脚以外もむずむずする「レストレスレッグス症候群」とは? 7つの症状と治療法まとめ

をはじめ、全身のさまざまな部分に、次のような形容しがたい不快感を感じることがありますか?

むずむずする:じっとしていられない、足踏みしていたい、虫が張っているような感じ
かゆい:手を入れてかき回したい、引きつっている、電流が流れている
痛い:うずく、ズキズキする、足を切ってしまいたい
熱い:ほてる、ちりちりする、泡立っている

はてなブックマーク - 寝ている時に体が「ビクッ」となるのは疲れているサイン : ライフハッカー[日本版]これらはむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の患者が口にする表現の一部に過ぎません。その不快感は非常に言葉で言い表しにくいのです。

むずむず脚症候群の人の中には、慢性的な疲労感や、痛みを感じる人もいます。それらは慢性疲労症候群や線維筋痛症と関連していることもあります。

むずむず脚症候群とは

一般にむずむず脚症候群として知られていこの病気は、正式にはレストレスレッグス症候群(RLS)、または下肢静止不能症候群と呼ばれています。レストレスレッグスとは「落ち着かない」「脚」という意味です。

英語の発音では正確にはレストレスレッグ「ズ」なのですが、日本では和製英語的にレストレスレッグ「ス」で定着してしまいました。

むずむず脚症候群というと、それほど深刻な病気には聞こえませんが、生活の質(QOL:Quality Of Life)は糖尿病と同じ程度まで低くなるとされています。

日本では200万人以上の患者がいるとされていて、決してまれな病気ではなく、多くの人の生活の質を低下させていることが明らかになっています。

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、むずむず脚症候群は、決して最近提唱された病気ではありません。文献をたどると、次のように研究の歴史をさかのぼれます。(P124)

1658年:イギリスのウィリス博士が4大症状と貧血を指摘
1923年:ドイツのオッペンハイム博士が遺伝性を指摘
1945年:スウェーデンのエクボム博士がレストレスレッグス症候群と名づける
1960年代後半:腎透析の導入とともに日本で注目されはじめる

レストレスレッグスは歴史の浅い、単なる不定愁訴ではないのです。

むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によると、アメリカでは、レストレスレッグス症候群という病名では、程度が軽いように思え、誤解を招くとして、患者団体と専門家たちの協力により、2011年9月、発見者たちの名にちなんでウィリス・エクボム病(WED)という新しい病名変更されることが発表されました。?(p22)

日本での名称は前述のように「むずむず脚症候群」ですが、極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ) という本によると、これはかなり問題だらけの病名です。

これから説明しますが、むずむず脚症候群の症状は、まず足に出るとは限らず、しかもむずむずといった言葉で言い表せるほとで限定的な症状ではないからです。

患者は何も知らない状態で、この副詞で症状を表現しません。逆に「むずむずします」といってくる患者は、どこかでこの疾患のことを読んで「かなりバイアスがかかっているだろうな…」と思って診察します。自分ではもっと別な表現をしたいのですが、この「むずむず」という表現に無理やり落とし込んでいるわけです。

…確かに下肢に症状が出ることが多いのですが、症状が下肢とは限らないのです。上肢や体幹に症状が出ている患者に「下肢静止不能」という名称は合いませんし、この病名に当てはめるてために、本来存在する下肢以外の症状を切り捨てることになります。(p94)

この独特な病気には、どんな症状が表れるのでしょうか。

レストレスレッグス症候群の症状

レストレスレッグス症候群には次の四大症状が必ず見られます。(P7-9)

1.独特の不快感

記事の冒頭で取り上げたようなさまざまな不快感が表れます。この症状は次のような点で独特です。

第一に、むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によれば、不快感を感じるのは、体の表面ではなく内部・あるいは深部です。つまり手で触れられないところです。もし体の表面に不快感を感じているなら、それはRLSではなく神経障害や皮膚の病気です。(p146,148)

第二に、非常に重要なこととして、レストレスレッグスという名前がついているものの、不快感を感じる場所は脚だけではありません

ふくらはぎ>太もも>足首>全身さまざま という順で症状の頻度が高く、全身さまざまの不快感を訴える人は10%ほどです。中には、顔の不快感が主体という人もいます。しかし最初に症状が現れるのはほとんどの場合脚からで、その後他の場所へと広がるようです。

第三に、独特の不快感の中心は、じっとしていられない、“運動促迫”と呼ばれる症状です。疲れているのに休めなかったり、集中して座っていられなかったりします。

2.安静時に症状が出る

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、症状はいつもひどいわけではありません。じっと立っているとき、イスに座っているとき、ベッドに寝ているときなど、安静時にひどくなります。だからこそ、休みたいときに休めず、生活の質(QOL)に深刻な影響が及ぶのです。(P24)

むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によれば、もしも、安静時だけでなく、常に症状が出ているとしたら、それはRLSではなく、ヘルニアなどで神経が圧迫されている可能性があります。(p145)

3.動かす、叩く、マッサージなどで軽くなる

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、二番目の点とは逆に、動いていると症状は和らぎます。休みたいのに不快感のためにじっとしていられず、動きまわるしかないので、疲労がたまるいっぽうです。(P24)

4.夕方から夜に悪化する

原因と考えられているドーパミンの日内変動や深部体温の低下により、夜になると症状が悪化する傾向があります。これもまた眠れないという苦痛につながります。(P26)

以上がレストレスレッグス症候群の四大症状です。そのほかにも、人によって次のような症状が現れることがあります。

5.周期性四肢運動障害(PLM)

睡眠中、本人が気づいていない間に、周期的に足の指がそりかえって開いたり、膝や股関節が折れ曲がったりします。結果として深い眠りが妨げられます。レストレスレッグス症候群の80%に合併するそうです。(P29)

疲れているときに足がビクンと動くジャーキング現象が非常に極端になった状態といえるかもしれません。

6.季節変動

起立性調節障害(OD)と同じ理由、つまり血管が拡張するために、夏に悪化することがあります。(P35)

7.他の病気の合併

心血管疾患やうつを合併することがあります。

むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によると、多くの研究が一致して示しているのは、むずむず脚症候群の人は、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患になるリスクが2倍以上の確率になるということです。理由ははっきりわかっていませんが、夜間に交感神経が興奮して睡眠の質が悪くなるからかもしれません。(p198)

また、 脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、睡眠が取れず疲労がたまり、うつなどの精神神経症状を合併する人もいます。しかしうつ病や統合失調症に用いられる薬で症状が悪化することがあるので注意が必要です。(P50,108)

薬の副作用によって起こる脚がむずむずする感覚は、「アカシジア」と呼ばれており、レストレスレッグス症候群とは別のものです。

むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によれば、どちらかというと、アカシジアのむずむず感は上半身に多い傾向があるそうです。アカシジアが生じている場合は薬の処方の見直しが必要です。(p150)

レストレスレッグス症候群のメカニズム

むずむず脚症候群の不快感はなぜ生じるのでしょうか。

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、確かなメカニズムはまだわかっていませんが脳のA11領域にあるドーパミン神経に異常が生じている可能性があります。A11領域は不快刺激(不必要な刺激)や脊髄の周期的な刺激をブロックする場所です。

本来、鉄分がドーパミン合成を助け、ドーパミンがA11領域の働きを助け、不必要な刺激が認識されなくなります。ところが、その過程がうまくいっていないことから、鉄分やドーパミンが不足しているのではないかと考えられます。

ドーパミンが関係しているという点で、レストレスレッグス症候群とパーキンソン病は似ています。しかし、レストレスレッグス症候群ではドーパミン神経細胞が減らないことから、直接関係のある病気ではないと考えられています。(P48,52-56)

極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ) には、パーキンソン病と比較して、次のように書かれています。

大切なことなので、もう一度いっておきますが、RLS/WEDでドパミン欠乏は認められません。ここが同じようにドパミン作動薬を処方する対象であるパーキンソン病とは全くことなるのです。

…ただし夜間の産生が昼間の産生に比較して低下していることは示唆されていますが、これは決定的ではありません。

ここにRLS/WEDのほかの疾患にはない非常に大きなポイント特徴があります。すなわち症状が日内変動するという事実です。(p102)

また鉄分が不足しているといっても、鉄が不足するメカニズムにもいろいろあります。妊娠などで鉄が不足してむずむず脚症候群になる人もいれば、摂取した鉄を脳に運搬する機能が弱いために、鉄分を十分摂取していてもむずむず脚症候群になる人がいます。

レストレスレッグス症候群の2つのタイプ

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によれば、レストレスレッグス症候群には二つのタイプがあり、原因が異なります。(P45-47)

特発性(一次性)のタイプ

大規模なゲノム研究により、レストレスレッグス症候群に関係する遺伝子が多数見つかっています。遺伝が関係している場合、家族に複数の患者がいることもしばしばです。

このタイプは遺伝により、鉄運搬機能の障害があり、比較的若くして発症します。

アリゾナ・プレスコットバレー睡眠障害センターのロバート・ローゼンバーグによる睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド によると、むずむず脚症候群の親やきょうだいがいる場合、40%の確率で発症し、一卵性双生児では90%にもなるそうです。

遺伝的なむずむず脚症候群の平均発症年齢で最も多いのは20歳、次いで40歳で、早く発症すると症状が重くなりがちだとされています。(p67)

子どもの場合は独特な症状を言葉にできず、他の病気と間違われることがあります。

またADHDとの関わりが深く、いま、小児科医に必要な実践臨床小児睡眠医学によると、ADHDの約4割がレストレスレッグス症候群(PLM)を併存していて、約6割が周期性四肢運動障害(PLM)を併発しているといいます。逆にレストレスレッグス症候群と診断された人の約3割がADHDとも診断されるそうです。

ADHDの不器用さに関係する遺伝子を調べたところ、レストレスレッグス症候群との関係が深い遺伝子であるMAP2K5の多型が見つかっているそうです。(p86-87)

ただし、ADHDの治療をしてもむずむず脚には効果がありません。逆にむずむず脚の治療をすると、ADHDの多動と思われていた症状が和らぐ場合があります。

続発性(二次性)のタイプ

このタイプは別の病気の影響で発症します。45歳以降に多いタイプです。腰痛や鉄欠乏、腎不全による透析療法、パーキンソン病に伴うことが知られています。妊婦の場合も、脊髄圧迫による腰痛や鉄欠乏が生じるので、10%にレストレスレッグスが発症します。

前述のように、薬の副作用として生じるタイプは「アカシジア」と呼ばれます。SSRIなどの抗うつ薬や、ドーパミン阻害薬、吐き気止め、抗ヒスタミン薬で発症することがあるようです。

むずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場によると、パーキンソン病にともなうむずむず脚症候群は、パーキンソン病の病理と直接関係しているわけではなく、後述するパーキンソン病の薬の副作用「オーグメンテーション」により、ドーパミン受容体が減少してしまうために起こると考えられています。(p183)

ここまで、レストレスレッグス症候群のおもな症状やメカニズムを見てきました。レストレスレッグス症候群は、「むずむず脚」という名前では表現できないほど生活の質に影響する厄介な病気であり、脳の複雑な機能異常が関係しています。

レストレスレッグス症候群の検査

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、むずむず脚症候群は、なかなか周りの人に理解してもらいにくい病気ですが、適切な検査をすれば異常が確認できます。検査には以下のような方法が用いられます。(P62-67)

下肢指示不動検査(SIT)

下肢指示不動検査(SIT:Suggested immobilization test)はカナダの研究者により開発された検査です。夜間の60分間、目ざめている状態で、座椅子に座って安静にし、5分間隔で不快感の評価を行ないます。

終夜睡眠ポリグラフ(PSG:polysomnography)

終夜睡眠ポリグラフ(PSG:polysomnography)は睡眠中の脳波、眼球や筋肉の動きなどから、周期性四肢運動障害の有無を調べる検査です。一泊入院が必要です。

アクティグラフ

アクティグラフとは、腕時計型の加速度計のことです。慢性疲労症候群(CFS)の検査などにも使われます。脚に装着して、運動の程度を調べるので、家庭でもできるという利点があります。

血液検査

鉄分を貯めておくタンパク質である血清フェリチンの値を調べ、鉄分が欠乏しているかどうかを判断します。もし欠乏しているようなら、鉄の運搬機能に問題が生じていることになります。

遺伝的な要素の調査

若年発症の場合は遺伝が大きな要素を占めるので、家族に発症者がいるか調べます。

薬を試す

他の病気と紛らわしい場合は、治療薬であるドパミンアゴニストが効くかどうかで判断できます。むずむず脚症候群であれば、多くの場合、比較的少量ですぐに症状が消失します。ただし、一部には薬剤抵抗性のむずむず脚症候群もあります。

鑑別する

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…(P68-69)やむずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場 (p144-151)によれば、以下のような病気ではないことを確かめる必要があります。

アカシジア:向精神薬の副作用で起こるむずむず感。日内変動がない。
夜間下肢痙攣:こむら返りが生じる
痛む脚と動く足趾症候群:起きている間も足が動いて痛む
抹消神経障害や血管障害:動いていても痛みや不快感がある
体位性不快症状:横になったときだけしびれや不快感が出る
皮膚炎:脚の内側ではなく、表面に不快感がある
静脈瘤:一般に静脈瘤と診断されている脚の不快感は、じつはむずむず脚の治療で治ることがある

レストレスレッグス症候群の治療法

脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…によると、治療には薬物療法と非薬物療法があります。(P78-109)

薬物療法

ドーパミン系:
治療の主体としては、ドパミンアゴニスト(プラミペキソールなど)やLドーパなど、パーキンソン病に用いられるドーパミン系の薬剤をおもに使います。

Lドーパは即効性がありますが、治療開始後数ヶ月で症状が重くなる症状促進現象(オーグメンテーション)が起こりやすいと言われています。たとえば症状に起こる時間が早くなったり、薬の効きが悪くなったりします。

前述のように、むずむず脚症候群では、ドーパミン神経の欠落は見られませんが、本来ドーパミンがあるはずのところに薬でドパミンを補充した結果、逆説的に本来存在するドーパミン神経があまり仕事をしなくなってしまうことで起こるようです。

症状が出るのが夜ではなく朝型にずれ込む反跳現象という副作用があります。これは薬が切れた時間帯に症状が強まることで生じるものです。ただし頓服的使用であれば問題はないようです。

ドーパミンアゴニストは、効き始めるまでの時間に個人差があり、就寝の何時間前に飲むとよいか見極め、タイマーをかけておくなどします。Lドーパほどではないものの、長期使用により、時折オーグメンテーションが生じて逆に悪化するので注意が必要です。

痛みが強い場合:
後述する線維筋痛症のような、痛みが強い症例の場合は、抗てんかん薬(ガバペンチンなど)、オピオイド鎮痛薬(トラマドールなど)も使われます。

また、近年の米・ジョンズホプキンス大学の研究によると、痛みがあるかどうかにかかわらず、神経障害性疼痛に使われる薬であるプレガバリン(リリカ)がレストレスレッグス症候群に効くという報告があります。

しかも、よく使用されているドーパミンアゴニストのプラミペキソールよりも副作用や改善率の点で優れていたとされています。

プレガバリンがRLS治療薬としての優位性を立証-NEJM誌 – QLifePro医療ニュース

プレガバリン(リリカ)は、全身の慢性的な痛みを特徴とする線維筋痛症の治療でもおなじみの薬です。後ほど触れますが、線維筋痛症とレストレスレッグス症候群は、合併するケースが多く、共通のメカニズムを有している可能性があります。

むずむず脚症候群に効く薬はロピニロール、レボドパ、ガバペンチン、プレガバリンなど
むずむず脚症候群に、パーキンソン病や線維筋痛症の薬が効果があるという報告がありました。

鉄欠乏が明らかな場合:
妊娠による鉄欠乏などが原因の場合は、鉄剤、エリスロポエチンなどが使用されます。

 

そのほか、最近レストレスレッグスへの保険適用が承認された3種類の薬、プラミペキソール(ビ・シフロール)、ガバペンチン・エナカルビル(レグナイト)、ロチゴチン(ニュープロパッチ)については以下のエントリをご覧ください。

貼り薬ニュープロパッチでは、長期使用による症状悪化(オーグメンテーション)がほとんど起こらないといわれています。

むずむず脚症候群の薬の選択肢―ビ・シフロール、レグナイト、ニュープロパッチ
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の新薬について書かれた記事が掲載されました。保険適用された3つの薬についてまとめています。

レストレスレッグスはしばしばうつ病や不眠と誤診されますが、抗うつ剤、抗精神病薬、睡眠薬、抗ヒスタミン剤を服用するとかえって悪化するそうです。

不眠症、うつ、精神的なものと誤診されやすいレストレスレッグス症候群(RLS)
むずむず脚症候群の診療の現状について林田健一先生が語っています。

非薬物療法

次のような工夫が効果的です。

◆カフェインを含むコーヒー、紅茶などの刺激物、アルコール、喫煙を避ける
◆激しい運動や、極端な安静をしない
◆マッサージなど理学療法を試みる
◆鉄分の不足しない食生活を試みる
◆可能なら寝る時間をずらす
◆足を温めたり冷やしたりする

これらの薬物・非薬物治療により、症状の重さ、期間にかかわらず、90%以上の患者に改善が見られるそうです。またRLSと診断された人の半数以上は二年以内に症状がなくなるといいます。ただし、完治は困難とされています。

そのほか、睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド によれば、圧迫療法やレーザー療法が行われているといいます。

圧迫療法というのは、手術後の血栓形成の予防に使われる“スリーブ”で腕や脚を覆い、周期的に圧縮空気を入れてスリーブをふくらませたり、しぼませたりして、リンパと血液の循環を助けるものです。

血管が非常に細い人、下肢静脈瘤、表在性静脈瘤の患者を対象とした研究では、薬剤を注入して血管を収縮させる、またはレーザーで切除するという2種類の硬化療法の効果が非常に高いことがわかっています。最近ではレーザー治療の成功率は80%にのぼっています。(p70)

慢性疲労・慢性疼痛との関係「中枢性過敏症候群」

最後に、慢性疲労症候群(CFS)との関係性について考えてみたいと思います。

慢性疲労症候群(CFS)について書かれた幾つかの文献において、レストレスレッグス症候群は、症状のひとつや関連疾患として挙げられています。

たとえば10年以上前の本、疲れる理由―現代人のための処方せんの中では、不穏下肢症候群という名前で紹介されています。

子どもの慢性疲労症候群(CCFS)を診ている兵庫県立リハビリテーション中央病院の小児睡眠外来でも、レストレスレッグス症候群の検査や治療が行われています。

II: 睡眠時随伴症|子どもの睡眠と発達医療センター|兵庫県立リハビリテーション中央病院

また慢性疲労症候群(CFS)と非常に関わりが深い病気である慢性疼痛を特徴とする病気、線維筋痛症(FMS)の場合も、しばしば関係性が指摘されています。線維筋痛症がわかる本―原因不明の痛み、治らない痛みに悩んでいるあなたへのp157にはこうあります。

「線維筋痛症の患者さんの31%はむずむず脚症候群を合併するという報告や、女性の線維筋痛症の患者さんの64%近くはむずむず脚症候群を合併するという報告があります」

睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド でも、「線維筋痛症の女性の3分の1がむずむず脚症候群を発症して」いるとありました。(p66)

線維筋痛症診療ガイドライン〈2011〉にも同様の記述があり、「むずむず脚症候群の治療薬の線維筋痛症への有効性の報告もあり,ドーパミンとの関係を検討することも必要であると示唆される」と書かれています。

特に線維筋痛症の場合、症状が脚だけでなく全身に広がることが多いとされています。ですから、もしかすると、CFSやFMSの患者がうったえる不快感とレストレスレッグス症候群は関係があるかもしれません。

前述のメカニズムの項で、レストレスレッグス症候群は、軽微な刺激をシャットアウトする脳の領域が働いていないのではないか、という説を紹介しました。慢性疲労症候群や線維筋痛症、化学物質過敏症も同様に、本来認識しないはずの軽い刺激で、疲労や激痛やアレルギー反応を感じてしまうと言われています。

線維筋痛症がわかる本の著者、戸田克広先生は、海外にはレストレスレッグス症候群を含むこれらの病気をひとくくりにした中枢性過敏症候群(CSS)という概念があることを書いておられます。一定の閾値(反応を引き起こす最低の限界値)に達しない刺激に反応してしまうほど、中枢神経が過敏になっている状態のことをいうようです。

慢性疲労症候群や線維筋痛症、そしてむずむず脚症候群は女性に多いことが共通していて、月経による鉄欠乏以外にも、ホルモン変動など、何らかの性差も関係しているのかもしれません。

第65回 男性にも読んでほしい、女性ならではの睡眠障害 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

逆に、不眠症、足のほてりやむずむず感で眠れなくなるレストレスレッグス症候群、眠りながらがっつり食べてもまったく覚えていない睡眠関連摂食障害などは女性に多い。

 睡眠障害の有病率に男女差が生じるのは、肥満度やストレスへの抵抗性、自律神経やホルモン分泌機能など睡眠調節に関わる心身機能の障害の受けやすさ(脆弱性)に男女で違いがあるからだ。そのほか、育児、家事、就業などの生活要因が複雑に絡み合う。

また慢性疲労症候群や線維筋痛症は免疫や炎症と関連が示唆されていますが、レストレスレッグス症候群にも同様の要因があるのかもしれません。

炎症や免疫のむずむず脚症候群への関与(仮説) : 腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へー中枢性過敏症候群ー  戸田克広

RLSと高度に密接な関連のある38の状態の95%は炎症/免疫変化と関連があると言う事実はRLSはこれらの機序により介在されるあるいは影響される可能性を示唆する。

炎症は鉄欠乏の原因かも知れず、中枢性神経系の鉄欠乏がRLSを引き起こすかもしれない。

あるいは胃腸の細菌やたの抗原に対する免疫反応が中枢神経系や末梢神経系への直接の免疫的攻撃によりRLSを引き起こすのかもしれない。

いずれの病気にしても、まだ研究途上なのではっきりしたことは言えませんが、根底の部分で、似通ったところがあるのかもしれません。

今回、レストレスレッグス症候群(RLS)についてまとめたこのエントリの大部分は以下の2つの書籍に基づいて書きました。

一つ目の脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…は医学的な知識がなくても読みやすい優れた本です。 病気について説明する本はかくあるべきだと思わせる魅力的な構成とレイアウトが光ります。

著者である神経研究所附属睡眠学センター長の井上雄一先生のサイトはこちら
むずむず脚解消ナビ – 脚の不快感で眠れないことはありませんか? 
むずむず脚症候群・お役立ち情報サイト|Muzmuz.jp

2つめのむずむず脚のカラクリ-ウィリス・エクボム病の登場は、むずむず脚症候群の海外の研究の歴史などをまとめた久米クリニックの久米明人先生の本です。

むずむず脚症候群を取り巻く話題や、研究に貢献してきた人たちなどがまとめられています。原因や治療法なども一通りわかる興味深い読み物です。