毒性について詳しく書かれたサイトを見ると、薬用目的で使われることもあり、致命的な毒ではないとのことでした。

食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダほか幾つかの資料で、ヤドリギの実は食用として利用できると書かれています。

韓国では、茎や葉を乾燥させたものが、伝統的なお茶として親しまれているそうです。日本でも漢方薬にも使われていますし、アイヌ民族はヤドリギの茎からデンプンを採ったとする記録もあります。

よって、確かに強力な成分が含まれているものの、多食、多飲しなければ大丈夫なのでしょう。

採取したヤドリギの枝には、もう晩冬の時期でしたが、まだ瑞々しく見える実が残っていました。味見してみました。

すると、ほんの少しだけ、ほのかな甘みがあり、ねばねばした食感でした。小さい実なので、わざわざ食べるほどの価値は特に見いだせません。

しかし、食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによれば、3倍量のホワイトリカーなどで甘口のリキュールを作れるそうです。

ニワトコといいナナカマドといい、生食には向いていなくても、果実酒にすれば飲めるタイプの実の一つといえそうです。あいにく、お酒を呑まないわたしには縁がありません。

茎と葉は、乾燥させてお茶にしてみました。こちらのブログによると炒って熱を通しているようですが、わたしは日干しにしました。

お湯で淹れると、はっきり黄色っぽい色が出ます。飲んでみると、とてつもなく奇妙な苦さがありました。うまく表現できませんが、独特の風味です。

しっかりと味がついているのは確かなので、好きな人は好きかもしれません。苦手な人はまったくダメで、人によって好みは分かれそうです。渋いお茶のようだと書いてあるブログもあり、その感想に近いかもしれません。

しかし、炒ってお茶にしていたブログでは、クセがない味と表現されていました。もしかすると、日干しと炒るのとでは味が違うのでしょうか。もしくは、わたしが採取したのは、普通のヤドリギではなく、アカミノヤドリギだからなのか。

残念ながら、あまり好みの味ではありませんでしたが、多飲しないほうがよさそうなので、ちょうどよかったかもしれません。

ヤナギラン

7月上旬ごろからピンク色の鮮やかな花を咲かせる在来植物ヤナギラン。葉はヤナギに、花はランに似ていますが、名前とは裏腹に、ヤナギでもランでもなく、アカバナ科の植物です。

ヤナギランは日本では特に利用されていませんが、フィンランドやロシアでは、かなり幅広く利用されている有用植物です。若芽を山菜として食したり、花をシロップにしたり、葉をお茶にしたりするそうです。

山菜として利用できるのは芽出しの時期で、北海道だと6月ごろでしょうか。もうすでに背の高い草が茂っているので、群生地を覚えていて、意識的に探すのでもなければ採取は難しいかもしれません。

こちらの記事には、ヤナギランの若芽の写真が載せられていて、調理法なども説明されているので参考になります。味は少し苦味があるそうです。

花は、こちらの記事によると、シロップやジャムの色づけに利用できるようです。アラスカ在住の方が、花で色付けしたジャムやお茶の作り方を解説してくれている動画も見つけました。

わたしが挑戦したのは、ロシアの伝統的なお茶である「イワンチャイ」をヤナギランの葉から作る方法です。こちらの記事に詳しい方法が説明されていて、参考にさせていただきました。

まず、ヤナギランが十分な量が群生している場所を探して、茎ごと刈ってきました。初めは数本で試すといいですが、慣れれば一度に20~30本くらい刈ってくると、十分な量の茶葉を作れます。

採取したヤナギランは、まず茎から葉だけをちぎり取ります。上側の茎を指でつまんで、そのまま一気に下まで指を滑らすと、全部の葉を一度にちぎることができて楽です。

とはいえ、まれに葉に虫が卵を産んでいたりするので、手作業で葉の表と裏を一枚一枚確認しておくのが無難です。

葉をちぎり取った後の茎の部分は捨てて構いません。最初は茎も刻んでお茶に入れていましたが、苦みが出てしまうような気がしたのでやめました。

ちぎった葉は、軽く水洗いして一晩乾かします。

乾いたら、ちぎった葉を集めて、素手でこねるようにして力を入れてもみます。

少し水分が出てまとまってきたら、瓶詰めし、蓋をしっかり閉めて、直射日光の当たる暑い場所に半日から1日くらい置きます。北海道の夏だと温度が足りないことがあるので、ビニールハウス内に置くのもいいかもしれません。

 

様子を見ていると、葉に残っている水分が蒸発し、瓶が曇ってくるのがわかりました。1日経ってから瓶を開けてみると、驚くほどフルーティーな香りがしました。マンゴーのような南国系フルーツの香りです。

瓶から取り出したら、再度、素手で15分ほどパン生地のようにこねて発酵を促進させます。そしてボウルに入れたまま布をかぶせて、もう一日発酵させます。

その後、干し器に入れて、いつものようにパリパリになるまで乾燥させれば茶葉の完成です。発酵させることによって、黒っぽい茶葉になります。そこに乾燥させた花も混ぜてみました。

ヤナギランの茶葉でお茶を淹れてみると、あのフルーティーな香りがしますが、発酵させている最中ほど強くはなく、ほんのりと漂うくらいです。

紅茶などと同じく、茶葉の抽出時間が長すぎると渋みが出るので、1分から3分くらいで茶葉を引き上げるのがよいと感じました。また、おそらく制作時に発酵が足りないと、苦味が出やすい気がするので注意が必要です。

味は少し甘みがあり、ほとんど癖がなく飲みやすいです。こちらの記事によると、同じ茶葉で5回淹れることができ、他のハーブとブレンドしても美味しいそうです。試してみたところ3回くらいまでは十分に香りと味が出ました。

ヤナギランは、本州の緯度では日当たりのよい高原の植物だとされますが、道北では、郊外の道路沿いに普通に咲いています。群生するので、7月の開花期であれば、見つけるのは難しくありません。

注意点として、遠くから見た姿は、下の写真のエゾミソハギに多少似ています。

しかし、ヤナギランの写真と比較すればわかりますが、近くで見れば、花の形状や特徴が違います。

ヤナギランは白くて長い雄しべと雌しべが目立ち、ピンクの花びらの他に濃い赤紫色のがくがあります。エゾミソハギは雄しべと雌しべの長さにはばらつきがあり、ピンク一色の花です。

またヤナギランの葉は互生(互い違いにつく)で螺旋状につきますが、エゾミソハギは対生(向かい合ってつく)で十字方向に伸びています。

花期も少しずれているようで、道北では、ヤナギランは7月上旬から咲くのに対し、エゾミソハギは8月に入ってからでした。花の時期を覚えていれば遠目でも間違えることはないでしょう。

また、ヤナギランの花期は7月ですが、葉は6月にはすでに繁茂しています。茶葉として使うのは葉の部分なので、イワンチャイを作りたいだけなら、暑くて虫の多い7月まで待つ必要はない、ということになります。

それで、別の年に早めにヤナギランの群生地に行ってみました。すると、6月中旬には、すでに立派に成長したヤナギランの茎葉を見つけることができました。

花のない時期に見つけるポイントは2つ、まず去年の群生地の場所を覚えておくこと、次に葉の形を見ることです。

ヤナギランという名は、葉がヤナギに似ていることから名付けられました。ここでいうヤナギとは、川沿いに生えるオノエヤナギ(ナガバヤナギ)のことで、細長い形で、葉のふちが軽く裏側に巻き込むという特徴がそっくりです。

ヤナギランの葉の表側。オノエヤナギのように葉が細く、ふちにギザギザはない。

葉の裏側。ふちが裏側に軽く巻き込んでいる。(個人的に観察した限りでは、この特徴は、若葉の時期にのみ見られるものかもしれません。花が咲く時期になると、葉の縁はほとんど巻き込まなくなります)

葉が細長いという特徴だけだと、同じ時期に似た姿で茂っているアワダチソウなどと、かなり紛らわしいです。しかし、ヤナギのように葉のふちが裏面に軽く巻き込むという特徴を知っていれば、確実に見分けられます。

後は同じように上記の手順に従って発酵させ、イワンチャイを作ります。しかし、

わたしが住んでいる道北の場合、6月の時点ではまだ肌寒い日や天候の悪い日も多く、ただ直射日光の当たる場所に置いておくだけでは発酵に必要な気温が確保できませんでした。

それで、ビニールハウスに入れておくという工夫をすれば、真夏と同じように発酵しました。屋外に停めている車の中の、フロントガラスのあたりに置いておくのもよいかと思います。

早い時期からイワンチャイを作り始めたら、虫や暑さに悩まされず大量生産できるので、慣れてきた頃にお勧めです。

[ヤブマメ(ツチマメ)]

地上部と地中の両方にマメをつける不思議な植物。

アイヌ民族は地中のマメを「アハ」と呼んで、炊き込みご飯などに利用していました。アイヌ生活文化再現マニュアル 食べもの【春から夏へ】に詳しいです。(p22)

ツル性の一年草で、3枚セットの葉をつけていることから見分けられます。近所の道路脇に生えていましたが、誰も気づかないほど地味です。

発見したのは9月下旬でしたが、よくよく見てみると地上部がにマメがなり始めていました。しかし、かなりの小型で、食用にはなりません。

食べるのは地中にできるほうのマメで、直径1cmくらいの球体がたくさん埋まっているそうです。秋か春に地面を掘り返して収穫します。

わたしが見つけた場所はうっそうとしていて、ヤブマメのツルがどこの地面につながっているのか判別するのが難しく、堆積物も多かったので、掘るのを断念しました。別の場所でヤブマメを見つけることがあれば再チャレンジしたいです。

ヤマブキショウマ/[トリアシショウマ]

6月に細い糸のような花穂をつけ、森の景色に爽やかさを添えてくれるヤマブキショウマ。

北海道には〇〇ショウマという似た植物がたくさん自生していて、最初のうちはややこしく感じられます。

具体的には、ヤマブキショウマ(バラ科)、トリアシショウマ(ユキノシタ科)、サラシナショウマ(キンポウゲ科)、ルイヨウショウマ(キンポウゲ科)の4種があり、どれも芽出しの時期が似ていて、穂のような白い花をつけます。

しかし、どれも科が全然違いますし、花を咲かせる時期もバラバラです。成長してしまえば、花や葉の形もかなり違うので、見分けるのは簡単です。

4種類の〇〇ショウマのうち、山菜として利用されるのはヤマブキショウマとトリアシショウマの芽です。

しかし、わたしが住んでいる地域ではトリアシショウマは見たことがないので、ヤマブキショウマについてだけ書きます。

ヤマブキショウマは渓流沿いの水辺に多く、ときどき畑の用水路などにも生えています。 名前の由来は、葉の形が同じバラ科のヤマブキに似ていることで、先が尖って葉脈がはっきり並行しています。

葉は、2回3出複葉(茎が3つに分岐し、その先に3枚セットの葉がそれぞれつく)だとされます。しかし下の写真のように、3枚ではなく5枚や7枚セットの葉もしばしば見かけます。

調べてみたら、5枚セットにもなりうるという記述があり、広義のヤマブキショウマ属の説明にある2~3回羽状複葉という表現には当てはまります。

山菜としては、5月初頭、芽を出してすぐに採取します。しかしかなり見つけにくいので、あらかじめ花が咲いているときに群生地を覚えておき、春に見に行くのがいいでしょう。

下の写真のように、群生地にすでに開いている葉もあれば、判別の参考になります。

採取するときは、葉が開きかけか、まだ開いていないもの芽を採ります。

・葉がほぼ2回3出複葉(3つに分岐している)
・葉脈がはっきりしていてヤマブキの葉に似ている
・複葉が互生(茎が互い違いに出ている)
・茎は黄緑色か緑色でほぼ毛がない

などを確認できれば大丈夫でしょう。下の写真では、茎が緑色で毛がなく、葉の茎が互い違いに分岐しているのがわかります。

葉が開いておらず、茎も伸びていない芽は、まるでタラノキの芽のようにも見えます。一部地域では「イワダラ」と呼ばれているそうですが、この見た目に由来するのかなと思いました。

ネットで調理の仕方を調べてみたら、アクが強いので、さっと茹でてから一晩水にさらすとよい、と書かれていました。食感が重要な山菜なので、茹ですぎず水にさらすと良いようです。

わたしは茹でた後、切れ込みを入れ、約1日水に漬けてから刻んで、胡麻和えにして食べてみました。

すると、苦味はまったなく、クニャクニャ、シコシコなどと表現される弾力性のある噛みごたえがとてもユニークで、かなり美味な山菜でした。

後日、天ぷらでも食べてみましたが、ユニークな食感がなくなってしまいました。しかし、生のまま天ぷらが美味いと書かれているサイトもあるので、ちょっとした調理時間の違いなどで変わるのかもしれません。

ヤマブキショウマと同じく山菜として食されるユキノシタ科トリアシショウマは、長らく見つからないままでした。この地域には自生していなのだろうか、と思っていましたが、4年目の夏に、奥山の源流域にて発見しました。

見つけたのは、8月の花が咲いている時期だったので、判別はとても簡単でした。

山菜として食べる場合は、春の芽出しの時に見つけなければなりません。しかし、ヒグマと遭遇する可能性が高い場所なので、いまだそれは観察できていません。

芽の特徴としては、以下のようなものがあり、見慣れると区別するのは簡単なはずです。

・開く前の閉じた葉が、鳥の足のように見える
・茎が褐色で赤みを帯びている
・茎に毛が多数生えている
・葉が3回3出複葉
・葉は楕円形でギザギザがある

注意点として、キンポウゲ科のルイヨウショウマが、ヤマブキショウマやトリアシショウマとほぼ同じ時期に芽を出します。キンポウゲ科なので、おそらく多少の毒があるかもしれません。芽の形も少し似ていました。

しかし、写真からわかるとおり、茎の色は黒っぽく、葉の形も全然違うため、前述の項目をしっかり確かめれば間違わないと思います。

ユキザサ(通称アズキナ)

山菜アズキナの名で広く親しまれているユキザサ。茹でると小豆のような香りがして、ほのかに甘味があることで人気がありますが、見分けられるようになるまで、時間がかかりました。

オオアマドコロの項で書きましたが、同じユリ科に容姿が似た近縁種が多く、ユキザサ、オオアマドコロ、ナルコユリ、オオバタケシマランなどは、葉っぱが酷似しています。

そして一番の問題は、イヌサフラン科の毒草ホウチャクソウが、芽や葉の見た目が酷似しているということです。

花が咲いていれば違いは明らかで、ユキザサは葉の上側に白い雪のような小さな花を咲かせ、赤く熟する実を多数つけるのに対し、

ホウチャクソウは、葉の下側に、お寺の宝鐸のような形の花をぶら下げ、徐々に熟して群青色の実になります。

ですが、写真からもわかるように、どちらもササのような葉がよく似ていて、花をつけない個体だと見分けが困難です。

他の山菜と同じように、花が咲いている時期に群生地を覚えておいて、翌春見に行く方法が有効ですが、どちらも森の中に生えることが多いため、混生している場合もあります。

それで、ユキザサの自生地なら安心、というわけにもいかず、採取するときに違いを確かめる必要があります。幸い、慣れれば見分けは難しくありません。

ユキザサの芽は、わたしが住んでいる地域だと5月上旬に生えてきます。ホウチャクソウは芽出しが2週間程度遅い印象があり、区別する手がかりになります。

一箇所に群生することが多く、下の写真のように、葉が開きかけ程度のものまでが旬です。

一方、下の写真はホウチャクソウの芽です。上に載せたユキザサの芽と比較すると、確かに雰囲気が似ています。

ユキザサは茎が分岐しないのに対し、ホウチャクソウは茎が分岐し、枝分かれすることが多いという違いもあります。しかし、若芽では枝分かれしていないこともあるので、確実に見分ける手がかりにはなりません。

ホウチャクソウは摘んだとき悪臭がするとの記述もありますが、試してみてもよくわからなかったので、これも確実ではありません。

採ったのがたまたま花芽であれば、内部に花芽があるため、区別は簡単です。ユキザサの場合は、下の写真のような花芽で

ホウチャクソウは次の写真のような花芽です。

しかし、全部の株が花芽をつけるわけではありませんじ、群生地の保護という点では花を咲かせない株を採ったほうがいい(多少葉が開いていれば、花芽があるかどうか見える)ので、以下の3つの手がかりから見分けるほうがいいと思います。

1つ目のポイントは、オオアマドコロの項でも書いたように、山菜として食べることができるオオアマドコロやユキザサは、どちらも根が横に走るという点です。ホウチャクソウの根は横に伸びません。

それで、根元を軽く掘ってみて、横走する根が見つかれば、食べても大丈夫です。

2つ目のポイントは、ユキザサは全体に粗毛があるのに対し、ホウチャクソウは無毛だという点です。

下の写真のように、ルーペで見ると、茎にも葉裏にも、細かいうぶ毛があります。

肉眼でもわかりますが、拡大鏡を使うほうが確実です。茎の下方には毛が見当たらない場合もありますが、茎と葉の付け根付近には必ず生えています。

この粗毛は非常に特徴的なので、一度実物を観察して粗毛の雰囲気を覚えたら、ホウチャクソウと簡単に区別できるようになります。

一方、下の写真のように、茎の下方にまばらに毛が生えている場合は、オオバタケシマランの芽です。

オオバタケシマランの葉は茎を抱くので、芽の段階でも葉を少し広げてみれば区別は難しくありません。基本的に林内に生える植物なので、堤防など身近なところでユキザサを採っていれば混同する機会はないと思います。

ネットで調べた限りでは、毒があるかは不明ですが、食用になるという話は見つかりませんでした。

「森林で遊ぼうシリーズ3おもしろい草花の話」には、チゴユリ、スズランと並んで、オオバタケシマランは毒のある植物として挙げられていました。念のため避けたほうが良さそうです。(p183)

3つ目の特徴は、茎を指で触ってみると、ユキザサの茎は丸い円柱形なのに対し、ホウチャクソウは多少角ばっていて稜角があるという点です。

茎に毛がなく、角ばっている場合は、毒草ホウチャクソウの可能性がありますが、山菜として食べられるオオアマドコロもそうなので、さらなる違いを調べる必要が出てきます。詳しくは「オオアマドコロ」の項にて説明しています。

以上の3つのポイントを確かめれば、ユキザサだとわかります。慣れてきたら必ずしも根っこまで見る必要はなく、2つめのポイントの粗毛があることを確認すれば十分だと思います。

最初のうちは見分けにくい山菜ですが、目が慣れてきたら、今まで気づいていなかった場所にも、かなりたくさんのユキザサの芽が生えていることに気づくようになりました。河川敷に凄まじい群生地を見つけたこともあります。

ユキザサは、さまざまな料理に合いますが、甘みがあるのでお浸し、サラダなどが向いています。天ぷらにもしてみましたが、サツマイモの天ぷらのような味になりました。

「森林で遊ぼうシリーズ3おもしろい草花の話」によると、ユキザサは癖がないため、スーパーで売っている野菜と同じ感覚で調理できる手間のかからない山菜であるとされていました。

また、ユキザサの若葉には、山菜の中で最もビタミンCが豊富で、100gあたり80mg含まれているそうです。(p207)

ヨブスマソウ(通称ボウナ)

ヨブスマソウは、夏には2mから3mになり、ユニークな三角形の葉をつけるので、とても覚えやすい植物です。

ヨブスマとは、夜衾(よぶすま。夜寝るときの布団)のことで、コウモリの羽に例えているそうです。

森の中、河川敷、道路脇など、わりとどこにでも生えている植物で、夏のうちに、たくさん生えている群生地を見つけておくと便利です。

同じキク科コウモリソウ属の近縁種がかなり多い植物で、イヌドウナをはじめ、ほとんど食べることができるようです。

おもに葉の形で見分けられ、わたしの住んでいる場所では大半が三角形の葉のヨブスマソウです。

山菜としては、5月上旬ごろに出てくる芽を採ります。

芽の段階では、葉っぱが折りたたまれていまず、ちょうど紙飛行機のような形になっているだけで、広げてみれば三角形です。

茎の内部は空洞になっていて、棒状に成長することからボウナ、折ったときにポンと音がするからボンナといった地方名がいろいろあるようです。

茎が赤いものもありますが、同じヨブスマソウです。改訂新版 北海道山菜図鑑には、「茎の色と苦味との関係は不明」とありました。

見た目がよく似ていても、茎に毛が密生しているようなものはヨブスマソウではありません。ヨブスマソウも毛が生えているものがありますが、さほど濃くなく、おもに茎の上部に縮れた毛が生えます。

下の毛深い茎の写真は、おそらく近縁種のタマブキと思います。食べることは可能なようですが、たぶんヨブスマソウのほうが美味しいです。

ヨブスマソウは主に茎を食べ、ウドとフキの中間のような味から、ウドブキとも呼ばれます。ウドの野性味あふれる味がきつい人にはちょうどいい山菜かもしれません。

ヨブスマソウはキク科なので、フキと同様、肝毒性のあるピロリジジンアルカロイド類を含みます。食べる前に、茹でこぼし、水さらしなどで、しっかりアク抜きする必要があります。

茎をおひたし、あえもの、汁の実などにするほか、天ぷらにすると若い葉も食べやすく、もちもちとして美味しかったです。干して乾燥させて保存することもできます。

ワラビ

食べることができるシダの芽として、特に有名なのはワラビとゼンマイです。子どものころ、一回だけ山菜採りに連れて行ってもらったことがあり、その時採ったのがこの二種でした。

ワラビは近所にも普通に群生しています。森の中にも生えますし、町の中の土手や、畑や農場の近辺など、さまざまな場所で見かけます。採取する時期は5月半ばごろで、ウドと同じタイミングだと覚えておけば間違いありません。

茎は薄緑色で、他のシダのような目立つ毛や鱗片はありません。先端が3つに別れ、握りこぶしののように丸まっているのが特徴です。

成長するとかなり背が高くなり、遅れて葉が開いていきます。下の写真はアングルのせいで高さが分かりませんが、わたしの胸くらいの背丈があります。

葉が開いた後のワラビの姿を知っている人はあまりいませんが、とても細かく切れ目の入った3回羽状複葉で、巨大な三角形の葉を開きます。

秋には下の写真のように紅葉するので、翌年春に群生地に行ってみると、赤みを帯びた枯れ葉が地面に敷き詰められています。ワラビの葉は防虫効果があり、オアハカ日誌によると、ローマ人は馬小屋の寝藁として敷いていました。(p83)

ワラビはかなりメジャーな山菜ですが、アク抜きが大変なので、自分で採る気にはなれません。

前出のオアハカ日誌によれば、複数の神経毒や発がん性物質が含まれていると指摘されています。

具体的には、ワラビは何段階もの毒ガードをもっているため、シダ界の毒婦ルクレツィア・ボルジアの異名をとります。

まず、酵素チアミナーゼによる神経毒で誤食した家畜を痙攣や死に至らせ、次にシアン化水素で昆虫に抵抗します。のみならずエクジソンというホルモンで昆虫を強制的に脱皮させて殺すそうです。

さらに強力な発がん性物質プタキロサイドが含まれていて、アク抜きしても完全に失われることはないとされていました。(p83)

ネットで調べると、アク抜きすれば無毒化できる、と書いてあるサイトばかりなのですが、根拠となる研究は示されていないので、単なる希望的観測だと思われます。

藤田医科大学医学部の廣野巖の研究によると、少なくともラットの場合において、さまざまな方法でアク抜きしても発がん性が完全には失われなかったそうです。

内閣府も、ワラビの食べ方について、香港食物環境衛生署食物安全センターの「ワラビと発がん物質」というリスク情報に基づく指針を出しているので、以下に引用しておきます。

 ワラビのヒトに対する発がん性を十分に証明する根拠は乏しいが、動物に対する発がん性を証明する十分な根拠はある。このため、国際がん研究機関は1987年にワラビをヒトに対する発がん性が疑われる物質(グループ2B)に分類した。

…上述の研究結果に基づき、また、香港市民がワラビを常食しないことに鑑み、我々は消費者に以下のように助言する。

(1)ワラビ製品を食べ過ぎないこと。

(2)ワラビに含まれる有害化学物質の量を減らすためには、適切な処理及び下ごしらえが重要である。例えば、若葉に含まれる水溶性の有毒化学物質の量を減らすために、まず大量の湯で若葉を15分ゆでるか、又は若葉を10分から12分或いは柔らかくなるまで蒸して湯を捨ててから、加熱調理する。

(3)いくつかの食品に偏って食べることによる自然毒及び一般的な汚染物質の過剰摂取を避けるため、市民は食事のバランスを保つべきである。

フキノトウと同じく、よくアク抜きして、旬の時期に少量食べるくらいなら問題ないと思われますが、積極的に食べるべき山菜ではないでしょう。わたしは同じシダでも、コゴミのようにアクの少ないもののほうが好きです。

アイヌのごはん―自然の恵みによると、アイヌ民族はワラビを「トゥワ」と呼び、なんと塊茎からデンプンを採って用いていたそうです。(p85)

【木本編】食用になる樹木の葉や実まとめ(五十音順)

ここからは、樹木の葉や実のうち、味わってみたものをまとめています。

食べられる実をつける植物でも、サンカヨウやエンレイソウのような草本類は、上の山菜・ハーブ類のほうに含めています。

イチイ(オンコ)

マツともヒノキとも違うイチイ科の針葉樹。北海道ではオンコとも呼ばれます。

葉はエゾマツ、アカエゾマツ、トドマツなど北海道の1枚葉のマツに似ていますが、樹皮が全然違うので見分けるのは簡単です。赤みを帯びて、老人の腕のように節くれだって見える幹は、どこか威厳さえ感じさせます。

10月ごろ可愛らしい赤い実をたくさんつけ、実の表皮の赤い部分(種衣)だけは食べることができます。しかしその内側にある種は猛毒で、たいへん危険です。

食べてみる場合は、念のため、赤い部分を剥ぎ取って、それだけを口に入れたほうがいいかもしれません。誤って種を飲み込まないためです。赤い果衣は甘くて美味です。

イワツツジ

山道の岩場などに生えるツツジ科の花。あまり目立たないので、運良く花が咲いている時期に見つけないと、見逃しがちです。

このイワツツジは登山道の脇の苔むした岩壁に群生していました。

赤く丸い実をつけ、甘酸っぱい味がします。積極的に採って食べるほど多く見かけるものではないので、山菜等の採取が許可されている登山道で見かけたときに、一粒口に含んでみるくらいです。

ウスノキ

前出のイワツツジ同様、山道でたまに見かけるツツジ科の植物。6月ごろベル型の双子の可愛らしい花をぶら下げます。花の段階では近縁のオオバスノキのそっくりです。

8月から9月には赤い実をならせます。まるで人工物のようにくっきりした五角形の模様が目印。実の外側も五角形に角ばっていることで、オオバスノキなど他のツツジ科の実と区別できます。

指先サイズのかなり小さな実で、お菓子のグミのようも見えます。食べてみると非常に酸っぱく、登山の疲れを吹き飛ばしてくれます。

ウワミズザクラ/エゾノウワミズザクラ/[シウリザクラ]

サクラの仲間でありながら、普通のサクラが終わった時期に、穂のような花を咲かせるのがウワミズザクラの仲間です。

道北では、ウワミズザクラ、エゾノウワミズザクラ、シウリザクラの3種を見ることができます。このうちウワミズザクラは人工的に植樹されたもので、エゾノウワミズザクラとシウリザクラは在来種です。

いずれも若葉、つぼみ、花、未熟果、実を食用にすることができます。

どれも穂のような花をつけるサクラという点で似ていますが、容姿や細かい特徴が違いますし、何より花期がずれるため、慣れれば見分けることができます。

最初に咲き始めるのはエゾノウワミズザクラです。ウワミズとは、溝を彫って占いをに使われたことに由来するそうです。

道北では普通のエゾヤマザクラが咲き終わった5月中旬に開花します。日本では青森以北にしか自生しておらず、おもにロシアや北欧に分布しています。

3種の中では花が最も大型で、つぼみの段階で花穂は手のひらサイズです

1つ1つの花の大きさは、ちょうど普通のサクラくらい。それらが穂になって咲き乱れるさまは圧巻です。ロシアではチェリョームハと呼ばれ、民謡でも歌われているそうです。

北海道はエゾノウワミズザクラの世界的な分布域の端に当たるので、さほど自生している数は多くありません。河川敷をサイクリングしているとたまに見つけますが、まだ数本だけです。絶滅危惧種のクロミサンザシよりもレアです。

エゾノウワミズザクラの実が熟すのは7月下旬以降。生食しても渋くて美味しくありません。

しかし、特有の香りがするので、ロシアでは果実酒にしたり、乾燥させて挽いたチェリョームハ粉としてパンやお菓子に使われてたりするそうです。

冬芽は3種の中では最も特徴が薄く、冬に見分けるのはやや難しいかもしれません。でも、サクラの冬芽に似ているのに特徴が薄いことから、他のサクラ類を除外してエゾノウワミズザクラだと気づいたこともありました。

続いて咲くのは、普通のウワミズザクラ。エゾノウワミズザクラが咲き終わる5月下旬ごろから咲きます。自然分布は北海道の南西部までですが、あちこちに植栽されていて、半野生化しているものもあります。

花穂は、エゾノウワミズザクラよりずっと小さく、指の長さほどしかありません。

花は小さくぎっしり詰まって咲き、雄しべがエゾノウワミズザクラよりずっと長いこともあいまって、まるでブラシの木のようです。

実は最初は緑色で、ついで赤くなり、最後に8月末に黒く熟します。食べてみると、少しえぐみがあるものの、甘く美味でした。

新潟では、ウワミズザクラのつぼみや未成熟果を杏仁子と呼び、塩漬け、醤油漬け、天ぷらなどにして食べるようです。わたしも咲く直前のつぼみを、天ぷらにして食べてみました。

少し苦味がありますが、ほんのりと桜餅っぽい香りがして、クマリンが含まれていることがわかります。おそらくクルマバソウと同じく、大量に集めて調理すれば、香りが引き立つのだろうと思いました。

ウワミズザクラの冬芽は、ややずんぐりと丸みを帯びています。葉が落ちた痕(葉痕)だけでなく、枝が落ちた痕(落枝痕)があるという、かなり珍しい特徴があるので、冬場でも見分けやすい木です。

3種のうち最後に咲くのが、シウリザクラです。シウリとはアイヌ語で苦いを意味しています。ウワミズザクラが咲き終わった6月上旬に咲き始めます。

シウリザクラは、大きさも雄しべの長さも、エゾノウワミズザクラとウワミズザクラの中間のような見た目の花です。

シウリザクラの最大の特徴はじつは花以外の時期にみられます。まず、冬芽は他のサクラとは似ても似つかない、ほんのりと赤みを帯びて、鋭く尖った形です。

そしてエゾヤマザクラが咲く少し前の4月末ごろ、シウリザクラが芽吹き始めて、まるで紅葉しているかのような艶やかな若葉を展開します。赤く色づいている期間はわずか1週間ほどですが、他のサクラでは見られない彩りです。

この3種のサクラは、ここに挙げた特徴以外にも、葉の形や蜜腺の位置など、いろいろなポイントで見分けることができます。

どれも若芽、つぼみ、未熟果などを、天ぷら、塩漬け、果実酒などに利用できるので、採取しやすい木の場所を覚えておくと季節ごとに楽しめます。

エゾイソツツジ

亜高山帯の山地に生えるにも関わらず、イソツツジという名前がつけられてしまったツツジ。

エゾツツジがなまってイソツツジになったという説があり、だとすると、エゾイソツツジは、エゾエゾツツジという意味になり、ひどく混乱しています。

葉っぱはくるりと内側に巻き、裏側に赤茶色の毛が密生している独特な見た目です。

近所の高い山の採取可能な場所で見つけたので、何枚か葉っぱを採ってきました。ネット情報によれば、アイヌは葉っぱ2~3枚を浮かべてお茶としたので、量はそれほど必要ではありません。

葉っぱを揉んでみると、甘い香りが漂ってきます。ミントのような爽快感のある香りとも、ホオノキやヤナギランのフルーティーな香りとも異なっている、言葉で表現しがたい優しい香りです。

お湯に葉を浮かべてみると、ほのかに黄色く染まり、香りが漂ってくるのがわかりました。

小さな葉っぱだったので、もう数枚加えたほえがよかったかもしれませんが、マイルドな美味しいお茶を味わえました。

なお、エゾイソツツジはレンゲツツジと同様、蜜に毒性があることが知られています。葉は大丈夫と思いますが、念のため飲むのは少量にしたほうがよさそうです。

また、北海道には近縁種で小型のヒメイソツツジも自生していますが、大雪山の周辺と道東の一部にしか分布していないようです。

エゾイチゴ(ラズベリー)

森の中に自生しているラズベリー、真夏の8月ごろに森を歩けば、運が良ければキイチゴを食べることもできます。

茎(幹)に細いトゲトゲの毛が密生しているので、実がなっていない時期でも見分けやすいです。冬にスノーシューで歩いていると、さえぎるものが何もないので思わぬところに見つかります。

北海道にはエゾイチゴのほか、クマイチゴ、エビガライチゴ、クロイチゴ、ヒメゴヨウイチゴなど色々なラズベリーが自生していますが、葉の形や茎のトゲの様子で区別できます。

アイヌのごはん―自然の恵みを読んでいると、アイヌはエゾイチゴの茎と葉をお茶に利用したとの記述がありました。アイヌのお茶は美味しいものが多いので、試してみることにしました。(p98)

エゾイチゴの葉は、下の写真のような三出複葉(3枚セット)の形で、トゲトゲの茎も確認すれば、間違うことはありません。写真は若葉の段階です。

森の中でエゾイチゴの群生地を見つけたので、たくさん葉っぱを採ってきて、干してお茶に淹れてみました。

飲んでみた感想としては、期待したほどの味ではなく、少し青臭さがあります。

とはいえ、調べてみたら、西洋でも「ラズベリーリーフ」と呼ばれ、生理痛などに効くハーブティーとされているそうです。少し品種は違うでしょうが、アイヌが利用していたのは事実なので、しばらく飲み続けてみたら愛着も湧くかもしれません。

エゾニワトコ

北海道では、セイヨウニワトコ(エルダーフラワー)の親戚であるエゾニワトコが、あちこちに生えています。

大木にはならず、独特のうねりがあるしなやかな枝ぶりや、大きな芽を左右対称につける冬芽などから、冬でも見分けやすい木です。

春になると、かなり早い段階で葉と花芽が芽吹くので、よく目につきます。

この段階の芽を茹でたり天ぷらにしたりして食べることができます。花芽はブロッコリーのような歯ざわりで、特有の味わいもあります。

しかし、食べ過ぎるとお腹を壊すので、芽を食べるにしても2、3個までにとどめておくのが無難だとされています。他の山菜を食べるときのトッピングにする程度の利用がいいでしょう。

エルダーフラワーの親戚ということで、花をハーブティーなどに利用できるかと期待しました。しかし残念なことにエゾニワトコには肝心要の香りがなく、利用できませんでした。

赤く熟した果実は、果実酒にできるとも言われますが、わたしはお酒を飲まないので試したことはありません。

ほかに、近縁種のニワトコが、漢方の生薬として、茎と葉は7~8月に取り、花は開花直前に採取し、陰干しにして利用するとありました。ほかに根も利用されるようです。

花と葉は薬用茶にできるようなので試してみるのもいいかもしれません。アイヌも風邪や腹痛の治療に飲んでいたそうなので、エゾニワトコも同様に利用できそうです。

エゾマツ/ヨーロッパトウヒ

北海道には、植林された針葉樹林が多く、おもにトウヒ属のエゾマツ、アカエゾマツ、ヨーロッパトウヒ、モミ属のトドマツ、そしてカラマツ属のカラマツの5種類のマツ人工林をよく見かけます。

見分け方はそんなに難しくなく、冬になると葉っぱが落ちるのがカラマツ、幹が滑らかでひび割れていないのがトドマツです。この二種類は、葉先が尖っていないため、触ってもチクチクしません。

その他のトウヒ属の3つのマツは、樹皮がうろこ状にひび割れていて、一年中葉をつけている常緑樹で、葉の先が尖っていてチクチクするという共通点があります。

見分けるには葉の形や樹皮の色が参考になりますが、ここではトウヒ属としてひとまとめに扱います。

ネットで調べているときに、ふと見つけたフィンランドの話によると、北欧やヨーロッパではトウヒの新芽を食用にしているとのことでした。

なんと生のままむしりとって食べることもでき、シロップに漬け込んだり、ジャムにしたりできる、とされていました。

試しにわたしも、トウヒ属のエゾマツの新芽をむしって食べてみたら、とても爽やかな強い酸味が口の中に広がりました。新芽は柔らかくて、簡単に噛み切ることができ、オカヒジキのような食感でした。

エゾマツでコーディアル作っている人もいるようなので、わたしも試しにたくさんエゾマツの新芽を摘んで、シロップにしてみました。

エゾマツの新芽を袋いっぱいに採ってきたら、それを水洗いし、沸騰したお湯に入れて、葉っぱの色が変わったら、一晩置きます。色が抜けると下の写真のようになります。

次の日、できたシロップをこして葉を取り除き、水1リットルにつき400gくらいの砂糖を入れて溶けるまで煮詰めます。

こうしてシロップ完成。こした葉っぱはコンポストに捨てて、有機物として再利用します。

このシロップを炭酸で割るなどして飲むと、ちょっと酸っぱさがある、爽やかな風味。癖がなくて美味しいです。作ってすぐはえぐみがあるかもしれませんが、冷蔵庫で一晩置くと消えます。

エゾマツ以外の2種類のトウヒ属には、幹が赤みを帯びていて、芽出しが少し遅いアカエゾマツ、そして垂れ下がった葉が特徴のヨーロッパトウヒがあります。

おそらくヨーロッパトウヒは、フィンランドで食されているのと同一種かなと思います。 新芽を食べてみた限りでは、どれも似たような酸っぱい味わいでした。

日本では昔からさまざまな種類のマツやスギの葉が塩漬けなどで食されてきた習慣もありますし、特に毒のあるマツがあるという話は聞かないので、どれでも大丈夫だろうとは考えています。

しかし、モミ属のトドマツは、新芽をかじってみるとトウヒのような酸味ではなく、薬品のような味がしました。

トドマツは独特な香りから精油にされていますし、血糖値を下げる薬効もあるらしいので、有毒ではないと思いますが、シロップには向いていなさそうです。

オニグルミ

道北ではそこらじゅうに生えている木。

羽状複葉なので、葉っぱ一枚が複数の小葉からなっており、秋に枯れるとバッサリまとめて落ちます。そのため、枝が少ないスカスカの樹形で、冬になるとよく目立ちます。

冬芽もまるで猿やアルパカの顔のように見えてわかりやすいです。どの季節でも見分けるのが簡単なので、樹木に興味を持てば、真っ先に覚える木になるでしょう。

8月上旬ごろになると、しっかり膨らんだクルミの房をが目立つようになります。大量に生えているので、郊外の道路脇など、手の届く高さに実がなっているものも非常に多いです。

9月ごろに採取するか、10月ごろ地面に落ちてから拾い集めるかして、網に入れて庭の土に埋めておきます。雪が降る前に掘り起こすと、皮が腐っているので簡単に剥くことができます。

真冬に薪ストーブなどの上に置いて煎れば、殻が割れて中身を食べることができる、とされますが、頑張って炒ってもうまく割れませんでした。それで、ナッツクラッカーを買って、人力で割ることにしました。

ナッツクラッカーにはハサミ型と万力型があり、なんとなく万力型のほうが楽かもしれないと思い、マカデミアナッツ用のナッツクラッカーを買いました。しかし、クルミは先端が尖っているため、ワッシャーなどで台座を作って固定する工夫が必要でした。

縦真っ二つに気持ちよく割れると、中身をほじくり出すのも簡単です。とはいえ、素直にオニグルミ用にデザインされたハサミ型のナッツクラッカーを買ったほうが良かったのだろうな、とやや後悔しています。

それでも、慣れれば次々と割れるようになりました。労力はかかるものの、お菓子作りをするのに、市販のクルミを買う必要はなくなりました。

キハダ

内皮が黄色く染料として使われていたことから名付けられたキハダ。

アイヌはこの実を「シケレペ」と呼び、香辛料として使っていました。様々な薬効もあり、樹皮が生薬として利用されています。

キハダは奇数羽状複葉の葉が対生につく樹木で、わたしの住んでいる地域だと、このような葉の付き方をする木は他にヤチダモとニワトコしかありません。

ヤチダモとニワトコは樹形も冬芽もかなり特徴があるので、どの季節にも見分けやすい木です。それで、キハダもすぐに見分けられるかと思っていましたが、なかなか見つかりませんでした。

地元でネイチャーガイドをしている人に尋ねたら、昔はあったけれど今は見ないとのことでした。

しかし、冬にスノーシューで森を歩き回り、冬芽を観察してみたら、あっちにもこっちにもキハダの若木がありました。キハダの冬芽は馬の蹄鉄のようなわかりやすい形です。

それで、実際にはキハダの木がないわけではなく、背が高くて花や実が見えないため、気づかれていないのではないか、と推測しました。若木の量からすると、かなり多いはずです。

その後、翌年の秋にキノコ狩りをしながら歩いていると、実が落ちているのも発見でき、近くにキハダの木を何本か見つけました。実ははじめのうち緑色で、表面に凹凸があり、さながら極小のミカンのようです。

ほかにも、あまり人が訪れない道路沿いに、キハダの木が群生しているのも見つけたので、たくさん実を採取することができました。注意深く探せば、意外とあるものです。時期は10月半ばでした。

キハダの実は、同じミカン科のサンショウを思わせる、まさに香辛料といった強い風味で、はじめはびっくりするような味です。

しかし、他の香辛料と同じで、何度も食べているうちにやみつきになります。

アイヌの料理ではかぼちゃと一緒に炊くのが美味と言われます。試してみると、かぼちゃの甘ったるさと、キハダの実の苦味と爽快感がうまくマッチして、互いを引き立て合う相乗効果がありました。

キハダの実は乾燥させて保存することができます。乾燥させたほうが、カリカリとした食感が生まれるので、料理に使ったとき、味だけでなく食感にもアクセントを添えられます。

コケモモ/[ツルコケモモ]

高山帯の地面に茂っているツツジ科の小低木コケモモ。別名リンゴンベリーで、IKEAでジャムが売られています。

わたしはムーミンの物語で読んで以来あこがれの果実でしたが、8月に道北の山に登ったとき、自生しているのを見つけ、味見することができました。

定義上は木質化するため「小低木」となっていますが、地面を覆うグラウンドカバーのように生えているため、とても木には見えません。

同じように地面をに覆うように生え、実も食用にされるツツジ科の小低木にはアイヌ民族も利用したガンコウランがありますが、まだ自生のものは見かけたことはありません。

小さな丸い実は8月ごろ赤く熟しますが、裏側を見ると、まだ緑色です。未熟なのかと思っていたら、日の当たるところだけ色づく性質があるそうです。

食べてみるととてもシャリシャリした食感で、種は気になりませんが、非常に酸っぱい味でした。(調べてみると、シャリシャリする場合は、完熟していないらしいです)

この酸っぱさのため、本場の北欧でも生食より、ジュースやジャムなどに加工されるのが一般的なようです。

同じツツジ科のツルコケモモは、クランベリーと呼ばれ、高層湿原に自生しています。わたしが見たのは採取が禁止されている場所なので、食べたことはありません。

ツルコケモモはその名のとおり、ツル状に伸びて広がるのがコケモモとの大きな違いですが、花の形状も全然違います。

コケモモの花は小さなベル型で、ツツジ科の実のなる木(スノキの仲間など)によるある形ですが、ツルコケモモは花びらが大きく反り返るユニークな姿。でも、とても小さな花なので、注意深く探さないと美しさに気づけません。

サルナシ(コクワ)/ミヤママタタビ/マタタビ

ヒグマが大好きなことで知られるサルナシ(コクワ)の実。キウイフルーツの親戚でもあります。

わたしが住んでいる場所には、サルナシ、ミヤママタタビ、マタタビの3種類が自生していて、どれもよく似ているツル性樹木です。

これらのツル性樹木は大木に絡みついて成長します。太いツルが地上から伸び、細かい枝が絡み合っているので、特に冬場に発見しやすいです。

人間では届かない高さの場所に実をならせていることもよくあります。近くの木を見ると、ヒグマがよじのぼった爪痕が見つかったりします。

同じような太いツル性樹木にはヤマブドウがありますが、ツルの色が違います。サルナシなどのツルは、下の写真のように薄い茶色ですが、ヤマブドウはほぼ黒に見えます。

どちらもパリパリと樹皮が裂けてめくれますが、ヤマブドウのほうが激しいです。(「ヤマブドウ」の項目参照)

幹の色合いはツルアジサイに似ていますが、サルナシは幹そのものがツルになって樹木に絡みつくのに対し、ツルアジサイは気根という根を出して樹木に付着しているので、近くで見れば違いは明らかです。(ツルアジサイの項目参照)

7月初頭に咲く花をたよりに、サルナシやマタタビのツルを探すこともできます。ただし、雌雄異株なので、実は雌株(両性株)にしかつきません。花の中心部に雌しべがあるかどうか見れば、雄花か雌花(両性花)かは判別できます。

サルナシ、マタタビ、ミヤママタタビはどれも似ていますが、葉の雰囲気が異なっていて、上の写真のようにくしゃくしゃと波打っているのはサルナシだけです。

ミヤママタタビは、冬芽も実の形もサルナシとよく似ていますが、下の写真のように、葉がところどころ白や紅になります。

マタタビもやはり葉が白くなりますが、ミヤママタタビのような紅色は入りません。次の写真のように全体を見て、白い葉があるもの、赤みを帯びた葉がない場合は、マタタビかもしれません。

冬芽の形も違っていて、サルナシとミヤママタタビは、下の写真のように、葉痕(葉のついていた痕)はありますが、芽は埋まって見えません(隠芽)。この2種類の冬芽はよく似ていますが、ミヤママタタビのほうは枝が赤銅色であることから区別できます。

一方マタタビは、葉痕は同じですが、芽が見えています(半隠芽)。上下の写真を比較すれば、サルナシ・ミヤママタタビの隠芽と、マタタビの半隠芽の違いが一目瞭然です。

このようにして、花や冬芽をたよりに木の場所を覚えておけば、9月ごろの美味しい実がなる時期に、効率よく採りにくることができます。手の届く高さに実をならせてくれるサルナシやミヤママタタビの木は貴重です。

サルナシ、ミヤママタタビ、マタタビは、いずれも小型のキウイフルーツのような実をつけます。次の写真はサルナシの実です。

大きさはミニトマトくらいですが、切ってみると中身はキウイです。

サルナシとミヤママタタビは、丸みを帯びた形の実ですが、マタタビだけは、下の写真のように細長い傾向があります。

サルナシ、ミヤママタタビ、マタタビは、どれも実を食べることができますが、一番美味なのはコクワだとされています。ミヤママタタビも甘酸っぱくて美味です。しかし、マタタビは辛くて生食に向きません。

こうして比較すると分かるように、名前に反してミヤママタタビは、マタタビよりサルナシのほうに似ています。ネコもマタタビには反応しますが、ミヤママタタビには反応しないようです。

いずれも手でつまんでみて、柔らかければ食べごろで、生で食べることもできますし、ネット上のレシピを参考にすれば、甘酸っぱいサルナシのジャムも作れます。

あまり知られていませんが、サルナシ、マタタビ、ミヤママタタビは、いずれも若葉と若い茎を食べることができます。

時期は5月中旬~下旬ごろです。ウドと同じ時期なので、ウド採りのついでに採取して天ぷらにするのがお勧めです。

サルナシの若葉は、若葉の時から葉柄が赤いという特徴で容易に見分けられます。

マタタビの若葉は、葉柄が白っぽいことでサルナシと区別できます。葉先が急に鋭くなっているのも特徴の1つです。ミヤママタタビも似ていますが、葉の基部がわずかにハート型のようにくぼむことで区別できます。

ミヤママタタビの芽は、葉に赤いふちどりがあり、観葉植物のように見えます。前述のとおり、葉の基部がわずかにハート型にくぼみます。赤銅色のツルのおかげで見分けやすいです。

マタタビとやや似ているのが、同じツル性樹木のツルウメモドキです。次の写真はツルウメモドキの若葉ですが、葉先が急にとがるという特徴がありません。ツルウメモドキの若葉を食べるという情報はないので、避けるのが無難でしょう。

サルナシ、マタタビ、ミヤママタタビの若葉はお浸しや天ぷらにできると図鑑にありましたが、わたしは天ぷらにしてみました。

サルナシは特に味はなく、単に食べることのできる葉というだけの印象です。

マタタビは独特の癖があり、山菜として食べてみる価値があります。

ミヤママタタビは食べたことがありませんが、食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、「マタタビより味がよく、食べやすい」とのことで、癖がマイルドなのかもしれません。

シラカバ

説明の必要がないほど著名な白い樹皮の木シラカバ。

実はダケカンバやウダイカンバといった近縁種も複数あり、葉っぱの形や実の付き方で見分けられますが、ほとんど同じと考えて差し支えありません。

有名なシラカバも、複数の方法で「味わう」ことができます。

1つ目の利用方法は樹液。友人が自分の山を所有していて、シラカバ林もあったので挑戦してみました。のちに町有林や国有林でも許可をもらえました。シラカバは商売にならない「雑木」なので誰も気にしないとのことでした。

春の雪解けのころ(4月初頭あたり)に森に出かけ、シラカバの樹皮にリングオーガーで直径1cmくらいの穴を開けます。この時、心持ち斜め下向きに傾斜をつけて穴を開けたほうがスムーズに樹液が流れます。

穴を開ける際に木の保護のためにアルコール消毒をしたほうがいいという人もいます。

次に、ホームセンターで買ってきた、ほぼ同サイズのホース連結器を差し込み、ホースをつないで、ポリタンクの中に入れます。

虫やゴミが入らないように、タンクの開口部をビニールなどで覆います。(上の写真ではタンク全体を覆っていますが、開口部を覆えたら十分です)

最も樹液が採れるのは、わたしの地域では4月の上旬です。暖かくなってくると発酵が進むので、ポリタンクを仕掛けたら必ず翌日には回収し、採取した樹液をすぐ冷蔵・冷凍保存するのが望ましいです。

全盛期は、1本の木から1晩で5~10リットルもの樹液が採れるので、個人で楽しむ目的なら、シラカバが1本あれば十分すぎるほどです。

樹液はほんのりと甘味がありますが、ほとんど水と変わらないので期待しすぎるとがっかりします。でも、コーヒーを淹れるときに使うと、なぜか甘みが引き立ち、苦くなくなります。

樹液を採取し終えたシラカバは、同じシラカバの枝などで穴に蓋をしておけば、しばらく経てば傷が癒えて固まっています。

2つ目の利用方法はシラカバ茶。

5月始め、新芽が出たら若葉を摘みます。低い枝があるシラカバ林を発見できれば、たくさん採取できます。

採取した若葉は、乾燥させれば茶葉として利用できます。お茶を入れてみると、少し苦味がありますが、嫌な苦さではなく爽やかな苦さです。単独で飲んでもいいですし、他のハーブとブレンドしてもよく合います。

調べてみると、様々なところでシラカバ茶が販売されていて、抗酸化作用や花粉症予防などの効果が謳われています。買うと高いですが、近所の森から採取できればとても手頃で美味しいお茶です。

タラノキ

山菜の王者とも言われるタラノキ。

5月半ばごろに出る新芽をもいで、天ぷらなどにして食べると、もっちりした食感と風味が抜群です。

コシアブラ、ハリギリ、タカノツメ、ウドなどと同じウコギ科で、いずれも食用になります。

森の中や林道脇などに若木が乱立していて、手の届く高さであれば、採取することができます。

若木はたいてい枝がなく、地面に刺さった一本の杖のような形をしています。見通しのいい冬にスノーシューで森歩きをすると発見しやすいので、場所を覚えておいて翌春に採りに行くことができます。

類似した見た目の木として、同じウコギ科のハリギリがあります。ハリギリも若木は枝がなく、杖のように一本立ちしていますが、タラノキよりトゲが鋭いことで区別できます。先端についている冬芽の形や色も異なります。

ハリギリの芽も同じように食べることができ、アク抜きすればタラノキの芽と同等の味と食感です。ハリギリのほうが数が多く、採る人もめったにいないため、たくさん味わいたいならタラノキよりハリギリ狙いがおすすめです。

ちなみに、同じように一本立ちして、先端から芽が出ているのに、トゲのない滑らかな肌の木を見つけることがあるかもしれません。

地域によっては同じウコギ科のコシアブラかもしれませんが、わたしの住んでいるところではまずオニグルミです。食用になると書いている人もいましたが、わたしは試したことがありません。

下の写真のように、オニグルミ特有の動物の顔のような葉痕があるので見分けは簡単です。

ほかにも触るとかぶれるヤマウルシの可能性もあるので注意が必要とされていますが、わたしの地域では見たことがありません。

タラノキの芽を採取するときは、15cmくらいに伸びたものを根元からもぎ取ります。幹を折らないよう注意し、芽にもトゲがあるので手袋もつけておくといいです。

最初の芽をもぎ取っても、脇から二番芽が出てくるので、一度採取するだけなら、木が死んでしまうことはありません。しかし、誰か別の人が二番芽を採ってしまうとまずいので、できるだけ自分以外の人が採らない場所で採取すべきです。

タラノキの葉は樹木の葉としては珍しい2~3回羽状複葉で、小さな芽が巨大に枝分かれした葉に成長します。そして秋にはその葉がまるごとバッサリ落ちます。冬季にはほぼ杖のような姿になってしまうのはそのためです。

タラノキの芽ひとつひとつには相当なエネルギーが込められていることを忘れず、乱獲しないよう注意して、感謝して味わいたいと感じます。

チョウセンゴミシ

夏には白い小さな花を咲かせ、秋には真っ赤な実をならせるツル性樹木。自生しているツル植物の種類は多くないので、見分けるのは難しくありませんが、葉や花は地味で目立ちません。

8月ごろに実がなり始めますが、真っ赤に熟するのは9月末から10月ごろの秋です。キノコ狩りをしていると、真っ赤な実がひときわ目を引きます。

この時期には、マムシグサ(コウライテンナンショウ)のような毒草も真っ赤な実をつけますが、ツル性ではなく、地面から伸びて穂のような実をつけるので全然違います。

ほかには、ナナカマド、ニワトコ、ミヤマガマズミなど、いくつかの樹木の実も真っ赤ですが、いずれもツル性ではありません。わたしの住んでいるところでは、ツル性樹木で真っ赤な実をつけるのは、チョウセンゴミシだけです。

チョウセンゴミシの実は、下の写真のように大きさにばらつきがあることが多いです。(左がチョウセンゴミシ、右は折れて下を向いた有毒植物のマムシグサ)

チョウセンゴミシはそのまま生でも食べることができます。

「五味子」の名は、採取時期や場所によって味にばらつきがあることからきているようですが、わたしはいつ食べても、アスコルビン酸をなめているかのように酸っぱいことしかわかりません。

漢方の生薬としても使われていて、慢性疲労症候群の人にも時おり処方される人参養栄湯に含まれているなど、わたしも過去に知らず知らずお世話になっていた時期があるようです。

お茶やお酒にすることもでき、わたしはもっぱら乾燥させて五味子茶として利用しています。ほのかに赤みを帯びたお茶はいかにもビタミンCが豊富そうな酸っぱさで、疲労回復に役立ちます。詳しくはアイヌ民族博物館の資料も参照。

チョウセンゴヨウ/ハイマツ

マツの木は針のような葉が束になって生えていますが、何本がセットになっているかは種類によって違います。

北海道に多いエゾマツなどは1本、本州に多いアカマツ、クロマツなどは2本、日本では珍しいリギダマツなどは3本、そしてゴヨウマツの仲間は5本です。

この葉が5本のマツのうち、チョウセンゴヨウという種類は、よく知られたマツの実として食用にされています。北海道でも、公園などに植栽されているので、松ぼっくりが落ちていたら、食べてみることも可能です。

ほかに5針葉のマツは、キタゴヨウ、ストローブマツなどが植えられていて、おそらく実は食べることができるはずです。

さらに、高山帯にはハイマツという5針葉のマツがあり、名前のとおり地面に近い場所を這うように茂るため、実を簡単にもぎ取ることができます。

ハイマツは、実の粒が大きく、松ヤニも少ないので、食べるにはうってつけです。でも、一粒ずつ殻を割らなければならないので、たくさん食べるようなものではありません

高山帯のホシガラス、ヒグマ、リスなどの生き物の貴重な食糧であり、あまり人間が食べてしまうのも悪いので、少し味見するくらいがちょうどいいでしょう。

ツルアジサイ/[イワガラミ]

森歩きを始めて驚いたのは、カラマツなどの樹木に太いツルが巻き付いて、アジサイの花が咲いていることでした。

その名もツルアジサイといい、ガクアジサイに似た花を咲かせます。

普通のアジサイの葉は有毒ですが、ツルアジサイの場合は若芽や若葉を摘んで食べることができます。5月初頭ごろ、新緑の時期に生え出てくるので、すぐ見つかります。

特にこれといって美味しくもまずくもありませんが、他の山菜のついでに採取して、バリエーションを増やすことができます。

ツルアジサイは、ツルから気根を出して幹に貼りつくタイプのツル性樹木です。ツルをよく見れば、根っこのようなもので幹に付着しています。

非常によく似たイワガラミは、萼片(花びらのような部分)が4弁ではなく1弁しかないことで区別できます。それ以外はツルアジサイとほぼ同じなので、若葉も同様に食べられます。

同じく気根で樹木に貼りつくツル性樹木としてはツタウルシがあり、触れるとかぶれるので危険です。

しかし、ツルアジサイは対生の丸みのある葉が2枚向き合って出てくるのに対し、ツタウルシは3枚セットの葉が互い違いにつきます。

わたしはツタウルシの新芽を見たことがありませんか、ネットで見る限り色も形も違うので間違わないと思います。

ほかに、ツル性樹木には、サルナシ、マタタビ、ミヤママタタビ、ヤマブドウなどがありますが、気根はないのですぐ見分けられます。

ハマナス

原種のバラの一つであるハマナスは、北海道の在来種ですが、基本的には名前のとおり海岸沿いに生える植物のようです。わたしの住んでいる内陸部では、植栽されたものはよく見かけますが、自生しているのは見つけたことがありません。

ハマナスの実はバラの実(ローズヒップ)の一種なので、ローズヒップティーにしたりジャムに加工したりできます。友人の家にハマナスがあったので、実を摘ませてもらいました。

このトマトのような平べったい形の実がハマナスの特徴です。見た目はトマトのようでも、触ってみると硬く張りがあり、ジューシーな果肉ではありません。

同じく北海道に自生する野生のバラには、よく似ているカラフトイバラやオオタカネバラがあります。いずれもよく似ていますが、葉の表面のツヤや、複葉の枚数、茎のトゲの付き方、実の形などで見分けることができます。

カラフトイバラは別名ヤマハマナスとも呼ばれ、海辺に生えるハマナスと違って山地に生えるため、郊外の道路脇に生えているのを見つけたことがあります。

ハマナスのローズヒップは、上の写真のように、トマトのような横に平べったい楕円形をしています。一方、カラフトイバラのローズヒップは下の写真のような球形です。

オオタカネバラは見たことがありませんが、面白いことに、縦に平べったい楕円形をしていて、三者三様です。

ハマナスの花びらはジャムにすることができます。必要なのは花びらだけなので、花全体を採らないよう注意します。咲き始めた花の花びらを軽く引っ張るとスポッと抜けます。手袋をはめ、枝のトゲに注意して集めます。

花びらのジャムの作り方はネット上のレシピを参考にしました。小さな虫がついていることが多いので、よく洗う必要があります。バラらしいフローラルな香りの引き立ったジャムをお手軽に作れます。

また、ハマナスの実(ローズヒップ)もジャムにすることもできます。ただ、加工するためには実を一つ一つ包丁で切って中身の種をほじくり出す必要があり、とても大変でした。

果実というと柔らかいのをイメージしますが、ハマナスの実は見た目に反して硬く弾力があります。そのため煮たり濾したりを繰り返さなければなりません。詳しい作り方はネット上でレシピがたくさんあるので割愛。

甘いながらに酸味の効いたメリハリある味に仕上がります。香りが独特で、人によって好みが分かれるかもしれません。また採りたいと思いつつ、作業の手間を考えると及び腰になります。ジャムは花びらのほうが良いでしょう。

ハマナスの実ロは、むしろローズヒップティーにするほうが王道かもしれません。わたしは酸っぱいのはあまり好みではないですが、とても酸っぱく刺激的なのが飲みたい人にはもってこいです。

ハリエンジュ(ニセアカシア)

ハリエンジュは北アメリカ原産のマメ科の樹木ですが、街路樹や砂防目的で植えられた結果、野生化して増え広がりました。

わたしが住んでいる場所では、さすがに森の中には生えていませんが、公園をはじめ、道路沿い、植林された林などでしばしば見かけます。

名前は、同じマメ科のエンジュやイヌエンジュに似ていて、枝に鋭いハリ(とげ)があることに由来します。

別名ニセアカシアは、アカシアに似ているという意味の学名から来ています。 6月半ばごろ、美しい白い房状の花をたくさんつけるので、よく目立ちます。

花以外には毒があるとも言われますが、「どの植物種にもあり得る性質を強調しているだけ」との説もあります。

ハリエンジュの花は、天ぷら、汁の実、おひたし、ホワイトリカー漬け、シロップなど、さまざまな食べ方ができます。わたしの場合はシロップを作りました。

収穫する時は、花の房ごとちぎります。それを水で洗ってから、茎の部分を手で持って、下に指をずらすようにすれば、花だけを簡単にしごき取ることができます。花を取った茎はコンポストへ。

花を摘んで下処理していると、まるでジャスミンのような強い香りが漂いはじめます。かなり個性の強い香りです。

シロップの作り方は、ニセアカシアのコーディアル作っている方がいたので、それを参考にできます。

最初、水に花を入れて煮込んでみたら、香りがぜんぶ飛んでしまって無味無臭に近くなってしまいました。

そうではなく、先にお湯を沸騰させておいて、そこにハリエンジュの花を入れて2晩ほど置くと、色がほんのりと赤みがかって、香りもしっかり抽出されました。最後にレモン水を垂らすとより鮮やかになります。

一方、別の年には、まだつぼみ状態のハリエンジュの花を採ってきたことがあります。その場合は、単に沸騰したお湯に浸けるだけでは香りがあまりせず、ほんの2~3分ほど煮ると香りが出てきました。

すでに咲いている花を採った場合は沸騰したお湯に浸けるだけ、つぼみを採ってきた場合は軽く煮るといいのかもしれません。花が咲いた後だと虫が多くなるので、つぼみを採るほうがお勧めです。

シロップの香りや味は、意外にも桃のようにフルーティーでした。炭酸で割るなどして飲むと、非常に良い香りがして美味です。

作ってすぐの段階では青臭さがありましたが、冷蔵庫で一晩置くと、青臭さが消えて飲みやすくなりました。

マユミ/ツリバナ

弓を作る材料に使われたとされるマユミは、ニシキギ科ニシキギ属に属する落葉低木。

この仲間の木は、道北には、マユミ、コマユミ、ニシキギ、ツリバナの4種が自生または植栽されています。

花は総じて小さく色も地味です。マユミ、コマユミ、ニシキギはいずれも4弁の黄緑色の花でそっくりです。ツリバナのみ唯一5弁で、少し趣の異なる風情ある花をつけます。下の写真はマユミの花です。

どの種類も、花よりも色とりどりの殻をつけた実のほうが印象的で、秋に種類を見分けるのが確実です。特にマユミはピンクの殻なので非常に目立ちます。ただし、いずれも内部の仮種皮に毒があるので食用にできません。

一方、新芽は食用にできます。食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダによると、「味に優劣はあるが、ニシキギ属のすべての若芽を、オオツリバナのように食べられる」とのこと。

味に優劣があるとの記述どおり、どれを食べても美味しいというわけではないようです。

一度、間違えてコマユミの葉を食べたことがありますが、パサパサして不味く感じました。ツリバナは食べたことがないですが、山菜図鑑には載っているので、そこそこ美味しいのかもしれません。

一方、改訂新版 北海道山菜図鑑によれば、マユミの若葉は「コクのある味は木の芽の中で最高とする人もいるほど。とくに菜飯は、ウコギご飯と双璧ともいわれる」とまで絶賛されています。(p190)

マユミの芽は対生(左右対称に向かい合って付く)のが特徴です。葉痕(去年の葉がついていた痕跡)が、整然とした半円形なのも、見分ける手がかりになります。

とはいえ、実の時期以外はあまり目立つ特徴がないので、秋のピンクの実をつけている時に木を特定し、場所をはっきり覚えておくのが最善です。

4月下旬に、下の写真のように芽吹きます。

そして、5月半ばごろに葉を開いて摘めるようになります。完全に葉が開くのを待っていると、すぐ虫食い状態になるので、写真くらいの段階で摘むのがいいかもしれません。

採った若芽は、水洗いして包丁で刻み、塩をふり、しんなりとしたところで布巾に包んで水切りします。それを炊きあがったご飯に混ぜ込んで、菜飯にしていただきます。

近所に野生のマユミが少ないので、試食程度にしか味見できていませんが、普通にご飯が進む美味しさでした。

ハリギリ

タラノキ、コシアブラ、ウドと同じウコギ科の山菜。「タラノキ」の項でも解説しています。

タラノキは成長しても高さ4mほど、ウドはそもそも木ではなく毎年枯れる草ですが、ハリギリは高さ10~20mにもなる大型の樹木です。

しかし、若木の段階ではタラノキとよく似ていて、森の中に地面に刺さったステッキのように生えています。てっぺんに手が届く高さであれば、タラノキと同様に芽を採取できます。

タラノキよりトゲが鋭いですが、トゲとトゲの間に隙間があるので指で幹をつかみやすく、てっぺんの芽そのものにはトゲがないので、採取も楽です。

採取する際は、手で芽をつかんで、ひねりとるようにしてもぎ取ります。タラノキと同様、採るのが一回だけなら、二番芽が出てくるので木が死ぬことはありません。

大型の木に成長して種子をばらまくからか、タラノキよりも若木がずっと多いように感じます。脇芽もかなり出やすいので、てっぺんに手が届かない場合でも、脇芽を採取して食べることが可能です。 下の写真は左がハリギリ、右がタラノキです。

タラノキは他の山菜採りの人にも狙われやすいですが、ハリギリはノーマークのことが多いので、好きなだけ採れることが多いです。本数も多いので、少々時期がずれても採り頃の芽を探しやすい利点もあります。

ハリギリは別名「アクダラ」とも呼ばれ、タラの芽に似ていながら、少しアクが強い特徴があります。しっかりアク抜きすれば、タラの芽と同等の食感や風味を楽しるので、タラの芽にこだわる必要は全然ありません。

あらかじめ重曹を入れたお湯で茹で、水にさらせばアク抜きができます。天ぷらほか、ホイル焼き、バター炒めなど、さまざまな料理に使えます。

ハリギリは成長すると大木になり、巨大なカエデのような形の葉をつけます。しかしカエデの仲間は対生なのに対し、ハリギリは互生なので区別できます。秋には黄葉が美しいです。

ホオノキ/コブシ

ヒトリシズカに続いて、これもアイヌ民族がお茶にしていたことで知られている植物。

ホオノキは背の高い樹木ですが、高い場所に赤い実がなり、その殻を乾燥させてお茶にします。

6月上旬に巨大な白い花を咲かせますが、高い位置に咲かせるので、意識して探さないと、見逃してしまうかもしれません。

この花の中央部が熟して赤い実になり、10月ごろに採取できます。高い場所に実がなることが多いため、高枝切りバサミなどがないと採取は困難です。

内部にたくさん実が詰まっていますが、人間が食べることはできません。

アイヌ民族は、地面に落ちて、動物たちが実を食べた後のホオノキの殻を利用しました。 高枝切りバサミがなくても、この方法に倣うこともできますが、落ちた後で、比較的保存状態のよいホオノキの実を見つけるのはなかなか難しいです。

ホオノキの実を運良く採取できたら、しっかり乾燥させ、その後アイヌ民族博物館の資料のように、殻ごと煮出してお茶にします。

内部に赤い実が詰まっていますが、殻だけでも十分香りが抽出できます。わたしは乾燥させた殻をバラバラに分解して、ビンに入れて保存しました。

お茶を飲みたいときに、少量の殻のかけらにお湯を注ぐと、不思議なエキゾチックな香りが漂います。日本のものとは思えない異国情緒のあるスパイシーな香りです。

味はほとんどありませんが、この香りが一級品で、何度も飲みたくなるすばらしいお茶です。

ホオノキの樹皮は「厚朴」と呼ばれ、わたしも自立神経失調症に伴いがちな のどの違和感(梅核気)があったころに、半夏厚朴湯を処方されたことがありました。

ちなみに、ホオノキはモクレン科モクレン属で、モクレンやコブシの近縁種です。北海道にはコブシも自生していて、コブシの花芽をお茶にすると、ホオノキのお茶の香りによく似ています。

コブシは、枝を折っただけでも、独特のスパイシーな香りがします。アイヌはコブシの樹皮も煎じて飲んだそうですが、試してみると、香りはすばらしいものの、味が苦すぎて飲めませんでした。樹皮は有毒とする記述もあります。

その点、花芽を使えば、すばらしい香りはそのままに、味は苦くなく、ホオノキの実に匹敵するお茶を淹れることができます。下の写真のふさふさしたのがコブシの花芽です。

冬芽なので冬じゅうずっとついていますが、春になると膨らんで咲きます。わたしは、咲く直前くらいのものを数個手に入れて、ハーブティーにしました。

しかし、コブシの場合もホオノキと同じ問題がつきまといます。花を咲かせるのは通常かなり高い枝なので、採取が容易ではありません。

森ではなく、個人宅の庭に生えているようなコブシがあれば、背が高くならないので、花芽を採るのも楽です。せっかくの花が少し減りますが。

コブシはホオノキの小型版のような実をつけますが、同じように利用できるのかは不明。情報がないことからすると、樹皮と同じように苦くなってしまうのかもしれません。

ヤマグワ

クワの実はマルベリーとも呼ばれ、生で食べるほか、ジャム、シロップなどさまざまな用途に使われています。また若葉をお茶にして、桑の葉茶を淹れることもできます。

5月に葉が出ると同時につぼみを出します。

目立たない花のため見逃しがちですが、写真は5月下旬に撮った雄花です。

 

雌花もすぐに散ってしまい、アメーバのような奇妙な形になり、実へと成長していきます。

ヤマグワは雌雄異株なので、実がなるのは雌株だけです。実が熟すのは7月中旬~下旬の真夏です。背丈が低めなので、手の届く高さに実がなる木も多いです。

食べられるのは黒く熟した実ですが、段階的に熟するので、数週間にわたって実を採り続けることができます。

実をたくさん摘めば、ジャム、シロップ、果実酒などにできます。わたしも、友人が持っている山に、枝の低いヤマグワの木が複数あり、たわわに実をつけたので、試してみました。

実がなるのは真夏の暑い時期ですが、虫がとても多いので、全身を覆う服装が推奨されます。道北の場合、夏でも夕方になれば20℃を切って涼しい日があるので、良いタイミングを見計らって採るといいかもしれません。

注意点として、ヤマグワの実はヒグマも食べるので、森の中で一心不乱に採るのは危険です。複数人で行動し、音を鳴らし続ける、朝や暗くなってからは避け、明るい時間帯に採るのがいいでしょう。

とても潰れやすい繊細な実なので、指先は露出しているほうが望ましいです。指先も覆われている手袋だと落としたり潰したりしやすいです。

かなり小さな実なので、たくさん集めるのも根気が要ります。でも、味はとても素晴らしく、野生のベリーの中でも甘みが強いです。

一度にたくさん採れない場合は冷凍保存しておいて、まとまった量になってからジャムにしてもいいでしょう。

とても潰れやすいので、水洗いは手早くするだけにとどめます。ジャムの作り方は詳しいレシピがたくさんあるので省略します。

レシピでは、果柄(茎)を取り除くとされているのが普通ですが、非常に面倒です。種でプチプチしている食感のジャムなので、個人的には、取り除かなくても気になりませんでした。

実のない時期のヤマグワの葉はハート型に近く、シナノキやオオバボダイジュと紛らわしいです。同じクワ科のイチジクの葉のように大きな切れ込みが入る場合もあり、必ずしも切れ込みの入った葉があるとは限りません。

冬はジグザグの枝にタケノコのような見た目の小さな冬芽をつけるので、慣れると見分けやすくなります。

ハルニレに似ていますが、ハルニレの冬芽は、葉痕に維管束痕の穴が3つあり、顔のように見えるので区別できます。枝も毛深いことが多いです。

下の写真は一枚目がヤマグワ、二枚目がハルニレの冬芽です。

いずれにせよ、たとえヤマグワだと分かっても、雌株でなければ実はなりません。葉や冬芽で見分けるよりも、実がなっている時期に見つけて場所を覚えておくのがいいでしょう。

ヤマブドウ

さまざまな樹木に太い黒いツルを巻きつけているツル性樹木。10月ごろ熟した実を食べることができます。(写真は12月まで残ったままだった実)

太く黒いツルが目印で、冬にスノーシューで森を歩いていると見つけやすいです。パリパリと剥がれた樹皮は、編みかご作りなどに利用されます。

幹の色や剥がれ方だけでも、他のツル性樹木との区別は簡単ですが、巻きひげを出して絡みつくという特徴も見分けるポイントになります。

積極的にブドウを探したことはなく、秋に森の中でたまたまブドウがなっているのを見つけたら食べてみる程度です。霜が降りてから食べたほうが甘くなります。

実のほかに、若い葉や若いツルも食用になるそうです。5月末に森を歩くと、地面から今年芽生えたと思われる小さな若葉がよく生えています。

試しに、この小さな葉を何枚か摘んで、天ぷらにして食べてみました。しかし、味も食感も特筆すべきことは何もなく、単に食べることができる葉というだけに思えました。

食べてみた海浜植物まとめ(五十音順)

続いて、わたしがオホーツク海の砂浜で見た食べられる海浜植物について。砂浜の植物は、近年、環境破壊の影響を強く受けて、自生地が減少しているので、あまり積極的に採らないほうがいいでしょう。

オカヒジキ

普通にスーパーでも売られている野菜のオカヒジキ。砂浜を歩けば、点々と自生している様子を見ることができます。

砂浜を這うように茎を伸ばしていて、葉っぱはヒジキのような形で独特です。存在を知ってさえいれば、初見でも簡単に見分けられる植物だと思います。

採取する場合は、誤って根こそぎ引き抜いてしまわないように気をつけ、葉先の柔らかい部分を間引くように摘むとよいようです。

8月ごろに花を咲かせるので、食べるならそれより前、できれば春先の若い芽がよいかもしれません。成長しすぎると、先端がトゲのように硬くなってしまうので、取り除く必要があります。

わたしが食べてみたのは7月でしたが、市販のオカヒジキの食感が「シャキシャキ」という感じなのに対し、自生のオカヒジキは「プチプチ」というウミブドウのような食感に思えました。

オニハマダイコン

砂浜に流れ着いたアブラナ科の外来種。多肉植物のエケベリアのような葉っぱをしていますが、名前のとおりダイコンの仲間です。

外来種なので、駆除についでに食べている人もいるようです。在来種と違って、気軽に採取できます。

根っこごと引っこ抜くのは簡単で、ダイコンと呼ぶには細い根があります。しかしダイコンのような香りはあります。

食用になるのは葉の部分です。花期は北海道北部では7月から8月ごろなので、花が咲く前に採取します。

茹でて食べてみると、とても柔らかくて食べやすい食感です。しかし味が苦いため、苦味を除く方法がわからなければ常食には堪えません。

学名はCakile edentula、英名はSea rocketなので、海外の文献を頑張って調べれば、美味しく食べる方法が見つかるかもしれません。

ハマベンケイソウ(オイスターリーフ)

砂浜にエメラルドグリーンの多肉質の葉をこんもりと茂らせる海浜植物。7月から8月ごろの真夏には、エメラルドグリーンの小さな釣り鐘のような美しい花をつけます。

まるで高山植物のような可愛らしさですが、実際にエゾルリソウという近縁の高山植物があります。かたや高山、かたや砂浜というベクトルの異なる険しい僻地に住んでいるのは、なんとも不思議です。

この植物の最大の特徴は、葉っぱがなんと生牡蠣の味がすること。そのため海外ではオイスターリーフと呼ばれています。

わたしも葉っぱをちぎって食べてみましたが、強烈な生牡蠣の味や潮の香りが口の中に広がりました。よほど牡蠣が好きな人でもなければ、これ単独で美味しいとは思えないかもしれません。

しかし、海外では高級食材扱いて、国内でもオイスターリーフを栽培して独創的な料理で売り出している例もあるようです。料理の腕に自信がある人にとって魅力的な食材なのでしょう。

[ハマボウフウ]

食用になる海浜植物としては非常に有名なハマボウフウ。なまじ名高いせいで各地で数を減らしており、食べるなら栽培物が良いかもしれません。

わたしが見つけたのは、花盛りの夏の時期でした。普段よく見かけるエゾニュウ、エゾノヨロイグサなどの2mを超えの大型セリ科の花とそっくりですが、丈の低さが段違いで、膝丈程度しかありません。

食用になるのは、5月から6月の芽出しのころです。同じく海岸に生えるセリ科であるマルバトウキの芽と区別する必要があります。どちらも成長した後の姿しか見たことがないので詳しくはわかりません。

利用できそうで利用できない植物

海外でハーブなどに使われている植物の近縁種たち。親戚だから同じように使えるのかな、と思いきや、情報が見つかりませんでした。

たとえば、セイヨウニワトコの花は良い香りがするため、エルダーフラワーとして重宝されますが、近縁種のエゾニワトコの花は特に香りがないため、用いられません。

それと同じく、以下の植物も有用な近縁種に似ているとはいえ、同じように利用することはできないようです。

■シナノキ/オオバボダイジュ
夏に良い香りの花を咲かせるシナノキと、それを大型化したかのようなオオバボダイジュ。

夏は葉や苞の大きさで区別でき、冬は冬芽の毛で区別できます。大きくて毛があるのがオオバボダイジュです。

近縁種のセイヨウボダイジュは、葉や花が有名なリンデンと呼ばれるハーブとして利用されています。国内ではハチミツの採取に利用されていますが、葉や花を使っても大丈夫なのかは不明。

アイヌも内皮の繊維を利用したという記述しか見つかりませんでした。

堀田先生のブログによると、オオバボダイジュやシナノキも関係なくハーブとして利用されているようにも読めますが、他には情報がありません。

■トウバナ/クルマバナ/ツルニガクサ
真夏の7月ごろに森の中で見かけるシソ科特有の十字対生の花いろいろ。

いかにもハーブらしい見た目をしているので、利用できるのか調べてみました。

トウバナ属の花のうちトウバナそのものは北海道にありませんが、イヌトウバナ、ミヤマトウバナ、クルマバナ、ミヤマクルマバナなどが自生しています。 それぞれ違いが非常に見分けにくいです。

ハーブとして栽培されるカラミンサの近縁のようですが、特にハーブらしい香りもなく、ハーブとして利用できる旨の記述もありません。

試しに採ってみた人はちらほらいるようですが、具体的な利用報告は見つかりませんでした。

わたしも乾燥させてお茶にしてみましたが、特に香りも味も感じませんでした。

また、シソ科ニガクサ属のツルニガクサも、夏に森の中に咲くシソ科として見かけます。これも、ニガクサ属の近縁の植物が海外でハーブとして使われているそうですが、在来種はリ利用例がなさそうです。

イラクサやオドリコソウのように、効能がはっきりしているならまだしも、調べてもよくわからない以上、わざわざ採るようなものではなさそうです。

■ルイヨウショウマ/サラシナショウマ
まぎらわしい〇〇ショウマのうち、毒草が多いキンポウゲ科に属する2種。ほかの〇〇ショウマは、ヤマブキショウマ、トリアシショウマ共に山菜として普通に食べられます。

サラシナショウマは〇〇ショウマの中では一番遅く、8月半ば以降の暑い時期に咲きます。

7月ごろに生えてくる若芽が、その名のとおり、さらし菜として食用にされてました。茹でた後、長時間水にさらさなければならないようで、積極的に食べるようなものではないと感じます。

しかし、根茎が生薬「升麻」として利用されており、慢性疲労症候群に効果があるとされる漢方の補中益気湯にも含まれているため、実はわたしが過去にお世話になっていた植物です。

ルイヨウショウマは、サラシナショウマの葉に似ている(類葉)ことから名付けられました。サラシナショウマとは逆に〇〇ショウマのうち最も早く咲き、5月末には開花しています。

ヤマブキショウマの項に載せた写真のように若芽の時期が他の〇〇ショウマとかぶりますが、食用になると記述は見かけません。

ネイティブアメリカンは、同じキンポウゲ科のアメリカショウマの根を、ブラックコホシュという薬草として利用していたようです。婦人病などに効能があるとされています。

■ルイヨウボタン
ボタンに似た葉ということで名付けられたメギ科の植物。5月末ごろ、ボタンとは似ても似つかない小さな黄緑色の可愛らしい花を咲かせます。

夏になる実は、最終的に藍色に熟しますが、熟す早さにばらつきがあるのか、その過程がとてもカラフルです。

利用できるとの記述はまったくないのですが、ネイティブアメリカンが、非常によく似た外見のアメリカルイヨウボタンを、ブルーコホシュというハーブとして利用しています。

しかし、近縁だからといって利用できるとは限りませんし、ブルーコホシュには危険な副作用があるとの報告もあるので、花や実を愛でるだけにするのが賢明に思えます。