線維筋痛症の治療法の最近のニュース―全身振動,サインバルタ,トリガーポイント,温熱療法

維筋痛症の治療に関するニュースがいくつかたまってきたので、まとめて記事にしておきます。

全身振動(WBV)による転倒リスク予防、サインバルタによるQOL改善、交感神経優位型に対するトリガーポイント注射と温熱療法についてです。

追記:線維筋痛症学会関連のほかのニュースとして、線維筋痛症のデフォルトモードネットワークの異常や、線維筋痛症を歌で表現するシンガーソングライターの方の話も追加しました。

1.全身振動刺激トレーニングでバランス改善

線維筋痛症では、健康な人よりも転倒のリスクが高いそうですが、 全身振動刺激トレーニングによって、女性患者の転倒予防ができるとされていました。

全身振動刺激トレーニングは線維筋痛症のバランス能力を改善する? – MEDLEYニュース はてなブックマーク - 全身振動刺激トレーニングは線維筋痛症のバランス能力を改善する? - MEDLEYニュース

全身振動(Whole Body Vibration:WBV)トレーニングとは、振動するプラットホームの上に立ち、足下から振動を与えられた状態でスクワットなどをするというものだそうです。

当初、宇宙飛行士やアスリートのトレーニングとして開発されましたが、パーキンソン病や麻痺患者、高齢者のバランス能力改善にも取り入れられているようです。 検索してみると、かなりヒットするので、取り入れている医療機関もそれなりにある様子。

線維筋痛症そのものを改善するわけではないのかもしれませんが、転倒による二次的な被害や寝たきりへの移行を防ぐ点で役に立ちそうです。

2.デュロキセチン(サインバルタ)でQOL改善

線維筋痛症学会では、今年5月に線維筋痛症の適応が追加されたデュロキセチン(サインバルタ)の試験の結果について話されたそうです。

ダブルブラインド試験では、14週間の使用で線維筋痛症の患者のQOL(生活の質)が改善し、効果は50週続いたとのこと。

SNRIデュロキセチン14週投与で線維筋痛症のQOL改善-国内第Ⅲ相試験|2015年_薬剤情報|ニュース|Medical Tribune

国内臨床第Ⅲ相試験(①同薬群のプラセボ群に対する優越性を検討した多施設共同二重盲検群間比較試験②長期継続試験)の結果が発表され,わずか14週の投与でSF-36の下位尺度8項目全てが有意に改善していたことや,50週にわたり鎮痛効果や日常生活動作(ADL)改善効果が継続していたことが報告された。

このニュースは、このブログの過去記事でも取り上げました。

サインバルタに「線維筋痛症に伴う疼痛」の効能を追加
サインバルタの効能に線維筋痛症が追加されたそうです。

3.トリガーポイント注射と温熱療法

線維筋痛症学会では、交感神経優位なタイプの線維筋痛症患者には、トリガーポイント注射と温熱療法が効果的であるという発表があったそうです。

交感神経優位型の疼痛患者にトリガーポイント注射と温熱療法が有用|2015年_学会レポート|ニュース|Medical Tribune

東京医科大学八王子医療センターリウマチ性疾患治療センター教授の岡寛氏は,慢性疼痛を訴える患者に対し,自律神経検査を用いて不定愁訴をスクリーニングし,交感神経優位型の症例にはトリガーポイント注射と温熱療法で自律神経のバランスを是正して疼痛症状を軽減させる治療法を考案。

線維筋痛症には、筋付着部炎型、筋緊張亢進型、うつ型の3つのタイプがあるそうです。

交感神経優位で緊張している場合には、トリガーポイント注射で緊張をゆるめたり、温熱療法で自律神経バランスを改善したりすると痛みが和らぐ、ということでしょうか。

温熱療法というと、低温サウナ療法や和温療法と呼ばれているものが慢性疲労症候群(CFS)の治療にも用いられて効果を上げていますね。

4.デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)も関与

また線維筋痛症学会では線維筋痛症の人にデフォルト・モード・ネットワークの異常が見られることも、順天堂大学練馬病院メンタルクリニックの臼井千恵准教授により報告されていました。

線維筋痛症は脳機能障害の症候群として捉えるべき|2015年_学会レポート|ニュース|Medical Tribune

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは安静時の脳の活動領域のことで、さまざまな精神神経疾患では、この脳機能に異常が見られると言われています。

治療によって痛みが治まるとデフォルト・モード・ネットワークの脳機能も改善し、治療効果の予測にも役立つかもしれないとされています。

いずれにしても、人によって症状や原因はさまざまなので、専門家の意見も聞きつつ、自分に適した治療法を見極めて使っていくのが良さそうです。

線維筋痛症の治療法に関するさまざまな専門家の取り組みは、こちらの本にも網羅的に書かれていたので、興味があればご覧ください。

5.線維筋痛症の痛みを歌で表現

線維筋痛症学会のうも一つのニュースとして、20代と50代の患者さんの闘病経験が話された、という報告もありました。

線維筋痛症の闘病体験を基に作詞して楽曲を制作|2015年_健康・公衆衛生|ニュース|Medical Tribune

20代の患者は、シンガーソングライターを目指す如月まぁやさん。

私の個性は闘病生活。疾患と向き合ってきた自分のこれまでの経験を歌で表現することで,苦しんでいる患者さんを励ましていきたいと同時に,疾患の認知度を高めるために,世間に広めていきたい

ということで、作成された楽曲「pain」と「Relief」の歌詞がリンク先に掲載されています。

風が吹いても痛みを感じたり、太陽の光が苦痛だったりといった線維筋痛症の症状について、詩的な言葉で表現されています。

50代の患者は、岡寛先生の診察を機に線維筋痛症だとわかり、プラス思考に転じて保育関係の仕事ができるようになった方。

さまざまな出会いは何か一つのきっかけで生まれる。その出会いによっては,自分の気持ちを黙っていても支えてくれる。それが,この病気と付き合う上で大事なことと感じている

と述べておられます。

線維筋痛症という難病の中でも自分のできることに携わって居場所を見出している方がいることには励まされますね。