喘息や摂食障害に腸内フローラ(腸内細菌叢、マイクロバイオーム)の異常が関わっているというニュースがありました。
子どものぜんそく、腸内細菌の不足に関連か カナダ研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
腸内細菌が不足していると喘息のリスクが上昇
カナダの研究によると、生後数か月間に一部の重要な腸内細菌が不足している子どもは、喘息になるリスクが高いそうです。
喘息は1950年代以降、患者数が急増していて、欧米では最大20%の子どもが発症するまでになっています。しかし発展途上国では増加は見られません。
いわゆる生活スタイルの近代化とともに増えてきた病気であり、抗生物質を使った殺菌などの清潔志向が広まったために、腸内細菌の多様性が失われ、免疫に異常が出ているのではないか、という「衛生仮説」が注目されています。
また腸内細菌の減少は帝王切開とも関連していて、帝王切開で生まれた子どもは、産道を通る時に母親の細菌を受け継ぐことができず、腸内細菌の多様性が損なわれることもわかっています。
記事ではほかに、授乳における粉ミルクの依存も関係しているとされています。ですから、単なる「衛生仮説」の枠を超えた広範囲な規模で、細菌の多様性の減少が引き起こされているといえます。
記事によると、新生児の免疫系の発達の臨界期は生後100日間であり、それまでに多様な腸内細菌を獲得していなかった場合は、免疫系の柔軟性が育まれず、さまざまな物質にアレルギーを示しやすくなるようです。
論文の執筆者のカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のブレット・フィンリー教授は
今回の研究は、われわれが環境を清潔にしすぎているとする衛生仮説の裏付けとなっている。
と述べています。
腸内細菌の減少は摂食障害の中枢症状と関係?
もうひとつの記事では、ノースカロライナ大学の研究によると、摂食障害の一種である拒食症の患者は腸内細菌の多様性が欠けていて、症状の回復とともに腸内細菌も正常化したことが伝えられています。
摂食障害の食生活の乱れが腸内細菌の貧困を生じさせ、それが摂食障害独特の脳の認知の歪みなどを増幅しているのかもしれません。
いずれにしても、腸内細菌などのマイクロバイオームの状態は、さまざまなアレルギーや自己免疫疾患、そして精神神経症状(脳の慢性炎症など)と関連している可能性がありそうです。
治療法としては糞便移植などが有望視されていますが、今のところはまだ研究段階です。
10)にわかに信じ難い「糞便移植」 | 無難に生きる方法論 | 石蔵文信 | 毎日新聞「医療プレミア」
この話題について詳しくは以下の記事をご覧ください。
こちらの本にもわかりやすく書かれています。