「ボクと僕の世界で」感想! 濃厚なメランコリックが味わい深い良作パズル

「ボクと僕の世界で」(I and Me)セールしてたから買ってみたんだけど、モノローグとクラシック風BGMがめっちゃ秀逸なんだけど! 雰囲気に呑まれる。サントラほしいレベルですばらしい。エンディングも含め、ひとつのテーマ曲をうまくアレンジして様々な場面に織り込んでるから、印象にも残るし。

ただのほんわかパズルゲーかと思ってたら、めっちゃ濃厚な雰囲気ゲーでハートわしづかみにされてしまった!  BGMも語りもメランコリー系好きな人は大好きなゲームだと思う。エンディングでゾクゾクきた。リトルインフェルノ並みの狂気を感じる(笑)こんな名作見逃してたとは!

eshopの説明がまったくアテにならなくて、良い意味で期待を裏切られまくった。概要読んだだけだと、カワイイ猫のパズルゲーとしか思えなかったのに! パズルゲーとしても難易度がほど良いレベルで楽しかったんだけど、パズルの内容にストーリーを絡めてあるのがすごかった。

しかもありきたりの結末じゃなくて、そっちに行くか!!っていうエンディング。メランコリック路線まっしぐら。あえて万人が望むようなハッピーエンドじゃなくて、それぞれが望む世界があるんだって思わせてくれる結末大好き。(全然規模も種類も違うゲームだけど、ラジアントヒストリアのエンディングの美しさに通ずるものがある)

シンプルなのに作り込まれたパズル

パズルとしては、二人が同時に動くという、スーパーマリオ3Dワールドやった人ならダブルチェリーだと言えばすぐわかる系。片方が壁に当たっていると動かないから、それを利用して二人の位置を詰めたり広げたりできる。ものすごく単純なシステムなのに。かなり奥深いパズルに仕上げているのは見事というしかない。

ステージは春→夏(梅雨)→秋→冬と4段階あって、それぞれ20ステージ前後ある。全92ステージでうち隠しステージが7つ。多いように思うかもしれないけど、ギミックの丁寧なチュートリアル込みなのと、ひとつひとつのステージがシンプルなのとで、2、3時間もあればクリアできるボリューム。一気に最後までやってしまった。

どれも難易度はそれほど高くないが、ひとひねりあってうまく作られているステージが多い。解き方がわからなくてもXボタンで途中までのヒント映像を見れるので、詰まらずサクサクプレイできる。ちゃんと解けた時に爽快感もある。

二人のキャラを同時に操作する、ということで単純ながらアクション性のあるパズルなので、ある程度2Dマリオとかの操作に慣れている人向けだとは思う。ステージのトゲとか動物に当たると一撃でミスになるので、慎重で正確な操作が必要。移動をジョイコンのアナログスティックでやってると移動しすぎて落ちたりミスしたりが多いので、十字キー部分を使うようにしたほうが正確に移動できていい。

隠しステージはXボタンでヒントが見られないが、それまでのステージをクリアして来たなら十分解ける難易度。突然鬼畜なったりしない。ちょっと悩むけど試行錯誤してるうちに解けてすっきりするレベルだった。

こだわり抜かれた雰囲気づくり

ところどころのステージにメモみたいなのが落ちていて、ちょっとした主人公のネコ?の気持ちを読むことができる。取るのにちょっと工夫がいるが、難しくはないのでコンプは容易。20個集めれば隠しステージが解禁される。

このメモのセリフが翻訳含めとても秀逸で本作の独特の濃厚な雰囲気づくりに貢献している。物語というか、主人公?の猫?の心の移ろいがわかってプレイヤーを引き込んでくる。

   

それぞれのステージのタイトルと、このメモの内容、そしてパズルのギミックとかすべてうまく連動していて、ちゃんと意味が感じられるところに感心する。パズルが作業になってなくて、主人公の気持ちに寄り添う雰囲気づくりの一部になっている。

背景はそんなにバリエーションはないけど、春夏秋冬が水彩っぽい味わいある絵でまとめられてるし、環境音やBGMのおかげでとても癒やされる。2Dパズルゲーでここまで雰囲気をつきつめてるのってなかなか見たことない。

数時間でクリアできるボリュームだから小粒なんだけど、パズル内容、グラフィック、ステージ構成、ストーリー、BGMすべてがこだわり抜かれて計算されて作られている印象で、手抜きをまったく感じない。

ストーリーと言ってしまうと、いろんな登場人物が出てきて・・・みたいなのを想像されてしまいそうだからちょっと違うかな。最初から最後まで何者かもわからない猫っぽい生き物の気持ちが語られるだけなので。特に盛り上がりとか物語みたいなのは無いんだけど、ちゃんと共感できるようにうまくまとめてある心情語りなの。

エンディングのスタッフロールなんかも、細部までこだわり抜かれた演出ですばらしい。一冊のデジタルな絵本だよね、これはもう。

ローカライズの人もすごく頑張ってくれてて、ゲームの雰囲気に合った日本語フォントが使われているし、語りの部分の翻訳もすばらしい。独特の雰囲気を壊すことなく、しっかり日本語に変換して届けてくれてる。

メランコリック調がものすごく強いところは人によって好みがわかれるのは仕方ないけど、それだけ作者が作りたいものがあって、こだわった結果だとも思う。あえてこのレビューではどんな流れなのか詳しく書かないから、スクショのモノローグ見て、こういうメランコリック系の語りが好きな人はぜひやってみてほしい。プレイ後はしばらく余韻に浸っちゃうし、時々起動してBGM流したくなる優秀な雰囲気ゲーだった。

投稿日2018.03.18
かてごりー: インディー系のゲーム