凍りついた時計 The Frozen Clock


「ここは…」
凍りついた洞窟の奥、女の子は巨大な歯車の上で立ち止まり、呆然と見上げます。

「ここは、凍りついた時間だよ、ハナ」
男の子は静かにそう教えてくれました。

「なんだか怖い…」
女の子が感じたのは、独りぼっちで凍えてしまいそうな寂しい寒さでした。これまで空の上も地の下も、鬱蒼と茂る森の中も、ありとあらゆるところを冒険してきました。けれども、こんな気持ちになったのは初めてでした。
女の子は不安そうな面持ちで尋ねます。
「どうして時間は止まっちゃったの?」

「わからない…どうしてだろうね…」
男の子は首を振ります。
「でも、ほら見てごらん、ハナ。あそこにまだ火が灯っている。時計は完全に止まっちゃったわけじゃない。時計の奥にある心臓は、まだ凍りついていないんだ」

女の子は男の子の指差すほうを見上げます。そして、そっと噛みしめるようにうなずきました。
「ほんとだ…。まだあきらめていないんだ…。時計は、今でも時を刻もうとしているのね…」
それを聞いた男の子は、力強くうなずきます。そしてこう言います。
「そうだよ、だからぼくたちが、時計の火をもう一度明るく灯してあげるんだ」

凍りついた時計の歯車を登るソラとハナの絵を描きました。

描き始めてから一ヶ月以上かかった

今回の絵は、制作記録を見ると、描き始めたのは9/22ということで、一ヶ月以上前でした。じつは前々回の絵の記事で触れた中途半端なまま行き詰まっていた絵というのはこの絵。

もともと、巨大な時計と歯車を登っているソラとハナのイメージがあったのでそれを描きたいと思って描き始めました。

その部分の下書きはわりと早かったんですが、その時点では、歯車は木製でした。木製の歯車というのは、見た目がものすごく地味で、面白みに欠けていて、このまま完成させてもダメだな…と思って棚上げ状態に。

その後、他の絵のほうを先に完成させているうちに、ふと、氷を描きたい! と思う瞬間があって、そうか、あの絵の歯車を氷で描けばいいんだ! と結びつきました。

木製の歯車は描いていて楽しくなかったけど、氷の歯車は、独特な光の反射が描いていてすごく楽しかったです。適当に描くだけでそれらしくなりますし(笑)

氷で寒そうなのに、ソラとハナがいつもの服装なのは、悩んだ末、そのままのほうがらしいかなということで。この二人は衣装も合わせての個性だと思っているところがあります。

また、空花物語のイメージカラーが、青紫、赤紫のあたりなので、氷という材質にしたことで、この絵が一気に空花物語の1ページらしくなったなーと満足しています。

最近、ゆめまな物語ばかり描いていて、空花物語のほうはご無沙汰していただけに、ようやく新作が描けて嬉しいです。

完成させることに意義がある

今回の絵は、着手から完成までブランクがありましたが、それでも完成させることができてよかった。

この前の考察記事で書きましたが、一度手がけた創作を完成させる、というのは、想像以上に大事なことで、シーシュポス条件の条件づけに関わってきます。

絵を描く意欲が激減する「シーシュポス条件」とは
絵を描くのが徒労感になる3つの場合
スランプを脳科学で分析するーなぜ創作できなくなるのか、どうやって抜け出すか

わたしの場合、絵を描き始めてから、途中で投げ出したのは数えるほどしかなくて、数字に換算しても、99%は完成までこぎつけている気がします。

学生時代は、推理小説作家になりたかったんですが、あちらのほうは、逆に7割くらい未完成で投げ出していました。ちょっとアイデアを思いついたからと書き出したら、途中であまり魅力的に思えなくなって行き詰まってしまい、未完成な序盤部分の原稿ばかり積み上がっていくというありさま。

学校が忙しくて、集中して創作できなかったのもありますが、やっぱり途中で投げ出してばかりだったのが悪かったのでしょう、いまだに、小説を書くことには、心理的に高いハードルを感じます。

だからこそ、空花物語は小説形式にしないで、ちょっとしたエピソードをつけるだけにとどめていると事情があったり。本当は全体を貫く設定とかプロットはあるんですが、小説にしたら途中で投げ出してしまいそうで、完成させる自信がありません。

今でも一年に一回くらい、たまーに推理小説を書いていますが、よほどアイデアがまとまって、行ける! と思えたときでないと、新作に取り掛かれないですね。

その点、絵のほうは、これまで99%完成させてきたことに裏打ちされた自信があって、どんなに難航しても、たぶん完成させられるだろう、と楽観視できています。今回の絵も、まあそのうちアイデアが湧いて完成できるだろうという気はしていました。

普段から創作をちゃんと完結させているか、それとも途中で投げ出してしまいがちか、というのは、こうやって後々効いてくるんだなーと身にしみて実感しています。