8/31の日経新聞に、全身に激痛 女性に多い「線維筋痛症」 早期診断が重要という記事が掲載されました。
慢性疲労症候群(CFS)の関連疾患としては、最近、脳脊髄液減少症がニュースで取り上げられるようになりましたが、どれも、まだあまり知られていない病気です。
こうして線維筋痛症に関する具体的な記事が組まれ、スポットライトが当てられたことを嬉しく思います。
この記事では、日経新聞の記事を要約し、線維筋痛症について基本的なことをまとめています。また、痛みを抑える薬リリカについての朝日新聞の記事にも触れています。
全身に激痛 女性に多い「線維筋痛症」 早期診断が重要 :日本経済新聞
記事の要約
全身で耐えられないほどの激しい痛みが続く線維筋痛症。30~40代女性に多いが、原因や発症の仕組みははっきり分かっていない。ただ、痛みの緩和が期待できる薬が保険適用になるなど進歩もみられる。早期の診断と適切な治療で、日常生活を取り戻すまで回復した人もいるという。
という序文に始まり、線維筋痛症の基礎的な知識についてわかりやすく説明されています。
線維筋痛症とは
全身に強烈な痛みが走り、日常の生活を送れなくなる病気です。患者数は推定で約200万人。約7割が女性と言われています。
線維筋痛症の原因
交通事故のほか、運動時のケガ、手術、出産などが原因になります。さらに、「職場の環境変化、更年期障害、いじめ、親の介護、夫婦仲の悪化などもきっかけになる」と日本線維筋痛症学会理事長の西岡久寿樹氏は指摘しています。
体の痛みを感じ取る脳の部分が過敏になることに加え、体に備わる痛みの感覚を鎮める作用も弱まっていると考えられます。
ところで、個人的には、この記事で紹介されている患者の方の場合は、脳脊髄液減少症に似ている気もします。
「他の病気とはっきり区別するのに現在の診断方法はまだ不十分だと指摘する専門家もいる」と書かれていますが、類似疾患との鑑別が治療の鍵になるかもしれません。
線維筋痛症の症状
痛みが急に全身に広がる場合や、肩甲骨の周辺などから全身へと広がる場合があります。爪を切るだけで激痛が走るケースもあります。
また、痛みのため体がいつも緊張状態になり、交感神経のバランスが崩れます。そのため、めまいや便秘、下痢、耳鳴り、ドライアイ、視力障害、不眠、うつ状態など様々な症状が現れます。
さらに三割の人が関節リウマチを発症したり、痛みで歯を食いしばるため顎関節症を発症したりして、併存疾患を抱えることもあります。中でも、非常に併発が多く、同じ疾患の別の姿ではないかと言われているのが慢性疲労症候群です。
線維筋痛症の診断方法
米国リウマチ学会の基準をもとにしています。原因不明の痛みが全身に3カ月以上続くケースで、首や肩など18カ所の基準となる箇所を、やや強く押し、11カ所以上に痛みがあれば線維筋痛症と診断します。
ニュース記事には、「線維筋痛症の診断に用いる痛みの箇所」という分かりやすい図が掲載されています。
これに加え患者自身が記入する問診票も用いられます。過去1週間で体のどこが痛んだか、痛み以外の全身症状がどれくらいあったかをもとに点数化するものです。これにより「症状に合わせた治療方針も立てやすく」なります。
線維筋痛症の診断については、現在、客観的な検査方法の開発が進められています。
線維筋痛症の治療法
帯状疱疹などの痛みを抑える薬「リリカ」や抗うつ剤「サインバルタ」など、症状に合わせて多種多様な薬が用いられます。西岡先生は、「症状が改善しない難病ではなく、対処できる病気として黎明(れいめい)期を迎えた」と話しています。
リリカについては、副作用に注意を喚起する記事が最近報道されました。服用時には注意したいところです。
線維筋痛症の患者の環境
患者にとって大変なのは、つらい症状に悩まされているのに、体の異常を見つける一般的な検査方法がないことです。人によって症状が異なるケースが多いことが診断を余計に難しくしています。専門家による診療が欠かせません。
線維筋痛症についてよく知らない医者も多いため、多くの診療科を回ったあげく「なんともない」と言われてしまうことも少なくありません。診断まで10年かかった例もあります。
適切な治療ができる体制の整備や、発症メカニズムの解明が望まれています。