パーキンソン病の人は、手の震えや運動機能の悪化のため、食事をするのが難しくなったり、字がうまく書けなくなる小字症になったりしますが、そうした問題を打ち消すハイテク技術が開発されているようです。
モーターによって、手の震えを打ち消すスプーン「LIftware」が、Googleによって今月、日本でも発売され、筋肉刺激によって小字症を改善するペン「ARC pen」は開発中とのことです。
もくじ
パーキンソン病の手の震えはいかに大きな問題か
パーキンソン病の人の悩みがいかに大きなものかを知るには、こちらの記事が役立つと思います。
たった1本のスプーンが、パーキンソン病患者の悩みを伝えてくれる。 | AdGang
イスラエルのテルアビブで実施されたこの取り組みでは、「穴のあいたスプーン」でスープを飲むことによって、パーキンソン病の人が、日常のちょっとしたことにいかに苦労するかが経験できるよう工夫されていました。
手の震えに悩む人は、パーキンソン病以外にも本態性振戦や脳梗塞の患者など、多様な人たちがいて、日常生活のさまざまな部分で、健康な人にはわかりづらい困りごとを抱えています。
手の震えを打ち消すスプーン
そうした背景から、手の震えによる問題を打ち消す技術が開発されていて、昨2014年には、Googleが、パーキンソン病用のスプーンを開発している会社Lift Labsをを買収したというニュースがありました。
Google、“ハイテクなスプーン”開発企業を買収 – ITmedia ニュース
Google創業者のサーゲイ・ブリンは、母親がパーキンソン病であり、自らもパーキンソン病リスクがあることを明らかにしているそうです。このプロジェクトは次世代技術開発を担当するGoogle[x]の1つです。
そして、そのプロジェクトの成果である、手の震えを打ち消すスプーン「Liftware(リフトウェア)」が、この10月に日本でも発売されたというニュースがありました。
スプーンの柄の部分に手の震えを検出するセンサーを内蔵していて、コンピュータ制御のモーターで打ち消す力を加えることで、震えを7割相殺することができるそうです。
震えが4.5cm未満となる、軽度から中等度の震えを抱える患者に適するそうです。
グーグル製スプーン、フランスベッドが日本販売 :日本経済新聞
この製品は、ベッド・マットレスのほか、在宅介護用品なども製造しているフランスベッドからの発売で、価格は1個4万7520円とのこと。
さすがにちょっと高額すぎるようにも思いますが、発売まで漕ぎつけたことだけでも、第一歩として評価されるべきかもしれません。
このスプーンを使用している様子は、こちらの公式PR動画から確認できます。
小字症を改善するペン
それとは別に、パーキンソン病の運動機能の悪化によって字が小さくなってしまう小字症を刺激によって改善するペンも開発されていることが報道されていました。
手の震えに悩むパーキンソン病患者が、文字を書きやすくなるすごいペン | Techable(テッカブル)
こちらはDopa Solutionsによって開発されている「ARC pen」という商品だそうです。小型の高周波振動モーターが筋肉を刺激することで運動機能を改善するといいます。
14人のパーキンソン病患者に対してテストしたところ、86%(12人?)に小字症の改善が見られたとのこと。
その様子はDopa Solutionsのサイトに載せられているこちらの動画で確認できます。
商品化はまだ先のようですが、こうした技術の開発が活気づいて、病気の人のQOLが向上すると嬉しいですね。
先日、パーキンソン病の震えのために絵が描けなくなった似顔絵作家の菅野武志さんの記事が出ていました。
パーキンソン病で断筆して5年 葛飾在住の似顔絵師が今思うこと – 葛飾経済新聞
もう未練はないとはおっしゃっていますが、このようなペンが実用化されて、こうした方たちが再び絵や文字を描けるようになるようになってほしいなと思いました。
そのほかの最近のパーキンソン病のニュース
そのほかの最近のパーキンソン病についてのニュースは、独立記事にする余裕がなかったので、こちらで紹介しておきます。
パーキンソン病・レビー小体型認知症の発症メカニズムの一端解明
プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
GBA遺伝子変異を持つと、パーキンソン病およびレビー小体型認知症が約5~8倍発症しやすいので、GBA酵素活性を高めるたり、グルコシルセラミドの産生を抑制したりすることで予防・治療できる可能性があるそうです。
晩発性パーキンソン病のメカニズム解明
晩発性パーキンソン病で神経変性がゆっくり進行するメカニズムを解明(順天堂大学 プレスリリース)
基本的に遺伝性パーキンソン病は若年性、そうでないものは老年期発症と思われていますが、LRRK2遺伝子変異による、晩発性パーキンソン病というものがあるとのこと。平均発症は50歳ごろだそうです。
還元型コエンザイムQ10がパーキンソン病に効果
以前からコエンザイムQ10の大量投与がパーキンソン病に効果があるとは言われていましたが、順天堂大学によると、300μg/日で、ウェアリングオフを伴うパーキンソン病患者に効果が見られたとのこと。
パーキンソン病の研究についてはずっと情報収集を続けているのですが、記事も増えてきたので、このたびカテゴリ「パーキンソン病」を新設しました。
一日も早く治療法などが確立されてほしいと思います。