慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者の90%に起立性不耐症(OI)がみられる

痛性脳脊髄炎と起立不耐症についてのニュースがありました。ミワ内科クリニック院長の三羽邦久先生によるものです。

[第62回日本心臓病学会学術集会]筋痛性脳脊髄炎患者では9割が起立不耐症を合併:医師のための専門情報サイト[MT Pro] はてなブックマーク - [第62回日本心臓病学会学術集会]筋痛性脳脊髄炎患者では9割が起立不耐症を合併:医師のための専門情報サイト[MT Pro]

記事によると、MEの患者の9割がOIを伴い,大半は左室が小さく低心拍出量状態にあり、特に重症OI患者でそれが顕著であるそうです。前に戸田克広先生が筋痛性脳脊髄炎の心機能で書いていた内容かもしれません。

筋痛性脳脊髄炎や起立不耐症という名称は聞き慣れないですが、どちらも海外で主に使われている病名です。日本では、筋痛性脳脊髄炎(ME)は慢性疲労症候群(CFS)、起立不耐症(OI)は起立性調節障害(OD)のほうが馴染みがあるかもしれません。

厳密にいうと、いくらか別の意味をもっているようであり、記事では、慢性疲労症候群の原因が筋痛性脳脊髄炎の中枢神経系の機能障害かもしれないという書かれ方をしています。

起立不耐症については、下記の資料の中で「OD(欧米では起立不耐性,orthostadc intoleranceと呼ばれる」と書かれています。

慢性疲労症候群(CFS)と起立性調節障害(OD)の関係については、田中英高先生による研究も参考にすることができます。そちらの研究はおそらく子どもを対象にしたものと思いますが、次のように書かれていました。

The autonomic function and child chronic fatigue syndrome.pdf はてなブックマーク - The autonomic function and child chronic fatigue syndrome.pdf

著者らの施設において,CFSとODの関係を知るために,倦怠感やその他の不定愁訴を伴う611人に対して,非侵襲的連続血圧測定装置を用いた新しい起立試験を実施した。

その結果,図1に示すように,1/3がODと診断された。しかし,残りの2/3については起立試験では異常を認めなかった。

すなわち,CFSにおいてはODを伴うものと,そうでないものがあるといわざるを得ない。一部のCFSには,ODと共通した何らかの自律神経機能異常が存在するが,全く同一のものとはいえない。

最近では、慢性疲労症候群患者の27%は体位性頻脈(POTS:起立性調節障害のサブタイプのひとつ)をもっているという研究もありました。

慢性疲労症候群(ME/CFS)の27%は体位性頻脈(POTS)を持っている
CFS患者と体位性頻脈(POTS)の患者には互いに重なり合っている部分があるようです。

それぞれの結果はかなり異なりますが、用いた基準や対象にした年齢がだいぶ違うのかもしれません。どちらにしても、慢性疲労症候群と起立性調節障害は関係が深いといえます。