「本の読み方を知っていますか?」
今まで私が、このように質問して、「知っています!」と答えた人はほとんどいません。…もし、あなたが「本を読むのが苦手」と思っているのなら、それは「本の読み方」を知らないだけかもしれません。 (p1)
読書はとても大切です。本を読んで知識を取り入れてこそ、国語力を伸ばし、目標を育て、生活の諸問題を克服することができます。
ところが、こんなデータがあります。「買った本を1章より先まで読む人は、全体の1割にも満たない」。 本を読む大切さは分かっていても読書は苦手、という人は少なくありません。 (p26)
じつは、「本の中で重要なことがらが書かれているのは文章中の4-11%にすぎない」そうです。本来、読書はそれほど難しいものではないはずなのに、読み方を知らないために、多くの人は知りたいことにたどり着く前に挫折してしまうのです。 (p79)
この書評では、本の読み方を子供向けに楽しく解説した書籍 考える力がつくフォトリーディングから、フォトリーディング(写真読み)を中心とした読書法を紹介したいと思います。
もくじ
これはどんな本?
この本は、塾の講師をしている照井留美子さんと、フォトリーディングインストラクターの山口佐貴子さんが共同で執筆した、子どもたちのためのフォトリーディングの入門書です。
照井さんは、塾で教える中、子どもたちの成績アップの上で一番課題になるのは、「読む速度」であることに気づくようになりました。「読む速度」が欠けていると授業についていけず、あらゆる科目に影響する国語力が育ちません。
照井さんは、山口さんが教えるフォトリーディングを学び、効果を体感していたので、それを子どもたちにも教えてみようと思い立ちました。すると、予想をはるかに上回る良い結果が得られたのです。 (p27-28)
わたしの感想として、この本はあまたのフォトリーディングについての本の中で最も優れていると思います。有名なフォトリーディングの教科書、あなたもいままでの10倍速く本が読めるよりも格段に分かりやすく、巻末のQ&Aも秀逸です。
まるで絵本のような可愛らしいイラストと和やかな装丁は、パラパラとめくっているだけで心をうきうきさせてくれます。書かれている内容だけでなく、本全体を通して、「読書って楽しい!」と思わせてくれるのです。
なぜこの本を手にとったか?
わたしは病気のせいで本を読むのが難しくなりましたが、、いろいろなものを読む必要があったので、“本の読み方”を模索していました。書店で何気なくこの本を手に取ったのは、そのときのことです。
この本を通してわたしは“本の読み方”の常識が変わりました。学んだことは、わたしが闘病生活の中でも読書する上で大いに助けになってきました。
読んだのはかなり前ですが、先日、書評で「マインドマップfor kids 勉強が楽しくなるノート術」から(上)を取り上げたので、同じく「for Kids」の副題を掲げているこの本もセットで紹介したいと思いました。
フォトリーディングとは
フォトリーディングとは、1985年に米国ミネソタ州のポール・R・シーリィ氏が開発した新しい読書術で、[新版]あなたもいままでの10倍速く本が読めるなどの著書を通して全世界で知られるようになりました。
フォトリーディングは、フォトフォーカスという特別な目の使い方をして、写真を撮るかのように、本の内容を潜在意識に送り込むという読書法です。
このような定義から、科学的な信憑性を疑問視する声も根強いですが、今や広く知られていますし、個人的な経験からしても、効果がないというわけではなさそうです。
あらゆる読書法の頂点に君臨する力があるわけではないものの、読書の幅を広げる第二の読み方になる、というあたりが妥当ではないでしょうか。
本書でもこう説明されています。
フォトリーディング・システムを学ぶということは、ひとつの読み方だけでなく、2つの読み方を持つということです。
たとえば、東京の自分の家から、大阪のおじいちゃんの家まで行こうと思ったときに、車で行くか、飛行機で行くかという違いだと思ってください。
車に乗って、みんなでわいわい話しながら行くのもいいですよね。でも時間がない時は飛行機が一番早い! というわけです。
2つの方法を持っていれば、目的に応じて使い分けることができます。(p34)
もちろん、わたしは病気になってからフォトリーディングを始めたので能力に限りがありますし、厳密な方法に従って読書しているわけではありません。もっと子どものころから始めれば、単なる読書術以上の効果があるのかもしれません。
わたしが読書術を形づくる上で参考になった書籍は、「考える力がつくフォトリーディング」と、「マインドマップ読書術 (トニー・ブザン天才養成講座)」の二冊です。
「マインドマップ読書術 (トニー・ブザン天才養成講座)」では、フォトリーディングは、さまざまな読み方を駆使する場合のひとつ、“写真読み”として活用されています。
トニー・ブザンは、“写真読み”の効果を、一度歩いた道はなんとなく見覚えがあって歩きやすくなることに例えています。
つまり、本に既視感をつけ、内容を頭になじませやすくするというわけです。わたしのフォトリーディングに対する認識もそれに近いと言えます。
一字一句読まなくてもいい!
わたしがフォトリーディングと出会って何より感動したのは、その効果よりもむしろ、最初から順番に一字一句読むという、ごく当たり前の読書の概念を打ち砕かれたことでした。
この本「考える力がつくフォトリーディング」には次のような子どもたちの声が載せられています。
「1文字ずつきちんと読まなくても、本の内容がわかります!
前は1文字ずつ読んでいたので時間がかかって、読んでいるうちに前の話を忘れちゃって…往復したりしていました。そんなことをしなくても、本にどんなお話が載っているか分かるし、前よりずっと速く読めるようになりました!」
「全部の文章をていねいに読まなくても、本の内容って分かるんですね!」 (p87)
わたしの感想もこれと同じです。フォトリーディングと出会ったからこそ、闘病生活の中でも読書を楽しむことができ、分厚い本も物怖じせずに読むことができます。
では、具体的にはどうやってフォトリーディングのやり方を学べるでしょうか。
フォトリーディング実践の5つのステップ
本ほ読むことは料理に似ています。適当に材料を切って火にかければ、少なくとも食べることはできますが、おいしいとは限りません。
一方、料理の仕方を学び、“下ごしらえ”をしっかりするなら、段取りがうまく運ぶだけでなく、食材のおいしさが引き立ちます。読書も、“本の読み方”を知っているだけでずいぶん違います。
この本によると、フォトリーディングシステムは、5つのステップからなります。そして、その5つのステップと並行して、本の内容をマインドマップにまとめることが勧められています。
以下のステップを見て、「ややこしすぎる! これでは普通に読んだほうが楽だ」と思う方がいるかも知れません。しかし実際には時間はかかりませんし、短時間で本を何度も読むので、ポイントに気づく機会が増え、より深く記憶に刻まれます。
これらのステップは、料理における“下ごしらえ”のようなもので、読書をより味わい深くするポイントなのです。
1.準備する (1分)
「なんとなく旅に出たのだけど…行き先が決まらなーい」。これではいつまでたっても出発ができません。
…目的を決めておかないと受け身となり、まるで目的がないままテレビをダラダラ見ることと同じになってしまいます。それは時間の無駄遣いです。 (p36)
目的をはっきりさせておくことは、どんな場合も大切です。ところが、本を読むときに、「なぜこの本を読んでいるか」をはっきり言葉にできない人が多くいます。
そのようなわけで、最初のステップはまず本を読む目的を書き記すことです。目的を決めるときは、以下のようなテンプレートに当てはめます。
「わたしが…できるようになるために必要な~を知りたい」 (p39)
自分のメリットを強調することで、やる気を沸き立たせることができます。
2.予習する (1分)
「目次」や「裏表紙」、「筆者のプロフィール」などにパラパラ目を通します。 本格的な“予習”ではなく、新聞のテレビ欄をチェックするようなチラッと見る程度のステップです。(p46)
テレビ欄を見て、面白くなさそうな番組は見ません。同じように、この段階で読む価値のある本かどうかを見定めます。 (p49)
3.フォトリーディング! (5分)
いよいよフォトリーディングです。
(1)はじめの宣言
まず、「わたしは完全に集中しています」などと声に出し、自分をやる気にさせます。 スポーツ選手が試合前に円陣を組み、掛け声で気合を入れるイメージです。(p54)
(2)フォトフォーカス
ついで、フォトフォーカスという目の使い方をして、リズムよくページをめくっていきます。フォトフォーカスは焦点をぼかすことで、周辺視野を活用するテクニックです。
(3)終わりの宣言
読み終わったら、「すべて私の頭に入ったので文章がスラスラ理解できます」などと声に出し、メリハリをつけます。(p62)
フォトリーディングをするとき障害になりやすいのが、フォトフォーカスがよくわからない、という点です。
フォトフォーカスとは、いわゆる立体視の平行法の目の使い方です。一時期、マジックアイとして有名になり、隣り合った絵が重なって立体に見えるステレオグラムとして、雑誌の付録などで流行ったのを覚えておられるかも知れません。
平行法は、各々の目で別々のものを見て、焦点を遠くに合わせる方法です。寄り目で見る交差法と比べ、リラックス効果が優れていることも注目されてきました。その効果を強調する場合はソフト・アイと呼ばれることもあるようです。
フォトフォーカスは、マインドマップ読書術 (トニー・ブザン天才養成講座)ではソフト・フォーカスと呼ばれ、馴染み感をつけることや疲れないことが利点とされています。
平行法の訓練ができるサイトや書籍はたくさんあるので、それらで訓練すれば、フォトリーディング最大の難関がいとも簡単にクリアできます。リラックス法としても活用できるので一石二鳥です。
わたしは、眼精疲労予防ソフト ストレッチアイalamodeの体験版でできるようになりました。
読書前に、リラックスして、意識を切り替えることも大切です。この本では、集中とリラックスを両立させる方法として“みかん集中法”が紹介されています。(p42)
自分の後方、頭の斜め上に意識を集中させることで、あたかも自分自身の後ろに立っている人の視点で自分を見ているような感覚をつくり出します。
客観的な視点になることで、広い視野を持ち、落ち着いて本が読めるという心理的効果があります。
4.質問をつくる (10分)
フォトリーディングが終わったらすぐ、「まえがき」や「あとがき」、イラストや図、太文字や副見出しに注目し、パラパラ読みます。マインドマップ読書術 (トニー・ブザン天才養成講座)では“プレビュー”と呼ばれている段階です。
大事そうなキーワード“トリガーワード”を10-20個ほど書き出し、著者に尋ねてみたい質問を3つ考えます。たとえば以下のようなテンプレートを使います。 (p72)
「わたしが~するためのコツを教えてください」
「なぜ~なのか、その理由をわたしに教えてください」
ここで5分から一晩休みます。マインドマップ記憶術 (トニー・ブザン天才養成講座)によると、目標を明確にしておけば、休憩している間も脳は働き続けています。しかも休憩を取ることで、“初頭効果”と“親近効果”が生じ、学んだことが記憶に定着しやすくなります。 (p76)
5.アクティブリーディングする
ここまでのおよそ15分ほどが、料理における“下ごしらえ”になります。
フォトリーディングをしたことで、内容がスムーズに脳に流れ込む下地ができました。トリガーワードを抜き出したり、質問を考えたりしたことで、本を主体的に読む準備ができました。そして休憩したことで記憶する用意が整いました。
この状態で本を読むと、どこに要点が書かれているかがしぜんに分かり、読むべき部分と読まなくてもいい部分の見分けがつきます。前回のエントリの最初で触れた大切な「4-11%」の場所がわかるのです。
材料の“下ごしらえ”ができた今、あとは、意識的に読む部分を抜き出す“拾い読み”や、質問の答えを探しながら読む“探し読み”、ふつうよりもスピードを上げて読む“速読”などを駆使して、本を自在に料理することができます。
それぞれの具体的な方法は、「考える力がつくフォトリーディング」と「マインドマップ読書術 (トニー・ブザン天才養成講座)」のどちらを読んでも、分かりやすく図解してあります。
“下ごしらえ”は面倒かもしれませんが、その手間を踏むことで、料理は何倍もおいしくなります。読書の場合も、およそ15分かけて“下ごしらえ”することで、内容をより深く味わい、吸収できるようになるのです。
マインドマップにまとめる
こうして読んだ内容は、マインドマップにまとめると理解が深まります。このエントリのはじめに掲載したマインドマップは、わたしが本書を読んだ当時に書いたものです。(p90)
最近の読書マインドマップとはだいぶ書き方が異なりますが、左上に読む“目的”、左下に“トリガーワード”、右下に“3つの質問”を書いています。
マインドマップのかき方は以下をご覧ください。
自分の読書スタイルを見つけよう
フォトリーディングはとてもおもしろい読書術ですが、自分のものにするのは簡単ではありません。クックパッドでレシピを調べて料理しても、それはまだ自分の料理ではないのと同じです。
料理と同様、読書術の本もちまたにはあふれかえっています。しかし、読みやすさという点でも、内容の濃さという点でも、この二冊はおすすめです。
料理がうまくなるには、料理本を数多く読むより、とにかく実践することが大切です。読書も、この二冊を基本に数をこなせば、いずれ自分なりの新しい読書スタイルが確立できると思います。
食事が体を元気にするように、読書は心を元気にしてくれます。本を通して吸収した質の高い知識は、心の栄養となり、人生を豊かにしてくれるに違いありません。