いつも絵の話ばかりしているわたしがウクレレの話?
なんだか意外に感じる人もいるかもしれません。実は、わたしは音楽もちょっとした趣味であり、絵を描くより前から、ウクレレを練習し、それなりに弾けるようになっていました。わたしの絵を見てくださっている方の中には、音楽をテーマにした絵が意外と多いことに気づかれた方もいるかもしれません。
友だちに絵描きとして知られる前のわたしは、「ウクレレが弾ける便利な人」としても知られていました。そして、パーティなどの伴奏要員として、それなりに役に立っていました。今でもそうです。
この前、不登校だったわたしの人生が絵を描くことで変わった話―手に入れた5つのものというエントリを書きました。絵を描くことで、わたしの人生は大きく変化しました。
それに比べ、絵を描く以前に、ウクレレを練習し、弾けるようになったこともまた、わたしの人生に影響を与え、楽しい思い出をたくさん与えてくれました。とはいえ、ウクレレはわたしの人生を「ちょっと楽しく」することには役立ちましたが、今描いている絵のように、わたしの人生を「変える」ことはありませんでした。
わたしがどうしてウクレレを弾くようになったか、どのようにしてウクレレで人生が楽しくなったか、そして、なぜ人生を「変える」までには至らなかったのか、ということをお話ししましょう。
▽わたしの絵にウクレレがよく出てくるのは自分で弾くから。オカリナも少々
もくじ
楽器なんて弾けない!と思っていた
わ たしは、昔から、楽器は大の苦手でした。幼稚園時代も、学校時代も、みんなで合奏やら音楽会やらのときには、決まってカスタネットかトライアングルでし た。もちろんリズム感がいいから、そうなったとかではなくて、単にドレミファも分からず、音階のある楽器などもってのほかだったのです。
学生のころの授業では、もちろんピアニカやリコーダーを演奏しましたが、必死に練習して、なんとか及第点、というレベルで、まったく面白いと思ったことがありませんでした。
そもそもリコーダーの音があまり好きではありませんでしたし、ちょっとでも運指を間違えたら、聞いている人にわかってしまうので、完璧さが求められる、というのがとても嫌でした。
わたしは昔から「完璧」が苦手です。うっかりミスの大家なので、いつも80%主義でした。だから、一つもミスなく動作をコントロールすることが求められる楽器演奏や、ゲームのタイムアタック、演劇などのパフォーマンスは、どうしても嫌いになってしまうのでした。
ウクレレとの出会い―コードすら知らないころ
ウクレレを始めたのは、絵の場合と同じく、不登校になってからです。
あるとき、押入れの中に、小さな木製のウクレレを見つけました。それは、少し前に、親が友人から借りて、練習するつもりでいたものでした。
なんとなく、ウクレレってどうやって弾くのだろう、と思って、たまたま好きな曲の楽譜があったので、借りたウクレレについていた簡単なコード表をたよりに、ちびちびと弾いてみました。
■コードって何?
じつは、その時まで「コード」というものを知りませんでした。楽譜にAやらCやら書いてあるのは何なのか、まったく知識がなかったのです。学校の音楽の授業では、音符記号や、フォルテ、モデラート、といった楽譜用語は習ったので、テスト対策くらいには知っていたのですが、コードについては一度も教わったことがありませんでした。
そのとき、付属のコード表を見て、はじめて、それらのアルファベットは「コード」というもので、ギターやウクレレを弾くときに活用すると知ったのです。
コー ド表に添って、一つずつ、弦を押さえる指の位置をに入念に確認し、はじめてウクレレを弾いてみたときの感動は、今でも忘れられません。コード表の見方の上 下すら わかりませんでした。でも、とても美しい和音が鳴って、大好きな曲を、とてもゆっくりとはいえ、自分で奏でることができたのです。
幸いにも、その曲は、ほぼ音符一つごとにコードが変わるという複雑な曲でした。普通に弾くと、めまぐるしくコードが変わるため、とても弾きにくいのですが、そのときはひとつずつゆっくりコードの運指を確認して、音を出していたので、気になりませんでした。
むしろ、音符一つずつにコードがあてがわれているため、コード弾きをしてもメロディ弾きと同じように音が変化し、伴奏ではなく、メロディそのものを弾いている、という感覚を感じられたのです。
また、C、G、G7、Dといった簡単で押さえやすいコードで構成されている曲だったのも、最初の一曲として、幸運だった点でした。
NHKテキストで練習する―カイマナ・ヒラを弾こう!
そんなわけで、ウクレレの音色の美しさと、コード弾きの楽しさに目覚めたわたしは、突然ウクレレを練習し始めました。
わたしは、NHKテキストのすぐに弾ける!たのしいウクレレ (NHK趣味悠々) という本を使って、勉強することにしました。ちょうどテレビで再放送をやっていたので、熱心に、毎回録画して、ウクレレの基礎の基礎から学びました。
まずはウクレレの持ち方からです。次いで、CやGといった基本のコードの押さえ方や、弾くときのストロークの手の動かし方など。どれも、まったく知らないことばかりで、見よう見まねで頑張りました。
■ストロークを身につけるには
一 番大変だったのは、ストロークです。リズムにそってジャカジャカするだけなら簡単ですが、少し味のあるストロークをしようとすると、リズムを無視して手を 動かす必要があります。これがどうしてもリズムにつられてしまうのです。リズム感と手の動きとを分離しなければなりません。
それで、ウク レ レを手に持ったままハミングし、ひたすらストロークの手の動きを繰り返すようにしました。ひとつの種類のストロークにつき、1時間、2時間と、延々左手に 同じ動作をさせ続けるのです。夜中にやっていましたから、ウクレレの音は鳴らさないようにしました。(ウクレレは軽くすべての弦に触れた状態で指をキープ すれば、音はなりません)
そのうち、ストロークが身につき、曲のリズムとは別に、左手が機械的にストロークしてくれるようになりました。
そしてカイマナ・ヒラ(Kaimana Hila)などの有名な曲を、一応弾けるようになりました。(カイマナ・ヒラの動画はたくさん上がっていますが、著作権的に合法なのかわからないので、動画埋め込みはやめておきます)
正直いって、学校で、リコーダーとかピアノしか楽器を教えないのは、変だと思います。基本的にそれらの楽器は単音弾きで、和音のすばらしさが伝わらないからです。もっとギターなどのコード弾きの楽器も教えるべきだと思いました。
究極のウクレレ使いを目指す!?
その上達によって、とても嬉しくなり、NHKテキストのすぐに弾ける!たのしいウクレレ (NHK趣味悠々) では物足りなくなりました。
■ウクレレを新調!
ま ず、使っていたウクレレの限界に気づきました。そもそも借り物だったので返さなければなりませんでしたし、3000円ほどのウクレレだったので、音が非常 に小さいのです。一人での弾き語りならともかく、わたしが伴奏して、複数人で歌うとなると、心もとなくなりました。また、ハイコードを押さえると音が鳴ら なかったり、音が小さくなったりしました。
それで、一念発起して、近くの楽器屋に行き、18000円ほどの大きめのウクレレを新調しました。深みのある大きな音が響くウクレレで、3000円のものとは比べ物にならないくらい美しい音色でした。そのウクレレは今でも愛用しています。(これは、一年絵を描いた後でPainterを買ったことと同じです。ある程度上達したら、思い切って将来に投資するのは大切です)
■3フィンガーを練習
また、究極のウクレレ練習DVD[DVD](譜例集付) と いう本を買って練習しました。ウクレレの高度な技法に関する本で、たとえば、プリング・オフやハンマリング・オン(本来なら弦を押さえる左手で音を出す荒 業)など、かなりレベルの高い技法も載っています。残念ながら、わたしはそれらの技法をどんな場面で使ったらよいのか分からず、結局習得はできませんでし た。
しかし一部の特殊なストロークについての説明などはかなり役立ち、いろいろ覚えました。たとえば「3フィンガー」という手法は、4/4拍子の標準的な曲でも使える特殊な弾き方なので、ちょっと雰囲気を出したいときに重宝します。
ウクレレは単音でのメロディ弾きもできるのですが、わたしはそれは上達できませんでした。わたしがウクレレを好きになった経緯は、和音のコードに惹かれたためでしたし、学校でのリコーダーが嫌いだったのは、単音で正確な運指が求められるからでした。
ウクレレもメロディ弾きになると、正確な運指が求められま す。しかしコード弾きの弾き語りなら、多少間違ってもバレないのです。80%主義のわたしには、コード弾きのほうが合っていました。
好きな曲を弾き語れるようになった
また、そのころ、いろいろな曲を弾きたくなって楽譜を見ていたのですが、普通のコード表やネット上にも載っていないコード、たとえばD♭sus4、E♭ma7といった複雑なコードを目にすることが多くなったので、ほとんどすべてのコードを網羅していた、やさしく覚える ウクレレコード完全ガイド という本を買いました。
■ディミニッシュのコード
たとえば、コードの右肩にo、0、◯のようなものがついているコード(
など)の意味が分からなかったのですが、その本で、ディミニッシュというコードだと知りました。右肩に◯をつけることもあれば、Cdimといった表記の場合もあるそうです。押さえ方自体は難しくありません。
はっきりいって、ウクレレでA♭とかG♭とかを弾くと、指がつりそうになるのですが、一応、ひと通りのコードは、何が来ても弾けるようになりました。ただしテンポが速いとダメなのですが。
■好きなアニメの曲の弾き語り
当時、わたしは、満月をさがして と いう種村有菜さん原作のマンガとアニメが大好きだったので、劇中の「New Future」という曲のコードを自分で耳コピして、ストロークも工夫して原曲に似せて弾いたりしていました。
アニメのあのシーンで、とても印象的だった「Eternal Snow」はネット上で楽譜が売られていたので、購入して弾き語りしていました。今思い出しても、切なくなるようなアニメ史上屈指の名シーンでしたね。
ちなみにわたしが一番好きなアニメはだぁ!だぁ!だぁ! です。「ハートのつばさ」も弾き語りしてましたよ! 今はわたしはマンガもアニメもほとんど見ないですが、はまっていた時期もあったのです。なんとなく、今のわたしの絵の通じるものがあるかもです。
ほかにもウルトラマニアック の…なんて書いたら年がバレる笑
「これ弾いてよ」 意外と重宝される伴奏者に!
わたしの周りにも、楽器のできる人は大勢いたので、自分がウクレレを弾けるようになると、「セッションしようぜ!」とばかりに、一緒に歌ったり合奏したりするようになりました。
わたしの友だちは、だいたいギタリストが一番多く、次にピアニストでした。ギターやピアノとウクレレがセッションなんて、音色が合わないような気がしますが、そこはしっかり、合わせる方法があるのです。
■ハイGとロウG
ウクレレには、下からA(ラ)、E(ミ)、C(ド)、G(ソ)の4つの弦があるのですが、一番上のGの弦が、通常の高い音色のGである基本のチューニングはハイG、その弦 を、1オクターブ下の低い音色のGに張り替えた特殊なチューニングはロウGと呼ばれます。高い音色のハイGは、本来のウクレレの飛び跳ねるような音色で、ハワ イらしい音楽が弾けるのですが、他の楽器と合わせるのは難しくなります。それで、わたしはロウGに弦を張り替えることで、みんなと一緒に合奏しやすくし て、演奏の幅を広げました。
■友だちの前で弾くということ
人前で弾くと、けっこう喜んでもらえることも多く、ウクレレという特技を身につけて、よかったと思うことが増えました。
ウクレレ使いは、けっこう珍しかったこともあって、わたしの伴奏は、重宝されることもありました。ウクレレはギターなどより持ち運びも用意で、友だちと会ったとき、楽器を持っていて伴奏できるのがわたしだけということもありました。
わ たしのウクレレの腕は、前述のようにメロディ弾きができないなど、本物の楽器演奏者から見たら、非常に未熟です。でも、コンサートを開くわけではなく、友 だちと楽しむくらいであれば、それでも十分でした。少なくとも、コードならば、かなりの曲に即席で対応できるので、「よし、これ歌いたいから弾いてよ」みたいな軽いノリで伴奏を引き受けることがよくあります。わたしの伴奏は、けっこう便利なのです。
も ちろん歌うだけなら、伴奏なしでも構いま せんし、今なら、CD音源やYouTubeを流してもいいわけですが、だれかが伴奏できる、というのは、ちょっと違う温かみがあるものです。コンビニ弁当 を買ってきて食べるか、手作り料理を食べるかぐらいの違いがあります。だから、わたしがウクレレで伴奏できると、みんな喜んでくれるのです。
ウクレレを練習して、ちょっと人生が豊かになった
こんなわけで、まったく楽器ができないと思い込んでいたわたしは、ちょっとしたきっかけからウクレレに親しむようになり、いくらか伴奏ができる人になりました。子どものときから楽器をやってきたような人とは比較になりませんが、それでも、人の役に立つレベルではあります。
■自信がついた
今、 振り返ってみると、ウクレレを練習して得たものは、わたしが絵を練習して得たものと、とても似ていると思います。ウクレレも絵も、自分の自信になり、友だ ちを楽しませ、自分の役割を見いだすことにつながりました。楽器が苦手だと思っていたのにウクレレをある程度弾けるようになったという成功体験が、やが て、あきらめず絵を描き続ける意欲にもつながったのかもしれません。
わたしが出会った楽器が、ギターでもベースでもなく、ウクレレであったというのは、本当によかったと思います。ウクレレには、他の楽器に比べ、小さめで持ち運びやすく、コードの運指もギターなどよりかなり簡単なので、大人になってからでも、親しみやすいのです。
ウクレレの名手というと、ジェイク・シマブクロやオータサンがいて、彼らの超絶技巧の演奏にはわたしも憧れたものですが、自分が弾いている楽譜をどうアレン ジすればいいのか、ということさえわからず、結局のところ、ここ何年も、ウクレレの腕は進歩していません。楽譜を見て、コードで伴奏できるだけです。
わ たしは、残念ながら、ウクレレでは、自分の創造性を発揮できませんでした。発揮する方法がわかりませんでした。ウクレレは、わたしの人生を「ちょっと楽し く」してくれましたが、それによって人生が「変わる」ことはありませんでした。わたしの人生が変わるためには、その後に絵を描き始めることがどうしても必要だったのです。
■どちらも必要
でも、絵を描き始めたからといって、ウクレレを捨てたわけではありません。むしろ両方を使い分けています。
絵は創造性を発揮できますが、みんなと同じ時間・空間で楽しむことはできません。絵を描いている間はいつも独りです。みんなのためにできるのはあくまで完成した絵を見せることだけです。
他方、ウクレレは創造性を発揮できませんが、同じ時間・空間を共有しているみんなを楽しませられます。一緒に歌ったり、演奏したりして、楽しい思い出を作れます。
わたしには、どちらか片方だけでなく、両方が必要だと思います。ウクレレは、確かに、わたしの人生をちょっと楽しくしてくれています。
だから、わたしはこの記事を読んでくださった方にこう言いたいです。
「苦手だと思っていることでも、思いきってやってみたら、きっとちょっといいことがあるよ!」 と。
番外編:オカリナもちょっとやった話
単音のメロディ弾きは苦手といいつつ、見た目に憧れて、オカリナも一時期やりました。でもウクレレに比べるとほとんど身につかず。使っていたのは、最初は土産物屋さんで買ったオカリナでしたが、音がずれていて、他の楽器と合わせられなかったので、3000円ほどのプラスチック製のジンオカリナを買って吹いていました。安いですが、意外とはっきり音が出で、持ちはこびやすいので役立ちました。
でもやっぱり80%主義のわたしには正確なメロディを吹くのは難しく、お蔵入りに。しかしその経験から、わたしの絵にはオカリナがよく登場します。
▽絵を描くことで人生が変わった話
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